JP6309760B2 - 熱可塑性樹脂組成物、フィルム、偏光板および画像表示装置 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物、フィルム、偏光板および画像表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物と、当該樹脂組成物から構成されるフィルムに関する。また、本発明は、当該フィルムを備える偏光板および画像表示装置に関する。
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)に代表される熱可塑性アクリル樹脂は、重合性が高く製造が比較的容易であるとともに光学的透明性に優れることから、光学用途に幅広く使用されている。光学用途には、レンズなどのバルク体としての使用の他、当該樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物から構成されるフィルム(光学フィルム)としての使用も一般的である。光学フィルムは、近年、液晶表示装置(LCD)および有機電界発光表示装置(OLED)をはじめとする画像表示装置への使用がますます拡大している。
画像表示装置の設計上、光学フィルムは、電源部、発光部、回路基板などの発熱体に近接した配置を避けることができない。このため、光学フィルムには耐熱性が求められる。しかし、耐熱性の指標となるガラス転移温度(Tg)について、PMMAをはじめとする一般的なアクリル樹脂のTgは最大100℃程度であり、そのままでは画像表示装置への使用に十分に耐えうる光学フィルムが得られない。このため、主鎖に環構造を配置することでTgを向上させた熱可塑性アクリル樹脂が、光学フィルム用熱可塑性樹脂組成物および当該組成物から構成される光学フィルムに使用されている。環構造は、例えば、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、N−置換マレイミド構造、または無水マレイン酸構造である(特許文献1−3を参照)。
光学フィルムは、未延伸フィルムとして、あるいは製膜後に延伸を加えた延伸フィルムとして光学用途に使用される。
特許第4909452号 特許第5196519号 特許第5167083号
主鎖に環構造を有するアクリル樹脂とすることにより当該樹脂のTgは向上するが、同時に、樹脂が硬く脆い方向に変化する。このため、このような樹脂を含む光学フィルムの可とう性および強度などの機械的特性が低下したり、ハンドリング性が低下したりする。この問題は、例えば、フィルムを延伸して延伸フィルムとすることにより対応可能であるが、主鎖への環構造の配置によって樹脂の延伸性が低下する場合、その対応にも限界がある。また、光学的に等方な樹脂組成物を用いない限り、延伸に伴う配向複屈折の発現により光学フィルムの光学特性が変化するため、いたずらに延伸を加えればよいものではなく、延伸による機械的特性と光学特性との変化のバランスを保つ必要がある。
さらに、近年、携帯性およびデザイン性が重視されるスマートフォンおよびタブレット端末の急速な普及に伴い、光学フィルムには薄膜化が求められている。環構造の種類により程度が異なるが、樹脂の主鎖への環構造の配置によるフィルムの成形性、機械的特性および延伸性の低下により、光学フィルムのさらなる薄膜化が困難なことがある。
本発明の目的の一つは、主鎖に環構造を有する熱可塑性アクリル樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であって、アクリル樹脂の主鎖に位置する環構造に基づくメリットを享受しながら、成形性、機械的特性、延伸性および光学特性といった諸特性の制御の自由度が向上したフィルムが得られる樹脂組成物の提供である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、主鎖に環構造Xを有する熱可塑性アクリル樹脂(A)、および前記環構造Xとは異なる環構造Yを主鎖に有し、前記アクリル樹脂(A)と相溶する熱可塑性アクリル樹脂(B)、を含む。
本発明のフィルムは、上記本発明の熱可塑性樹脂組成物から構成される。
本発明の偏光板は、上記本発明のフィルムを備える。
本発明の画像表示装置は、上記本発明のフィルムを備える。
本発明によれば、主鎖に環構造を有する熱可塑性アクリル樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であって、アクリル樹脂の主鎖に位置する環構造に基づくメリットを享受しながら、成形性、機械的特性、延伸性および光学特性といった諸特性の制御の自由度が向上したフィルムが得られる樹脂組成物を提供できる。
[熱可塑性樹脂組成物(D)]
本発明のフィルムを構成する樹脂組成物(D)は、主鎖に環構造Xを有する熱可塑性アクリル樹脂(A)と;環構造Xとは異なる環構造Yを主鎖に有し、アクリル樹脂(A)と相溶する熱可塑性アクリル樹脂(B)と;を含む。樹脂同士は、それが仮にアクリル樹脂同士であったとしても、相溶するとは限らない。相溶しない樹脂の組み合わせの方が、一般的である。相溶しない樹脂同士を組み合わせた樹脂組成物から構成されるフィルムは光学的透明性が低く、光学用途への使用に不適である。本発明者らは、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂について、環構造の種類が互いに異なる場合においても相溶が実現すること、当該相溶する2種以上のアクリル樹脂を含む樹脂組成物によって、アクリル樹脂の主鎖に位置する環構造に基づくメリット、例えば光学用途に使用可能な高いTg、を享受しながら、成形性、機械的特性、延伸性および光学特性といった諸特性の制御の自由度が高いフィルムが得られることを見出した。なお、環構造の種類が異なるとは、環構造の基本骨格が異なることを意味する。環構造の種類が異なることには、環構造の置換基の種類のみが異なる場合は含まれない。環構造の置換基の種類のみが異なる組み合わせは、例えば、本実施例において使用しているN−フェニルマレイミドおよびN−シクロヘキシルマレイミドの組み合わせである。これらの環構造は、いずれもN−置換マレイミド構造であり、環構造の置換基がフェニル基であるかシクロヘキシル基であるかのみが互いに異なっている。
なお、樹脂について「相溶する」とは、2種以上の樹脂を均一に混合した樹脂組成物を形成したときに、当該樹脂組成物についてガラス転移温度(Tg)が1点のみ測定される状態をいう。換言すれば、「相溶していない」状態のときは、例え樹脂同士を均一に混合していたとしても、複数のTgが測定される。
諸特性の制御の自由度の高いフィルムが得られるという効果は、例えば、環構造の種類または含有率によって、樹脂が有する耐熱性、配向複屈折性、硬度、柔軟性、溶融粘度といった特性が変化するが、複数の環構造を異なる樹脂として組み合わせることで、諸特性の制御が容易となる側面に基づく。
諸特性の制御の自由度が高いフィルムが得られるという効果は、また例えば、アクリル樹脂の主鎖に位置する環構造の由来の相違という側面に基づく。本発明の実施形態の一つでは、アクリル樹脂(A)が、熱可塑性アクリル樹脂(C)に対して環構造Xを形成する環化反応を進行させて得た樹脂であり、アクリル樹脂(B)が、環構造Yを有する単量体を含む単量体群の重合により形成された樹脂である。アクリル樹脂(C)は、樹脂(A)および樹脂(B)とは異なる熱可塑性アクリル樹脂であり、例えば、その主鎖に環構造を有さない。
環構造Xを樹脂(C)の主鎖に形成する環化反応(典型的には環化縮合反応)において、樹脂(C)の重合と、分子内の反応である環化反応とを同時に行うことは困難であるため、環化前のプレポリマー(樹脂(C))の分子量以上の環化樹脂を得ることが難しい。また、環化反応の副反応として、分子間に架橋反応が進行することがある。さらに、環化反応では樹脂(C)に熱が加わるため、当該熱により一定の割合で樹脂(C)が分解される。これらの理由から、樹脂(C)に対して環構造を形成する環化反応を進行させて得た樹脂(A)では、当該樹脂の分子量の自由度が低くなる。より具体的には、樹脂(A)の分子量の到達度が制限される(分子量分布が制御された大きな分子量を有する樹脂(A)を形成できない)。樹脂の分子量および分子量分布は、当該樹脂を含む樹脂組成物から構成されるフィルムの成形性、機械的特性および延伸性などに影響を与え、分子量の到達度の制限により、例えば、高い成形性および延伸性に基づく薄膜化が達成されたフィルムを得ることが難しくなる。一方、環構造Yを含む単量体を含む単量体群の重合により形成された樹脂(B)では、環化反応に由来するこのような制限は発生せず、例えば、その分子量の自由度は高く、分子量分布が制御された大きな分子量を有する樹脂(B)の形成が相対的に容易である。このため、熱可塑性樹脂組成物が樹脂(A)および樹脂(B)を含むことにより、例えば、樹脂(A)が有する環構造Xにより発現する光学特性のメリットを享受しながら、樹脂(B)の共存により樹脂組成物としての成形性および延伸性を樹脂(A)単独の場合よりも向上できる。その結果、一例として、より薄膜化された光学フィルムが得られる。
また例えば、樹脂(C)に対して環構造Xを形成する環化反応を進行させて得た樹脂(A)では、環構造Yを有する単量体を含む単量体群の重合により形成した樹脂(B)に比べて溶融粘度の調整が難しい。このため、熱可塑性樹脂組成物が樹脂(A)および樹脂(B)を含むことにより、例えば、樹脂(A)が有する環構造Xにより発現する光学特性のメリットを享受しながら、樹脂(B)の共存により樹脂組成物としての溶融粘度を、当該樹脂組成物の成形性が向上するように調整できる(この例では、樹脂(B)は溶融粘度調整剤として機能している)。
樹脂(A),(B)が有する環構造X,Yは、それぞれ例えば、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、N−置換マレイミド構造、および無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である。ただし、環構造XおよびYは互いに異なる。すなわち環構造X,Yは、例えば、環構造Xがラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、N−置換マレイミド構造、および無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、環構造Yが上記群から前記環構造Xが属する構造を除いた群から選ばれる少なくとも1種である。
上述した環構造の由来の観点からは、例えば、樹脂(A)が主鎖に有する環構造Xが、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、および無水グルタル酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、樹脂(B)が主鎖に有する環構造Yが、N−置換マレイミド構造、および無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である。これらの環構造Xは、アクリル樹脂(C)に対して環化反応を進行させて形成できる。これらの環構造Yは、当該環構造Yを有する単量体を含む単量体群の重合により形成できる。
