JP4804830B2 - 多層膜の成膜方法および成膜装置 - Google Patents

多層膜の成膜方法および成膜装置 Download PDF

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本発明は基板面に多層膜を積層する成膜方法、および、多層膜を積層する成膜装置に関する。
真空中で薄膜材料を加熱蒸発させて基板上に堆積させる真空蒸着法は薄膜形成技術の代表的手法のひとつであり、幅広い分野で利用されている。薄膜材料を気化させる蒸発源には、抵抗加熱、電子ビーム加熱、高周波誘導加熱、レーザビーム加熱等が用いられるが、中でも数kV〜数10kVに加速した電子ビームを薄膜材料に照射して加熱する電子ビーム加熱が最も利用されている。
また、成膜中にガスイオンを基板に照射するイオンビームアシスト蒸着や、何らかのイオン化手段により蒸発粒子のイオンを基板に衝突させるイオンプレーティング等は、イオンのエネルギーを利用して付着力の強い緻密な膜を形成することが可能となるため利用の用途も広い。以下、イオンのエネルギーを含むプラズマを利用した蒸着を「プラズマを用いた蒸着」と称し、プラズマを利用しない蒸着を「通常蒸着」と称す。
通常蒸着は成膜速度が大きいという利点があるが、膜の密着性が低く、成膜後の環境試験で膜にクラックが生じ易いという課題がある。プラズマを用いた蒸着は膜の密着性が高いという利点があるが、膜の内部応力が大きくなる為に成膜後にクラックが生じ易いという課題がある。
そこで膜の密着性を高め、かつ、内部応力を低減するために通常蒸着とプラズマを用いた蒸着とを組み合わせた成膜手段が例えば特許文献1および特許文献2に開示される。
特許文献1は、少なくとも1層の薄膜を成膜する工程中に成膜方法および成膜条件の少なくとも一方を変えることで、各薄膜の内部応力をその膜厚方向に圧縮応力から引張応力またはこの逆に変化させ、光学薄膜の内部応力を各薄膜内で相殺して低減し、基板の曲がりや膜剥れを防ぐものである。
特許文献2は、基板、レンズ上に複数の膜を積層させる成膜方法において、真空蒸着法により積層された膜とプラズマを用いた方法により積層された膜がそれぞれ少なくとも1層あるものとすることにより、膜の密着性が高く、膜割れがなく、成膜速度の速い成膜方法を提供するものである。
また、内部応力低減の他の手段として、圧縮応力を示す蒸着膜と引張応力を示す蒸着膜とを基板上に多数回交互に積層し、隣接する一対の膜の内部応力を釣り合せることにより相殺して基板に対する応力の影響を消失さる技術が、例えば特許文献3に開示される。
特許文献3は、高屈折率のZrO及び低屈折率のSiOを交互に積層して得られる従来の光学積層物では、ZrO及びSiOの内部応力が共に圧縮応力であることにより基板に変形が生じてしまっていたという課題を、ZrOとほぼ等しい屈折率を有しSiOの圧縮応力を相殺するのに十分な引張応力を示すTiOに代えることで解決するものである。
特開平9−85874号 特開2003−221663号 特開昭59−10901号
光の干渉を利用した光学薄膜は、反射防止膜や各種フィルタ・ミラー等様々な製品に応用されている。光学薄膜に要求される波長、透過率あるいは反射率、偏向特性等の光学的特性を決定する要因は種々あげられるが、光の干渉効果を用いるため光路長である光学膜厚n・d(n:屈折率、d:物理的膜厚)の制御が最も重要となる。
ところが、特許文献1に開示されるように成膜方法や成膜条件を意図的に変化させて光学薄膜を成膜すると、光学膜厚の制御が困難になるという課題がある。これは、同一の成膜材料を用いても成膜方法や成膜条件により成膜後の屈折率が異なるためであり、屈折率が変化すると、これに応じた各層の膜厚や膜総数等、膜設計の変更が強いられるためである。特許文献1開示の光学薄膜の製造方法は、1層の薄膜を成膜する工程中に成膜方法および成膜条件の少なくとも一方を変えるため、各成膜方法あるいは成膜条件における膜厚に多少の誤差があるだけで層の屈折率が変化してしまう。即ち、従来同様の光学的仕様を得るために従来よりも膜厚制御精度を向上させなくてはならないという問題が発生してしまう。光学薄膜は積層される各層の屈折率にその特性が依存するため、屈折率の再現性が確保されないと、所望の光学的仕様を満足する素子の作製が非常に困難となる。
