JP2011222978A - 静電チャック - Google Patents

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Abstract

【課題】セラミック板のクラック発生を抑制しつつ、被処理基板の急速な加熱冷却が可能な静電チャックを提供する。
【解決手段】主面に凹部が設けられ、内部に電極が設けられたセラミック板と、セラミック板に接合された温調プレートと、セラミック板と温調プレートとの間に設けられた第1の接合剤と、セラミック板の凹部内に設けられたヒータと、を備え、第1の接合剤は、主剤と、無定形フィラーと、球形フィラーと、を有し、球形フィラーの平均直径は、全ての無定形フィラーの短径の最大値よりも大きく、第1の接合剤の厚さは、球形フィラーの平均直径と同じか、もしくは大きく、凹部の幅は、ヒータの幅より広く、凹部の深さは、ヒータの厚さより深く、凹部内にヒータが第2の接合剤により接着され、ヒータの温調プレート側の主面と、温調プレートの主面と、の間の第1の距離が、セラミック板の主面と、温調プレートの主面と、の間の第2の距離よりも長い。
【選択図】図1

Description

本発明は、静電チャックに関する。
被処理基板を真空チャンバ内で処理するプロセスにおいて、被処理基板を保持固定する手段として静電チャックが用いられる。近年、タクトタイムの短縮目的のために、高密度プラズマを用いるプロセスが一般化している。このため、高密度プラズマから被処理基板へ流入する熱流束を効率よく静電チャック外に除去する方法が要求されている。
例えば、静電チャックの下側に温調部を接合剤で接合させた構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この構造では、導電体の金属ベース基板の上に電極付きのセラミック板をゴム等の接合剤で接着している。被処理基板に流入した熱流束は、静電チャックを通過し、冷媒体を流通させた温調部へと伝導し、冷媒体によって静電チャック外に排熱される。
しかしながら、金属ベース基板、セラミック板の熱伝導率に比べ、樹脂で構成された接合剤の熱伝導率は、1、2桁低い。従って、接合剤は熱に対しての抵抗になり得る。このため、効率よく熱を排熱するには、可能な限り接合剤を薄くする必要がある。しかし、接合剤を薄くすると、金属ベース基板と、セラミック板との温度差、または金属ベース基板と、セラミック板との熱膨張係数差により発生する、金属ベース基板とセラミック板とのずれが接合剤で緩和できなくなり、その接着力が低減してしまう。これに対し、接合剤の熱伝導率を高めるため、熱伝導フィラーを接合剤に混合分散させた構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、最近では、プロセス中において被処理基板を急速に温度変化させることが可能な静電チャックが要求されている。これに対処するために、例えば、板状のヒータを厚いセラミック板で挟み込み、これらを金属ベース基板に接合させた静電チャックの開示例がある(例えば、特許文献3参照)。
特開昭63−283037号公報 特開平02−027748号公報 特開2005−347559号公報
しかしながら、ヒータを厚いセラミック板で挟みこむと、被処理基板から金属ベース基板(以下、温調プレート)までの距離が長くなり、かつ、接合剤の層数が多くなるため、冷却性能が低下してしまう。また、ヒータの上下に厚いセラミック板が配置されるため、静電チャックの熱容量が大きくなり、加熱時のレスポンスも悪くなってしまう。
このような問題を解決するためには、セラミック板の厚み、接合剤の層数を減らす必要がある。しかし、ヒータを薄いセラミック板と温調プレートで挟み込み、これらを熱伝導フィラーを混合分散させた単層の接合剤によって接着すると、ヒータを介してセラミック板に接着圧力が集中し、セラミック板にクラックが発生する場合がある。
本発明の課題は、セラミック板のクラック発生を抑制しつつ、被処理基板の急速な加熱冷却が可能な静電チャックを提供することにある。
第1の発明は、静電チャックに関し、主面に凹部が設けられ、内部に電極が設けられたセラミック板と、前記セラミック板に接合された温調プレートと、前記セラミック板と前記温調プレートとの間に設けられた第1の接合剤と、前記セラミック板の前記凹部内に設けられたヒータと、を備え、前記第1の接合剤は、有機材料を含む第1の主剤と、無機材料を含む第1の無定形フィラーと、無機材料を含む第1の球形フィラーと、を有し、前記第1の主剤中には、前記第1の無定形フィラーと、前記第1の球形フィラーとが分散配合され、前記第1の主剤、前記第1の無定形フィラー、および前記第1の球形フィラーは、電気絶縁性材料からなり、前記第1の球形フィラーの平均直径は、全ての前記第1の無定形フィラーの短径の最大値よりも大きく、前記第1の接合剤の厚さは、前記第1の球形フィラーの平均直径と同じか、もしくは大きく、前記凹部の幅は、前記ヒータの幅より広く、前記凹部の深さは、前記ヒータの厚さより深く、前記凹部内に前記ヒータが第2の接合剤により接着され、前記ヒータの前記温調プレート側の主面と、前記温調プレートの主面との間の第1の距離が、前記セラミック板の前記主面と、前記温調プレートの主面と、の間の第2の距離よりも長いことを特徴とする。
ヒータが形成されたセラミック板と、温調プレートとを対向させて、それぞれを第1の接合剤で接着して一体化することで、ヒータ周囲の電気絶縁性を確保することができる。
また、第1の球形フィラーおよび第1の無定形フィラーは、無機材料のため、それぞれの大きさ(例えば、径)を制御し易い。このため、第1の接合剤の第1の主剤との混合分散が容易になる。第1の接合剤の第1の主剤、第1の無定形フィラー、および第1の球形フィラーは電気絶縁性材料であるため、電極周囲の電気絶縁性が確保できる。
さらに、第1の球形フィラーの平均直径は、全ての第1の無定形フィラーの短径の最大値よりも大きい。このため、第1の球形フィラーによって第1の接合剤の厚さを第1の球形フィラーの平均直径と同じか、もしくは平均直径よりも大きく制御することができる。これにより、第1の接合剤のホットプレス硬化時には、無定形フィラーによってセラミック板に局部的な応力が印加されず、セラミック板のクラック発生を防止することができる。
また、ヒータの温調プレート側の主面と、温調プレートの主面との間の第1の距離が、セラミック板の凹部間のセラミック板の主面と、温調プレートの主面との間の第2の距離よりも長いので、球形フィラーによってヒータにホットプレス硬化時の圧力が伝導し難くなる。このため、ホットプレス硬化時の圧力がヒータを介し、凹部内の薄厚のセラミック板に伝導することもなく、セラミック板のクラック発生が防止される。また、ヒータの上下には、第1の接合剤と第2の接合剤が存在するので、ヒータが急速に伸縮しても、セラミック板には、ヒータによる応力が伝わり難い。その結果、セラミック板の割れ発生が抑制される。
第2の発明は、第1の発明において、前記第1の球形フィラーの平均直径は、前記無定形フィラーの短径の最大値よりも10μm以上大きいことを特徴とする。
第1の球形フィラーの平均直径を第1の無定形フィラーの短径の最大値よりも10μm以上大きくすると、第1の接合剤をホットプレス硬化するときに、第1の接合剤の厚さを第1の無定形フィラーの大きさではなく、第1の球形フィラーの直径で制御することができる。すなわち、ホットプレス硬化時において、第1の無定形フィラーによって、セラミック板に局所的な応力が印加され難くなる。これにより、セラミック板のクラック発生を防止することができる。
また、第1の接合剤の上下に位置するセラミック板の平面度、厚みのばらつきが10μm以下(例えば、5μm)である場合、第1の球形フィラーの平均直径を第1の無定形フィラーの短径の最大値よりも10μm以上にするここで、セラミック板の表面凹凸、厚みのばらつきを第1の接合剤によって吸収(緩和)することができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第1の球形フィラーの体積濃度(vol%)は、前記第1の無定形フィラーを含有させた前記第1の接合剤の体積に対して、0.025vol%より大きく、42.0vol%未満であることを特徴とする。
第1の球形フィラーの体積濃度(vol%)を、第1の無定形フィラーを含有させた第1の接合剤の体積の0.025vol%より大きくすると、第1の球形フィラーの第1の接合剤内での分散が良好になる。すなわち、第1の球形フィラーを第1の接合剤内で満遍なく行き渡らせることができる。これにより、第1の接合剤の厚みは、第1の球形フィラー平均直径と同じか、もしくは、第1の球形フィラー平均直径よりも厚くなる。このため、第1の接合剤をホットプレス硬化するときに、第1の無定形フィラーによってセラミック板に局所的な圧力が印加され難くなる。その結果、セラミック板のクラック発生を抑制することができる。
また、その体積濃度(vol%)を42.0vol%未満とすることで、第1の球形フィラーを、第1の無定形フィラーを含有させた第1の接合剤内で充分に攪拌することができる。すなわち、体積濃度(vol%)が42.0vol%未満であれば、第1の無定形フィラーを含有させた第1の接合剤内での第1の球形フィラーの分散が均一になる。
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つにおいて、前記第1の接合剤の前記第1の主剤、および前記第2の接合剤の第2の主剤の材質は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂のいずれか1つであることを特徴とする。
第1の接合剤および第2の接合剤の主剤の材質を変えることにより、主剤を硬化させた後の主剤の特性を適宜選択することができる。例えば、硬化させた後の第1または第2の接合剤に柔軟性が要求される場合は、比較的硬度の低いシリコーン樹脂またはフッ素樹脂が用いられる。硬化させた後の第1または第2の接合剤に剛性が要求される場合、比較的硬度の高いエポキシ樹脂が用いられる。硬化させた後の第1または第2の接合剤にプラズマ耐久性が要求される場合、フッ素樹脂が用いられる。
第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれか1つにおいて、前記第1の球形フィラーおよび前記第1の無定形フィラーの熱伝導率は、前記第1の接合剤の前記第1の主剤の熱伝導率よりも高いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電チャック。
第1の接合剤の第1の主剤より第1の球形フィラーおよび第1の無定形フィラーの熱伝導率が高いため、主剤単体の接合剤よりも第1の接合剤の熱伝導率が上がり、冷却性能が向上する。
