JP5476142B2 - ワイヤグリッド偏光板 - Google Patents
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Description
基材は、凸部と凹部がそれぞれ特定方向に延在する格子状凹凸形状を有し、目的とする波長領域において実質的に透明であればよい。ここで、特定方向に延在するとは、格子状凹凸形状が実質的に延在していればよく、格子状凹凸形状が厳密に平行に延在している必要はない。基材としては、樹脂基材が、ロールプロセスが可能になる、ワイヤグリッド偏光板にフレキシブル性(屈曲性)を持たすことができる、等のメリットがある為好ましいが、ガラスなどの無機材料も基材に用いることが出来る。基材に用いることができる樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線(UV)硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。また、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂と、ガラスなどの無機基材、上記熱可塑性樹脂、トリアセテート樹脂とを組み合わせたり、単独で用いて基材を構成させることも出来る。
格子状凹凸形状の凸部の断面形状(特定方向に垂直に交わる平面における凸部の形状)は、後述する金属ワイヤの結晶成長方向を揃えるという観点から、略内反り形状または内サイクロイドの1つの頂点とその両辺で示される類似形状とすることが好ましい(図1参照)。さらに、格子状凹凸形状の凸部の頂部の幅を30nm以下とすることが好ましく、10nm以下とすることが最も好ましい。これにより格子状凹凸形状の凸部上部から金属ワイヤがランダムな方位に結晶成長する現象を防ぐことができる。ここで「凸部の頂部」とは、凸部の最も高い位置を基準として凸部の高さの1/10下がった位置までの間をいう。図1で示した場合、凸部の高さhからh/10下がった高さまでの間を指す。
本発明において基材を構成する材料と金属ワイヤとの密着性向上のため、両者の間に両者と密着性が高い誘電体材料を好適に用いることができる。例えば、珪素(Si)の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はその複合物(誘電体単体に他の元素、単体又は化合物が混じった誘電体)や、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、銅(Cu)などの金属の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はそれらの複合物を用いることができる。誘電体材料は、透過偏光性能を得ようとする波長領域において実質的に透明であることが好ましい。
金属としてアルミニウムの他、Ni、Ir、Rh、Pd、Pt、Pb、Au、Ag、Cuまたはこれらの各金属を主成分とする合金を使用することもできる。
金属ワイヤは、格子状凹凸形状を有する基材の凸部の一方向側の基材壁面に接し、上部が凸部頂部より上方に伸びるよう設けられた構造を有している。
金属ワイヤの結晶方位は、基材となる格子状凹凸形状の影響を強く受ける。例えば、凹凸のないフラットな基材上に、アルミニウムのような立方晶構造を有する金属を通常の抵抗加熱法などを用いて蒸着を施した場合、基材の垂直方向に最密充填面である(111)面が配向することが知られている。この性質を利用して、凹凸形状の側面方向を金属の結晶成長の起点とすることにより、格子状凹凸樹脂形状上での結晶方位を3次元方向に揃えることができる。以下、メカニズムについて図2を用いて説明する。なお、図2(A)は格子の長手方向(特定方向)と垂直に交わる平面を示し、図2(B)は基材面(金属ワイヤの立設方向と垂直な基材面)を示している。
光学特性の観点から、凹凸格子の凹部底部に積層する金属をエッチングにより除去することが好ましい。エッチング方法は、基材や誘電体層に悪影響を及ぼさず、金属部分が選択的に除去できる方法であれば特に限定は無いが、生産性の観点からアルカリ性の水溶液に浸漬させる方法が好ましい。エッチング時間は積層した金属の量にもよるが、30〜120秒程度となる。
ワイヤグリッド偏光板の偏光特性を向上させる上で、グリッドを形成する金属の均一性が高いことが好ましい。前記のような斜め蒸着による積み上げ方式でワイヤグリッドを作製する場合、アルミニウムの結晶粒子のサイズや結晶方位のばらつきがアルカリエッチング後のグリッドの形状の均一性を損なう原因となりうる。この形状の不均一性が光学性能に及ぼす影響を把握するために、FDTD法などの光学シミュレーション法を用いて検証した結果、グリッド形状のばらつきが、電磁波により誘起される金属の電場方向を乱し、可視光の波長領域での偏光分離能が低下することが示された。この乱された電場による偏光漏れを数値化する方法として、以下に示す偏光光の旋光度で定義する指標を用いた。
[実施例1、比較例1]
(格子状凹凸形状を有する樹脂基材の作製)
・紫外線硬化樹脂を用いた格子状凹凸形状転写フィルムの作製
・スパッタリング法を用いた誘電体層の形成