特許文献2に開示される方法は、各層における真空蒸着法とプラズマを用いた方法との選択に関する示唆がないため、成膜材料と成膜方法の組み合わせによっては十分な効果を得ることが出来ないという課題がある。実施例に示されるように前半層をプラズマを用いた方法により形成し後半層を真空蒸着法により形成した場合、基板材料によっては積層膜の応力に耐えられずクラックや膜剥れ等が生じてしまう場合がある。また、光学的特性の一つである反射帯域幅を広げるためには高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくするか積層数を増大させる必要があるが、真空蒸着法とプラズマを用いた方法との選択によっては屈折率差が小さくなり、所望の反射帯域幅を得るために膜総数を増やさなくてはならなくなってしまう。
特許文献3に開示される方法は、これをプラズマを用いた蒸着で実施した場合、内部応力低減の効果を得ることができないという課題がある。例えば、実施例において用いられるSiOは、通常蒸着により成膜した場合その蒸着膜は圧縮応力を示すが、プラズマを用いた蒸着により成膜した場合その蒸着膜は引張応力を示す。TiOは、通常蒸着により成膜した場合においてもプラズマを用いた蒸着により成膜した場合においてもその蒸着膜は引張応力を示す。これにより、両方の膜をプラズマを用いて蒸着した場合、引張応力を示す蒸着膜が積層されて内部応力が大きくなり、基板が反ったりクラックが発生したりしてしまう。通常蒸着で発明を実施した場合は内部応力低減の効果を得ることができるが、密着性が低く成膜後の光学特性の経時変化が大きくなってしまうという問題がある。
本発明の第1の側面は、多層膜の成膜方法であって、圧縮応力を示す蒸着膜を通常蒸着によって形成するステップ、及び引張応力を示す蒸着膜をプラズマを用いた蒸着によって形成するステップからなる成膜方法である。ここで、圧縮応力を示す蒸着膜と引張応力を示す蒸着膜とを交互に積層するようにした。
本発明の第2の側面は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層してなる多層膜の成膜方法であって、通常蒸着により少なくとも1層の低屈折率層を形成するステップ、及びプラズマを用いた蒸着により少なくとも1層の高屈折率層を形成するステップからなる成膜方法である。ここで、光学特性を必要とされる光学薄膜の低屈折率層全層の1/4以上の層を通常蒸着により形成し、高屈折率層全層の1/4以上の層をプラズマを用いた蒸着により成膜した。または、通常蒸着により低屈折率層全層を形成し、プラズマを用いた蒸着により高屈折率層全層を形成した。
上記第1又は第2の側面において、基板上にn(n≧3)層の多層膜を積層する場合に、プラズマを用いた蒸着により、基板側に位置し少なくとも基板に接する第1層を含む初期層、および、基板とは離反して位置し少なくとも最外層である第n層を含む外層の、少なくとも一方を形成した。
本発明の第3の側面は、上記第1又は第2のいずれかに記載の成膜方法を用いて形成された多層膜である。
また、本発明の第4の側面は、基板及び基板上に形成された上記第3の側面の多層膜からなる光学部品である。
また、本発明の第5の側面は、受光部を有する光学製品であって、受光部に上記第3の側面の多層膜を形成した光学製品である。
