JP2012048890A - 全固体リチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 無機固体からなる正極層、電解質層および負極層を含む全固体リチウムイオン電池であって、前記正極層にLi1−xAyMPO4である正極活物質とリチウムイオン伝導性の固体電解質が含まれており、前記固体電解質の前記正極活物質に対する質量比の値が1/9以上9以下である全固体リチウムイオン電池。
但し、xは0≦x≦0.1、yは0≦y≦0.1を満たし、AはAl、W、Tiから選ばれる1種以上であり、MはFe、Mn、Co、Niから選ばれる1種以上である。
【選択図】図1
Description
そのため電極活物質が分解されてその機能を果たさなくなったり、イオン伝導を阻害する化合物が生成されてしまう問題が生ずる事となる。
従って、電極層−固体電解質層の界面が焼成によって物理的に良好に接合されたとしても、この界面や電極層中の電極活物質と固体電解質間の粒界に生成された化合物によってリチウムイオンの移動抵抗が大きくなり、放電容量が理論容量まで遠くおよばない結果となる。さらに、前記生成化合物によって、設計電圧が得られないこともある。
また、電極の未焼成体のみを焼成することにより電極層の焼結体のみを作成し、その後固体電解質層の未焼成体と共に再度焼結する場合や、固体電解質層を接着する場合もある。このような場合も電極層の焼結時に電極層中の電極活物質と固体電解質間の粒界において両者が化学反応してしまう。
このことは、特に正極において顕著である。
無機固体からなる正極層、電解質層および負極層を含む全固体リチウムイオン電池であって、
前記正極層にLi1.3−xAyMPO4である正極活物質とリチウムイオン伝導性の固体電解質が含まれており、
前記固体電解質の前記正極活物質に対する質量比の値が1/9以上9以下である全固体リチウムイオン電池。
但し、xは0≦x≦0.5、yは0≦y≦0.5を満たし、AはAl、Mg、W、Ti、Na、から選ばれる1種以上であり、MはFe、Mn、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる1種以上である。
(構成2)
前記正極活物質が炭素で被覆されている構成1に記載の全固体リチウムイオン電池。
(構成3)
前記正極層に導電助剤が1質量%以上20質量%以下含まれている構成1または2に記載の全固体リチウムイオン電池。
(構成4)
前記負極層にLi4Ti5−xRyO12である負極活物質とリチウムイオン伝導性の固体電解質が含まれており、
前記固体電解質の前記負極活物質に対する質量比の値が1/9以上10以下である構成1から3のいずれかに記載の全固体リチウムイオン電池。
但し、xは0≦x≦0.5、yは0≦y≦0.5を満たし、RはMg、Al、Wから選ばれる1種以上である。
(構成5)
前記負極活物質が炭素で被覆されている構成4に記載の全固体リチウムイオン電池
(構成6)
前記リチウムイオン伝導性の固体電解質はLi0.8+x+zEyG2−jSizP3−zO12の結晶を含むことを特徴とする構成1から5のいずれかに記載の全固体リチウムイオン電池。
但し、x、y、zは0≦x≦0.8、0≦z≦0.6、yは0≦y≦0.6、jは0≦j≦0.6を満たし、EはAl、Gaから選ばれる1種以上、GはGe、Ti、Zr、Y、Scから選ばれる1種類以上である。
また、起電力が高いほど、より正極活物質は酸化力が高くなり、負極活物質は還元力が高くなるため、焼成時の分解やイオン伝導を大きく阻害する化合物の生成がより生じやすい。しかし、本発明によれば、より高い起電力を有する全固体リチウムイオン二次電池を得ることができる。
ここで、Li1.3−xAyMPO4において、xは0≦x≦0.5、yは0≦y≦0.5を満たし、AはAl、Mg、W、Ti、Naから選ばれる1種以上であり、MはFe、Mn、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる1種以上である。
このなかでも上記式中においてAはAl、Mg、W、Ti、Naのから選ばれる1種であって良い。また、MはFe、Mn、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる1種であって良い。特にMはNiとCoの固溶体が最も好ましい。CoとNiの比率は1:1が好ましい。また、上記式において、xの範囲は0.39≦x≦0.5がより好ましく、0.35≦x≦0.40が最も好ましい。
好ましい正極活物質は、具体的にLi0.95Al0.05Ni0.5Co0.5PO4、Li0.95Al0.05CoPO4、である。
