JP2016218335A - 光学多層膜付きガラス部材 - Google Patents
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Abstract
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スパッタリング法においては、成膜中にガラス基材の直近でプラズマを発生させる。このプラズマには紫外線が含まれている。例えば、スパッタリング法でガラス基材上にSiO2膜を成膜する場合、ガラス基材はSi(珪素)原子の原子発光(波長200〜300nmにピークを備える)に曝される。そのため、ガラス基材には、これら紫外線の暴露に起因してガラスの構造欠陥(非架橋酸素ホールセンタの生成)が生じ、ガラス基材自体が着色すると考えられる。また、ガラス基材の製造工程においては、成膜工程以外に、例えば洗浄工程でガラス基材に紫外線を照射することがあり、この工程においても同様の現象が発生することが想定される。
[第1の実施形態]
光学多層膜付きガラス部材(以下、ガラス部材という)10は、ガラス基材11、紫外線吸収層12、および光学多層膜13を有する。紫外線吸収層12および光学多層膜13は、ガラス基材11の一方の主面側に、この順で設けられている。また、第1の実施形態のガラス部材10は、紫外線吸収層12が光学多層膜13の光学特性に実質的に影響を与えないものである。
ガラス基材11の形状は、特に限定されるものではなく、ブロック状であっても、板状であっても、フィルム状であってもよい。また、金型等で任意の形状に成形されたものであってもよい。
紫外線の照射によりガラス自体が着色するか否か(耐ソラリゼーション性)は、以下の方法で評価することができる。
耐ソラリゼーション性は、厚さが0.3mmとなるよう両面光学研磨加工した所定形状(25mm×25mm×0.3mm)のガラスについて、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、型番:U−4100)により、波長400nm〜440nmにおける透過率を測定する。次に、日本光学硝子工業会測定規格JOGIS−04に基づき、理化学用高圧水銀ランプ((株)東芝製、型番:H−400P)を用い、15cmの距離から5時間、ガラスに対して紫外線を照射した後、再度ガラスの透過率を測定し、紫外線照射後の波長400nm〜440nmにおける透過率変化を比較する。そして、紫外線照射前後における波長400nm〜440nmの範囲の光透過率の低下量の最大値が、5%以上である場合、本発明において、紫外線の照射によりガラス自体が着色すると定義する。
紫外線吸収層12は、ガラス基材11の少なくとも一方の面上であって、ガラス基材11と光学多層膜13との間に設けられる。
紫外線吸収層12は、ガラス部材10の製造工程において、ガラス基材11に紫外線が暴露される場合に、紫外線を吸収することでガラス基材11への紫外線照射量を抑制するための層である。
光学多層膜13は、紫外線吸収層12の上(ガラス基材11と反対側)に設けられる。光学多層膜13は、反射防止膜、赤外線遮蔽膜、紫外線遮蔽膜、紫外線および赤外線遮蔽膜の少なくとも1種であることが好ましい。このような光学多層膜13を用いることで、ガラス部材10に所望の機能を付与することができる。
膜の構成としては、ガラス基材11側からSiO2/SixNy/SiO2/SixNy/SiO2の構成や、ガラス基材11側からSiO2/SiOxNy/SiO2/SiOxNy/SiO2の構成など、適宜の膜構成を用いることができる。なお、前述の材料は、波長200nm〜280nmの光を吸収する特性をほとんど備えない。そのため、紫外線吸収層12を用いることなく前述の反射防止膜(酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(SixNy)および酸化窒化珪素(SiOxNy)から選ばれる2種以上の材料の交互多層膜)を設けると、ガラス基材11が紫外線に曝されることにより着色するおそれがある。
ガラス部材10は、公知の成膜方法で形成することができる。具体的には、加熱蒸着法やスパッタリング法、イオンアシスト蒸着(IAD:Ion Assisted Deposition)法などの成膜法を用い、紫外線吸収層12および光学多層膜13を形成する。特に、光学多層膜13として耐傷性の高い膜を形成する場合は、緻密な膜が得られるように、スパッタリング法やイオンアシスト蒸着法を用いることが好ましい。
