JP2012047857A - 波長可変干渉フィルター、光モジュール、及び光分析装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エタロン5は、第1基板51に設けられた固定ミラー56と、第2基板52に設けられ、固定ミラー56とギャップGを介して対向する可動ミラー57と、第1基板51の第2基板52に対向する面に設けられた第1電極541と、第2基板52の第1基板51に対向する第1面52Aに設けられ、第1電極541と離間して設けられた第2電極542と、第2基板の第2面52Bでかつ、平面視において、少なくとも可動ミラー57を覆う撓み防止膜53と、撓み防止膜53の面方向に作用する内部応力の方向と、可動ミラー57及び第2電極542の面方向に作用する内部応力の方向とは同一方向である。
【選択図】図3
Description
この特許文献1の波長可変干渉フィルターでは、ギャップ間隔を調整するために、一対の反射膜の互いに対向する面に、駆動電極が対向配置されており、各駆動電極に駆動電圧を印加することで、静電引力によりギャップ間隔を調整することが可能となる。これにより、波長可変干渉フィルターは、ギャップ間隔に応じた特定波長の光のみを透過させることが可能となる。すなわち、波長可変干渉フィルターは、入射光を一対の反射膜間で光を多重干渉させ、多重干渉により互いに強め合った特定波長の光のみを透過させる。
上記のように、波長可変干渉フィルターは、ギャップ間隔を調整することで、所望の波長の光のみを透過させるものであるため、高いギャップ精度が要求される。
このように、各駆動電極や反射膜の内部応力により、基板が撓んでしまうと、駆動電極に駆動電圧が印加されていない初期状態において、反射膜にも撓みが生じ、波長可変干渉フィルターの分解能が低下してしまうという問題がある。
また、第2電極が、複数の電極層により構成される場合、これらの電極層のそれぞれの内部応力の方向は異なっていてもよく、第2電極全体に着目した際に、第2反射膜や撓み防止膜の内部応力と同じ方向であればよい。第2反射膜においても同様であり、第2反射膜として誘電多層膜を用いる場合、誘電多層膜を構成する各層の内部応力の方向がそれぞれ異なっていてもよく、第2反射膜全体に着目した際に、第2電極や撓み防止膜の内部応力の方向と同一方向であればよい。
しかし、本発明では、撓み防止膜が第2基板の第2面に形成されており、この撓み防止膜の内部応力が第2反射膜や第2電極の内部応力と同一方向となる。この撓み防止膜の圧縮応力により第2基板に作用する曲げモーメントは、第2基板を第1基板に向かって凸状に撓ませようとする第2反射膜や第2電極の圧縮応力により作用する曲げモーメントと打ち消し合い、第2基板の撓みを低減させることができる。さらに、本発明では、撓み防止膜は、平面視において、少なくとも第2反射膜を覆って設けられるので、第2基板における第2反射膜が形成される部分の撓みが特に低減され、第2反射膜の反りが低減される。従って、第1反射膜及び第2反射膜を平行にすることができるため、波長可変干渉フィルターの分解能を向上させることができる。
本発明によれば、第2反射膜の内部応力、厚み寸法、面積の積と、第2電極の内部応力、厚み寸法、面積の積との和が、撓み防止膜の内部応力、厚み寸法、撓み防止膜のうち第1基板及び第2基板の接合部分に重なる領域を除いた面積の積と同一となるように設定されている。このため、第2反射膜及び第2電極の内部応力が第2基板に作用する曲げモーメントと、撓み防止膜の内部応力が第2基板に作用する曲げモーメントとは同一、かつその方向が逆となるので、双方の曲げモーメントがつりあう関係となり、第2基板の撓みをより確実に低減できる。従って、第1電極および第2電極に駆動電圧を印加しない初期状態において、第1反射膜と第2反射膜とを平行にすることができ、波長可変干渉フィルターの分解能をより向上させることができる。
本発明によれば、第2電極を絶縁膜で覆うことにより、第1電極及び第2電極間で、放電等による電流のリークを確実に防止でき、第1電極及び第2電極に設定電圧に応じた所望の電荷を保持させることができる。これにより、第1反射膜及び第2反射膜の間のギャップ間隔を精度良く制御することができ、波長可変干渉フィルターから所望の波長の光を精度良く取り出すことができる。
また、第2電極及び絶縁膜で構成される積層膜の内部応力の方向と、第2反射膜の内部応力の方向と、撓み防止膜の内部応力の方向とが同一方向であるので、上記発明と同様に、これらの膜の内部応力により第2基板に作用する曲げモーメントが互いに打ち消しあう。したがって、上記発明と同様に、第2基板の撓みによる第2反射膜の反りが低減され、波長可変干渉フィルターの分解能を向上させることができる。
このため、第2反射膜及び積層膜の内部応力が第2基板に作用する曲げモーメントと、撓み防止膜の内部応力が第2基板に作用する曲げモーメントとは同一で、双方の曲げモーメントがつりあう関係となり、第2基板の撓みをより確実に低減できる。従って、第1電極および第2電極に駆動電圧を印加しない初期状態において、第1反射膜と第2反射膜とを平行にすることができ、波長可変干渉フィルターの分解能をより向上させることができる。
