JP2018036325A - Ndフィルタ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】可視域の分光透過率について平坦なもの以外のものとすることができ、透過率の大きさの変更が容易に行えるNDフィルタや、その製造方法を提供する。【解決手段】NDフィルタN1は、基板Kと、その基板の1以上の面に配置された光吸収膜F1を備えている。光吸収膜F1は、NiOx(xは0を超えて1未満)から成る光吸収層から成り、その光吸収層は、膜厚方向に均一である。かようなNDフィルタN1の光吸収層は、基板Kに対し、Niを、一定の電圧によってイオン化した一定流量の酸素ガス及び所定流量の希ガスの混合ガスである一定のイオンビームを基板Kに照射しながら蒸着することで製造される。【選択図】図4

Description

本発明は、ND(Neutral Density)フィルタ、及びNDフィルタの製造方法に関する。
NDフィルタとして、下記特許文献1,2のものが知られている。
特許文献1のNDフィルタ(実施例1,2)は、RFマグネトロンスパッタ装置を用いてSiO膜が形成される。更に、酸素60%,アルゴン40%の混合ガスをイオン化ガスとし且つイオンビーム加速電圧やイオンビーム電流を段階的に変化させたDCイオンビーム法を併用して、酸化金属部(NiO)と非酸化部Niを有するNiO膜(x≦1)が形成される。NiO膜の酸化金属部は、基板またはSiO膜との界面に配置され、非酸化部Niを挟んでおり、非酸化部Niより薄く、前記界面に近いほどxが大きく、非酸化部Niに近いほどxが小さく、非酸化部Niとの界面においてx=0となる。
特許文献2のNDフィルタは、ロールトゥロールプロセスのスパッタリングロールコータにより形成された、NiあるいはNi合金(Ti,Al,V,W,Ta,Siとの合金)の膜を備えている。このスパッタリングロールコータは、フィルム搬送方向に対して垂直な方向に膜厚分布(グラデーション濃度分布)を施すことが可能な遮蔽マスクを備えている。
特開2006−308810号公報 特開2010−128259号公報
特許文献1のものでは、イオンビーム加速電圧やイオンビーム電流を段階的に変化させることが必要であり、成膜に手間がかかる。又、NiとNiOの混合膜では、可視域における透過率分布は、特許文献1の図5や図7のようなフラット(平坦)なものにしかならない。更に、当該文献の実施例1,2を比較すれば分かる通り、NiやNiOの膜厚を変化させても、可視光の透過率の大きさは変化しない(当該文献の図5,図7参照)。
特許文献2のものでは、スパッタリング法によりグラデーション濃度分布を有する膜が形成されるが、NiあるいはNi合金(NiTi合金等)の膜であり、濃度の薄い部分(膜厚の小さい部分)では可視域全体でフラットな透過率の大きさが比較的に小さく、濃度の濃い部分(膜厚の大きい部分)では可視域全体でフラットな透過率の大きさが比較的に大きくなるものの、結局可視域における透過率分布はフラットなものにしかならない。
そこで、請求項1〜3,7〜8に記載の発明は、可視域の分光透過率について平坦なもの以外のものとすることができ、透過率の大きさの変更が容易に行えるNDフィルタ,NDフィルタの製造方法を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、NDフィルタにおいて、基板と、前記基板の1以上の面に配置された光吸収膜と、を備えており、前記光吸収膜は、NiO(xは0を超えて1未満)から成る光吸収層を含んでおり、前記光吸収層は、膜厚方向に均一であることを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、基板と、前記基板の1以上の面に配置された光吸収膜と、を備えており、前記光吸収膜は、NiO(xは0を超えて1未満)から成る光吸収層を含んでおり、前記光吸収層は、一定の電圧によってイオン化した一定流量の酸素ガスによるイオンアシスト蒸着で形成されていることを特徴とするものである。尚、本発明において、前記光吸収層は、一定の電圧によってイオン化した一定流量の酸素ガスによるイオンアシスト蒸着で形成される程度の密度を有していると捉えられても良い。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、基板と、前記基板の1以上の面に配置された光吸収膜と、を備えており、前記光吸収膜は、NiO(xは0を超えて1未満)から成る光吸収層を含んでおり、前記光吸収層は、一定の電圧によってイオン化した一定流量の酸素ガス及び所定流量の希ガスの混合ガスによるイオンアシスト蒸着で形成されていることを特徴とするものである。尚、本発明において、前記光吸収層は、一定の電圧によってイオン化した一定流量の酸素ガス及び所定流量の希ガスの混合ガスによるイオンアシスト蒸着で形成される程度の密度を有していると捉えられても良い。又、イオン化した希ガスを含むイオンビームを用いたイオンアシスト蒸着で形成されることでNiOに希ガス元素が混入することに鑑み、本発明において、前記光吸収層には希ガス元素が混入していると捉えられても良く、あるいは、前記光吸収膜は、NiO(xは0を超えて1未満)と希ガス元素から成る光吸収層を含んでいると捉えられても良い。