JP7168128B1 - 摺動部材用熱硬化性樹脂組成物、当該組成物からなる硬化物およびその用途 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献4には、フェノール樹脂と、無機補強繊維と、金属水和物とを含む摺動部材成形材料が開示されている。フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂が例示されている。
特許文献4~6において、フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂が例示されている。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
黒鉛と、レゾール型フェノール樹脂と、を含み、
前記黒鉛を55質量%以上82質量%以下の量で含有する、摺動部材用熱硬化性樹脂組成物が提供される。
前記摺動部材用熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物が提供される。
前記硬化物からなる摺動部材が提供される。
前記摺動部材を含む真空ポンプが提供される。
前記摺動部材用熱硬化性樹脂組成物をインジェクション成形する工程を含む、摺動部材の製造方法が提供される。
黒鉛としては、特に限定されず、土状黒鉛、鱗状黒鉛などがあり、いずれも使用することができる。
また、熱伝導率の高い黒鉛を用いると摺動時に発生する熱を排熱しやくなり、熱の影響を抑えられることが期待できる。そのような黒鉛としては鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、球状黒鉛が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせ用いることができる。
なお、平均粒子径は、レーザー回折散乱法によって求めた黒鉛の粒度分布において、体積積算が50%での粒径(D50)を意味する。
レゾール型フェノール樹脂は、原料のフェノール類とアルデヒド類とを、塩基性触媒の存在下で、通常、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/フェノール類)を1.3~1.7として反応させて得ることができる。もちろん、レゾール型フェノール樹脂は、市販品であってもよい。
原料としてフェノール類を1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
原料としてアルデヒド類を1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、ポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに算出することができる。
本実施形態の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、さらに繊維フィラーを含むことができ、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは8質量%以下の量で含むことができる。
本実施形態の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物は、さらにワックスを含むことができる。ワックスとしては、本発明の効果を奏する範囲で公知のワックスを用いることができ、パラフィンワックス、モンタンワックス、及びカルナウバワックス等の天然ワックス、炭化水素系ワックス、高級脂肪酸、及び高級脂肪酸を誘導して得られるワックス等が挙げられる。ワックスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物は、さらにシリカ粒子を含むことができる。シリカ粒子を含むことにより、硬化物のガラス転移温度以下における線膨張係数をさらに低下させることができ、高回転数、高温下で使用される真空ポンプのローターやベーンのような部材により好適に用いることができる。
本実施形態の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物は、さらにカップリング剤を含むことができる。カップリング剤を含むことにより、黒鉛と樹脂との親和性が向上し、その結果、得られる硬化物(摺動部材)の機械的強度をより一層向上させることができる。
本実施形態の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、上述の成分以外に、その他の成分として、硬化助剤、収縮抑制剤等を含むことができる。
本発明の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物は、黒鉛、およびレゾール型フェノール樹脂を配合し、必要に応じて繊維フィラー、ワックス、シリカ粒子、カップリング剤、その他の成分などを添加した材料を予備混合した後、加熱ロールまたは二軸混練機等を用いて加熱混練し、冷却後に粉砕または造粒化して得ることができる。
本実施形態の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物は、ラボプラストミルを用いて回転数30rpm、測定温度110℃の条件でトルク値を経時的に測定した際に、最低トルク値が好ましくは25N・m以下、より好ましくは24N・m以下である。
