JP2012025940A - フェノール樹脂成形材料及びフェノール樹脂成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 フェノール樹脂成形材料の有する耐熱性や成形性を損なうことなく、成形収縮率や異方性を低減することにより、反りや歪みの発生を抑えるとともに、摺動部分での相手材に対する摩耗性や樹脂成形品自体の摩耗性を低減できるフェノール樹脂成形材料及びこの成形材料により成形されたフェノール樹脂成形品を提供することを課題としている。
【解決手段】 フェノール樹脂、充填材、潤滑性物質を必須成分とするフェノール樹脂成形材料であって、フェノール樹脂を成形材料全量に対して10〜25質量%、充填材として溶融シリカを成形材料全量に対して10〜84質量%、潤滑性物質として黒鉛を成形材料全量に対して1〜60質量%配合し、成形材料全体を100質量%とした場合に、フェノール樹脂、溶融シリカ、黒鉛の合計が90質量%以上であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、高寸法精度が要求される成形品に用いるフェノール樹脂成形材料及び、この成形材料により成形されたフェノール樹脂成形品に関するものである。
電気・電子部品や自動車部品に用いられている金属やセラミックの代替材料として、エンジニアリングプラスチック、エポキシ樹脂材料が用いられているが、これらは金属やセラミックと比較して耐熱性、寸法安定性の点で未だその領域に近づけないというのが現状である。
近年、特にエレクトロニクス分野ではますます小型化、高精密化が追求されており、成形品の耐熱性、寸法安定性の要求が一層厳しくなっている。
フェノール樹脂成形材料は耐熱性が優れるため、金属やセラミックの代替材料として期待されるが、成形過程において硬化反応や冷却等の化学変化及び物理変化を伴い、体積変化を生じて成形後に収縮するため、金属やセラミックに比べると成形収縮率が大きい。
耐熱性、寸法安定性を改善するため、補強用充填材として通常、ガラス繊維等の補強用繊維が多用されている(例えば特許文献1参照)。
しかし、ガラス繊維のような繊維状の異方性無機充填材の場合、材料流動時に配向するために異方性が大きくなり、歪方向が不均一であり、成形収縮や吸湿、熱処理後の寸法変化に差が生じて、反りや歪を発生する。
また、充填量を増加させると混練性及び成形性が著しく損なわれるため、充填量に制限があり、金属やセラミックと比べると成形収縮率や線膨張係数が大きく、安定した寸法精度の製品を得ることが難しい。
また、金属をインサート成形する場合、樹脂材料と金属との線膨張係数が異なると成形品にクラックが発生したり、界面剥離が生じたりする。
このような問題を解決するために、フェノール樹脂に溶融シリカを高充填することにより、フェノール樹脂成形材料が有する耐熱性や成形性を損なうことなく、異方性を低減することができ、線膨張係数を低く抑えることができるものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
特開2004−27069 特開2009−102596
しかしながら、上記のような溶融シリカを高充填した表面硬度が高い部品を、金属部品や樹脂部品と摺動するところに用いると、相手材を著しく摩耗させてしまうという問題があった。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、耐熱性や成形性を損なうことなく、成形収縮率や異方性を低減させたまま、摺動部分での相手材に対する摩耗性や樹脂成形品自体の摩耗性を低減できるフェノール樹脂成形材料及びこの成形材料により成形されたフェノール樹脂成形品を提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
すなわち、本発明のフェノール樹脂成形材料は、フェノール樹脂、充填材、潤滑性物質を必須成分とするフェノール樹脂成形材料であって、フェノール樹脂を成形材料全量に対して10〜25質量%、充填材として溶融シリカを成形材料全量に対して10〜84質量%、潤滑性物質として黒鉛を成形材料全量に対して1〜60質量%配合し、成形材料全体を100質量%とした場合に、フェノール樹脂、溶融シリカ、黒鉛の合計が90質量%以上であることを特徴とする。