本発明によれば、第2撓み防止膜は、第1撓み防止膜の平面視における中心を対称の中心点として、点対称となる位置に形成される。これによれば、電極間に電圧を印加して基板を撓ませる際に、撓みのバランスを取ることができ、第1反射膜及び第2反射膜を平行に維持でき、ギャップ精度をより高く維持できる。
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.測色装置の概略構成〕
図1は、本発明に係る第1実施形態の波長可変干渉フィルターを備える測色装置(光分析装置)の概略構成を示す図である。
この測色装置1は、図1に示すように、被検査対象Aに光を射出する光源装置2と、本発明の光モジュールである測色センサー3と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備えている。そして、この測色装置1は、光源装置2から射出される光を被検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち被検査対象Aの色を分析して測定するモジュールである。
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、被検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれており、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから被検査対象Aに向かって射出する。
測色センサー3は、図1に示すように、本発明の波長可変干渉フィルターを構成するエタロン5と、エタロン5を透過する光を受光する受光手段としての受光素子31と、エタロン5で透過させる光の波長を可変する電圧制御部6とを備えている。また、測色センサー3は、エタロン5に対向する位置に、被検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、エタロン5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光のみを分光し、分光した光を受光素子31にて受光する。
受光素子31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光素子31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
図2は、エタロン5の概略構成を示す平面図であり、図3は、エタロン5の概略構成を示す断面図である。なお、図1では、エタロン5に検査対象光が図中下側から入射しているが、図3では、検査対象光が図中上側から入射するものとする。
エタロン5は、図2に示すように、平面正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図3に示すように、第1基板51、及び第2基板52を備えている。これらの2枚の基板51,52は、本実施形態では、SiO2(二酸化珪素)から構成される石英ガラス基材を用いている。なお、各基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されていてもよい。また、これらの中でも、各基板51,52の構成材料としては、例えばナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ金属を含有したガラスを用いてもよく、このようなガラスにより各基板51,52を形成することで、後述するミラー56,57や、各電極541,542の密着性や、基板51,52同士の接合強度を向上させることが可能となる。そして、これらの2つの基板51,52は、後述する接合部分としての接合面513、524が接合されることで、一体的に構成されている。
さらに、第1基板51と第2基板52との間には、固定ミラー56及び可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの寸法を調整するための静電アクチュエーター54が設けられている。
第1基板51は、厚みが例えば500μmの石英ガラス基材(SiO2:二酸化珪素)をエッチングにより加工することで形成される。具体的には、図3に示すように、第1基板51には、エッチングにより電極形成溝511と、ミラー固定部512とが形成される。
電極形成溝511は、図2に示すようなエタロン5を厚み方向から見た平面視(以降、エタロン平面視と称す)において、平面中心点を中心とした円形に形成されている。
ミラー固定部512は、エタロン平面視において、電極形成溝511の中心部から第2基板52側に突出して形成される。
ここで、静電アクチュエーター54を駆動させる際には、電圧制御部6(図1参照)により、一対の第1電極パッド541Pのうちのいずれか一方にのみに電圧が印加される。そして、他方の第1電極パッド541Pは、第1電極541の電荷保持量を検出するための検出端子として用いられる。