樹脂(A)は2種以上の環構造Xを有していてもよく、1種の環構造Xを有していてもよい。樹脂(A)は、環構造X以外の環構造を主鎖に有さなくてもよい。樹脂(B)は2種以上の環構造Yを有していてもよく、1種の環構造Yを有していてもよい。樹脂(B)は、環構造Y以外の環構造を主鎖に有さなくてもよい。
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位を、全構成単位の50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上有する重合体である。(メタ)アクリル酸エステル単位の誘導体である環構造、例えば、上記環化反応により形成された環構造を主鎖に有する場合、(メタ)アクリル酸エステル単位および環構造の合計が全構成単位の50モル%以上であれば、アクリル樹脂とする。
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;の各単量体の重合により形成される単位である。光学的透明性の高いフィルムが得られるとともに、上記環化反応により樹脂の主鎖に環構造を形成できることから、アクリル樹脂、特に樹脂(C)はMMA単位を構成単位として有することが好ましい。アクリル樹脂は、これらの(メタ)アクリル酸エステル単位を2種以上有していてもよい。
アクリル樹脂(A)における環構造Xの含有率は、例えば、2重量%以上30重量%以下である。環構造Xの含有率の下限は、2.5重量%以上が好ましく、3重量%以上、3.5重量%以上、4重量%以上の順により好ましい。環構造Xの含有率の上限は、25重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。環構造Xの含有率が過度に大きくなると、当該樹脂(A)を含む樹脂組成物(D)の成形性が低下したり、組成物(D)から構成されるフィルムの可とう性をはじめとする機械的特性が低下したりする。環構造Xの含有率が過度に小さくなると、高いTgなど、主鎖に位置する環構造によるメリットが享受できなくなる。
アクリル樹脂(B)における環構造Yの含有率は、例えば、2重量%以上40重量%以下である。環構造Yの含有率の下限は、2.5重量%以上が好ましく、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上の順により好ましい。環構造Yの含有率の上限は、35重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、25重量%以下がさらに好ましい。環構造Yの含有率が過度に大きくなると、当該樹脂(B)を含む樹脂組成物(D)の成形性が低下したり、組成物(D)から構成されるフィルムの可とう性をはじめとする機械的特性が低下したりする。環構造Xの含有率が過度に小さくなると、高いTgなど、主鎖に位置する環構造によるメリットが享受できなくなる。
樹脂(A),(B)における環構造の含有率の好ましい値の相違は、上述した環構造の由来の相違(形成方法の相違)を考慮している。
以下の式(1)に、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造を示す。式(1)に示す構造は、当該構造を主鎖に有するアクリル樹脂の構成単位でもある。
Figure 0006309760
式(1)におけるR1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X1は、酸素原子または窒素原子である。X1が酸素原子のときR3は存在せず、X1が窒素原子のとき、R3は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基またはベンジル基である。フェニル基およびベンジル基では、ベンゼン環の1以上の水素原子が置換されていてもよい。X1が窒素原子のとき、R3は、メチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基が好ましく、メチル基、シクロヘキシル基、フェニル基がより好ましい。
1が窒素原子のとき、式(1)に示される環構造はN−置換マレイミド構造である。N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、単量体としてN−置換マレイミドおよび(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体群を共重合して形成できる。
1が酸素原子のとき、式(1)に示される環構造は無水マレイン酸構造である。無水マレイン酸構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、単量体として無水マレイン酸および(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体群を共重合して形成できる。
以下の式(2)に、グルタルイミド構造および無水グルタル酸構造を示す。式(2)に示す構造は、当該構造を主鎖に有するアクリル樹脂の構成単位でもある。
Figure 0006309760
式(2)におけるR4およびR5は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X2は、酸素原子または窒素原子である。X2が酸素原子のときR6は存在せず、X2が窒素原子のとき、R6は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基またはベンジル基である。X2が窒素原子のとき、R6は、メチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基が好ましく、メチル基、シクロヘキシル基、フェニル基がより好ましい。
2が窒素原子のとき、式(2)に示される環構造はグルタルイミド構造である。グルタルイミド構造は、例えば、アクリル樹脂(C)をメチルアミンなどのイミド化剤により環化して(イミド化して)形成できる。
2が酸素原子のとき、式(2)に示される環構造は無水グルタル酸構造である。無水グルタル酸構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体であるアクリル樹脂(C)を、分子内で脱アルコール環化縮合させて形成できる。
以下の式(3)に、ラクトン環構造の一例を示す。式(3)に示す構造は、当該構造を主鎖に有するアクリル樹脂の構成単位でもある。
Figure 0006309760
式(3)において、R7、R8およびR9は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の範囲の有機残基である。当該有機残基は酸素原子を含んでもよい。
有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの炭素数が1〜20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数が1〜20の範囲の芳香族炭化水素基;上記アルキル基、上記不飽和脂肪族炭化水素基および上記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。
式(3)に示すラクトン環構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと、水酸基および/またはカルボキシル基を分子内に有する(メタ)アクリル酸エステルとを含む単量体群を共重合した後、得られた共重合体であるアクリル樹脂(C)において、当該各単量体に由来する構成単位間で脱アルコール環化縮合反応を進行させて形成できる。(メタ)アクリル酸エステルは、例えばMMAであり、水酸基および/またはカルボキシル基を分子内に有する(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)である。この場合、得られた共重合体における隣り合ったMMA単位とMHMA単位とを脱アルコール環化縮合させて、R7がHであり、R8およびR9がCH3である、式(3)に示すラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂を形成できる。
アクリル樹脂(A),(B)がそれぞれの主鎖に環構造X,Yを有することにより、樹脂(A),(B)および当該樹脂を含む樹脂組成物(D)のTgが高くなり、樹脂組成物(D)から構成される本発明のフィルムの耐熱性が向上する。Tgは、例えば110℃以上であり、環構造X,Yの種類、樹脂(A),(B)における環構造X,Yの含有率、および樹脂組成物(D)の組成によっては、115℃以上、120℃以上、さらには130℃以上とすることができる。このように高いTgを有する樹脂組成物から構成されるフィルムは、狭いスペース内で光源、電源部、回路基板といった発熱部に近接した配置を余儀なくされるLCDなどの画像表示装置への使用に適している。
樹脂(A)および樹脂(B)の組み合わせの一例は、樹脂(A)が環構造Xとしてグルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂であり、樹脂(B)が環構造YとしてN−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂である組み合わせである。この組み合わせでは、例えば、以下に示す効果が得られる。
グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、グルタルイミド構造をイミド化剤を用いたアクリル樹脂のイミド化により形成するため、分子量の自由度が特に低い。例えば、大きな分子量を有するプレポリマーを準備しない限り、高分子量のアクリル樹脂を得ることが困難である。このため、環構造を主鎖に有するアクリル樹脂のなかでも、特にフィルムへの成形性およびフィルム化後の延伸性を高めにくく、例えば、薄膜化が難しい。一方で、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、低いグルタルイミド構造の含有率において光学的に等方とすることができ、また、耐熱性を向上させることができる。これに対して、N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂には、環構造を形成する手法に由来する上述した制限はなく、例えば、その形成時における分子量の自由度が高く、大きな分子量を実現できる。このため、双方のアクリル樹脂を組み合わせることにより、例えば、グルタルイミド構造に基づく上記特性上のメリットを享受しながら、フィルムへの成形性およびフィルム化後の延伸性を向上させた樹脂組成物(D)が得られ、これにより、例えば、さらなる薄膜化が達成される。
この効果は、上記組み合わせにより達成される効果のあくまでも一例に過ぎないが、当該効果に着目すると、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂とN−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂との組み合わせは、前者をベース樹脂とし、後者を延伸性向上剤あるいは成形性向上剤として用いた組み合わせと捉えることもできる。従来、樹脂、特に環構造の種類が異なるアクリル樹脂、を延伸性向上剤あるいは成形性向上剤として組み合わせた技術は存在しない。そもそも樹脂同士が相溶しないことが一般的であることも、その理由の一つである。
