JP2005308968A - 光学多層膜及び光学素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 基板表面に形成する光学多層膜において、厚さの薄い基板に光学多層膜を形成する場合でも基板の反りや変形を防止すると共に、透過率の低下を抑制できるようにする。
【解決手段】 基板3の表面3aに形成される光学多層膜5であって、互いの膜屈折率が異なり、前記表面3aに交互に積層された低屈折率層7及び高屈折率層9を備え、前記低屈折率層7が、酸化硅素にLiO、BeO、MgO、BaO、Al、CaO、P、TiO、ZrO、Nb、Ta、HfOの少なくとも1種類の金属化合物を含有して構成されている光学多層膜5を提供する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、基板表面に形成する光学多層膜及びこれを備えた光学素子に関する。
デジタルカメラ、顕微鏡等の各種光学機器やレンズ、ミラー等の光学素子には、波長カットフィルター、ダイクロイックフィルター等の光学多層膜が使用されている。この光学多層膜は、ガラス基板等の基板の表面に薄膜状の高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
これら高屈折率層及び低屈折率層は、その膜構造が安定して光学的再現性が高くなるように、また、光学特性の経時変化が発生しないように、イオンアシスト蒸着法、スパッタリング法により成膜される。
すなわち、これら2つの製法により成膜した場合には、高屈折率層及び低屈折率層の膜構造がアモルファス構造となる。また、これら2つの製法により形成した光学多層膜では、高屈折率層及び低屈折率層の膜密度が高く、膜中に水分が吸着し難くなるため、光学特性の経時変化が発生しない高屈折率層及び低屈折率層を形成することができる。
また、上述の光学多層膜や光学素子には、製品の多様化から、紫外領域から赤外領域までの広い波長領域で使用可能とすることが要求されている。このため、従来では、紫外領域から赤外領域までの広い波長領域において高い透過率を維持できるように酸化硅素によって低屈折率層を構成したものがある。なお、特許文献1に記載の高屈折率層や低屈折率層は、TiO膜やMgF膜から構成している。
近年、このような構成の光学多層膜を備える光学素子は小型化する傾向にあり、この小型化に伴って光学多層膜を形成する基板の薄型化が要求されている。
特開平8−254612号公報
しかしながら、基板表面に形成した高屈折率層や低屈折率層においては、内部応力が発生するため、基板を薄く形成した場合には、この内部応力によって基板に反りや変形が生じるという問題がある。特に、安価な酸化硅素を用いてイオンアシスト蒸着法やスパッタリング法により低屈折率層を形成した場合には、200〜300MPaの圧縮応力が発生するため、上述の圧縮応力によって基板の反りや変形も大きくなる。
そして、例えば、一辺30mm、厚さ0.3mmの矩形状に形成された基板に、酸化硅素を低屈折率層に用いて約40層の光学多層膜を形成した場合には、基板に100μm程度の反りが発生してしまう。ここで、光学多層膜においては光軸のずれに問題が発生しないように、基板の反り量を30μm以下とする必要があるが、基板に100μmもの反りが発生する光学素子では、基板や光学多層膜を通過した光線が曲がってしまい、所望の光学性能を得ることができないという問題がある。
一方、特許文献1に記載した光学多層膜では、圧縮応力を発生するTiO膜を高屈折率層として形成し、引張応力を発生するMgF膜を低屈折率層として形成している。このため、これらTiO膜及びMgF膜を交互に積層することにより、内部応力を相殺して内部歪みを低減し、クラックの発生を回避している。
しかしながら、MgF膜をイオンアシスト蒸着法で成膜する場合には、イオンアシスト蒸着時に酸素プラズマ、アルゴンプラズマ等のプラズマが発生するため、このプラズマエネルギーによってMgF膜においてフッ素脱離が発生する。このフッ素脱離は、マグネシウムとフッ素との結合エネルギーが弱く、この原子間結合がプラズマエネルギーによって切断されることに起因する。そして、このフッ素脱離が生じると、紫外領域において光の散乱による吸収を生じ、光学多層膜の透過率が極端に低下する。したがって、イオンアシスト蒸着法により形成されたMgF膜は、紫外領域や可視領域の光を反射させるミラー等に使用することができるが、紫外領域から可視領域までの光を透過させる透過型フィルターとして光学多層膜や光学素子を使用することができないという問題がある。
なお、透過型フィルターとして光学多層膜や光学素子を使用する場合には、光学多層膜や光学素子の透過率を95%以上とすることが最も望ましいが、少なくとも著しい光量の低下を招かないように透過率を85%以上とすることが望ましいといわれている。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、厚さの薄い基板に光学多層膜を形成する場合でも基板の反りや変形を防止すると共に、広い波長領域で透過率の低下を抑制できる光学多層膜及びこれを備えた光学素子の提供を目的としている。
上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提供する。
本発明の光学多層膜は、基板の表面に形成されるものであって、互いの膜屈折率が異なり、前記表面に交互に積層された低屈折率層及び高屈折率層を備え、前記低屈折率層が、酸化硅素にLiO、BeO、MgO、BaO、Al、CaO、P、TiO、ZrO、Nb、Ta、HfOの少なくとも1種類の金属化合物を含有して構成されていることを特徴とする。
