JP2007156321A - 光学多層膜フィルタの製造方法 - Google Patents

光学多層膜フィルタの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】薄膜の内部応力のために基板が歪んだり膜剥がれが発生する等のトラブルを効果的に回避できる光学多層膜フィルタの製造方法を提供すること。
【解決手段】光学多層膜フィルタの製造方法は、基板1上に1層以上の無機薄膜を形成する工程と、無機薄膜の最下層と前記基板との間に、前記無機薄膜から前記基板への応力伝達を阻止する有機化合物からなる粘弾性緩衝層2を形成する工程とを備え、粘弾性緩衝層2を形成する工程において、化学気相成長法(CVD法)を用いる。CVD法を用いているので、粘弾性緩衝層2の成膜速度が速く、実用的な厚さの膜を効率よく作成することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、反射防止膜、ローパスフィルタ等の電子機器装置に用いられる光学多層膜フィルタの製造方法に関する。
一般に、反射防止膜、ハーフミラー、ローパスフィルタ等、電子機器装置に多用される光学多層膜フィルタは、基板上に真空蒸着やスパッタリング等によって成膜された多層の薄膜から構成される。
真空蒸着やスパッタリング等では、蒸発した材料の衝突や加速されたイオンの衝突により膜の緻密さが向上するが、イオン等が膜内に過剰に打ち込まれるため、薄膜内部に応力が発生する。この応力を内部応力というが、薄膜が多層になると、各々の内部応力が加算され、全体として極めて大きな応力となり、基板を変形させることがある。
基板が変形すると、電子機器の光学性能に悪影響を及ぼすだけでなく、薄膜全体あるいはその一部分が剥がれる等のトラブルも発生しやすくなる。
これを防ぐために、従来、基板の両面に薄膜を形成することにより、その内部応力によって基板に作用する力を釣り合わせる方法(例えば、特許文献1)、薄膜の内部応力によって発生する基板の歪と逆向きで同じ大きさの歪を予め基板に与えておく方法(例えば、特許文献2)、あるいは、内部応力が圧縮応力である薄膜と内部応力が引張応力である薄膜とを組み合わせて多層膜全体の内部応力を低減する方法(例えば、特許文献3)、さらには、薄膜と基材の間に薄膜の内部応力を打ち消すような層を設ける方法(例えば、特許文献4)が開示されている。
特公昭62−18881号公報 特公平6−90328号公報 特開2003−29024号公報 特開平8−262224号公報
しかしながら、特許文献1のように、基板の両面に成膜する方法は、基板の両面とも光学特性を満足するように精度良く薄膜を形成することが困難である。また、特許文献2のように、基板に予め歪を与えておく方法では、基板を変形させる工程が付加されるだけでなく、応力のバランスをとることが困難であり、生産性の低下を招いてしまう。また、特許文献3のように、圧縮応力を内部応力とする薄膜と引張応力を内部応力とする薄膜を組み合わせて多層膜を製作する方法や、特許文献4のように、薄膜と基材との間に薄膜の内部応力を打ち消すような層を設ける方法は、多層膜全体の内部応力が低減されるために基板の表面を歪ませるおそれはないが、引張応力を内部応力とする薄膜と圧縮応力を内部応力とする薄膜とが接する部分において、その応力差のために膜が剥がれやすいという問題があった。
また、一般に、電子機器用の光学多層膜フィルタでは、多層膜表面にある欠陥(対象となる欠陥は5〜20μm程度)が大きな問題となっており、欠陥の少ない多層膜が求められている。多層膜を形成した場合、基板上の異物(ゴミや凹凸等)が膜の積層工程で増幅され、多層膜表面上で大きな異物に成長する(図6(B)参照)。すなわち基板上にある小さな異物p(幅a)が多層膜を形成すると大きな異物(幅b)になるため、本来なら製品規格上問題にならないほどの小さな異物(5μm以下)でも、実際には5μm以上に成長し、実用上問題となる。しかしながら5μm以下の小さな異物を減少させるためには、洗浄やクリーン度の維持/向上等のコストが非常に高いため、できるだけ安価な方法で(欠陥の少ない)高品質な光学多層膜を得る必要がある。
そこで、本発明は、薄膜の内部応力のために基板が歪んだり膜剥がれが発生する等のトラブルを効果的に回避できるとともに、基板の表面近傍に生じた欠陥(異物)が増幅しないような光学多層膜フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、基板と、1層以上の無機薄膜とを有する光学多層膜フィルタの製造方法であって、前記基板上に1層以上の無機薄膜を形成する工程と、前記無機薄膜の最下層と前記基板との間に、前記無機薄膜から前記基板への応力伝達を阻止する有機化合物からなる粘弾性緩衝層を形成する工程とを備え、前記粘弾性緩衝層を形成する工程において、化学気相成長法(以下、「CVD法」ともいう)を用いることを特徴とする。
ここで、基板には、ガラス板や水晶板のように光を透過させるための基板だけではなく、光を反射するものも含まれる。
