JP2011203636A - 複屈折パターンを有する物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複屈折性が異なる領域をパターン状に2つ以上有するパターン化光学異方性層を含む物品であって、前記パターン化光学異方性層における複屈折性が同一の領域はそれぞれ、複数の描画単位からなり、複屈折性が略均一である強度階調用画素および複屈折性が異なる2種以上の前記描画単位を含む面積階調用画素を少なくとも含む物品。
【選択図】なし
Description
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
前記パターン化光学異方性層における複屈折性が同一の領域はそれぞれ複数の描画単位からなり、
複屈折性が略均一である強度階調方式画素および複屈折性が異なる2種以上の前記描画単位を含む面積階調方式画素を少なくとも含む物品。
[2]前記強度階調方式画素が2つ以上の描画単位を含む[1]に記載の物品。
[3]前記面積階調方式画素として、前記の2種以上の描画単位それぞれにおける複屈折性は同一であり、かつ該画素内の前記の2種以上の描画単位の数の比が互いに異なっている画素を2種以上含む[1]または[2]に記載の物品。
[5]前記パターン化光学異方性層が少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された層である[1]〜[4]のいずれか一項に記載の物品。
[6]前記パターン化光学異方性層が下記(1)〜(3)の工程をこの順で含む方法で形成されたものである[5]に記載の物品:
(1)液晶性化合物を含む組成物からなる層を加熱または光照射する工程;
(2)該層にパターン露光を行う工程;
(3)得られた層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
[8]レーザ光の波長が300nm〜420nmである[7]に記載の物品。
[9]レーザ光のビーム径が前記描画単位の描画単位の1辺の長さの0.5倍以上3倍以下である[7]または[8]に記載の物品。
[10]レーザ光のビーム径が5〜30μmである[7]または[8]に記載の物品。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
複屈折パターンとは、広義には複屈折性の異なる2つ以上のドメインが2次元の面内または3次元的にパターニングされたものである。特に2次元の面内において、複屈折性は面内で屈折率が最大となる遅相軸の方向と、ドメイン内のレターデーションの大きさの2つのパラメータにより定義される。例えば液晶性化合物による位相差フィルムなどにおける面内の配向欠陥や厚み方向の液晶の傾斜分布も広義には複屈折パターンと言えるが、狭義にはあらかじめ決めたデザインなどを基に、意図して複屈折性を制御してパターン化したものを複屈折パターンと定義することが望ましい。本発明における複屈折パターンは、遅相軸の方向は一定であり、レターデーションの大きさの異なるドメインによって形成されたパターンでもよく、遅相軸の方向が異なるドメインによって形成されたパターンでもよく、遅相軸の方向及びレターデーションの大きさの双方が異なるドメインによって形成されたパターンでもよい。この中で、本発明における複屈折パターンは、遅相軸の方向は一定であり、レターデーションの大きさの異なるドメインによって形成されたパターンであることが好ましい。複屈折パターンは特に記載しない限り、複数層有していてもよく、複数層のパターンの境界は一致していても異なっていてもよい。
本明細書において、「複屈折パターンを有する物品」とは、複屈折性の異なる領域を2つ以上有する物品を意味する。複屈折パターンを有する物品は複屈折性の異なる領域を3つ以上有することがさらに好ましい。複屈折性が同一である個々の領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。
図では複屈折性が異なる領域を101A、101B、101Cとして例示する。
以下に、複屈折パターン形成法の一例である、複屈折パターン作製材料を用いる方法について説明する。複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経ることで複屈折パターンを有する物品を作成することができる材料を指す。複屈折パターンの形成法については、特に記載がない限りこの方法に限定されない。
光学異方性層は複屈折性を有する層であり、一軸または二軸延伸されたポリマー層や配向した液晶性化合物を固定化した層、配向が揃った有機または無機単結晶層などにより形成されていればよい。光学異方性層としては、フォトマスクによる露光あるいはデジタル露光などのパターン露光や、ホットスタンプやサーマルヘッド、赤外線レーザ露光などのパターン加熱、針やペンによって機械的に加圧またはせん断を加える触針描画、反応性化合物の印刷などにより、光学異方性を任意に制御する機能を有することができる層が好ましい。そのような機能を有する光学異方性層は、後述の方法などにより、パターン化光学異方性層を得ることが容易であるからである。パターン形成のためには、フォトマスクによる露光あるいは走査露光などのパターン露光を用いることが好ましい。該パターニング工程に加えて必要に応じて熱や薬液による漂白、現像などと組み合わせてパターンを形成することもできる。この場合支持体の制約が少ないことから熱による漂白、現像が好ましい。図9(b)に示す複屈折パターン作製材料は、自己支持性を有する光学異方性層12に反射層13を付した例である。
図11(a)〜(c)に示す複屈折パターン作製材料は配向層14を有する例である。
図12(a)〜(d)は粘着層を有する複屈折パターン作製材料の例である。
図13(a)〜(d)は印刷層を有する複屈折パターン作製材料の例である。