この発明に係る光学多層膜によれば、低屈折率層が、酸化硅素を主成分とした構成となっているため、紫外領域から赤外領域までの広い波長領域において高い透過率を確保することができる。なお、紫外領域における上記低屈折率層の透過率は85%以上となる。
また、この低屈折率層は、酸化硅素にLiO、BeO、MgO、BaO、Al、CaO、P、TiO、ZrO、Nb、Ta、HfOの少なくとも1種類の金属化合物を加えた構成であるため、イオンアシスト蒸着法やスパッタリング法により低屈折率層を形成して、その内部応力を低く抑えることができる。この低屈折率層を構成する材料の内部応力は、圧縮応力であっても30MPa以下と極めて小さく、酸化硅素のみの場合の内部応力の1/10以下となる。したがって、基板の反りや変形を防止することができる。
なお、この内部応力低下の理由は、酸化硅素からなる低屈折率層では、硅素原子と酸素原子との強い原子間引力によってこれら原子同士で網目構造を作っているが、この構造に原子サイズの異なる前述の金属化合物が入り込んだ場合には、網目構造が崩れ、硅素原子と酸素原子との原子間引力を弱めるためである。
また、前記低屈折率層を構成する前記金属化合物の含有率の合計が、0.5重量%以上、5.0重量%未満であることを特徴とする。
この発明に係る光学多層膜において、酸化硅素に対する金属化合物の含有率を0.5重量%以上5.0重量%未満としたのは、含有率が0.5重量%未満の場合には、内部応力が十分に低減せず、基板の反りによって光学多層膜を通過する光線に曲がりが生じるためである。また、含有率が5.0重量%以上の場合には、低屈折率層の膜屈折率が1.55以上となり、膜設計の自由度が低下し、低屈折率層及び高屈折率層の積層数が増加するためである。
したがって、酸化硅素に対する金属化合物の含有率を0.5重量%以上5.0重量%未満とすることにより、低屈折率層の内部応力を確実に小さくすることができ、少ない層数で光学多層膜及び光学素子の設計を行うことができる。
さらに、前記低屈折率層の膜屈折率が、1.44以上1.55未満の範囲であることを特徴とする。
なお、低屈折率層の膜屈折率は、低屈折率層を構成する酸化硅素に対する前述の金属化合物の含有率を適宜変えることにより、変更することができる。
そして、低屈折率層の膜屈折率が1.44以上1.55未満となるように、前述の含有率を調整することにより、光学多層膜として十分な透過率を確保することができるため、低屈折率層の設計の自由度を確保することができ、少ない層数で光学多層膜及び光学素子の設計を行うことができる。
また、本発明の光学素子は、前記光学多層膜と、該光学多層膜を表面に形成する基板とを備えることを特徴とする。
この発明に係る光学多層膜によれば、厚さ0.5mm以下の極めて薄い基板に40層以上の光学多層膜を設けても、基板の反りや変形を防止することができる。また、基板を薄く形成できるため、光学素子の薄型化や小型化を図ることができる。
本発明の光学多層膜及び光学素子によれば、低屈折率層に、安価で紫外領域から赤外領域までの広い波長領域において高い透過率を有する酸化硅素を用いているため、高い透過率の光学多層膜及び光学素子を提供できると共に、光学多層膜及び光学素子の製造コストを削減できる。また、低屈折率層は、酸化硅素にLiO、BeO、MgO、BaO、Al、CaO、P、TiO、ZrO、Nb、Ta、HfOの少なくとも1種類の金属化合物を加えた構成であるため、その内部応力を低く抑えて基板の反りや変形を防止できる。
さらに、本発明の光学素子によれば、厚さの薄い基板に光学多層膜を設けても基板の反りや変形を防止することができるため、光学素子の薄型化や小型化を図ることができる。
以下、本発明による第1の実施形態について図1〜3を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、この実施の形態に係る光学素子1は、ガラス平板からなる基板3と、基板3の表面3aに形成された光学多層膜5とを備えている。基板3は、平面視略矩形の板状に形成されており、その寸法は、一辺30mm、厚さ0.2mmである。
光学多層膜5は、基板3の表面3aに低屈折率層7と高屈折率層9とを交互に20層ずつ、合計40層積層して構成したものである。ここで、低屈折率層7は酸化硅素(SiO)に酸化マグネシウム(MgO)を4.3重量%含有したものから構成され、高屈折率層9は低屈折率層7よりも膜屈折率が大きい酸化タンタル(Ta)から構成されている。
ここで、低屈折率層7の酸化硅素(SiO)に対する酸化マグネシウム(MgO)の含有率が4.3重量%の時の屈折率は1.471であり、また、透過率は99.7%(波長350nm)である。したがって、低屈折率層7の設計の自由度と、光学多層膜5にしても著しい光量の低下を招かない透過率とを確保することができる。
なお、低屈折率層7の酸化硅素(SiO)に対する酸化マグネシウム(MgO)の含有率が0.5重量%以下の時は、単層(厚さ150nm)での膜応力が80MPa以上あり、基板変形を引き起こす内部応力が発生している。また、低屈折率層7の酸化硅素(SiO)に対する酸化マグネシウム(MgO)の含有率が6.0重量%の時は、単層(厚さ150nm)での膜応力が17MPaであるが、屈折率が1.512であり、透過率は98.1%(波長350nm)である。すなわち、酸化硅素(SiO)に含有する酸化マグネシウム(MgO)の含有率が増加すると、屈折率が増加すると共に透過率が低下する。