第6の発明は、第1〜第5の発明のいずれか1つにおいて、前記第1の球形フィラーの材質と前記第1の無定形フィラーの材質とが異なることを特徴とする。
第1の球形フィラーを第1の接合剤に添加する目的は、第1の接合剤の厚さの均一化を図ったり、セラミック板に印加される応力を分散するためである。第1の無定形フィラーを第1の接合剤に添加する目的は、第1の接合剤の熱伝導率の向上や、熱伝導率の均一化を図るためである。
このように、各目的に合致したより良い材質を選択することで、より高いパフォーマンスを得ることができる。
第7の発明は、第1〜第6の発明のいずれか1つにおいて、前記第1の球形フィラーの熱伝導率は、前記第1の無定形フィラーの熱伝導率よりも低いことを特徴とする。
例えば、セラミック板の主面に第1の球形フィラーが接触した場合、この接触する部分と、その他の部分との熱伝導率の差が小さくなる。これにより、セラミック板の面内温度分布の均一化を図ることができる。
第8の発明は、第1〜第7の発明のいずれか1つにおいて、前記第1の球形フィラーの熱伝導率は、前記第1の無定形フィラーと前記第1の主剤との混合物の熱伝導率と同じか、もしくは、前記混合物の熱伝導率よりも小さいことを特徴とする。
第1の球形フィラーの熱伝導率を、第1の無定形フィラーと第1の主剤の混合物の熱伝導率と同じか、もしくは小さくすることにより、第1の接合剤内の熱伝導率がより一定となり、熱伝導時の第1の接合剤内でホットスポットまたはコールドスポットといった温度の特異点の発生が抑制される。
第9の発明は、第1〜第8の発明のいずれか1つにおいて、前記第1の球形フィラーの熱伝導率は、前記第1の無定形フィラーと前記第1の主剤の混合物の熱伝導率の0.4倍以上、1.0倍以下の範囲にあることを特徴とする。
第1の球形フィラーの熱伝導率を、第1の無定形フィラーと第1の主剤との混合物の熱伝導率の0.4倍以上、1.0倍以下の範囲にすることで、より好ましく第1の接合剤内の熱伝導率をより均一にすることができる。その結果、熱伝導時の第1の接合剤内でホットスポットまたはコールドスポットといった温度の特異点の発生が抑制される。
第1の球形フィラーの熱伝導率を、第1の無定形フィラーと第1の主剤の混合物の熱伝導率の0.4倍未満とすると、第1の球形フィラーおよびその周辺の第1の接合剤の熱伝導率が低くなり、セラミック板および被吸着物である被処理基板に熱流束を与えた際、第1接合剤に特異的なホットスポットが生じる。
第1の球形フィラーの熱伝導率を、第1の無定形フィラーと第1の主剤との混合物の熱伝導率の1.0倍より大きくすると、第1の球形フィラーおよびその周辺の第1の接合剤の熱伝導率が高くなり、セラミック板および被吸着物である被処理基板に熱流束を与えた際、第1接合剤に特異的なコールドスポットが生じる。
第10の発明は、第1〜第9の発明のいずれか1つにおいて、前記第1の球形フィラーのビッカース硬度は、前記セラミック板のビッカース硬度より小さいことを特徴とする。
第1の球形フィラーによって第1の接合剤の厚さは第1の球形フィラーの平均直径と同じか、もしくは平均直径よりも大きく制御される。仮に第1の球形フィラーの中で平均直径よりも大きい個体が分散混合された場合でも、第1の球形フィラーのビッカース硬度をセラミック板のビッカース硬度より小さくすることで、第1の接合剤のホットプレス硬化時に、平均直径よりも大きい球形フィラーの個体がセラミック板よりも先に破壊される。このため、セラミック板に局部的な応力が印加されず、セラミック板のクラック発生を防止することができる。
第11の発明は、第1〜第10の発明のいずれか1つにおいて、前記ヒータの断面において、前記セラミック板の主面に対して略平行な面は、前記セラミック板の主面に対して略垂直な面よりも長く、前記凹部の幅をW1、前記凹部の深さをD、前記凹部間の前記主面の幅をW2、前記凹部の底面と、前記底面側の前記ヒータの主面との間の距離をd1、前記凹部の底面からの前記主面の高さと、前記凹部の底面からの前記ヒータの前記温調プレート側の主面の高さの差の距離をd2とした場合、W1>D、W1>W2、d1>d2の関係を満たすことを特徴とする。
以上の関係を満たすことにより、セラミック板の面内温度分布の均一性が確保される。さらに、セラミック板の急速な加熱冷却が可能になる。
例えば、ヒータの断面は略長方形になり、断面の長辺は、セラミック板の主面に対して略平行になる。これにより、ヒータからの熱を均一かつ急速にセラミック板に伝導することができる。その結果、セラミック板に載置される被処理基板を均一かつ急速に加熱することができる。
また、凹部の幅をW1、凹部の深さをD、凹部間のセラミック板の主面の幅をW2、凹部の底面と、底面側のヒータの主面との間の距離をd1、凹部の底面からのセラミック板の主面の高さと、凹部の底面からのヒータの温調プレート側の主面の高さの差の距離をd2とした場合、W1>D、W1>W2、d1>d2の関係を満たすことにより、セラミック板の面内温度分布の均一性を確保しつつ、セラミック板の急速な加熱冷却が可能になる。
仮にd1<d2とすると、d1>d2の場合よりもヒータがセラミック板側に近づく。このため、セラミック板は、ヒータの急速な伸縮の影響を受けてしまう。例えば、セラミック板にはヒータの伸縮に応じて応力が印加されて、セラミック板の割れが発生する場合もある。また、セラミック板の面内温度は、ヒータのパターン形状の影響を受けて均一性が低下する場合もある。従って、d1>d2であることが好ましい。
第12の発明は、第1〜第11の発明のいずれか1つにおいて、前記凹部の端部領域に、前記凹部の端に向けて前記凹部の深さが次第に浅くなる漸浅部が設けられていることを特徴とする。
ヒータを凹部の内部に接着する前には、凹部の内部に接着剤を塗布する。凹部の端部領域に凹部の深さが次第に浅くなる漸浅部が設けられていると、接着剤の塗布時に漸浅部に気泡が発生し難い。仮に。気泡が発生したとしても、その後のプレス接着時に容易に気泡を除去することができる。
また、ヒータを凹部の内部に接着する際には、第1の無定形フィラーのうち、大きい形状のものをプレス接着により凹部内から流出させるようにする。この際、凹部の端部領域に漸浅部が設けられていると、大きい形状の第1の無定形フィラーの流出が容易になる。その結果、ヒータとセラミック板との距離が第1の球形フィラーの平均粒径によって、より均一に制御できる。
さらに、凹部の端部領域に漸浅部が設けられていると、ヒータをプレス接着させたときに、凹部内に圧力勾配が発生し、結果としてヒータの凹部に対する位置決め(センタリング)の精度が増す。
第13の発明においては、第1〜第12の発明のいずれか1つにおいて、前記第2の接合剤は、有機材料を含む第2の主剤と、無機材料を含む第2の無定形フィラーと、無機材料を含む第2の球形フィラーと、を有し、前記第2の主剤中には、前記第2の無定形フィラーと、前記第2の球形フィラーとが分散配合され、前記第2の主剤、前記第2の無定形フィラー、および前記第2の球形フィラーは、電気絶縁性材料であり、前記第2の球形フィラーの平均直径は、全ての前記第2の無定形フィラーの短径の最大値よりも大きく、前記第2の接合剤の厚さは、前記第2の球形フィラーの平均直径と同じか、もしくは大きく、第2の球形フィラーの平均直径は、前記第1の球形フィラーの平均直径と同じか、もしくは小さいことを特徴とする。
ヒータと凹部の底面との間に設けられた第2の接合剤は、接着材であると同時に、ヒータからの熱をセラミック板に効率よく伝導する熱伝導剤である必要がある。従って、第2の接合剤に第1の接合剤と同様に、無定形フィラーを混合分散する。これにより、第2の接合剤の熱伝導率が高くなる。第2の接合剤の厚みは、第2の球形フィラーの平均直径によって制御される。また、第2の球形フィラーの平均直径を第1の球形フィラーの平均直径と同じか、もしくは小さくする。これにより、第1の接合剤よりも薄く、均一な厚さの第2の接合剤が形成される。これにより、セラミック板の面内温度分布の均一性が確保される。
第14の発明は、第13の発明において、前記第2の接合剤に含まれる第2の球形フィラーおよび前記第2の接合剤に含まれる第2の無定形フィラーの熱伝導率は、前記第2の接合剤の前記第2の主剤の熱伝導率よりも高いことを特徴とする。
第2の接合剤の第2の主剤より第2の球形フィラーおよび第2の無定形フィラーの熱伝導率が高いため、主剤単体の接合剤よりも第2の接合剤の熱伝導率が上がり、冷却性能が向上する。
第15の発明は、第13または第14の発明において、前記第2の球形フィラーの材質と前記第2の無定形フィラーの材質とが異なることを特徴とする。
第2の球形フィラーを第2の接合剤に添加する目的は、第2の接合剤の厚さの均一化を図ったり、セラミック板に印加される応力を分散したりするためである。第2の無定形フィラーを第2の接合剤に添加する目的は、第2の接合剤の熱伝導率の向上や、熱伝導率の均一化を図るためである。
このように、各目的に合致したより良い材質を選択することで、より高いパフォーマンスを得ることができる。
第16の発明は、第13〜第15の発明いずれか1つのにおいて、前記第2の球形フィラーの熱伝導率は、前記第2の無定形フィラーの熱伝導率よりも低いことを特徴とする。
例えば、セラミック板に設けられた凹部の底面に第2の球形フィラーが接触した場合、この接触する部分と、その他の部分との熱伝導率の差が小さくなる。これにより、セラミック板の面内温度分布の均一化を図ることができる。
第17の発明は、第13〜第16の発明のいずれか1つにおいて、前記第2の球形フィラーの熱伝導率は、前記第2の無定形フィラーと前記第2の主剤との混合物の熱伝導率と同じか、もしくは、前記混合物の熱伝導率よりも小さいことを特徴とする。
第2の球形フィラーの熱伝導率を、第2の無定形フィラーと第2の主剤との混合物の熱伝導率と同じか、もしくは小さくすることにより、第2の接合剤内の熱伝導率がより一定となり、熱伝導時の第2の接合剤内でホットスポットまたはコールドスポットといった温度の特異点の発生が抑制される。
第18の発明は、第13〜第17の発明のいずれか1つにおいて、前記第2の球形フィラーの熱伝導率は、前記第2の無定形フィラーと前記第2の主剤との前記混合物の熱伝導率の0.4倍以上、1.0倍以下の範囲にあることを特徴とする。
第2の球形フィラーの熱伝導率が第2の無定形フィラーと第2の主剤との混合物の熱伝導率の0.4倍以上、1.0倍以下の範囲にあることで、より好ましく第2接合剤内の熱伝導率をより均一にすることができる。その結果、熱伝導時の第2の接合剤内でホットスポットまたはコールドスポットといった温度の特異点の発生が抑制される。
第19の発明は、第1〜第18の発明のいずれか1つにおいて、前記凹部の幅W1、前記凹部間の前記主面の幅W2は、20%≦W2/(W1+W2)≦45%の関係を満たすことを特徴とする。
