JP2004269613A - 摩擦材用フェノール樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】機械的強度、硬度が高く、靭性に優れ、高摩擦係数を得ることを可能にする摩擦材用フェノール樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ヒドロキシベンズアルデヒド変性フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンとを含有することを特徴とする、摩擦材用フェノール樹脂組成物であり、ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂は、該樹脂中のアルデヒドに由来する置換メチレン基(−CHR−、Rは置換基)の置換基のうち、3〜90モル%がヒドロキシフェニル基であることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】ヒドロキシベンズアルデヒド変性フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンとを含有することを特徴とする、摩擦材用フェノール樹脂組成物であり、ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂は、該樹脂中のアルデヒドに由来する置換メチレン基(−CHR−、Rは置換基)の置換基のうち、3〜90モル%がヒドロキシフェニル基であることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は摩擦材用フェノール樹脂組成物及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フェノール樹脂は、優れた耐熱性、接着性を有し、ブレーキ等の摩擦材用バインダーとして広く使用されている。反面、靭性において欠点を有している。また、自動車の高速化、大型化に伴い、より過酷な条件下で使用され、機械的強度、硬度が不足する、あるいは摩擦係数が低いため制動距離が延びるといった問題がある。
【0003】
このような諸条件を改善するために変性フェノール樹脂の研究が盛んに行われており、油変性フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、各種ゴム変性フェノール樹脂等が検討されている。これらの変性フェノール樹脂を用いることにより、ブレーキは強靭化される反面、硬度が低くなり、高温時のフェード現象により摩擦係数が低下し、特性面で未だ充分であるとは言えない。また、メラミン変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂などを用いることにより、高温時の摩擦係数の低下は抑制することができるが、初期の摩擦係数は充分であるとは言えない。
【0004】
上記のような変性フェノール樹脂を用いる方法のほか、金属酸化物などの金属化合物をブレーキ用組成物に配合する方法がある(例えば、特許文献1、2参照。)。しかし、これらの方法では、金属化合物の分散が不均一になることがあり、充分な摩擦係数の増加が得られないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−311071号公報
【特許文献2】
特開2002−020730号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の摩擦材用フェノール樹脂組成物が有するこのような問題を解決するため、種々検討した結果完成されたものであり、機械的強度、硬度が高く、靭性に優れ、高摩擦係数を得ることを可能にする摩擦材用フェノール樹脂組成物を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(5)により達成される。
(1)ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンとを含有することを特徴とする、摩擦材用フェノール樹脂組成物。
(2)前記ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂は、該樹脂中のアルデヒドに由来する置換メチレン基(−CHR−、Rは置換基)の置換基のうち、3〜90モル%がヒドロキシフェニル基である上記(1)に記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
(3)前記ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとを反応させて得られたノボラック型フェノール樹脂に、さらに、他のアルデヒド類を反応させることにより得られるものである上記(1)又は(2)に記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
(4)前記ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂は、前記フェノール類に対する、前記ヒドロキシベンズアルデヒドと前記他のアルデヒドとの合計モル比を、0.5〜0.9として反応させて得られるものである上記(3)に記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
(5)150℃で硬化させたときの最大トルクが1〜10N・mである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の摩擦材用フェノール樹脂組成物について説明する。
本発明の摩擦材用フェノール樹脂組成物(以下、単に「組成物」ということがある)は、ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンとを含有することを特徴とする。