図15(a)〜(d)は添加剤層を有する複屈折パターン作製材料の例である。
複屈折パターン作製材料における光学異方性層は、レターデーションを測定したときにレターデーションが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有する層である。
ポリマーを含む前記光学異方性層は、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる点で好ましい。該光学異方性層中のポリマーは未反応の反応性基を有することが好ましい。露光により未反応の反応性基が反応してポリマー鎖の架橋が起こるが、露光条件の異なる露光によってポリマー鎖の架橋の程度が異なり、その結果としてレターデーション値が変化して複屈折パターンが形成しやすくなると考えられるためである。
他の機能性層の塗布を行う為、光学異方性層は耐溶媒性を有することが好ましい。本明細書において、「耐溶媒性を有する」とは対象の溶媒に2分間浸漬した後のレターデーションが浸漬前のレターデーションの30%から170%の範囲内に、より好ましくは50%から150%の範囲内に、最も好ましくは80%から120%の範囲内にあることを意味する。対象の溶媒としては水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルの中から、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドンの中から、最も好ましくはメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、またはこれらの混合溶媒等があげられる。
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述するポリマーを延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレターデーションを有する光学異方性層を得ることが容易であり、好ましい。
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物を用いることが好ましい。
なお、本明細書において、液晶性化合物を含む組成物から形成された層について記載されるとき、この形成された層において液晶性を有する化合物が含まれる必要はない。例えば、前記低分子液晶性化合物が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものが含まれる層であってもよい。また、液晶性化合物としては、2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。2種以上の液晶性化合物の混合物の場合、少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。
重合性モノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーを用いることができる。
そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、二種類以上を混合して使用してもよい。
エポキシ化合物としては、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体、又は全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体のいずれであってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
液晶性化合物を含有する組成物を、塗布液として、例えば支持体又は後述する配向層等の表面に塗布する場合の塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
液晶性化合物の配向の固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の架橋反応により実施することが好ましく、反応性基の重合反応により実施することがさらに好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
前記光学異方性層は、偏光照射による光配向で面内のレターデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。偏光照射は、特開2009−69793号公報の段落「0091」〜「0092」の記載、特表2005−513241号公報(国際公開WO2003/054111)の記載などを参照して行うことができる。
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有するポリマーを含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−8〜I−15)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
前記光学異方性層の形成用組成物中に、特開2009−69793号公報の段落「0098」〜「0105」に記載の、一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、特開2009−69793号公報の段落「0098」〜「0105」に記載の一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
光学異方性層はポリマーの延伸によって作製されたものでもよい。光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つ事が好ましいが、このようなポリマーを作製する際にはあらかじめ反応性基を有するポリマーを延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