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、前記光吸収層は、膜厚勾配を有していることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、上記発明において、前記光吸収膜は、前記光吸収層と屈折率の異なる誘電体層を含んでいることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、上記発明において、波長400nmの透過率を起点として、当該波長より長波長側の透過率分布が、波長700nmまでの域内において、平坦であり、又は単調に減少し、若しくは単調に増加していることを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、NDフィルタの製造方法において、基板に対し、Niを、一定の電圧によってイオン化した一定流量の酸素ガスを基板に照射しながら蒸着することで、光吸収層を形成することを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項8に記載の発明は、NDフィルタの製造方法において、基板に対し、Niを、一定の電圧によってイオン化した一定流量の酸素ガス及び所定流量の希ガスの混合ガスを基板に照射しながら蒸着することで、光吸収層を形成することを特徴とするものである。
請求項9に記載の発明は、上記発明において、前記Niと前記基板の間に、前記光吸収層に対して膜厚勾配を付与するマスクを配置したことを特徴とするものである。
請求項10に記載の発明は、上記発明において、前記Niと屈折率の異なる誘電体と、前記Niとを、それぞれ1回以上、前記基板に蒸着したことを特徴とするものである。
本発明によれば、可視域の分光透過率について平坦なもの以外のものとすることができ、透過率の大きさの変更が容易に行えるNDフィルタ,NDフィルタの製造方法を提供することが可能となる、という効果を奏する。
(a)はイオンアシスト蒸着装置の模式図であり、(b)はマスクを有するイオンアシスト蒸着装置の模式図であり、(c)は通常の蒸着装置の模式図である。 比較例1〜4の分光透過率に係るグラフである。 比較例4〜5の分光透過率に係るグラフである。 NDフィルタの模式的な断面図であって、(a)比較例1〜5,(b)実施例1〜7,(c)実施例8,(d)実施例9,(e)実施例10に係るものである。 実施例1〜3の分光透過率に係るグラフである。 実施例4〜7の分光透過率に係るグラフである。 実施例4〜7における膜厚と透過率の関係に係るグラフである。 実施例8における基板ホルダセット時回転中心からの距離z毎の分光透過率に係るグラフである。 実施例8における基板ホルダセット時回転中心からの距離zと400nm以上700nm以下の波長域における平均透過率の関係に係るグラフである。 実施例9で用いられるNiOの分光屈折率nの分布(実線,左目盛)と消衰係数kの分布(点線,右目盛)に係るグラフである。 実施例9で用いられるのSiOの分光屈折率nの分布(実線,左目盛)と消衰係数kの分布(点線,右目盛)に係るグラフである。 実施例9の分光透過率及び分光反射率に係るグラフである。 実施例10の箇所Ka〜Ke毎の分光透過率に係るグラフである。 実施例10の箇所Ka〜Ke毎の分光反射率に係るグラフである。 実施例10における箇所Ka〜Ke毎の400nm以上700nm以下の波長域における平均透過率に係るグラフである。
以下、本発明に係る実施の形態の例が、適宜図面を用いて説明される。尚、本発明は、以下の例に限定されない。
本発明に係るNDフィルタは、少なくとも波長が可視域(例えば400ナノメートル(nm)以上800nm以下、400nm以上760nm以下、400nm以上700nm以下、410nm以上760nm以下、又は420nm以上760nm以下)内である光(可視光)をほぼ均一に透過するフィルタである。
本発明では、可視域内で透過率の最大値と最小値の差が好ましくは15ポイント以内であり、更に好ましくは10ポイント以内である。
本発明に係るNDフィルタでは、基板の何れかの片面あるいは両面に対し、光吸収膜が形成されている。光吸収膜より基板側及び表面側の少なくとも一方において、ハードコート膜や防汚膜、反射防止膜、導電膜等の他の1以上の膜が付与されても良い。尚、ハードコート膜や導電性膜等は光吸収膜に含まれるものとして扱われても良い。
光吸収膜は、両面に形成される場合、何れの膜も基板からみて同一の積層構造とすることが好ましい。
基板は透明(半透明を適宜含む)であればプラスチックやガラスを始めとしていかなる材質であっても良いが、好ましくはアルカリ元素を含んだガラスであり、より好ましくは強化ガラスであり、例えば化学強化ガラスである。
強化ガラス基板は、表面に圧縮応力層が形成されているので、表面にクラックが生じたとしても、圧縮応力によりクラックの成長が抑制され、通常の(強化処理されていない)ガラス基板よりも衝撃に強い。
光吸収膜は、1あるいは複数の層を含む膜であり、可視光を吸収する光吸収層を1以上備えていて、上記の可視光の均一な透過(ND)を実現する機能を具備する。
光吸収層は、NiO(xは0を超えて1未満)からなるNiO層である。光吸収層が複数設けられるようにし、その一部がNiO(xは0を超えて1未満)以外の金属又は金属酸化物等の他の材質により形成されたものとされても良いが、好ましくは1以上の光吸収層の全てがNiO層とされる。