また、1層以上の無機薄膜とは、例えば30層以上の無機薄膜も包含する意味である。また、有機化合物とは、分子中に少なくともC−C結合、あるいはSi−C結合を有する物質をいうが、無機化合物と三次元的に絡み合ったハイブリッド材料のような構造のものであってもよい。
なお、本発明においては、内部応力について、無機薄膜が基板に圧縮されるように働く場合を圧縮応力、基板に引っ張られる方向に働く場合を引張応力と定義する。すなわち、圧縮応力が過大な場合には薄膜側が凸となるように基板が変形し、引張応力が過大な場合には薄膜側が凹となるように基板が変形する。
本発明の光学多層膜フィルタの製造方法によれば、得られた多層膜フィルタは、有機化合物である粘弾性緩衝層が無機薄膜の最下層と基板の間に設けられており、この粘弾性緩衝層が無機薄膜から基板への応力伝達を阻止するため、無機薄膜が基板に対して相対的に膨張あるいは収縮してもその影響を基板に与えることが少ない。
特に無機薄膜が30層以上もの多層膜となった場合には、かなりの応力(例えば、圧縮応力)が発生して、基板を変形させようとするが、この粘弾性緩衝層となる有機化合物が効果的にこの応力を緩和する。
さらに、基板の両面に成膜する必要がないため、光学特性に優れた精度の良い多層膜フィルタが得られる。また、基板に予め歪を与えておく必要がないため、基板を変形させる工程が不要であり、応力のバランスをとる必要もないため生産性が低下することもない。
そして、本発明では、CVD法により粘弾性緩衝層を形成するので成膜速度が速く、実用的な厚さの膜を効率よく作成することができる。また成膜条件と成膜時間を制御することによって容易に所望の膜厚の緩衝層を得ることができる。また緩衝層を形成した後に人の手を介さずに光学多層膜を形成できるので、異物付着の少ない光学多層膜フィルタを製造することが可能となる。
さらに、CVD法により有機化合物からなる粘弾性緩衝層を形成することで、膜のリフロー性が高くなるため成膜面が平坦化される。従って、図6(A)に示すように小さな異物p(幅a)は、多層膜形成によっても、増幅することなく元の大きさを維持するかまたは消滅する。図6(B)は、従来技術による多層膜形成の様子を模式的に示したものであるが小さい異物pの幅aが増幅され幅bとなる様子を示している。本発明では、異物が透明であった場合、光学的に消滅する可能性もあり、異物が金属のようなものであった場合でも大きくなることはない。特に、粘弾性緩衝層を形成した後に基板をCVD装置外部に取り出す必要がないため、基板上に異物(ゴミ)が付着する可能性が低くなるのでより効果的である。
ここで、粘弾性緩衝層となる有機化合物としては、CVD法により成膜可能であれば特に限定されず、低分子化合物あるいは高分子化合物のいずれであってもよい。
その作用機構は必ずしも明確ではないが、例えば、有機化合物分子間で微細な「ずり」が起こり、無機薄膜からの応力を緩和することで基板への応力の伝達が阻止されているものと推定される。
なお、応力伝達阻止効果から勘案して、有機化合物は、粘弾性緩衝層中に30質量%以上含有されることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
また、粘弾性緩衝層の厚みは基板の材質や厚みにもよるが0.05〜50μmであることが好ましく、0.2〜10μmであることがより好ましい。粘弾性緩衝層の厚みが0.05μmより小さいと、無機薄膜の応力を十分に緩和することが困難となる。反対に粘弾性緩衝層の厚みが50μmを超えると、光線透過率が低下するなど、光学特性が低下するため好ましくない。
また、本発明は、基板と、複数層の無機薄膜とを有する光学多層膜フィルタの製造方法であって、前記基板上に複数層の無機薄膜を形成する工程と、前記複数層の無機薄膜からなる層間のいずれかあるいは全てに、前記無機薄膜から前記基板への応力伝達を阻止する有機化合物からなる粘弾性緩衝層を形成する工程とを備え、前記粘弾性緩衝層を形成する工程においてCVD法を用いることを特徴とする。
この発明によれば、無機薄膜が複数層あって、非常に大きな応力が発生する場合であっても、複数層の無機薄膜からなる層の間のいずれかあるいは全てに有機化合物である粘弾性緩衝層が設けられているので、この粘弾性緩衝層が無機薄膜から基板への応力伝達を阻止するため、無機薄膜中に大きな圧縮応力が発生しても基板が変形しにくくなる。
また、引張応力を内部応力とする薄膜と圧縮応力を内部応力とする薄膜との応力差を小さくできるため、膜剥がれの発生が効果的に抑えられる。
本発明では、CVD法により粘弾性緩衝層を形成するので成膜速度が速く、実用的な厚さの膜を効率よく作成することができる。また成膜条件と成膜時間を制御することによって容易に所望の膜厚の緩衝層を得ることができる。また緩衝層を形成した後に人の手を介さずに光学多層膜を形成できるので、異物付着の少ない光学多層膜フィルタを製造することが可能となる。
ここでさらに、無機薄膜の最下層と基板の間に無機薄膜から前記基板への応力伝達を阻止する有機化合物の粘弾性緩衝層が設けられていると、基板への応力伝達阻止に一層効果がある。