また、N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、他の環構造を主鎖に有するアクリル樹脂に比べて分子量分布を制御しつつ高分子量体を得ることが比較的容易であり、フィルムとしたときの可とう性を高くできる。このため、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂との組み合わせによって樹脂組成物(D)としての当該可とう性が向上することに着目すると、N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂を可とう性向上剤として用いた組み合わせと捉えることもできる。
この組み合わせは、他の組み合わせに比べて、互いの樹脂が相溶する環構造の含有率の範囲が広い。グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂の含有率X1と、N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂の含有率X2との比(重量比)は、例えば、X2/X1=0.5〜5である。また、一般的に環構造の含有率が大きくなるほど互いに相溶しにくくなると考えられるが、この組み合わせでは、環構造の含有率が大きい領域にも、相溶する範囲が拡がっている可能性がある。
樹脂(A)および樹脂(B)の組み合わせの別の一例は、樹脂(A)が環構造Xとしてラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂であり、樹脂(B)が環構造YとしてN−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂である組み合わせである。この組み合わせでは、例えば、以下に示す効果が得られる。
ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂に比べて成形性およびフィルム化後の延伸性が高い。しかし、分子量の制御の自由度、例えば高分子量化の容易性、は、N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂に比べて劣る。このため、双方のアクリル樹脂を組み合わせることにより、例えば、ラクトン環構造に基づく光学特性上のメリットを享受しながら、フィルムへの成形性およびフィルム化後の延伸性を向上させた樹脂組成物(D)が得られる。この効果に着目すると、この組み合わせは、前者をベース樹脂とし、後者を延伸性向上剤あるいは成形性向上剤として用いた組み合わせとして捉えることもできる。また、N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、他の環構造を主鎖に有するアクリル樹脂に比べて分子量分布を制御しつつ高分子量体を得ることが比較的容易であり、フィルムとしたときの可とう性を高くできる。このため、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂との組み合わせによって樹脂組成物(D)としての当該可とう性が向上することに着目すると、N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂を可とう性向上剤として用いた組み合わせと捉えることもできる。
樹脂(A)および樹脂(B)の組み合わせの別の一例は、樹脂(A)が環構造Xとしてラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂であり、樹脂(B)が環構造Yとしてグルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂である組み合わせである。この組み合わせでは、例えば、以下に示す効果が得られる。
ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂に比べて成形性およびフィルム化後の延伸性が高い。このため、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂に対して、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂を成形性向上剤として用いた組み合わせと捉えることもできる。また、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、低いグルタルイミド構造の含有率において光学的に等方とすることができ、また、耐熱性を向上させることができる。このため、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂を、溶融粘度を下げる溶融粘度調整剤として用いた組み合わせとして捉えることもできる。
樹脂組成物(D)について、以下の式(I)に示される、動的粘弾性スペクトルのゴム状平坦領域における絡み合い点間分子量Me0が10000以上、かつ以下の式(II)に示される絡み合い数Nが10以上500以下となる温度範囲が25℃以上であってもよい。この場合、樹脂組成物(D)のフィルム化後の延伸性が向上し、例えば、高い延伸倍率による延伸が可能となる。高延伸倍率の延伸によって、例えば、延伸フィルムのさらなる薄膜化が達成される。
Me0=3cRT0/E’0 ・・・(I)
N=(MwE’)/(3cRT)・・・(II)
式(I),(II)において、cは、25℃における樹脂組成物(D)の密度(g・m-3)であり、Rは、気体定数(8.31J・K-1・mol-1)であり、Tは、樹脂組成物(D)の温度(K)であり、E’は、温度Tにおける樹脂組成物(D)の貯蔵弾性率(Pa)であり、T0は、樹脂組成物(D)におけるゴム状平坦領域の中間点の温度(K)であり、E’0は、温度T0における樹脂組成物(D)の貯蔵弾性率(Pa)であり、Mwは、樹脂組成物(D)の重量平均分子量である。
高分子化合物である樹脂(重合体)は、一つ一つの分子が長い鎖状となった化合物であり、いわゆる濃厚系に相当する樹脂組成物の状態において分子の動きが制限され、互いに絡み合った状態にある。温度が上昇すると絡み合いが次第に解消され、完全に解消されると流動状態(流動領域)となるが、絡み合いの解消が始まってから完全に解消されるまでの間に、通常、ゴム状平坦領域と呼ばれる状態をとる。ゴム状平坦領域は、樹脂組成物の動的粘弾性スペクトルにおいて、貯蔵弾性率E’および損失弾性率E’’の変化が他の領域よりも小さい、理想的には、当該スペクトルにおいてE’およびE’’がほぼ平坦で変化しない区間として表される領域である。ゴム状領域において重合体の分子は、その主鎖同士が絡み合う点(絡み合い点)において「固定」されているが、隣接する絡み合い点間では主鎖同士が滑り合うことができると考えられる。この領域で、フィルムの延伸が可能である。
式(I)は、上記ゴム状平坦領域の中間点の温度、より具体的には、ゴム状平坦領域における代表的な(平均的な)温度である、当該領域の開始温度TSと終了温度TEとの中間の温度T0(=(TS+TE)/2)、における絡み合い点間分子量Me0を定めている。式(I)のMe0が大きくなるほど、樹脂組成物のゴム状平坦領域における絡み合い点の密度が低下し、高倍率の延伸が難しくなる。絡み合い点の密度が低いことは、樹脂組成物が流動状態に近いことを意味する。このため、延伸時の加熱ムラによってフィルム(原フィルム)の一部が他の部分よりも高温になると、当該部分のみが流動状態により近づくことで強く延伸されやすくなり、例えば、フィルムの一部に孔が生じ、当該孔が拡張することによる破断が起きやすくなる。強く延伸された部分において分子鎖同士の摩擦によりさらに温度が上昇し、さらなる局所的な延伸につながることも、上記例示した破断の発生に関わっている可能性がある。フィルムの厚さが大きいと、このような温度の不均一による影響は弱められ、高倍率延伸を行った場合でもフィルムの破断につながりにくい。しかし薄膜化を目指す場合、当該影響は直接的かつ確実に高倍率延伸を阻害することになる。Me0が10000以上であることは、樹脂組成物(D)が、薄膜化を目指した場合に高倍率延伸が難しい樹脂であることに対応している。なお、絡み合い点間分子量Me自体は、式Me=3cRT/E’とともに当業者に知られている(Me=cRT/G’と表記されることもある)。Meは、一般に、樹脂の(樹脂組成物の)分子量の影響を受けないとされている。主鎖に位置する環構造が樹脂の分子鎖同士の絡み合いを立体的に阻害するため、環構造の種類および含有率にもよるが、110℃以上の高いTgを示すアクリル樹脂のMe0は一般に10000以上となる。上述した環構造のうち、置換基の結合した窒素原子を有するグルタルイミド構造およびN−置換マレイミド構造が、他の環構造よりも、樹脂組成物(D)のMe0を上昇させる大きな作用を有する。
式(II)は、樹脂の(樹脂組成物の)重量平均分子量Mwを絡み合い点間分子量Meで除して得た、分子鎖における絡み合い点の数の平均(絡み合い数)Nを定めている。絡み合い数Nが10以上500以下であることが、原フィルムの高倍率延伸に適している。そして樹脂組成物(D)では、絡み合い数Nが10以上500以下の温度範囲TMが25℃以上である。これは、ゴム状平坦領域の温度範囲がある程度以上であることを意味し、より具体的には、例えば延伸時の加熱に温度ムラなどがある場合に、たとえフィルムの厚さが薄い場合においても、フィルムを構成する樹脂が容易に流動状態となることなく延伸できることを意味する。これにより、薄膜化を目指す場合においても、Me0が10000以上の樹脂組成物(D)から構成される原フィルムの高倍率延伸が可能となる。温度範囲TMは、好ましくは27℃以上である。温度範囲TMの上限は、特に限定されないが、通常100℃以下であり、好ましくは60℃以下である。
樹脂および樹脂組成物(D)の動的粘弾性スペクトルおよび当該スペクトル上の貯蔵弾性率E’は、当該樹脂または樹脂組成物(D)により構成されるフィルムに対して、公知の動的粘弾性スペクトル評価方法を適用して求めることができる。
樹脂組成物(D)について、以下の式(III)に示される、上記ゴム状平坦領域における絡み合い数N0が9以上であることが好ましい。この場合、Me0が10000以上の樹脂組成物(D)から構成される原フィルムの高倍率延伸をより確実に行うことができる。絡み合い数N0は10以上が好ましい。
0=Mw/Me0 ・・・(III)
このような好ましい絡み合い点間分子量Me0、温度範囲TMおよび絡み合い数N0は、樹脂組成物(D)が、環構造が互いに異なるアクリル樹脂(A)および(B)を含むことにより達成できる。樹脂組成物(D)における絡み合い点間分子量Me0、温度範囲TMおよび絡み合い数N0は、樹脂(A)および(B)が相溶する限りにおいて、いずれも加成性が成立する。すなわち、樹脂組成物に含まれるアクリル樹脂(A),(B)をはじめとする樹脂が有する絡み合い点間分子量Me0、温度範囲TMおよび絡み合い数N0の兼ね合いにより決定される。樹脂の温度範囲TMは、例えば、当該樹脂の分子量により制御でき、分子量が大きくなるほど温度範囲TMが大きくなる。