最低トルク値が上記範囲にあることにより、流動性に優れることから、インジェクション成形が可能となり成形性に優れる。
本実施形態の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物は加熱硬化することにより硬化物を得ることができる。
このように、本実施形態の硬化物は高温使用下における寸法変化率が低く耐熱性に優れることから、高回転数、高温下で使用される真空ポンプのローターやベーンのような部材に好適に用いることができる。
金型温度175℃、硬化時間3分間で成形された直径50mm×高さ3mmの略円柱状の硬化物において、加熱前の直径をA、200℃で1,000時間加熱した後の直径をBとし、式:[(A-B)/A]×100により算出する。
このように、本実施形態の硬化物は摩擦係数が小さく、摺動性に優れることから、各種ポンプ等の摺動部材に好適に用いることができる。
JIS K7218に準拠したピンオンディスク法において、滑り速度5m/s、試験圧力0.6MPa、滑り距離18km、相手材に金属(S45C)を用いて、前記硬化物の摩擦係数を測定する。
このように、本実施形態の硬化物は金属摩耗量が小さく、摺動性に優れることから、各種ポンプ等の相手部材の劣化を抑制することができる。例えば、真空ポンプにおいては、硬化物からなるベーン等が金属製の相手部材を摩耗する量が小さいことから、部材間のクリアランスが保たれ、空気の排出能力の低下が抑制される。
JIS K7218に準拠したピンオンディスク法において、滑り速度5m/s、試験圧力0.6MPa、滑り距離18km、相手材に金属(S45C)を用い、前記硬化物に対する試験前後の前記金属の摩耗量を測定する。
このように本実施形態の硬化物は耐熱性に優れることから、高回転数、高温下で使用される真空ポンプのローターやベーンのような部材に好適に用いることができる。
このように本実施形態の硬化物は耐熱性に優れることから、高回転数、高温下で使用される真空ポンプのローターやベーンのような摺動部材に好適に用いることができる。
このように本実施形態の硬化物は熱伝導性に優れることから摩擦による熱を効果的に放熱することができ、真空ポンプのローターやベーンのような摺動部材に好適に用いることができる。
本実施形態の摺動部材は、上述の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。
本実施形態の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物(成形品)は、摺動特性および機械特性に優れ、さらに熱時の寸法変化率が低く耐熱性に優れているので、各種摺動部品として好適に用いることが出来る。
・レゾール型フェノール樹脂:住友ベークライト社製、PR-53529
・ノボラック型フェノール樹脂:(住友ベークライト社製、PR-51470)
・硬化助剤:ヘキサメチレンテトラミン
・黒鉛:西村黒鉛社製 土状黒鉛
・ガラス繊維:日東紡社製、チョップドストランド
・ワックス:日本油脂社製、ステアリン酸
・シリカ粒子:ELKEM社製、線膨張係数0.5ppm/K、平均粒径150nm
各実施例および比較例について、下記表1に示す配合量(質量部)に従って各成分を配合した材料混合物を回転速度の異なる加熱ロールで混練し、シート状に冷却したものを粉砕することにより、顆粒状の成形材料(摺動部材用熱硬化性樹脂組成物)を得た。
得られた摺動部材用熱硬化性樹脂組成物を用いて、以下の方法で物性を測定した。
・動摩擦係数:
金型温度175℃、硬化時間3分間で直径50mm×高さ3mmの略円柱状の硬化物を成形し、JIS K7218に準拠したピンオンディスク法において、滑り速度5m/s、試験圧力0.6MPa、滑り距離18km、相手材に金属(S45C)を用いて、前記硬化物の摩擦係数を測定した。
JIS K7218に準拠したピンオンディスク法において、滑り速度5m/s、試験圧力0.6MPa、滑り距離18km、相手材に金属(S45C)を用い、前記金属に対する試験後の前記硬化物の樹脂摩耗量を測定した。
JIS K7218に準拠したピンオンディスク法において、滑り速度5m/s、試験圧力0.6MPa、滑り距離18km、相手材に金属(S45C)を用い、前記硬化物に対する試験後の前記金属の摩耗量を測定した。
・寸法変化(%):
金型温度175℃、硬化時間3分間で成形された直径50mm×高さ3mmの略円柱状の硬化物において、加熱前の直径をA、200℃で1,000時間加熱した後の直径をBとし、式:[(A-B)/A]×100により算出した。
前記硬化物について、セイコーインスツルメント社製熱機械分析装置EXSTAR6000を用いて、空気雰囲気下、5℃/分で測定を行った。
・インジェクション成形の可否:
東芝機械製射出成形機EC-100NRを用いて、金型温度175℃、硬化時間1分で ISO3167に準拠した試験片の成形を行い、以下の判定基準でインジェクション成形の可否を評価した。
〇:外観良好
×:未充填部がある
ラボプラストミル試験機(東洋精機製作所社製、4C150)を用いて、回転数30rpm、測定温度110℃の条件で摺動部材用熱硬化性樹脂組成物の溶融トルクを経時的に測定し、最低トルク値を得た。
・曲げ強度(MPa)及び曲げ弾性率(GPa):
インジェクション成形の可否を判断するに際して成形された上記試験片を用い、ISO 178に準じて曲げ強度、弾性率を測定した。
・熱伝導率:
(硬化物の作製)
インジェクション成形の可否を判断するに際して成形された上記試験片から□10mmの熱拡散率測定用サンプルを切り出し、熱拡散率測定に用いた。