なお、本実施形態では、固定ミラー56として、TiO2−SiO2系の誘電体多層膜のミラーを用いる例を示すが、分光可能な波長域として可視光全域をカバーできるAg合金単層のミラーを用いる構成としてもよい。
第2基板52は、厚みが例えば200μmの石英ガラス基材(SiO2:二酸化珪素)をエッチングにより加工することで形成される。
また、第2基板52には、図2に示すように、エタロン平面視において、基板中心点を中心とした円形の変位部521が形成される。この変位部521は、図3に示すように、円柱状の可動部522と、可動部522と同軸であり可動部522を保持する連結保持部523とを備えている。
ここで、この可動ミラー57は、上述した固定ミラー56と同一の構成のミラーであり、例えば直径が3mmの円形状で、かつ所定の厚み寸法T1を有し、本実施形態では、TiO2−SiO2系の誘電体多層膜のミラーが用いられる。
なお、第2電極542は、このような構成に限定されるものではなく、ITOまたはAu/Cr金属積層体のいずれか一方を用いた膜であってもよい。
また、第2電極パッド542Pも、第1電極パッド541Pと同様に、電圧制御部6に接続され、静電アクチュエーター54の駆動時には、一対の第2電極パッド542Pのうちのいずれか一方にのみに電圧が印加される。そして、他方の第2電極パッド542Pは、第2電極542の電荷保持量を検出するための検出端子として用いられる。
撓み防止膜53は、第2基板52と同一の屈折率を有する材質で構成されており、本実施形態では第2基板52と同一材質の石英ガラス材(SiO2:二酸化珪素)で構成されている。この撓み防止膜53は、可動ミラー57及び第2電極542が第2基板52の第1基板51と対向する側の下面に成膜形成される際に、可動ミラー57及び第2電極542の面方向に作用する内部応力(本実施形態では圧縮応力)により第1基板51に向けて凸状に撓む第2基板52の撓みを低減するものである。
すなわち、第2基板52の第1面52Aに第2電極542や可動ミラー57を成膜する際、これらの第2電極542や可動ミラー57の内部応力(圧縮応力)により、第2基板52は、第1基板51側に撓もうとする。ここで、可動ミラー57がTiO2−SiO2系の誘電体多層膜である場合、可動ミラー57の各層(TiO2層及びSiO2層)の内部応力、層厚み寸法、及び各層の平面視における面積の和が曲げモーメントとして第2基板52に作用する。ここで、可動ミラー57の第2基板52に作用する曲げモーメントがM1、可動ミラー57全体の内部応力がσ1、可動ミラー57の総厚み寸法がT1、エタロン平面視における可動ミラー57の面積がS1、各TiO2層の内部応力がσ11、TiO2層の厚み寸法がT11、TiO2層の層数がN11、各SiO2層の内部応力がσ12、SiO2層の厚み寸法がT12、SiO2層の層数がN12であるとすると、以下の関係式(1)が成立する。
M1∝σ1×T1×S1=(σ11×T11×N11×S1)+(σ12×T12×N12×S1)・・・(1)
同様に、第2電極542がITO/Cr/Auの積層体である場合、第2電極542の各層(ITO、Cr、Au)の内部応力、層厚み寸法、及び各層の平面視における面積の和が第2電極542の内部応力として作用する。ここで、第2電極542の第2基板52に作用する曲げモーメントがM2、第2電極542の内部応力がσ2、第2電極542の総厚み寸法がT2、エタロン平面視における第2電極542の面積がS2、ITO層の内部応力がσ21、ITO層の厚み寸法がT21、Cr層の内部応力がσ22、Cr層の厚み寸法がT22、Au層の内部応力がσ23、Au層の厚み寸法がT23であるとすると、以下の関係式(2)が成立する。
M2∝σ2×T2×S2=(σ21×T21×S2)+(σ22×T22×S2)+(σ23×T23×S2)・・・(2)
上記のように、可動ミラー57の内部応力σ1と、第2電極542の内部応力σ2とが同一方向であり、圧縮応力となる場合、第2基板52には、下記式(3)に示すような曲げモーメントM3が作用し、第2基板52を第1基板51側に撓ませようとする力となる。
M3=M1+M2・・・(3)
ところで、第2基板52の接合面524は、第1基板51に接合される部分であり、第2電極542、可動ミラー57、及び撓み防止膜53の内部応力の影響を受けず、撓みが生じない。一方、第2基板52の第2面52Bのうち、エタロン平面視において接合面524と重ならない部分は、第1基板51との間にギャップが形成される部分(ギャップ形成部)であり、この部分が、第2電極542、可動ミラー57、及び撓み防止膜53の内部応力の影響を受ける。従って、第2基板52の第2面52Bに形成される撓み防止膜53のうち、エタロン平面視においてこのギャップ形成部に重なる部分により、第2電極542や可動ミラー57の内部応力による第2基板52の撓みが防止される。
M4∝σ4×T4×S4・・・(4)
M4=M3・・・(5)
電圧制御部6は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーター54の第1電極541及び第2電極542に印加する電圧を制御する。