W2/(W1+W2)が20%未満では、ヒータの面積の増加によって、セラミック板の主面の面積が減少する。これにより、セラミック板の主面に接触する球形フィラーの数が減り、球形フィラーの平均直径による第1の接合剤の厚さの制御が難しくなる。例えば、W2/(W1+W2)が20%未満では、第1の接合剤が局部的に薄くなる場合がある。W2/(W1+W2)が45%より大きくなると、ヒータの面内密度が下がり、セラミック板の面内温度分布の均一性が低下する。20%≦W2/(W1+W2)≦45%の関係を満たせば、球形フィラーの平均直径によって、第1の接合剤の厚さが適切に制御され、セラミック板の面内温度分布が均一になる。
第20の発明は、第1〜第19の発明のいずれか1つにおいて、前記凹部の前記底面の算術平均粗さ(Ra)は、前記主面の算術平均粗さ(Ra)よりも大きく、前記凹部の前記底面の最大高さ粗さ(Rz)は、前記主面の最大高さ粗さ(Rz)よりも大きいことを特徴とする。
凹部内の底面の算術平均粗さおよび最大高さ粗さをセラミック板の主面の算術平均粗さおよび最大高さ粗さよりも大きくすることにより、アンカー効果が促進し、第2の接合剤の接着性が向上する。第2の接合剤の接着力が弱いと、ヒータがセラミック板から剥がれる場合がある。また、ヒータは加熱冷却によって急速に伸縮するため、凹部の底面とヒータとの間に、接着力の高い第2の接合剤を設ける必要がある。
例えば、凹部の底面の算術平均粗さRaは、0.5μm以上、1.5μm以下に調整され、凹部の底面の最大高さ粗さRzは、4.0μm以上、9.0μm以下に調整されている。また、セラミック板の主面の算術平均粗さRaは、0.2μm以上、0.6μm以下に調整され、セラミック板の主面の最大高さ粗さRzは、1.6μm以上、5.0μm以下に調整されている。
第21の発明は、第1〜第20の発明のいずれか1つにおいて、前記凹部の前記底面からの前記主面の高さと、前記凹部の前記底面からの前記ヒータの前記温調プレート側の前記主面の高さの差の距離d2は、d2≧10μmであることを特徴とする。
d2≧10μmであれば、ヒータは球形フィラーから圧力を受けず、セラミック板のクラック発生を抑制できる。また、ヒータの主面の平面度、厚みのばらつきが10μm以下である場合、d2≧10μmであれば、第1の接合剤によって、平面度、厚みのばらつきを吸収(緩和)することができる。
第22の発明は、第1〜第21の発明のいずれか1つにおいて、前記温調プレートの主面に、絶縁体膜を形成したことを特徴とする。
温調プレートの材質が例えば金属の場合、アルマイト処理や、溶射によって形成した無機材料膜を形成することにより、ヒータと温調プレートとの電気絶縁信頼性を確保することができる。また、絶縁膜をポーラスに形成することにより、第1の接合剤の接着強度がアンカー効果によって向上する。
さらに、温調プレートとセラミック板との間に形成された無機材料膜がバッファ材となって、温調プレートとセラミック板との熱膨張差を緩和する。また、溶射によって無機材料膜を形成した後、無機材料膜表面を研削すると、温調プレート表面よりも無機材料膜表面の平坦性が向上する。すなわち、温調プレート表面がより平坦になると、温調プレート表面に対向するセラミック板に、第1の接合剤のホットプレス硬化時に局部的な応力が印加されず、セラミック板のクラック発生を防止することができる。
本発明によれば、セラミック板のクラック発生を抑制しつつ、被処理基板の急速な加熱冷却が可能な静電チャックが実現する。
(a)は、静電チャックの要部断面模式図であり、(b)は、(a)の矢印Aで示す部分の拡大図であり、(c)は、(b)の矢印Bで示す部分の拡大図である。 セラミック板にクラック発生が生じた場合の模式図である。 凹部およびヒータの要部断面模式図である。 接合剤の断面SEM像であり、(a)は、球形フィラーおよび無定形フィラーが混合分散された接合剤の断面SEM像であり、(b)は、無定形フィラーが混合分散された接合剤の断面SEM像であり、(c)は凹部の断面SEM像である。 無定形フィラーの短径を説明する図である。 静電チャックの変形例に係る要部断面模式図である。 静電チャックの別の変形例に係る要部断面模式図である。 静電チャックの凹部周辺の断面模式図である。 静電チャックの効果の一例を説明するための図である。
以下に、具体的な実施の形態を図面を参照しつつ説明する。以下に説明する実施の形態には、上述した課題を解決するための手段の内容も含まれる。
最初に、本発明の実施の形態で使用される語句について説明する。
(セラミック板)
セラミック板とは、被処理基板が載置される静電チャックのステージである。セラミック板においては、その材質がセラミック焼結体であり、厚さが均一に設計されている。セラミック板の主面の平面度においては、所定の範囲内に設計されている。それぞれの厚さが均一、またはそれぞれの主面の平面度が確保されていれば、接合剤のホットプレス硬化時にセラミック板に局所的な応力が印加され難い。また、セラミック板と温調プレートに挟まれた接合剤の厚さを球形フィラーの平均直径によって制御できる。
セラミック板の直径は、300mm程度であり、厚さは、1〜4mm程度である。セラミック板の平面度は、20μm以下である。セラミック板の厚みのばらつきは、20μm以下である。セラミック板の平面度、厚みのばらつきに関しては、10μm以下であることがより好ましい。
セラミック板は、アルミナが99.9wt%からなり、平均結晶粒子径が3μm以下、密度が3.95g/cm以上である。上記構成とすることで、セラミック板の強度が向上し、接着時に割れにくくなる。さらに、セラミック板のプラズマ耐久性が高くなる。
(接合剤)
接合剤とは、セラミック板と温調プレート、セラミック板とヒータとを接着する接合剤である。接合剤(接着剤、接合層とも称する。)においては、加熱硬化温度が低く、硬化後の柔軟性を確保する都合上、有機材料の接合剤が好ましい。接合剤の主剤の材質は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂のいずれかである。例えば、接合剤として、比較的硬度の低いシリコーン樹脂接合剤またはフッ素系樹脂が用いられる。シリコーン樹脂接合剤の場合、2液付加型がより好ましい。2液付加型にすると、脱オキシム型や、脱アルコール型に比べて、接合剤の深部における硬化性が高く、硬化時に気体(ボイド)が発生し難い。また、2液付加型にすると、1液付加型より硬化温度が低くなる。これにより、接合剤内で発する応力がより小さくなる。なお、接合剤に高い剛性を求める場合は、エポキシ樹脂接合剤またはフッ素系樹脂樹脂が用いられる。また、接合剤に高い耐プラズマ耐久性を求める場合は、フッ素系樹脂接合剤が用いられる。このように、接合剤の主剤の材質を変えることにより、主剤を硬化させた後の主剤の特性を適宜選択することができる。
(無定形フィラー)
無定形フィラーは、接合剤の熱伝導率の増加を図るための添加材である。このため、その形状は、無定形であることが好ましい。接合剤の主剤と無定形フィラーを混合分散させた接合剤では、主剤のみの接合剤に比べ、熱伝導率が高くなる。例えば、接合剤の主剤単体では、熱伝導率が0.2(W/mK)程度であったのに対して、シリコーン主剤とアルミナ無定形フィラーを混合した場合、熱伝導率が0.8〜1.7(W/mK)まで増加する。また、接合剤の主剤への充填率を向上するため、2種類以上の平均径の無定形フィラーを混合分散させてもよい。無定形フィラーの材質は、無機材料である。具体的な材質としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、シリカ等が該当する。無定形フィラーと接合剤の主剤との親和性を高めるために、無定形フィラー表面を処理する場合もある。無定形フィラーの重量濃度は、接合剤の主剤に対し、70〜80(wt%)である。
(球形フィラー)
球形フィラーは、接合剤の厚みを制御するための添加材である。接合剤の厚さをコントロールするためは、その形状は球形であることが好ましい。球形フィラーの材質は無機材料である。但し、球形フィラーの材質と無定形フィラーの材質とは異なる。球形フィラーの材質は、例えば、ガラス等が該当する。フィラー形状が球形になると、接合剤への混合分散が容易になる。さらに、接着時において、球形フィラーと、セラミック板との間に無定形フィラーが存在しても、球形フィラーの形状が球形であるために、無定形フィラーが接合剤中で動き易くなる。球形フィラーの形状は、真球形に近く、かつ、直径の分布が狭い方が好ましい。これにより、接合剤の厚さをより正確にコントロールできる。また、無定形フィラーよりも球形フィラーの径が大きいことが、接合剤をコントロールする上でより好ましい。
球形フィラーの「球形」とは、真球状のみならず、真球状に近似した形状、すなわち、全体の90%以上の粒子が形状因子1.0〜1.4の範囲にあるものをいう。ここで、形状因子とは、顕微鏡で拡大し観察した数百個(例えば、200個)の粒子の長径と、長径に直交する短径の比の平均値より算出される。したがって、完全な球形粒子のみであれば形状因子は1.0であり、この形状因子が1.0から外れるほど非球形となる。また、ここでいう無定形とは、この形状因子1.4を超えるものをいう。
なお、球形フィラーの粒子径分布幅は、無定形フィラーの粒子径分布幅よりも狭い。すなわち、球形フィラーの粒子径のばらつきは、無定形フィラーの粒子径のばらつきよりも小さい。ここで、粒子径分布幅とは、例えば、粒子径分布の半値幅、粒子径分布の半半値幅、標準偏差等を用いて定義される。
球形フィラーを接合剤に添加する目的は、接合剤の厚さの均一化を図ったり、セラミック板に印加される応力を分散するためである。一方、無定形フィラーを接合剤に添加する目的は、接合剤の熱伝導率の増加や、熱伝導率の均一化を図るためである。このように、各目的に合致したより良い材質を選択することで、より高いパフォーマンスを得ることができる。
例えば、第1の球形フィラーの直径分布は、JIS R6002(研削砥石用研磨剤の粒度の試験方法)のふるい分け試験方法に基づき、以下のような分布になっている。
第1の球形フィラーの直径分布は、10%径および90%径が50%径の±10%以下に収まっている。ここで、90%径とは、90μmメッシュでメッシュ上に90%残留する球形フィラーの直径であり、50%径とは100μmメッシュでメッシュ上に50%残留する球形フィラーの直径であり、10%径とは110μmメッシュでメッシュ上に10%残留する球形フィラーの直径である。本実施の形態では、50%径を第1の球形フィラーのねらい値とする。
(平均直径)
平均直径とは、例えば、全ての球形フィラーの直径を足しあわせた数値を全ての球形フィラーの数で割った値である。
(短径)
短径とは、無定形フィラーの長手方向に直交する短手方向の長さである(図5参照)。
(短径の最大値)
短径の最大値とは、全ての無定形フィラーの短径のうちの最大の短径値である。
(ビッカース硬度)