【0010】
上記ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂(以下、単に「変性フェノール樹脂」ということがある)は、特に限定されないが、樹脂中のアルデヒドに由来する置換メチレン基(−CHR−、Rは置換基)の置換基のうち、3〜90モル%がヒドロキシフェニル基であることが好ましい。さらに好ましくは6〜50モル%である(以下、この割合を単に「変性率」ということがある。)。
これにより、硬化時間が短縮されるため、摩擦材を短時間で良好に成形することができる。また、硬化した時に架橋密度が高くなるために、摩擦材として用いた場合に良好な機械的強度、摩擦係数、成形性の摩擦材組成物を得ることができる。
上記変性率が上記下限値より小さいと、ヒドロキシベンズアルデヒドによる変性効果が充分でないことがある。また、上記上限値を越えると、摩擦材に用いた場合の特性としては問題ないが、樹脂を製造する際の粘度が高くなる傾向があり、作業性が低下することがある。
【0011】
なお、上記変性率は、NMRによるケミカルシフトから測定することができる。また、この変性フェノール樹脂を製造する際に用いた全アルデヒド中の、ヒドロキシベンズアルデヒドのモル比率によって算出することもできる。
【0012】
上記変性フェノール樹脂を製造する際に用いられるフェノール類としては、特に限定されないが、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、各種キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール等のフェノール類が挙げられ、通常、フェノール、クレゾール及びこれらの混合物が多く用いられる。
【0013】
また、アルデヒド類としては、まずヒドロキシベンズアルデヒドを使用する。ヒドロキシベンズアルデヒドとしては、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒドが挙げられ、特に限定されるものではないが、特に好ましくはo−ヒドロキシベンズアルデヒドである。これにより、樹脂を硬化させた時の硬化物の架橋密度が高くなるために、良好な摩擦材特性を付与できる樹脂を得ることができる。
【0014】
上記変性フェノール樹脂を製造する際には、上記ヒドロキシベンズアルデヒドとともに、これ以外のアルデヒド類(以下、「他のアルデヒド類」ということがある)を併用することができる。
上記他のアルデヒド類としては特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド(ホルマリン、パラホルム)、ベンズアルデヒドなどを使用することができる。また、これら他のアルデヒド類の、2種類以上の併用も特に限定されるものではない。
【0015】
上記変性フェノール樹脂は、上記フェノール類とアルデヒド類とを、酸性触媒の存在下で反応させることにより得られる。この反応方法としては特に限定されないが、フェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとを反応させて得られたノボラック型フェノール樹脂に、さらに、他のアルデヒド類を反応させることにより得られるものであることが好ましい。これにより、目的とする変性率を有した変性フェノール樹脂を簡易に製造することができる。
【0016】
上記変性フェノール樹脂を得る場合、ヒドロキシベンズアルデヒドと、他のアルデヒド類とを混合して、これをフェノール類に対して一括または逐次添加することもできる。しかし、通常、ヒドロキシベンズアルデヒドは他のアルデヒド類と比較すると同一反応条件下では反応性が小さいため、他のアルデヒド類が優先して選択的に反応したフェノール樹脂となりやすい。これに対して、上記の反応方法によれば、まずヒドロキシベンズアルデヒドをフェノール樹脂骨格に導入した後、これを核にして他のアルデヒド類とフェノール類とが反応して変性フェノール樹脂となる。このため、目的とする量のヒドロキシベンズアルデヒドをフェノール樹脂骨格中に確実に導入することができるとともに、樹脂中におけるヒドロキシベンズアルデヒドによる変性部位が分散するので、変性効果の均一性を高めることができる。
【0017】
上記フェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとを反応させる際の反応条件としては特に限定されないが、フェノール類(P)に対するヒドロキシベンズアルデヒド(F1)の反応モル比(F1/P)を0.015〜0.54とすることが好ましい。より好ましくは0.03〜0.3である。これにより、樹脂を硬化させる時の架橋密度をより高くすることができる。
この反応において用いられる酸性触媒としては特に限定されないが、例えば、硫酸、硝酸、p−フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などを使用することができる。
【0018】
また、上記で得られたノボラック型フェノール樹脂に、他のアルデヒド類を反応させる際の反応条件としては特に限定されないが、フェノール類(P)に対する他のアルデヒド類(F2)の反応モル比は、上記で用いたヒドロキシベンズアルデヒド(F1)と合わせて、[(F1+F2)/P]で、0.5〜0.9とすることが好ましい。これにより、反応中に樹脂がゲル化することなく、好適な分子量の変性フェノール樹脂を合成することができる。反応モル比が上記下限値より小さいと、得られる変性フェノール樹脂中に含有される未反応のフェノール類の量が多くなってしまうことがある。また、反応モル比が上記下限値を上回ると、反応条件によっては樹脂がゲル化することがある。
この反応において用いられる酸性触媒としては特に限定されないが、例えば、蓚酸、酢酸亜鉛、ナフテン酸鉛などを使用することができる。
【0019】