なお、粘弾性緩衝層が複数層ある場合、その総膜厚は、好ましくは0.05〜50μm、より好ましくは0.2〜10μmとするとよい。総膜厚が0.05μmより小さいと、無機薄膜の応力を十分に緩和することができないため好ましくない。反対に総膜厚が50μmより大きいと、光線透過率の低下等光学特性が低下するため好ましくない。
本発明では、前記CVD法は、ケイ素を含有する有機金属化合物を原料とすることが好ましい。
この発明によれば、ケイ素を含有する有機金属化合物を原料としてCVDを行うので、容易に必要な粘弾性特性を持った粘弾性緩衝層を基板上あるいは無機薄膜間に形成することができる。また、このような原料を用いてCVDを行うと、基板上にある異物や凹凸等の表面欠陥を平坦化することによって欠陥数を減少させる効果もより強く発揮される。
ここで、ケイ素を含有する有機金属化合物としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、SOB((CH3)3SiO)3B)、SOP(((CH3)3SiO)3PO)、OMCTS(Si4C8H24O4)、MCTS(Si4C4H16O4)、HMDSO(((CH3)3Si)2O)、及びDADBS(SiC12H24O6) 等が挙げられる。この中では入手しやすさ及び価格の点ではTEOSが好ましい。また、このような有機金属化合物は、単独で用いても2種以上混合されても良い。
本発明では、前記CVD法は、さらにリン化合物及び/又はホウ素化合物を原料とすることが好ましい。
この発明によれば、ケイ素を含有する有機金属化合物に加えてさらにリン化合物及び/又はホウ素化合物を原料としてCVD法を用いるので、より粘弾性特性の優れた粘弾性緩衝層を形成することができる。また基板上にある異物や凹凸等の表面欠陥を平坦化することによって欠陥数を減少させる効果がさらに強く発揮される。
本発明では、前記無機薄膜が、UV−IRカット膜又はIRカット膜であることが好ましい。
この発明によれば、基板の一方の面に無機薄膜を有し、しかも従来の光学多層膜フィルタに比較して反り幅の少ない、UV−IRカットフィルタ(Ultraviolet-Infrared cut filter)及びIRカットフィルタ(Infrared cut filter)を得ることができる。
本発明では、前記基板が、ガラス基板又は水晶基板であることが好ましい。
この発明によれば、基板がガラス基板で構成されることにより、反り幅の少ない例えばCCD(電荷結合素子)などの映像素子の防塵ガラスとして、しかも所望のフィルタ機能を一体的に構成した、例えばUV−IRカットフィルタ及びIRカットフィルタ機能を含む光学多層膜フィルタを得ることができる。また、板が水晶基板で構成されることにより、反り幅の少ない例えば光学ローパスフィルタとして、しかも所望のフィルタ機能を一体的に構成した、例えばUV−IRカットフィルタ及びIRカットフィルタ機能を含む光学多層膜フィルタを得ることができる。
なお、上述した光学多層膜フィルタを組み込んだ電子機器装置は、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどの撮像装置や、いわゆるカメラ付携帯電話、いわゆるカメラ付携帯型パソコン(パーソナルコンピュータ)などとして有効に活用できる。
以下、本発明の光学多層膜フィルタの製造方法について、実施例及び図面に基づいて詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの例によって何等限定されるものではない。なお、各実施例とも、同様の構造・機能を有する装置等は同じ符号を付けて説明する。
〔実施例1〕
本実施例は、可視波長域を通過し、所定波長以下の紫外波長域と所定波長以上の赤外波長域での光の吸収が少ない良好な反射特性を有する光学多層膜フィルタ(UV−IRカットフィルタ)に適用した一例である。
(1-1 光学多層膜フィルタの構成)
図1は、本発明の製造方法により成膜された光学多層膜フィルタの10の構成を模式的に示す断面図である。光学多層膜フィルタ10は、光を透過させるためのガラス基板1と、ガラス基板1の上面に接するように形成された粘弾性緩衝層2と、多層の無機薄膜3とを備えて構成される。
ガラス基板1は、白板ガラス(屈折率、n=1.52)であり、本実施例では、直径30mm、厚さ0.3mmのものと、直径30mm、厚さ0.5mmのもの、計2種類を用いた。
粘弾性緩衝層2は、後述するが、SiOを含む有機化合物からなる単層の膜である。
無機薄膜3の材料は、高屈折率材料層(H)がTiO(n=2.40)、低屈折率材料層(L)がSiO(n=1.46)から構成される。
この無機薄膜3は、粘弾性緩衝層2に接する側から、高屈折率材料のTiO膜3H1がまず積層され、積層された高屈折率材料のTiO膜3H1の上面に、低屈折率材料のSiO膜3L1が積層され、以下、低屈折率材料のSiO膜3L1の上面に高屈折率材料のTiO膜と低屈折率材料のSiO膜が順次、交互に積層され、無機薄膜3の最上膜層は、低屈折率材料のSiO膜3L30が積層されて、各々30層、計60層の無機薄膜3を形成している。