本実施形態において、光学多層膜付きガラス部材(以下、ガラス部材という)20は、図2に示すように、紫外線吸収層22が光学多層膜23の一部を構成する点で、第1の実施形態と異なる。本実施形態は、この点およびこれに関連する点を除き、第1の実施形態の場合と同様である。このため、本実施形態において、第1の実施形態と重複する個所については、適宜、記載を省略する。
紫外線吸収層22は、ガラス基材11の少なくとも一方の面上にあって、光学多層膜23の一部である。例えば、紫外線吸収層22が高屈折率物質である場合、光学多層膜23の高屈折率層として、ガラス基材11側の第1層に、つまりガラス基材11の上に設けられる。また、紫外線吸収層22は、前述の第1層に加え、ガラス基材11側の第3層、つまりガラス基材11側から数えて3番目の層として設けてもよい。このように紫外線吸収層22が設けられることで、光学多層膜23の第2層以降の成膜工程時にガラス基材11が紫外線に曝されたとしても、紫外線によるガラス基材11の着色が抑制することができる。
光学多層膜23は、ガラス基材11の上に設けられる。前述のとおり、紫外線吸収層22は、光学多層膜23の一部を構成し、光学特性に影響を及ぼす。光学多層膜23は、反射防止膜、赤外線遮蔽膜、紫外線遮蔽膜、紫外線および赤外線遮蔽膜の少なくとも1種であることが好ましい。このような光学多層膜23を用いることで、ガラス部材20に所望の機能を付与することができる。
ガラス部材20は、公知の成膜方法で形成することができる。具体的には、加熱蒸着法やスパッタリング法、イオンアシスト蒸着(IAD:Ion Assisted Deposition)法などの成膜法を用い、紫外線吸収層22を含む光学多層膜23を形成する。特に、光学多層膜23として耐傷性の高い膜を形成する場合は、緻密な膜が得られるように、スパッタリング法やイオンアシスト蒸着法を用いることが好ましい。
本発明の光学多層膜付きガラス部材の第1の実施形態や第2の実施形態は、例として示したものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、省略、置き換え、変更などを適宜行うことができる。
紫外線吸収層の紫外線吸収能を、以下の方法で確認した。
波長200nm〜1200nmの広い範囲で光透過率が高い石英ガラスに対して、スパッタリング法により、TiO2膜を8nmの厚さ(物理膜厚)で成膜した。
次いで、TiO2膜が形成された石英ガラスを3つに分割した。
そして、石英ガラスが1枚の場合(TiO2膜の総膜厚:8nm)について、透過率を測定した。また、石英ガラスが1枚の場合の透過率の測定結果を基に、石英ガラスを2枚積層した場合(TiO2膜の総膜厚:16nm)、石英ガラスを3枚積層した場合(TiO2膜の総膜厚:24nm)のそれぞれについて、透過率を算出した。なお、これら透過率の算出においては、石英ガラス表面における透過率の反射を考慮している。TiO2膜の総膜厚が8nm、16nm、24nmの場合の、波長200nm〜1200nmの透過率を、図3に示す。
市販のアルミノシリケートガラス(板厚:0.3mm)の波長350nm〜850nmの分光透過率を、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、型番:U−4100)を用いて調べた。結果を図4に示す。なお、このガラスの耐ソラリゼーション性は、前記した測定方法により確認した。その結果、紫外線照射前後において、波長400nm〜440nmの光透過率の最大低下量は10.4%であった。
参考例1と同じアルミノシリケートガラス(板厚:0.3mm)に対し、紫外線吸収層を設けることなく、スパッタリング法によりSiO2膜を442nmの厚さ(物理膜厚)で成膜した。その際、スパッタリング法による成膜時間は46分間であった。スパッタリング法によりSiO2膜を成膜することで、波長200nm〜300nmにピークを有するSi(珪素)原子のプラズマ発光(紫外線を含む)にガラスを曝した。このガラスの波長350nm〜850nmの分光透過率を、前記紫外可視近赤外分光光度計を用いて調べた。結果を図4に示す。
参考例1と同じアルミノシリケートガラス(板厚:0.3mm)に対し、前述のTiO2膜(8nm)が形成された石英ガラスをスパッタリングターゲット側に2枚積層して、比較例1と同一の方法・条件でSiO2膜を成膜した。このガラスの波長350nm〜850nmの分光透過率を、前記紫外可視近赤外分光光度計を用いて調べた。結果を図4に示す。