上記変性フェノール樹脂を製造する際の、ヒドロキシベンズアルデヒド(F1)と、他のアルデヒド類(F2)とのモル比(F1:F2)は特に限定されないが、1:30〜9:1とすることが好ましく、さらに好ましくは1:15〜1:1である。これにより、目的とする変性率を有した変性フェノール樹脂を効率的に製造することができる。
【0020】
上記変性フェノール樹脂の分子量としては特に限定されないが、数平均分子量が200〜3000であることが好ましい。これにより、摩擦材に用いたときに成形性が良好なフェノール樹脂を得ることができる。
なお、上記分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに計算されたものである。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒とし、流量1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で実施した。装置は、
・本体:TOSOH社製・「HLC−8020」
・検出器:波長280nmにセットしたTOSOH社製・「UV−8011」
・分析用カラム:昭和電工社製・「SHODEX KF−802、KF−803、KF−805」
をそれぞれ使用した。
【0021】
このようにして得られた変性フェノール樹脂の形態は特に限定されず、液状、固形、粉末、球状、いずれの形状のものも使用することができる。通常、組成物を製造する場合は、後述するヘキサメチレンテトラミンと粉砕混合を行うことが多いので、固形のものを得ることが好ましい。
【0022】
本発明の組成物は、上記で得られた変性フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンとを含有するものである。
ヘキサメチレンテトラミンの配合量は特に限定されないが、変性フェノール樹脂100重量部に対して、3〜20重量部であることが好ましく、さらに好ましくは7〜17重量部である。ヘキサメチレンテトラミンの配合量が上記下限値未満では変性フェノール樹脂の硬化が不充分になることがあり、また、上記上限値を超えると、ヘキサメチレンテトラミンの分解により発生するガスが、摩擦材成形品に膨れ、亀裂などを発生させることがある。
【0023】
本発明の組成物の機械的特性としては、特に限定されないが、150℃で硬化させたときの最大トルクが1〜10N・mであることが好ましい。これにより、摩擦材の成形性を特に良好なものにすることができる。トルクの値が1N・mよりも小さい、あるいは10N・mを超えると、摩擦材を成形する際の成形条件によっては、成形不良が生じることがある。
なお、ここで組成物のトルクとは、通常のトルク測定装置を用いて測定することができる。具体的には、組成物を150℃に設定したダイス中で溶融・硬化させ、反応に伴う組成物の粘度上昇をモーターに作用する電流値で検出して、このときの最大トルク値を測定するものである。
【0024】
なお、本発明の組成物には、上記変性フェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミンのほか、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常のノボラック型フェノール樹脂、あるいはレゾール型フェノール樹脂などを配合することができる。ここでノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを用いて酸触媒にて反応を行って得られる樹脂であり、レゾール型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを用いて塩基性触媒にて反応を行って得られる樹脂である
【0025】
本発明の組成物は、摩擦材として用いる場合、通常、上記変性フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとを含む上記組成物を粉砕混合する。ここで、粉砕した組成物の平均粒径については特に限定されるものではないが、通常20〜50μmとすることが好ましい。平均粒径が20μmを下回ると作業する時に粉舞が生じたりしてハンドリング性が低下することがある。また、平均粒径が50μmを上回ると、組成物と摩擦材に用いる基材との接着能力が低下して、機械的強度が充分でなくなることがある。
【0026】
本発明の組成物を摩擦材用として用いる場合は、通常の方法が採用できる。すなわち、上記組成物を粉砕したものを繊維基材、無機充填材などとともに混合し、これを所定の型で成形し、得られた成形品をさらに焼成することにより、目的とする摩擦材を得ることができる。
【0027】
【実施例】
次に、実施例により本発明を説明する。
【0028】
1.組成物の製造
[実施例1]
フェノール100重量部、濃硫酸0.2重量部、o−ヒドロキシベンズアルデヒド6.5重量部(F1/P=0.05)を混合して100℃で2時間反応を行った。その後、37%ホルムアルデヒド水溶液64重量部[(F1+F2)/P=0.79)]を1時間かけて添加し、添加後さらに1時間反応を行った。
その後、水酸化カルシウムを0.2重量部添加して中和した。中和後、反応系内が180℃になるまで脱水を行うことで、数平均分子量が500であるo−ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂100重量部を得た。
上記で得られた樹脂90重量部に対して、ヘキサメチレンテトラミン10重量部を配合して、卓上の小型粉砕装置にて粉砕混合を行い、平均粒径が20μmの組成物を得た。
【0029】
[実施例2]
o−ヒドロキシベンズアルデヒドの代わりに、m−ヒドロキシベンズアルデヒドを使用した以外は、実施例1と同様の方法で行い、組成物を得た。
【0030】
[実施例3]