本発明の第6の側面は、多層膜の成膜装置であって、通常蒸着を行う第1の成膜手段、プラズマを用いた蒸着による第2の成膜手段、および、予め入力された成膜プログラムに基づいて通常蒸着による成膜とプラズマを用いた蒸着による成膜とを切り換える制御装置を備え、第1の成膜手段によって、通常蒸着により圧縮応力を示す蒸着膜を形成し、第2の成膜手段によって、プラズマを用いた蒸着により引張応力を示す蒸着膜を形成する成膜装置である。
本発明の第7の側面は、多層膜の成膜装置であって、通常蒸着を行う第1の成膜手段、プラズマを用いた蒸着を行う第2の成膜手段、および、予め入力された成膜プログラムに基づいて通常蒸着による成膜とプラズマを用いた蒸着による成膜とを切り換える制御装置を備え、第1の成膜手段によって、通常蒸着により少なくとも1層の低屈折率層を形成し、第2の成膜手段によって、プラズマを用いた蒸着により少なくとも1層の高屈折率層を形成する成膜装置である。
本発明により、通常蒸着による成膜とプラズマを用いた蒸着による成膜とを交互に繰返し、圧縮応力を示す蒸着膜と引張応力を示す蒸着膜とを交互に積層することにより、積層多層膜の内部応力を相殺することが可能となる。これにより膜の密着性を高め、クラックの発生を抑制し、成膜後の波長シフトの小さい光学素子を製造することが可能となる。加えて、通常蒸着により低屈折率材料の成膜を行い、プラズマを用いた蒸着により高屈折率材料の成膜を行って積層することにより、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが可能となる。これにより反射帯域を広くすること、あるいは同等の反射帯域を有する素子を少ない膜総数で設計することができる。
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、高屈折率材料で成膜された高屈折率層1と低屈折率材料で成膜された低屈折率層2とを交互に積層してなる光学薄膜3を基板4に形成し、層界面からの多重反射を利用して所望のフィルタリング特性を得る光学素子を示す。実施例は光学フィルタを作製するものとするが、本発明により作製可能な多層膜は光学薄膜に限定されるものではない。
高屈折率層1および最外層に位置する低屈折率層2はプラズマを用いた蒸着により形成し、最外層を除く他の低屈折率層2は通常蒸着により形成した。説明のため、プラズマを用いた蒸着により形成した層を網掛けにて示す。基板に接する第1層目が低屈折率材料である場合は、プラズマを用いた蒸着により全ての高屈折率層1および第1層目に位置する低屈折率層2を形成し、通常蒸着により第1層目を除く他の低屈折率層2を形成すればよい。また、高屈折率材料として引張応力を示す成膜材料を用い、低屈折率材料として圧縮応力を示す成膜材料を用いた。ここで、引張応力を示す成膜材料とは通常蒸着においてその蒸着膜が引張応力を示す成膜材料であり、例えばTiO、ZrO等が挙げられる。圧縮応力を示す成膜材料とは通常蒸着においてその蒸着膜が圧縮応力を示す成膜材料であり、例えばSiO、ZnS等が挙げられる。
なお、最外層をプラズマを用いた蒸着により形成するのは、成膜後の水分吸着等によって環境試験後にクラックが発生するのを防止するためである。
圧縮応力を示す成膜材料の成膜をプラズマを用いた蒸着により行うと引張応力を示す蒸着膜が形成されるため、実施例は圧縮応力を示す成膜材料を通常蒸着により成膜したことを特徴とする。通常蒸着により圧縮応力を示す成膜材料の成膜を行い、プラズマを用いた蒸着により引張応力を示す成膜材料の成膜を行うことで、圧縮応力を示す蒸着膜と引張応力を示す蒸着膜とを交互に積層させることができ、積層多層膜の内部応力を相殺し基板の反りやクラックの発生を抑制することができる。加えて通常蒸着とプラズマを用いた蒸着とを繰返すことにより、膜の密着性を向上させ環境試験後にもクラック等の生じない多層膜を形成することができる。光学素子の作製においては、成膜後の光学特性の経時変化を抑制し精度の向上に貢献する。また、積層多層膜が基板に加える応力が小さいため、基板材料を限定せず効果を得ることができる。例えば硝材よりも耐性の小さいプラスチック等の基材を用いても、基板の反り、クラック、膜剥れを抑止することができる。