参考例1と同じアルミノシリケートガラス(板厚:0.3mm)に対し、前述のTiO2膜(8nm)が形成された石英ガラスをスパッタリングターゲット側に3枚積層して、比較例1と同一の方法・条件でSiO2膜を成膜した。このガラスの波長350nm〜850nmの分光透過率を、前記紫外可視近赤外分光光度計を用いて調べた。結果を図4に示す。
参考例1と同じアルミノシリケートガラス(板厚:0.3mm)に対し、前述のTiO2膜(8nm)が形成された石英ガラスをスパッタリングターゲット側に1枚積層して、比較例1と同一の方法・条件でSiO2膜を成膜した。このガラスの波長350nm〜850nmの分光透過率を、前記紫外可視近赤外分光光度計を用いて調べた。結果を図4に示す。
参考例1と比較例1の結果から、ガラスに対して紫外線照射を行う(例えば、SiO2膜の成膜)ことで、ガラスが着色し、波長500nm未満の分光透過率が低下することがわかる。
また、実施例1、実施例2および比較例2の結果から、ガラスに紫外線吸収層を設けることで、ガラスに対して紫外線照射を行う(例えば、SiO2膜の成膜)場合であっても、ガラスが着色して波長500nm未満の分光透過率が低下する現象を抑制できるが、波長200nm〜280nmの光の平均透過率が20%超の紫外線吸収層をガラスに設けた場合は、ガラスが着色し波長500nm未満の分光透過率が低下する現象を抑制できないことがわかる。
参考例1と同じアルミノシリケートガラス(板厚:0.3mm)に対し、ガラス側から順に表1に示す層構成で紫外線吸収層および光学多層膜を形成した。なお、表1において、紫外線吸収層は1Lおよび3Lである。紫外線吸収層の吸収のみを考慮した分光透過率を、図5に示す。また、紫外線吸収層および光学多層膜が形成された実施例3のガラス部材の反射率を図6に示す。なお、図5および図6の結果は、いずれもシミュレーション結果(ソフトウエアスペクトラ社製:TFCalcにより算出)である。
参考例1と同じアルミノシリケートガラス(板厚:0.3mm)に対し、ガラス側から順に表2に示す層構成で紫外線吸収層および光学多層膜を形成した。なお、表2において、紫外線吸収層は1Lおよび3Lである。紫外線吸収層の吸収のみを考慮した分光透過率を、図5に示す。また、紫外線吸収層および光学多層膜が形成された実施例4のガラス部材の反射を図6に示す。なお、図5および図6の結果は、いずれもシミュレーション結果(ソフトウエアスペクトラ社製:TFCalcにより算出)である。
Claims (7)
- ガラス基材上に光学多層膜が形成された光学多層膜付きガラス部材であって、
前記ガラス基材と前記光学多層膜との間に、波長200nm〜280nmの光を吸収する1層または2層以上からなる紫外線吸収層を備えることを特徴とする光学多層膜付きガラス部材。 - 前記紫外線吸収層は、波長200nm〜280nmにおける平均透過率が20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学多層膜付きガラス部材。
- 前記紫外線吸収層は、酸化チタン(TiO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、および酸化ニオブ(Nb2O5)のいずれかから選ばれる材料からなる酸化物膜を、前記ガラス基材側の第1層に備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学多層膜付きガラス部材。
- 前記紫外線吸収層は、前記光学多層膜の光学特性に実質的に影響を与えないことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光学多層膜付きガラス部材。
- 前記紫外線吸収層は、前記光学多層膜の一部を構成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光学多層膜付きガラス部材。
- 前記光学多層膜は、反射防止膜、赤外線遮蔽膜、紫外線遮蔽膜、紫外線および赤外線遮蔽膜から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光学多層膜付きガラス部材。
- 前記光学多層膜は、反射防止膜であって、酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(SixNy)および酸化窒化珪素(SiOxNy)から選ばれる2つ以上の材料の交互多層膜であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光学多層膜付きガラス部材。
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