JP2007093804A - 紫外線/赤外線カットフィルタ、及びその製造方法 - Google Patents

紫外線/赤外線カットフィルタ、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 製造が容易で、しかもウェハに反りが生じることなく、要求される分光特性を満足するUVIRカットフィルタを提供する。
【解決手段】 水晶やガラス等からなる基板(ウェハ)1の出射面側に1層から52層の光学薄膜から成るUVIRコート2を形成するようにした。そしてウェハ1に成膜した52層のUVIRコート2のうち、1〜28層までは耐候性を挙げるためにイオンアシスト成膜により薄膜を成膜し、29層〜52層まではウェハ1に応力が生じないように、上記イオンアシスト成膜よりイオン化エネルギーは極めて低くした弱イオンアシスト成膜により、或いは一般的な加熱蒸着により薄膜を成膜するようにした。
【選択図】 図1

Description

本発明は紫外線と赤外線をカットすることができる紫外線/赤外線カットフィルタ、及びその製造方法に関するものである。
ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の電子光学機器の普及に伴い、その光学ヘッドを構成する固体撮像素子(Charge Coupled Device:以下「CCD」という)などにおいては、その前方に光学ローパスフィルタ(Optical Low Pass Filter:以下「OLPF」という)が配置されている。またこのようなOLPFには、紫外線と赤外線の両方をカットできる紫外線(UV)赤外線(IR)カットフィルタ(以下、「UVIRカットフィルタ」という)が用いられている。
図4は、従来のOPLFに利用されているUVIRカットフィルタの構造例を示した図である。
この図4(a)に示すUVIRカットフィルタ100は、ウェハ101の入射側に4層〜5層の光学薄膜から成る反射防止膜(ARコート:Anti Reflection Coating)102を成膜し、その出射側に35層〜52層の光学薄膜から成るUVIRコート103を形成するようにしている。
しかしながら、図4(a)に示したUVIRカットフィルタ100は、同図(b)に示すように光学薄膜の積層数の多い出射面側にウェハ101が反ってしまうという欠点があった。
そこで、これを解決するため、例えば特許文献1では、図5に示すような構造の赤外線カットフィル付き光学ローパスフィルタが提案されている。
この図5に示す赤外線カットフィル付き光学ローパスフィルタ110は、ウェハ101の入射側に20層の透明薄膜から成るIRコート111aを形成し、ウェハ101の出射側に19層の透明薄膜から成るIRコート111bを形成するようにしている。このように構成した場合は、ウェハ101の入射側と出射側とは、透明薄膜の積層数がほぼ同じになるためウェハ101が反るのを防止することができる。
特開2003−279726公報
ところで、ウェハに蒸着やスパッタリング等により薄膜材料を成膜する成膜装置では、図6に示すように、ウェハ120をホルダ122に固定して片面ずつ薄膜材料121を成膜するようにしていた。このような薄膜材料を成膜する成膜装置が、例えば特開2005−2462公報や特開2005−60767公報に開示されている。
しかしながら、図6に示した成膜装置において、ウェハ120の両面に薄膜を成膜するためには、最低2回の成膜処理(2バッチ)が必要になるという煩雑性の問題点があった。
そこで、本発明は上記したような問題点を解決するためになされたものであり、製造が簡単で、しかもベースとなるウェハ等に反りが生じることのないUVIRカットフィルタと、その製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ベース基材に複数の光学薄膜を積層して形成される紫外線/赤外線カットフィルタにおいて、前記複数の光学薄膜を前記ベース基材の片面に形成すると共に、前記ベース基材の片面に形成した複数の光学薄膜の内、パスバンド領域を決定する光学薄膜がイオンアシスト成膜により成膜され、それ以外の光学薄膜が前記イオンアシスト成膜よりイオン化エネルギーを低くした弱イオンアシスト成膜或いは加熱蒸着により成膜されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、ベース基材に複数の光学薄膜を積層して形成される紫外線/赤外線カットフィルタの製造方法であって、前記ベース基材の片面に成膜する光学薄膜の内、パスバンド領域を決定する光学薄膜をイオンアシスト成膜により成膜し、それ以外の光学薄膜を前記イオンアシスト成膜よりイオン化エネルギーを低くした弱イオンアシスト成膜或いは加熱蒸着により成膜するようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、ベース基材に積層する複数の光学薄膜の内、パスバンド領域を決定する光学薄膜をイオンアシスト成膜により成膜し、それ以外の光学薄膜をイオンアシスト成膜よりイオン化エネルギーを低くした弱イオンアシスト成膜或いは加熱蒸着により成膜することで、ベース基材の片側のみに光学薄膜を成膜した場合でもベース基材に反りが生じないUVIRカットフィルタを実現することができる。したがって、このような本発明の紫外線/赤外線カットフィルタにおいては製造する際の成膜処理が片面だけで済むため、その製造を容易に行うことができ、コストダウンを図ることができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のUVIRカットフィルタの構造を示した図である。