第1の球形フィラーのビッカース硬度は、セラミック誘電体のビッカース硬度より小さいことが好ましい。
第1の球形フィラーによって第1の接合剤の厚さは、第1の球形フィラーの平均直径と同じか、もしくは平均直径よりも大きく制御される。仮に、第1の球形フィラーの中で平均直径よりも大きい個体が分散混合された場合でも、第1の球形フィラーのビッカース硬度をセラミック誘電体のビッカース硬度より小さくすることで、第1の接合剤のホットプレス硬化時に、平均直径よりも大きい球形フィラーの個体がセラミック誘電層よりも先に破壊される。このため、セラミック誘電体に局部的な応力が印加されず、セラミック誘電体のクラック発生を防止することができる。
ここで、ビッカース硬度の試験方法は、JIS R 1610に基づき実施した。ビッカース硬さ試験機は、JIS B 7725またはJIS B 7735に規定された機器を使用した。
(幅)
幅とは、各部材が延在する方向(長手方向)に対して直交する方向に部材を切断した断面の幅をいう。
(電極)
セラミック板の内部には、主面と平行に電極が内蔵されている。電極は、セラミック板と一体焼結で形成されている。または、2つのセラミック板によって、電極を挟む構造としてもよい。
(凹部(溝部))
凹部(溝部)とは、セラミック板の裏面側に設けられた凹状の溝である。この凹部(溝部)内にヒータが接着される。凹部は、例えば、サンドブラスト加工、エッチングによりセラミック板の主面に形成される。例えば、ヒータの厚みが50μm、第1の接合剤の厚みが50μmの場合、凹部の深さは100μm以上、好ましくは110μm以上である。また、凹部内の角のR加工寸法は、半径330μm以下が好ましい。ヒータの幅が2mmの場合、凹部の幅は、2.3mm〜2.9mmであることが好ましい。
(ヒータ)
ヒータとは、セラミック板を加熱するためのヒータである。ヒータは、薄い板状の金属である。ヒータの断面形状は、長方形または台形である。いずれの形状でも、ヒータとセラミック板との間に介在する接合剤の厚みが一定になり易い。このため、ヒータの密着力は良好になる。特に、ヒータの断面形状が台形である場合、その短辺側を凹部の底面側に配置することにより、凹部内のR加工部分とヒータの端との干渉が起こり難くなる。台形形状に関しては、台形の長辺と短辺との差が、ヒータの厚さの0.6〜1.0倍であれば、ヒータの屈曲がなく、良好な接着力を維持できる。
ヒータの厚さは、100μm以下が好ましく、50μmであればより好ましい。また、ヒータの厚さの公差(最大厚さと最小厚さとの差)は、厚さの±1.5%以下であることが好ましく、厚さの±1.0%以下であればより好ましい。これにより、ヒータからの発熱が均一化できる。
(温調プレート(温調部))
温調プレートとは、セラミック板を冷却または加熱するためのプレートである。このため、温調プレートの内部には、冷媒または温媒を流す媒体経路が設けられている。冷媒または温媒は、チラー機と配管を通じて接続されている。
温調プレートの材質は、被処理基板の処理プロセスにおいて、汚染、発塵等を起こさない材質であることが好ましい。例えば、温調プレートの材質としては、ステンレス、アルミニウム、チタン等の金属、これらの合金、金属とセラミックを分散混合させたコンポジット材料が該当する。
また、温調プレートの表面に絶縁膜を形成し、ヒータと温調プレートとの間の電気的絶縁を確保してもよい。絶縁膜としては、例えば、アルミナ溶射膜が該当する。アルミナ溶射は、加工が容易で、低コストで製造できる。温調フレートの材質がアルミニウムの場合、温調プレートの表面にアルマイト(登録商標)処理を施してもよい。アルマイトの封孔処理を行うことで、電気的絶縁の信頼性をより向上させることができる。
また、絶縁膜をポーラスに形成することにより、接合剤の接着強度がアンカー効果によって向上する。さらに、温調プレートとセラミック板との間に形成された無機材料膜がバッファ材となって、温調プレートとセラミック板との熱膨張差を緩和する。また、溶射によって無機材料膜を形成した後、無機材料膜表面を研削すると、温調プレート表面よりも無機材料膜表面の平坦性が向上する場合がある。すなわち、温調プレート表面がより平坦になると、温調プレート表面に対向するセラミック板に、第1の接合剤のホットプレス硬化時に局部的な応力が印加されず、セラミック板のクラック発生を防止することができる。
また、ヒータを内蔵させたセラミック板を温調プレートに接着し、ヒータによりセラミック板を急速加熱する場合、温調プレートよりもセラミック板の温度が急激に上がる場合もある。このため、セラミック板が急激に熱膨張する。しかしながら、温調プレート上でセラミック板が熱膨張しても、接合剤に含まれる球形フィラーの形状は球形なので、球形フィラーがいわゆる“転がり運動”をする。従って、接合剤に球形フィラーを含有させた場合は、温調プレート上でセラミック板が熱膨張しても、接合剤の厚みは変わり難い。これに対し、球形フィラーはなく、無定形フィラーのみが接合剤に含まれているとすると、セラミック板の熱膨張によって、接合剤の厚さが変化してしまう。これにより、セラミック板の面内温度分布が不均一になったり、温度制御の信頼性に悪影響を与える場合もある。従って、接合剤には球形フィラーを含有させることが好ましい。
セラミック板10のビッカース硬度は、15GPa以上である。
次に、本実施の形態に係る静電チャックの構成について説明する。上述した語句の説明と重複する内容については、適宜省略する。
図1(a)は、静電チャックの要部断面模式図であり、(b)は、(a)の矢印Aで示す部分の拡大図であり、(c)は、(b)の矢印Bで示す部分の拡大図である。
最初に、静電チャック1の概要について説明する。
静電チャック1は、セラミック板10と、セラミック板10に接合された温調プレート30と、セラミック板10と温調プレート30との間に設けられた第1の接合剤40と、
セラミック板10の凹部11内に設けられたヒータ12と、を備える。セラミック板10の凹部11は、セラミック板10の主面(下面側)に設けられている。セラミック板10の内部には、電極13が設けられている。
接合剤40は、有機材料を含む第1の主剤41と、無機材料を含む第1の無定形フィラー43と、無機材料を含む第1の球形フィラー42と、を有する。主剤41中には、無定形フィラー43と、球形フィラー42とが分散配合され、主剤41、無定形フィラー43、および球形フィラー42は、電気絶縁性材料である。球形フィラー42の平均直径は、全ての無定形フィラー43の短径の最大値(例えば、60μm)よりも大きい。接合剤40の厚さは、球形フィラー42の平均直径と同じか、もしくは大きい。凹部11の幅は、ヒータ12の幅より広く、凹部11の深さは、ヒータ12の厚さより深い。
球形フィラー42の熱伝導率は、無定形フィラー43と主剤41との混合物の熱伝導率と同じか、もしくは、この混合物の熱伝導率よりも小さい。
球形フィラー42の熱伝導率を、無定形フィラー43と主剤41の混合物の熱伝導率と同じか、もしくは小さくすることにより、接合剤40内の熱伝導率がより一定となり、熱伝導時の接合剤40内でホットスポットまたはコールドスポットといった温度の特異点の発生が抑制される。
球形フィラー42の熱伝導率は、無定形フィラー43と主剤41との混合物の熱伝導率の0.4倍以上、1.0倍以下の範囲にある。
球形フィラー42の熱伝導率を、無定形フィラー43と主剤41との混合物の熱伝導率の0.4倍以上、1.0倍以下の範囲にすることで、より好ましく接合剤40内の熱伝導率をより均一にすることができる。その結果、熱伝導時の接合剤40内でホットスポットまたはコールドスポットといった温度の特異点の発生が抑制される。
球形フィラー42の熱伝導率を、無定形フィラー43と主剤41の混合物の熱伝導率の0.4倍未満とすると、球形フィラー42およびその周辺の接合剤40の熱伝導率が低くなり、セラミック板10および被吸着物である被処理基板に熱流束を与えた際、ホットスポットが生じる。
球形フィラー42の熱伝導率を、無定形フィラー43と主剤41との混合物の熱伝導率の1.0倍より大きくすると、球形フィラー42およびその周辺の接合剤40の熱伝導率が高くなり、セラミック板10および被吸着物である被処理基板に熱流束を与えた際、コールドスポットを生じる。
球形フィラー42のビッカース硬度は、セラミック板10のビッカース硬度より小さい。球形フィラー42によって接合剤40の厚さは、球形フィラー42の平均直径と同じか、もしくは平均直径よりも大きく制御される。仮に、球形フィラー42の中で平均直径よりも大きい個体が分散混合された場合でも、球形フィラー42のビッカース硬度をセラミック板10のビッカース硬度より小さくすることで、接合剤40のホットプレス硬化時に、平均直径よりも大きい球形フィラー42の個体がセラミック板10よりも先に破壊される。このため、セラミック板10に局部的な応力が印加されず、セラミック板10のクラック発生を防止することができる。
具体的には、接合剤40の材質は、主剤41がシリコーン樹脂であり、無定形フィラー43がアルミナ粒子であり、球形フィラーがソーダ石灰ガラスである。主剤41と無定形フィラー43の混合物の熱伝導率は1.0W/mKであり、球形フィラー42の熱伝導率は、0.7W/mKである。また、球形フィラー42のビッカース硬度は、6Gpa以下である。
ここで、熱伝導率の測定方法は、球形フィラー42についてはJIS R 1611に基づき実施している。また、主剤41と無定形フィラー43の混合物については、京都エレクトロニクス社製熱伝導率計QTM−D3を用いて熱線プローブ法によって熱伝導率の測定を行っている。
凹部11内には、ヒータ12が第2の接合剤50により接着されている。接合剤50は、凹部11の底面11bと、ヒータ12との間に設けられている。接合剤50の詳細については後述する。
ヒータ12の温調プレート30側の主面12aと、温調プレート30の主面30aとの間の第1の距離は、セラミック板10の凹部11間の凸部15の頂面15aと、温調プレート30の主面30aとの間の第2の距離よりも長い。凸部15の頂面15aは、セラミック板10の温調プレート30側の主面である。以下、この実施の形態では、セラミック基板10の主面を、凸部15の頂面15aという用語を用いて説明する。
静電チャック1の構成について詳細に説明する。
セラミック板10は、体積抵抗率(20℃)が1014Ω・cm以上のクーロン型素材である。セラミック板10がクーロン型素材であるので、被処理基板の処理中に温度を変化させても、被処理基板の吸着力や、被処理基板の離脱応答性が安定する。また、その直径は、300mmであり、厚みは、1〜4mmである。セラミック板10の内部には、セラミック板10の主面に沿うように電極13が設けられている。セラミック板10は、電極13とともに一体焼結して形成される。電極13に電圧を印加すると、セラミック板10が静電気を帯びる。これにより、被処理基板をセラミック板10上に静電吸着することができる。電極13の総面積は、セラミック板10の主面の面積の70%〜80%である。電極13の厚みは、例えば、0.8μmである。