図2は一例としての成膜装置を示す。図1に示す素子の作製には例えば図2に示す成膜装置を用いればよい。排気手段14およびガス導入手段15を備える成膜室10内部には2つの蒸発源12が配置され、蒸発源12に対向する位置には基板11の保持手段である基板ドーム13が配置される。蒸発源12は、成膜材料18に電子ビームを照射し加熱する電子銃20、および、成膜材料18を遮蔽する開閉自在のシャッタ19を具備し、一方の蒸発源は成膜材料として高屈折率材料を他方の蒸発源は成膜材料として低屈折率材料を用いるものとする。あるいは、成膜室10内に配置した1つの蒸発源12に成膜材料供給機構等を用いて高屈折率材料と低屈折率材料とを適宜供給してもよい。
また同図の成膜装置はイオンソース17を備え、電子銃を用いた通常蒸着(以下EB法と称す。)に加えてプラズマを用いた蒸着としてイオンビームアシスト蒸着(以下、IAD法と称す。)を実施可能であることを特徴とする。成膜室10外部には、少なくとも蒸発源12およびイオンソース17に接続する制御装置16が備えられ、成膜方法および成膜条件は制御装置16により制御し、予め入力された成膜プログラムに則ってEB法とIAD法とを切り換えればよい。
EB法により成膜を行う場合は、排気手段14およびガス導入手段15を用いて成膜室10内を所定の真空雰囲気に維持し、シャッタ19を閉じた状態で成膜材料18に電子ビームを照射し成膜材料18を加熱気化させる。溶かし込み、レート等の諸条件が整った時点でシャッタ19を開き成膜を開始する。成膜材料18は成膜室10内を飛散し、基板11上に堆積することで薄膜を形成する。膜厚が目標値に到達したらシャッタ19を閉じ、電子銃20等を停止させて成膜を終了させればよい。
IAD法により成膜を行う場合は、通常蒸着同様所定の真空雰囲気を維持し、シャッタ19を閉じた状態で成膜材料18に電子ビームを照射する。同時に、イオンソース17内部に導入したガスを電離させてプラズマを生成し、プラズマ中のガスイオンを引き出して基板に照射する。諸条件が整った時点でシャッタ19を開き成膜を開始する。シャッタ19を開くと成膜材料18は成膜室10内を飛散し、イオンソース17からは基板11にガスイオンが照射されるため、その運動エネルギーによるイオンアシスト効果を得て基板11に付着力の強い緻密な膜が形成される。膜厚が目標値に到達したらシャッタ19を閉じ、電子銃20およびイオンソース17等を停止させて成膜を終了させればよい。
同図の装置は、プラズマを用いた蒸着としてIAD法を選択するが、これに限らずイオンプレーティング法やスパッタリング法等を選択してもよい。また、通常蒸着としてEB法を選択するものとするが、これに限らず抵抗加熱、高周波誘導加熱、レーザビーム加熱等を選択してもよい。成膜装置は通常蒸着を行う成膜手段とプラズマを用いた蒸着を行う成膜手段の双方を備えていればよく、成膜手段の切り換えは予め入力されたプログラムに基づいて自動制御することが望ましい。
以下、図2に示す成膜装置を用いて図1に示す光学素子を実際に作製した結果を示す。作製した光学薄膜の膜総数は40層であり、高屈折率材料としてTiOを低屈折率材料としてSiOを用いた。EB法及びIAD法を用いて成膜する際の条件は表1に示す通りである。
Figure 0004804830
本実施例により作製した光学素子の、成膜直後の外観目視、環境試験後の外観目視、および、環境試験後の波長シフト量を表2に示す。環境試験では温度60℃、湿度90%にて作製した光学素子を72時間放置した。波長シフトとは、反射率が50%(波長500nm付近)の波長の環境試験前後の変化量を意味する。比較対象のため、表1に示す成膜条件にて図1に等しい膜設計の光学素子をEB法のみで作製した素子、および、同じく表1に示す成膜条件にて図1に等しい膜設計の光学素子をIAD法のみで作製した素子の評価を併せて示す。