可視光の均一な透過のための吸収については、吸収[%]が簡易的に「100−(透過率[%]+反射率[%])」で表されることから、可視域における分光透過率分布や分光反射率分布が平坦であることによって把握することができ、反射率が小さい場合には分光透過率分布が平坦であることによって把握することができる。吸収の平坦性については、吸収の最大値と最小値の差で評価され、分光透過率分布の平坦性については、透過率の最大値と最小値の差で評価され、いずれも差が小さいほど平坦性が高い。高い平坦性は、均一な減光をもたらすものとして強いニーズが存在するが、ある程度の平坦性を確保したうえで、可視域内の短波長域(青色域)より長波長域(赤色域)の透過率を高くしたり、あるいは青色域より赤色域の透過率を低くしたりして多彩なバリエーションを提供するニーズも存在する。
尚、例えばNDフィルタ付きのカメラの撮像素子で利用する光はNDフィルタの透過光であるところ、NDフィルタにおける反射光は撮像素子や光学系におけるノイズの原因となるからNDフィルタの反射率を数%以下程度に低減する要請があり、よって上述の平坦な分光透過率分布のためには均一な吸収が必要となる。
又、光吸収膜が複数の層を有する光学多層膜である場合、NDフィルタ全体として所望の透過率を実現するため、光吸収層による可視光の吸収は、光学多層膜の他の層や他の膜あるいは基板における吸収や透過率や反射率の分布に応じた分布とされて良い。
又、光吸収膜は、可視光の反射を防止する機能を適宜合わせて具備する。
光吸収膜は、例えば、低屈折率材料及び高屈折率材料を含む複数種類の誘電体材料あるいは金属材料若しくは金属酸化物材料から形成される。低屈折率材料としては、酸化ケイ素(特にSiO)が例示され、高屈折率材料としては、酸化ジルコニウム(特にZrO)、酸化チタン(特にTiO)、酸化タンタル(特にTa)、酸化ニオブ(特にNb)の少なくとも何れかが例示される。光吸収膜において、好ましくは、低屈折率材料からなる低屈折率層と高屈折率材料からなる高屈折率層が、それぞれ1層以上配置され、より好ましくは、交互に配置される。かような光吸収膜における層の数は、特に限定されないが、優れた反射防止機能を具備させる観点から、好ましくは5層以上であり、より好ましくは7層以上である。光吸収層は、NiO(xは0を超えて1未満)等であり、殆どの誘電体材料より屈折率が高いことから、主に高屈折率層として取り扱える。かような光吸収膜における最も基板側の層(基板に最も近い層)を第1層とした場合、第1層が低屈折率層とされても良いし高屈折率層とされても良いが、好ましくは奇数層目が低屈折率層であり、偶数層目が高屈折率層である。
又、光吸収層(NiO層)は、イオンアシスト蒸着(Ion Assist Depotition;IAD)によって形成される。NiO層を始めとする蒸着膜の構造、あるいはイオンアシスト蒸着の有無による構造の相違は、当業者にとっても直接の特定が極めて困難である。又、蒸着時のイオンアシストの実施によって蒸着膜の構造を特定することは、当業者にとって分かり易く有用である。
尚、イオンアシスト蒸着の有無による構造の相違を表し得るものとして、蒸着膜の密度が例示される。NiO層を始めとする蒸着膜の密度は、当業者にとっても直接の測定が極めて困難であるが、蒸着時のイオンアシストの有無により、蒸着膜の密度の程度が相違し、イオンアシストが有る場合には、イオンアシストが無い場合より密度が高い。
又、イオン化した希ガスを含むイオンビームを用いたイオンアシスト蒸着の有無による構造の相違を表し得るものとして、希ガス元素の含有が例示される。蒸着膜における(主成分以外の元素の)組成の厳密な把握は、当業者によっても測定に多大な手間がかかるのであるが、イオン化した希ガスを含むイオンビームによるイオンアシスト蒸着で形成されるNiOには、その量や割合はともかく、イオンビームの作用により希ガス元素が混入することが分かった。よって、イオン化した希ガスを含むイオンビームによるイオンアシストが有る場合には、かようなイオンアシストが無い場合と異なり、前記光吸収層には希ガス元素が混入しており、光吸収膜はNiO(xは0を超えて1未満)と希ガス元素から成っている。
更に、NiO層のxは、蒸着時の各種条件設定等により、次のように制御可能である。
即ち、NiO層の形成において、図1(a)に示されるようなイオンアシスト蒸着装置1が用いられる。イオンアシスト蒸着装置1は、図示されないポンプにより内部が真空とされるチャンバ2と、チャンバ2内において垂直中心軸の周りで回転可能に水平に設けられ基板Kを保持する円盤状の基板ホルダ4と、基板ホルダ4と対向して配置され蒸発源Jを保持する蒸発源ホルダ6と、蒸発源Jを加熱する加熱手段7と、蒸発源ホルダ6側に設けられたイオンガン8と、を有している。
そして、イオンアシスト蒸着装置1において、真空のチャンバ2内で蒸発源JとしてのNiが加熱手段7により加熱されると共に、イオンガン8から基板ホルダ4により回転移動された基板Kへ向けてイオン化したガスであるイオンビームIが照射される。イオンビームIは、少なくとも酸素(O)ガスを含む。イオンビームIに係るガスは、アルゴンガスを始めとする希ガスとの混合ガスとされても良い。即ち、イオンビームIは、イオン化した酸素ガス、あるいはイオン化した酸素ガスと希ガスの混合ガスである。
加熱により蒸発源Jから蒸発したNiは、イオンビームIに係る酸素ガスの作用等により、基板Kの表面においてNiO膜となる(x=1)。NiO膜の表面では、Ni−O間の化学結合の一部がイオンビームIにより切断され、酸素欠損が形成される。かような酸素欠損の量に応じてxが変化し、NiO層(xは0を超えて1未満)が形成される。Ni−O間の化学結合がイオンビームIにより全て切断される可能性は現実的にはゼロであり、xは0を超える。他方、イオンビームIを照射しているのにもかかわらず、Ni−O間の化学結合が全く切断されない可能性も実際的にはないとみて良く、よってxは1未満となる。