ヒータ12は、板状の金属である。ヒータ12の材質は、例えば、ステンレス鋼(SUS)である。その厚さは、50μmである。ヒータ12の幅は、2mmである。ヒータ12は、セラミック板10の凹部11の底面11bに第2の接合剤50(厚さ50μm)で接着される。
凹部11の深さは、例えば、130μmである。凹部11の幅は、例えば、2.4mmである。従って、ヒータ12の温調プレート側の主面12aは、凸部15の頂面15aよりもセラミック板10側に、30μm程度、引き込まれている。なお、凹部11の角には、R加工が施されている。凹部11内の角のR加工寸法は、半径0.27mmである。
温調プレート30は、例えば、その主成分をアルミニウム(Al:A6061)、または、アルミニウムと炭化珪素(SiC)の合金としている。さらに、温調プレート30には、ロー付け加工により内部に媒体経路30tが形成されている。媒体経路30tには、温度調節用の媒体が流通する。温調プレート30の直径は、320mmであり、厚みは40mmである。温調プレート30の主面30aには、必要に応じて絶縁膜31が形成される。絶縁膜31は、上述した溶射膜、アルマイト膜等である。
接合剤40は、主剤41と、球形フィラー42と、無定形フィラー43と、を有する。接合剤40は、真空接着、ホットプレス硬化等により、セラミック板10と、温調プレート30との間に形成される。主剤41には、例えば、球形フィラー42と、無定形フィラー43とが混合分散されている。無定形フィラー43の濃度は、接合剤40の80wt%程度である。球形フィラー42の平均直径は、およそ100μmであり、より詳細には、90%径が97.5μm、50%径が100.2μm、10%径が104.3μmである。球形フィラー42の平均直径を100μmにすることにより、全ての無定形フィラー43の短径の最大値(60μm)よりも球形フィラー42の平均直径が大きくなる。静電チャック1では、ヒータ12が設けられたセラミック板10と、温調プレート30とを対向させて、それぞれを接合剤40で接着して一体化することで、ヒータ12周囲の電気絶縁性を確保することができる。
なお、球形フィラー42の平均直径は、100μmに限らない。球形フィラー42の平均直径は、70〜100μmの範囲にあってもよい。
また、球形フィラー42および無定形フィラー43は、無機材料のため、それぞれの大きさ(例えば、径)を制御し易い。このため、接合剤40の主剤41との混合分散が容易になる。接合剤40の主剤41、無定形フィラー43、および球形フィラー42は電気絶縁性材料であるため、ヒータ12周囲の電気絶縁性が確保できる。
さらに、球形フィラー42の平均直径は、全ての無定形フィラー43の短径の最大値よりも大きい。このため、球形フィラー42によって接合剤40の厚さを球形フィラー42の平均直径と同じか、もしくは平均直径よりも大きく制御することができる。これにより、接合剤40のホットプレス硬化時には、無定形フィラー43によってセラミック板10に局部的な応力が印加されず、セラミック板10のクラック発生を防止することができる。また、ヒータ12の温調プレート30側の主面12aと、温調プレート30の主面30aとの間の第1の距離は、セラミック板10の凹部11間の凸部15の頂面15aと、温調プレート30の主面30aとの間の第2の距離よりも長い。このため、球形フィラー42によってヒータ12にホットプレス硬化時の圧力が伝導し難くなる。従って、ホットプレス硬化時の圧力がヒータ12を介し、凹部11内の薄厚のセラミック板10に伝導することもなく、セラミック板10のクラック発生が防止される。また、ヒータ12の上下には、接合剤40と接合剤50が存在するので、ヒータ12が急速に伸縮しても、セラミック板10には、ヒータ12による応力が伝わり難い。その結果、セラミック板10の割れ発生が抑制される。
また、接合剤40の厚みを100μm程度に厚くすれば、セラミック板10と温調プレート30との線膨張差が接合剤40によって吸収される。このため、セラミック板10の変形や、接合剤40の剥がれも生じ難くなる。
第1の接合剤40に混合分散されている球形フィラー42の平均直径については、以下のごとく検証されている。
まず、表1に、球形フィラー42が混合分散されず、無定形フィラー43のみを主剤41に混合分散させた場合の接合剤40の厚みを示す。測定用の試料として、No.1〜26の合計26個の試料を作製した。これらの試料から、接合剤40の厚みのばらつきを求めた。各試料は、直径が300mmのセラミック板同士を、無定形フィラー43のみを主剤41に混合分散させた接合剤40によって、ホットプレス硬化により貼り合わせたものである。
測定点は、各試料の外周部の8箇所、中間部の8箇所、中心部の1箇所の計17箇所である。これらの箇所から、それぞれの試料の最厚部の厚み、最薄部の厚み、および厚みの平均値を求めた。
表1に示すように、接合剤40の最厚部は、22〜60μmの範囲でばらついている。接合剤40の最薄部は、3〜46μmの範囲でばらついている。すなわち、無定形フィラー43の長手方向がセラミック板10の主面に対して、非平行であるとすると、無定形フィラー43の短径は、3〜60μmの範囲でばらついていると推定できる。この場合、無定形フィラー43の短径の最大値は、60μmと推定できる。
なお、無定形フィラー43の長手方向がセラミック板10の主面に対して、略垂直である場合、無定形フィラー43の長径は、3〜60μmの範囲でばらついていると推定できる。この場合、無定形フィラー43の長径の最大値は、60μmと推定できる。


実際に、次に示す(1)〜(5)の製造プロセスで静電チャックを製造すると、無定形フィラー43のみを主剤41に混合分散させた接合剤40を用いた場合には、セラミック板10にクラックの発生が見られた。
製造プロセスは、次に示す(1)〜(5)の工程を含む。
(1)まず、セラミック板10、温調プレート30を各々単独で製作する。
(2)次に、接合剤40の主剤41に無定形フィラー43を混合分散させて、さらに、球形フィラー42を混合分散させる。混合分散は、混練機で行う。
(3)次に、セラミック板10と、温調プレート30のそれぞれの接着面に、接合剤40を塗布し、真空チャンバ内にセットする。真空チャンバを真空にし、塗布した接合剤40同士を合わせ、真空接着を行なう。
(4)次に、真空接着後、ホットプレス硬化機でホットプレス硬化を行う。この工程では、接合剤40の厚さを適宜調整する。ホットプレス硬化後、オーブンで接合剤40の硬化を行う。
(5)硬貨後、セラミック板10を所定の厚さまで研削加工し、静電チャックの吸着面を形成する。例えば、セラミック板10を規定の厚さ(1mm)まで研削し、ポリッシュ加工を行う。
接合剤40の熱硬化を終えた直後においては、セラミック板10にクラックの発生は見られなかった。しかし、セラミック板10の表面を研削加工すると、クラック発生がみられた。例えば、その様子を、図2に示す。
図2は、セラミック板にクラック発生が生じた場合の模式図である。
図2(a)に示すセラミック板10は、表面研削加工後の表面模式図である。図示するように、クラック16は、セラミック板10の内部から発し、末端をセラミック板10の内部で終えている。
この原因を、図2(b)を用いて説明する。
図2(b)に示すごとく、60μm程度の大きい無定形フィラー43がセラミック板10と温調プレート30との間に介在したまま、ホットプレス硬化がなされると、無定形フィラー43がヒータ12に当接した部分に応力が集中する。この部分が始点となって、ヒータ12を介し、応力がセラミック板10に伝わり、クラック16が発生すると推定される。特に、凹部の底面11bはセラミック板10の厚みが薄くなるので、この部分には応力を与えないことが好ましい。
しかし、球形フィラー42の平均直径を、無定形フィラー43の短径の最大値(60μm)により大きくすれば(例えば、100μm)、ホットプレス硬化時には、球形フィラー42がセラミック板10の凸部15の頂面15aに接触するので、上述したクラック発生が抑制できる。
但し、図2(c)に示すごとく、ヒータ12の温調プレート30側の主面12aが凸部15の頂面15aよりも温調プレート30側に、突き出ていると、球形フィラー42は、ヒータ12に当接する。この場合も、ヒータ12を介し、応力がセラミック板10に伝わり、クラック16が発生する。
本実施の形態では、図1(c)に示すように、ヒータ12の温調プレート30側の主面12aは、凸部15の頂面15aよりもセラミック板10側に、30μm程度、引き込まれているので、球形フィラー42は、ヒータ12に圧力を与えない。
表2に、球形フィラー42および無定形フィラー43が主剤41に混合分散させた場合の接合剤40の厚み結果を示す。ここで用いた球形フィラー42の平均直径は、70μmである。
測定用の試料として、No.31〜34の合計4個の試料を作製した。これらの試料から、接合剤40の厚みのばらつきを求めた。各試料は、直径が300mmのセラミック板同士を、球形フィラー42および無定形フィラー43を主剤41に混合分散させた接合剤40によって、ホットプレス硬化により貼り合わせたものである。
測定点は、各試料の外周部の8箇所、中間部の8箇所、中心部の1箇所の計17箇所である。これらの箇所から、それぞれの試料の最厚部の厚み、最薄部の厚み、および17箇所の平均値を求めた。
表2に示すように、接合剤40の最厚部は、65〜68μmの範囲に収まった。接合剤40の最薄部は、57〜61μmの範囲に収まった。換言すれば、表2の結果は、表1の結果よりもばらつきの程度が低下している。すなわち、球形フィラー42を混合分散させると、球形フィラー42を混合分散させない場合に比べ、接合剤40の厚さの平均値、最厚部、最薄部のばらつきが小さくなることが分かった。また、接合剤40の厚さの平均値は、球形フィラーの平均直径(70μm)に近似することが分かった。なお、球形フィラー42の平均直径として、100μmのものを用いた場合も同様の効果を得た。


実際に、上述した(1)〜(5)の製造プロセスで静電チャックを製造したところ、球形フィラー42および無定形フィラー43を主剤41に混合分散させた接合剤40を用いた場合には、セラミック板10にクラックの発生が見られなかった。
このように、球形フィラー42の平均直径を、全ての無定形フィラー43の短径の最大値よりも大きくすると、球形フィラー42によって接合剤40の厚さを球形フィラー42の平均直径と同じか、もしくは平均直径よりも大きくすることができる。その結果、接合剤40のホットプレス硬化時には、無定形フィラー43によってセラミック板10に局部的な応力が印加され難くなり、セラミック板10のクラック発生を防止することができる。