この光学多層膜5は、スパッタリング法により形成されるものであり、その設計値は以下の通りである。
{64H、83L、54H、86L、(43H、94L)8、33H、103L、38H、84L、(52H、75L)8、58H、70L、58H、29L}
ここで、例えば、設計値「64H」は、Taを基板3の表面に64nmの膜厚(物理膜厚)で成膜して高屈折率層9を形成することを示し、設計値「83L」は、4.3重量%のMgOを含有したSiOを設計値「64H」の高屈折率層9の表面に83nmの膜厚(物理膜厚)で成膜して低屈折率層7を形成することを示している。また、例えば、設計値「(43H、94L)8」は、Taを43nmで成膜した高屈折率層9と、4.3重量%のMgOを含有したSiOを94nmで成膜した低屈折率層7とを重ね合わせたものを8回繰り返して形成することを示している。
次に、上述した光学素子1を製造する成膜装置について説明する。
図2に示すように、成膜装置10は、スパッタリング法によって基板3上に低屈折率層7や高屈折率層9を形成するものであり、真空槽11と、真空槽11内の下方側に配設された複数のスパッタリングターゲット13a,13bを備えている。これらスパッタリングターゲット13a,13bは、真空槽11の上下方向に延びる基準軸線L1を中心とした同一円周上に配され、低屈折率層7や高屈折率層9に応じた2種類の材料から構成されている。
すなわち、第1のスパッタリングターゲット13aは、屈折率が1.471となる低屈折率層7を形成するために4.3重量%のMgOを含有したSiOからなるターゲットにより構成されている。このターゲットは、加圧成型により成型されている。また、第2のスパッタリングターゲット13bは、高屈折率層9を形成するためにTaからなるターゲットにより構成されている。
これらスパッタリングターゲット13a,13bは、その直下に配されたバッキングプレート15a,15bに各々取り付けられている。具体的には、スパッタリングターゲット13a,13bは、無酸素銅からなるバッキングプレート15a,15bに低融点金属であるインジウム(In)を用いてボンディングされている。
バッキングプレート15a,15bは、真空槽11の下部に設けられたカソード電極17a,17bの上面にそれぞれ取り付けられている。各カソード電極17a,17bは、真空槽11の外部に配されたマッチングボックス19を介して13.56MHzの高周波電源21に接続されている。なお、マッチングボックス19は、高周波電源のエネルギーを有効に活用するために、カソード電極17a,17bのリアクタンス成分をキャンセルし、インピーダンスを補正するものである。
真空槽11の上方側には、基板3がスパッタリングターゲット13a,13bに対向するように、複数の基板3を取り付ける略円板状の基板ホルダー23が設けられている。
真空槽11の上壁部には、基準軸線L1を中心として回転可能な支持軸25が設けられており、前述の基板ホルダー23は、この支持軸25に固定されている。そして、この支持軸25は、真空槽11の上部に配された駆動モータ27に接続されている。したがって、この駆動モータ27は、その駆動力により基準軸線L1を中心として支持軸25及び基板ホルダー23を回転させることができる。
なお、基板ホルダー23には、その厚さ方向に貫通する複数の孔(図示せず)が基準軸線L1を中心とする同一円周上に形成されており、複数の基板3がこれら孔を介して基板ホルダー23に保持されている。
基板3と各スパッタリングターゲット13a,13bとの間には、スパッタリングによってスパッタリングターゲット13a,13bから放出されたターゲット材料が基板3に到達することを阻止するシャッター29a,29bが配設されている。
これらシャッター29a,29bは、真空槽11の下壁部に固定されたシャッター支持棒31a,31bにそれぞれ揺動可能に取り付けられており、スパッタリングターゲット13a,13bの直上を覆う第1のシャッター位置と、スパッタリングターゲット13a,13bを基板ホルダー23に臨ませる第2のシャッター位置との間で移動できるようになっている。
したがって、シャッター29a,29bが第2のシャッター位置に配されている状態では、スパッタリングにより基板3上に低屈折率層7や高屈折率層9の成膜が行われ、シャッター29a,29bが第1のシャッター位置に配されている状態では、前述の成膜が行われないことになる。すなわち、低屈折率層7や高屈折率層9を所望の膜厚で形成するためには、シャッター29a,29bを第2のシャッター位置に配する時間を制御すればよい。
真空槽11の側壁部には、外方から真空槽11内部にOガス及びArガスを供給するためのガス導入口33が設けられている。なお、これら各ガスの供給量は、図示しない流量計により確認して適宜調整できるようになっている。そして、各ガスの供給量を調整することにより、スパッタリングターゲット13a,13bから基板3上に供給されるターゲット材料の膜応力や膜屈折率を調整することができる。
この成膜装置10を用いて前述の光学多層膜5の第1層として、基板3の表面3aに設計値「64H」の高屈折率層9を形成する際には、はじめに、基板ホルダー23に基板3を取り付け、真空槽11内を1.0×10−4Paまで減圧する。次いで、導入量が12SCCMのOガス、及び導入量が20SCCMのArガスを各々ガス導入口33から導入し、真空槽11内の圧力を8.0×10−1Paとする。
