JP2011100111A - 光学物品、光学物品の製造方法、電子機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板1の上に複数層からなる無機薄膜2を有する防塵ガラス10であって、無機薄膜2は、複数の酸化ケイ素層2Aと、複数の金属酸化物の層2Bと、が積層され、金属酸化物は、ジルコニウム、タンタルまたはチタンのいずれかを含んだ金属酸化物であり、酸化ケイ素の層2Aには、低密度の酸化ケイ素層と、この低密度の酸化ケイ素層より密度の高い高密度の酸化ケイ素層とがあり、無機薄膜2の最表層2Sは、低密度の酸化ケイ素層であり、無機薄膜2の最表層2Sの表面粗さは0.55nm以上0.70nm以下である。
【選択図】図2
Description
この特許文献1の従来例では、無機薄膜を形成するために、最表層以外の成膜を加速電圧が1000V、加速電流が1200mAのイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着で実施し、最表層の酸化ケイ素の成膜をイオンアシストではない電子ビーム蒸着で実施する。
しかし、撮像装置や映像装置の高画素化に伴い、小さなゴミや埃が付着することで、製品に影響を及ぼすので、より高い防塵性能が望まれる。
[適用例1]
本適用例にかかる光学物品は、基板上に複数層からなる無機薄膜を有する光学物品であって、前記無機薄膜は、複数の酸化ケイ素の層と、複数の金属酸化物の層と、が積層され、前記金属酸化物は、ジルコニウム、タンタルまたはチタンの少なくともいずれかを含む金属酸化物であり、前記酸化ケイ素の層には、低密度の酸化ケイ素層、またはこの低密度の酸化ケイ素層より密度が高い高密度の酸化ケイ素層、のいずれかが混在し、前記無機薄膜の最表層は前記低密度の酸化ケイ素層であり、且つ表面粗さが0.55nm以上0.70nm以下であることを特徴とする。
しかも、その最表層の酸化ケイ素の薄膜は、その表面粗さが0.55nm以上且つ0.7nm以下という特許文献1の最表層の表面粗さ(0.8nm〜0.95nm)より改善された値を採用したから、防塵性能を向上させることができる。つまり、特許文献1で示される従来例は、成膜をイオンアシストではない電子ビーム蒸着で実施しているので、最表層の酸化ケイ素の薄膜の表面粗さは悪化しているものと推測できる。これに対して、本適用例では、最表層の酸化ケイ素の層の表面粗さを改善して滑らかなものにしたので、表面に埃や塵が付着しにくくなり、防塵性能が高いものになる。なお、本発明の明細書に記載の表面粗さとは算術平均粗さRaである。
上記適用例にかかる光学物品は、前記最表層に近い側に積層される金属酸化物の層は、酸化ジルコニウムの層であり、前記無機薄膜の最表層は前記低密度の酸化ケイ素層であり、且つ表面粗さが0.6nm以上0.7nm以下であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、最表層の酸化ケイ素層の表面粗さは、特許文献1の最表層の表面粗さより大きく改善された値であるため、防塵性能をより向上させることができる。
さらに、本適用例の層の1つを構成する酸化ジルコニウム(ジルコニアとも称する)は、Zrが従来例の薄膜の1つを構成する酸化チタンのTiよりも電気陰性度が小さいため、表面の脱離エネルギーが下がる。その結果、従来例に比べて本適用例は防塵性能が高くなる。なお、最表層とは無機薄膜を構成する層において、基板から最も離れた位置の層を意味する。この最表層が光学物品の表面を構成する、あるいは構成しないかのいずれかである。
上記適用例にかかる光学物品は、前記酸化ジルコニウムの層には、低密度の酸化ジルコニウム層、またはこの低密度の酸化ジルコニウム層より密度が高い高密度の酸化ジルコニウム層のいずれかが混在し、少なくとも前記無機薄膜の最表層に隣在する層は、前記低密度の酸化ジルコニウム層であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、最表層の酸化ケイ素層と、その次の層の酸化ジルコニウム層とがともに低密度層から構成されるので、絶縁性がより低下し、導電性の向上を図ることができる。
上記適用例にかかる光学物品は、前記低密度の酸化ケイ素層の密度は、2.00g/cm3以上2.20g/cm3以下であり、前記低密度の酸化ジルコニウム層の密度は、4.8g/cm3以上5.4g/cm3以下であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、低密度の酸化ケイ素層と低密度の酸化ジルコニウム層との合理的な密度の範囲を設定することで、導電性の向上を確実に行うことができる。つまり、低密度の酸化ケイ素層の密度が2.20g/cm3を超えると、層の密度を低くすることによる効果が得られず、2.00g/cm3未満であると、成膜が困難となる。同様に、低密度の酸化ジルコニウム層の密度が5.4g/cm3を超えると、層の密度を低くすることによる効果が得られず、4.8g/cm3未満であると、密着性が低下し、膜剥離等の問題を引き起こすため、成膜が困難となる。
上記適用例にかかる光学物品は、前記最表層に近い側に積層される金属酸化物の層は、酸化タンタルの層であり、前記無機薄膜の最表層は前記低密度の酸化ケイ素層であり、且つ表面粗さは0.55nm以上0.65nm以下であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、最表層の酸化ケイ素層の表面粗さは、特許文献1の最表層の表面粗さより大きく改善された値であるため、防塵性能をより向上させることができる。
さらに、本適用例の層の1つを構成する酸化タンタルは、Taが従来例の薄膜の1つを構成する酸化チタンのTiよりも電気陰性度が小さいため、表面の脱離エネルギーが下がる。その結果、従来例に比べて本適用例は防塵性能が高くなる。なお、最表層とは無機薄膜を構成する層において、基板から最も離れた位置の層を意味する。この最表層が光学物品の表面を構成する、あるいは構成しないかのいずれかである。
上記適用例にかかる光学物品は、前記酸化タンタルの層には、低密度の酸化タンタル層、またはこの低密度の酸化タンタル層より密度が高い高密度の酸化タンタル層のいずれかが混在し、少なくとも前記無機薄膜の最表層に隣在する層は、前記低密度の酸化タンタル層であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、最表層の酸化ケイ素層と、その次の層の酸化タンタル層とがともに低密度層から構成されるので、絶縁性がより低下し、導電性の向上を図ることができる。
上記適用例にかかる光学物品は、前記低密度の酸化タンタル層の密度は、2.00g/cm3以上2.15g/cm3以下であり、前記低密度の酸化タンタル層の密度は、7.7g/cm3以上8.0g/cm3以下であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、低密度の酸化ケイ素層と低密度の酸化タンタル層との合理的な密度の範囲を設定することで、導電性の向上を確実に行うことができる。つまり、低密度の酸化ケイ素層の密度が2.15g/cm3を超えると、層の密度を低くすることによる効果が得られず、2.00g/cm3未満であると、成膜が困難となる。同様に、低密度の酸化タンタル層の密度が8.00g/cm3を超えると、層の密度を低くすることによる効果が得られず、7.70g/cm3未満であると、透明性が失われ、高透過率を必要とする光学薄膜には使用できない。
上記適用例にかかる光学物品は、前記最表層に近い側に積層される金属酸化物の層は、酸化チタンの層であり、前記無機薄膜の最表層は前記低密度の酸化ケイ素層であり、且つ表面粗さは0.6nm以上0.7nm以下であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、最表層の酸化ケイ素層の表面粗さは、特許文献1の最表層の表面粗さより大きく改善された値であるため、防塵性能をより向上させることができる。
上記適用例にかかる光学物品は、前記酸化チタンの層には、低密度の酸化チタン層、またはこの低密度の酸化チタン層より密度が高い高密度の酸化チタン層、のいずれかが混在し、少なくとも前記無機薄膜の最表層に隣在する層は、前記低密度の酸化チタン層であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、最表層の酸化ケイ素層と、その次の酸化チタン層とがともに低密度層から構成されるので、絶縁性がより低下し、導電性の向上を図ることができる。
上記適用例にかかる光学物品は、前記低密度の酸化ケイ素層の密度は、2.00g/cm3以上2.15g/cm3以下であり、前記低密度の酸化チタン層の密度は4.50g/cm3以上4.75g/cm3以下であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、低密度の酸化ケイ素層と低密度の酸化チタン層との合理的な密度の範囲を設定することで、導電性の向上を確実に行うことができる。つまり、低密度の酸化ケイ素層の密度が2.15g/cm3を超えると、層の密度を低くすることによる効果が得られず、2.00g/cm3未満であると、成膜が困難となる。同様に、低密度の酸化チタン層の密度が4.75g/cm3を超えると、層の密度を低くすることによる効果が得られず、4.50g/cm3未満であると、成膜が困難となる
上記適用例にかかる光学物品は、前記低密度の酸化ケイ素の層と低密度の金属酸化物の層の膜厚の合計は、500nm以下であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、前記低密度の酸化ケイ素の層と前記低密度の金属酸化物の層の膜厚の合計を500nm以下、好ましくは、400nm以下とすることで、必要以上に膜厚を厚くする必要がなく最表層の表面抵抗を維持できる。つまり、最表層の表面抵抗を低いものにするには複数層の合計膜厚が厚いほうが好ましいが、500nmを超えても、表面抵抗がほぼ変わらないため、最表層の低表面抵抗を維持するのに効果をなさない。
上記適用例にかかる光学物品は、前記無機薄膜の最表層の表面にはフッ素含有有機ケイ素化合物膜が形成されていることを特徴とする。
この構成の本適用例では、最表層である酸化ケイ素の薄膜の表面にフッ素含有有機ケイ素化合物膜を形成することで、表面エネルギーを低下させることができ、埃の付着を抑制することができる。
上記適用例にかかる光学物品は、前記無機薄膜の表面抵抗が3.1×1010Ω/□以下であり、9.1×109Ω/□以上であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、表面抵抗が十分に低下するので、防塵効果を確実に得ることができる。
上記適用例にかかる光学物品は、前記無機薄膜の表面抵抗が1.4×1011Ω/□以下であり、7.7×109Ω/□以上であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、表面抵抗が十分に低下するので、防塵効果を確実に得ることができる。
上記適用例にかかる光学物品は、前記無機薄膜の表面抵抗が1.4×1011Ω/□以下であり、5.7×1010Ω/□以上であることを特徴とする
この構成の本適用例では、表面抵抗が十分に低下するので、防塵効果を確実に得ることができる。
本適用例にかかる光学物品の製造方法は、上述の構成の光学物品を製造する方法であって、前記無機薄膜のうち少なくとも最表層を、加速電圧が300V以上450V以下のアシストパワーのイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着により成膜することを特徴とする。
この構成の本適用例では、少なくとも最表層を、加速電圧が300V以上450V以下という低イオンアシスト条件での電子ビーム蒸着(IAD)で成膜することで、最表層の酸化ケイ素の薄膜の表面粗さを0.65nm以上且つ0.80nm未満という従来例に比べて改善した値にすることができる。そのため最表層の表面から埃や塵が付着することを防止して防塵性能を高いものにできる。
上記適用例にかかる光学物品の製造方法は、前記複数層は5層以上あり、これらの層のうち最表層を含み互いに隣在する少なくとも4層を、前記アシストパワーのイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着により成膜することを特徴とする。
この構成の本適用例では、低アシストパワーで成膜する対象を適切な範囲にしたので、合理的な成膜を実施することができる。ここで、低アシストパワーでの電子ビーム蒸着の対象を4層以上としたのは、3層以下では表面抵抗が十分に低下するものではなく防塵効果を十分に得られないことが生じるが、4層以上とすれば表面抵抗が十分に低下するので、防塵効果を確実に得ることができる。5層以上とした場合では4層の場合と表面抵抗があまり変わらず防塵効果に差異がないので、少なくとも4層あれば十分である。
本適用例にかかる電子機器は、上述の光学物品と、この光学物品を収納するケースとを備え、前記光学物品はIR−UVカットフィルターであり、このIR−UVカットフィルターには撮像素子が対向配置されていることを特徴とする。
この構成の本適用例では、防塵性能の高いIR−UVカットフィルターを撮像素子、例えば、CCDに対向配置するので、CCDで撮像される画像に埃等が残ることがないので、高品質の撮像装置を提供することができる。
本適用例にかかる電子機器は、上述の光学物品と、この光学物品を収納するケースとを備え、前記光学物品は反射防止膜を有し、且つ、レーザー光源と光ディスクに対向する対物レンズとの間の光路に配置されていることを特徴とする。
この構成の本適用例では、防塵性能の高い反射防止膜付き光学物品、例えば、ビームスプリッターをレーザー光源と対物レンズとの間に配置するので、レーザー光源や対物レンズ等で光ディスクに記録された情報の再生や光ディスクへの情報の記録が埃付着により劣化することを抑制することができるので精度の高い光ピックアップ装置を提供することができる。
本適用例にかかる電子機器は、上述の光学物品と、この光学物品を収納するケースとを備え、前記光学物品は反射防止膜を有し、且つ、光源とダイクロイックプリズムとの間の光路に配置されることを特徴とする。
この構成の本適用例では、防塵性能の高い反射防止膜付き光学物品、例えば、防塵ガラスを光源とダイクロイックプリズムとの間に配置するので、レーザー光源やダイクロイックプリズム等を通じて投影される画像の精度が高いプロジェクターを提供することができる。
[第一実施形態]
まず、第一実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
第一実施形態は電子機器をプロジェクターとし、そのプロジェクターに組み込まれる光学物品を防塵ガラスとした例である。
図1はプロジェクターの概略構成図である。
図1において、プロジェクター100は、インテグレーター照明光学系110と、色分離光学系120と、リレー光学系130と、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調する電気光学装置140と、電気光学装置140で変調された光束を拡大投写する投写レンズ150とを備えて構成される。