この図1に示すように本実施形態のUVIRカットフィルタは、ベース基材である水晶やガラス等の基板(ウェハ)1の出射面側に1層から52層の光学薄膜から成るUVIRコート2を形成するようにしている。そして、このウェハ1に成膜した52層のUVIRコート2のうち、1〜28層の光学薄膜は耐候性を挙げるためにイオンアシスト成膜により薄膜を成膜し、29層〜52層の光学薄膜はウェハ1に応力が生じないように、上記イオンアシスト成膜より、イオン化エネルギーを極めて低くした弱イオンアシスト成膜、或いは一般的な加熱蒸着により光学薄膜を成膜するようにしたものである。
以下、本願発明者が本願発明に至った経緯について説明する。
本願発明者は、ウェハに対して光学薄膜を成膜する際に、どのようにすれば1バッチ処理によりUVIRカットフィルタを作成することができるか、即ちウェハ1の片面に全ての光学薄膜を成膜した場合でもウェハ1が反ることのないUVIRカットフィルタが製造できるかのシミュレーションと実証実験を繰り返し行った。
その結果、1層から52層までの光学薄膜をウェハ1の片面に成膜する際に、光学薄膜の耐候性の向上を図るために高密度の光学薄膜が得られるように、イオンプレーティング、イオンスパッタ、イオンアシスト等のイオンアシスト蒸着により光学薄膜を成膜すると、ウェハ1に強い圧縮応力が加わりウェハ1が成膜側に反ることが分かった。
光学薄膜の耐候性の向上を図る理由としては、光学薄膜の耐候性が低いと環境的に湿度が高くなった際、パスバンド領域(400〜650μm)が高波長側へ波長シフトしてしまい、光学特性が変動してしまうという不具合が発生するからである。
故に、従来は、パスバンドをシフトさせないために1層〜52層の光学薄膜をイオンアシスト蒸着により成膜し、特許文献1に開示されているようにウェハ1の入射面と出射面の両面に光学薄膜を成膜することでウェハ1に反りが生じないように対応してきた。
そこで、本願発明者は、どのように構成すればウェハ1の片面に全ての光学薄膜を成膜した場合でもウェハ1に反りを生じさせることなく、且つ、光学薄膜の耐候性を高く維持してパスバンド領域がシフトしないように構成できるか検討を行った。
図2は、UVIRカットコートの分光特性を示した図である。また、図3はUVIRコート2を形成する1層〜52層の光学薄膜の材料と膜厚の一例を示した図である。なお、膜構成としては、Ta25/SiO2の膜構成の代わりにTiO2/SiO5、Nb25/SiO等でも良い。
図2のAに示したグラフはUVIRコート2を形成する1〜52層の全ての光学薄膜を成膜したときの分光特性を示している。またBのグラフはUVIRコート2を形成する1〜52層の光学薄膜のうち、1層〜28層までの光学薄膜を成膜したときの分光特性を示している。
またUVIRコート2を形成する1〜52層のうち、1〜28層の光学薄膜は、パスバンド領域を決定し、29層〜52層の光学薄膜は阻止域を決定するものである。
図2からA、B共に400〜650μm帯では、その特性に殆ど差がないものの、800μm帯〜1300μm帯では特性に差があることが分かった。
なお、市場においてはスペック上、Aの特性が求められる。そこで、本願発明者は、これを満足するよう、ウェハ1の片面に施す光学薄膜の各層(1層〜52層)の成膜条件について検討した。その結果、光学薄膜を成膜する際に、パスバンド領域を決定する1層〜28層までの光学薄膜については耐候性を高めてパスバンド領域が変動しないように、イオンアシスト成膜によりウェハ1に光学薄膜を施すようにすれば良いことを見いだした。
一方、パスバンド領域に影響を及ぼさない29層〜52層の光学薄膜については、ウェハ1に応力が加わらないようにイオン化エネルギーが極めて低い弱イオンアシスト成膜、或いは一般的な加熱蒸着をすれば良いことを見いだした。この結果、ベース基材であるウェハ1の片側のみにUVIRコート2を施した場合でも、ウェハ1が反ることなく、しかも要求の分光特性を満足するUVIRカットフィルタを実現することができた。このようにすれば、UVIRカットフィルタットフィルタを製造する際の成膜処理は片面だけで済むため、その製造を容易に行うことができ、コストダウンを図ることができる。
本実施形態のUVIRカットフィルタの構造を示した図である。 UVIRカットコートの分光特性を示した図である。 UVIRコートを形成する1層〜52層の光学薄膜の材料と膜厚を示した図である。 従来のUVIRカットフィルタの構造例を示した図である。 従来の赤外線カットフィル付き光学ローパスフィルタの構造例を示した図である。 成膜装置の構造を示した図である。
符号の説明
1 …ウェハ、2 …UVIRコート

Claims (2)

  1. ベース基材に複数の光学薄膜を積層して形成される紫外線/赤外線カットフィルタにおいて、
    前記複数の光学薄膜を前記ベース基材の片面に形成すると共に、前記ベース基材の片面に形成した複数の光学薄膜の内、パスバンド領域を決定する光学薄膜がイオンアシスト成膜により成膜され、それ以外の光学薄膜が前記イオンアシスト成膜よりイオン化エネルギーを低くした弱イオンアシスト成膜或いは加熱蒸着により成膜されていることを特徴とする紫外線/赤外線カットフィルタ。
  2. ベース基材に複数の光学薄膜を積層して形成される紫外線/赤外線カットフィルタの製造方法であって、
    前記ベース基材の片面に成膜する光学薄膜の内、パスバンド領域を決定する光学薄膜をイオンアシスト成膜により成膜し、それ以外の光学薄膜を前記イオンアシスト成膜よりイオン化エネルギーを低くした弱イオンアシスト成膜或いは加熱蒸着により成膜するようにしたことを特徴とする紫外線/赤外線カットフィルタの製造方法。
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