その後、シャッター29a,29bを第1のシャッター位置に配した状態で高周波電源21からカソード電極17a,17bに400Wの電力を供給し、スパッタリングターゲット13a,13bから放出されるターゲット材料を基板3に到達させないプレスパッタを開始する。このプレスパッタは、スパッタリングターゲット13a,13bの表面に発生するプラズマが安定し、かつ、スパッタリングターゲット13a,13bの表面温度が上昇して所定温度で安定するまで行われる。
そして、このプレスパッタの終了後には、基板ホルダー23を所定速度で回転させた状態でシャッター29bを第2のシャッター位置に配し、Taからなる第2のスパッタリングターゲット13bから放出されるターゲット材料を基板3に到達させる。なお、この際、カソード電極17a,17bに供給する電力は前述と同様の400Wとしている。最後に、所定のスパッタリング時間の経過後にシャッター29bを閉じることにより、基板3の表面にTaからなる膜厚64nmの高屈折率層9が形成される。
この第1層の高屈折率層9の成膜後には、光学多層膜5の第2層として、第1層の表面に設計値「83L」の低屈折率層7を形成する。この形成の際には、真空槽11内を1.0×10−4Paまで減圧し、次いで、導入量が5SCCMのOガス、及び導入量が20SCCMのArガスを各々ガス導入口33から導入し、真空槽11内の圧力を5.0×10−1Paとする。
その後、スパッタリングターゲット13a,13bの表面に発生するプラズマが安定し、かつ、スパッタリングターゲット13a,13bの表面温度が所定温度で安定するまで、前述と同様のプレスパッタを行う。
そして、このプレスパッタの終了後には、基板ホルダー23を所定速度で回転させた状態でシャッター29aを第2のシャッター位置に配し、4.3重量%のMgOを含有したSiOからなる第1のスパッタリングターゲット13aから放出されるターゲット材料を基板3に到達させる。なお、プレスパッタ及び低屈折率層7の成膜の際には、カソード電極17a,17bに供給する電力を共に400Wとしている。最後に、所定のスパッタリング時間の経過後にシャッター29aを閉じることにより、第1層の表面に4.3重量%のMgOを含有したSiOからなる膜厚83nmの低屈折率層7が形成されることになる。
これら第1層及び第2層の形成後には、順次同様なプロセスにより、各設計値の膜厚通りに高屈折率層9及び低屈折率層7を交互に積層し、合計40層の光学多層膜5を形成する。
また、表1に示すように、上記構成の光学多層膜5(実施例1)の比較例として、低屈折率層7をフッ化マグネシウム(MgF)から構成した比較例1、及び、低屈折率層7を酸化硅素(SiO)から構成した比較例2も作成した。なお、比較例1,2の高屈折率層9は膜厚を除いて実施例1の光学多層膜5と同様の酸化タンタル(Ta)から構成されている。また、比較例1,2の光学多層膜5は、実施例1の光学多層膜5と同様に、基板3の表面に合計40層積層して構成したものである。
Figure 2005308968
比較例1の光学多層膜5の設計値を以下に示す。
{87H、32L、51H、114L、(42H、97L)8、35H、105L、39H、88L、(54H、79L)8、63H、72L、59H、39L}
この比較例1の光学多層膜5は、実施例と同様のガラス平板からなる基板3の表面3a上に、イオンアシスト蒸着法により形成される。なお、イオンアシスト蒸着法とは、低屈折率層7や高屈折率層9を形成するための蒸着材料を電子ビームや抵抗加熱により加熱して気化した蒸発粒子を生成すると共に酸素プラズマやアルゴンプラズマを生成し、このプラズマエネルギーを付与した蒸発粒子が基板3上で凝縮することにより低屈折率層7や高屈折率層9を形成するものである。
この比較例1の光学多層膜5の第1層として、基板3の表面3aにTaからなる膜厚87nmの高屈折率層9を形成する場合には、はじめに、図示しない真空槽内の所定位置に基板3を配置し、真空槽内を1.0×10−4Paまで減圧する。その後、導入量が40SCCMのOガスを真空槽内に導入し、真空槽内の圧力を2.0×10−2Paとする。なお、この第1層の成膜時におけるプラズマエネルギーは300eVとした。
この第1層の高屈折率層9の成膜後には、光学多層膜5の第2層として、第1層の表面にMgFからなる膜厚32nmの低屈折率層7を形成する。この形成の際には、真空槽内を1.0×10−4Paまで減圧し、次いで、導入量が40SCCMのOガスを真空槽内に導入し、真空槽内の圧力を2.0×10−2Paとする。なお、この第2層の成膜時におけるプラズマエネルギーも300eVとした。
これら第1層及び第2層の形成後には、順次同様なプロセスにより、各設計値の膜厚通りに高屈折率層9及び低屈折率層7を交互に積層し、合計40層からなる比較例1の光学多層膜5を形成する。
比較例2の光学多層膜5の設計値を以下に示す。
{62H、87L、54H、83L、(45H、93L)8、35H、99L、41H、84L、(52H、76L)8、57H、73L、59H、26L}
この比較例2の光学多層膜5は、図2に示す成膜装置10を用いてスパッタリング法により形成される。また、この比較例2の光学多層膜5は、前述と同様のガラス平板からなる基板3の表面3aに形成される。
この比較例2の高屈折率層9は、実施例1の光学多層膜5と同様の構成であるため、例えば、基板3の表面3aに形成される第1層は、実施例1の光学多層膜5の高屈折率層9と同様にして形成され、その膜厚は62nmとなる。