インテグレーター照明光学系110は、電気光学装置140を構成する3枚の透過型液晶パネル141(赤、緑、青の色光毎にそれぞれ液晶パネル141R,141G,141Bとする)の画像形成領域をほぼ均一に照明するための光学系であり、光源装置111と、第1レンズアレイ112と、第2レンズアレイ113と、偏光変換素子114と、重畳レンズ115とを備えている。
第1レンズアレイ112は、光軸方向から見てほぼ矩形状の輪郭を有する小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。
第2レンズアレイ113は、第1レンズアレイ112と略同様な構成を有しており、小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。この第2レンズアレイ113は、重畳レンズ115とともに、第1レンズアレイ112の各小レンズの像を透過型液晶パネル141上に結像させる機能を有する。
偏光変換素子114は、第2レンズアレイ113と重畳レンズ115との間に配置されるとともに、第2レンズアレイ113と一体でユニット化されている。このような偏光変換素子114は、第2レンズアレイ113からの光を1種類の偏光光に変換するものである。
リレー光学系130は、入射側レンズ131と、リレーレンズ133と、反射ミラー132、134とを備え、色分離光学系120で分離された色光である赤色光を透過型液晶パネル141Rまで導く機能を有する。
ダイクロイックミラー121を透過した赤色光と緑色光のうちで、緑色光は、ダイクロイックミラー122によって反射し、フィールドレンズ151を通って、緑色用の透過型液晶パネル141Gに到達する。一方、赤色光は、ダイクロイックミラー122を透過してリレー光学系130を通り、さらにフィールドレンズ151を通って、赤色光用の透過型液晶パネル141Rに到達する。
クロスダイクロイックプリズム142は、各色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成するものであり、赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが4つの直角プリズムの界面に沿って略X字状に設けられ、これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成される。
図2において、防塵ガラス10は、基板1の光入射面に反射防止膜2が設けられ、この反射防止膜2の表面にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が必要に応じて設けられた構造である。つまり、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は反射防止膜2の表面に設けられてもよく、設けられなくてもよい。
基板1としては、例えば、石英、水晶、無アルカリガラス等を用いることができる。
反射防止膜2は、低屈折率の酸化ケイ素(SiO2)層2Aと、高屈折率の金属酸化物の層2Bとが交互に積層された5層構造である。
基板1から最も離れた第1層は最表層2Sであり、この最表層2Sは酸化ケイ素層2Aである。この最表層2Sに近接した第2層22が金属酸化物の層2Bである。この第2層22に近接した第3層23が酸化ケイ素層2Aであり、この第3層23に近接した第4層24が金属酸化物の層2Bである。この第4層24に近接した第5層25は基板1に接しており、この第5層25は酸化ケイ素層2Aである。
この金属酸化物の層2Bを構成する金属酸化物は、ジルコニウム、タンタルまたはチタンのいずれかを含んだ金属酸化物である。
フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は、その膜厚が薄いものであり、その下に形成される最表層2Sの酸化ケイ素層2Aは低密度層であるため絶縁性が低い状態となる。そのため、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3に図示しないアースケーブルを介して表面に発生した電荷は外部に逃がすことができる。
金属酸化物が酸化ジルコニウム(ZrO2)である場合には、低密度の酸化ケイ素層2Aの密度は、2.00g/cm3以上2.20g/cm3以下である。高密度の酸化ケイ素層2Aの密度は2.20g/cm3を超えればよい。しかも、最表層2Sの表面粗さは0.65nm以上0.80nm以下である。
酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bの低密度層は4.8g/cm3以上5.4g/cm3以下の密度である。酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bであって高密度層の密度は5.4g/cm3を超える密度であればよい。
第2層22から第5層25までは低密度層であっても高密度層であってもよいが、本実施形態では、最表層2S以外に、第3層23と第5層25との少なくとも1つが高密度層であることが必要であり、例えば、第5層25が高密度層であり、他の層が低密度層であってもよい。
これらの第1層から第5層25までの反射防止膜2の合計の膜厚は500nm以下、好ましくは、400nm以下である。
第2層22を構成する金属酸化物の層2Bは低密度層であってもよく高密度層であってもよい。第4層24を構成する金属酸化物の層2Bは第2層22と同様に、低密度層であってもよく高密度層であってもよい。
酸化タンタルである金属酸化物の層2Bの低密度層は7.7g/cm3以上8.00g/cm3以下の密度である。酸化タンタルである金属酸化物の層2Bであって高密度層の密度は8.00g/cm3を超える密度であればよい。
第2層22から第5層25までは低密度層であっても高密度層であってもよいが、本実施形態では、最表層2S以外に、第3層23と第5層25との少なくとも1つが高密度層であることが必要であり、例えば、第5層25が高密度層であり、他の層が低密度層であってもよい。
これらの第1層から第5層25までの反射防止膜2の合計の膜厚は500nm以下、好ましくは、400nm以下である。
第2層22を構成する金属酸化物の層2Bは低密度層であってもよく高密度層であってもよい。第4層24を構成する金属酸化物の層2Bは第2層22と同様に、低密度層であってもよく高密度層であってもよい。
酸化チタンである金属酸化物の層2Bの低密度層は4.50g/cm3以上4.75g/cm3以下の密度である。酸化チタンである金属酸化物の層2Bであって高密度層の密度は4.75g/cm3を超える密度であればよい。
第2層22から第5層25までは低密度層であっても高密度層であってもよいが、本実施形態では、最表層2S以外に、第3層23と第5層25との少なくとも1つが高密度層であることが必要であり、例えば、第5層25が高密度層であり、他の層が低密度層であってもよい。
これらの第1層から第5層25までの反射防止膜2の合計の膜厚は500nm以下、好ましくは、400nm以下である。
図3は、基板に成膜するための装置の概略図である。
図3において、成膜装置は、アースされた室50と、この室50の天井部分に回動自在に支持されたドーム51を備えており、このドーム51は、その中央部に設けられた回転軸51Aを介してモーター52により回動される。ドーム51には成膜対象となる基板1が複数取り付けられており、これらの基板1に対向するように室50の下部に第一蒸着源53と第二蒸着源54とが設けられている。第一蒸着源53には酸化ケイ素が収納され、第二蒸着源54には、酸化ジルコニウム、酸化タンタルまたは酸化チタンの金属酸化物が収納されている。
これらの第一蒸着源53と第二蒸着源54との間にはイオン源55と電子銃56とが配置されている。第一蒸着源53と第二蒸着源54とには、それぞれ電子ビームが照射されることで内部に収納される酸化ケイ素や酸化ジルコニウム、酸化タンタル、または酸化チタンが溶かされる。
イオン源55はイオンを放出してアシストするものである。電子銃56は電子ビームを照射するものである。
ドーム51の中央部には監視装置57が設けられている。この監視装置57は、基板1に成膜される膜厚を管理する光学モニターと、レート管理する水晶モニターとを備える。
ここで、最表層2Sから第4層24までの成膜のためのアシストパワーは、酸化ケイ素層2Aと金属酸化物の層2Bとにかかわらず、300V以上450V以下の加速電圧(450mA以上550mA以下の加速電流)の低アシストパワーであり、第5層25を成膜するためのアシストパワーは、450Vを超える加速電圧、例えば、1000V(1200mAの加速電流)の高アシストパワーである。
このフッ素含有有機ケイ素化合物膜3を成膜するため、反射防止膜2が形成された基板1及び蒸着源を真空装置の内部にセットし、減圧排気を行う。そして、基板1の温度を60℃とした状態で蒸発源を約600℃に加熱し、フッ素含有有機ケイ素化合物を蒸発させて反射防止膜2の上に成膜する。
次に、第二実施形態を図4及び図5に基づいて説明する。
第二実施形態は電子機器をデジタルスチールカメラの撮像装置とし、その撮像装置に組み込まれる光学物品を光学多層膜フィルターとした例である。
図4は撮像装置の概略構成図である。
図4において、撮像装置200は、撮像モジュール210と、光入射側に配置されるレンズ220と、撮像モジュール210から出力される撮像信号の記録・再生等を行う本体部230とを含んで構成されている。この本体部230には、撮像信号の補正等を行う信号処理部と、撮像信号を磁気テープ等の記録媒体に記録する記録部と、この撮像信号を再生する再生部と、再生された映像を表示する表示部などの構成要素が含まれる。
撮像モジュール210は、光学多層膜フィルター20と、光学ローパスフィルター211と、光学像を電気的に変換する撮像素子のCCD(電荷結合素子)212と、この撮像素子212を駆動する駆動部213とを含んで構成されている。
固定治具214は金属によって構成されており、光学多層膜フィルター20と電気的に接続されている。そして、固定治具214は、アースケーブル215によってアース(地落)されている。
図5において、光学多層膜フィルター20は、基板1の光入射面にIR−UVカット膜4が設けられ、このIR−UVカット膜4の表面にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が必要に応じて設けられた構造である。つまり、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3はIR−UVカット膜4の表面に設けられてもよく、設けられなくてもよい。
IR−UVカット膜4は、低屈折率の酸化ケイ素(SiO2)層2Aと、高屈折率の金属酸化物の層2Bとが交互に積層された39層構造である。
基板1から最も離れた第1層が最表層2Sであり、この最表層2Sは低屈折率の酸化ケイ素層2Aから構成される。最表層2Sに接して第2層22の金属酸化物の層2Bが設けられ、この第2層22に近接して第3層の酸化ケイ素層が設けられる。この第3層に金属酸化物の層からなる第4層が設けられ、この第4層に酸化ケイ素層からなる第5層が設けられ、最終的には、第37層の酸化ケイ素層に第38層238の金属酸化物の層2Bが設けられ、この第38層238に第39層239の酸化ケイ素層2Aが設けられる。第39層239は基板1に接している。
本実施形態では、第6層26から第39層239までは低密度層であっても高密度層であってもよいが、最表層2S以外に、第3層23と第5層25との少なくとも1つが低密度層であることが必要であり、例えば、第5層25が高密度層であり、他の層が低密度層であってもよい。
これらの最表層2Sから第5層までのIR−UVカット膜4の合計の膜厚は500nm以下、好ましくは、400nm以下である。なお、第二実施形態では、IR−UVカット膜4に代えてIRカット膜を基板1に設けた構造でもよい。
酸化ケイ素層2Aの密度と最表層の表面粗さは金属酸化物の層2Bの材料によって相違する。
本実施形態では、最表層2Sは低密度の酸化ケイ素層2Aであり、その表面粗さは0.65nm以上0.80nm以下である。
低密度の酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bは4.80g/cm3以上5.4g/cm3以下の密度である。高密度の酸化チタンである金属酸化物の層2Bの密度は5.4g/cm3を超える密度であればよい。
金属酸化物が酸化タンタルである場合には、低密度の酸化ケイ素層2Aは、2.00g/cm3以上2.15g/cm3以下の密度である。高密度の酸化ケイ素層2Aの密度は2.15g/cm3を超える密度であればよい。
本実施形態では、最表層2Sは低密度の酸化ケイ素層2Aであり、その表面粗さは0.55nm以上0.65nm以下である。
低密度の酸化タンタルである金属酸化物の2B層は7.70g/cm3以上8.00g/cm3以下の密度である。高密度の酸化チタンである金属酸化物の層2Bの密度は8.00g/cm3を超える密度であればよい。
金属酸化物が酸化チタンである場合には、低密度の酸化ケイ素層2Aは、2.00g/cm3以上2.15g/cm3以下の密度である。高密度の酸化ケイ素層2Aの密度は2.15g/cm3を超える密度であればよい。
本実施形態では、最表層2Sは低密度の酸化ケイ素層2Aであり、その表面粗さは0.6nm以上0.7nm以下である。
低密度の酸化チタンである金属酸化物の層2Bは4.50g/cm3以上4.75g/cm3以下の密度である。高密度の酸化チタンである金属酸化物の層2Bの密度は4.75g/cm3を超える密度であればよい。
この光学多層膜フィルター20は図3で示される装置を用いて基板1の上にIR−UVカット膜4を形成する。
そのため、基板1に39層からなるIR−UVカット膜4を形成するには、基板1をドーム51にセットし、その後、ドーム51を回転させながら、電子銃56で電子ビームを照射して第一蒸着源53に収納される酸化ケイ素や第二蒸着源54に収納される酸化ジルコニウム、酸化タンタル、または酸化チタンを蒸着させる。この際、イオン源55からイオン化した酸素を加速照射することにより、基板1の上に酸化ケイ素層2Aと酸化ジルコニウム、酸化タンタル、または酸化チタンである金属酸化物の層2Bとを交互に成膜する。
第二実施形態においても、基板1に形成されたIR−UVカット膜4に必要に応じてフッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けるものでもよいが、その場合は、第一実施形態と同様の方法に従う。
次に、第三実施形態を図6に基づいて説明する。
第三実施形態は電子機器を光ピックアップ装置とし、その光ピックアップ装置に組み込まれる光学物品をビームスプリッターとした例である。
図6は記録再生装置の概略構成図である。
図6において、光ピックアップ300は、焦点位置の異なる3種の光ディスク(CD301、DVD302、BD303)に対して互いに波長の異なる3種類のレーザービームを照射し、それぞれ所定の信号を検出するように構成されている。