アクリル樹脂(A),(B)および(C)は、本発明の効果が得られる限り、環構造X,Yおよび(メタ)アクリル酸エステル単位以外の任意の構成単位を有していてもよい。当該構成単位は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタリルアルコール、アリルアルコール、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールの各単量体に由来する構成単位である。
アクリル樹脂(A),(B)および(C)における構成単位および環構造の含有率は、公知の手法、例えば1H核磁気共鳴(1H−NMR)、赤外線分光分析(IR)あるいは元素分析により求めることができる。例えば、ラクトン環構造の含有率は、特開2001-151814号公報に記載の方法により求めることができる。
アクリル樹脂(A),(B)および(C)は、公知の重合方法および環化方法により形成できる。
樹脂組成物(D)は、2種以上のアクリル樹脂(A)および/または2種以上のアクリル樹脂(B)を含んでいてもよい。また、樹脂組成物(D)は、アクリル樹脂(A)および(B)以外に、これら樹脂(A),(B)と相溶する熱可塑性アクリル樹脂をさらに含んでいてもよい。
樹脂組成物(D)における樹脂(A),(B)の混合比(重量比)は、樹脂(A)および樹脂(B)が互いに相溶する限り限定されない。当該混合比は、具体的なアクリル樹脂(A),(B)の種類によっても異なるが、一例として、樹脂(A):樹脂(B)=99.9:0.1〜0.1:99.9であり、好ましくは99.5:0.5〜0.5:99.5であり、より好ましくは95:5〜5:95である。
樹脂組成物(D)は、光学的に等方な樹脂組成物であってもよい。光学的に等方な樹脂または樹脂組成物とは、当該樹脂または樹脂組成物をフィルムとし、これを原フィルムとして一軸延伸したときに、波長550nmの光に対する面内位相差Reが5nm以下であるとともに、当該光に対する厚さ方向の位相差Rthの絶対値が5nm以下となる樹脂または樹脂組成物をいう。すなわち、樹脂組成物(D)が光学的に等方な樹脂組成物である場合、波長550nmの光に対する面内位相差Reが5nm以下であるとともに、当該光に対する厚さ方向の位相差Rthの絶対値が5nm以下である、光学的に等方なフィルム(未延伸フィルムまたは延伸フィルム)が得られる。光学的に等方なフィルムは、例えば、偏光子保護フィルムとしての使用に好適である。
光学的に等方な樹脂組成物(D)は、例えば、光学的に等方なアクリル樹脂(A)と光学的に等方なアクリル樹脂(B)とを含む樹脂組成物(D)とすることにより実現できる。あるいは、互いの配向複屈折を打ち消しあう光学特性を有するアクリル樹脂(A)および(B)を含む樹脂組成物(D)とすることによって実現できる。
樹脂組成物(D)は、フィルム化後の延伸により位相差を発現する樹脂組成物であってもよい。この場合、樹脂組成物(D)から構成される位相差フィルムを形成できる。位相差の発現の程度は、樹脂組成物(D)に含まれる樹脂の光学特性および樹脂組成物(D)の組成によって調整できる。
アクリル樹脂(A)および(B)との相溶性が確保されるとともに本発明の効果が得られる限り、樹脂組成物(D)は、樹脂(A)および(B)以外の樹脂を含んでいてもよい。当該樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのオレフィン系重合体;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などの含ハロゲン系重合体;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ゴム質重合体である。樹脂組成物(D)は、2種以上のこれら樹脂を含むことができる。
本発明の効果が得られる限り、樹脂組成物(D)は、樹脂以外の材料、例えば添加剤を含むことができる。添加剤は、例えば、酸化防止剤、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤などの位相差調整剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー、樹脂改質剤、可塑剤、滑剤である。樹脂組成物(D)における添加剤の含有率は、好ましくは7重量%未満、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。
樹脂組成物(D)の形成方法は特に限定されない。樹脂(A)および(B)、ならびに必要に応じて添加剤および/またはさらなる樹脂を公知の混合方法で混合して形成できる。混合は、例えば、オムニミキサーなどの混合機でプレブレンドした後、得られた混合物を混練して実施できる。この場合、混練機は特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機、および加圧ニーダーである。
[フィルム]
本発明のフィルムは、樹脂組成物(D)から構成される。これにより、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂を含む樹脂組成物から構成されるフィルムであって、アクリル樹脂の主鎖に位置する環構造に基づくメリットを享受しながら、成形性、機械的特性、延伸性および光学特性といった諸特性の制御の自由度が向上したフィルムとなる。
本発明のフィルムは、樹脂組成物(D)を成形して得たフィルムである(樹脂組成物(D)のフィルム状の成形体である)。成形は、溶融成形が好ましく、押出成形が好ましい。
本発明のフィルムは、例えば、光学フィルムである。
本発明のフィルムは、アクリル樹脂(A)および(B)の相溶性に基づく、高い光学的透明性を有する。当該フィルムの全光線透過率は、例えば85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは91%以上である。全光線透過率は、フィルムの光学的透明性の指標となる。全光線透過率が85%未満のフィルムは、光学用途に適さない。フィルムの全光線透過率は、JIS K7361の規定に準拠して求めることができる。
本発明のフィルムは、アクリル樹脂(A)および(B)の相溶性に基づく、低いヘイズを有する。ヘイズには、フィルム表面の形状に由来する効果を考慮した全ヘイズと、フィルム表面の形状に由来する効果を考慮外とした内部ヘイズとがある。本発明のフィルムでは、全ヘイズおよび/または内部ヘイズを1.0%以下とすることができる。特に内部ヘイズに関しては、0.7%以下とすることも可能である。
本発明のフィルムは、樹脂組成物(D)の組成および延伸条件に基づいて、位相差を示すことも、配向複屈折の発生がない、位相差がほぼゼロである光学的に等方なフィルム(ゼロ位相差フィルム)とすることもできる。位相差を示すフィルムは、例えば、位相差フィルムとして使用したり、偏光板と組み合わせて反射防止フィルムとして使用することができる。光学的に等方なフィルムは、例えば、偏光子保護フィルムとして使用することができ、この場合、当該保護フィルムを偏光子と組み合わせて偏光板を形成することができる。本明細書では、波長550nmの光に対する位相差(面内位相差Re、および厚さ方向の位相差Rthの絶対値)がいずれも5nm以下である場合を、配向複屈折の発生がない光学的に等方なフィルムであるとする。ゼロ位相差フィルムは、ReおよびRthの絶対値ともに3nm以下が好ましく、1.5nm以下がより好ましく、1nm以下がさらに好ましい。本発明のフィルムは、波長550nmの光に対する面内位相差Reが5nm以下であり、上記光に対する厚さ方向の位相差の絶対値が5nm以下でありうる。
面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthは、フィルム面内における遅相軸方向の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向の屈折率をny、フィルムの厚さ方向の屈折率をnz、フィルムの厚さをd(nm)としたときに、それぞれ、式(nx−ny)×d、および式{(nx+ny)/2−nz}×dにより与えられる。本明細書における屈折率nx、ny、nzは、波長550nmの光に対する屈折率である。
本発明のフィルムは、樹脂組成物(D)が含むアクリル樹脂(A),(B)に基づく高いTgを有する。フィルムのTgは、当該フィルムを構成する樹脂組成物(D)のTgと同じであり、例えば110℃以上である。樹脂組成物(D)の組成によっては、115℃以上、120℃以上、さらには130℃以上とすることができる。
本発明のフィルムは、未延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムは、例えば、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、斜め延伸フィルムである。二軸延伸フィルムは、逐次二軸延伸フィルムであっても同時二軸延伸フィルムであってもよい。
本発明のフィルムの表面には、必要に応じて各種の機能性コーティング層が形成されていてもよい。機能性コーティング層は、例えば、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー層である。
本発明のフィルムは、従来の光学フィルムと同様に、各種の光学部材として用いることができる。光学部材は、例えば、光学用保護フィルム、具体的には、各種の光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)の基板の保護フィルム、LCDなどの画像表示装置が備える偏光板に用いる偏光子保護フィルム、位相差フィルムである。視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルムなどに使用してもよい。
本発明のフィルムは、樹脂組成物(D)から、公知の製膜方法および延伸方法により形成できる。
[偏光板]
本発明の偏光板は、本発明のフィルムを備える。偏光板は、一般に、ポリビニルアルコールなどの樹脂フィルムからなる偏光子と、当該偏光子を保護するための偏光子保護フィルムとを備える。本発明のフィルムは、例えば、偏光子保護フィルムとして偏光板に組み込まれている。
本発明のフィルムを備える偏光板(本発明の偏光板)の構造は特に限定されず、偏光子の一方の面に当該フィルムが積層された構造であってもよいし、一対の当該フィルムによって偏光子が挟持された構造であってもよい。本発明の偏光板の構造の典型的な一例は、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素または二色性染料などの二色性物質により染色した後に一軸延伸して得た偏光子の片面または両面に、接着剤層または易接着層を介して本発明のフィルムを接合させた構造である。
偏光子は特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを染色、延伸して得た偏光子;脱水処理したポリビニルアルコールあるいは脱塩酸処理したポリ塩化ビニルなどのポリエン偏光子;多層積層体あるいはコレステリック液晶を用いた反射型偏光子;薄膜結晶フィルムからなる偏光子;などの公知の偏光子である。なかでも、ポリビニルアルコールを染色、延伸して得た偏光子が好ましい。偏光子の厚さは特に限定されず、一般に5〜100μm程度である。