より具体的にはLi4Ti5O12、Li4Ti4.95Al0.05O12、Li3Fe2(PO4)3、LiTi2(PO4)3が好ましい。
固体電解質層の作製において、または電極層の作製において電極層中に固体電解質を含有させる為には、上記ガラスセラミックスの粉末、またはガラスセラミックスの原ガラスの粉末を使用することができる。原ガラスの粉末を使用する場合は固体電解質層や電極層の焼成過程においてガラス粉末中に結晶が析出しガラスセラミックスとなる。すなわち、上記結晶を析出する原ガラスは、焼結後にリチウムイオン伝導性を発現する無機固体である。
酸化物基準のmol%表示で、
Li2O:10〜25%、および
Al2O3+Ga2O3:0.5〜15%、および
TiO2+GeO2+ZrO2+Y2O3+Sc2O3:25〜50%、および
SiO2:0〜15%、および
P2O5:26〜40%
の各成分を含有するガラスを溶融、急冷することで得ることができる。
ここで、電極層中の活物質周囲の被覆層の厚さは電極層を削り出し、微粉末状態にした試料をTEM(透過型電子顕微鏡)観察することで確認することができる。また、被覆層の存在面積割合は3次元の測定は困難であるため、TEM像に現われる粒界の線の長さの合計に対する保護層の長さの割合を被覆層の面積割合とする。TEMで観察ができない場合はEPMAによるマッピング分析によって観察し、同様に存在面積割合を求める。保護層の存在面積割合は電池の全ての部位について測定しなくとも良く、任意に選んだ部位のTEM観察像において測定した値を用いることができる。また、特異的にごく限られた一部の部位のみ(例えば電極層の体積の3%以下)で保護層の存在面積割合が他の部位と異なっていても、他の部位が本発明で規定する被覆層の面積割合に合致するのであれば、その電池は本発明の効果を得ることができる。
導電助剤の含有率は、電池容量と電極層の電子伝導性のバランスを考慮し、含まれる電極層の電極材料(すなわち、正極材料または負極材料)全体に対し、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上10質量%以下であることが最も好ましい。導電助剤は、炭素やチタンやニッケル、クロム、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属や白金、金、ロジウムなどの貴金属を含むことができる。
すなわち、電極層前駆体、固体電解質層前駆体をそれぞれ焼成した後に積層し、再度焼成して各層を接合する方法や、いずれかの層を焼成して焼結体とした後に当該焼結体上に前駆体を積層し、焼結体と前駆体を同時に焼成して接合する方法や、二以上の層の前駆体を積層し同時に焼成して焼結体としながら層間を接合する方法などである。
電極層前駆体、固体電解質層前駆体とはそれぞれ、電極層の未焼成体、固体電解質層の未焼成体を意味する。
電極層前駆体に含む固体電解質粉末の平均粒子径は反応面積を上げるため、0.1μm〜10μmが好ましく、0.1μm〜1μmがより好ましく、0.1μm〜0.6μmが最も好ましい。
電子伝導助材粉末の平均粒子径は伝導度を上げるため、10nm〜3μmが好ましく、10nm〜1μmがより好ましく、10nm〜50nmが最も好ましい
なお、平均粒子径はレーザー回折法によって測定した時のD50(累積50%径)の値であり、具体的には日機装株式会社製の粒度分析計マイクロトラックMT3300EXIIまたはベックマン・コールター社製サブミクロン粒子アナライザーN5によって測定した値を用いることができる。なお、前記平均粒子径は体積基準で表わした値である。
ここでグリーンシートとは、焼成前のガラス、ガラスセラミックス、セラミックス等の粉末に有機バインダー、可塑剤、溶剤等を混合してスラリーとし、当該スラリーを薄板状に成形後、溶剤を揮発させた未焼成体を意味することができる。この成形は、ドクターブレードやカレンダ法、スピンコートやディップコーティングなどの塗布法、印刷法、ダイコーター法、スプレー法等により行うことができる。焼成前のグリーンシートは柔軟であり、任意の形状に切断することや、積層することも可能である。
固体電解質層前駆体を焼成する際の最高温度は850℃〜1100℃が好ましく、900℃〜1050℃がより好ましく、950℃〜1000℃が最も好ましい。
酸素分圧を低減させることを可能にする材料とは、雰囲気中の酸素と燃焼反応を起こすことが可能な材料であることが好ましい。具体的には炭素系材料あるいは、炭素系材料に金属粒子を分散させたシートであることが好ましく、グラファイトからなるセッター、あるいはFeの微粒子を分散させたグラファイトからなるセッターが最も好ましい。
焼結後の固体電解質層の厚さは、負極と正極を隔離することができれば十分であり薄いほうが好ましいが、機械的強度との兼ね合いからに1μm〜100μmが好ましく、1μm〜50μmがより好ましく、1〜20μmが最も好ましい。