Figure 0004804830
IAD法はイオン照射による基板加熱及びイオンソースの輻射熱による基板の温度上昇が大きく、基板と薄膜の線膨張係数の差が大きい時は成膜後室温に戻したときに応力が発生して反りやクラックが発生しやすいという課題があり、IAD法のみで作製した素子は成膜直後にクラックが生じてしまっている。また、EB法により形成した膜は密度が低く成膜後水分吸着等を原因としてクラックが発生しやすいという課題があり、EB法のみで作製した素子は環境試験後にクラックが生じてしまっている。本実施例でIAD法とEB法とを組み合わせることにより、成膜直後および環境試験後においてもクラックの発生は確認できず、膜の密度を高く保ちながらも多層膜全体の膜応力を低減した素子が作製されたことがわかる。
また表2より、EB法のみあるいはIAD法のみで作成した素子と比して本実施例により作成した素子は環境試験後の波長シフトが非常に小さいことがわかる。通常蒸着とプラズマを用いた蒸着とを交互に行うことにより、成膜後の光学特性の経時変化を抑え、光学素子の精度向上に貢献する。
図3は、表2に示す各光学素子の分光特性を示す。EB法により成膜した高屈折率層の屈折率(nH)は2.0であり、低屈折率層の屈折率(nL)は1.4であった。また、IAD法により成膜した高屈折率層の屈折率(nH)は2.4であり、低屈折率層の屈折率(nL)は1.45であった。本実施例による高屈折率層の屈折率(nH)は2.4であり、低屈折率層の屈折率(nL)は最外層のみ1.45でありその他は1.4である。図より、分光特性は本実施例が最も広い波長範囲で高い反射率をもっていることがわかる。
一般的に同じ材料を用いても成膜後の屈折率は通常蒸着を行った場合よりもプラズマを用いた蒸着を行った場合の方が高くなるため、プラズマを用いた蒸着により高屈折率材料の成膜を行い、通常蒸着により低屈折率材料の成膜を行うことにより、高屈折率材料と低屈折率材料の屈折率差を大きくすることができる。これにより、同じ膜総数の光学薄膜において高反射ミラー等を設計する際に反射帯域幅を広げることが可能となる。即ち、従来よりも少ない膜総数で従来に等しい反射帯域幅を得ることが可能となり、膜設計を容易にし、同様の光学特性を有する光学薄膜の生産性を著しく向上させる。膜総数の低減は、同時に光学薄膜全体の応力低減に貢献し、クラック発生の軽減にも効果を奏する。
加えて、1層の薄膜を成膜する工程のみに着目すれば、成膜方法および成膜条件は同一であるため、屈折率の制御が容易であり再現性が確保されるという効果もある。膜総数の減少および屈折率制御精度の向上により、所望の光学特性を有する光学素子を容易に作製することが可能となる。
上記実施例では各薄膜を成膜する材料にTiO,SiOを用いたが,その代わりにMgF,ZrO,Al,Ta等を用いても良い。
尚、プラズマを用いた蒸着を利用した低屈折率層2は多層膜の空気側に近い1層のみとしたが、膜応力によるクラックが発生しない範囲で層数を増やすことで、環境試験後にクラックが発生しにくくなるようにしてもよい。あるいは、基板側に位置する低屈折率層2をIAD法により成膜することで、基板と膜との密着性を高め膜割れを防止するようにしてもよい。例えば、n層の多層光学薄膜を、第1層を含み基板側に位置する初期層、最外層を含み基板とは離反して位置する外層、および、初期層と外層との間に位置する中間層とに区分けし、プラズマを用いた蒸着により初期層および外層の一方または双方を形成し、プラズマを用いた蒸着と通常蒸着とにより中間層を形成してもよい。初期層および外層の層数は適宜選択すればよい。