本発明の偏光板は、偏光子および本発明のフィルムの他に、任意の部材を有していてもよい。当該部材は、例えば、TACフィルム、ポリカーボネートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリナフタレンテレフタレートフィルムである。なかでも、偏光板としての光学特性に優れることから、アクリル樹脂フィルムが好ましい。このアクリル樹脂フィルムは、光学的に等方なフィルムであっても位相差フィルムであってもよい。
本発明の偏光板は、その表面特性、例えば耐傷つき特性の向上を目的として、ハードコート層を有していてもよい。ハードコート層は、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、紫外線硬化樹脂、ウレタン系ハードコート剤からなる。紫外線硬化樹脂は、例えば紫外線硬化アクリルウレタン、紫外線硬化エポキシアクリレート、紫外線硬化(ポリ)エステルアクリレート、紫外線硬化オキセタンである。ハードコート層の厚さは、通常0.1〜100μmである。ハードコート層を形成する前に、その下地となる層にプライマー処理を行ってもよく、当該層に、反射防止処理あるいは低反射処理などの公知の防眩処理を行ってもよい。
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明のフィルムを備える限り特に限定されない。本発明の画像表示装置は、例えばLCDであり、当該LCDの画像表示部が、液晶セル、バックライトなどの部材とともに、本発明のフィルムを備える。本発明の画像表示装置は、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、有機電界発光表示装置(OLED)でありうる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。実施例では、便宜上、化合物について下記の略称を用いる。
CMI:N−シクロヘキシルマレイミド
PMI:N−フェニルマレイミド
MMA:メタクリル酸メチル
DM:n−ドデシルメルカプタン
St:スチレン
MEK:メチルエチルケトン
最初に、本実施例において作製した樹脂、樹脂組成物およびフィルムの評価方法を説明する。
[ガラス転移温度(Tg)]
樹脂および樹脂組成物のTgは、JIS K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
[重量平均分子量(Mw)]
樹脂および樹脂組成物のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算により求めた。Mwの測定に用いた装置および測定条件は、以下のとおりである。
システム:東ソー製GPCシステム HLC−8220
測定側カラム構成:
・ガードカラム:東ソー製、TSKguardcolumn SuperHZ-L
・分離カラム:東ソー製、TSKgel SuperHZM-M 2本直列接続
リファレンス側カラム構成:
・リファレンスカラム:東ソー製、TSKgel SuperH-RC
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS−オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
[フィルムの厚さ]
作製したフィルムの厚さは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ製)を用いて測定した。
[位相差]
作製したフィルム(延伸フィルム)の位相差は、位相差フィルム・光学材料検査装置(大塚電子製、RETS−100)を用いて、波長550nmの光に対する面内位相差Re、同波長の光に対する厚さ方向の位相差Rthとして求めた。厚さ方向の位相差Rthについては、アッベ屈折率計で測定したフィルムの平均屈折率およびフィルムの厚さd、ならびに上記装置によりフィルムを40°傾斜させて測定した位相差値(Re(40°))および三次元屈折率nx、ny、nzを用いて、式Rth={(nx+ny)/2−nz}×dより求めた。nxはフィルムの遅相軸方向の屈折率、nyは進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)である。フィルムを傾斜させる方向について、遅相軸を傾斜軸としたRe(S40°)と進相軸を傾斜軸としたRe(F40°)とを予め測定し、Re(S40°)>Re(F40°)となる場合は遅相軸を、Re(S40°)<Re(F40°)となる場合は進相軸を、それぞれ傾斜軸とした。
なお、位相差の測定は、フィルムの中央付近、一点に対して行った。面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthともに、絶対値にて評価した。面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthの絶対値が5nm以下の場合、当該フィルムには配向複屈折が発現していないとした。
[絡み合い点間分子量Me0、絡み合い数N0
樹脂および樹脂組成物の絡み合い点間分子量Me0、および絡み合い数N0は、以下のようにして求めた。最初に、測定対象物である樹脂または樹脂組成物から構成されるフィルムを5mm×30mmのサイズに切断して得た評価試料を、25℃、60%RHの雰囲気下に2時間以上放置して調湿した後、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント製、RSA3)を用い、当該試料の貯蔵弾性率E’、損失弾性率E’’およびこれらの比であるtanδを求めた。このとき、試料のつかみ間距離を20mm、測定周波数を1Hzとし、温度条件は30℃からのスタートおよび昇温速度5℃/分とした。
次に、測定した貯蔵弾性率E’(Pa)を対数軸である縦軸に、温度(K)を線形軸である横軸にプロットし、ガラス転移領域と流動領域との間に位置する、E’が他の領域に比べて変化しない、場合によっては一定値を示すゴム状平坦領域の中間点の温度T0を、ゴム状平坦領域の開始温度TSと終了温度TEとの中間の温度(=(TS+TE)/2)から求めた。このT0と、当該T0におけるE’の値E’0とから、式(I)により、絡み合い点間分子量Me0を求めた。
Me0=3cRT0/E’0 ・・・(I)
これとは別に、ゴム状平坦領域における温度T(K)および当該温度Tにおける貯蔵弾性率E’(Pa)、ならびに別途評価した、測定対象物である樹脂または樹脂組成物の重量平均分子量Mwから、式(II)により絡み合い数Nを求め、求めた絡み合い数Nを対数軸である縦軸に、温度(K)を線形軸である横軸にプロットし、絡み合い数Nが10となる温度と500となる温度との差から、絡み合い数Nが10〜500である温度範囲TMを求めた。
N=(MwE’)/(3cRT)・・・(II)
また、以下の式(III)により、測定対象物である樹脂または樹脂組成物のゴム状平坦領域における絡み合い数N0を求めた。
0=Mw/Me0 ・・・(III)
[ヘイズ、内部ヘイズ]
作製したフィルム(未延伸フィルム)のヘイズ(全ヘイズ)および内部ヘイズは、濁度計(日本電色工業製、NDH5000)を用いて測定した。なお、内部ヘイズは、石英セル内のテトラリン中に、測定対象物であるフィルムを浸漬した状態で測定した。
[製造例1:主鎖にN−置換マレイミド構造を有するアクリル樹脂の作製]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、MMA181重量部、CMI12重量部、PMI6重量部、酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.1重量部、およびトルエン1561重量部を仕込んだ。次に、反応容器に窒素ガスを導入しながら内温を105℃まで昇温させ、還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)0.206重量部を添加し、同時に、トルエン42重量部およびt−アミルパーオキシイソノナノエート0.41重量部の混合物の滴下を開始した。2時間かけて上記混合物を滴下した後、さらに6時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液を、バレル温度240℃、回転速度100rpm、減圧度10.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤溶液を0.03kg/時の投入速度で第1ベントの後ろから、イオン交換水を0.01kg/時の投入速度で第3ベントの後ろから、それぞれ投入した。その後、二軸押出機内の樹脂をペレット化して、N−シクロヘキシルマレイミド構造およびN−フェニルマレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂(A−1)のペレットを得た。
アクリル樹脂(A−1)のMwは19.3万、MMA単位の含有率は91重量%、CMI単位の含有率は6重量%、PMI単位の含有率は3重量%、Tgは123℃であった。
[製造例2〜4:主鎖にN−置換マレイミド構造を有するアクリル樹脂の作製]
反応容器に仕込んだ単量体を、「MMA162重量部、CMI22重量部、およびPMI16重量部」(製造例2)、「MMA140重量部、CMI34重量部、およびPMI26重量部」(製造例3)、「MMA146重量部、CMI36重量部、PMI8重量部、およびSt10重量部」(製造例4)、とした以外は製造例1と同様にして、N−シクロヘキシルマレイミド構造およびN−フェニルマレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂(A−2)〜(A−4)のペレットを得た。
アクリル樹脂(A−2)のMwは20.0万、MMA単位の含有率は81重量%、CMI単位の含有率は11重量%、PMI単位の含有率は8重量%、Tgは134℃であった。アクリル樹脂(A−3)のMwは17.4万、MMA単位の含有率は70重量%、CMI単位の含有率は17重量%、PMI単位の含有率は13重量%、Tgは144℃であった。アクリル樹脂(A−4)のMwは20.0万、MMA単位の含有率は73重量%、CMI単位の含有率は18重量%、PMI単位の含有率は4重量%、Tgは139℃であった。
[製造例5:ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の作製]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、MMA30重量部、酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.05重量部、およびMEK65重量部を仕込んだ。次に、反応容器に窒素ガスを導入しながら内温を80℃まで昇温させ、還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス575)0.052重量部およびMEK5重量部を添加した。添加後、窒素気流下の還流状態で、反応容器内を6時間攪拌した。
次に、得られた重合溶液をベントタイプスクリュー二軸押出機に導入してバレル温度240℃で脱揮した後、二軸押出機内の樹脂をペレット化して、PMMA(A−5)のペレットを得た。PMMA(A−5)のTgは97℃、Mwは10.1万であった。