この比較例2の第1層の成膜後には、第2層として、第1層の表面に設計値「87L」の低屈折率層7を形成する。なお、比較例2の低屈折率層7はSiOにより構成されるため、第1のスパッタリングターゲット13aをSiOから構成しておく。
この形成の際には、真空槽11内を1.0×10−4Paまで減圧し、次いで、導入量が5SCCMのOガス、及び導入量が20SCCMのArガスを各々ガス導入口33から導入し、真空槽11内の圧力を5.0×10−1Paとする。そして、実施例1の光学多層膜5と同様なプレスパッタプロセス及びスパッタプロセスを行うことにより、第1層の表面にSiOからなる膜厚87nmの低屈折率層7が形成されることになる。
実施例1及び比較例1,2について、波長370nmにおける透過率、反り量、及び高屈折率層9や低屈折率層7を構成する各材料の内部応力の比較結果を表2に示す。また、実施例1及び比較例1の分光透過率のグラフを図3に示す。なお、透過率は、所定の分光測定機を用いて測定したものである。また、基板3の反り量は、表面形状測定機を用いて基板3の対角線上を長さ30mmに渡って測定した表面形状から算出したものである。また、各材料の内部応力は、各材料により膜厚150nmの単層膜を形成し、この単層膜について片持ち梁(cantilever)法により測定したものである。
Figure 2005308968
図3及び表2に示すように、実施例1では、400nm以下の紫外領域において透過率が低下せず、370nmの紫外領域における透過率が99.3%と高いため、十分な明るさを確保できている。
一方、比較例1では、400nm以下の紫外領域おいて透過率が低下している。特に、比較例1では、370nmの紫外領域における透過率が68.6%となっており、実施例1の透過率よりも約31%低下している、すなわち、著しい明るさの低下を引き起こしている。これは、MgFからなる低屈折率層7をイオンアシスト蒸着法により形成したため、フッ素脱離が発生して紫外領域における透過率が低下したと考えられる。
また、比較例2では、370nmの紫外領域における透過率が98.7%となっており、実施例1とほぼ同等の透過率となっている。
基板3の反り量については、実施例1及び比較例1では、19.4μm、25.5μmとほぼ同等となっており、その大きさは基板3や光学多層膜5を通過する光線の曲がりが生じない程度に小さくなっている。すなわち、比較例1では、圧縮応力を持つ高屈折率層9と引張り応力を持つ低屈折率層7とを交互に積層しているため、光学多層膜5の内部応力を相殺し、基板3の反り量が小さくなっている。また、実施例1では、4.3重量%のMgOを含有したSiOにより低屈折率層7を構成して、その圧縮応力を低減しているため、基板3の反り量が小さくなっている。なお、この圧縮応力の低減は、SiOからなる低屈折率層7では、硅素原子と酸素原子との強い原子間引力によってこれら原子同士で網目構造を作っているが、この構造に原子サイズの異なるMgOが入り込んだ場合には、網目構造が崩れ、硅素原子と酸素原子との原子間引力を弱めることに起因する。
一方、比較例2では、基板の反り量が93.9μmと大きいため、基板3や光学多層膜5を通過する光線が曲がるという不具合を生じる。すなわち、比較例2の低屈折率層7を構成するSiOからなる単層膜の内部応力が279MPaとなっており、実施例1の内部応力18MPaの10倍以上となっているため、比較例2の基板3の反り量が著しく大きくなると考えられる。
上記のように、本実施形態の光学多層膜5及び光学素子1によれば、低屈折率層7が安価で紫外領域から赤外領域までの広い波長領域において高い透過率を有するSiOを主成分とした構成となっているため、十分に高い透過率の光学多層膜5及び光学素子1を提供できると共に、光学多層膜5及び光学素子1の製造コストを削減できる。
また、このSiOには4.3重量%のMgOが含有しているため、低屈折率層7の内部応力を小さくして基板3の反り量を小さくでき、少ない層数で光学多層膜5及び光学素子1の設計を行うことができる。
さらに、スパッタリング法により光学多層膜5を形成しているため、光学特性に経時変化のない光学多層膜5や光学素子1を提供することができる。
また、本実施形態の光学素子1によれば、厚さの薄い基板3に光学多層膜5を設けても基板3の反りや変形を防止することができるため、光学素子1の薄型化や小型化を図ることができる。
次に、本発明による第2の実施形態について図4,5を参照して詳細に説明する。
この実施の形態に係る光学素子は、前述した第1の実施形態と同様に、図1に示すように、ガラス平板からなる基板3と、基板3の表面3aに形成された光学多層膜5とを備えている。基板3は、平面視略円形の板状に形成されており、その寸法は、直径65mm、厚さ0.2mmである。
光学多層膜5は、基板3の表面3aに低屈折率層7と高屈折率層9とを交互に36層ずつ、合計72層積層して構成したものである。ここで、低屈折率層7は酸化硅素(SiO)に酸化バリウム(BaO)を3.5重量%含有したものから構成され、高屈折率層9は低屈折率層7よりも膜屈折率が大きい酸化ハフニウム(HfO)から構成されている。
ここで、低屈折率層7の酸化硅素(SiO)に含有する酸化バリウム(BaO)が3.5重量%の時の屈折率は1.469であり、また、透過率は99.8%(波長350nm)である。したがって、低屈折率層7の設計の自由度と、光学多層膜5にしても著しい光量の低下を招かない透過率を確保することができる。