具体的には、光ピックアップ300は、CD301に関する光学系として、レーザービームを発生するレーザーダイオード310、コリメートレンズ311、偏光ビームスプリッター30、レンズ313、ダイクロイックプリズム314、1/4波長板315、開口フィルター316、対物レンズ317、及びレーザービームでCD301から読み取った信号を検出する信号検出系318を含んで構成される。
光ピックアップ300は、BD303に関する光学系として、レーザービームを発生するLD331、レンズ332、偏光ビームスプリッター30、レンズ333、ダイクロイックプリズム334及びレーザービームでBD303から読取った信号を検出する信号検出系335を含んで構成される。
偏光ビームスプリッター30の概略構成は基板1の形状を除いては図2で示される防塵ガラス10と同じである。つまり、偏光ビームスプリッター30は、基板1に反射防止膜2が設けられ、この反射防止膜2の表面にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が必要に応じて設けられた構造である。さらに、基板1に反射防止膜2を成膜し、この反射防止膜2にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3を成膜する方法は第一実施形態と同じである。
[酸化ジルコニウム層と酸化ケイ素層とを有する光学物品]
本発明の第一実施形態の光学物品に対応する実施例1〜4、比較例1〜10及び参考例1,2について説明する。なお、蒸着実験に関しては、シンクロン製蒸着機(商品名SID−1350)を用いた。また、実験は、所定形状のサンプル、例えば、直径30mm、膜厚0.3mmの白板ガラス(屈折率n=1.52)の表面に、各実施例及び比較例に応じた条件で反射防止膜を作製した。
実施例1は、基板1の上に反射防止膜2が形成されており、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は設けられていない。
実施例1の反射防止膜2の層構成が表1から表3に示されている。これらの表において、最表層2Sは、その密度が2.069g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.449の酸化ケイ素層2Aである。最表層2Sの膜厚は84.5nmであり、その光学膜厚は1.449×84.5nm=122.1105nmである。この光学膜厚の設計波長(実施例1では510nm)に対する相対値4nd(以下、単に、設計波長に対する相対値と称する)は0.977である。つまり、光学薄膜設計では、設計波長の1/4を基本とするため、その値に対する光学薄膜ndの値は0.963となる。第2層22は、その密度が5.17g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.977の酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bである。第2層22の膜厚は98.8nmであり、設計波長に対する相対値4ndは1.534である。第3層23は、その密度が2.069g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.449の酸化ケイ素層2Aである。第3層23の膜厚は18.4nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.210である。第4層24は、その密度が5.17g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.977の酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bである。第4層24の膜厚は20.2nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.313である。第5層25は、その密度が2.213g/cm3の高密度層であり、その屈折率nが1.481の酸化ケイ素層2Aである。第5層25の膜厚は172.5nmであり、設計波長に対する相対値4ndが1.985である。最表層2Sから第5層25までの合計の膜厚は394.33nmである。
実施例2は実施例1とは反射防止膜2の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は、例えば、信越化学工業株式会社製フッ素含有有機ケイ素化合物(製品名KY−130)をフッ素系溶剤(住友スリーエム株式会社製:ノベックHFE−7200)で希釈して固形分濃度3%の溶液を調製し、これを多孔質セラミック製ペレットに1g含浸させ乾燥したものを蒸発源として使用する。
実施例3は実施例1とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、実施例3では、加速電圧が400V、加速電流が500mAの低アシストパワーである。そのため、酸化ケイ素層2Aであって最表層2Sと第3層23の低密度層の密度が2.086g/cm3であり、酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bであって第2層22と第4層24の低密度層の密度が5.23g/cm3である。第5層25の密度は実施例1と同じである。
[実施例4]
実施例4は実施例3とは反射防止膜2の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
比較例1は実施例1とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例1では、最表層2Sから第4層24までの層を、加速電圧が600V、加速電流が700mAの中アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素の薄膜であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.172g/cm3であり、酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が5.36g/cm3である。比較例1では、最表層の表面粗さは0.77nm〜0.85nmであって、実施例1〜4に比べて高い。
[比較例2]
比較例2は比較例1とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
比較例3は実施例1とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例3では、最表層2Sから第4層24までの層を、加速電圧が800V、加速電流が900mAの中アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素の薄膜であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.201g/cm3であり、酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が5.41g/cm3である。比較例3では、最表層の表面粗さは0.77nm〜0.85nmであって、実施例1〜4に比べて高い。
[比較例4]
比較例4は比較例3とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
[比較例5]
比較例5は実施例1とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例5では、全ての層を、加速電圧が1000V、加速電流が1200mAの高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素の薄膜であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.213g/cm3であり、酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が5.45g/cm3である。比較例5では、最表層の表面粗さは0.80nm〜0.90nmであって、実施例1〜4に比べて高い。
[比較例6]
比較例6は比較例5とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
比較例7は層構成が実施例1と同じであるが、最表層の成膜方法が電子蒸着(EB)である。成膜温度は200℃である。酸化ケイ素の成膜時の真空圧は8.0×10−3Paであり、酸化ジルコニウムの成膜時の真空圧は5.0×10−3Paである。そのため、酸化ケイ素層の密度が2.037g/cm3であり、酸化ジルコニウムの金属酸化物の層の密度が7.52g/cm3である。比較例7では、最表層の表面粗さは0.95nm〜1.200nmであって、実施例1〜4に比べて高い。
[比較例8]
比較例8は比較例7とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
[比較例9]
比較例9は膜厚が86.0nmの酸化ケイ素層からなる最表層、膜厚が102.7nmの酸化チタンの薄膜からなる第2層、膜厚が30.6nmの酸化ケイ素の薄膜からなる第3層、膜厚が12.1nmの酸化チタンの薄膜からなる第4層、及び膜厚が136.6nmの酸化ケイ素の薄膜からなる第5層の反射防止膜である。比較例9の層構成を表4に示す。この層構成の比較例9では、特許文献1で示される従来例と同様の方法で成膜した。つまり、比較例9では、最表層の成膜がイオンアシストを用いない電子蒸着(EB)であり、最表層以外の層の成膜方法は比較例5と同様とする。第2層から第5層までは加速電圧が1000V、加速電流が1200mAの高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜した。成膜温度は200℃である。酸化ケイ素の成膜時の真空圧は8.0×10−3Paであり、酸化チタンの成膜時の真空圧は1.5×10−2Paである。そのため、酸化ケイ素の薄膜の密度は2.037g/cm3であり、酸化チタンの薄膜の密度が4.87g/cm3である。比較例9では、最表層の表面粗さは0.80nm〜0.95nmであって、実施例1〜4に比べて高い。
[比較例10]
比較例10は比較例9とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
本発明に関連する参考例について説明する。
[参考例1]
参考例1は、比較例9と同様に表4で示される層構成である点で実施例1と異なるが、成膜方法は実施例1と同様に、最表層から第4層までを低アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜し、第5層を高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜した。参考例1では、最表層の表面粗さは0.6nm〜0.7nmであって、実施例1〜4に比べて低い。
[参考例2]
参考例2は参考例1とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
以上において、最表層の表面粗さは最表層を成膜する際のアシストパワーに対応することがわかる。つまり、実施例1〜4では、最表層の成膜を、加速電圧を300V〜400V(加速電流450mA〜500mA)という低アシストパワーで実施することで、最表層の表面粗さが0.55nm〜0.65nmとなるが、比較例1〜4では、最表層の成膜を、加速電圧600V〜800V(加速電流700mA〜900mA)という中アシストパワーで実施することで、最表層の表面粗さが0.6nm〜0.7nmや0.62nm〜0.75nmとなり、さらに、比較例5,6では、最表層の成膜を、加速電圧1000V(加速電流1200mA)という高アシストパワーで実施することで、最表層の表面粗さが0.65nm〜0.75nmとなる。また、参考例1,2は、実施例1,2と同じアシストパワー下での成膜であるが、実施例1,2とは異なり偶数層が酸化チタンの薄膜であるため、表面粗さが0.6nm〜0.7nmとなる。なお、実施例1,2が参考例1,2に比べて表面粗さが良いのは、原子量など材料の物性に起因する。
1)表面抵抗(シート抵抗)の測定
表面抵抗の測定のため図7(A)で示される表面抵抗測定器504を用いる。この表面抵抗測定器504は、三菱ケミカル製、ハイレスターUP MCP-HT45である。この表面抵抗測定器504はプローブ501がフィルターのサンプル502の表面と当接している。サンプル502を載置するステージ506はテフロン(登録商標)製である。この測定条件は1000V,30secである。測定時の環境は湿度55%±5%、気温25℃±3℃である。
各実施例、比較例及び参考例でのサンプルにおける表面抵抗を測定した。その結果を表3に示す。表3に示される通り、実施例1〜4が比較例5〜8に比べて表面抵抗が低いことがわかる。表面抵抗が低いことは静電気による塵や埃の表面への付着を軽減することを意味する。
図8には実施例1における膜厚と表面抵抗との関係が示されている。
図8において、X0は全部の層が高アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(1.0×1015Ω/□)であり、X1は膜厚84.5nmの最表層のみ低アシストパワー(加速電圧300V、加速電流450mA)で電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(3.17×1012Ω/□)であり、X2は最表層と第2層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(3.13×1010Ω/□)であり、X3は最表層から第3層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(1.11×1010Ω/□)であり、X4は最表層から第4層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(9.12×109Ω/□)であり、X5は全ての層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(9.09×109Ω/□)である。図8に示される通り、低アシストパワーで電子ビーム蒸着する対象を、最表層を含み互いに接合する層の数が2層以上の場合、表面抵抗の値が小さくなることがわかる。さらに、最表層から第4層までの場合と最表層から全ての層(5層)までの場合とでは表面抵抗の値があまり変化しないことがわかる。そのため、本実施例では、最表層から第4層まで(膜厚221.9nm)を低アシストパワーで電子ビーム蒸着すれば十分であることがわかる。
電荷抜けはサンプルの最表層を擦って帯電させ、最表層に残存する電荷量(相対値)を時間の経過とともに表示したものである。この電荷抜けを図9に示す。図9では、グラフAで比較例5が示され、グラフBで比較例7が示され、グラフCで実施例1が示される。表面電荷の測定は、図7(B)で示される表面電位計500を用いる。この表面電位計500はトレックジャパン製、Model341である。この表面電位計500はプローブ501とフィルターのサンプル502の表面との距離が10mmである。サンプル502を載置するステージ503は金属製で、アースした状態で測定が行われる。測定時の環境は湿度55%±5%、気温25℃±3℃である。