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、及び測色処理部43(分析処理部)などを備えて構成されている。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部6は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター54への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、測色センサー制御部42を制御して、エタロン5のミラー間ギャップを変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部43は、受光素子31から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光の光量を取得する。そして、測色処理部43は、上記により得られた各波長の光の受光量に基づいて、被検査対象Aにより反射された光の色度を算出する。
次に、上記エタロン5の製造方法について、図4及び図5に基づいて説明する。
エタロン5を製造するためには、第1基板51及び第2基板52をそれぞれ形成し、形成された第1基板51と第2基板52とを貼り合わせる。
まず、第1基板51の製造素材である厚み寸法が500μmの石英ガラス基板を用意し、この石英ガラス基板の表面粗さRaが1nm以下となるまで両面を精密研磨する。そして、第1基板51の第2基板52に対向する面に電極形成溝511形成用のレジスト61を塗布して、塗布されたレジスト61をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図4(A)に示すように、電極形成溝511が形成される箇所をパターニングする。
次に、図4(B)に示すように、電極形成溝511を所望の深さにエッチングし、電極固定面511Aを形成する。なお、ここでのエッチングとしては、ウェットエッチングが用いられる。
そして、第1基板51の第2基板52に対向する面にミラー固定面512A形成用のレジスト61を塗布して、塗布されたレジスト61をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図4(B)に示すように、ミラー固定面512Aが形成される箇所をパターニングする。
次に、ミラー固定面512Aが所望の位置までエッチングした後、図4(C)に示すように、レジスト61を除去する。
そして、同じく第1基板51の第2基板52と対向する側の面に、厚み寸法が0.1μmのTEOS膜をプラズマCVD法により成膜することで、図4(E)に示すように、第1電極541、電極固定面511A、接合面513、及びミラー固定面512Aに絶縁膜543を形成する。
以上により、第1基板51が形成される。
第2基板52の形成において、上記式(5)の関係を満たすように、第2電極542、可動ミラー57、及び撓み防止膜53を形成するために、予め各膜のスパッタリング条件を設定して、そのスパッタリング条件でスパッタリング法により各膜を成膜した際の内部応力を測定しておく。そして、シミュレーションにより、上記式(5)を満たす第2電極542や、可動ミラー57の厚み寸法や面積、撓み防止膜53の厚み寸法を決定しておく。なお、第2電極542や可動ミラー57の厚み寸法や面積は、エタロン5により検査対象光を分光させたい波長域に応じて設定される。
そして、図5(A)に示すように、第2基板52の第2面52Bに、設定したスパッタリング条件下で、レジスト62をスパッタリング法により成膜する。そして、レジスト62に対して連結保持部523を形成するためのパターンを形成し、これらに対応する領域のレジスト62のエッチングを行う。次に、石英ガラス基板をウェットエッチングすることで、図5(B)に示すように、厚さ50μmの連結保持部523が形成されるとともに、可動部522が形成される。
そして、Au/Cr層の上に、所望の電極パターンとなるレジストを形成し、Au/Cr層及びITO膜をフォトエッチングする。その後、第2基板52の第1基板51に対向する面に残ったレジストを除去することで、図5(C)に示すように、所定の厚み寸法T2を有する第2電極542を形成する。
ここで、第2基板52に第2電極542が成膜形成される際、第2電極542に作用する内部応力が圧縮応力となるように成膜形成されるため、図5(C)に示すように、第2基板52は、第1基板51側に向けて凸状に撓む。
そして、レジストを除去することで、図5(D)に示すように、第2電極542を形成した側の第1面52Aに直径が約3mmの円形状で、かつ所定の厚み寸法T1を有する可動ミラー57が形成される。
ここで、第2基板52に可動ミラー57が成膜形成される際に、可動ミラー57に作用する内部応力が圧縮応力となるように成膜形成されるため、図5(D)に示すように、第2基板52は、第1基板51側に向けて、さらに凸状に撓む。