[製造例6:主鎖にグルタルイミド構造を有するアクリル樹脂の作製]
国際公開第06/129573号の製造例1および特開2011−246623号公報の実施例を参考に、製造例5で作製したPMMA(A−5)を用いて、主鎖にグルタルイミド構造を有するアクリル樹脂を製造した。具体的にはPMMA(A−5)を、バレル温度260℃に設定した、サイドフィーダーを有するベントタイプスクリュー二軸押出機に導入し、上記サイドフィーダーからPMMA(A−5)100重量部に対して5重量部のモノメチルアミンを注入することにより、PMMA(A−5)の主鎖にグルタルイミド構造(X2が窒素原子であり、R4が水素原子、R5およびR6がメチル基である式(2)に示す環構造)を形成する環化反応を進行させた。この反応は、副生成物および過剰のメチルアミンを押出機のベント口より除去するとともに、得られたアクリル樹脂におけるグルタルイミド構造の含有率(イミド化率)が5重量%となるようにPMMA(A−5)およびモノメチルアミンを連続的に押出機に供給しながら進行させた。反応後の樹脂をペレット化して、主鎖にグルタルイミド構造を有するアクリル樹脂(A−6)のペレットを得た。
アクリル樹脂(A−6)のTgは119℃、Mwは9.6万であった。
[製造例7:主鎖にグルタルイミド構造を有するアクリル樹脂の準備]
主鎖にグルタルイミド構造を有するアクリル樹脂(A−7)として、市販のアクリル樹脂(ダイセル・エボニック製、プレキシイミド8813)を準備した。アクリル樹脂(A−7)は、X2が窒素原子であり、R4〜R6がメチル基である式(2)に示す環構造を主鎖に有する。アクリル樹脂(A−7)は、当該構造とMMA単位とを構成単位として有し、グルタルイミド構造の含有率は42重量%であった。
アクリル樹脂(A−7)のTgは132℃、Mwは14.3万であった。
[製造例8:主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂の作製]
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、MMA229.6重量部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)33重量部、重合溶媒としてトルエン248.6重量部、酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.138重量部、およびn−ドデシルメルカプタン0.1925重量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。
昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)0.2838重量部を添加するとともに、上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.5646重量部およびSt12.375重量部を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)としてリン酸ステアリル(堺化学工業製、Phoslex A−18)0.206重量部を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成する環化反応を進行させた。
次に、上記環化反応で得られた重合溶液を、240℃に保持した多管式熱交換器を通して環化反応を完結させた後、バレル温度250℃、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーが設けられており、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に31.2重量部/時(樹脂量換算)の処理速度で導入し、脱揮を行った。
その際、イオン交換水を0.47重量部/時の投入速度で第2ベントの後から、紫外線吸収剤溶液を0.59重量部/時の投入速度で第4ベントの後から、それぞれ投入した。紫外線吸収剤溶液には、0.66重量部の紫外線吸収剤(ADEKA製、アデカスタブ LA−F70)を、トルエン1.23重量部に溶解させた溶液を用いた。
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂を当該押出機の先端からポリマーフィルタにより濾過しながら排出し、ペレット化して、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂(A−8)のペレットを得た。アクリル樹脂(A−8)のMwは13.1万、ラクトン環構造の含有率は13.6重量%、MMA単位の含有率は81.3重量%、St単位の含有率は5.1重量%、Tgは121℃であった。
[製造例9:主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂の作製]
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、MMA40重量部、MHMA10重量部、酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.025重量部、および重合溶媒としてトルエン50重量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。
昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)0.05重量部を添加するとともに、上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.10重量部を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)としてリン酸ステアリル(堺化学工業製、Phoslex A−18)0.05重量部を加え、約90℃〜110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成する環化反応を進行させた。
次に、上記環化反応で得られた重合溶液を、240℃に保持した多管式熱交換器に通して環化反応を完結させた後、バレル温度250℃、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーが設けられており、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に90重量部/時(樹脂量換算)の処理速度で導入し、脱揮を行った。
その際、イオン交換水を1.3重量部/時の投入速度で第2ベントの後ろから、環化触媒失活剤溶液を0.6重量部/時の投入速度で第3ベントの後ろから、それぞれ投入した。環化触媒失活剤溶液には、1.0重量部のオクチル酸カルシウム(日本化学産業製、ニッカオクチクスカルシウム5重量%)をトルエン1.8重量部に溶解させた溶液を用いた。
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂を当該押出機の先端からポリマーフィルタにより濾過しながら排出し、ペレット化して、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂(A−9)のペレットを得た。アクリル樹脂(A−9)のMwは13.2万、ラクトン環構造の含有率は24.5重量%、Tgは129℃であった。
各製造例で作製したアクリル樹脂と、その評価結果を以下の表1にまとめる。
Figure 0006309760
[実施例I群]
実施例I群では、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂と、N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂とを含む樹脂組成物について評価した。
(実施例1)
製造例6で作製した主鎖にグルタルイミド構造を有するアクリル樹脂(A−6)と、製造例1で作製した主鎖にN−置換マレイミド構造を有するアクリル樹脂(A−1)とを、混合比(重量比)1:1でドライブレンドした後、ポリマーフィルタ(濾過精度5μm)を備えるとともにTダイを先端に備えた単軸押出機を用いて成形温度270℃で溶融押出成形して、アクリル樹脂(A−6)および(A−1)を含む樹脂組成物(E−1)から構成される厚さ180μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(E−1)のTgは121℃、Mwは14.5万、絡み合い点間分子量Me0は12500、絡み合い数N0は12.3、温度範囲TMは28℃であった。なお、双方の樹脂のペレットは、ドライブレンドした後に60℃の乾燥エアー中で24時間乾燥させた。
次に、形成したフィルムを逐次二軸延伸機(東洋精機製作所製、X−6S)を用いて、延伸温度を樹脂組成物(E−1)のTg+15℃、延伸倍率を2.0倍(MD方向)×2.0倍(TD方向)として、縦方向(MD方向)および横方向(TD方向)の順に逐次二軸延伸した。延伸後、延伸機から速やかにフィルムを取り出して冷却し、二軸延伸性のフィルム(FS−1)を得た。作製したフィルム(FS−1)の厚さは45μmであった。
(実施例2)
製造例1で作製したアクリル樹脂(A−1)の代わりに、製造例2で作製したアクリル樹脂(A−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂(A−6)および(A−2)を含む樹脂組成物(E−2)から構成される厚さ140μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(E−2)のTgは126℃、Mwは15.0万、絡み合い点間分子量Me0は15200、絡み合い数N0は10.0、温度範囲TMは26℃であった。
次に、延伸温度を樹脂組成物(E−2)のTg+15℃とした以外は、形成したフィルムを実施例1と同様に逐次二軸延伸して、二軸延伸性のフィルム(FS−2)を得た。作製したフィルム(FS−2)の厚さは35μmであった。
(実施例3)
製造例6で作製したアクリル樹脂(A−6)の代わりに製造例7で準備したアクリル樹脂(A−7)を用い、製造例1で作製したアクリル樹脂(A−1)の代わりに製造例3で作製したアクリル樹脂(A−3)を用いた以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂(A−7)および(A−3)を含む樹脂組成物(E−3)から構成される厚さ110μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(E−3)のTgは138℃、Mwは15.7万、絡み合い点間分子量Me0は18700、絡み合い数N0は8.4、温度範囲TMは25℃であった。
次に、延伸温度を樹脂組成物(E−3)のTg+15℃とし、延伸倍率を1.5倍×1.5倍とした以外は、形成したフィルムを実施例1と同様に逐次二軸延伸して、二軸延伸性のフィルム(FS−3)を得た。作製したフィルム(FS−3)の厚さは49μmであった。
(比較例1)