フェノール100重量部、濃硫酸0.2重量部、o−ヒドロキシベンズアルデヒド13重量部(F1/P=0.10)を混合して100℃で2時間反応を行った。その後、37%ホルムアルデヒド水溶液56重量部[(F1+F2)/P=0.75]を1時間かけて添加し、添加後さらに1時間反応を行った。これ以降の工程は、実施例1と同様の方法で行い、組成物を得た。
【0031】
[実施例4]
フェノール100重量部、濃硫酸0.2重量部、m−ヒドロキシベンズアルデヒド13重量部(F1/P=0.10)を混合して100℃で2時間反応を行った。その後、37%ホルムアルデヒド水溶液48重量部[(F1+F2)/P=0.66]を1時間かけて添加し、添加後さらに1時間反応を行った。これ以降の工程は実施例1と同様の方法で行い、組成物を得た。
【0032】
[実施例5]
フェノール100重量部、濃硫酸0.2重量部、o−ヒドロキシベンズアルデヒド33重量部(F1/P=0.25)を混合して100℃で2時間反応を行った。その後、37%ホルムアルデヒド水溶液39重量部[(F1+F2)/P=0.71]を1時間かけて添加し、添加後さらに1時間反応を行った。これ以降の工程は実施例1と同様の方法で行い、組成物を得た。
【0033】
[比較例1]
市販の摩擦材用フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製・「PR−217」(ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの混合物))を使用した。
【0034】
[比較例2]
市販の摩擦材用フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製・「PR−50064」(ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの混合物))を使用した。
【0035】
2.変性フェノール樹脂の評価
実施例1〜5で得られた変性フェノール樹脂について、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
(1)変性率:変性フェノール樹脂を製造する際に用いた全アルデヒド中の、ヒドロキシベンズアルデヒドのモル比率によって算出した。
(2)数平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに算出した。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒とし、流量1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で実施した。装置は、
・本体:TOSOH社製・「HLC−8020」
・検出器:波長280nmにセットしたTOSOH社製・「UV−8011」
・分析用カラム:昭和電工社製・「SHODEX KF−802、KF−803、KF−805」
をそれぞれ使用した。
【0036】
【表1】
【0037】
3.摩擦材(ブレーキ材)の作製
実施例1〜5で得られた組成物、あるいは比較例1〜2の摩擦材用フェノール樹脂と、繊維基材としてアラミド繊維、無機充添材として炭酸カルシウムと硫酸バリウムを用い、表2に示す配合割合で仕込み、ブレーキ材用混合物とした。これを、温度160℃、圧力200kg/cm2で10分間成形し、100×100×15mmの成形品を得た。得られた成形品をさらに200℃で5時間焼成してブレーキ材を作製した。
【0038】
【表2】
【0039】
表の注:使用した材料
(1)アラミド繊維:ドライパルプ 繊維長2mm
(2)炭酸カルシウム:平均粒径 20μm
(3)硫酸バリウム:平均粒径 20μm
【0040】
3.摩擦材(ブレーキ材)の評価
上記方法により作製したブレーキ材を評価用試料として以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
表の注:評価方法
(1)ロックウェル硬度:JIS K 7202「プラスチックのロックウェル硬さ試験方法」に準拠して測定した。
(2)常態曲げ強度、弾性率:JIS K 7203「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して測定した。
(3)摩擦係数:JASO C 406 に準拠して、1/10スケールダイナモテスターにより測定した。測定条件は、制動初速度50km/h、減速度0.3G、制動回数1000回とし、制動温度は100℃、200℃、300℃の3水準で行った。
(4)トルク:トルク測定装置(CurelastometerV:株式会社オリエンテック製)を用いて測定を行った。測定温度150℃、試料量4.0g、振れ角1度の条件で実施した。尚、測定時間を30分間とし、その時間内での最大トルク値を指標とした。
【0043】
実施例1〜5はいずれも、ヒドロキシベンズアルデヒド変性フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンとを含有する本発明の組成物であり、これらを用いた摩擦材の評価の結果、ヒドロキシベンズアルデヒドによる変性を行っていないフェノール樹脂を用いた比較例と比較して、機械的強度、硬度が高く、靭性に優れ、高い摩擦係数を有するものであった。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、ヒドロキシベンズアルデヒド変性フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンとを含有することを特徴とする、摩擦材用フェノール樹脂組成物である。本発明の組成物は、機械的強度、硬度が高く、靭性に優れ、高い摩擦係数を有する摩擦材を得ることができるので、高速化、大型化により過酷な条件下で使用される自動車等の摩擦材用として好適に用いることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は摩擦材用フェノール樹脂組成物及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フェノール樹脂は、優れた耐熱性、接着性を有し、ブレーキ等の摩擦材用バインダーとして広く使用されている。反面、靭性において欠点を有している。また、自動車の高速化、大型化に伴い、より過酷な条件下で使用され、機械的強度、硬度が不足する、あるいは摩擦係数が低いため制動距離が延びるといった問題がある。