そして、第2基板52の第2面52Bの全面に、所定の厚み寸法T4を有する二酸化珪素(SiO2)を成膜して、撓み防止膜53を形成する。これにより、さらに、撓み防止膜53は、第2電極542及び可動ミラー57の第2基板52に作用する曲げモーメントM3と同値の曲げモーメントM4を有するように形成される。これにより、第2電極542および可動ミラー57の内部応力が第2基板52に作用する曲げモーメントM3と、撓み防止膜53の内部応力が第2基板52に作用する曲げモーメントM4の双方がつりあう関係となり、図5(E)に示すように、第2基板52の撓みが矯正される。
次に、上述の第1基板形成工程及び第2基板形成工程で形成された各基板51,52を貼り合わせる。具体的には、各基板51,52に形成された第1接合膜513A及び第2接合膜524Aを構成するプラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与するために、O2プラズマ処理またはUV処理を行う。O2プラズマ処理は、O2流量30cc/分、圧力27Pa、RFパワー200Wの条件で30秒間実施する。また、UV処理は、UV光源としてエキシマUV(波長172nm)を用いて3分間処理を行う。プラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与した後、2つの基板51,52のアライメントを行い、第1接合膜513A及び第2接合膜524Aを重ね合わせて荷重をかけることにより、基板51,52同士を接合する。これにより、エタロン5が製造される。
上述の第1実施形態に係るエタロン5によれば、以下の効果を奏する。
(1)撓み防止膜53が第2基板52の第1基板51と対向する側と反対側の面の全面に成膜形成されており、この成膜形成の際に、撓み防止膜53の面方向に圧縮応力が作用する。このため、撓み防止膜53の面方向に作用する圧縮応力により、第2基板52が第1基板51と反対側に向けて凸状に撓むようになり、第2基板52の第1基板51に向かう凸状の撓みを低減できる。従って、初期状態における固定ミラー56及び可動ミラー57の間のギャップGの間隔を高精度に設定でき、固定ミラー56及び可動ミラー57を高精度に平行に維持できることで、分解能を向上させることができる。
(4)撓み防止膜53は第2基板52と同じ光学特性を有する材質である石英ガラス材(SiO2)で形成されているので、第2基板52に入射された光が撓み防止膜53と第2基板52との接合面で反射されることを防止できる。従って、入射光から特定波長の光のみを良好に透過させることができる。
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。
本実施形態のエタロンは、上述のエタロン5と同様の構成を備えるが、前記エタロン5が備える第2電極542は、ITO層と、Au/Crなどの金属積層体とで構成された積層体であった。これに対し、本実施形態のエタロンが備える第2電極は、ITO層のみを用いた1層構造であり、第2電極に絶縁膜が積層されている点で相違する。
なお、以下の説明では、前記第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態に係るエタロン5Aは、図6に示すように、第2基板52の第1基板51と対向する側の面において、第2電極542Aと、第2電極542Aを覆うSiO2を用いた絶縁膜544とを備える他は、上述のエタロン5と同様の構成を備える。ここで、本発明の積層膜は、第2電極542A及び絶縁膜544で構成される。
本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、第2電極542A及び絶縁膜544の各層の内部応力、膜厚み寸法、及び平面視における面積の積の和が第2基板52に作用する曲げモーメントとして作用する。ここで、第2電極542A及び絶縁膜544の第2基板52に作用する曲げモーメントがM5、積層膜の内部応力がσ5、積層膜の膜厚寸法がT5、積層膜の平面視における面積がS2、絶縁膜544の内部応力がσ24、絶縁膜544の厚み寸法がT24であるとすると、以下の関係式(6)が成立する。
M5∝σ5×T5×S2=(σ21×T21×S2)+(σ24×T24×S2)・・・(6)
なお、第2実施形態では、積層膜全体として内部応力の方向が、可動ミラー57や撓み防止膜53の内部応力の方向と一致していればよい。したがって、例えば積層膜、可動ミラー57、および撓み防止膜53の内部応力が圧縮応力である場合では、第2電極542及び絶縁膜544のいずれか一方が引張応力を有する膜であってもよく、積層膜の内部応力σ5として圧縮応力であればよい。
本実施形態では、第1電極541に積層される絶縁膜543に加えて、第2電極542Aには絶縁膜544が積層されるので、第1電極541及び第2電極542A間で、放電等による電流のリークを確実に防止でき、第1電極541及び第2電極542Aに設定電圧に応じた所望の電荷を保持させることができる。これにより、固定ミラー56及び可動ミラー57の間のギャップ間隔を精度良く制御することができ、エタロン5から所望の波長の光を精度良く取り出すことができる。