図9で示される通り、実施例1のグラフCが比較例5のグラフAや比較例7のグラフBに比べて時間経過に伴う残存電荷量が小さい。この結果、実施例1は比較例5や比較例7に比べて塵や埃が表面に付着しにくいことがわかる。
防塵性能試験を、(4−1)ポリエチレンパウダー法、(4−2)関東ローム法、(4−3)コットンリンタ法で実施した。
(4−1)ポリエチレンパウダー方法
ポリエチレンパウダー法は、トレイに敷き詰めたポリエチレンパウダー(セイシン製:SK−PE−20L)の上にサンプルを1cm上から落とし、その後、ゆっくり引き上げ、サンプルに付着したパウダーの着塵量と残存量とを量るものである。着塵量はパウダーが付着したサンプルを簡単に払い、サンプルの表面を撮像し、画像解析により塵面積を計算する。残存量はパウダーがついたサンプルの表面をエアーブロー(サンプルからの距離が3cm、圧力が約50KPa、回数3回)で除塵した後、サンプルの表面を撮像し、画像解析により塵面積を計算する。
(4−2)関東ローム法
関東ローム法は、路上、野外の塵を想定してJISで規格化されたパウダー(JIS試験粉体1,7種)を試験に使用するもので、トレイに敷き詰めたパウダーにサンプルを落とし、塵を落とした後、サンプルを逆さまにして指で2回はじき、サンプルに付着したパウダーの着塵量と残存量とを量るものである。着塵量と残存量との求め方はポリエチレンパウダー法と同じである。
(4−3)コットンリンタ法
コットンリンタ法は、トレイに敷き詰められたコットンリンタと称される繊維塵を試験に使用するもので、トレイに敷き詰めたパウダーにサンプルを落とし、塵を落とした後、サンプルを逆さまにして指で2回はじき、サンプルに付着したパウダーの着塵量と残存量とを量るものである。着塵量と残存量との求め方はポリエチレンパウダー法と同じである。
表5では、(4−1)ポリエチレンパウダー法、(4−2)関東ローム法及び(4−3)コットンリンタ法の結果が示される。
表5に示される通り、ポリエチレンパウダー法では、実施例1,3が比較例1,3,5,7,9や参考例1に比べて着塵量及び残存量とも小さく、実施例2,4が比較例2,4,6,8,10や参考例2に比べて着塵量及び残存量とも小さいことがわかる。なお、実施例1,3が参考例1に比べて着塵量及び残存量とも小さく、実施例2,4が参考例2に比べて着塵量及び残存量とも小さいのは、前述の通り、ZrがTiに比べて電気陰性度が小さいことに起因するものと思われる。
電気陰性度とは、分子内で結合している原子が電子を引きつける能力を数値で表したものであり、その数値を求める方法がいくつかあるが、ポウリングの方法で求められた数値が一般的である。ポウリングの方法による電気陰性度はTiが1.54に対してZrが1.33と小さい。電気陰性度はゴミが表面から脱離するのに最低限必要なエネルギーとも解釈できる。そのため、電気陰性度が小さい元素を含む酸化物を使用することにより、防塵性能を向上させることができる。
また、実施例及び比較例とも、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けた実施例2,4、比較例2,4,6,8,10及び比較例2がフッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けない実施例1,3、比較例1,3,5,7,9及び比較例1に比べて着塵量及び残存量とも大きいことがわかる。関東ローム法及びコットンリンタ法では、ポリエチレンパウダー法と同様に、実施例、比較例及び参考例とも、実施例1,2が比較例1〜10や参考例1,2に比べて着塵量及び残存量とも小さいことがわかる。また、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けた実施例2,4、比較例2,4,6,8、10及び参考例2がフッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けない実施例1,3、比較例1,3,5,7,9及び比較例1に比べて着塵量及び残存量とも大きいことがわかる。以上の結果は、フッ素含有有機ケイ素化合物膜により表面エネルギーが低下したため、表面に塵や埃がつきにくくなることに起因する。
[実施例5]
実施例5は、基板1の上にIR−UVカット膜4が形成されており、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は設けられていない。
実施例5のIR−UVカット膜4の層構成が表6から表10に示されている。表6は各層と材料及び膜厚との関係が示され、表7及び表8は最表層の成膜条件等が示され、表9及び表10は第5層から第39層までの成膜条件等が示されている。
表6から表8において、最表層2Sは、その密度が2.069g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.449の酸化ケイ素層2Aである。最表層2Sの膜厚は72.9nmであり、設計波長に対する相対値4ndは0.435である。第2層22は、その密度が5.17g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.977の酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bである。第2層22の膜厚は81.4nmであり、設計波長に対する相対値4ndは0.660である。第3層は、その密度が2.069g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.449の酸化ケイ素層2Aである。第3層の膜厚は148.9nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.887である。第4層は、その密度が5.17g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.977の酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bである。第4層の膜厚は85.9nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.697である。
表6、表9及び表10において、第5層は、その密度が2.213g/cm3の高密度層であり、その屈折率nが1.481の酸化ケイ素層2Aである。第5層の膜厚は143.6nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.866である。第6層は、その密度が4.87g/cm3の高密度層であり、その屈折率nが2.489の酸化チタンである金属酸化物の層2Bである。第6層の膜厚は85.2nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.791である。以後、第7層から第39層は表1、表9及び表10に記載された層構成とされ、最表層2Sから第39層までの合計の膜厚は4735.45nmである。
[実施例6]
実施例6は実施例5とはIR−UVカット膜4の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は、実施例1と同様のものが用いられる。
実施例7は実施例5とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、実施例7では、加速電圧が400V、加速電流が500mAの低アシストパワーである。そのため、酸化ケイ素層2Aであって最表層2Sと第3層の低密度層の密度が2.086g/cm3であり、酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bであって第2層22と第4層の低密度層の密度が5.23g/cm3である。第5層25から第39層の密度は実施例1と同じである。
[実施例8]
実施例8は実施例7とはIR−UVカット膜4の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
比較例11は実施例5とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例9では、最表層2Sから第4層24までの層を、加速電圧が600V、加速電流が700mAの中アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素の薄膜であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.172g/cm3であり、酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が5.36g/cm3である。
比較例9では、最表層の表面粗さは0.77nm〜0.85nmであって、実施例5〜8に比べて高い。
[比較例12]
比較例12は比較例10とはIR−UVカット膜4の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
比較例13は実施例5とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例13では、最表層2Sから第4層24までの層を、加速電圧が800V、加速電流が900mAの中アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素の薄膜であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.201g/cm3であり、酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が5.41g/cm3である。
比較例13では、最表層の表面粗さは0.77nm〜0.85nmであって、実施例5〜8に比べて高い。
[比較例14]
比較例14は比較例13とはIR−UVカット膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
比較例15は実施例1とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例15では、全ての層を、加速電圧が1000V、加速電流が1200mAの高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素の薄膜であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.213g/cm3であり、酸化ジルコニウムである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が5.45g/cm3である。
比較例15では、最表層の表面粗さは0.80nm〜0.90nmであって、実施例5〜8に比べて高い。
[比較例16]
比較例16は比較例15とはIR−UVカット膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
比較例17は層構成が実施例5と同じであるが、その成膜方法は実施例5とは異なり、最表層から第4層までをイオンアシストを用いない電子蒸着(EB)である。第5層から第39層までは加速電圧が1000V、加速電流が1200mAの高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜した。最表層から第4層までの酸化ケイ素の成膜時の真空圧は8.0×10−3Paであり、酸化ジルコニウムの成膜時の真空圧は5.0×10−3Paである。そのため、最表層から第4層における酸化ケイ素である金属酸化物の層の密度が2.037g/cm3であり、酸化ジルコニウムである金属酸化物の層の密度が7.52g/cm3である。比較例17では、最表層の表面粗さは0.95nm〜1.20nmであって、実施例5〜8に比べて高い。
[比較例18]
比較例18は比較例17とはIR−UVカット膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
[比較例19]
比較例19は膜厚が71.8nmの酸化ケイ素層からなる最表層、膜厚が84.2nmの酸化チタンである金属酸化物の層からなる第2層、膜厚が147.2nmの酸化ケイ素層からなる第3層、膜厚が83.6nmの酸化チタンである金属酸化物の層からなる第4層、膜厚が140.2nmの酸化ケイ素層からなる第5層、及び膜厚が83.1nmの酸化チタンである金属酸化物の層からなる第6層を有し、且つ、全体で39層であり合計の膜厚が4726.25nmとなったIR−UVカット膜である。比較例19の層構成を表11に示す。この層構成の比較例19では、特許文献1で示される従来例と同様の方法で成膜した。つまり、比較例19では、最表層の成膜がイオンアシストを用いない電子蒸着(EB)であり、最表層以外の層の成膜方法は比較例5と同様とする。第2層から第5層までは加速電圧が1000V、加速電流が1200mAの高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜した。成膜温度は150℃である。最表層の酸化ケイ素の成膜時の真空圧は8.0×10−3Paであり、最表層の酸化ケイ素の薄膜の密度が2.037g/cm3である。比較例19では、最表層の表面粗さは0.80nm〜0.95nmであって、実施例1〜4に比べて高い。
[比較例20]
比較例20は比較例19とはIR−UVカット膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
[参考例3]
参考例3は、比較例19と同様に表11で示される層構成である点で実施例1と異なるが、成膜方法は実施例1と同様に、最表層から第4層までを低アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜し、第5層以降を高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜した。参考例3では、最表層の表面粗さは0.55nm〜0.65nmであって、実施例1〜4に比べて高い。
[参考例4]
参考例4は参考例3とはIR−UVカット膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
1)表面抵抗(シート抵抗)の測定
表面抵抗の測定のため、実施例1〜4、比較例1〜8及び比較例1,2と同様の装置を用いて表面抵抗測定をした。その結果を表10に示す。
表10に示される通り、実施例5〜8が比較例11〜20や参考例3,4に比べて表面抵抗が低いことがわかる。表面抵抗が低いことは塵や埃が表面に付着しにくいことを意味する。
2)表面抵抗と総膜厚との関係
図10には実施例5における膜厚と表面抵抗との関係が示されている。