【0003】
このような諸条件を改善するために変性フェノール樹脂の研究が盛んに行われており、油変性フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、各種ゴム変性フェノール樹脂等が検討されている。これらの変性フェノール樹脂を用いることにより、ブレーキは強靭化される反面、硬度が低くなり、高温時のフェード現象により摩擦係数が低下し、特性面で未だ充分であるとは言えない。また、メラミン変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂などを用いることにより、高温時の摩擦係数の低下は抑制することができるが、初期の摩擦係数は充分であるとは言えない。
【0004】
上記のような変性フェノール樹脂を用いる方法のほか、金属酸化物などの金属化合物をブレーキ用組成物に配合する方法がある(例えば、特許文献1、2参照。)。しかし、これらの方法では、金属化合物の分散が不均一になることがあり、充分な摩擦係数の増加が得られないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−311071号公報
【特許文献2】
特開2002−020730号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の摩擦材用フェノール樹脂組成物が有するこのような問題を解決するため、種々検討した結果完成されたものであり、機械的強度、硬度が高く、靭性に優れ、高摩擦係数を得ることを可能にする摩擦材用フェノール樹脂組成物を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(5)により達成される。
(1)ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンとを含有することを特徴とする、摩擦材用フェノール樹脂組成物。
(2)前記ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂は、該樹脂中のアルデヒドに由来する置換メチレン基(−CHR−、Rは置換基)の置換基のうち、3〜90モル%がヒドロキシフェニル基である上記(1)に記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
(3)前記ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとを反応させて得られたノボラック型フェノール樹脂に、さらに、他のアルデヒド類を反応させることにより得られるものである上記(1)又は(2)に記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
(4)前記ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂は、前記フェノール類に対する、前記ヒドロキシベンズアルデヒドと前記他のアルデヒドとの合計モル比を、0.5〜0.9として反応させて得られるものである上記(3)に記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
(5)150℃で硬化させたときの最大トルクが1〜10N・mである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の摩擦材用フェノール樹脂組成物について説明する。
本発明の摩擦材用フェノール樹脂組成物(以下、単に「組成物」ということがある)は、ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンとを含有することを特徴とする。
【0010】
上記ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂(以下、単に「変性フェノール樹脂」ということがある)は、特に限定されないが、樹脂中のアルデヒドに由来する置換メチレン基(−CHR−、Rは置換基)の置換基のうち、3〜90モル%がヒドロキシフェニル基であることが好ましい。さらに好ましくは6〜50モル%である(以下、この割合を単に「変性率」ということがある。)。
これにより、硬化時間が短縮されるため、摩擦材を短時間で良好に成形することができる。また、硬化した時に架橋密度が高くなるために、摩擦材として用いた場合に良好な機械的強度、摩擦係数、成形性の摩擦材組成物を得ることができる。
上記変性率が上記下限値より小さいと、ヒドロキシベンズアルデヒドによる変性効果が充分でないことがある。また、上記上限値を越えると、摩擦材に用いた場合の特性としては問題ないが、樹脂を製造する際の粘度が高くなる傾向があり、作業性が低下することがある。
【0011】
なお、上記変性率は、NMRによるケミカルシフトから測定することができる。また、この変性フェノール樹脂を製造する際に用いた全アルデヒド中の、ヒドロキシベンズアルデヒドのモル比率によって算出することもできる。
【0012】
上記変性フェノール樹脂を製造する際に用いられるフェノール類としては、特に限定されないが、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、各種キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール等のフェノール類が挙げられ、通常、フェノール、クレゾール及びこれらの混合物が多く用いられる。