製造例1で作製したアクリル樹脂(A−1)の代わりに、製造例3で作製したアクリル樹脂(A−3)を用いた以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂(A−6)および(A−3)を含む樹脂組成物(C−1)から構成される厚さ190μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(C−1)のMwは13.2万であったが、Tgは複数観察された。
次に、形成したフィルムを実施例1と同様に逐次二軸延伸して、二軸延伸性のフィルム(FS−4)を得た。作製したフィルム(FS−4)の厚さは48μmであった。
(比較例2)
製造例6で作製したアクリル樹脂(A−6)の代わりに、製造例7で作製したアクリル樹脂(A−7)を用いた以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂(A−7)および(A−1)を含む樹脂組成物(C−2)から構成される厚さ190μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(C−2)のMwは17.1万であったが、Tgは複数観察された。なお、形成したフィルムは白濁していたため、二軸延伸フィルムの作製は省略した。
(参考例1)
製造例6で作製したアクリル樹脂(A−6)の代わりに、製造例5で作製したPMMA(A−5)を用いた以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂(A−1)およびPMMMA(A−5)を含む樹脂組成物(R−1)から構成される厚さ170μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(R−1)のTgは110℃、Mwは14.8万であった。
(参考例2)
製造例1で作製したアクリル樹脂(A−1)の代わりに、製造例5で作製したPMMA(A−5)を用いた以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂(A−6)およびPMMMA(A−5)を含む樹脂組成物(R−2)から構成される厚さ170μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(R−2)のTgは108℃、Mwは10.0万であった。
実施例1〜3、比較例1,2および参考例1,2の結果を以下の表2にまとめる。表2のフィルム厚さは、未延伸フィルムの厚さである。
Figure 0006309760
表2に示すように、環構造がグルタルイミド構造およびN−置換マレイミド構造であり、互いに異なる場合においても、当該異なる種類の環構造を主鎖に有するアクリル樹脂同士が相溶し、全ヘイズおよび内部ヘイズが1.0%以下の光学的に透明なフィルム(未延伸フィルムおよび延伸フィルム)が得られる領域が存在することが確認された。また、樹脂組成物の延伸性に寄与すると考えられる絡み合い点間分子量Me0および絡み合い数N0の変化に着目すると、例えば、グルタルイミド構造を有するアクリル樹脂について、元々その絡み合い数N0が低く(表1参照)、高倍率での延伸が困難であった(すなわち、薄膜化が困難であった)が、N−置換マレイミド構造を有するアクリル樹脂との混合により、高いTgおよび光学的透明性という光学フィルムに要求される特性を保ちながら、絡み合い数N0を増加させることができ、混合後の樹脂組成物は高倍率での延伸が可能なN0の値を達成できた。この観点からは、N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂の成形性向上剤あるいは延伸性向上剤として機能することが確認された。そしてその機能は、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂との相溶性の高さの観点から、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂よりも高かった(表4参照)。さらに、偏光子保護フィルムへの使用に好適である、面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthが小さく、ほぼゼロである延伸フィルムを形成することも可能であった。
また、実施例3および比較例1,2に示すように、いずれか一方のアクリル樹脂における環構造の含有率を大きくすると相溶性が失われ、全ヘイズおよび内部ヘイズが1.0%を超える傾向が見られたが、双方のアクリル樹脂における環構造の含有率を大きくすると全ヘイズおよび内部ヘイズ1.0%以下を達成する相溶性が保たれた。実施例I群では、環構造の含有率が大きい場合においても、双方のアクリル樹脂における環構造の含有率が同程度の場合に相溶性が保たれる可能性が考えられた。
なお、参考例1,2に示すように、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂、およびN−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂のいずれも、PMMAと相溶した。そして、各実施例では、この参考例と同等のヘイズの小ささを達成できた。
[実施例II群]
実施例II群では、N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂と、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂とを含む樹脂組成物について評価した。
(実施例11)
製造例1で作製した主鎖にN−置換マレイミド構造を有するアクリル樹脂(A−1)と、製造例8で作製した主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂(A−8)とを、混合比(重量比)1:1でドライブレンドした後、実施例1と同様にして、アクリル樹脂(A−1)および(A−8)を含む樹脂組成物(E−11)から構成される厚さ180μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(E−11)のTgは122℃、Mwは16.1万、絡み合い点間分子量Me0は10500、絡み合い数N0は15.4、温度範囲TMは32℃であった。なお、双方の樹脂のペレットは、ドライブレンドした後に60℃の乾燥エアー中で24時間乾燥させた。
次に、形成したフィルムを逐次二軸延伸機(東洋精機製作所製、X−6S)を用いて、延伸温度を樹脂組成物(E−11)のTg+15℃、延伸倍率を2.0倍(MD方向)×2.0倍(TD方向)として、縦方向(MD方向)および横方向(TD方向)の順に逐次二軸延伸した。延伸後、延伸機から速やかにフィルムを取り出して冷却し、二軸延伸フィルム(FS−11)を得た。作製したフィルム(FS−11)の厚さは45μmであった。
参考例12)
製造例8で作製したアクリル樹脂(A−8)の代わりに、製造例9で作製したアクリル樹脂(A−9)を用いた以外は実施例11と同様にして、アクリル樹脂(A−1)および(A−9)を含む樹脂組成物(E−12)から構成される厚さ140μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(E−12)のTgは126℃、Mwは16.3万、絡み合い点間分子量Me0は14000、絡み合い数N0は12.0、温度範囲TMは30℃であった。
参考例13)
製造例1で作製したアクリル樹脂(A−1)の代わりに、製造例4で準備したアクリル樹脂(A−4)を用いた以外は実施例11と同様にして、アクリル樹脂(A−4)および(A−8)を含む樹脂組成物(E−13)から構成される厚さ150μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(E−13)のTgは130℃、Mwは16.8万、絡み合い点間分子量Me0は14100、絡み合い数N0は11.9、温度範囲TMは28℃であった。
(実施例14)
製造例1で作製したアクリル樹脂(A−1)の代わりに、製造例3で作製したアクリル樹脂(A−3)を用いた以外は実施例11と同様にして、アクリル樹脂(A−3)および(A−8)を含む樹脂組成物(E−14)から構成される厚さ170μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(E−14)のTgは132℃、Mwは15.1万、絡み合い点間分子量Me0は15500、絡み合い数N0は10.5、温度範囲TMは27℃であった。
次に、延伸温度を樹脂組成物(E−14)のTg+15℃とした以外は、形成したフィルムを実施例11と同様に逐次二軸延伸して、二軸延伸フィルム(FS−14)を得た。作製したフィルム(FS−14)の厚さは42μmであった。
(比較例11)
製造例1で作製したアクリル樹脂(A−1)の代わりに製造例2で作製したアクリル樹脂(A−2)を用い、製造例8で作製したアクリル樹脂(A−8)の代わりに製造例9で作製したアクリル樹脂(A−9)を用いた以外は実施例11と同様にして、アクリル樹脂(A−2)および(A−9)を含む樹脂組成物(C−11)から構成される厚さ155μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(C−11)のMwは16.6万であったが、Tgは複数観察された。なお、形成したフィルムは白濁していたため、二軸延伸フィルムの作製は省略した。
(参考例11)
製造例1で作製したアクリル樹脂(A−1)の代わりに、製造例5で作製したPMMA(A−5)を用いた以外は実施例11と同様にして、アクリル樹脂(A−8)およびPMMMA(A−5)を含む樹脂組成物(C−12)から構成される厚さ170μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(C−12)のMwは11.8万であったが、Tgは複数観察された。
実施例1114、比較例11および参考例11〜13の結果を以下の表3にまとめる。表3のフィルム厚さは、未延伸フィルムの厚さである。
Figure 0006309760
表3に示すように、環構造の種類がN−置換マレイミド構造およびラクトン環構造であり、互いに異なる場合においても、当該異なる種類の環構造を主鎖に有するアクリル樹脂同士が相溶し、全ヘイズおよび内部ヘイズが1.0%以下の光学的に透明なフィルム(未延伸フィルムおよび延伸フィルム)が得られる領域が存在することが確認された。また、偏光子保護フィルムへの使用に好適である、面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthが小さく、ほぼゼロである延伸フィルムを形成することも可能であった。
なお、参考例11に示すように、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂はPMMAとの相溶性が低く、全ヘイズおよび内部ヘイズともに1.0%を超えた。
[実施例III群]
実施例III群では、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂と、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂とを含む樹脂組成物について評価した。
(実施例21)