なお、低屈折率層7の酸化硅素(SiO)に含有する酸化バリウム(BaO)が、0.5重量%以下の時は、単層(厚さ150nm)での膜応力が80MPa以上あり、基板変形を引き起こす内部応力が発生している。また、低屈折率層7の酸化硅素(SiO)に含有する酸化バリウム(BaO)が、6.0重量%の時は、単層(厚さ150nm)での膜応力が20MPaであるが、屈折率が1.522であり、透過率は97.8%(波長350nm)である。すなわち、酸化硅素(SiO)に含有する酸化バリウム(BaO)の含有率が増加すると、屈折率が増加すると共に透過率が低下する。
この光学多層膜5は、イオンアシスト蒸着法により形成されるものであり、その設計値は以下の通りである。
{57H、92L、54H、72L、50H、86L、(51H、76L)14、53H、75L、51H、76L、52H、75L、(51H、79L)14、60H、87L、119H、60L}
ここで、例えば、設計値「57H」は、HfOを基板3の表面3aに57nmの膜厚(物理膜厚)で成膜して高屈折率層9を形成することを示し、設計値「108L」は、3.5重量%のBaOを含有したSiOを設計値「57H」の高屈折率層9の表面に108nmの膜厚(物理膜厚)で成膜して低屈折率層7を形成することを示している。また、例えば、設計値「(51H、76L)14」は、HfOを51nmで成膜した高屈折率層9と、3.5重量%のBaOを含有したSiOを76nmで成膜した低屈折率層7とを重ね合わせたものを14回繰り返して形成することを示している。
次に、上述した光学素子を製造する成膜装置について説明する。
図4に示すように、この成膜装置40は、イオンアシスト蒸着法によって基板3上に低屈折率層7や高屈折率層9を形成するものであり、真空槽41と、真空槽41内の下方側に配設された複数の蒸発源43a,43bとを備えている。これら蒸発源43a,43bは、真空槽41の上下方向に延びる軸線を中心とする同一円周上に位置しており、低屈折率層7や高屈折率層9に応じた2種類の材料から構成されている。
すなわち、第1の蒸発源43aは、屈折率が1.469となる低屈折率層7を形成するために3.5重量%のBaOを含有したSiOからなり、加圧成型により成型されたペレット状の形状をなしている。また、第2の蒸発源43bは、高屈折率層9を形成するためのHfOからなる。
真空槽41の上方側には、基板3が蒸発源43a,43bに対向するように、複数の基板3を取り付ける球面ドーム45が設けられている。この球面ドーム45は、真空槽41の上部に配置した駆動モータ(図示せず)に接続されており、この駆動モータは、その駆動力により真空槽41の上下方向に延びる軸線を中心として球面ドーム45を回転させることができる。
なお、この球面ドーム45には、その厚さ方向に貫通する複数の孔(図示せず)が形成されており、複数の基板3がこれら孔を介して球面ドーム45に保持されている。
基板3と各蒸発源43a,43bとの間には、蒸発源43a,43bから放出された成膜材料が基板3に到達することを阻止するシャッター49a,49bが配設されている。
これらシャッター49a,49bは、真空槽41の下壁部に固定されたシャッター支持棒51a,51bにそれぞれ揺動可能に取り付けられており、蒸発源43a,43bの直上を覆う第1のシャッター位置と、蒸発源43a,43bを球面ドーム45に臨ませる第2のシャッター位置との間で移動できるようになっている。
したがって、シャッター49a,49bが第2のシャッター位置に配されている状態では、基板3上に低屈折率層7や高屈折率層9の成膜が行われ、シャッター49a,49bが第1のシャッター位置に配されている状態では、前述の成膜が行われないことになる。
また、球面ドーム45と蒸着源43a,43b、シャッター49a,49bとの間には、真空槽41の側壁部に固定された補正板53a,53bが配されている。この補正板53a,53bは、球面ドーム45に取り付けられた基板3に形成される低屈折率層7や高屈折率層9の膜厚を均一とするためのものである。
球面ドーム45の中心部には、モニターガラス53が設けられている。また、モニターガラス53の上方部に位置する真空槽41の外部には、モニターガラス53上に形成される成膜材料の膜厚の増加と共に変化する反射光量値を計測する光量計測器55と、光量計測器55に接続された膜厚制御システムコンピュータ57とが設けられている。膜厚制御システムコンピュータ57は、光量計測器55にて計測された反射光量と目標反射光量値を用いて、所望の膜厚を積層するように膜厚制御を行うものである。
すなわち、シャッター49a,49bを第2のシャッター位置に配した状態においては、基板3やモニターガラス53上に成膜材料が到達して膜厚が増加する。そして、光量計測器55によって計測される反射光量値が目標反射光量値に達すると、シャッター49a,49bの移動操作信号が膜厚制御システムコンピュータ57から送信され、シャッター49a,49bを第2のシャッター位置から第1のシャッター位置に移動させる。これにより、基板3に形成される低屈折率層7や高屈折率層9の膜厚を制御することができる。
なお、目標反射光量値は、予め設計膜厚に応じて算出した値であり、膜厚制御システムコンピュータ57に記憶されている。
真空槽41の下壁部の中心位置には、真空槽41内部にプラズマを発生させるためのガスを導入するガス導入口59が設けられている。このガス導入口59からは、外方から真空槽41内部にOガスを供給することができる。なお、これら各ガスの供給量は、図示しない流量計により確認して適宜調整できるようになっている。そして、各ガスの供給量を調整することにより、低屈折率層7や高屈折率層9を構成する成膜材料の膜応力や膜屈折率を調整することができる。