【0013】
また、アルデヒド類としては、まずヒドロキシベンズアルデヒドを使用する。ヒドロキシベンズアルデヒドとしては、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒドが挙げられ、特に限定されるものではないが、特に好ましくはo−ヒドロキシベンズアルデヒドである。これにより、樹脂を硬化させた時の硬化物の架橋密度が高くなるために、良好な摩擦材特性を付与できる樹脂を得ることができる。
【0014】
上記変性フェノール樹脂を製造する際には、上記ヒドロキシベンズアルデヒドとともに、これ以外のアルデヒド類(以下、「他のアルデヒド類」ということがある)を併用することができる。
上記他のアルデヒド類としては特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド(ホルマリン、パラホルム)、ベンズアルデヒドなどを使用することができる。また、これら他のアルデヒド類の、2種類以上の併用も特に限定されるものではない。
【0015】
上記変性フェノール樹脂は、上記フェノール類とアルデヒド類とを、酸性触媒の存在下で反応させることにより得られる。この反応方法としては特に限定されないが、フェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとを反応させて得られたノボラック型フェノール樹脂に、さらに、他のアルデヒド類を反応させることにより得られるものであることが好ましい。これにより、目的とする変性率を有した変性フェノール樹脂を簡易に製造することができる。
【0016】
上記変性フェノール樹脂を得る場合、ヒドロキシベンズアルデヒドと、他のアルデヒド類とを混合して、これをフェノール類に対して一括または逐次添加することもできる。しかし、通常、ヒドロキシベンズアルデヒドは他のアルデヒド類と比較すると同一反応条件下では反応性が小さいため、他のアルデヒド類が優先して選択的に反応したフェノール樹脂となりやすい。これに対して、上記の反応方法によれば、まずヒドロキシベンズアルデヒドをフェノール樹脂骨格に導入した後、これを核にして他のアルデヒド類とフェノール類とが反応して変性フェノール樹脂となる。このため、目的とする量のヒドロキシベンズアルデヒドをフェノール樹脂骨格中に確実に導入することができるとともに、樹脂中におけるヒドロキシベンズアルデヒドによる変性部位が分散するので、変性効果の均一性を高めることができる。
【0017】
上記フェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとを反応させる際の反応条件としては特に限定されないが、フェノール類(P)に対するヒドロキシベンズアルデヒド(F1)の反応モル比(F1/P)を0.015〜0.54とすることが好ましい。より好ましくは0.03〜0.3である。これにより、樹脂を硬化させる時の架橋密度をより高くすることができる。
この反応において用いられる酸性触媒としては特に限定されないが、例えば、硫酸、硝酸、p−フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などを使用することができる。
【0018】
また、上記で得られたノボラック型フェノール樹脂に、他のアルデヒド類を反応させる際の反応条件としては特に限定されないが、フェノール類(P)に対する他のアルデヒド類(F2)の反応モル比は、上記で用いたヒドロキシベンズアルデヒド(F1)と合わせて、[(F1+F2)/P]で、0.5〜0.9とすることが好ましい。これにより、反応中に樹脂がゲル化することなく、好適な分子量の変性フェノール樹脂を合成することができる。反応モル比が上記下限値より小さいと、得られる変性フェノール樹脂中に含有される未反応のフェノール類の量が多くなってしまうことがある。また、反応モル比が上記下限値を上回ると、反応条件によっては樹脂がゲル化することがある。
この反応において用いられる酸性触媒としては特に限定されないが、例えば、蓚酸、酢酸亜鉛、ナフテン酸鉛などを使用することができる。
【0019】
上記変性フェノール樹脂を製造する際の、ヒドロキシベンズアルデヒド(F1)と、他のアルデヒド類(F2)とのモル比(F1:F2)は特に限定されないが、1:30〜9:1とすることが好ましく、さらに好ましくは1:15〜1:1である。これにより、目的とする変性率を有した変性フェノール樹脂を効率的に製造することができる。
【0020】
上記変性フェノール樹脂の分子量としては特に限定されないが、数平均分子量が200〜3000であることが好ましい。これにより、摩擦材に用いたときに成形性が良好なフェノール樹脂を得ることができる。
なお、上記分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに計算されたものである。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒とし、流量1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で実施した。装置は、
・本体:TOSOH社製・「HLC−8020」
・検出器:波長280nmにセットしたTOSOH社製・「UV−8011」
・分析用カラム:昭和電工社製・「SHODEX KF−802、KF−803、KF−805」
をそれぞれ使用した。
【0021】
このようにして得られた変性フェノール樹脂の形態は特に限定されず、液状、固形、粉末、球状、いずれの形状のものも使用することができる。通常、組成物を製造する場合は、後述するヘキサメチレンテトラミンと粉砕混合を行うことが多いので、固形のものを得ることが好ましい。
【0022】
