JP2005272548A - 摩擦材用フェノール樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ハイオルソノボラック型フェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン、及び、有機酸を含有する混合物を機械的圧力により溶融混練したものを粉砕してなることを特徴とする、摩擦材用フェノール樹脂組成物。好ましくは、ハイオルソノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して、有機酸0.2〜4重量部を含有する。
【選択図】 なし
Description
ブレーキなどの摩擦材の製造プロセスとしては、上記フェノール樹脂組成物をバインダーとして用い、これに、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維などの繊維状基材、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機基材、及び、カシューダスト等を混合したものを熱プレス装置により加熱加圧成形して成形体を得る方法が挙げられる。
近年、製造プロセスの短縮化への要求が強くなってきており、特に成形時間の短縮が課題となっている。これに伴い、樹脂組成物の設計を改良する必要性が生じてきた。
また、特許文献2に開示されているように、エポキシ樹脂などを組み合わせて成形時間を短縮する試みがなされているが、価格が非常に高価であるために商業生産化することは困難である。
さらには、特許文献3に開示されているように、ハイオルソノボラックとヘキサメチレンテトラミンとの粉砕混合品を用いた方法も試みられている。しかしながら、本手法でも、成形体の寸法精度を高くすることは困難で、部分的に膨れが生じた成形体となってしまう。
(1)ハイオルソノボラック型フェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン、及び、有機酸を含有する混合物を機械的圧力により溶融混練したものを粉砕してなることを特徴とする、摩擦材用フェノール樹脂組成物。
(2)上記有機酸は、酒石酸、琥珀酸、マロン酸、フマル酸、安息香酸、及び、フタル酸から選ばれるものである上記(1)に記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
(3)上記ハイオルソノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して、上記有機酸0
.2〜4重量部を含有する上記(1)又は(2)に記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
本発明の組成物を用いた摩擦材は、硬度、機械的強度、摩擦係数を実質的に維持しながら、成形時間を短縮することができるので、生産能力を向上させる課題に対して好適に用いることができる。
本発明の摩擦材用フェノール樹脂組成物(以下、単に「組成物」ということがある)は、ハイオルソノボラック型フェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン、及び、有機酸を含有する混合物を機械的圧力で溶融混合したものを粉砕してなることを特徴とする。
なお、このオルソ/パラ結合比は、赤外吸収スペクトル法で測定したときの、760cm−1、及び、820cm−1の吸光度より算出することができる。
オルソ/パラ結合比を求める式は下記のとおりである。
オルソ/パラ結合比=D760/(1.44×D820)
D760:760cm−1の吸光度
D820:820cm−1の吸光度
このようなハイオルソ樹脂は、通常のランダムノボラック型フェノール樹脂と比較して、硬化速度が速く、本発明の組成物を摩擦材に用いた場合に、成形時間を短縮することができる。
る。通常、フェノール、クレゾール及びこれらの混合物が多く用いられる。
これにより、反応中に樹脂がゲル化することなく、好適な分子量を有するハイオルソ樹脂を合成することができる。反応モル比が上記下限値より小さいと、得られるハイオルソ樹脂中に含有される未反応のフェノール類の量が多くなってしまうことがある。また、反応モル比が上記下限値を上回ると、反応条件によっては樹脂がゲル化することがある。
なお、上記分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに計算されたものである。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒とし、流量1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で実施した。装置は、
・本体:TOSOH社製・「HLC−8020」
・検出器:波長280nmにセットしたTOSOH社製・「UV−8011」
・分析用カラム:昭和電工社製・「SHODEX KF−802、KF−803、KF−805」
をそれぞれ使用した。
ヘキサメチレンテトラミンの配合量としては特に限定されないが、ハイオルソ樹脂100重量部に対して、5〜20重量部であることが好ましい。さらに好ましくは7〜17重量部である。