酸素欠損の量即ちxの値は、蒸着源Jの加熱やイオンビームIの照射を同じ条件で連続して行うことで、1つの層において一定にすることができ、かように蒸着されたNiO層は、膜厚方向において均一な組成となる。ここでの同じ条件は、例えばイオンガン8における一定の電圧(一定のガスのイオン化電圧)であり、又酸素ガス若しくは酸素ガスと希ガスの一定の流量である。酸素ガスと希ガスの混合ガスの場合は、1つのNiO層の蒸着中に流量が一定であれば流量の大きさは互いに同じでも良いし異なっていても良く、かような趣旨を表すため、酸素ガスの流量が「一定流量」とされ、希ガスの流量が「所定流量」とされて良い。かような同条件におけるイオンビームIの照射は、一定したイオンビームIの照射と捉えることができる。
そして、xの値は、イオンビームIの各種の特性(イオンガン8の各種の設定)により制御される。例えば、イオンビームIの加速電圧やイオンビームIの電流の大きさにより、xの大小を変化させることができる。又、希ガスとの混合ガスが用いられる場合には、酸素ガスと希ガスの各導入量や混合比を変更することにより、xの大小を変化させることができる。
かようにxの値は制御可能であるが、直接同定することは層全体を原子の見られる電子顕微鏡等で観察し尽くす必要があって現実的でなく、当業者にとっても直接の測定が極めて困難である。従って、NiO層(xは0を超えて1未満)と特定されることは有用であり、更に適宜蒸着時のイオンビームIの特性等でNiO層が特定されることは、当業者にとって分かり易く有用である。
又、図1(b)に示されるように、イオンアシスト蒸着装置1に対して更にマスク10が付加されたイオンアシスト蒸着装置11によって、基板面内でNiO層あるいは光吸収膜の膜厚勾配(蒸着濃度勾配)が付与され、当該膜厚勾配による透過率勾配が付与されたNDフィルタが形成されても良い(グラデーションNDフィルタ)。
マスク10は、基板ホルダ4と蒸着源Jの間に配置されており、基板ホルダ4の回転中心からの距離zにおける基板ホルダ4(ないしその下面に固定された基板K)の軌跡の一部を、距離zに応じて蒸着源Jから遮蔽するように、上面や下面の形状ないし基板ホルダ4に対する位置が決定されている。
例えば、基板ホルダ4下面に固定された基板Kの最も内側の部分が距離z=z1に配置され、最も外側の部分が距離z=z2に配置されている場合に、マスク10の形状や配置を、半径z1の円軌道を比較的短く遮蔽し、半径z2の円軌道を比較的長く遮蔽し、その間の半径における円軌道を遮蔽する割合が単調増加するようなものとして、Niをイオンアシスト蒸着すれば、基板Kにおける上記内側の部分の膜厚が最も厚く、上記外側の部分の膜厚が最も薄く、その間の膜厚が上記内側の部分から上記外側の部分にかけて単調減少していくNiO層が下面に形成された基板Kが得られる。
かような光吸収膜が配置された基板からなるNDフィルタは、好適にはカメラ用とされる。
カメラ用NDフィルタは、カメラのレンズの前等に後付けされるものであっても良いし、カメラの光学系に組み込まれた(カメラに内蔵された)ものであっても良い。
又、カメラ用NDフィルタは、車載カメラ用であっても良いし、警備カメラ用であっても良いし、医療機器付属のカメラ用であっても良い。
次いで、本発明の好適な実施例、及び本発明に属さない比較例が、数例説明される(実施例1〜10,比較例1〜5)。尚、本発明の捉え方により、実施例が比較例となったり、比較例が実施例となったりすることがある。
≪実施例1〜7及び比較例1〜5等≫
実施例1〜7及び比較例1〜5は、ガラス基板の片面に、光吸収膜が配置されて成る。光吸収膜は、Ni若しくはNiO又はNiOから成る光吸収層のみを有している。
比較例1の光吸収層の形成においては、図1(c)に示されるような通常の蒸着装置21による通常の真空蒸着法が用いられる。蒸着装置21は、図示されないポンプにより内部が真空とされるチャンバ22と、チャンバ22内において垂直中心軸の周りで回転可能に水平に設けられ基板Kを保持する円盤状の基板ホルダ24と、基板ホルダ24と対向して配置され蒸発源Jを保持する蒸発源ホルダ26と、蒸発源Jを加熱する加熱手段27と、蒸発源ホルダ27側に設けられたガス導入部29とを有している。
蒸着装置21では、真空のチャンバ22内で蒸発源JとしてのNi(純度99.9%)が加熱され、蒸発したNiが基板ホルダ24により回転移動された基板Kへ到達すると共に、チャンバ22内にガス導入部29を介して(イオン化していない通常の)酸素ガスGが導入される。加熱手段27は、電子ビームを発射する電子銃であり、Niの加熱蒸発は、電子ビームの照射により行われる。比較例1では当該電子ビームの加速電圧は−6kV(キロボルト)、電流は250mA(ミリアンペア)である。又、蒸着開始時の真空度は7.5×10−4Pa(パスカル)であり、成膜時の基板の温度は130℃であり、蒸着レートは0.3nm/分であり、酸素ガスの導入量は20ml(ミリリットル)/分である。
比較例1の物理膜厚は、蒸着レートと蒸着時間の調整により、7nmとされている。
比較例2の光吸収層の形成は、酸素ガスの導入量が10ml/分であることを除き、比較例1と同様である。
比較例3の光吸収層の形成は、酸素ガスの導入量が6ml/分であることを除き、比較例1と同様である。
比較例4の光吸収層の形成は、酸素ガスの導入量が0ml/分であり、即ち酸素ガスが導入されないことを除き、比較例1と同様である。