本発明の組成物は、上記で得られた変性フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンとを含有するものである。
ヘキサメチレンテトラミンの配合量は特に限定されないが、変性フェノール樹脂100重量部に対して、3〜20重量部であることが好ましく、さらに好ましくは7〜17重量部である。ヘキサメチレンテトラミンの配合量が上記下限値未満では変性フェノール樹脂の硬化が不充分になることがあり、また、上記上限値を超えると、ヘキサメチレンテトラミンの分解により発生するガスが、摩擦材成形品に膨れ、亀裂などを発生させることがある。
【0023】
本発明の組成物の機械的特性としては、特に限定されないが、150℃で硬化させたときの最大トルクが1〜10N・mであることが好ましい。これにより、摩擦材の成形性を特に良好なものにすることができる。トルクの値が1N・mよりも小さい、あるいは10N・mを超えると、摩擦材を成形する際の成形条件によっては、成形不良が生じることがある。
なお、ここで組成物のトルクとは、通常のトルク測定装置を用いて測定することができる。具体的には、組成物を150℃に設定したダイス中で溶融・硬化させ、反応に伴う組成物の粘度上昇をモーターに作用する電流値で検出して、このときの最大トルク値を測定するものである。
【0024】
なお、本発明の組成物には、上記変性フェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミンのほか、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常のノボラック型フェノール樹脂、あるいはレゾール型フェノール樹脂などを配合することができる。ここでノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを用いて酸触媒にて反応を行って得られる樹脂であり、レゾール型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを用いて塩基性触媒にて反応を行って得られる樹脂である
【0025】
本発明の組成物は、摩擦材として用いる場合、通常、上記変性フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとを含む上記組成物を粉砕混合する。ここで、粉砕した組成物の平均粒径については特に限定されるものではないが、通常20〜50μmとすることが好ましい。平均粒径が20μmを下回ると作業する時に粉舞が生じたりしてハンドリング性が低下することがある。また、平均粒径が50μmを上回ると、組成物と摩擦材に用いる基材との接着能力が低下して、機械的強度が充分でなくなることがある。
【0026】
本発明の組成物を摩擦材用として用いる場合は、通常の方法が採用できる。すなわち、上記組成物を粉砕したものを繊維基材、無機充填材などとともに混合し、これを所定の型で成形し、得られた成形品をさらに焼成することにより、目的とする摩擦材を得ることができる。
【0027】
【実施例】
次に、実施例により本発明を説明する。
【0028】
1.組成物の製造
[実施例1]
フェノール100重量部、濃硫酸0.2重量部、o−ヒドロキシベンズアルデヒド6.5重量部(F1/P=0.05)を混合して100℃で2時間反応を行った。その後、37%ホルムアルデヒド水溶液64重量部[(F1+F2)/P=0.79)]を1時間かけて添加し、添加後さらに1時間反応を行った。
その後、水酸化カルシウムを0.2重量部添加して中和した。中和後、反応系内が180℃になるまで脱水を行うことで、数平均分子量が500であるo−ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂100重量部を得た。
上記で得られた樹脂90重量部に対して、ヘキサメチレンテトラミン10重量部を配合して、卓上の小型粉砕装置にて粉砕混合を行い、平均粒径が20μmの組成物を得た。
【0029】
[実施例2]
o−ヒドロキシベンズアルデヒドの代わりに、m−ヒドロキシベンズアルデヒドを使用した以外は、実施例1と同様の方法で行い、組成物を得た。
【0030】
[実施例3]
フェノール100重量部、濃硫酸0.2重量部、o−ヒドロキシベンズアルデヒド13重量部(F1/P=0.10)を混合して100℃で2時間反応を行った。その後、37%ホルムアルデヒド水溶液56重量部[(F1+F2)/P=0.75]を1時間かけて添加し、添加後さらに1時間反応を行った。これ以降の工程は、実施例1と同様の方法で行い、組成物を得た。
【0031】
[実施例4]
フェノール100重量部、濃硫酸0.2重量部、m−ヒドロキシベンズアルデヒド13重量部(F1/P=0.10)を混合して100℃で2時間反応を行った。その後、37%ホルムアルデヒド水溶液48重量部[(F1+F2)/P=0.66]を1時間かけて添加し、添加後さらに1時間反応を行った。これ以降の工程は実施例1と同様の方法で行い、組成物を得た。
【0032】
[実施例5]
フェノール100重量部、濃硫酸0.2重量部、o−ヒドロキシベンズアルデヒド33重量部(F1/P=0.25)を混合して100℃で2時間反応を行った。その後、37%ホルムアルデヒド水溶液39重量部[(F1+F2)/P=0.71]を1時間かけて添加し、添加後さらに1時間反応を行った。これ以降の工程は実施例1と同様の方法で行い、組成物を得た。
【0033】
[比較例1]
市販の摩擦材用フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製・「PR−217」(ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの混合物))を使用した。
【0034】
[比較例2]