また、第2電極542Aは、前記第1実施形態と異なり、一層構造であり、第2電極542Aには絶縁膜543が成膜形成されているが、この場合でも上述の式(6)に基づいて、曲げモーメントM5を算出できる。そして、上述の式(7)を満たすように、第2電極542A及び絶縁膜543の各厚み寸法T21,T24を適宜設定すればよいので、前記第1実施形態の第2電極542と構成が異なる場合でも、前記第1実施形態と同様の効果を奏することができ、構成上の汎用性も向上できる。
以下、本発明に係る第3実施形態について説明する。
本実施形態のエタロンは、上述のエタロン5と同様の構成を備えるが、前記エタロン5が備える撓み防止膜53は、第2基板52の第2面52Bの全面に形成されていた。これに対し、本実施形態のエタロンが備える第1撓み防止膜としての撓み防止膜53Aは、第2基板52の第2面52Bのうち、エタロン平面視で可動ミラー57を覆う位置(可動部522の上面)にのみ形成される点で相違する。
なお、以下の説明では、前記第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態に係るエタロン5Bは、図7に示すように、第2基板52の第2面52Bのうち、可動部522の上面にのみ形成される撓み防止膜53Aを備える他は、上述のエタロン5と同様の構成を備える。すなわち、本実施形態での撓み防止膜53Aは、エタロン平面視で可動ミラー57を覆う位置にのみ形成されている。
本実施形態では、可動部522の上面に形成される撓み防止膜53Aのみで、第2電極542及び可動ミラー57に作用する内部応力により第2基板52に発生する撓みを矯正している。ここで、撓み防止膜53Aの厚み寸法T4は、上述した式(4)に基づいて設定されており、撓み防止膜53Aの内部応力により第2基板52に作用する曲げモーメントM4は、第2電極542および可動ミラー57の内部応力により第2基板52に作用する曲げモーメントM3と同値、かつその方向が逆となる。従って、第2基板52に作用する曲げモーメントが互いに打ち消しあうこととなり、基板撓みが防止される。
図8(A)に示すように、第2基板52の第1面52Aに、第2電極542及び可動ミラー57を形成する。この際、前記第1実施形態と同様に、第2基板52に第2電極542及び可動ミラー57に圧縮応力が面方向に作用するように成膜形成されるため、第2基板52は第1基板51側に向けて凸状に撓む。
さらに、第2基板52の第2面52Bに、上記スパッタリング条件下で、撓み防止膜53Aが形成される領域だけが露出するパターンのレジスト(リフトオフパターン)を形成し、シミュレーションで予め決定された厚み寸法T4の二酸化珪素(SiO2)を成膜する。また、撓み防止膜53Aに作用する内部応力(圧縮応力)の方向は、上述の第2電極542及び可動ミラー57に作用する内部応力(圧縮応力)の方向と同方向となるように、撓み防止膜53Aが第2基板52に成膜形成される。
そして、レジストを除去することで、図8(B)に示すように、撓み防止膜53Aを形成する。
以上により、撓み防止膜53Aを備え、撓みが矯正された第2基板52を形成する。
本実施形態では、撓み防止膜53Aが可動部522のみに形成されているので、可動部522に作用する曲げモーメントM4は、第2電極542及び可動ミラー57の第2基板52に作用する曲げモーメントM3を打ち消すので、固定ミラー56及び可動ミラー57の平行を精度良く維持できる。
また、撓み防止膜53Aが可動部522のみに形成されているので、可動部522の周囲を囲う連結保持部523であるダイアフラムが撓み易くなり、駆動電圧を第1電極541及び第2電極542に印加する際のダイアフラムの駆動時の制御を容易にできる。
さらに、可動部522の厚み寸法が増大するため、可動部522の剛性が大きくなり撓みにくくなる。このため、より確実に可動ミラー57の撓みを防止することができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、第2電極542,542A、絶縁膜544、可動ミラー57、及び撓み防止膜53,53Aに作用する内部応力は圧縮応力が作用するように第2基板52に成膜形成されていたが、引張応力が作用するように成膜形成されていてもよい。この場合でも、第2電極542,542A、絶縁膜544、可動ミラー57、及び撓み防止膜53,53Aに作用する内部応力の方向がそれぞれ同方向となるように成膜形成されていればよい。
また、図9に示すように、第2撓み防止膜としての撓み防止膜53Bは、連結保持部523に連続して形成されていなくてもよく、第1撓み防止膜が形成される可動面522Aのエタロン平面視における中心を対称の中心として、連結保持部523に点対称となるように断続的に形成されていてもよい。これによれば、撓み防止膜が点対称に形成されていない場合に比べると、電極間に電圧を印加して基板を撓ませる際に、撓みのバランスを取ることができ、ミラー間を平行に維持でき、ギャップ精度をより高く維持できる。
前記第2実施形態でのエタロン5Aの構成に対して、第3実施形態の撓み防止膜53Aを形成してもよい。