図10において、Y0は全部の層が高アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(1.0×1015Ω/□)であり、Y1は膜厚72.94nmの最表層のみ低アシストパワー(加速電圧300V、加速電流450mA)で電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(3.12×1012Ω/□)であり、Y2は最表層と第2層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(1.46×1011Ω/□)であり、Y3は最表層から第3層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(5.61×109Ω/□)であり、Y4は最表層から第4層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(3.54×109Ω/□)であり、Y5は最表層から第5層までの層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(3.51×109Ω/□)であり、Y6は最表層から第6層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(3.49×109Ω/□)であり、Y39は最表層から第39層までの全層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(3.48×109Ω/□)である。
図10に示される通り、最表層を含み互いに接合する層の数が多いと表面抵抗の値が小さくなることがわかるが、最表層から第4層までの場合と最表層から全ての層(39層)までの場合とでは表面抵抗の値があまり変化しないことがわかる。そのため、本実施例では、最表層から第4層まで(膜厚389.1nm)を低アシストパワーで電子ビーム蒸着すれば十分であることがわかる。
表12に示される通り、ポリエチレンパウダー法では、実施例5,7が比較例11,13,15,17,19や参考例1に比べて着塵量及び残存量とも小さく、実施例6,8が比較例12,14,16,18,20や参考例4に比べて着塵量及び残存量とも小さいことがわかる。なお、実施例5,7が参考例3に比べて着塵量及び残存量とも小さく、実施例6,8が参考例4に比べて着塵量及び残存量とも小さいのは、前述の通り、ZrがTiに比べて電気陰性度が小さいことに起因するものと思われる。
電気陰性度はゴミが表面から脱離するのに最低限必要なエネルギーとも解釈でき、値が小さいほどゴミが取れやすくなる。そのため、電気陰性度が小さい元素を含む酸化物を使用することにより、防塵性能を向上させることができる。
また、実施例、比較例及び参考例とも、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けた実施例6,8、比較例12,14,16,18,20及び参考例4がフッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けない実施例5,7、比較例11,13,15,17,19及び参考例3に比べて着塵量及び残存量とも大きいことがわかる。関東ローム法及びコットンリンタ法では、ポリエチレンパウダー法と同様に、実施例、比較例及び参考例とも、実施例5〜8が比較例11〜20や比較例3,4に比べて着塵量及び残存量とも小さいことがわかる。以上の結果は、表面粗さが改善されることで、表面に塵や埃がつきにくくなることに起因する。
[酸化タンタル層と酸化ケイ素層とを有する光学物品]
本発明の第一実施形態の光学物品に対応する実施例9〜12、比較例21〜26及び参考例5,6について説明する。
[実施例9]
実施例9は、基板1の上に反射防止膜2が形成されており、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は設けられていない。
実施例9の反射防止膜2の層構成が表13から表15に示されている。これらの表において、最表層2Sは、その密度が2.069g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.449の酸化ケイ素の層2Aである。最表層2Sの膜厚は85.7nmであり、その光学膜厚は1.449×85.7nm=124.1793nmである。この光学膜厚の設計波長(実施例1では510nm)に対する相対値4nd(以下、単に、設計波長に対する相対値と称する)は0.977である。つまり、光学薄膜設計では、設計波長の1/4を基本とするため、その値に対する光学薄膜ndの値は0.977となる。第2層22は、その密度が7.91g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが2.144の酸化タンタルである金属酸化物の層2Bである。第2層22の膜厚は115.6nmであり、設計波長に対する相対値4ndは1.958である。第3層23は、その密度が2.069g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.449の酸化ケイ素層2Aである。第3層23の膜厚は30.5nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.348である。第4層24は、その密度が7.91g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが2.144の酸化タンタルである金属酸化物の層2Bである。第4層24の膜厚は12.1nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.206である。第5層25は、その密度が2.213g/cm3の高密度層であり、その屈折率nが1.481の酸化ケイ素層2Aである。第5層25の膜厚は151.3nmであり、設計波長に対する相対値4ndが1.742である。最表層2Sから第5層25までの合計の膜厚は395.3nmである。
実施例10は実施例9とは反射防止膜2の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は、例えば、信越化学工業株式会社製フッ素含有有機ケイ素化合物(製品名KY−130)をフッ素系溶剤(住友スリーエム株式会社製:ノベックHFE−7200)で希釈して固形分濃度3%の溶液を調製し、これを多孔質セラミック製ペレットに1g含浸させ乾燥したものを蒸発源として使用する。
実施例11は実施例9とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、実施例11では、加速電圧が400V、加速電流が500mAの低アシストパワーである。そのため、酸化ケイ素層2Aであって最表層2Sと第3層23の低密度層の密度が2.086g/cm3であり、酸化タンタルである金属酸化物の層2Bであって第2層22と第4層24の低密度層の密度が7.98g/cm3である。第5層25の密度は実施例9と同じである。
[実施例12]
実施例12は実施例11とは反射防止膜2の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
比較例21は実施例9とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例21では、最表層2Sから第4層24までの層を、加速電圧が600V、加速電流が700mAの中アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素層であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.172g/cm3であり、酸化タンタルである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が8.09g/cm3である。比較例21では、最表層の表面粗さは0.57nm〜0.67nmであって、実施例9〜12に比べて高い。
[比較例22]
比較例22は比較例21とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
比較例23は実施例9とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例23では、最表層2Sから第4層24までの層を、加速電圧が800V、加速電流が900mAの中アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素層であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.201g/cm3であり、酸化タンタルである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が8.15g/cm3である。比較例23では、最表層の表面粗さは0.6nm〜0.7nmであって、実施例9〜12に比べて高い。
[比較例24]
比較例24は比較例23とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
[比較例25]
比較例25は実施例9とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例25では、全ての層を、加速電圧が1000V、加速電流が1200mAの高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素層であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.213g/cm3であり、酸化タンタルである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が8.19g/cm3である。比較例25では、最表層の表面粗さは0.62nm〜0.72nmであって、実施例9〜13に比べて高い。
[比較例26]
比較例26は比較例25とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
参考例5は、膜厚が86.0nmの酸化ケイ素の薄膜からなる最表層、膜厚が102.7nmの酸化チタンの薄膜からなる第2層、膜厚が30.6nmの酸化ケイ素の薄膜からなる第3層、膜厚が12.1nmの酸化チタンの薄膜からなる第4層、及び膜厚が136.6nmの酸化ケイ素層からなる第5層の反射防止膜であり、実施例9とは偶数層の真空圧と屈折率とが相違する。参考例5の層構成を表16に示す。参考例5では、最表層の表面粗さは0.6nm〜0.7nmであって、実施例9〜12に比べて高い。参考例5は実施例9と同様のアシストパワーで成膜した。
[参考例6]
参考例6は参考例5とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
以上において、最表層の表面粗さは最表層を成膜する際のアシストパワーに対応することがわかる。つまり、実施例9〜12では、最表層の成膜を、加速電圧を300V〜400V(加速電流450mA〜500mA)という低アシストパワーで実施することで、最表層の表面粗さが0.55nm〜0.65nmとなるが、比較例21〜24では、最表層の成膜を、加速電圧600V〜800V(加速電流700mA〜900mA)という中アシストパワーで実施することで、最表層の表面粗さが0.6nm〜0.7nmや0.62nm〜0.75nmとなり、さらに、比較例25,26では、最表層の成膜を、加速電圧1000V(加速電流1200mA)という高アシストパワーで実施することで、最表層の表面粗さが0.62nm〜0.72nmとなる。また、参考例5,6では、実施例9,10と同じアシストパワー下での成膜であるが、実施例9,10とは異なり偶数層が酸化チタンの薄膜であるため、表面粗さが0.6nm〜0.7nmとなる。
1)表面抵抗(シート抵抗)の測定
表面抵抗の測定のため図7(A)で示される表面抵抗測定器504を用いる。この表面抵抗測定器504とステージ506は、前述の構成であり、測定条件及び測定時の環境も前述の実験と同様である。
各実施例、比較例及び参考例でのサンプルにおける表面抵抗を測定した。その結果を表15に示す。表15に示される通り、実施例9〜12が比較例25〜28に比べて表面抵抗が低いことがわかる。表面抵抗が低いことは塵や埃が表面に付着しにくいことを意味する。
図11には実施例9における膜厚と表面抵抗との関係が示されている。
図11において、X0は全部の層が高アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(1.5×1015Ω/□)であり、X1は膜厚85.74nmの最表層のみ低アシストパワー(加速電圧300V、加速電流450mA)で電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(3.17×1012Ω/□)であり、X2は最表層と第2層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(1.47×1011Ω/□)であり、X3は最表層から第3層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(1.01×1011Ω/□)であり、X4は最表層から第4層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(8.88×1010Ω/□)であり、X5は全ての層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(8.50×1010Ω/□)である。
図11に示される通り、低アシストパワーで電子ビーム蒸着する対象を、最表層を含み互いに接合する層の数が多いと表面抵抗の値が小さくなることがわかるが、最表層から第4層までの場合と最表層から全ての層(5層)までの場合とでは表面抵抗の値があまり変化しないことがわかる。そのため、本実施例では、最表層から第4層まで(膜厚244.0nm)を低アシストパワーで電子ビーム蒸着すれば十分であることがわかる。
電荷抜けはサンプルの最表層を擦って帯電させ、最表層に残存する電荷量(相対値)を時間の経過とともに表示したものである。この電荷抜けを図12に示す。図12では、グラフAで比較例25が示され、グラフBで実施例9が示される。表面電荷の測定は、図7(B)で示される表面電位計500を用いる。この表面電位計500は前述の実験で用いられたものと同じであり、プローブ501とフィルターのサンプル502の表面との距離が10mmである。サンプル502を載置するステージ503は金属製で、アースした状態で測定が行われる。測定時の環境は前述の実験と同じである。
図12で示される通り、実施例9のグラフBが比較例25のグラフAに比べて時間経過に伴う残存電荷量が小さい。この結果、実施例9は比較例25に比べて静電気による塵や埃の表面への付着を軽減することがわかる。
防塵性能試験を、(4−1)ポリエチレンパウダー法、(4−2)関東ローム法、(4−3)コットンリンタ法で実施した。これらの方法の具体的な仕様は前述の通りである。