次に転写フィルムA、Bの格子状凹凸形状転写表面に、スパッタリング法により誘電体層として二酸化珪素を成膜した。スパッタリング装置条件は、Arガス圧力0.2Pa、スパッタリングパワー4W/cm2、被覆速度0.1nm/sとし、転写フィルム上の誘電体平均厚みが3nmとなるように成膜した。ここでは、誘電体の厚みを測定するため表面が平滑なガラス基板を転写フィルムと同時に装置に挿入し、平滑ガラス基板上の誘電体厚みを誘電体平均厚みとした。
次に誘電体層を成膜した転写フィルムA、B格子状凹凸形状転写表面に、真空蒸着によりアルミニウム(Al)を成膜した。Alの蒸着条件は、常温下、真空度2.0×10−3Pa、蒸着速度40nm/sとした。Alの厚みを測定するため表面が平滑なガラス基板を転写フィルムと同時に装置に挿入し、平滑ガラス基板上のAl厚みをAl平均厚みとし、格子の長手方向と垂直に交わる平面内において基材面の垂線と蒸着源のなす角度を蒸着角θとした。転写フィルムAは蒸着角θを15°、Al平均厚みを105nmとし、転写フィルムBは蒸着角θを20°、Al平均厚みを91nmとした。
転写フィルムAについてPole_Figure測定はRigaku製高精度薄膜X線回折装置ATX−Gを用いて実施した。ブラッグ反射条件の2θ角が38.4°となるようにシンチレーションカウンター検出器を固定し、試料の法線ベクトルを半球面方向に立体的に変化させて、アルミニウムの(111)方位の回折線強度の極点図形(図4(A)参照)を測定した。基材面の垂直方向からの立体角が80°〜90°の範囲で定義する基材面内方向のX線回折強度を加算平均したプロット(図4(B))から、この転写フィルムは面内5方向に配向を示している。
次にAlを蒸着した転写フィルムA、Bをアルカリ水溶液に浸漬し不要なAlを除去した。不要Alの除去としては、Al蒸着した転写フィルムを室温下で、0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液に所定時間浸漬することで行った。
偏光板A、Bにおいては、偏光度と光線透過率の測定には日本分光社製偏光フィルム評価装置V7000を用い、23℃65%RHの条件で行った。
光線透過率(T(θ))=[(Imax+Imin)/2]×100%
分光器(日本分光社製 型番V7100)を用いて、グランテーラー偏光プリズムを介して入射される偏光光(550nm)に対して検光子をクロスニコル位置に設定する。これにより旋光角度の基準となるφ=0を決定する。次にワイヤグリッドサンプルを入射偏光に対してクロスニコル配置になるように検光子の手前に設置する。サンプルを透過した光は検光子をもちいて消光角を解析し、φ=0からのズレ(絶対値)を旋光角度として定義する。
L 稜線延長方向
d 格子ピッチ幅
H 格子状凹凸形状の凸部高さ
A 基材壁面点
B 基材底点
3a方向 格子状凹凸形状における基材壁面と垂直方向
3b方向 3a方向の(111)面と約70度の立体角をなす方向
3c方向 3a方向の(111)面と約70度の立体角をなす方向
3d方向 3a方向と約110度の立体角をなす方向
3e方向 3a方向と約110度の立体角をなす方向
3f方向 格子状凹凸形状の側面より結晶成長した金属を起点として、この結晶成長の方向と約70度の基材面上方の方向
Claims (4)
- 特定方向に延在する格子状凹凸形状を有する基材と、前記格子状凹凸形状の凸部の一方側の基材壁面に立設する金属ワイヤとを具備するワイヤグリッド偏光板であって、前記金属ワイヤを構成する金属の立方晶構造における(111)方位が、前記金属ワイヤの立設方向と垂直な基材面の垂直方向から80°〜90°の範囲で(111)方位への配向を2方向以上6方向以下有しており、前記格子状凹凸形状の凸部断面形状が略内反り形状であり、前記格子状凹凸形状の凸部の頂部の幅が10nm以下であり、前記格子状凹凸形状の前記凸部の最も高い位置から前記凸部の高さの1/10下がった位置の基材壁面点と最も近接する基材底点を結ぶ直線を基準とした場合、前記凸部の頂点より下方に位置する前記基材壁面である基材側壁部が前記直線よりも下方にのみ存在することを特徴とするワイヤグリッド偏光板。
- 前記金属は、前記基材壁面の垂直方向から上方へ60°〜80°向いた方向に(111)方位への配向を有することを特徴とする請求項1に記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記金属ワイヤは、前記特定方向と垂直に交わる平面において、基材壁面の稜線延長線方向を境界として、基材壁面側に立設されるアルミニウムが70%以上の領域を占めることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記格子状凹凸形状の凸部断面形状が、凹部底部から凸部頂上までの1/2高さにおいて、格子状凸部の幅が格子ピッチの0.1〜0.6倍であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光板。
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