この成膜装置40を用いて前述の光学多層膜5の第1層として、基板3の表面3aに設計値「57H」の高屈折率層9を形成する際には、はじめに、球面ドーム45に基板3を取り付け、真空槽41内を1.0×10−4Paまで減圧する。次いで、真空槽41外部に設置された高周波電源(図示せず)から、球面ドーム45に高周波供給電極(図示せず)を通じて高周波電力を給電する。そして、導入量が40SCCMのOガスをガス導入口59から導入し、真空槽41内の圧力を2.0×10−2Paとする。この際には、導入したOガスがプラズマ化し、そのプラズマエネルギーは250eVとした。
その後、駆動モータにより球面ドーム45を自転させ、シャッター49bを第1のシャッター位置から第2のシャッター位置に移動させる。この状態においては、第2の蒸発源43bから基板3及びモニターガラス53に高屈折率層9を形成する成膜材料が到達する。そして、モニターガラス53上の反射光量値が、設計膜厚に応じて算出した所定の目標反射光量値に達した際には、膜厚制御システムコンピュータ57からの信号によりシャッター49bが第1のシャッター位置に移動し、基板3の表面3aにHfOからなる膜厚57nmの高屈折率層9が形成されることになる。
この第1層の高屈折率層9の成膜後には、光学多層膜5の第2層として、第1層の表面に設計値「92L」の低屈折率層7を形成する。この形成の際には、第1層のときと同様に、真空槽41内を1.0×10−4Paまで減圧し、高周波電源から球面ドーム45に高周波電力を給電する。次いで、導入量が40SCCMのOガスをガス導入口59から導入し、真空槽41内の圧力を2.0×10−2Paとする。この際には、導入したOガスがプラズマ化し、そのプラズマエネルギーは250eVとした。
その後、駆動モータにより球面ドーム45を自転させ、シャッター49aを第1のシャッター位置から第2のシャッター位置に移動させる。この状態においては、第1の蒸発源から基板3及びモニターガラス53に高屈折率層9を形成する成膜材料が到達する。そして、モニターガラス53上の反射光量値が、設計膜厚に応じて算出した所定の目標反射光量値に達した際には、膜厚制御システムコンピュータ57からの信号によりシャッター49aが第1のシャッター位置に移動し、第1層の表面に3.5重量%のBaOを含有したSiOからなる膜厚92nmの低屈折率層7が形成されることになる。
これら第1層及び第2層の形成後には、順次同様なプロセスにより、各設計値の膜厚通りに高屈折率層9及び低屈折率層7を交互に積層し、合計72層の光学多層膜5を形成する。
また、表3に示すように、上記構成の光学多層膜5(実施例2)の比較例として、高屈折率層9を酸化ハフニウム(HfO)から構成すると共に低屈折率層7を酸化硅素(SiO)から構成した比較例3も作成した。なお、比較例3の光学多層膜5は、実施例2と同様の基板3の表面に合計72層積層して構成したものである。
Figure 2005308968
比較例3の光学多層膜5の設計値を以下に示す。
{61H、92L、53H、77L、46H、89L、(52H、75L)14、46H、93L、46H、66L、61H、69L、(50H、81L)14、65H、67L、89H、76L}
この比較例3の光学多層膜5は、前述の成膜装置40を用いてイオンアシスト蒸着法により形成される。
この比較例3の高屈折率層9は、実施例2の光学多層膜5と同様の構成であるため、例えば、基板3の表面3aに形成される第1層は、実施例2の光学多層膜5の高屈折率層9と同様にして形成され、その膜厚は61nmとなる。
この比較例3の第1層の成膜後には、第2層として、第1層の表面に設計値「91L」の低屈折率層7を形成する。この形成の際には、予め真空槽41内に第1の蒸発源43aとして、低屈折率層7を形成するためのSiOを設置しておく。次いで、導入量が40SCCMのOガスをガス導入口33から導入し、真空槽41内の圧力を2.0×10−1Paとし、成膜時のプラズマエネルギーを250eVとした。そして、実施例2の場合と同様に、シャッター49aを適宜移動させることにより、基板3の表面3aにSiOからなる膜厚91nmの低屈折率層7が形成される。
これら第1層及び第2層の形成後には、順次同様なプロセスにより、各設計値の膜厚通りに高屈折率層9及び低屈折率層7を交互に積層し、合計72層からなる比較例3の光学多層膜5を形成する。
実施例2及び比較例3について、波長370nmにおける透過率、反り量、及び高屈折率層9や低屈折率層7を構成する各材料の内部応力の比較結果を表4に示す。また、実施例2及び比較例3の分光透過率のグラフを図5に示す。なお、これら透過率、反り量及び内部応力の測定は、第1の実施形態と同様の測定法で実施した。
Figure 2005308968
図5及び表4に示すように、実施例2では、400nm以下の紫外領域において透過率が低下せず、370nmの紫外領域における透過率が99.1%と高いため、十分な明るさを確保できている。
一方、比較例3では、400nm以下の紫外領域において透過率が大きく低下しないものの、370nmの紫外領域における透過率が93.6%となっており、実施例2の透過率よりも低い値を示している。また、比較例3の光学多層膜5の外観を観察すると、微少なクラックが多数確認された。すなわち、比較例3では、低屈折率層7や高屈折率層9を構成する各材料の内部応力が大きいために、クラックが発生し、このクラックによって光の散乱を生じて透過率の低下を招いていると考えられる。