比較例5の光吸収層の形成は、比較例4と同様であり、蒸着時間を調節(更に長く)することにより、物理膜厚が9nmとされている。
そして、これらの分光透過率が測定された。分光透過率は、可視域(ここでは400nm以上700nm以下)及びその隣接域(合わせて350nm以上800nm以下)の波長域で測定された。分光透過率の測定結果のうち、比較例1〜4については図2に、比較例4,5については図3に示される。尚、これらの図中における「cc」は、mlと同等であり、以下同様である。
蒸着時の酸素ガス導入量が互いに異なる比較例1〜4の分光透過率(図2)において、何れも400nmで極大値(最大値)を有すると共に、800nmで最低値を有しており、最大値と最低値の差は5ポイント程度であるものの、何れも400nmの極大値から長波長側で透過率が単調減少する分光特性となっている。
よって、イオンアシストを行わない通常の蒸着において、酸素ガス導入量を変化させても、得られる分光特性は殆ど変わらないと言え、酸素ガス導入量の制御によっては分光特性を変更することはできないと言える。
かような分光特性の不変性は、次のことからもたらされると考えられる。
即ち、比較例1〜3の光吸収層は、蒸着時における酸素ガスの導入により、蒸着材料のNiが酸化され、又通常の酸素ガスではNi−O結合の切断作用は及ぼされないので、何れもNiO層となっており、結局分光特性が同じになる。又、比較例4の光吸収層は、蒸着時において酸素ガスが導入されないところ、チャンバ22内には真空引きした後においても僅かな酸素や水が残留しており、その残留した酸素や水によっても十分にNiO層が形成され、仮に残留量が極めて少なく全体がNiOとならないとしても、Niの部分とNiOの部分に分かれるようになり、結局分光特性がさほど変わらない。
他方、酸素ガスが導入されない状態で膜厚を互いに異ならせた比較例4,5の分光透過率(図3)において、比較例5は、やはり比較例4と同様な分光特性を有している。
尚、比較例5の分光透過率は、700nm以上の長波長域で、僅かではあるが比較例4の分光透過率を上回っており、比較例4の分光透過率と逆転している。
よって、通常の蒸着において膜厚が制御されたとしても、分光特性を制御することができない。これは、比較例4,5が双方とも酸素ガス不導入で形成され、結局何れも光吸収層がNiO層(あるいはNi部分とNiO部分の合体した層)となっていることによるものと考えられる。
尚、比較例1〜5の構成が、図4(a)に模式的に示される。即ち、比較例1〜5のNDフィルタN0では、基板Kの片面に、NiO膜F0が形成されている。NiO膜F0は、通常の蒸着により成膜されている。尚、NiO膜F0は、通常の蒸着により形成される程度の密度を有しており、NiO膜F0には、希ガスは混入していない。
これに対し、実施例1〜7の光吸収層は、図1(a)のイオンアシスト蒸着装置1によるイオンアシスト真空蒸着法により形成される。
実施例1の光吸収層の形成では、イオン化されない酸素ガスの導入を除き、比較例1と同様の条件で蒸着される。実施例1の光吸収層の膜厚は、7nmである。
又、比較例1と異なり、実施例1の光吸収層の蒸着時にイオンガン8が用いられる。イオンガン8は、酸素ガスとアルゴンガス(希ガス)の混合ガスをイオン化してイオンビームIとし、これを基板Kへ向けて照射する。イオンビームIの加速電圧は600Vとされ、電流は900mAとされる。実施例1におけるイオン化酸素ガス導入量は40ml/分、イオン化アルゴンガス導入量は20ml/分である。
実施例2の光吸収層の形成は、イオン化酸素ガス導入量が10ml/分、イオン化アルゴンガス導入量が40ml/分であることを除き、実施例1と同様である。
実施例3の光吸収層の形成は、イオン化酸素ガス導入量が32.5ml/分、イオン化アルゴンガス導入量が17.5ml/分であることを除き、実施例1と同様である。
他方、実施例4の光吸収層の形成は、イオン化酸素ガス導入量が30ml/分、イオン化アルゴンガス導入量が20ml/分であり、膜厚が7nmではなく14nmであることを除き、実施例1と同様である。
実施例5の光吸収層の形成は、膜厚が10nmであることを除き、実施例4と同様である。
実施例6の光吸収層の形成は、膜厚が6nmであることを除き、実施例4と同様である。
実施例7の光吸収層の形成は、膜厚が3nmであることを除き、実施例4と同様である。
これら実施例1〜7の分光透過率についても比較例1〜5と同様に測定され(但し350nm以上850nmの波長域での測定である)、その結果のうち、実施例1〜3については図5に、実施例4〜7については図6に示される。
イオンアシスト蒸着時のイオン化混合ガスの条件設定(イオン化酸素ガスとイオン化アルゴンガスの各流量や混合比)を異ならせた実施例1〜3の分光透過率(図5)において、イオン化酸素ガスの導入量やアルゴンガスに対する導入比が大きい実施例1では、400nmから長波長側へ透過率が単調増加しており、可視域での最大値(700nmでの透過率)と最小値(400nmでの透過率)の差は4ポイント程度である。一方、イオン化アルゴンガスの導入量や酸素ガスに対する導入比が大きい実施例2では、400nmから長波長側へ透過率が単調減少しており、可視域での最大値(400nmでの透過率)と最小値(700nmでの透過率)の差は6ポイント程度である。他方、混合ガスの条件が実施例1,2の中間である実施例3では、可視域で平坦な分光透過率となっている(透過率55±0.5%程度)。