また、本実施の形態では、球形フィラー42の平均直径が無定形フィラー43の短径の最大値よりも10μm以上大きく構成されている。球形フィラー42の平均直径を無定形フィラー43の短径の最大値よりも10μm以上大きくすると、接合剤40のホットプレス硬化時には、接合剤40の厚さが無定形フィラー43の大きさではなく、球形フィラー42の平均直径で制御される。これは、ホットプレス硬化時に、球形フィラー42がセラミック板10の凸部15の頂面15aに接触するからである。さらに、ヒータ12の温調プレート側の主面12aが凸部15の頂面15aよりもセラミック板10側に引き込まれているからである。
すなわち、ホットプレス硬化時において、無定形フィラー43および球形フィラー42によって、セラミック板10にヒータ12を介して局所的な応力が印加され難くなる。これにより、セラミック板10のクラック発生を防止することができる。
また、接合剤40の上下に位置するセラミック板10と温調プレート30の平面度、厚みのばらつきが10μm以下(例えば、5μm)である場合、球形フィラー42の平均直径を無定形フィラー43の短径の最大値よりも10μm以上にすることで、セラミック板10および温調プレート30の表面凹凸を接合剤40によって緩和(吸収)することができる。
また、セラミック板10の下側に温調プレート30が存在することにより、セラミック板10の剛性が増加する。また、セラミック板10を加工するときには、セラミック板10の割れ発生を防止できる。接合剤40には、球形フィラー42が分散配合されることで、均一な厚さでセラミック板10を保持固定できる。その結果、セラミック板10に加工を施しても、セラミック板10に損傷を与えない。
また、温調プレート30が金属製の場合には、温調プレート30の線膨張係数がセラミック板10の線膨張係数よりも大きくなる。温調プレート30とセラミック板10との間に、接合剤40が介在することにより、セラミック板10と温調プレート30との間の熱膨張収縮差が接合剤40内で吸収され易くなる。その結果、セラミック板10の変形や、セラミック板10と温調プレート30との剥離が生じ難くなる。
また、ヒータ12と凹部11の底面11bとの間に介在する接合剤50は、有機材料を含む第2の主剤51と、無機材料を含む第2の無定形フィラー53と、無機材料を含む第2の球形フィラー52と、を有する。主剤51中には、無定形フィラー53と、球形フィラー52とが分散配合されている。主剤51、無定形フィラー53、および球形フィラー52は、電気絶縁性材料である。球形フィラー52の平均直径は、全ての無定形フィラー53の短径の最大値よりも大きい。接合剤50の厚さは、球形フィラー52の平均直径と同じか、もしくは大きい。球形フィラー52の平均直径は、第1の球形フィラー42の平均直径と同じか、もしくは小さい。接合剤50は、真空接着、ホットプレス硬化等により、セラミック板10と、ヒータ12との間に形成される。主剤51には、例えば、球形フィラー52と、無定形フィラー53とが混合分散されている。無定形フィラー53の濃度は、接合剤50の80wt%程度である。球形フィラー52の平均直径は、およそ50μmであり、より詳細には、90%径が48.0μm、50%径が50.4μm、10%径が52.8μmである。
接合剤50は、接着材であると同時に、ヒータ12からの熱をセラミック板10に効率よく伝導する熱伝導剤としても機能する。従って、接合剤50に接合剤40と同様に、無定形フィラー53を混合分散する。これにより、接合剤50の熱伝導率が増加する。接合剤50の厚みは、球形フィラー52の平均直径によって制御される。
また、球形フィラー52および無定形フィラー53は、無機材料のため、それぞれの大きさ(例えば、径)を制御し易い。このため、接合剤50の主剤51との混合分散が容易になる。接合剤50の主剤51、無定形フィラー53、および球形フィラー52は電気絶縁性材料であるため、ヒータ12周囲の電気絶縁性が確保できる。
なお、球形フィラー52の平均直径は、50μmであり、無定形フィラー53の短径の最大値より小さいが、ヒータ12を凹部11内に接着する際に、ヒータ12を押さえながら、凹部11内に余った接合剤50をかき出す作業を行うため、接合剤50には、部分的に厚くなる部分は存在しない。
また、球形フィラー52の平均直径を球形フィラー42の平均直径と同じか、もしくは小さくする。これにより、接合剤40よりも薄く、均一な厚さの接合剤50が形成される。これにより、セラミック板10の面内温度分布の均一性が確保される。仮に、ヒータ12が直接凹部11の底面11bと接触すると、ヒータ12からの熱が接合剤50を介さずセラミック板10に伝わるため、セラミック板10の温度分布の均一性が悪くなる。また、ヒータ12の熱収縮によってセラミック板10に余分な応力を与えてしまう。すなわち、接合剤50は、バッファ剤としても機能する。
次に、セラミック板10に設けられた凹部11と、凹部11内に設けられたヒータ12の構造についてさらに詳細に説明する。
図3は、凹部およびヒータの要部断面模式図である。
ヒータ12の断面において、セラミック板10の主面に対して略平行な主面12bは、セラミック板10の主面に対して略垂直な側面12cよりも長い。すなわち、ヒータ12の断面は長方形である。本実施の形態では、凹部11の幅をW1、凹部11の深さをD、凹部11間の凸部15の幅をW2、凹部11の底面11bと、底面11b側のヒータ12の主面12bとの間の距離をd1、凹部11の底面11bからの凸部15の頂面15aの高さと、凹部11の底面11bからのヒータ12の温調プレート30側の主面12aの高さの差の距離をd2とした場合、W1>D、W1>W2、d1>d2の関係を満たしている。
以上の関係を満たすことにより、セラミック板10の面内温度分布の均一性が確保される。さらに、セラミック板10の急速な加熱冷却が可能になる。
例えば、ヒータ12の断面は長方形になり、断面の長辺(主面12b)は、セラミック板10の主面に対して略平行になる。これにより、ヒータ12からの熱を均一かつ急速にセラミック板10に伝導することができる。その結果、セラミック板10に載置される被処理基板を均一かつ急速に加熱することができる。
また、W1>D、W1>W2、d1>d2の関係を満たすことにより、セラミック板の面内温度分布の均一性を確保しつつ、セラミック板の急速な加熱冷却が可能になる。
仮に、W1<Dであるとすると、凸部15が長くなり、セラミック板10の凸部15の熱抵抗が増加する。このため、セラミック板10の面内温度分布が悪くなる。従って、W1>Dであることが好ましい。
また、仮にW1<W2であるとすると、ヒータ12の面内密度が低下する。このため、セラミック板10の面内温度分布が悪くなる。従って、W1>W2であることが好ましい。
また、仮にd1<d2であるとすると、d1>d2の場合よりもヒータ12がセラミック板10側に近づく。このため、セラミック板10は、ヒータ12の急速な伸縮の影響を受けてしまう。例えば、セラミック板10にはヒータ12の伸縮に応じて応力が印加されて、セラミック板の割れが発生する場合もある。また、セラミック板10の面内温度は、ヒータ12のパターン形状の影響を受けて均一性が低下する場合もある。従って、d1>d2であることが好ましい。
また、本実施の形態では、d2≧10μmとしている。d2≧10μmであれば、ヒータ12は球形フィラー42から圧力を受けず、セラミック板10のクラック発生を抑制できる。また、ヒータ12の主面の平面度、厚みのばらつきが10μm以下である場合、d2≧10μmであれば、接合剤40によって、ヒータ12の平面度、厚みのばらつきを吸収(緩和)することができる。
例えば、表3は、d2を変化させた場合のセラミック板10のクラック発生有無を説明するものである。d2の値がマイナスの場合は、ヒータ12の温調プレート30側の主面12aが凸部15の頂面15aよりも温調プレート30側に突き出ていることを意味する。また、d2の値がプラスの場合は、ヒータ12の温調プレート30側の主面12aが凸部15の頂面15aよりもセラミック板10側に、引き込まれていることを意味する。d2が−10μm〜0μmでは、クラックが発生したが、10〜30μmではクラックが発生しないことが分かった。


本実施の形態では、凹部11の幅W1、凹部11間の凸部15の幅W2は、20%≦W2/(W1+W2)≦45%の関係を満たしている。
W2/(W1+W2)が20%未満では、ヒータ12の面積の増加によって、凸部15の頂面15aの面積が減少する。これにより、凸部15の頂面15aに接触する球形フィラー42の数が減り、球形フィラー42の平均直径によって接合剤40の厚さの制御が難しくなる。例えば、W2/(W1+W2)が20%未満では、接合剤40が局部的に薄くなる場合がある。
W2/(W1+W2)が45%より大きくなると、ヒータ12の面内密度が下がり、セラミック板10の面内温度分布の均一性が低下する。
20%≦W2/(W1+W2)≦45%の関係を満たせば、球形フィラー42の平均直径によって、接合剤40の厚さが適切に制御され、セラミック板10の面内温度分布が均一になる。
例えば、表4は、W1とW2との変化させた場合の接合剤40の厚さばらつき、面内温度の均一性を示すものである。


この試験では、W1を2.6mmとし、凸部15の幅W2を0.5mm、1.0mm、2.6mmとした。W2/(W1+W2)の値が16.1%の場合、面内温度の均一性は良好だが、接合剤40の厚みばらつきが不良になる。逆に、50.0%の場合、接合剤40の厚みばらつきは良好だが、面内温度の均一性が不良になる。従って、20%≦W2/(W1+W2)≦45%であることが好ましい。
また、凹部11の底面11bの算術平均粗さ(Ra)は、凸部15の頂面15aの算術平均粗さ(Ra)よりも大きく、凹部11の底面11bの最大高さ粗さ(Rz)は、凸部15の頂面15aの最大高さ粗さ(Rz)よりも大きい。表面粗さの定義は、JIS B0601:2001に準拠する。
凹部11の底面11bの算術平均粗さおよび最大高さ粗さを凸部15の頂面15aの算術平均粗さおよび最大高さ粗さよりも大きくすることにより、アンカー効果が促進し、接合剤50の接着性が向上する。接合剤50の接着力が弱いと、ヒータ12がセラミック板10から剥がれる場合がある。また、ヒータ12は加熱冷却によって急速に伸縮する。このため、凹部11の底面11bとヒータ12との間に、接着力の高い接合剤50があれば、ヒータ12の剥がれが抑制される。
例えば、表5は、Ra、Rzとヒータ12の接着保持可否の関係を示すものである。


表5から、凹部11の底面11bの算術平均粗さRaは、0.5μm以上、1.5μm以下に調整され、凹部11の底面11bの最大高さ粗さRzは、4.0μm以上、9.0μm以下に調整されれば、ヒータ12の接着保持力は良好になる。また、凸部15の頂面15aの算術平均粗さRaは、0.2μm以上、0.6μm以下に調整され、凸部15の頂面15aの最大高さ粗さRzは、1.6μm以上、5.0μm以下に調整されれば、ヒータ12の接着保持力は良好になる。