この無機薄膜3の膜構成の詳細を説明する。
以下に説明する膜厚構成の表記では、光学膜厚nd=1/4λの値を用いる。具体的には、高屈折率材料層(H)の膜厚を1Hとして表記し、低屈折率材料層(L)の膜厚を同様に1Lと表記する。また、(xH、yL)のSの表記は、スタック数と呼ばれる繰り返しの回数で、括弧内の構成を周期的に繰り返すことを表している。
無機薄膜3の膜厚構成は、設計波長λは550nm、粘弾性緩衝層2の上面第1層の高屈折率材料のTiO膜3H1が0.60H、第2層の低屈折率材料のSiO膜3L1が0.20L、以下、順次1.05H、0.37L、(0.68H、0.53L)、0.69H、0.42L、0.59H、1.92L、(1.38H、1.38L)、1.48H、1.52L、1.65H、1.71L、1.54H、1.59L、1.42H、1.58L、1.51H、1.72L、1.84H、1.80L、1.67H、1.77L、(1.87H、1.87L)、1.89H、1.90L、1.90H、最上層の低屈折率材料のSiO膜3L30が0.96Lの、計60層が形成されている。
(1-2 光学多層膜フィルタ10の製造方法)
図2は、光学多層膜フィルタ10を製造するための蒸着装置500を模式的に示した図である。この蒸着装置500により、ガラス基板1上に、CVD法による粘弾性緩衝層2を形成し、イオンアシスト蒸着による無機薄膜3を形成した。成膜前のガラス基板1は、ほぼ反りのない平坦な基板である。以下、蒸着装置500の構成と、光学多層膜フィルタ10の製造方法について詳述する。
(1-2-1 蒸着装置500の構成)
蒸着装置500は、常圧CVD法により粘弾性緩衝層2を形成するための蒸着室500Aと、イオンアシスト蒸着により無機薄膜3を形成する蒸着室500Bとを含んで構成されている。蒸着室500Aと蒸着室500Bは、ゲートバルブ510によって仕切られており、ゲートバルブ510の開閉により基板載置台520が蒸着室500A、500B間を移動できる構成になっている。
蒸着室500Aは、真空排気装置(ターボ分子ポンプ、メカニカルブースターポンプドライポンプ等)で排気できるようになっている。また、APC(自動圧力制御装置)によって蒸着室500A内の圧力は一定に保たれる。
基板載置台520にはガラス基板1と光学膜厚モニタ用ガラス530がセットされている。各々の蒸着室500A、500Bにはヒータ540が備えられており、ガラス基板1を加熱することができるようになっている。
蒸着室500Bも、真空排気装置(クライオポンプ、ターボ分子ポンプ等)で排気できるようになっている。また、蒸着室500Bには、イオンアシスト用のイオン銃550と、電子ビームを発生する電子銃560と、電子ビームにより照射される蒸発原570とを備えている。
図2に示すように、酸素ガス(O2)がオゾン発生装置580に導入されると、5〜10質量%の濃度のオゾンが生成して蒸着室500A内に導入されるようになっている。
主原料室590Aは各々の原料の蒸気圧に応じて加熱できる機構を有し、適当な温度で加熱され気化した蒸気がキャリアガス(Ar、He、N等の不活性ガス)とともに蒸着室500A内に導入される。低沸点化合物のように加熱の必要がない原料は加熱しないでそのまま蒸着室500A内に導入される。副原料も同様に副原料室590Bから導入される。ここで、主原料としてはケイ素を含む有機金属化合物が用いられ、副原料としては、リンまたはホウ素を含む化合物が用いられる。
(1-2-2 粘弾性緩衝層2の形成方法)
基板載置台520に置かれたガラス基板1を蒸着室500A内に設置し、真空排気した後、約300℃に加熱した。オゾン濃度5質量%、O2+O3(オゾン)流量5000sccmに設定した。すなわち、O2を5000sccmの流量でオゾン発生装置に導入し、濃度5質量%のオゾン含有ガスを発生させ、そのすべてを蒸着室500Aに導入した。
そして、原料としてTEOSを流量100sccm、Ar(キャリアガス)の流量を1000sccmとして、ガラス基板1上に導入し、常圧(約0.1MPa)でCVDを行い、SiOを主成分とする有機化合物からなる粘弾性緩衝層2を形成した。粘弾性緩衝層2の厚さは成膜(膜形成)時間によって制御し、2.0μmと4.0μmの2種のサンプルを作成した。なお、粘弾性緩衝層2の厚みは、0.05〜50μmの範囲で容易に変更可能である。膜形成速度は約300nm/minに制御した。
(1-2-3 無機薄膜3の成膜方法)
粘弾性緩衝層2を形成した後、ゲートバルブ510を開閉して、ガラス基板1を基板載置台520ごと蒸着室500Bに移動し、電子ビーム蒸着により無機薄膜3を形成した。
具体的には、粘弾性緩衝層2が成膜されたガラス基板1を真空蒸着チャンバー内に取り付けた後、真空蒸着チャンバー内の下部に蒸着材料を充填したるつぼを配置し、電子ビームにより蒸発させた。同時にイオン銃550によりイオン化した酸素を加速照射することにより、粘弾性緩衝層2上にTiOの高屈折率材料層3H1〜3H30とSiOの低屈折率材料層3L1〜3L30を、前記した膜厚構成で粘弾性緩衝層2の上面に交互に成膜した。最終的に、図1に示すような光学多層膜フィルタ10が得られる。