実施例はプラズマを用いた蒸着により最外層と第1層目とを形成するものであるが、通常蒸着により低屈折率層全層を形成し、プラズマを用いた蒸着により高屈折率層全層を形成してもよい。もしくは通常蒸着により低屈折率層の一部を形成し、プラズマを用いた蒸着により高屈折率層の一部を形成してもよい。通常蒸着により低屈折率層全層の少なくとも1/4以上の層を形成し、プラズマを用いた蒸着により高屈折率層全層の少なくとも1/4以上の層を形成することが効果的である。
実施例は圧縮応力を示す成膜材料と引張応力を示す成膜材料とを積層するが、圧縮応力を示す成膜材料を2種選びこれを積層させてもよい(ここで、一方の材料は、プラズマを用いた蒸着によって成膜した場合にその蒸着膜は引張応力を示すものである)。通常蒸着とプラズマを用いた蒸着とを交互に繰返すことにより、圧縮応力を示す蒸着膜と引張応力を示す蒸着膜とが交互に積層され、同様の効果を得ることができる。
本発明の成膜方法を用いて作製した光学薄膜(多層膜)は各種の光学部品、光学製品等に適用できる。例えば、図1において、基板4にプラスチックやガラス等の基材を用いてこれに所定のフィルタ特性を有する光学薄膜3を形成し、基板4の光学特性と光学薄膜3のフィルタ特性を考慮して所望の分光特性が得られるように膜設計することにより、オプティカルローパスフィルタ等の光学部品を形成することができる。また、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話のような受光部及び受光部からの入射光の処理装置を有する光学製品において、その受光部に上記の光学薄膜を形成することもできる。これにより、反射帯域が広く信頼性の高い光学部品、光学製品等を得ることができる。
本発明の光学素子を示す図 成膜装置概略図 実施例により作製した光学素子の分光特性を示す図
符号の説明
1 高屈折率層
2 低屈折率層
3 光学薄膜
4 基板
10 成膜室
11 基板
12 蒸発源
13 基板ドーム
14 排気手段
15 ガス導入手段
16 制御装置
17 イオンソ−ス
18 成膜材料
19 シャッタ
20電子銃

Claims (5)

  1. TiO からなる高屈折率層とSiO からなる低屈折率層とを交互に積層してなる多層膜の成膜方法であって、
    基板上にn(n≧3)層の該多層膜を積層する場合に、
    第1層から第n−1層として、
    プラズマを用いない通常蒸着により低屈折率層を形成するステップ、及び、
    プラズマを用いた蒸着により高屈折率層を形成するステップ
    を備え、さらに、
    該基板からみて最外層となる第n層として、該プラズマを用いた蒸着により該低屈折率層を形成するステップ
    を含むことを特徴とする成膜方法。
  2. 請求項1記載の成膜方法であって、さらに、
    該基板に接する第1層を、該プラズマを用いた蒸着により形成するステップを含むことを特徴とする成膜方法。
  3. 基板及び該基板上に請求項1又は2記載の成膜方法によって形成された多層膜からなる光学部品。
  4. 受光部(基板)を有する光学製品であって、該受光部に請求項1又は2記載の成膜方法によって多層膜が形成されたことを特徴とする光学製品。
  5. 多層膜の成膜装置であって、
    プラズマを用いない通常蒸着を行う第1の成膜手段、プラズマを用いた蒸着を行う第2の成膜手段、および、予め入力された成膜プログラムに基づいて通常蒸着による成膜とプラズマを用いた蒸着による成膜とを切り換える制御装置を備え、
    基板上にSiO からなる低屈折率層とTiO からなる高屈折率層とが交互に積層されてn(n≧3)層の該多層膜が積層される場合に、
    第1層から第n−1層として、
    低屈折率層が該第1の成膜手段によって形成され、
    高屈折率層が該第2の成膜手段によって形成され、
    該基板からみて最外層となる第n層として、該低屈折率層が第2の成膜手段により形成されること特徴とする成膜装置。
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