上記のように複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層は互いにほぼ同等のレターデーションを有していてもよく、異なるレターデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いている2層以上の光学異方性層を用いることによって、大きなレターデーションを有するパターンを作製することができる。
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上の為のコロナ処理や、柔軟性向上の為の可塑剤添加、保存性向上の為の熱重合禁止剤添加、反応性向上の為のカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中のポリマーが未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて配向固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる添加剤層を用いる方法もあげられる。この際に浸漬させる添加剤、特には光重合開始剤の種類や量により、後に述べる複屈折パターン作製材料へのパターン露光時の各領域への露光量と最終的に得られる各領域のレターデーションとの関係を調整し、所望する材料特性に近づけることが可能である。
複屈折パターン作製材料はそれぞれ、力学的な安定性を保つ目的で支持体を有してもよい。複屈折パターン作製材料における支持体がそのまま複屈折パターンを有する物品における支持体となっていてもよく、複屈折パターンを有する物品における支持体が複屈折パターン作製材料における支持体とは別に(複屈折パターン形成時または形成後に、複屈折パターン作製材料における支持体と代わって又は追加で)設けられてもよい。支持体としては特に限定はなく、剛直なものでもフレキシブルなものでもよい。剛直な支持体としては特に限定はないが表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、アルミ板、鉄板、SUS板などの金属板、樹脂板、セラミック板、石板などが挙げられる。フレキシブルな支持体としては特に限定はないがセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。取扱いの容易さから、剛直な支持体の膜厚としては、100〜3000μmが好ましく、300〜1500μmがより好ましい。フレキシブルな支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。後述する反射層の代わりに、支持体自体が反射機能を有することもまた好ましい。
既に説明したように、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、アゾベンゼンポリマーやポリビニルシンナメートに代表される偏光照射により液晶の配向性を発現する光配向層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。配向層としてはラビングの態様ではポリビニルアルコールを含むことが好ましく、配向層の上または下の少なくともいずれか1層と架橋できることが特に好ましい。配向方向を制御する方法としては、光配向層およびマイクログルーブが好ましい。光配向層としては、ポリビニルシンナメートのように二量化によって配向性を発現するものが特に好ましく、マイクログルーブとしてはあらかじめ機械加工またはレーザ加工により作製したマスターロールのエンボス処理が特に好ましい。
複屈折パターン作製材料は、より容易に識別できる複屈折パターンの作製のために反射層を有していてもよい。反射層としては特に限定されないが、偏光解消性のないものが好ましく、例えばアルミや銀などの金属層、誘電体多層膜による反射層、光沢を有する印刷層が挙げられる。また、透過率が30〜95%、反射率が30〜95%の半透過半反射層を用いることもできる。半透過半反射層は金属層の厚みを薄くする方法が安価で製造できるので好ましい。一方、金属による半透過半反射層は吸収を有しているため、吸収なしに透過率と反射率を制御できる誘電体多層膜は光利用効率の観点から好ましい。反射層は、複屈折パターン形成後の複屈折パターンを有する物品上に形成してもよい。
複屈折パターン作製材料は、後述のパターン露光及びベーク後に作製される複屈折パターンを有する物品をさらに他の物品に貼付するための粘着層を有していてもよい。粘着層の材料は特に限定されないが、複屈折パターン作製の為のベークの工程を経てた後でも粘着性を有する材料であることが好ましい。粘着層は、複屈折パターン形成後の複屈折パターンを有する物品上に形成してもよい。
光学異方性層、所望により形成される配向層、などの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
複屈折パターン作製材料に少なくとも、パターン露光及び加熱(ベーク)をこの順に行うことにより、複屈折パターンを有する物品を作製することができる。