ちなみに、イオンアシスト法による蒸着では、蒸着する際にイオンを照射しながら蒸着を行うので、緻密な無機薄膜が得られる反面、成膜される膜内に発生する応力も大きい。
なお、比較用として、粘弾性緩衝層2の形成を行わないことを除けば上述の4種の成膜サンプルと全く同様のサンプルも4種作成した。
(1-3 評価方法及び評価結果)
無機薄膜3を成膜(形成)すると、低屈折率材料層3L1〜3L30のSiOの強い圧縮応力と高屈折率材料層3H1〜3H30のTiOの弱い圧縮応力により、全体としてガラス基板1には強い圧縮応力が働き、図3に示すように成膜された膜面が凸になるように反った形で変形する。この変形の度合いである「反り幅a」を、高精度フラットネステスタFT−900(株式会社ニデック製)により測定した。表1に評価結果を示す。なお、以下に示す実施例2〜6においても評価方法は同じである。
Figure 2007156321
表1の反り幅aのデータからわかるように、粘弾性緩衝層2を設けたサンプルでは、いずれもガラス基板1(光学多層膜フィルタ10)の反りが非常に小さい。これは、無機薄膜3の強い圧縮応力を、粘弾性緩衝層2が緩和することで、ガラス基板1に形成された薄膜全体としての応力が非常に小さくなったためと推定される。一方、粘弾性緩衝層2を設けていない比較サンプルでは、いずれも反りが大きかった。
このように、実施例1の製造方法では、反りがほぼなく、膜剥離・クラック等が発生しにくいUV−IRカット機能の光学多層膜フィルタ10を得ることができた。
また、このように、ガラス基板1(光学多層膜フィルタ10)の反りがほぼないため、2枚以上のガラス基板1を張り合わせて使用する場合に、張り合わせ精度が向上し、特に、樹脂等の変形しやすいものを挟んで使用する場合には、変形量を最小に抑えることも可能となる。
このような光学多層膜フィルタ10は、例えばCCD(電荷結合素子)等の撮像素子の防塵ガラスとして、CCD(電荷結合素子)の入射面に貼り合せて一体的に構成した、UV−IRカットフィルタ機能を含む光学多層膜フィルタに適用することができる。
以上の実施例においては、ガラス基板として白板ガラスを用いて説明したが、これに限定せず、BK7、サファイアガラス、ホウケイ酸ガラス、青板ガラス、SF3、及びSF7等の透明基板であってもよいし、一般に市販されている光学ガラスも使用できる。
また、高屈折率材料層の材料としてTiOを用いた場合で説明したが、Ta5
Nbを適用することもできる。
また、低屈折率材料層の材料としてSiOを用いた場合で説明したが、MgFを適用することもできる。
また、実施例の無機薄膜3の成膜は、成膜装置としてイオンアシスト法の場合で説明したが、イオンアシスト法と同様に成膜が緻密に行われるイオンプレーティング法であっても良い。
〔実施例2〕
実施例2では、実施例1における基板の材料をガラスから水晶に替え、水晶基板1としたことのみが異なる。
光を透過させるための水晶基板1は、48mm×43mmの水晶(屈折率、n=1.52)であり、厚さは0.43mmである。基板以外についての条件は実施例1と同様にして、UV−IRカットフィルタに適用した例である。評価結果を表2に示す。
Figure 2007156321
表2の反り幅aのデータからわかるように、粘弾性緩衝層2がない場合、水晶基板1は、無機薄膜3の強い圧縮応力により、無機薄膜3の膜面が凸になるように反りが生ずるが、粘弾性緩衝層2が形成されると、無機薄膜3の強い圧縮応力を、粘弾性緩衝層2が緩和することで、反りのほぼないUV−IRカット機能の光学多層膜フィルタ10が得られた。
このように、実施例2では、基板が水晶基板1で構成されることにより、反り幅の少ない例えば光学ローパスフィルタとして、しかも、UV−IRカットフィルタ機能を一体的に構成した光学多層膜フィルタ10を得ることができた。
〔実施例3〕
実施例3は、所定の波長域を反射する特性を有する光学多層膜フィルタに適用したものであるが、粘弾性緩衝層2をガラス基板の上面及び無機薄膜3の層間に複数層形成し、その形成方法として常圧CVD法による成膜を適用した例である。
(3-1 光学多層膜フィルタの構成)
図4は、本実施例を示す光学多層膜フィルタ20の構成を模式的に示す断面図である。
光学多層膜フィルタ20は、光を透過させるためのガラス基板1と、複数層の粘弾性緩衝層2と、多層の無機薄膜3とを備えて構成される。
ガラス基板1は、白板ガラス(屈折率、n=1.52)であり、直径30mm、厚さ0.3mmと0.5mmの2種類を用いた。無機薄膜3は、第1の材料である高屈折率材料層3Hと、第2の材料である低屈折率材料層3Lとが交互に積層されて構成される。そして、ガラス基板1−高屈折率材料層3Hとの層間、及び、低屈折率材料層3Lと高屈折率材料層3Hとの層間に粘弾性緩衝層2が形成されている。
多層膜の材料は、高屈折率材料層3HがTiO(n=2.40)、低屈折率材料層3LがSiO(n=1.46)である。
この光学多層膜フィルタ20の具体的構成は以下の通りである。