[リチウムイオン伝導ガラスセラミックスの作製]
原料としてH3PO4、Al(PO3)3、Li2CO3、SiO2、TiO2を使用し、これらを酸化物換算のmol%でP2O5を35.0%、Al2O3を7.5%、Li2Oを15.0%、TiO2を38.0%、SiO2を4.5%といった組成になるように秤量して均一に混合した後に、白金ポットに入れ、電気炉中1500℃でガラス融液を撹拌しながら4時間加熱熔解した。その後、ガラス融液を流水中に滴下させることにより、フレーク状ガラスを得た。
前記フレーク状ガラスをそれぞれラボスケールのジェットミルにより粉砕して、ジルコニア製の回転ローラーにより分級を行い、平均粒子径20μmの粉末とした。この粉末を遊星ボールミル、アトライター、ビーズミル等で更に粉砕し、平均粒子径0.6μmを有するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの原ガラス粉末(以後原ガラス粉末とする)を得た。
原ガラス粉末に、水に分散させたアクリル樹脂に分散剤を添加し、ボールミルで12時間に亘り撹拌することでスラリーを調製した。このスラリーにおけるガラス微粒子の含有量は65.5質量%であり、アクリル樹脂の含有量は13.5質量%であった。かかるスラリーを、ドクターブレード法で離型処理を施したPETフィルム上に厚み20μmで成形し、80℃にて一次乾燥を、更に95℃で二次乾燥を行うことで、シート状物を得た。
PETフィルムを剥離した後のシート状物26枚を重畳し、等方加圧装置(CIP)を用いて196.1MPaにて10分間に亘り加圧を行うことで、緻密なグリーンシートを作製した。
グリーンシートをφ59.5mmに切り出し、1000℃で1時間焼成した。そして、焼成処理物をX線回折法で調査したところ、主結晶相がLi1+x+yAlxTi2−xSiyP3−yO12(式中、0≦x≦0.4、0<y≦0.6)であることが確認された。また、インピーダンス測定を行って求めたイオン伝導度は2.0×10−4Scm−1であった。厚さは380μm、直径はφ50mmであった。
(正極活物質の処理)
表1に記載の各正極活物質それぞれについて、表面処理を行った。正極活物質10gに変性エタノール40g、10mmのジルコニアボール(YTZボール、東ソー)を200g、250ccジルコニアポットに入れ、遊星ボールミルにて250rpm100分間粉砕処理を行った。その後、ジルコニアボールを0.5mm、300gに変更して、300rpm、100分間粉砕処理をおこなった。粉砕後の試料粒子径はD50で0.5μmであった。
粉砕試料に20重量%スクロース溶液2.5gを加え、乳鉢で混合、乾燥後に炭素坩堝に入れ、上方にグラファイト粉末の入った皿を配置し、N2雰囲気下600℃ 3時間焼成した。
負極活物質Li4Ti5O12について表面処理を行った。負極活物質10g(石原産業株式会社製・LC855−17C、D50 20μm)に20重量%スクロース溶液2.5gを加え、乳鉢で混合、乾燥後に炭素坩堝に入れ、上方にグラファイト粉末の入った皿を配置し、N2雰囲気下600℃、3時間焼成した。
表1に示すように、表面処理をした各正極活物質と、原ガラス粉末、電子伝導助剤(カーボン・ナノファイバー、VGCF(登録商標)昭和電工株式会社製)、バインダー(オリコックスKC250、共栄化学)、分散剤(フローレンG700、共栄化学)、溶剤(変性エタノール、和光純薬)を混合し、正極スラリーを6種類作製した。
上記において焼成した直径50mmのリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス基板の片面に各正極スラリーを塗布、基板周縁部のスラリーをウエスでふき取り大気放置でスラリーを乾燥させた後、表1に示す焼成温度でN2雰囲気下10分間焼成した。
正極スラリーに含まれる原ガラス粉末は焼成後にリチウムイオン伝導性の固体電解質となった。
各正極スラリーを塗布、焼成したリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス基板の反対面に負極スラリーを塗布し、周縁部のスラリーをウエスでふき取り大気放置でスラリーを乾燥させた後、N2雰囲気で500℃、10分間焼成した。
作製した6種類の電池について、CC−CV充電を行った。充電電圧が6Vとなるまで充電レート0.1Cで充電し、その後充電電圧6Vを維持しながら、充電容量が理論容量に達したところで充電を終了した。充電後、CC放電を行った。放電レート0.025Cで放電し、放電電圧が0.01Vとなった時点で放電を終了した。前記充電、放電を1サイクルとし、4サイクルの充放電を行い、5サイクル目の充電終了後に開回路電圧を測定した。充放電の環境温度時の環境温度及び測定温度は120℃とした。