Claims (9)
- 第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板の前記第1基板に対向する第1面に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、
前記第2基板の前記第1面に設けられ、前記第1電極と離間して設けられた第2電極と、
前記第2基板の前記第1基板とは反対側の第2面でかつ、
前記第2基板を厚み方向に見た平面視において、少なくとも前記第2反射膜を覆う撓み防止膜と、を備え、
前記撓み防止膜の面方向に作用する内部応力の方向と、前記第2反射膜の面方向に作用する内部応力の方向と、前記第2電極の面方向に作用する内部応力の方向とは、同一方向である
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。 - 請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第2反射膜の面方向に作用する内部応力、前記第2反射膜の厚み寸法、及び前記平面視における前記第2反射膜の面積の積と、前記第2電極の面方向に作用する内部応力、前記第2電極の厚み寸法、及び前記平面視における前記第2電極の面積の積との和は、
前記撓み防止膜の面方向に生じる内部応力、前記撓み防止膜の厚み寸法、及び前記撓み防止膜のうち、前記平面視における前記第1基板及び前記第2基板の接合部分に重なる領域を除いた面積の積に等しい
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。 - 第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板の前記第1基板に対向する第1面に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、
前記第2基板の前記第1面に設けられ、前記第1電極と離間して設けられた第2電極、及び前記第2電極を覆う絶縁膜で構成される積層膜と、
前記第2基板の前記第1基板とは反対側の第2面でかつ、
前記第2基板を厚み方向に見た平面視において、少なくとも前記第2反射膜を覆う撓み防止膜と、を備え、
前記積層膜の面方向に作用する内部応力の方向と、前記第2反射膜の面方向に作用する内部応力の方向と、前記撓み防止膜の面方向に生じる内部応力の方向とは、同一方向である
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。 - 請求項3に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第2反射膜の面方向に作用する内部応力、前記第2反射膜の厚み寸法、及び前記平面視における前記第2反射膜の面積の積と、前記第2電極の面方向に作用する内部応力、前記第2電極の厚み寸法、及び前記平面視における前記第2電極の面積の積と、前記絶縁膜の面方向に作用する内部応力、前記絶縁膜の厚み寸法、及び前記平面視における前記絶縁膜の面積の積との和は、
前記撓み防止膜の面方向に生じる内部応力、前記撓み防止膜の厚み寸法、及び前記撓み防止膜のうち、前記平面視における前記第1基板及び前記第2基板の接合部分に重なる領域を除いた面積の積に等しい
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記撓み防止膜は、前記平面視において前記第2反射膜と同一形状及び同一位置に設けられた第1撓み防止膜と、前記第1撓み防止膜の前記平面視における中心点を対称の中心として、点対称となる位置に設けられた第2撓み防止膜と、を備えた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。 - 請求項1から請求項5のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記撓み防止膜は、前記第2基板の前記第2面の全面に形成された
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。 - 請求項1から請求項6のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記撓み防止膜の材質は、前記第2基板と同じ屈折率を有する材質で形成された
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。 - 請求項1から請求項7のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターを透過した検査対象光を受光する受光手段と、を備えた
ことを特徴とする光モジュール。 - 請求項8に記載の光モジュールと、
前記光モジュールの前記受光手段により受光された光に基づいて、前記検査対象光の光特性を分析する分析処理部と、を備えた
ことを特徴とする光分析装置。
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