光学多層膜フィルタ20は、ガラス基板1側から、粘弾性緩衝層21が形成され、その上面に高屈折率材料のTiO膜3H1が積層され、積層された高屈折率材料のTiO膜3H1の上面に、低屈折率材料の3L1が積層され、この3L1の上面に粘弾性緩衝層22が形成され、粘弾性緩衝層22の上面に高屈折率材料のTiO膜3H2が積層され、以下、低屈折率材料と高屈折率材料の膜が順次、交互に積層されている。そして、高屈折率材料層3H20の手前の層には粘弾性緩衝層23が積層され、最上層には、低屈折率材料のSiO膜3L20が積層されて、最終的に低屈折率層20層、高屈折率層20層、粘弾性緩衝層3層の計43層の多層膜を形成している。
(3-2 光学多層膜フィルタ20の製造方法)
ガラス基板1への成膜は、実施例1と同様であるが、ゲートバルブ510の操作を繰り返し行い、ガラス基板1を蒸着室500Aと蒸着室500Bとを往復させることで各々の層の成膜を行った。最終的に、図4に示すような光学多層膜フィルタ20が得られ、粘弾性緩衝層2の総膜厚は0.8μmであった。
なお、膜厚構成の表記は、実施例1と同様に、高屈折率材料層(H)の膜厚を光学膜厚nd=1/4λの値を1Hとして表記し、低屈折率材料層(L)を1L、粘弾性緩衝層2を1B、と表記する。また、(xH、yL)のSの表記は、スタック数と呼ばれる繰り返しの回数で、括弧内の構成を周期的に繰り返すことを表している。
多層膜の膜厚構成は、設計波長λは755nm、ガラス基板側から4.00B、1.14H、1.09L、1.03H、0.31L、0.70B、(0.99H、0.99L)6、1.02H、1.08L、1.31H、0.18L、1.37H、1.24L、1.
27H、0.28L、1.00B、(1.28H、1.28L)6、1.26H、1.2
8L、1.25H、0.63Lの43層が形成されている。
成膜後、実施例1と同様にガラス基板1(光学多層膜フィルタ20)の反り幅aを測定した。測定結果を表3に示す。
Figure 2007156321
実施例3では、無機薄膜3の強い圧縮応力を、有機化合物からなる粘弾性緩衝層2(21、22、23)が緩和することで、ガラス基板1に形成された薄膜全体としては応力が非常に小さくなり、反りのほぼない、光学多層膜フィルタ20を得ることができた。一方、粘弾性緩衝層2を設けていない比較サンプルでは、いずれも反りが大きかった。
このように、実施例3では、無機薄膜3の強い圧縮応力を、複数層からなる粘弾性緩衝層2が緩和することで、ガラス基板1に形成された薄膜全体としては応力が非常に小さくなり、反りのほぼない、膜剥離・クラック等が発生しにくいUV−IRカット機能の光学多層膜フィルタ20を製造することができた。
〔実施例4〕
実施例4は、粘弾性緩衝層2をプラズマCVD法により形成したことのみが実施例1と異なっている。蒸着装置600を図5に示す。
(4-1 蒸着装置600の構成)
蒸着装置600は、蒸着室600Aと蒸着室500Bがゲートバルブ510によって仕切られていて、ゲートバルブ510の開閉により基板載置台520が蒸着室間を移動できる構成になっている。蒸着室500Bは、イオンアシスト蒸着により無機薄膜3を形成する部屋であって、実施例1と同様である。
蒸着室600Aの構成も、基本的に実施例1の蒸着室500Aと同様であるが、常圧CVD法ではなくプラズマCVD法による成膜が可能となっている。主原料や副原料は、実施例1と同様である。
蒸着室600Aでは、高周波発生装置610から電極620に高周波電圧が印可されると、蒸着装置600A内に主原料ガスや副原料ガスに基づくプラズマが発生し、ガラス基板1の表面に図1に示すような粘弾性緩衝層2’を形成できるようになっている。
(4-2 粘弾性緩衝層2’の形成方法)
基板載置台520に置かれた基板を蒸着室600A内に設置し、真空排気した後、約200℃に加熱した。電極620に高周波電圧を供給し蒸着室600A内にプラズマを発生させガラス基板1上に粘弾性緩衝層2を形成した。O流量1000sccm、主原料としてTEOSを流量100sccm、副原料としてTMPを流量20sccm、Ar(キャリアガス)500sccmの流量で導入し、圧力160Pa、高周波電圧を500Wの電力で加え、リンを含有するSiOを主成分とする有機化合物からなる粘弾性緩衝層2’を形成した。粘弾性緩衝層2’の厚さは成膜(膜形成)時間によって制御し、2.0μmと4.0μmの2種のサンプルを作成した。なお、粘弾性緩衝層2の厚みは、0.05〜50μmの範囲で容易に変更可能である。膜形成速度は約150nm/minに制御した。
(4-3 無機薄膜3の成膜方法)
粘弾性緩衝層2’を形成した後は、実施例1と同様にして無機薄膜3を形成し、最終的に、図1に示すような光学多層膜フィルタ10’を製造した。
(4-4 評価方法及び評価結果)
実施例1と同様に評価を行った。表4に結果を示す。比較用のサンプルは実施例1で用いたものと同じである。
Figure 2007156321