このフェノール樹脂成形材料において、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略称する)を成形材料全量に対して1〜7質量%配合するのが好ましい。
また、本発明のフェノール樹脂成形品は、上記フェノール樹脂成形材料を用いて加熱加圧成形されたフェノール樹脂成形品であることを特徴とする。
本発明のフェノール樹脂成形材料及びフェノール樹脂成形品によれば、フェノール樹脂成形材料が有する耐熱性や成形性を損なうことなく、成形収縮率や異方性を低減し、反りや歪みの発生を抑えることができる。
また、線膨張係数を低減することでクラックの発生や金属と樹脂材料の界面の剥離を抑えることができ、さらに、摺動部分での相手材に対する摩耗性や樹脂成形品自体の摩耗性を低減することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明で用いられる必須成分であるフェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂あるいはレゾール型フェノール樹脂を単独使用、または併用することができる。
また、レゾール型フェノール樹脂としてはメチロール型とジメチレンエーテル型があるが、本発明ではいずれかを単独使用、または併用することができる。
本発明において、フェノール樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を用いることにより、特に摺動部分での相手材に対する摩耗性や樹脂成形品自体の摩耗性を低減することが可能となる。
フェノール樹脂は、成形材料全量に対して10〜25質量%、好ましくは10〜15質量%の範囲で配合する。フェノール樹脂の配合量が10〜25質量%の範囲であると、良好な混練性及び成形性を有するフェノール樹脂成形材料とすることができる。
また、成形収縮率や線膨張係数を小さくすることができ、良好な寸法精度を有するフェノール樹脂成形品とすることができる。
本発明で用いられる必須成分である充填材としての溶融シリカは、成形材料全量に対して10〜84質量%、好ましくは70〜80質量%の割合で配合する。溶融シリカの配合量が10〜84の範囲であると、混練性及び成形性を良好なものとすることができ、成形収縮率や線膨張係数を小さくすることができる。
溶融シリカの平均粒径は0.5〜250μm、好ましくは3〜100μmの範囲である。平均粒径が0.5〜250μmの範囲であると、注型時の流動性を良好にすることができ、表面平滑性を高くすることができるため、特にμmオーダーの寸法精度が要求される精密部品に用いる場合に好ましい。
上記の溶融シリカの形状は、成形材料の流動性の点から、また、金型等の設備の摩耗性の点から球状であることが好ましい。また、上記溶融シリカは単独使用しても、平均粒径が異なる2種類以上のものを併用してもよい。
溶融シリカを併用する場合、平均粒径10〜30μmの範囲のものを80〜95質量%、平均粒径0.5〜5μmの範囲のものを5〜20質量%の割合で配合するのが好ましい。
平均粒径及び配合量がこの範囲であれば、良好な成形性を確保しつつ高充填することが可能となるので、成形収縮率や線膨張係数を小さくすることができるとともに、熱や吸湿による寸法経時変化を小さくすることができる。
本発明で用いられる必須成分である潤滑性物質としての黒鉛は、通常樹脂に配合することができる黒鉛であれば特に制限なく用いることができ、天然黒鉛、人造黒鉛のいずれでもよい。
黒鉛は、成形材料全量に対して1〜60質量%、好ましくは1〜30質量%の割合で配合する。黒鉛の配合量が1〜60質量%の範囲であると潤滑性の効果を十分に発現することができ、優れた機械特性を得ることができる。
また、黒鉛の粒径は、平均粒径が1〜100μm、好ましくは5〜50μmの範囲である。平均粒径が1〜100μmの範囲であると、良好な分散性と、優れた表面平滑性、潤滑性向上効果を得ることができる。
上記の成分は、成形材料全体を100質量%とした場合に、フェノール樹脂、溶融シリカ、黒鉛の合計が90質量%以上、好ましくは90〜98質量%の範囲で配合される。
さらに本発明では、潤滑性成分として、上記黒鉛とPTFEを混合して用いることができる。PTFEは、通常、成形材料全量に対して1〜7質量%、好ましくは2〜5質量%の割合で配合する。PTFEの配合量が1〜7質量%の範囲であると、優れた潤滑性と、機械特性を得ることができる。