正極活物質と充放電容量の関係を表3と図1に示す。Li1−xMNPO4の正極活物質いずれもが、高い開回路電圧と高い放電容量を示した。
正極活物質に、Li1.3−xAyMPO4以外の材料としてLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4を用いた場合の評価を実施した。
表4に示すように、各正極活物質と、原ガラス粉末、電子伝導助剤(カーボン・ナノファイバー、VGCF(登録商標)昭和電工株式会社製)、バインダー(オリコックスKC250、共栄化学)、分散剤(フローレンG700、共栄化学)、溶剤(変性エタノール、和光純薬)を混合し、正極スラリーを3種類作製した。
上記実施例において焼成した直径50mmのリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス基板の片面に各正極スラリーを塗布、基板周縁部のスラリーをウエスでふき取り大気放置でスラリーを乾燥させた後、表4に示す焼成温度でN2雰囲気下10分間焼成した。
正極スラリーに含まれる原ガラス粉末は焼成後にリチウムイオン伝導性の固体電解質となった。
各正極スラリーを塗布、焼成したリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス基板の反対面に負極スラリーを塗布し、周縁部のスラリーをウエスでふき取り大気放置でスラリーを乾燥させた後、N2雰囲気で500℃10分間焼成した。
作製した3種類の電池について、CC−CV充電を行った。充電電圧が4Vとなるまで充電レート0.1Cで充電し、その後充電電圧4Vを維持しながら、充電容量が理論容量に達したところで充電を終了した。充電後、CC放電を行った。放電レート0.025Cで放電し、放電電圧が0.01Vとなった時点で放電を終了した。前記充電、放電を1サイクルとし、4サイクルの充放電を行い、5サイクル目の充電終了後に開回路電圧を測定した。充放電の環境温度時の環境温度及び測定温度は120℃とした。
評価結果を表5に示す。もっとも高い開回路電圧を示したLiCoO2でも充電後の開回路電圧は0.4Vであり、放電も確認できなかった。正極活物質の機能は認められなかった。
電極中の固体電解質と正極活物質の比率を替え、それ以外は上記実施例と同様に電池を作製し、放電容量を測定した。使用した電極活物質はLiFePO4とした。結果を表6に示す。
固体電解質/正極活物質比が1/9未満であると、焼成時の反応によって、電極中で機能する固体電解質がほぼ消失してしまうことにより、急激に放電容量が低下し、電池としての機能が期待できなくなる。
Claims (6)
- 無機固体からなる正極層、電解質層および負極層を含む全固体リチウムイオン電池であって、前記正極層にLi1.3−xAyMPO4である正極活物質とリチウムイオン伝導性の固体電解質が含まれており、前記固体電解質の前記正極活物質に対する質量比の値が1/9以上9以下である全固体リチウムイオン電池。
但し、xは0≦x≦0.5、yは0≦y≦0.5を満たし、AはAl、Mg、W、Ti、Naから選ばれる1種以上であり、MはFe、Mn、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる1種以上である。 - 前記正極活物質が炭素で被覆されている請求項1に記載の全固体リチウムイオン電池。
- 前記正極層に導電助剤が1質量%以上20質量%以下含まれている請求項1または2に記載の全固体リチウムイオン電池。
- 前記負極層にLi4Ti5−xRyO12である負極活物質とリチウムイオン伝導性の固体電解質が含まれており、前記固体電解質の前記負極活物質に対する質量比の値が1/9以上10以下である請求項1から3のいずれかに記載の全固体リチウムイオン電池。
但し、xは0≦x≦0.5、yは0≦y≦0.5を満たし、RはMg、Al、Wから選ばれる1種以上である。 - 前記負極活物質が炭素で被覆されている請求項4に記載の全固体リチウムイオン電池
- 前記リチウムイオン伝導性の固体電解質はLi0.8+x+zEyG2−jSizP3−zO12の結晶を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の全固体リチウムイオン電池。
但し、x、y、zは0≦x≦0.8、0≦z≦0.6、yは0≦y≦0.6、jは0≦j≦0.6を満たし、EはAl、Gaから選ばれる1種以上、GはGe、Ti、Zr、Y、Scから選ばれる1種類以上である。
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