得られた上記の試験片について、DSC法により比熱(Cp)を測定した。
次に、上記試験片を□10x厚み2mmに切り出しNEYZSCH社製のXeフラッシュアナライザーLFA447を用いて非定常法により板状の試験片の厚み方向の熱拡散係数(α)の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。
硬化物について、得られた熱拡散率(α)、比熱(Cp)、密度(ρ)の測定値から、下記式に基づいて熱伝導率を算出した。
熱伝導率[W/m・K]=α[m2/s]×Cp[J/kg・K]×ρ[g/cm3]
Claims (15)
- 黒鉛と、
レゾール型フェノール樹脂と、
シリカ粒子と、
を含む、摺動部材用熱硬化性樹脂組成物であって、
前記摺動部材用熱硬化性樹脂組成物100質量%中に、前記黒鉛を55質量%以上82質量%以下の量で含有し、前記レゾール型フェノール樹脂を10質量%以上40質量%以下の量で含有し、前記シリカ粒子を3質量%以上30質量%以下の量で含有する、摺動部材用熱硬化性樹脂組成物。 - ラボプラストミルを用いて回転数30rpm、測定温度110℃の条件でトルク値を経時的に測定した際に、最低トルク値が25N・m以下である、請求項1に記載の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物。
- 前記摺動部材用熱硬化性樹脂組成物100質量%中に、さらに繊維フィラーを15質量%以下の量で含む、請求項1または2に記載の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物。
- 前記シリカ粒子の線膨張係数が、1ppm/K以下である、請求項1~3のいずれかに記載の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物。
- 以下の条件で測定される、前記摺動部材用熱硬化性樹脂組成物の硬化物の寸法変化率が0.30%以下である、請求項1~4のいずれかに記載の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物。
(条件)
金型温度175℃、硬化時間3分間で成形された直径50mm×高さ3mmの略円柱状の硬化物において、加熱前の直径をA、200℃で1,000時間加熱した後の直径をBとし、式:[(A-B)/A]×100により算出する。 - 以下の条件で測定される、前記摺動部材用熱硬化性樹脂組成物の硬化物の摩擦係数が0.23以下である、請求項1~5のいずれかに記載の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物。
(条件)
金型温度175℃、硬化時間3分間で直径50mm×高さ3mmの略円柱状の硬化物を成形し、JIS K7218に準拠したピンオンディスク法において、滑り速度5m/s、試験圧力0.6MPa、滑り距離18km、相手材に金属(S45C)を用いて、前記硬化物の摩擦係数を測定する。 - 以下の条件で測定される、金属摩耗量が1.0mg以下である、請求項1~6のいずれかに記載の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物。
(条件)
金型温度175℃、硬化時間3分間で直径50mm×高さ3mmの略円柱状の硬化物を成形し、JIS K7218に準拠したピンオンディスク法において、滑り速度5m/s、試験圧力0.6MPa、滑り距離18km、相手材に金属(S45C)を用い、前記硬化物に対する試験前後の前記金属の摩耗量を測定する。 - 前記摺動部材用熱硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度以下における線膨張係数が20ppm/K以下である、請求項1~7のいずれかに記載の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物。
- 前記摺動部材用熱硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が200℃以上である、請求項1~8のいずれかに記載の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物。
- 前記摺動部材用熱硬化性樹脂組成物の硬化物の熱伝導率が5w/mK以上である、請求項1~9のいずれかに記載の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物。
- 前記黒鉛は鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛および球状黒鉛から選択された少なくとも1種を含む、請求項1~10のいずれかに記載の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項1~11のいずれかに記載の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
- 請求項12に記載の硬化物からなる摺動部材。
- 請求項13に記載の摺動部材を含む真空ポンプ。
- 請求項1~11のいずれかに記載の摺動部材用熱硬化性樹脂組成物をインジェクション成形する工程を含む、摺動部材の製造方法。
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