よって、イオンアシスト蒸着において、イオン化酸素ガスやイオン化アルゴンガスの各導入量やこれらの比を変化させると、得られる光吸収層の分光特性が変化し、これらの値の制御により、分光特性を変更することはできると言える。即ち、分光特性は、イオン化酸素ガスやイオン化アルゴンガスの各導入量やこれらの比の少なくとも何れかを制御することにより、分光透過率の形状について、400nmでの透過率を起点として、長波長側に単調増加するものとしたり、平坦なものとしたり、単調減少するものとしたりすることができる。ここで、単調減少や単調増加、平坦といった大局をみるに際し、1ポイント未満程度の透過率のブレは無視されても良い。
又、イオンアシスト蒸着において、1つの光吸収層の成膜中にイオンビームIや混合ガス等の条件設定は変更されず、蒸着が安定したものとなるし、得られる光吸収層は膜厚方向に均一な組成となって、整った構成となり、分光特性の制御や所望の分光特性の確保が行い易い。
かような分光特性の変化は、次のことからもたらされると考えられる。
即ち、図1(a)の蒸着源Jで加熱蒸発されたNiは基板Kの表面に堆積する。このとき、上述の比較例4,5において残留酸素であってもNiOとなることからすれば、まずはNiOとして堆積する。
そして、イオンアシスト蒸着装置1では、イオンガン8を備えており、蒸発物が堆積する基板Kの表面にイオンビームIが照射されている。イオンビームIのうちの主にイオン化アルゴンガスは、基板K表面のNiOを叩いてNi−O化学結合の一部を切断し、NiOとする。イオンビームIのうちの主にイオン化酸素ガスは、かように切断されたNi−O化学結合を、酸素原子の付与により修復する。又、イオンビームIは、基板K表面のNiOを叩き、NiOの密度を、イオンビームIが照射されない場合より高くする。更に、イオンビームIのうちの主にアルゴンガスの作用により、NiOにAr(アルゴン)が混入する。
従って、イオンビームIにおいてイオン化アルゴンガスが優位である場合には、Ni−O結合の切断が優位となり、xが比較的に小さいNiOが形成される。他方、イオンビームIにおいてイオン化酸素ガスが優位である場合には、Ni−O結合の修復が優位となり、xが比較的に大きいNiOが形成される。NiO層は、比較例1〜5のようなNiO層より密度が高くなり、又Arを有している。
アルゴンガスが混合されずイオン化酸素ガスのみである場合であっても、xは1とならず、1に近い1未満となる。これに対し、酸素ガスが混合されずアルゴンガスのみであると、NiOの堆積が比較的に不安定となり、よってイオン化酸素ガスは照射されることが好ましい。
蒸着時にイオンビームIの条件が一定であれば、チャンバ2内の真空の質によらずxは一定となり、光吸収層は均一に成膜される。
又、イオンビームIの条件を同一にして膜厚を異ならせた実施例4〜7の分光透過率(図6)は、何れも可視域で平坦なものとなっており、透過率の大きさが互いに異なっている。
膜厚と透過率の大きさの関係をみるため、実施例4〜7の可視域における平均透過率がそれぞれ求められ、更に膜厚を横軸とし当該平均透過率を縦軸とした平面にプロットされたグラフが作成された(図7)。
図7によれば、膜厚の増加により平均透過率が単調に減少していることが分かる。
従って、NiO層の膜厚を制御することで、透過率の大小を制御することができると言える。膜厚は、蒸着レートと蒸着時間により制御可能である。
尚、実施例1〜7の構成が、図4(b)に模式的に示される。即ち、実施例1〜7のNDフィルタN1では、基板Kの片面に、NiO膜F1が形成されている。NiO膜F1は、イオンアシスト蒸着により成膜されている。尚、NiO膜F1は、イオンアシスト蒸着により形成される程度の密度を有している。又、NiO膜F1には、Ar(アルゴン)が混入している。
≪実施例8等≫
更に、図1(a)のイオンアシスト蒸着装置1に代えて、グラデーションNDフィルタに係る図1(b)のイオンアシスト蒸着装置21により、膜厚勾配を有する光吸収層のみを備えた光吸収膜が基板Kの片面に形成された(実施例8)。マスク10の形状は、z1からz2にかけて円軌道の遮蔽度合が比例的に高くなるものとした。更に、z1=200mm(ミリメートル)、z2=700mmとされた。蒸着条件は、マスク10の設置ないし膜厚、及びイオン化酸素ガス導入量が30ml/分に代えて20ml/分であってイオン化アルゴンガス導入量が20ml/分に代えて30ml/分であることを除き、実施例4と同様である。
実施例8の分光透過率についても実施例1〜7と同様に測定された。但し、z=200mm(z1)に相当する基板Kの部分から、50mm毎に、z=650mmに相当する基板Kの部分まで、合計10箇所においてそれぞれ分光透過率が測定された。その結果は図8に示される。
図8によれば、zが増加するに従い、透過率が次第に上昇していることが分かる。又、何れの箇所においても、可視域における分光透過率は最大値と最小値の差が10ポイント程度となる状態で単調増加しており、分光透過率の形状は互いに同等であって、透過色は全ての箇所において同じ茶色である。
距離zと透過率の大きさの関係をみるため、実施例8の可視域における平均透過率が各箇所毎に求められ、更に距離zを横軸とし当該平均透過率を縦軸とした平面にプロットされたグラフが作成された(図9)。
図9によれば、距離zの増加により平均透過率が単調に増加していることが分かる。これは、基板Kの表面において、NiO膜の膜厚(濃度)がz1側からz2側にかけて徐々に薄くなることに対応している。
比較例4,5のように、イオンアシスト蒸着でないNiの蒸着により形成された光吸収層では、膜厚が変化すると、分光透過率の大きさがさほど変わらず且つ分光透過率の形状が変化してしまい、膜厚勾配を付けたとしても透過率が不変で色合いが不安定なものとなってしまう。