表4の反り幅aのデータからわかるように、粘弾性緩衝層2’を設けたサンプルでは、いずれもガラス基板1(光学多層膜フィルタ10’)の反りが非常に小さい。これは、無機薄膜3の強い圧縮応力を、粘弾性緩衝層2’が緩和することで、ガラス基板1に形成された薄膜全体としての応力が非常に小さくなったためと推定される。プラズマCVD法を用いても実施例1の常圧CVD法と同様の効果が認められた。
〔実施例5〕
プラズマCVD法を用いた以外は、実施例2と同様に実験を行い、得られたサンプルの評価も同様に行った。表5に結果を示す。比較用のサンプルは実施例2で用いたものと同じである。
Figure 2007156321
表5の反り幅aのデータからわかるように、粘弾性緩衝層2’がない場合、水晶基板1は、無機薄膜3の強い圧縮応力により、無機薄膜3の膜面が凸になるように反りが生ずるが、粘弾性緩衝層2’が形成されると、無機薄膜3の強い圧縮応力を、粘弾性緩衝層2’が緩和することで、反りのほぼないUV−IRカット機能の光学多層膜フィルタ10が得られた。プラズマCVD法を用いても実施例2の常圧CVD法と同様の効果が認められた。
〔実施例6〕
プラズマCVD法を用いた以外は、実施例3と同様に実験を行い得られたサンプルの評価を行った。表6に結果を示す。比較用のサンプルは実施例3で用いたものと同じである。
Figure 2007156321
実施例6では、無機薄膜3の強い圧縮応力を、有機化合物からなる粘弾性緩衝層2’(21’、22’、23’)が緩和することで、ガラス基板1に形成された薄膜全体としては応力が非常に小さくなり、反りのほぼない、光学多層膜フィルタ20’を得ることができた。一方、粘弾性緩衝層2’を設けていない比較サンプルでは、いずれも反りが大きかった。プラズマCVD法を用いても実施例3の常圧CVD法と同様の効果が認められることがわかった。
〔実施例7〕
実施例1で製造されたサンプルNo.1-2、1-4と、実施例4で製造されたサンプルNo.4-2、4-4について、光学多層膜フィルタ10、10’上に観察される欠陥(異物増幅)を観察した。ここで、比較用として、CVD法ではなく、以下のような湿式法で粘弾性緩衝層を形成して光学多層膜フィルタ10”を製造し、併せて欠陥の観察を行った。
この欠陥は、図6(B)に示すように、基板上の異物Pが多層膜形成により増幅されて大きな欠陥として観察されるものである。ここでは、異物Pの幅aが増幅され幅bの欠陥として観察される例を示した。
具体的には、光学顕微鏡で多層膜フィルタ10、10’、10”表面を観察し、欠陥の最長部分の長さが5μm以上であるものの個数を測定した。表7に測定結果を示す。
(7-1 光学多層膜フィルタ10”の製造方法)
実施例1で用いたのと同じガラス基板1(厚み0.3mm、0.5mmの2種)上に以下のような湿式法により粘弾性緩衝層を形成した。
(7-1-1 粘弾性緩衝層用コーティング液(B−1)の調製方法)
ポリエステル樹脂「ペスレジンA−160P」(高松油脂株式会社製、水分散エマルジョン、固形分濃度27質量%)100質量部、コロイダルシリカ(触媒化成工業株式会社製、メタノール分散無機酸化物ゾル、固形分濃度20質量%)100質量部、希釈溶剤としてメタノール80質量部、レベリング剤としてシリコーン系界面活性剤「SILWET L−77」(日本ユニカー株式会社製)1質量部を混合し、均一な状態になるまで撹拌した。
(7-1-2 粘弾性緩衝層2”の形成方法)
ガラス基板1を洗浄し、粘弾性緩衝層用コーティング液(B−1)に浸漬した後、30cm/minの速度で引き上げて塗布した。その後、150℃で1時間焼成を行い、粘弾性緩衝層付きガラス基板を得た。膜形成後の粘弾性緩衝層2”の膜厚は2.0μmであった。
(7-2 無機薄膜3の形成方法)
実施例1と全く同様の方法にて、粘弾性緩衝層の上に無機薄膜を形成し、図1の光学多層膜フィルタ10と同様の膜組成を持った光学多層膜フィルタ10”を製造した。
Figure 2007156321
表7の結果からわかるように、常圧CVD法及びプラズマCVD法により粘弾性緩衝層2、2’を形成した光学多層膜フィルタ10、10’では欠陥がほとんど観察されなかった。これは、おそらく粘弾性緩衝層2、2’のリフロー性により、ガラス基板1上では、図6(A)のような積層状態となり、異物増幅が行われなかったためと推定される。
一方、参考例1、2のように、湿式法により粘弾性緩衝層2”を形成した光学多層膜フィルタ10”では、多層膜形成時に図6(B)のような異物増幅が起こり、比較的多くの欠陥が観察された。これらの結果より、CVD法の優位性が認められた。
〔実施例8〕
以下に、実施例1の光学多層膜フィルタ10を含んで構成される電子機器装置について説明する。本実施例は、電子機器装置として、例えば、静止画の撮影を行うデジタルスチルカメラの撮像装置に適用した一実施例である。
図7は、本発明の電子機器装置の一構成例を示す説明図であり、撮像モジュールと、この撮像モジュールを含む撮像装置の構成例を示す。
図7に示す撮像モジュール100は、光学多層膜フィルタ10と、光学ローパスフィルタ110と、光学像を電気的に変換する撮像素子のCCD(電荷結合素子)120と、この撮像素子120を駆動する駆動部130を含んで構成されている。