基板3の反り量については、実施例2では、22.4μmと、基板3や光学多層膜5を通過する光線の曲がりが生じない程度に小さくなっている。
一方、比較例3では、基板3の反り量が127.9μmと大きいため、基板3や光学多層膜5を通過する光線が曲がるという不具合を生じる。すなわち、比較例3の低屈折率層7を構成するSiOからなる単層膜の内部応力が288MPaとなっており、実施例2の内部応力11MPaの10倍以上となっているため、比較例3の基板3の反り量が著しく大きくなると考えられる。
上記のように、本実施形態の光学多層膜5及び光学素子1によれば、第1の実施形態と同様に、低屈折率層7が安価で紫外領域から赤外領域までの広い波長領域において高い透過率を有するSiOを主成分とした構成となっているため、十分に高い透過率の光学多層膜5及び光学素子1を提供できると共に、光学多層膜5及び光学素子1の製造コストを削減できる。
また、このSiOには3.5重量%のBaOが含有しているため、低屈折率層7の内部応力を小さくしてクラックの発生を無くすと共に基板3の反り量を小さくでき、少ない層数で光学多層膜5及び光学素子1の設計を行うことができる。
さらに、イオンアシスト蒸着法により光学多層膜5を形成しているため、光学特性に経時変化のない光学多層膜5や光学素子1を提供することができる。
さらに、本実施形態の光学素子1によれば、厚さの薄い基板3に光学多層膜5を設けても基板3の反りや変形を防止することができるため、光学素子1の薄型化や小型化を図ることができる。
なお、上述した2つの実施形態においては、低屈折率層7を構成するSiO中に4.3重量%のMgOや3.5重量%のBaOを含有するとしたが、これに限ることはなく、少なくともMgOやBaOの含有率は、0.5重量%以上5.0重量%未満であればよい。すなわち、含有率が0.5重量%未満の場合には、内部応力が十分に低減せず、基板3の反りによって光学多層膜5を通過する光線に曲がりが生じるためである。また、含有率が5.0重量%以上の場合には、低屈折率層7の膜屈折率が1.55以上となり、膜設計の自由度が低下し、低屈折率層7及び高屈折率層9の積層数が増加するためである。
また、SiO中にMgOやBaOを含有するとしたが、これに限ることはなく、上述した含有率の範囲内であれば、例えば、LiO、BeO、Al、CaO、P、TiO、ZrO、Nb、Ta、HfOのいずれか1種類の金属化合物を含有するとしてもよい。さらに、SiO中には上述した1種類の金属化合物を含有することに限らず、含有率の合計が上述の範囲内であれば、2種類以上の金属化合物を含有していてもよい。ただし、望ましくは、材料屈折率が低いLiO、BeO、MgO、BaO、Alから選択することが好ましい。
さらに、金属化合物の含有率は上記の範囲内に設定することに限らず、低屈折率層の膜屈折率を1.44以上1.55未満となるように前記含有率を設定するとしても構わない。すなわち、低屈折率層の膜屈折率は、低屈折率層を構成する酸化硅素に対する前述の金属化合物の含有率を適宜変えることにより、変更することができる。
そして、低屈折率層の膜屈折率が1.44以上1.55未満となるように、前述の含有率を調整することにより、光学多層膜として十分な透過率を確保することができるため、低屈折率層の設計の自由度を確保することができ、少ない層数で光学多層膜及び光学素子の設計を行うことができる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
この発明の実施形態に係る光学素子の構成を示す図である。 この発明の第1の実施形態に係る光学素子を製造する成膜装置を示す断面図である。 この発明の第1の実施形態に係る光学素子において、光の波長と光学多層膜の透過率との関係を示すグラフである。 この発明の第2の実施形態に係る光学素子を製造する成膜装置を示す断面図である。 この発明の第2の実施形態に係る光学素子において、光の波長と光学多層膜の透過率との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 光学素子
3 基板
3a 表面
5 光学多層膜
7 低屈折率層
9 高屈折率層

Claims (4)

  1. 基板の表面に形成される光学多層膜であって、
    互いの膜屈折率が異なり、前記表面に交互に積層された低屈折率層及び高屈折率層を備え、
    前記低屈折率層が、酸化硅素にLiO、BeO、MgO、BaO、Al、CaO、P、TiO、ZrO、Nb、Ta、HfOの少なくとも1種類の金属化合物を含有して構成されていることを特徴とする光学多層膜。
  2. 前記低屈折率層を構成する前記金属化合物の含有率の合計が、0.5重量%以上、5.0重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の光学多層膜。
  3. 前記低屈折率層の膜屈折率が、1.44以上1.55未満の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学多層膜。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光学多層膜と、該光学多層膜を表面に形成する基板とを備えることを特徴とする光学素子。

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