製造例6で作製した主鎖にグルタルイミド構造を有するアクリル樹脂(A−6)と、製造例8で作製した主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂(A−8)とを、混合比(重量比)1:1でドライブレンドした後、実施例1と同様にして、アクリル樹脂(A−6)および(A−8)を含む樹脂組成物(E−21)から構成される厚さ180μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(E−21)のTgは120℃、Mwは11.5万、絡み合い点間分子量Me0は12500、絡み合い数N0は10.7、温度範囲TMは26℃であった。なお、双方の樹脂のペレットは、ドライブレンドした後に60℃の乾燥エアー中で24時間乾燥させた。
次に、形成したフィルムを逐次二軸延伸機(東洋精機製作所製、X−6S)を用いて、延伸温度を樹脂組成物(E−21)のTg+15℃、延伸倍率を2.0倍(MD方向)×2.0倍(TD方向)として、縦方向(MD方向)および横方向(TD方向)の順に逐次二軸延伸した。延伸後、延伸機から速やかにフィルムを取り出して冷却し、二軸延伸フィルム(FS−21)を得た。作製したフィルム(FS−21)の厚さは45μmであった。
(比較例21)
製造例8で作製したアクリル樹脂(A−8)の代わりに、製造例9で作製したアクリル樹脂(A−9)を用いた以外は実施例21と同様にして、アクリル樹脂(A−6)および(A−9)を含む樹脂組成物(C−21)から構成される厚さ105μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(C−21)のMwは11.3万であったが、Tgは複数観察された。なお、形成したフィルムは白濁していたため、二軸延伸性のフィルムの作製は省略した。
(比較例22)
製造例6で作製したアクリル樹脂(A−6)の代わりに、製造例7で作製したアクリル樹脂(A−7)を用いた以外は実施例21と同様にして、アクリル樹脂(A−7)および(A−8)を含む樹脂組成物(C−22)から構成される厚さ170μmのフィルム(未延伸フィルム)を形成した。樹脂組成物(C−22)のMwは13.8万であったが、Tgは複数観察された。なお、形成したフィルムは白濁していたため、二軸延伸性のフィルムの作製は省略した。
実施例21および比較例21,22の結果を以下の表4にまとめる。表4のフィルム厚さは、未延伸フィルムの厚さである。
Figure 0006309760
表4に示すように、環構造の種類がグルタルイミド構造およびラクトン環構造であり、互いに異なる場合においても、当該異なる種類の環構造を主鎖に有するアクリル樹脂同士が相溶し、全ヘイズおよび内部ヘイズが1.0%以下の光学的に透明なフィルム(延伸フィルム)が得られる領域が存在することが確認された。また、樹脂組成物の延伸性に寄与すると考えられる絡み合い点間分子量Me0および絡み合い数N0の変化に着目すると、例えば、グルタルイミド構造を有するアクリル樹脂について、元々その絡み合い数N0が低く(表1参照)、高倍率での延伸が困難であった(すなわち、薄膜化が困難であった)が、ラクトン環構造を有するアクリル樹脂との混合により、高いTgおよび光学的透明性という光学フィルムに要求される特性を保ちながら、絡み合い数N0を増加させることができ、混合後の樹脂組成物は高倍率での延伸が可能なN0の値を達成できた。この観点からは、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂の成形性向上剤あるいは延伸性向上剤として機能することが確認された。
また、偏光子保護フィルムへの使用に好適である、面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthが小さく、ほぼゼロである延伸フィルムを形成することも可能であった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来の樹脂組成物と同様の用途、例えば光学フィルムの製造に利用できる。

Claims (18)

  1. 主鎖に環構造Xを有する熱可塑性アクリル樹脂(A)、および
    前記環構造Xとは異なる環構造Yを主鎖に有し、前記アクリル樹脂(A)と相溶する熱可塑性アクリル樹脂(B)、を含み、
    光学的に等方である熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記アクリル樹脂(A)が、熱可塑性アクリル樹脂(C)に対して前記環構造Xを形成する環化反応を進行させて得た樹脂であり、
    前記アクリル樹脂(B)が、前記環構造Yを有する単量体を含む単量体群の重合により形成された樹脂である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記環構造Xが、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、N−置換マレイミド構造、および無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
    前記環構造Yが、前記群から前記環構造Xが属する構造を除いた群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記環構造Xが、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、および無水グルタル酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
    前記環構造Yが、N−置換マレイミド構造、および無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記アクリル樹脂(A)における前記環構造Xの含有率が2重量%以上30重量%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記アクリル樹脂(B)における前記環構造Yの含有率が2重量%以上40重量%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 前記アクリル樹脂(A)および前記アクリル樹脂(B)の双方が、いずれも光学的に等方な樹脂である、請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 以下の式(I)に示される、動的粘弾性スペクトルのゴム状平坦領域における絡み合い点間分子量Me0が10000以上、かつ以下の式(II)に示される絡み合い数Nが10以上500以下となる温度範囲が25℃以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Me0=3cRT0/E’0 ・・・(I)
    N=(MwE’)/(3cRT)・・・(II)
    [式(I),(II)において、
    cは、25℃における前記熱可塑性樹脂組成物の密度(g・m-3
    Rは、気体定数(8.31J・K-1・mol-1
    Tは、前記熱可塑性樹脂組成物の温度(K)
    E’は、前記温度Tにおける前記熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率(Pa)
    0は、前記熱可塑性樹脂組成物における前記ゴム状平坦領域の中間点の温度(K)
    E’0は、前記温度T0における前記熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率(Pa)
    Mwは、前記熱可塑性樹脂組成物の重量平均分子量、である]
  9. 以下の式(III)に示される、前記ゴム状平坦領域における絡み合い数N0が9以上である、請求項8に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    0=Mw/Me0 ・・・(III)
  10. 主鎖に環構造Xを有する熱可塑性アクリル樹脂(A)、および
    前記環構造Xとは異なる環構造Yを主鎖に有し、前記アクリル樹脂(A)と相溶する熱可塑性アクリル樹脂(B)、を含み、
    前記環構造Xが、グルタルイミド構造、および無水グルタル酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
    前記環構造Yが、N−置換マレイミド構造、および無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
    延伸により正の位相差を発現する、熱可塑性樹脂組成物。
  11. 主鎖に環構造Xを有する熱可塑性アクリル樹脂(A)、および
    前記環構造Xとは異なる環構造Yを主鎖に有し、前記アクリル樹脂(A)と相溶する熱可塑性アクリル樹脂(B)、を含み、
    前記環構造Xが、グルタルイミド構造、および無水グルタル酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
    前記環構造Yが、N−置換マレイミド構造、および無水マレイン酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
    以下の式(I)に示される、動的粘弾性スペクトルのゴム状平坦領域における絡み合い点間分子量Me 0 が10000以上、かつ以下の式(II)に示される絡み合い数Nが10以上500以下となる温度範囲が25℃以上である、熱可塑性樹脂組成物。
    Me 0 =3cRT 0 /E’ 0 ・・・(I)
    N=(MwE’)/(3cRT)・・・(II)
    [式(I),(II)において、
    cは、25℃における前記熱可塑性樹脂組成物の密度(g・m -3
    Rは、気体定数(8.31J・K -1 ・mol -1
    Tは、前記熱可塑性樹脂組成物の温度(K)
    E’は、前記温度Tにおける前記熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率(Pa)
    0 は、前記熱可塑性樹脂組成物における前記ゴム状平坦領域の中間点の温度(K)
    E’ 0 は、前記温度T 0 における前記熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率(Pa)
    Mwは、前記熱可塑性樹脂組成物の重量平均分子量、である]
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物から構成されるフィルム。
  13. 内部ヘイズが1.0%以下である、請求項12に記載のフィルム。
  14. 延伸フィルムである、請求項12または13に記載のフィルム。
  15. 二軸延伸フィルムである、請求項1214のいずれかに記載のフィルム。
  16. 波長550nmの光に対する面内位相差Reが5nm以下であり、前記光に対する厚さ方向の位相差Rthの絶対値が5nm以下である、請求項1215のいずれかに記載のフィルム。
  17. 請求項1216のいずれかに記載のフィルムを備える偏光板。
  18. 請求項1216のいずれかに記載のフィルムを備える画像表示装置。
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