表17では、(4−1)ポリエチレンパウダー法、(4−2)関東ローム法及び(4−3)コットンリンタ法の結果が示される。
表17に示される通り、ポリエチレンパウダー法では、実施例9,10が比較例21〜24や参考例5,6に比べて着塵量及び残存量とも小さいことがわかる。なお、実施例9,11が参考例5に比べて着塵量及び残存量とも小さく、実施例10,12が参考例6に比べて着塵量及び残存量とも小さいのは、前述の通り、TaがTiに比べて電気陰性度が小さいことに起因するものと思われるまた、実施例及び比較例とも、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けた実施例10,12、比較例22,24,26及び参考例6がフッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けない実施例9,11、比較例21,23,25及び参考例5に比べて着塵量及び残存量とも大きいことがわかる。関東ローム法及びコットンリンタ法では、ポリエチレンパウダー法と同様に、実施例、比較例及び参考例とも、実施例9,10が比較例21〜24や参考例5,6に比べて着塵量及び残存量とも小さいことがわかる。
電気陰性度とは、分子内で結合している原子が電子を引きつける能力を数値で表したものであり、その数値を求める方法がいくつかあるが、ポウリングの方法で求められた数値が一般的である。ポウリングの方法による電気陰性度はTiが1.54に対してTaが1.50と小さい。電気陰性度はゴミが表面から脱離するのに最低限必要なエネルギーとも解釈できる。そのため、電気陰性度が小さい元素を含む酸化物を使用することにより、防塵性能を向上させることができる。
また、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けた実施例10,12、比較例22,24,26及び参考例6がフッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けない実施例9,11、比較例21,23,25及び参考例5に比べて着塵量及び残存量とも大きいことがわかる。以上の結果は、フッ素含有有機ケイ素化合物膜により表面エネルギーが低下したため、表面に塵や埃がつきにくくなることに起因する。
[実施例13]
実施例13は、基板1の上にIR−UVカット膜4が形成されており、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は設けられていない。
実施例13のIR−UVカット膜4の層構成が表18から表22に示されている。表18は各層と材料及び膜厚との関係が示され、表19及び表20は最表層の成膜条件等が示され、表21及び表22は第5層から第39層までの成膜条件等が示されている。
表18から表20において、最表層2Sは、その密度が2.069g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.449の酸化ケイ素層2Aである。最表層2Sの膜厚は70.3nmであり、設計波長に対する相対値4ndは0.419である。第2層22は、その密度が7.91g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが2.144の酸化タンタルである金属酸化物の層2Bである。第2層22の膜厚は86.3nmであり、設計波長に対する相対値4ndは0.745である。第3層は、その密度が2.069g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.449の酸化ケイ素層2Aである。第3層の膜厚は146.6nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.874である。第4層は、その密度が7.91g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが2.144の酸化タンタルである金属酸化物の層2Bである。第4層の膜厚は88.6nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.765である。
表18、表21及び表22において、第5層は、その密度が2.213g/cm3の高密度層であり、その屈折率nが1.481の酸化ケイ素層2Aである。第5層の膜厚は140.2nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.845である。第6層は、その密度が4.87g/cm3の高密度層であり、その屈折率nが2.489の酸化チタンである金属酸化物の層2Bである。第6層の膜厚は83.1nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.772である。以後、第7層から第39層は表18、表21及び表22に記載された層構成とされ、最表層2Sから第39層までの合計の膜厚は4731.39nmである。
[実施例14]
実施例14は実施例13とはIR−UVカット膜4の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は、実施例9と同様のものが用いられる。
[実施例15]
実施例15は実施例13とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、実施例15では、加速電圧が400V、加速電流が500mAの低アシストパワーである。そのため、酸化ケイ素層2Aであって最表層2Sと第3層の低密度層の密度が2.086g/cm3であり、酸化タンタルである金属酸化物の層2Bであって第2層22と第4層の低密度層の密度が7.98g/cm3である。
[実施例16]
実施例16は実施例15とはIR−UVカット膜4の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
比較例27は実施例13とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例27では、最表層2Sから第4層24までの層を、加速電圧が600V、加速電流が700mAの中アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素の薄膜であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.172g/cm3であり、酸化タンタルである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が8.09g/cm3である。
比較例27では、最表層の表面粗さは0.57nm〜0.67nmであって、実施例13〜16に比べて高い。
[比較例28]
比較例28は比較例27とはIR−UVカット膜4の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
比較例29は実施例13とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例29では、最表層2Sから第4層24までの層を、加速電圧が800V、加速電流が900mAの中アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素層であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.201g/cm3であり、酸化タンタルである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が8.15g/cm3である。
比較例29では、最表層の表面粗さは0.6nm〜0.7nmであって、実施例13〜16に比べて高い。
[比較例30]
比較例30は比較例29とはIR−UVカット膜4の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
比較例31は実施例13とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例31では、全ての層を、加速電圧が1000V、加速電流が1200mAの高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素層であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.213g/cm3であり、酸化タンタルである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が8.19g/cm3である。
比較例31では、最表層の表面粗さは0.62nm〜0.72nmであって、実施例13〜16に比べて高い。
[比較例32]
比較例32は比較例31とはIR−UVカット膜4の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
参考例7は、膜厚が71.8nmの酸化ケイ素の薄膜からなる最表層、膜厚が84.2nmの酸化チタンである金属酸化物の層2Bからなる第2層、膜厚が147.2nmの酸化ケイ素層からなる第3層、膜厚が83.6nmの酸化チタンである金属酸化物の層2Bからなる第4層、膜厚が140.2nmの酸化ケイ素層からなる第5層、及び膜厚が83.1nmの酸化チタンである金属酸化物の層2Bからなる第6層を有し、且つ、全体で39層であり合計の膜厚が4726.25nmとなったIR−UVカット膜である。参考例7の層構成を表23に示す。参考例7では最表層の表面粗さが0.55nm〜0.65nmであって、実施例13〜16に比べて高い。参考例7は実施例13と同様の方法で成膜した。また、設計波長は967nmである。
[参考例8]
参考例8は参考例7とはIR−UVカット膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
1)表面抵抗(シート抵抗)の測定
表面抵抗の測定のため、実施例9〜12、比較例21〜26及び比較例5,6と同様の装置を用いて表面抵抗測定をした。その結果を表22に示す。
表22に示される通り、実施例13〜16が比較例27〜32や参考例7,8に比べて表面抵抗が低いことがわかる。表面抵抗が低いことは静電気による塵や埃の表面への付着を軽減することを意味する。
2)表面抵抗と総膜厚との関係
図13には実施例13おける膜厚と表面抵抗との関係が示されている。
図13において、Y0は全部の層が高アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(1.0×1015Ω/□)であり、Y1は膜厚70.29nmの最表層のみ低アシストパワー(加速電圧300V、加速電流450mA)で電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(3.17×1012Ω/□)であり、Y2は最表層と第2層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(1.46×1011Ω/□)であり、Y3は最表層から第3層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(7.95×1010Ω/□)であり、Y4は最表層から第4層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(7.71×1010Ω/□)であり、Y5は最表層から第5層までの層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(7.67×1010Ω/□)であり、Y6は最表層から第6層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(7.61×1010Ω/□)であり、Y39は最表層から第39層までの全層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(7.59×1010Ω/□)である。
図13に示される通り、最表層を含み互いに接合する層の数が多いと表面抵抗の値が小さくなることがわかるが、最表層から第4層までの場合と最表層から全ての層(39層)までの場合とでは表面抵抗の値があまり変化しないことがわかる。そのため、本実施例では、最表層から第4層まで(膜厚391.86nm)を低アシストパワーで電子ビーム蒸着すれば十分であることがわかる。
表24に示される通り、ポリエチレンパウダー法では、実施例13,15が比較例27,29,31や参考例7に比べて着塵量及び残存量とも小さく、実施例14,16が比較例28,30や参考例8に比べて着塵量及び残存量とも小さいことがわかる。なお、実施例13,15が参考例7に比べて着塵量及び残存量とも小さく、実施例14,16が参考例8に比べて着塵量及び残存量とも小さいのは、前述の通り、TaがTiに比べて電気陰性度が小さいことに起因するものと思われる。
電気陰性度はゴミが表面から脱離するのに最低限必要なエネルギーとも解釈でき、値が小さいほどゴミが取れやすくなる。そのため、電気陰性度が小さい元素を含む酸化物を使用することにより、防塵性能を向上させることができる。
また、実施例、比較例及び参考例とも、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けた実施例14,16、比較例28,30,32及び参考例8がフッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けない実施例13,15、比較例27,29,31及び参考例7に比べて着塵量及び残存量とも大きいことがわかる。関東ローム法及びコットンリンタ法では、ポリエチレンパウダー法と同様に、実施例、比較例及び参考例とも、実施例13〜16が比較例27〜32や参考例7,8に比べて着塵量及び残存量とも小さいことがわかる。以上の結果は、表面粗さが改善されることで、表面に塵や埃がつきにくくなることに起因する。
[酸化チタン層と酸化ケイ素層とを有する光学物品]
本発明の第一実施形態の光学物品に対応する実施例17〜20及び比較例33〜40について説明する。
なお、蒸着実験に関しては、シンクロン製蒸着機(商品名SID−1350)を用いた。また、実験は、所定形状のサンプル、例えば、直径30mm、厚さ0.3mmの白板ガラス(屈折率n=1.52)の表面に、各実施例及び比較例に応じた条件で反射防止膜を作製した。
[実施例17]
実施例17は、基板1の上に反射防止膜2が形成されており、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は設けられていない。