これに対し、実施例8では、透過率の勾配が、付与した膜厚勾配に応じたものとして、安定した色合いで付与される。膜厚勾配(マスク10の形状や配置)を調整すれば、任意の膜厚勾配を現出することができ、もって任意の透過率勾配(基板K表面における透過率の大小の分布)を有するグラデーションNDフィルタを作製することができる。
尚、実施例8の構成が、図4(c)に模式的に示される。即ち、実施例8のグラデーションNDフィルタN2では、基板Kの片面に、膜厚勾配を有する状態のNiO膜F2が形成されている。NiO膜F2は、マスク10を配置したイオンアシスト蒸着により成膜されている。NiO膜F2は、イオンアシスト蒸着により形成される程度の密度を有しており、NiO膜F2には、Arが混入している。マスク10が配置されたとしても、蒸着時にイオンビームIの作用はマスク10遮蔽部分以外の部分において及ぶこととなり、膜厚勾配が付与されたとしても、NiO層F2は膜厚方向において均一である。
≪実施例9等≫
実施例1〜7に対して更に表面反射率を低減するため、光吸収膜を、反射防止機能を有する多層膜としたNDフィルタが作製された(実施例9)。当該多層膜は、NiO層と、これと屈折率の異なる誘電体の層とを交互に積層したもので、実施例9において誘電体はSiOである。図10に、実施例9におけるNiOの光学定数が示され、図11に、実施例9におけるSiOの光学定数が示される。これら両図において、光学定数屈折率nは実線で左目盛において描かれ、消衰係数kは点線で右目盛において描かれる。
図4(d)において断面が模式的に示される実施例9のNDフィルタN3では、光吸収膜F3が基板Kの両面に形成され、各光吸収膜F3における構成は互いに同一である。即ち、実施例9のNDフィルタN3では、基板Kの両面に、同一多層構造の光吸収膜F3が形成される。各光吸収膜F3は、SiO層SとNiO層Mを交互に有するものであり、基板Kから数えて1層目がSiO層Sである7層構造である。各層の物理膜厚が、次の表1に示される。尚、白板ガラス製の基板Kの肉厚は、1mmである。
Figure 2018036325
多層交互構造の光吸収膜F3は、イオンアシスト蒸着装置1において蒸着ホルダ4を複数(2個)配置し、複数の蒸着ホルダ4の何れかに蒸着源JとしてSiO又はNiをセットし、これら蒸着源Jを交互に加熱することで形成可能である。
SiO層Sの形成は、イオンアシスト蒸着法によっても良いし通常の蒸着法によっても良いが、好ましくはイオンアシスト蒸着法によるものとされ、実施例9のSiO層の形成においてもイオンアシスト蒸着法が用いられている。
NiO層Mの形成は、膜厚を除き、実施例4と同様である。
光吸収膜F3における各層の膜厚ないしその組合せは、可視域等における反射率の低さと、所望する透過率分布の形状や透過率の大きさの実現との兼ね合いで設計され、各蒸着源毎あるいは各層毎に設定される蒸着レートや蒸着時間により制御される。交互膜における所定の膜厚の組合せで反射率が低減され、各NiO層Mの膜厚の合計に応じて透過率の大きさが現出される(実施例4〜8参照)。
実施例9の分光透過率についても実施例1〜7と同様に測定され、更に実施例9の分光反射率についても測定された。その結果は図12に示される。
図12によれば、可視域において、透過率分布は平坦であり、約5%である。又、反射率分布は可視域全体で4%以下となり波長580nm付近で極小値0%を有するように低減されている。
実施例9において、イオンアシスト蒸着により形成される各NiO層Mは、肉厚方向において均一であり、イオンアシスト蒸着により形成される程度の密度を有していて、Ar(アルゴン)が混入している。又、主に各NiO層Mによる透過率分布の形状は、400nmを起点とした可視域での単調減少,単調増加等にも制御可能である(実施例1〜3参照)。
≪実施例10等≫
実施例8に対して更に表面反射率を低減するため、多層構造で膜厚勾配を有する光吸収膜が作製された(実施例10)。当該光吸収膜は、実施例8と同様にマスク10が設けられるイオンアシスト蒸着装置11に対して、更に実施例9と同様に蒸着ホルダ4を複数(2個)として蒸着源JをSiO及びNiとしたイオンアシスト蒸着装置により形成されている。マスク10は、SiOの蒸着時には、蒸着源Jに対して基板Kを全く遮蔽しないように配置され、あるいは移動される。
図4(e)に模式的に示される実施例10のNDフィルタN4では、光吸収膜F4が基板Kの両面に形成され、各光吸収膜F4における構成は互いに同一である。即ち、実施例10のNDフィルタN4では、基板Kの両面に、同一構造の光吸収膜F4が形成される。各光吸収膜F4は、SiO層SとNiO層M’を交互に有するものであり、基板Kから数えて1層目がSiO層Sである7層構造である。各光吸収膜F4中の全てのNiO層M’は、実施例8のように膜厚勾配を有しており、全てのSiO層Sは、膜厚勾配を有していない。基板ホルダ4へのセット時における基板Kの内側の箇所(距離z=z1)での各層の物理膜厚は、実施例9と同一である。そして、各NiO層M’の膜厚は、実施例8のように距離z=z1から距離z=z2(外側の箇所)にかけて比例的に減少する。
基板Kの代表的な箇所における各層の物理膜厚が、次の表2に示される。ここで、代表的な箇所は、上記内側の箇所Ka及び上記外側の箇所Ke、並びにその間を4等分した箇所であって上記内側の箇所から近い順に1/4の箇所Kb、2/4の箇所Kc、3/4の箇所Kdである。厳密には、外側の箇所Keでは、全てのNiO層が膜厚0nmであり、SiO層のみとなっている。