光学多層膜フィルタ10は、本発明の実施例1において説明したように、ガラス基板1と、粘弾性緩衝層2と、高屈折率材料層と低屈折率材料層とが交互に積層された無機薄膜3とで構成され、IRカットフィルタ機能を有する。この光学多層膜フィルタ10は、前記したCCD120の前面に、CCD120と貼り合わされて一体的に構成され、CCD120の防塵ガラス機能を併せて有している。
この撮像モジュール100と、光入射側に配置されるレンズ200と、撮像モジュール100から出力される撮像信号の記録・再生等を行う本体部300とを含んで、撮像装置400を構成することができる。なお、図示しないが、本体部300は、撮像信号の補正等を行う信号処理部と、撮像信号を磁気テープ等の記録媒体に記録する記録部と、この撮像信号を再生する再生部と、再生された映像を表示する表示部などの構成要素が含まれる。
このように構成されたデジタルスチルカメラは、CCD120と防塵ガラス機能とIRカットフィルタ機能とを一体的に備えた光学多層膜フィルタ10の搭載により、貼り合わせ精度のよい、良好な光学特性のデジタルスチルカメラを提供することができる。
なお、実施例の撮像モジュール100は、レンズ200を分離して配置した構造で説明したが、レンズ200も含めて撮像モジュールが構成されていてもよい。
本発明は、基板の反りが少ない光学多層膜フィルタの製造方法であり、得られたフィルタも表面に欠陥がほとんどないため電子機器装置の分野で好適に利用することができる。
本発明の製造方法で得られた光学多層膜フィルタの構成を示す断面図。 本発明の製造方法を実施するための蒸着装置(常圧CVD)。 本発明の製造方法で得られた光学多層膜フィルタ(ガラス基板)の反りの状態を示す断面図。 本発明の製造方法で得られた光学多層膜フィルタの他の構成を示す断面図。 本発明の製造方法を実施するための蒸着装置(プラズマCVD)。 本発明の製造方法及び比較製造方法における異物増幅を模式的に示す断面図。 本発明の製造方法で得られた光学多層膜フィルタを備えた電子機器装置(撮像装置)の概略を示すブロック図。
符号の説明
1…基板(ガラス基板、水晶基板)、2、2’、2”…粘弾性緩衝層、3…無機薄膜、10、10’、10”、20…光学多層膜フィルタ、100…撮像モジュール、400…電子機器装置(撮像装置)

Claims (8)

  1. 基板と、1層以上の無機薄膜とを有する光学多層膜フィルタの製造方法であって、
    前記基板上に1層以上の無機薄膜を形成する工程と、
    前記無機薄膜の最下層と前記基板との間に、前記無機薄膜から前記基板への応力伝達を阻止する有機化合物からなる粘弾性緩衝層を形成する工程とを備え、
    前記粘弾性緩衝層を形成する工程において、化学気相成長法を用いる
    ことを特徴とする光学多層膜フィルタの製造方法。
  2. 基板と、複数層の無機薄膜とを有する光学多層膜フィルタの製造方法であって、
    前記基板上に複数層の無機薄膜を形成する工程と、
    前記複数層の無機薄膜からなる層間のいずれかあるいは全てに、前記無機薄膜から前記基板への応力伝達を阻止する有機化合物からなる粘弾性緩衝層を形成する工程とを備え、
    前記粘弾性緩衝層を形成する工程において化学気相成長法を用いる
    ことを特徴とする光学多層膜フィルタの製造方法。
  3. 請求項2に記載の光学多層膜フィルタの製造方法において、
    さらに、前記基板上に前記基板への応力伝達を阻止する有機化合物からなる粘弾性緩衝層を形成する工程を備えている
    ことを特徴とする光学多層膜フィルタの製造方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光学多層膜フィルタの製造方法において、
    前記化学気相成長法は、ケイ素を含有する有機金属化合物を原料とする
    ことを特徴とする光学多層膜フィルタの製造方法。
  5. 請求項4に記載の光学多層膜フィルタの製造方法において、
    前記化学気相成長法は、さらにリン化合物及び/又はホウ素化合物を原料とする
    ことを特徴とする光学多層膜フィルタの製造方法。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の光学多層膜フィルタの製造方法において、
    前記無機薄膜が、UV−IRカット膜又はIRカット膜であることを特徴とする光学多層膜フィルタの製造方法。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光学多層膜フィルタの製造方法において、
    前記基板が、ガラス基板であることを特徴とする光学多層膜フィルタの製造方法。
  8. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光学多層膜フィルタの製造方法において、
    前記基板が、水晶基板であることを特徴とする光学多層膜フィルタの製造方法。
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