実施例17の反射防止膜2の層構成が表25から表27に示されている。これらの表において、最表層2Sは、その密度が2.069g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.449の酸化ケイ素層2Aである。最表層2Sの膜厚は86.0nmであり、その光学膜厚は1.449×86.0nm=124.614nmである。この光学膜厚の設計波長(実施例1では510nm)に対する相対値4nd(以下、単に、設計波長に対する相対値と称する)は0.979である。つまり、光学薄膜設計では、設計波長の1/4を基本とするため、その値(127.5)に対する光学薄膜nd(1.449×86.0)の値は0.979となる。第2層22は、その密度が4.65g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが2.466の酸化チタンである金属酸化物の層2Bである。第2層22の膜厚は102.7nmであり、設計波長に対する相対値4ndは2.014である。第3層23は、その密度が2.069g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.449の酸化ケイ素層2Aである。第3層23の膜厚は30.6nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.349である。第4層24は、その密度が4.65g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが2.466の酸化チタンである金属酸化物の層2Bである。第4層24の膜厚は12.1nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.237である。第5層25は、その密度が2.213g/cm3の高密度層であり、その屈折率nが1.481の酸化ケイ素層2Aである。第5層25の膜厚は136.6nmであり、設計波長に対する相対値4ndが1.573である。最表層2Sから第5層25までの合計の厚さは367.9nmである。
実施例18は実施例17とは反射防止膜2の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は、例えば、信越化学工業株式会社製フッ素含有有機ケイ素化合物(製品名KY−130)をフッ素系溶剤(住友スリーエム株式会社製:ノベックHFE−7200)で希釈して固形分濃度3%の溶液を調製し、これを多孔質セラミック製ペレットに1g含浸させ乾燥したものを蒸発源として使用する。
実施例19は実施例17とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、実施例19では、加速電圧が400V、加速電流が500mAの低アシストパワーである。そのため、酸化ケイ素層2Aであって最表層2Sと第3層23の低密度層の密度が2.086g/cm3であり、酸化チタンである金属酸化物の層2Bであって第2層22と第4層24の低密度層の密度が4.69g/cm3である。第5層25の密度は実施例17と同じである。
[実施例20]
実施例20は実施例19とは反射防止膜2の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
比較例33は実施例17とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例33では、最表層2Sから第4層24までの層を、加速電圧が600V、加速電流が700mAの中アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素層であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.172g/cm3であり、酸化チタンである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が4.79g/cm3である。比較例33では、最表層の表面粗さは0.62nm〜0.72nmであって、実施例17〜20に比べて高い。
[比較例34]
比較例34は比較例33とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
比較例35は実施例17とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例35では、最表層2Sから第4層24までの層を、加速電圧が800V、加速電流が900mAの中アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素層であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.201g/cm3であり、酸化チタンである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が4.89g/cm3である。比較例35では、最表層の表面粗さは0.65nm〜0.75nmであって、実施例17〜20に比べて高い。
[比較例36]
比較例36は比較例35とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
比較例37は実施例17とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例37では、全ての層を、加速電圧が1000V、加速電流が1200mAの高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素層であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.213g/cm3であり、酸化チタンである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が4.87g/cm3である。比較例37では、最表層の表面粗さは0.67nm〜0.77nmであって、実施例17〜20に比べて高い。
[比較例38]
比較例38は比較例37とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
比較例39は層構成が実施例17と同じであるが、その成膜方法は実施例17とは異なり、特許文献1で示される従来例と同様である。つまり、比較例39では、最表層の成膜がイオンアシストを用いない電子蒸着(EB)であり、最表層以外の層の成膜方法は比較例37と同様とする。第2層から第5層までは加速電圧が1000V、加速電流が1200mAの高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜した。最表層の酸化ケイ素の成膜時の真空圧は8.0×10−3Paである。そのため、最表層の酸化ケイ素層の密度が2.037g/cm3である。比較例39では、最表層の表面粗さは0.8nm〜0.95nmであって、実施例17〜20に比べて高い。
[比較例40]
比較例40は比較例39とは反射防止膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
以上において、最表層の表面粗さは最表層を成膜する際のアシストパワーに対応することがわかる。つまり、実施例17〜20では、最表層の成膜を、加速電圧を300V〜400V(加速電流450mA〜500mA)という低アシストパワーで実施することで、最表層の表面粗さが0.60nm〜0.70nmとなるが、比較例33〜36では、最表層の成膜を、加速電圧600V〜800V(加速電流700mA〜900mA)という中アシストパワーで実施することで、最表層の表面粗さが0.62nm〜0.75nmとなり、さらに、比較例37,38では、最表層の成膜を、加速電圧1000V(加速電流1200mA)という高アシストパワーで実施することで、最表層の表面粗さが0.67nm〜0.77nmとなる。
1)表面抵抗(シート抵抗)の測定
表面抵抗の測定のため図7(A)で示される表面抵抗測定器504を用いる。この表面抵抗測定器504とステージ506は、前述の構成であり、測定条件及び測定時の環境も前述の実験と同様である。
各実施例及び比較例でのサンプルにおける表面抵抗を測定した。その結果を表27に示す。これらの実験結果のうち代表的な例を図14にグラフとして示す。
図14では、低アシストパワーで蒸着をした実施例17と、高アシストパワーで蒸着をした比較例37と、従来例に対応する比較例39とを示す。これらの実施例17及び比較例37,39は、その表面にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられていない。
図14に示される通り、実施例17は比較例37,39に比べて表面抵抗が低いことがわかる。他の実施例及び比較例を表27で参照しても、実施例17〜20が比較例37〜40に比べて表面抵抗が低いことがわかる。表面抵抗が低いことは静電気による塵や埃の付着を軽減することを意味する。
図15には実施例1における膜厚と表面抵抗との関係が示されている。
図15において、X0は全部の層が高アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(1.0×1015Ω/□)であり、X1は厚さ86.0nmの最表層のみ低アシストパワー(加速電圧300V、加速電流450mA)で電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(3.17×1012Ω/□)であり、X2は最表層と第2層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(1.44×1011Ω/□)であり、X3は最表層から第3層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(7.28×1010Ω/□)であり、X4は最表層から第4層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(5.77×1010Ω/□)であり、X5は全ての層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(5.74×1010Ω/□)である。図15に示される通り、低アシストパワーで電子ビーム蒸着する対象を、最表層を含み互いに接合する層の数が多いと表面抵抗の値が小さくなることがわかるが、最表層から第4層までの場合と最表層から全ての層(5層)までの場合とでは表面抵抗の値があまり変化しないことがわかる。そのため、本実施例では、最表層から第4層まで(膜厚240nm)を低アシストパワーで電子ビーム蒸着すれば十分であることがわかる。
電荷抜けはサンプルの最表層を擦って帯電させ、最表層に残存する電荷量(相対値)を時間の経過とともに表示したものである。この電荷抜けを図16に示す。図16では、グラフAで比較例37が示され、グラフBで比較例39が示され、グラフCで実施例17が示される。表面電荷の測定は、図7(B)で示される表面電位計500を用いる。この表面電位計500は前述の実験で用いられたものと同じであり、プローブ501とフィルターのサンプル502の表面との距離が10mmである。サンプル502を載置するステージ503は金属製で、アースした状態で測定が行われる。測定時の環境は前述の実験と同じである。
図16で示される通り、実施例17のグラフCが比較例37のグラフAや比較例39のグラフBに比べて時間経過に伴う残存電荷量が小さい。この結果、実施例17は比較例37や比較例39に比べて静電気による塵や埃の付着が軽減されることがわかる。
防塵性能試験を、(4−1)ポリエチレンパウダー法、(4−2)関東ローム法、(4−3)コットンリンタ法で実施した。これらの方法の具体的な仕様は前述の通りである。
これらの方法で実施した防塵性能の結果を表28に示す。
表28では、(4−1)ポリエチレンパウダー法、(4−2)関東ローム法及び(4−3)コットンリンタ法の結果が示される。
表28に示される通り、ポリエチレンパウダー法では、実施例17,18が比較例33〜36に比べて着塵量及び残存量とも小さいことがわかる。また、実施例及び比較例とも、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けた実施例18,20及び比較例34,36,38,40がフッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けない実施例17,19及び比較例33,35,37,39に比べて着塵量及び残存量とも大きいことがわかる。関東ローム法及びコットンリンタ法では、ポリエチレンパウダー法と同様に、実施例及び比較例とも、実施例17,18が比較例33〜36に比べて着塵量及び残存量とも小さいことがわかる。また、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けた実施例18,20及び比較例34,36,38,40がフッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けない実施例17,19及び比較例33,35,37,39に比べて着塵量及び残存量とも大きいことがわかる。以上の結果は、表面粗さが改善されることで、表面に塵や埃がつきにくくなることに起因する。
[実施例21]
実施例21は、基板1の上にIR−UVカット膜4が形成されており、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は設けられていない。
実施例21のIR−UVカット膜4の層構成が表29から表33に示されている。表29は各層と材料及び膜厚との関係が示され、表30及び表31は最表層の成膜条件等が示され、表32及び表33は第5層から第39層までの成膜条件等が示されている。なお、実施例21では、設計波長が967nmである。
表29から表31において、最表層2Sは、その密度が2.069g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.449の酸化ケイ素層2Aである。最表層2Sの膜厚は71.8nmであり、設計波長に対する相対値4ndは0.433である。第2層22は、その密度が4.65g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが2.466の酸化チタンである金属酸化物の層2Bである。第2層22の膜厚は84.2nmであり、設計波長に対する相対値4ndは0.782である。第3層は、その密度が2.069g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが1.449の酸化ケイ素層2Aである。第3層の膜厚は147.2nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.887である。第4層は、その密度が4.65g/cm3の低密度層であり、その屈折率nが2.466の酸化チタンである金属酸化物の層2Bである。第4層の膜厚は83.6nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.776である。