凹部11の角は、R加工が施されており、R加工寸法は、凹部11の深さDの3倍以下である。幅W1は、ヒータ12の幅を幅h1としたときに、「h1+0.3mm」以上で、「h1+0.9mm」以下である。幅W1とh1とが(h1+0.3mm)≦W1≦(h1+0.9mm)の関係を満たせば、ヒータ12が凹部11から浮き上ることはなく、ヒータ12が凹部11内で確実に固定されて、正確に位置決めされる。
また、凹部11内にヒータ12を接合剤50によって接着した際、凹部11と、ヒータ12との間のクリアランスは、接合剤50に含まれる無定形フィラー53が除去可能な寸法および形状になっている。凹部11の角にR加工が施されているので、角を基点としたクラック発生が防止できる。
例えば、表6に、ヒータ12の幅h1およびクリアランスと、ヒータ浮き上り発生の有無、溝内のヒータ位置決めの関係を示す。


この場合の凹部11の角のR加工の半径は0.27mmであり、ヒータ12の幅h1は、2mmである。凹部11の幅W1がヒータ12の幅を幅h1としたときに、h1+0.3mm以上で、h1+0.9mm以下であれば、ヒータ12の凹部11の底面11bからの浮き上りがなく、凹部11内でヒータ12が確実に位置決めされる。
次に、球形フィラー42の接合剤40中の配合量の確認を行ったので、以下に説明する。接合剤40には、予め80wt%の無定形フィラー43が含有している。
表7に、球形フィラー42の配合量試験結果を示す。この試験においては、無定形フィラー43を含有させた接合剤40中に、球形フィラー42が混合分散可能になる体積濃度の確認を行った。
まず、球形フィラー42の体積濃度が0.020vol%以下になると、接合剤40の厚みが薄くなり、球形フィラー42またはセラミック板10にクラックが発生した。この要因は、球形フィラー42や、球形フィラー42に当接するセラミック板10にホットプレス硬化時のプレス圧が局所的に集中したためと推定される。逆に、球形フィラー42の体積濃度が0.020vol%より大きくなると、球形フィラー42の接合剤40内での分散が良好になる。すなわち、球形フィラー42が接合剤40内で満遍なく行き渡り、ホットプレス硬化時に、無定形フィラー43によってセラミック板10に局所的な圧力が印加され難くなる。このため、セラミック板10のクラック発生が抑制される。
また、球形フィラー42の体積濃度が46.385vol%以上になると、球形フィラー42が接合剤40中に、充分に分散しないことが分かった。球形フィラー42の体積濃度(vol%)が42.0vol%未満であれば、無定形フィラー43を含有させた接合剤40内での球形フィラー42の分散が均一になる。
このように、球形フィラー42の体積濃度は、無定形フィラー43を含有させた接合剤40に対して、0.025vol%より大きく、42.0vol%未満であることが好ましい。


図4は、接合剤の断面SEM像であり、(a)は、球形フィラーおよび無定形フィラーが混合分散された接合剤の断面SEM像であり、(b)は、無定形フィラーが混合分散された接合剤の断面SEM像であり、(c)は凹部の断面SEM像である。断面SEM像の視野は、800倍である。
図4(a)に示す接合剤40においては、球形フィラー42および無定形フィラー43が主剤41内に混合分散されている。接合剤40の上下には、セラミック板10、温調プレート30が観察される。このSEM像では、球形フィラー42は、セラミック板10の下面と、温調プレート30の上面に到達していないが、これは、球形フィラー42が最大径より手前側(あるいは奥側)で切断されたためである。球形フィラー42の径は、およそ70μmである。
図4(b)に示す接合剤40には、球形フィラー42が分散されていない。すなわち、セラミック板10と温調プレート30との間に、主剤41と、無定形フィラー43のみが観察される。断面SEM像から、無定形フィラー43の短径の最大値を測定した結果を表8に示す。


表8から、無定形フィラー43の短径の最大値は、9.73μm〜26.73μmの範囲でばらついている。球形フィラー42の平均直径は、70μmなので、球形フィラーの平均直径は、全ての無定形フィラー43の短径の最大値よりも大きいことが分かる。
また、図4(c)に示す凹部11の断面から、凹部11の深さは、100μmで、角17のR加工の半径がおよそ0.27mmであることが分かる。
なお、図5は、無定形フィラーの短径を説明する図である。
無定形フィラー43の短径とは、無定形フィラー43の長手方向(矢印C)に直交する短手方向の長さである。例えば、図中のd1、d2、d3等が該当する。短径の最大値とは、複数ある全ての無定形フィラー43の短径のうちの最大の短径値をいう。
図6は、静電チャックの変形例に係る要部断面模式図である。この図は、図1(b)に対応している。
静電チャック2においては、セラミック板70、71は、体積抵抗率(20℃)が1014Ω・cm以上のクーロン型素材である。セラミック板70、71がクーロン型素材であるので、被処理基板の処理中に温度を変化させても、被処理基板の吸着力や、被処理基板の離脱応答性が安定する。また、その直径は、300mmであり、厚みは、1〜4mmである。
静電チャック2においては、電極72がセラミック板70、71の間に挟まれている。電極72は、セラミック板70、71の主面に沿うように設けられている。電極72に電圧を印加すると、セラミック板70、71が静電気を帯びる。これにより、被処理基板をセラミック板70上に静電吸着することができる。
このほかの構造は、静電チャック1と同じである。すなわち、静電チャック2においても、静電チャック1と同様の効果を得る。
そのほか、本実施の形態においては、球形フィラー42および無定形フィラー43の熱伝導率は、接合剤40の主剤41の熱伝導率よりも高い。
接合剤40の主剤41より球形フィラー42および無定形フィラー43の熱伝導率が高いため、主剤単体の接合剤よりも接合剤40の熱伝導率が上がり、冷却性能が向上する。
球形フィラー42の材質と無定形フィラー43の材質とが異なる。
球形フィラー42を接合剤40に添加する目的は、接合剤40の厚さの均一化を図ったり、セラミック板10に印加される応力を分散するためである。無定形フィラー43を接合剤40に添加する目的は、接合剤40の熱伝導率の増加や、熱伝導率の均一化を図るためである。このように、各目的に合致したより良い材質を選択することで、より高いパフォーマンスを得ることができる。
球形フィラー42の熱伝導率は、無定形フィラー43の熱伝導率よりも低い。
例えば、セラミック板10の凸部15に球形フィラー42が接触した場合、この接触する部分と、その他の部分との熱伝導率の差が小さくなる。これにより、セラミック板10の面内温度分布の均一化を図ることができる。
接合剤50に含まれる球形フィラー52および接合剤50に含まれる無定形フィラー53の熱伝導率は、接合剤50の主剤51の熱伝導率よりも高い。
接合剤50の主剤51より球形フィラー52および無定形フィラー53の熱伝導率が高いため、主剤単体の接合剤よりも接合剤50の熱伝導率が上がり、冷却性能が向上する。
球形フィラー52の材質と無定形フィラー53の材質とが異なる。
球形フィラー52を接合剤50に添加する目的は、接合剤50の厚さの均一化を図ったり、セラミック板10に印加される応力を分散するためである。無定形フィラー53を接合剤50に添加する目的は、接合剤50の熱伝導率の増加や、熱伝導率の均一化を図るためである。このように、各目的に合致したより良い材質を選択することで、より高いパフォーマンスを得ることができる。
球形フィラー52の熱伝導率は、無定形フィラー53の熱伝導率よりも低い。例えば、セラミック板10に設けられた凹部11の底面11bに球形フィラー52が接触した場合、この接触する部分と、その他の部分との熱伝導率の差が小さくなる。これにより、セラミック板10の面内温度分布の均一化を図ることができる。
また、球形フィラー52の熱伝導率は、無定形フィラー53と主剤51との混合物の熱伝導率と同じか、もしくは、前記混合物の熱伝導率よりも小さい。
球形フィラー52の熱伝導率を、無定形フィラー53と主剤51との混合物の熱伝導率と同じか、もしくは小さくすることにより、接合剤50内の熱伝導率がより一定となり、熱伝導時の接合剤50内でホットスポットまたはコールドスポットといった温度の特異点の発生が抑制される。
球形フィラー52の熱伝導率は、無定形フィラー53と主剤51との混合物の熱伝導率の0.4倍以上、1.0倍以下の範囲にある。
球形フィラー52の熱伝導率が無定形フィラー53と主剤51との混合物の熱伝導率の0.4倍以上、1.0倍以下の範囲にあることで、より好ましく、接合剤50内の熱伝導率をより均一にすることができる。その結果、熱伝導時の接合剤50内でホットスポットまたはコールドスポットといった温度の特異点の発生が抑制される。
図7は、静電チャックの別の変形例に係る要部断面模式図である。
静電チャック3においては、凹部11の端部領域に、凹部11の端に向けて凹部11の深さが次第に浅くなる漸浅部11rが設けられている。
ヒータ12を凹部11の内部に接着する前には、凹部11の内部に接着剤を塗布する。凹部11の端部領域に凹部11の端に向けて凹部11の深さが次第に浅くなる漸浅部11rが設けられていると、接着剤の塗布時に漸浅部11rに気泡が発生し難い。仮に。気泡が発生したとしても、漸浅部11rが設けられていれば、その後のプレス接着時に容易に気泡を除去することができる。
また、ヒータ12を凹部11の内部に接着する際には、第1の無定形フィラー42のうち、大きい形状のものをプレス接着により凹部11内から流出させるようにする。この際、凹部11の端部領域に漸浅部11rが設けられていると、大きい形状の第1の無定形フィラー42の流出が容易になる。その結果、ヒータ12とセラミック板10との距離が第1の球形フィラー42の平均粒径によって、より均一に制御できる。
さらに、凹部11の端部領域に漸浅部11rが設けられていると、ヒータ12をプレス接着させたときに、凹部11内に圧力勾配が発生し、結果としてヒータ12の凹部11に対する位置決め(センタリング)の精度が増す。
例えば、図7には、漸減部11rの一例として、連続的な曲面が示されている。凹部11の内部において、側面11wと底面11bとは、連続的な曲面で交わっている。このような連続的な曲面は、例えば、サンドブラストによって形成することができる。一例として、この曲面の形状がR(アール)形状に近似できる場合には、Rの寸法(R寸法)は、凹部11の深さd4の0.5倍以上であり、凹部11の幅d5の0.5倍以下であることが望ましい。