ヘキサメチレンテトラミンの配合量が上記下限値未満では、ハイオルソ樹脂の硬化が不充分になり、寸法精度がばらつくことがある。また、上記上限値を超えると、ヘキサメチレンテトラミンの分解により発生するガスが、摩擦材成形品に膨れ、亀裂などを発生させることがある。
ここで有機酸としては特に限定されないが、例えば、酒石酸、琥珀酸、マロン酸、フマル酸、安息香酸、及び、フタル酸から選ばれるものを好適に用いることができる。
。これにより、他の特性に実質的に影響を与えることなく、組成物に速硬化性を付与することができる。
有機酸の配合量が上記下限値未満では、有機酸を配合する効果が充分でないことがある。また、上記上限値を超えると、組成物を用いて摩擦材を成形する際に、成形体表面が極めて短い時間で硬化してしまうため、内部の分解ガスが系外へ放出されなくなる。そのため、成形性が低下し、摩擦材の機械的強度が低下することがある。
機械的圧力により溶融混練することで、組成物中における各成分の混合精度を高めることができるとともに、ハイオルソ樹脂とヘキサメチレンテトラミンとが互いに被覆し合ったような形態とすることができる。このため、従来の粉砕混合法を用いた場合と比較して、ハイオルソ樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの反応接点を大幅に増やすことができる。
これにより、組成物の反応速度をより速めることができるとともに、摩擦材の成形時に未反応であるヘキサメチレンテトラミンを低減することができるので、ヘキサメチレンテトラミン由来の分解ガス、例えばアンモニアガスなどの発生が少なくなり、亀裂や膨れの発生をなくすことができる。
また、溶融混練する温度としては特に限定されないが、通常、60〜80℃で行うことができる。
粉砕する方法としては特に限定されないが、通常の粉砕装置を用いて実施することができる。
平均粒径が上記下限値を下回ると、取り扱い時に粉舞が生じて作業性が低下することがある。また、上記上限値を上回ると、組成物と、摩擦材に用いる基材等との接着能力が低下して、成形体である摩擦材の機械的強度が充分でなくなることがある。
なお、ここで組成物のトルクとは、通常のトルク測定装置を用いて測定することができる。具体的には、組成物を150℃に設定したダイス中で溶融・硬化させ、反応に伴う組
成物の粘度上昇をモーターに作用する電流値で検出して、このときの最大トルク値を測定するものである。
(1)実施例1
フェノール100重量部、酢酸亜鉛0.2重量部、37%ホルムアルデヒド水溶液60重量部(反応モル比[F/P]=0.7)を混合して100℃で3時間反応を行った。反応後、反応系内が180℃になるまで脱水を行うことで、数平均分子量が500であるハイオルソノボラック型フェノール樹脂100重量部を得た。
上記で得られた樹脂100重量部に対して、ヘキサメチレンテトラミン12重量部、有機酸として安息香酸1重量部を配合して、70℃のロール混練装置で溶融混練を行った。その後、卓上の小型粉砕装置にて粉砕混合を行い、平均粒径が20μmの組成物を得た。
得られた組成物と、繊維基材としてアラミド繊維、無機充添材として炭酸カルシウムと硫酸バリウム、摩擦調整剤としてカシューダストを用い、表2に示す配合割合で仕込み、ブレーキ材用混合物とした。これを、温度150℃、圧力500kg/cm2で5分間成形し、100×100×15mmの成形品を得た。得られた成形品をさらに200℃で5時間焼成してブレーキ材を作製した。
実施例1において、有機酸として琥珀酸を用いた以外は、実施例1と同様の方法で行い、平均粒径が20μmの組成物を得た。これを用いて、実施例1と同様の方法でブレーキ材を得た。
実施例1において、37%ホルムアルデヒド水溶液を48重量部(反応モル比[F/P]=0.56)として、数平均分子量が400であるハイオルソノボラック型フェノール樹脂を得た以外は、実施例1と同様の方法で行い、平均粒径が20μmの組成物を得た。これを用いて、実施例1と同様の方法でブレーキ材を得た。
実施例1において、37%ホルムアルデヒド水溶液を73重量部(反応モル比[F/P]=0.85)として、数平均分子量が650であるハイオルソノボラック型フェノール樹脂を得た以外は、実施例1と同様の方法で行い、平均粒径が20μmの組成物を得た。これを用いて、実施例1と同様の方法でブレーキ材を得た。
実施例1において、ヘキサメチレンテトラミンの配合量を7重量部とした以外は、実施例1と同様の方法で行い、平均粒径が20μmの組成物を得た。これを用いて、実施例1と同様の方法でブレーキ材を得た。
実施例1において、安息香酸の配合量を2重量部とした以外は、実施例1と同様の方法
で行い、平均粒径が20μmの組成物を得た。これを用いて、実施例1と同様の方法でブレーキ材を得た。
実施例1で用いた組成物のかわりに、市販の摩擦材用フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製・「PR−217」(ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの混合物))を使用した以外は、実施例1と同様の方法でブレーキ材を得た。