市販の摩擦材用フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製・「PR−50064」(ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの混合物))を使用した。
【0035】
2.変性フェノール樹脂の評価
実施例1〜5で得られた変性フェノール樹脂について、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
(1)変性率:変性フェノール樹脂を製造する際に用いた全アルデヒド中の、ヒドロキシベンズアルデヒドのモル比率によって算出した。
(2)数平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに算出した。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒とし、流量1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で実施した。装置は、
・本体:TOSOH社製・「HLC−8020」
・検出器:波長280nmにセットしたTOSOH社製・「UV−8011」
・分析用カラム:昭和電工社製・「SHODEX KF−802、KF−803、KF−805」
をそれぞれ使用した。
【0036】
【表1】
【0037】
3.摩擦材(ブレーキ材)の作製
実施例1〜5で得られた組成物、あるいは比較例1〜2の摩擦材用フェノール樹脂と、繊維基材としてアラミド繊維、無機充添材として炭酸カルシウムと硫酸バリウムを用い、表2に示す配合割合で仕込み、ブレーキ材用混合物とした。これを、温度160℃、圧力200kg/cm2で10分間成形し、100×100×15mmの成形品を得た。得られた成形品をさらに200℃で5時間焼成してブレーキ材を作製した。
【0038】
【表2】
【0039】
表の注:使用した材料
(1)アラミド繊維:ドライパルプ 繊維長2mm
(2)炭酸カルシウム:平均粒径 20μm
(3)硫酸バリウム:平均粒径 20μm
【0040】
3.摩擦材(ブレーキ材)の評価
上記方法により作製したブレーキ材を評価用試料として以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
表の注:評価方法
(1)ロックウェル硬度:JIS K 7202「プラスチックのロックウェル硬さ試験方法」に準拠して測定した。
(2)常態曲げ強度、弾性率:JIS K 7203「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して測定した。
(3)摩擦係数:JASO C 406 に準拠して、1/10スケールダイナモテスターにより測定した。測定条件は、制動初速度50km/h、減速度0.3G、制動回数1000回とし、制動温度は100℃、200℃、300℃の3水準で行った。
(4)トルク:トルク測定装置(CurelastometerV:株式会社オリエンテック製)を用いて測定を行った。測定温度150℃、試料量4.0g、振れ角1度の条件で実施した。尚、測定時間を30分間とし、その時間内での最大トルク値を指標とした。
【0043】
実施例1〜5はいずれも、ヒドロキシベンズアルデヒド変性フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンとを含有する本発明の組成物であり、これらを用いた摩擦材の評価の結果、ヒドロキシベンズアルデヒドによる変性を行っていないフェノール樹脂を用いた比較例と比較して、機械的強度、硬度が高く、靭性に優れ、高い摩擦係数を有するものであった。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、ヒドロキシベンズアルデヒド変性フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンとを含有することを特徴とする、摩擦材用フェノール樹脂組成物である。本発明の組成物は、機械的強度、硬度が高く、靭性に優れ、高い摩擦係数を有する摩擦材を得ることができるので、高速化、大型化により過酷な条件下で使用される自動車等の摩擦材用として好適に用いることができる。
Claims (5)
- ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンとを含有することを特徴とする、摩擦材用フェノール樹脂組成物。
- 前記ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂は、該樹脂中のアルデヒドに由来する置換メチレン基(−CHR−、Rは置換基)の置換基のうち、3〜90モル%がヒドロキシフェニル基である請求項1に記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
- 前記ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとを反応させて得られたノボラック型フェノール樹脂に、さらに、他のアルデヒド類を反応させることにより得られるものである請求項1又は2に記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
- 前記ヒドロキシベンズアルデヒド変性ノボラック型フェノール樹脂は、前記フェノール類に対する、前記ヒドロキシベンズアルデヒドと前記他のアルデヒドとの合計モル比を、0.5〜0.9として反応させて得られるものである請求項3に記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
- 150℃で硬化させたときの最大トルクが1〜10N・mである請求項1ないし4のいずれかに記載の摩擦材用フェノール樹脂組成物。
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