尚、白板ガラス製の基板Kの肉厚は、1mmである。又、NiO層M’の一部のみに膜厚勾配が付与されても良いし、SiO層Sの一部又は全部に膜厚勾配が付与されても良いし、光吸収膜F4中の複数の層において互いに異なる膜厚勾配(膜厚分布)が付与されても良い。
Figure 2018036325
実施例10の分光透過率や分光反射率について実施例8,9と同様に測定され、その結果は、各箇所Ka〜Keの分光透過率について図13に、各箇所Ka〜Keの分光反射率について図14に示される。
図13によれば、可視域の透過率分布は、各箇所Ka〜Keで何れも同様に平坦である。
更に、箇所Ka〜Keの配置と透過率の大きさの関係をみるため、実施例10のNDフィルタN4の各箇所Ka〜Keにおける可視域での平均透過率が求められ、更に箇所Ka〜Keを横軸とし当該平均透過率を縦軸とした棒グラフが作成された(図15)。
図15によれば、平均透過率は、箇所Kaで約5%、箇所Kbで約10%、箇所Kcで約21%、箇所Kdで約43%、箇所Keで約92%と、NiO層M’の膜厚が薄くなるに連れて透過率が高くなっており、単調に増加していることが分かる。これは、基板Kの表面において、NiO膜M’の膜厚(濃度)が箇所Kaから箇所Keにかけて比例的に薄くなることに対応している。
よって、何れの箇所においても同様な色合いないし透過特性を有する安定したグラデーションNDフィルタN4が提供される。
又、図14によれば、実施例10のグラデーションNDフィルタN4において、可視域の反射率分布は、箇所Ka〜Kcにおいて全域で4%以下となり、箇所Kdにおいて3〜4%程度となり、多層構造に丁度ならない箇所Keで6〜8%程度となっていて、反射率は箇所Ka〜Keにおいて十分に抑制されている。
よって、何れの箇所においても反射防止機能を有するグラデーションNDフィルタN4が提供される。
実施例10のNDフィルタN4において、イオンアシスト蒸着により形成される各NiO層M’は、膜厚勾配が付与されていたとしても膜厚方向において均一であり、イオンアシスト蒸着により形成される程度の密度を有していて、Ar(アルゴン)が混入している。又、主に各NiO層M’による透過率分布の形状は、400nmを起点とした可視域での単調減少,単調増加等にも制御可能である(実施例1〜3参照)。
1・・イオンアシスト蒸着装置、8・・イオンガン、10・・マスク、F1〜F4・・光吸収膜、I・・イオンビーム、K・・基板、M・・NiO層(光吸収層)、M’・・NiO層(膜厚勾配を有する光吸収層)、N1〜N4・・NDフィルタ、S・・SiO層(誘電体層)。

Claims (10)

  1. 基板と、
    前記基板の1以上の面に配置された光吸収膜と、
    を備えており、
    前記光吸収膜は、NiO(xは0を超えて1未満)から成る光吸収層を含んでおり、
    前記光吸収層は、膜厚方向に均一である
    ことを特徴とするNDフィルタ。
  2. 基板と、
    前記基板の1以上の面に配置された光吸収膜と、
    を備えており、
    前記光吸収膜は、NiO(xは0を超えて1未満)から成る光吸収層を含んでおり、
    前記光吸収層は、一定の電圧によってイオン化した一定流量の酸素ガスによるイオンアシスト蒸着で形成されている
    ことを特徴とするNDフィルタ。
  3. 基板と、
    前記基板の1以上の面に配置された光吸収膜と、
    を備えており、
    前記光吸収膜は、NiO(xは0を超えて1未満)から成る光吸収層を含んでおり、
    前記光吸収層は、一定の電圧によってイオン化した一定流量の酸素ガス及び所定流量の希ガスの混合ガスによるイオンアシスト蒸着で形成されている
    ことを特徴とするNDフィルタ。
  4. 前記光吸収層は、膜厚勾配を有している
    ことを特徴とする請求項1ないしは請求項3の何れかに記載のNDフィルタ。
  5. 前記光吸収膜は、前記光吸収層と屈折率の異なる誘電体層を含んでいる
    ことを特徴とする請求項1ないしは請求項4の何れかに記載のNDフィルタ。
  6. 波長400nmの透過率を起点として、当該波長より長波長側の透過率分布が、波長700nmまでの域内において、平坦であり、又は単調に減少し、若しくは単調に増加している
    ことを特徴とする請求項1ないしは請求項5の何れかに記載のNDフィルタ。
  7. 基板に対し、Niを、一定の電圧によってイオン化した一定流量の酸素ガスを基板に照射しながら蒸着することで、光吸収層を形成する
    ことを特徴とするNDフィルタの製造方法。
  8. 基板に対し、Niを、一定の電圧によってイオン化した一定流量の酸素ガス及び所定流量の希ガスの混合ガスを基板に照射しながら蒸着することで、光吸収層を形成する
    ことを特徴とするNDフィルタの製造方法。
  9. 前記Niと前記基板の間に、前記光吸収層に対して膜厚勾配を付与するマスクを配置した
    ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のNDフィルタの製造方法。
  10. 前記Niと屈折率の異なる誘電体と、前記Niとを、それぞれ1回以上、前記基板に蒸着した
    ことを特徴とする請求項7ないしは請求項9の何れかに記載のNDフィルタの製造方法。
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