実施例1で用いた組成物のかわりに、市販の摩擦材用フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製・「PR−50064」(ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの混合物))を使用した以外は、実施例1と同様の方法でブレーキ材を得た。
比較例1において、成形時間を10分間とした以外は、比較例1と同様の方法でブレーキ材を得た。
比較例2において、成形時間を10分間とした以外は、比較例2と同様の方法でブレーキ材を得た。
実施例1で得られたハイオルソノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して、ヘキサメチレンテトラミン12重量部を配合して、卓上の小型粉砕装置にて粉砕混合を行い、平均粒径が20μmの組成物を得た。これを用いて、実施例1と同様の方法でブレーキ材を得た。
2.1 ハイオルソノボラック型フェノール樹脂の評価
実施例1〜6で得られたハイオルソノボラック型フェノール樹脂について、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
(1)数平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに算出した。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒とし、流量1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で実施した。装置は、
・本体:TOSOH社製・「HLC−8020」
・検出器:波長280nmにセットしたTOSOH社製・「UV−8011」
・分析用カラム:昭和電工社製・「SHODEX KF−802、KF−803、KF−805」
をそれぞれ使用した。
(2)オルソ/パラ結合比:赤外吸収スペクトル法で測定した。FT−IR装置(ニコレー社製・Avatar320)を用い、KBr法で実施したときの、760cm−1、及び、820cm−1の吸光度から、下記式によりオルソ/パラ結合比を算出した。
オルソ/パラ結合比=D760/(1.44×D820)
D760:760cm−1の吸光度
D820:820cm−1の吸光度
(1)アラミド繊維:ドライパルプ 繊維長2mm
(2)カシューダスト:平均粒径150μm
(3)炭酸カルシウム:平均粒径20μm
(4)硫酸バリウム:平均粒径20μm
上記方法により作製したブレーキ材を評価用試料として以下の評価を行った。結果を表3に示す。
(1)ロックウェル硬度:JIS K 7202「プラスチックのロックウェル硬さ試験方法」に準拠して測定した。
(2)常態曲げ強度、弾性率:JIS K 7203「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して測定した。
(3)摩擦係数:JASO C 406 に準拠して、1/10スケールダイナモテスターにより測定した。測定条件は、制動初速度50km/h、減速度0.3G、制動回数1000回とし、制動温度は100℃、200℃、300℃の3水準で行った。
(4)膨れ量測定:マイクロメーターを用いて、中央部及び4隅の成形体の厚みを測定し、その差を膨れの指標とした。
比較例1〜2は、ランダムノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの混合物を用いて実施例と同じ成形時間で行ったが、樹脂成分の硬化が充分ではなく、機械的強度が低下し、膨れ量も増大した。比較例5は、ハイオルソ樹脂とヘキサメチレンテトラミンとを粉砕混合したものであるが、機械的強度が低下し、膨れ量も増大した。
徴とする、摩擦材用フェノール樹脂組成物である。本発明の組成物を用いることにより、硬度、機械的強度、摩擦係数を実質的に維持しつつ成形時間を短縮することができるので、摩擦材の生産能力を向上させ、製造プロセスを短縮することができるものである。
Claims (3)
- ハイオルソノボラック型フェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン、及び、有機酸を含有する混合物を機械的圧力により溶融混練したものを粉砕してなることを特徴とする、摩擦材用フェノール樹脂組成物。
- 前記有機酸は、酒石酸、琥珀酸、マロン酸、フマル酸、安息香酸、及び、フタル酸から選ばれるものである請求項1に記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
- 前記ハイオルソノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して、前記有機酸0.2〜4重量部を含有する請求項1又は2に記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
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