PTFEの粒径は、平均粒径が1〜100μm、好ましくは5〜50μmの範囲である。平均粒径が1〜100μmの範囲であると、優れた表面平滑性と潤滑性向上効果を得ることができる。
本発明によれば、これらのPTFEを上記の配合割合で黒鉛とともに配合させることにより、摺動性、耐摩耗性の効果をさらに確実に顕著なものとすることができる。
本発明のフェノール樹脂成形材料にはエラストマーを配合することができる。本発明で配合するエラストマーとしては、一般に樹脂改質材として用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えばSBR、アクリルゴム、シリコーン樹脂、ポリブタジエン、NBR等を用いることができる。
エラストマーの配合量は、通常、成形材料全量に対して0.5〜5質量%配合するのが好ましく、1〜3質量%配合するのがより好ましい。エラストマーの配合量が0.5〜5質量%の範囲であると、低弾性化効果を発現し、優れた機械特性を得ることができる。
また、フェノール樹脂の硬化剤として、ヘキサメチレンテトラミン等の窒素系化合物を好適に用いることができる。
また、フェノール樹脂の硬化助剤として、通常フェノール樹脂に配合することができる硬化助剤を用いることができ、特にレゾール型フェノール樹脂を用いる場合には消石灰を好適に用いることができる。
本発明のフェノール樹脂成形材料には、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに他の添加剤を配合することができる。このような添加剤の具体例としては、例えば、離型剤、顔料等を挙げることができる。
本発明のフェノール樹脂成形材料は、上記のフェノール樹脂、溶融シリカ、黒鉛、PTFE、及びその他の添加剤を、2軸混練機等を用いて混練して調整することができる。混練後は、冷却粉砕し造粒するようにしてもよい。
このようにして調整されたフェノール樹脂成形材料は、射出成形、プレス成形、トランスファー成形等の加熱加圧成形によりフェノール樹脂成形品を得ることができる。
射出成形の場合、例えば、温度150〜190℃、圧力88〜137MPa(900〜1400kgf/cm)、時間20秒間以上とすることができる。他の成形方法の場合もこの成形条件に準じて成形することができる。
これらの成形方法によれば、従来金属やセラミックを切削して行う精密部品の加工に比べて加工工数を大幅に削減することが可能となり設計自由度が向上する。
また、上記の成形方法により成形されたフェノール樹脂成形品は、非常に高い寸法精度、寸法安定性が要求される部品に用いることができる。例えば、携帯電話のカメラレンズ保持部、ガスメータ部品、光ファイバ接続用コネクタ部品、OA機器の部品、自動車の燃料ポンプ等のポンプ部品等に適用可能である。また、すでに樹脂化されている部品についても代替使用することで、さらに高い寸法精度を実現することが可能となる。
本発明のフェノール樹脂成形材料を加熱加圧成形により成形したフェノール樹脂成形品は、フェノール樹脂成形材料の特長である耐熱性を損なうことなく、成形収縮率や異方性を低減することにより、反りや歪みの発生を抑えることができる。
また、線膨張係数を低減することで、金属をインサート成形した場合でもクラックの発生や金属と樹脂材料の界面の剥離を抑えることができる。したがって、摺動部分での相手材に対する摩耗性や樹脂成形品自体の摩耗性が低減されたフェノール樹脂成形品とすることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
表1に示す各成分を所定量配合し、1分間混合した。次にこの混合物を2軸混練機で3分間、100〜110℃で混練した。この後、混練物を冷却粉砕し、造粒して実施例1〜11及び比較例1〜3のフェノール樹脂成形材料を得た。
配合成分として以下のものを用いた。
<樹脂>
ノボラック型フェノール樹脂:パナソニック電工(株)製 重量平均分子量2000〜4000
レゾール型フェノール樹脂:パナソニック電工(株)製 重量平均分子量2000〜4000
<潤滑性物質>
黒鉛:日本黒鉛工業(株)製 CB−150
PTFE:(株)喜多村製 KT−300M
<充填材>
溶融シリカ(平均粒径24μm):(株)マイクロン製 HS−201
ガラス繊維:日東紡績(株)製 CS3E−479S(繊維径平均φ12μm、繊維長3