表29、表32及び表33において、第5層は、その密度が2.213g/cm3の高密度層であり、その屈折率nが1.481の酸化ケイ素層2Aである。第5層の膜厚は140.2nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.845である。第6層は、その密度が4.87g/cm3の高密度層であり、その屈折率nが2.489の酸化チタンである金属酸化物の層2Bである。第6層の膜厚は83.1nmであり、設計波長に対する相対値4ndが0.772である。以後、第7層から第39層は表1、表9及び表10に記載された層構成とされ、最表層2Sから第39層までの合計の厚さは4726.25nmである。
[実施例22]
実施例22は実施例21とはIR−UVカット膜4の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は、実施例18と同様のものが用いられる。
実施例23は実施例21とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、実施例23では、加速電圧が400V、加速電流が500mAの低アシストパワーである。そのため、酸化ケイ素層2Aであって最表層2Sと第3層の低密度層の密度が2.086g/cm3であり、酸化チタンである金属酸化物の層2Bであって第2層22と第4層の低密度層の密度が4.69g/cm3である。第5層25から第39層の密度は実施例1と同じである。
[実施例24]
実施例24は実施例23とはIR−UVカット膜4の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
フッ素含有有機ケイ素化合物膜3は、実施例18と同様のものが用いられる。
比較例41は実施例21とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例41では、最表層2Sから第4層24までの層を、加速電圧が600V、加速電流が700mAの中アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素の薄膜であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.172g/cm3であり、酸化チタンである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が4.79g/cm3である。
比較例41では、最表層の表面粗さは0.62nm〜0.72nmであって、実施例21〜24に比べて高い。
[比較例42]
比較例42は比較例41とはIR−UVカット膜4の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜3が設けられている点で相違する。
比較例43は実施例21とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例43では、最表層2Sから第4層24までの層を、加速電圧が800V、加速電流が900mAの中アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素層であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.201g/cm3であり、酸化チタンである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が4.89g/cm3である。
比較例43では、最表層の表面粗さは0.65nm〜0.75nmであって、実施例21〜24に比べて高い。
[比較例44]
比較例44は比較例43とはIR−UVカット膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
比較例45は実施例21とは低密度層を成膜するアシストパワーが相違する。つまり、比較例45では、全ての層を、加速電圧が1000V、加速電流が1200mAの高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜する。そのため、酸化ケイ素の薄膜であって最表層と第3層の低密度層の密度が2.213g/cm3であり、酸化チタンである金属酸化物の層2Bであって第2層と第4層の低密度層の密度が4.87g/cm3である。
比較例45では、最表層の表面粗さは0.67nm〜0.77nmであって、実施例21〜24に比べて高い。
[比較例46]
比較例46は比較例45とはIR−UVカット膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
比較例47は層構成が実施例21と同じであるが、その成膜方法は実施例21とは異なり、特許文献1で示される従来例と同様である。つまり、比較例47では、最表層の成膜がイオンアシストを用いていない電子蒸着(EB)であり、最表層以外の層の成膜方法は比較例37と同様とする。第2層から第39層までは加速電圧が1000V、加速電流が1200mAの高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜した。最表層の酸化ケイ素の成膜時の真空圧は8.0×10−3Paである。そのため、酸化ケイ素層の密度は2.037g/cm3である。比較例47では、最表層の表面粗さは0.8nm〜0.95nmであって、実施例21〜24に比べて高い。
[比較例48]
比較例48は比較例47とはIR−UVカット膜の上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜が設けられている点で相違する。
1)表面抵抗(シート抵抗)の測定
表面抵抗の測定のため、実施例17〜20及び比較例33〜40と同様の装置を用いて表面抵抗測定をした。その結果を表33に示す。
表33に示される通り、実施例21〜24が比較例41〜48に比べて表面抵抗が低いことがわかる。表面抵抗が低いことは静電気による塵や埃の付着を軽減することを意味する。
図17には実施例21における膜厚と表面抵抗との関係が示されている。
図17において、Y0は全部の層が高アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(1.0×1015Ω/□)であり、Y1は厚さ71.8nmの最表層のみ低アシストパワー(加速電圧300V、加速電流450mA)で電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(3.17×1012Ω/□)であり、Y2は最表層と第2層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(1.44×1011Ω/□)であり、Y3は最表層から第3層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(7.28×1010Ω/□)であり、Y4は最表層から第4層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(6.87×1010Ω/□)であり、Y5は最表層から第5層までの層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(6.85×1010Ω/□)であり、Y6は最表層から第6層までを低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(6.81×1010Ω/□)であり、Y39は最表層から第39層までの全層を低アシストパワーで電子ビーム蒸着をした場合の表面抵抗(6.75×1010Ω/□)である。
図17に示される通り、最表層を含み互いに接合する層の数が多いと表面抵抗の値が小さくなることがわかるが、最表層から第4層までの場合と最表層から全ての層(39層)までの場合とでは表面抵抗の値があまり変化しないことがわかる。そのため、本実施例では、最表層から第4層まで(膜厚386.8nm)を低アシストパワーで電子ビーム蒸着すれば十分であることがわかる。
表34に示される通り、ポリエチレンパウダー法では、実施例21,23が比較例41,43,45,47に比べて着塵量及び残存量とも小さく、実施例22,24が比較例42,44,46,48に比べて着塵量及び残存量とも小さいことがわかる。また、実施例及び比較例とも、フッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けた実施例22,24及び比較例42,44,46,48がフッ素含有有機ケイ素化合物膜3を設けない実施例21,23及び比較例41,43,45,47に比べて着塵量及び残存量とも大きいことがわかる。関東ローム法及びコットンリンタ法では、ポリエチレンパウダー法と同様に、実施例及び比較例とも、実施例21〜24が比較例41〜48に比べて着塵量及び残存量とも小さいことがわかる。以上の結果は、表面粗さが改善されることで、表面に塵や埃がつきにくくなることに起因する。
例えば、本発明では、光学物品は前述の構成のものに限定されない。例えば第一実施形態では、本発明の対象となる光学物品を、例えば、偏光変換素子114としてもよい。さらに、第二実施形態では、本発明の対象となる光学物品を、例えば、光学ローパスフィルター211としてもよい。要するに本発明では、基板1の上に反射防止膜2やUV−IRカット膜を含め光学多層膜が形成される光学物品であればいかなるものでも適用される。
Claims (20)
- 基板上に複数層からなる無機薄膜を有する光学物品であって、
前記無機薄膜は、複数の酸化ケイ素の層と、複数の金属酸化物の層と、が積層され、
前記金属酸化物は、ジルコニウム、タンタルまたはチタンの少なくともいずれかを含む金属酸化物であり、
前記酸化ケイ素の層には、低密度の酸化ケイ素層、またはこの低密度の酸化ケイ素層より密度が高い高密度の酸化ケイ素層、のいずれかが混在し、
前記無機薄膜の最表層は前記低密度の酸化ケイ素層であり、且つ表面粗さが0.55nm以上0.70nm以下であることを特徴とする光学物品。 - 請求項1に記載された光学物品において、
前記最表層に近い側に積層される金属酸化物の層は、酸化ジルコニウムの層であり、
前記無機薄膜の最表層は前記低密度の酸化ケイ素層であり、且つ表面粗さが0.6nm以上0.7nm以下であることを特徴とする光学物品。 - 請求項2に記載された光学物品において、
前記酸化ジルコニウムの層には、低密度の酸化ジルコニウム層、またはこの低密度の酸化ジルコニウム層より密度が高い高密度の酸化ジルコニウム層のいずれかが混在し、少なくとも前記無機薄膜の最表層に隣在する層は、前記低密度の酸化ジルコニウム層であることを特徴とする光学物品。 - 請求項3に記載された光学物品において、
前記低密度の酸化ケイ素層の密度は、2.00g/cm3以上2.20g/cm3以下であり、前記低密度の酸化ジルコニウム層の密度は、4.8g/cm3以上5.4g/cm3以下であることを特徴とする光学物品。 - 請求項1に記載された光学物品において、
前記最表層に近い側に積層される金属酸化物の層は、酸化タンタルの層であり、
前記無機薄膜の最表層は前記低密度の酸化ケイ素層であり、且つ表面粗さは0.55nm以上0.65nm以下であることを特徴とする光学物品。 - 請求項5に記載された光学物品において、
前記酸化タンタルの層には、低密度の酸化タンタル層、またはこの低密度の酸化タンタル層より密度が高い高密度の酸化タンタル層のいずれかが混在し、少なくとも前記無機薄膜の最表層に隣在する層は、前記低密度の酸化タンタル層であることを特徴とする光学物品。 - 請求項6に記載された光学物品において、
前記低密度の酸化タンタル層の密度は、2.00g/cm3以上2.15g/cm3以下であり、前記低密度の酸化タンタル層の密度は、7.7g/cm3以上8.0g/cm3以下であることを特徴とする光学物品。 - 請求項1に記載された光学物品において、
前記最表層に近い側に積層される金属酸化物の層は、酸化チタンの層であり、
前記無機薄膜の最表層は前記低密度の酸化ケイ素層であり、且つ表面粗さは0.6nm以上0.7nm以下であることを特徴とする光学物品。 - 請求項8に記載された光学物品において、
前記酸化チタンの層には、低密度の酸化チタン層、またはこの低密度の酸化チタン層より密度が高い高密度の酸化チタン層、のいずれかが混在し、少なくとも前記無機薄膜の最表層に隣在する層は、前記低密度の酸化チタン層であることを特徴とする光学物品。 - 請求項9に記載された光学物品において、
前記低密度の酸化ケイ素層の密度は、2.00g/cm3以上2.15g/cm3以下であり、前記低密度の酸化チタン層の密度は4.50g/cm3以上4.75g/cm3以下であることを特徴とする光学物品。 - 請求項1から請求項10のいずれかに記載された光学物品において、
前記低密度の酸化ケイ素の層と低密度の金属酸化物の層の膜厚の合計は、500nm以下であることを特徴とする光学物品。 - 請求項1から請求項11のいずれかに記載された光学物品において、
前記無機薄膜の最表層の表面にはフッ素含有有機ケイ素化合物膜が形成されていることを特徴とする光学物品。 - 請求項2から請求項4のいずれかに記載された光学物品において、
前記無機薄膜の表面抵抗が3.1×1010Ω/□以下であり、9.1×109Ω/□以上であることを特徴とする光学物品。 - 請求項5から請求項7のいずれかに記載された光学物品において、
前記無機薄膜の表面抵抗が1.4×1011Ω/□以下であり、7.7×109Ω/□以上であることを特徴とする光学物品。 - 請求項8から請求項10のいずれかに記載された光学物品において、
前記無機薄膜の表面抵抗が1.4×1011Ω/□以下であり、5.7×1010Ω/□以上であることを特徴とする光学物品。 - 請求項1から請求項15のいずれかに記載された光学物品を製造する方法であって、
前記無機薄膜のうち少なくとも最表層を、加速電圧が300V以上450V以下のアシストパワーのイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着により成膜することを特徴とする光学物品の製造方法。 - 請求項16に記載された光学物品の製造方法において、
前記複数層は5層以上あり、これらの層のうち最表層を含み互いに隣在する少なくとも4層を、前記アシストパワーのイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着により成膜することを特徴とする光学物品の製造方法。 - 請求項1から請求項15のいずれかに記載された光学物品と、この光学物品を収納するケースとを備え、
前記光学物品はIR−UVカットフィルターであり、このIR−UVカットフィルターには撮像素子が対向配置されていることを特徴とする電子機器。 - 請求項1から請求項15のいずれかに記載された光学物品と、この光学物品を収納するケースとを備え、
前記光学物品は反射防止膜を有し、且つ、レーザー光源と光ディスクに対向する対物レンズとの間の光路に配置されていることを特徴とする電子機器。 - 請求項1から請求項15のいずれかに記載された光学物品と、この光学物品を収納するケースとを備え、
前記光学物品は反射防止膜を有し、且つ、光源とダイクロイックプリズムとの間の光路に配置されることを特徴とする電子機器。
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