R寸法がd4の0.5倍未満では、凹部11の側面11wと底面11bとの交点が角状に近い形状になる。このため、接着剤の塗布時に凹部11内に気泡が発生し易く、発生した気泡が凹部11内に残り易くなる。さらに、電極13と凹部11との間において電界が集中する特異点が発生し易く、耐電圧破壊が起きる場合もある。
一方、R寸法が凹部11の幅d5の0.5倍よりも大きくなると、ヒータ12の下部まで曲面が回り込んでしまい、ヒータ12と凹部11の底面11bとの距離が一定に保てなくなる。また、ヒータ12の凹部11内での位置決めの精度が低下していしまう。
また、R寸法については、以下の図6に示す寸法を上限としてもよい。
図8は、静電チャックの凹部周辺の断面模式図である。
漸浅部11rの曲面が半径rの円弧であると仮定したときに、凹部11の下端縁11eと、凹部11の底面11bの中心11cと、に接する円弧の半径rをR寸法の上限値とする。
半径rの上限値は、(1/2)・d4+d5/(8・d4)で表されるので、
(R寸法の上限値)≦(1/2)・d4+d5/(8・d4)
としてもよい。
また、図9は、静電チャックの効果の一例を説明するための図である。図9(a)には、静電チャック1の断面模式図が示され、図9(b)には、比較例が示されている。
球形フィラー42は球状であるため、大きな無定形フィラー43がセラミック板10と球形フィラー42との間に存在したとしても、球形フィラー42がセラミック板10側に押圧される際に、無定形フィラー43が球形フィラー42の曲面によって滑り易くなっている。このため、静電チャック1においては、無定形フィラー43が球形フィラー42とセラミック板10との間に残り難くなる。
これに対し、比較例では、円筒状フィラー420を用いたために、無定形フィラー43が円筒状フィラー42とセラミック板10との間に挟まれ易い。このため、比較例においては、無定形フィラー43が円筒状フィラー420とセラミック板10との間に残り易い。従って、本実施の形態のごとく、球形フィラー42を用いることが望ましい。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせたり、複合したりすることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
1、2 静電チャック
10 セラミック板
11 凹部
11b 底面
12 ヒータ
12a、12b 主面
12c 側面
13 電極
15 凸部
15a 頂面
16 クラック
17 角
70、71 セラミック板
30 温調プレート
30a 主面
30t 媒体経路
31 絶縁膜
40、50 接合剤
41、51 主剤
42、52 球形フィラー
43、53 無定形フィラー
72 電極
A、B、C 矢印

Claims (22)

  1. 主面に凹部が設けられ、内部に電極が設けられたセラミック板と、
    前記セラミック板の前記主面に接合された温調プレートと、
    前記セラミック板と前記温調プレートとの間に設けられた第1の接合剤と、
    前記セラミック板の前記凹部内に設けられたヒータと、
    を備え、
    前記第1の接合剤は、有機材料を含む第1の主剤と、無機材料を含む第1の無定形フィラーと、無機材料を含む第1の球形フィラーと、を有し、
    前記第1の主剤中には、前記第1の無定形フィラーと、前記第1の球形フィラーと、が分散配合され、
    前記第1の主剤、前記第1の無定形フィラー、および前記第1の球形フィラーは、電気絶縁性材料からなり、
    前記第1の球形フィラーの平均直径は、全ての前記第1の無定形フィラーの短径の最大値よりも大きく、
    前記第1の接合剤の厚さは、前記第1の球形フィラーの平均直径と同じか、もしくは大きく、
    前記凹部の幅は、前記ヒータの幅より広く、前記凹部の深さは、前記ヒータの厚さより深く、
    前記ヒータは、第2の接合剤により前記凹部内に接着され、
    前記ヒータの前記温調プレート側の主面と、前記温調プレートの主面と、の間の第1の距離は、前記セラミック板の前記凹部間の前記主面と、前記温調プレートの主面と、の間の第2の距離よりも長いことを特徴とする静電チャック。
  2. 前記第1の球形フィラーの平均直径は、前記無定形フィラーの短径の最大値よりも10μm以上大きいことを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
  3. 前記第1の球形フィラーの体積濃度(vol%)は、前記第1の無定形フィラーを含有させた前記第1の接合剤の体積に対して、0.025vol%より大きく、42.0vol%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電チャック。
  4. 前記第1の接合剤の前記第1の主剤、および前記第2の接合剤の第2の主剤の材質は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂のいずれか1つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の静電チャック。
  5. 前記第1の球形フィラーおよび前記第1の無定形フィラーの熱伝導率は、前記第1の接合剤の前記第1の主剤の熱伝導率よりも高いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電チャック。
  6. 前記第1の球形フィラーの材質と前記第1の無定形フィラーの材質とが異なることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の静電チャック。
  7. 前記第1の球形フィラーの熱伝導率は、前記第1の無定形フィラーの熱伝導率よりも低いことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の静電チャック。
  8. 前記第1の球形フィラーの熱伝導率は、前記第1の無定形フィラーと前記第1の主剤との混合物の熱伝導率と同じか、もしくは、前記混合物の熱伝導率よりも小さいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の静電チャック。
  9. 前記第1の球形フィラーの熱伝導率は、前記第1の無定形フィラーと前記第1の主剤の混合物の熱伝導率の0.4倍以上、1.0倍以下の範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の静電チャック。
  10. 前記第1の球形フィラーのビッカース硬度は、前記セラミック板のビッカース硬度より小さいことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の静電チャック。
  11. 前記ヒータの断面において、前記セラミック板の主面に対して略平行な面は、前記セラミック板の主面に対して略垂直な面よりも長く、
    前記凹部の幅をW1、
    前記凹部の深さをD、
    前記凹部間の前記主面の幅をW2、
    前記凹部の底面と、前記底面側の前記ヒータの主面との間の距離をd1、
    前記凹部の底面からの前記主面の高さと、前記凹部の底面からの前記ヒータの前記温調プレート側の主面の高さの差の距離をd2とした場合、
    W1>D、W1>W2、d1>d2
    の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の静電チャック。
  12. 前記凹部の端部領域に、前記凹部の端に向けて前記凹部の深さが次第に浅くなる漸浅部が設けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の静電チャック。
  13. 前記第2の接合剤は、有機材料を含む第2の主剤と、無機材料を含む第2の無定形フィラーと、無機材料を含む第2の球形フィラーと、を有し、
    前記第2の主剤中には、前記第2の無定形フィラーと、前記第2の球形フィラーとが分散配合され、
    前記第2の主剤、前記第2の無定形フィラー、および前記第2の球形フィラーは、電気絶縁性材料であり、
    前記第2の球形フィラーの平均直径は、全ての前記第2の無定形フィラーの短径の最大値よりも大きく、
    前記第2の接合剤の厚さは、前記第2の球形フィラーの平均直径と同じか、もしくは大きく、
    第2の球形フィラーの平均直径は、前記第1の球形フィラーの平均直径と同じか、または小さいことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の静電チャック。
  14. 前記第2の接合剤に含まれる第2の球形フィラーおよび前記第2の接合剤に含まれる第2の無定形フィラーの熱伝導率は、前記第2の接合剤の前記第2の主剤の熱伝導率よりも高いことを特徴とする請求項13記載の静電チャック。
  15. 前記第2の球形フィラーの材質と前記第2の無定形フィラーの材質とが異なることを特徴とする請求項13または14に記載の静電チャック。
  16. 前記第2の球形フィラーの熱伝導率は、前記第2の無定形フィラーの熱伝導率よりも低いことを特徴とする請求項13〜15のいずれか1つに記載の静電チャック。
  17. 前記第2の球形フィラーの熱伝導率は、前記第2の無定形フィラーと前記第2の主剤との混合物の熱伝導率と同じか、もしくは、前記混合物の熱伝導率よりも小さいことを特徴とする請求項13〜16のいずれか1つに記載の静電チャック。
  18. 前記第2の球形フィラーの熱伝導率は、前記第2の無定形フィラーと前記第2の主剤との前記混合物の熱伝導率の0.4倍以上、1.0倍以下の範囲にあることを特徴とする請求項13〜17のいずれか1つに記載の静電チャック。
  19. 前記凹部の幅W1、前記凹部間の前記主面の幅W2は、
    20%≦W2/(W1+W2)≦45%
    の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜18のいずれか1つに記載の静電チャック。
  20. 前記凹部の前記底面の算術平均粗さ(Ra)は、前記主面の算術平均粗さ(Ra)よりも大きく、前記凹部の前記底面の最大高さ粗さ(Rz)は、前記主面の最大高さ粗さ(Rz)よりも大きいことを特徴とする請求項1〜19のいずれか1つに記載の静電チャック。
  21. 前記凹部の前記底面からの前記主面の高さと、前記凹部の前記底面からの前記ヒータの前記温調プレート側の前記主面の高さの差の距離d2は、d2≧10μmであることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1つに記載の静電チャック。
  22. 前記温調プレートの主面に、絶縁体膜を形成したことを特徴とする請求項1〜21のいずれか1つに記載の静電チャック。
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