mm)
<エラストマー>
NBR
<硬化剤>
ヘキサメチレンテトラミン:三井東圧(株)製 品番S−4
<硬化助剤>
消石灰:秩父石灰工業(株)製 SA074
<離型剤>
カルナバワックス
<顔料>
カーボンブラック
実施例1〜11及び比較例1〜3のフェノール樹脂成形材料を用いて以下の各試験を行った。
(1)曲げ強さ、曲げ弾性率
トランスファー成形(成形温度165℃、硬化時間90秒)により、JIS K6911に準じて成形収縮率測定用のテストピースを作成した。このテストピースを用いて、JIS K6911に準拠して曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定した。
(2)成形収縮率
上記(1)で作成したテストピースを用いて、JIS K6911に準拠して成形収縮率を測定した。
(3)線膨張係数
上記(1)で作成したテストピースを用いて、ディラトメータ法にて線膨張係数を測定した。
(4)耐湿寸法変化
上記(1)で作成したテストピース(φ90mm)を40℃×90%の恒温恒湿槽に250時間入れて、初期寸法に対する寸法変化率を測定した。
(5)摺動摩耗試験
以下の条件にて円柱状樹脂試験片を作成した。
<1>金型:目的の形状の試験片金型(プレス成形)
<2>成形条件:金型温度=165℃、圧力10MPa、硬化時間=180秒
<3>形状:φ100mm×3mm
<4>180℃×8h アニール処理有り
上記条件で作成した円柱状樹脂試験片(ロータ、φ100mm、×3mm)が、試験片上部で角板状試験片(ステータ、アルミニウムA5052、42mm×18mm×4mm)に接触し、荷重1.2Kgが接触部に均一にかかるようにし、ロータを常温、60rpmで5h回転させた後のロータ(樹脂成形品)とステータ(アルミニウムA5052)の摩耗量を測定した。
試験結果を表1に示す。
Figure 2012025940
表1より、充填材として溶融シリカを10〜84質量%配合した実施例1〜11と、充填材を配合しない比較例2及びガラス繊維を配合した比較例3とを比較すると、実施例1〜11は、比較例2及びガラス繊維を49.5質量%配合した比較例3に比べて、成形収縮率、線膨張係数、耐湿寸法変化の値が大幅に低減していた。
ガラス繊維は、本発明のフェノール樹脂成形材料の充填材としては適当でないことが確認された。
なお、溶融シリカの配合量が84.5質量%である比較例1では、混練性が悪化し、成形性が良好ではなかった。
また、潤滑性物質の配合に関して、黒鉛のみを1〜60質量%配合した実施例1〜6、9〜11と黒鉛を配合しない比較例1について摺動摩耗試験の結果を比較すると、実施例1〜6、9〜11では、アルミニウム摩耗量、樹脂摩耗量が低減していることが確認された。
さらに、ノボラック型フェノール樹脂を用いた実施例1〜8と、レゾール型フェノール樹脂を用いた9〜11を比較すると、レゾール型フェノール樹脂を用いた9〜11の摺動摩耗試験のアルミニウム摩耗量と樹脂摩耗量の結果が、非常に優れていることが確認された。
以上の結果から、本発明のフェノール樹脂成形材料を用いて得た実施例1〜11のフェノール樹脂成形品は、比較例1〜3に比べて上記各測定項目においてバランスのとれた物性を示すことが確認された。

Claims (3)

  1. フェノール樹脂、充填材、潤滑性物質を必須成分とするフェノール樹脂成形材料であって、フェノール樹脂を成形材料全量に対して10〜25質量%、充填材として溶融シリカを成形材料全量に対して10〜84質量%、潤滑性物質として黒鉛を成形材料全量に対して1〜60質量%配合し、成形材料全体を100質量%とした場合に、フェノール樹脂、溶融シリカ、黒鉛の合計が90質量%以上であることを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
  2. ポリテトラフルオロエチレンを成形材料全量に対して1〜7質量%配合してなることを特徴とする請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
  3. 請求項1又は2に記載のフェノール樹脂成形材料を加熱加圧成形により成形したことを特徴とするフェノール樹脂成形品。
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