本明細書において、パターン露光とは、複屈折パターン作製材料の一部の領域のみが露光されるように行う露光又は2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を意味する。互いに露光条件の異なる露光には、未露光(露光しないこと)が含まれていてもよい。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画する走査露光を用いてもよいが、より精密な潜像における色表現や操作の容易性のために、走査露光を用いることが好ましい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザ等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜500mJ/cm2程度である。パターン露光の解像度を1200dpi以上にすることにより、マイクロ印刷潜像が形成でき、好ましい。解像度を高めるためには、パターン露光時にパターン化光学異方性層が固体であり、尚且つ厚みが10μm以下であることが必要であり、好ましい。厚み10μm以下で実現するためにはパターン化光学異方性層が重合性液晶化合物を含む層を配向固定化したものであることが好ましく、重合性液晶化合物が架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有することが特に好ましい。
複屈折パターン作製材料の2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を行う際、「2つ以上の領域」は互いに重なる部位を有していても有していなくてもよいが、互いに重なる部位を有していないことが好ましい。パターン露光は複数回の露光によって行われてもよく、もしくは、例えば領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。すなわち、パターン露光時に、異なる露光条件で露光された2つ以上の領域を生ずるような形で露光が行われていればよい。走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、露光領域の照射スポットを変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能であり、好ましい。
露光条件の異なる露光領域を生じる手段の1つとして、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の下で同一時間の露光を行う事で異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
走査露光は、例えば、光により所望の2次元パターンを描画面上に形成する描画装置を応用して行うことができる。
このような描画装置の代表的な例として、光ビーム発生手段から導出された光ビームを、光ビーム偏向走査手段を介して被走査体上に走査させることにより、所定の画像等を記録するように構成された画像記録装置がある。この種の画像記録装置では、画像等の記録に際して、光ビーム発生手段から導出される光ビームを画像信号に対応して変調させる(特開平7−52453号公報)。転じて光ビームの光路上に、光強度変調手段、例えば音響光学変調器(AOM)を配設し、この音響光学変調器内で回折された一次回折光の強度を、所定の画像信号に基づいて変調された駆動信号に応じて変化させ、該変調された一次回折光を被走査体上に照射するタイプの装置を用いることもできる。また、光ビーム発生手段を直接変調して、光強度を変化させてもよい。
露光ヘッドが備える空間光変調素子としては、上記のDMD以外の透過型空間光変調素子を使用することもできる。なお、空間光変調素子は、反射型および透過型のいずれでもよい。そのほかの空間光変調素子の例としては、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)タイプの空間光変調素子(SLM;Special Light Modulator)や、電気光学効果により透過光を変調する光学素子(PLZT素子)や、液晶光シャッタ(FLC)等の液晶シャッターアレイなどが挙げられる。なお、MEMSとは、IC製造プロセスを基盤としたマイクロマシニング技術によるマイクロサイズのセンサ、アクチュエータ、そして制御回路を集積化した微細システムの総称であり、MEMSタイプの空間光変調素子とは、静電気力を利用した電気機械動作により駆動される空間光変調素子を意味している。
露光ヘッドの光源としては、上記したレーザ光源の他に、ランプ等も光源として使用可能である。
パターン化光学異方性層がレターデーション(位相差)が異なる2つ以上の領域を有するものである場合、潜像が可視化した際のカラーは位相差によって変化する。位相差は、パターン露光時の露光量等の露光条件で制御されているため、例えば上記の走査露光を行う際に、露光条件を変化させると色調を変化させることができるが、色の濃淡を表現することは困難である。本発明においては、このパターン化光学異方性層により、デジタル描画処理において従来から知られている階調表現方法を応用し、色の濃淡の表現が可能であることを見出した。
デジタル描画処理においては,その解像性と階調性が重要な要因となる。細かな解像性と,中間調を忠実に再現する階調性が文字や写真を含むあらゆる原稿に対する描画処理において望まれる。
従来において,階調性を表す方式として,特開昭54−144126号公報,特開昭56−17478号公報,特開昭57−76977号公報等に開示されているディザマトリクスを用いた面積階調法がある。2値書込方式では画素を構成するドット数をNとすると,その階調数はN段の階調が表される。
一方,多階調を実現する1ドット多値書込方式が提案されており、強度階調方式といわれる。強度階調方式は、例えば,レーザビーム書き込みにおいて,書き込み1ドットの濃度を変調するものである。書き込みのレーザダイオードの光変調方式には,主にその露光時間を変調するパルス幅変調方式と,露光強度を変調するパワー変調方式とがある。上記パルス幅変調方式としては特開昭62−49776号公報,パワー変調方式としては特開昭64−1547号公報に具体的な技術が開示されている。
上述の記録装置を用いて、画像を形成する場合、画像の入稿装置、画像記録装置、画像記録材料により、特性が異なるので、それらを補正した画像データを作成すればよい。この技術に関しては、公知の技術を使うことが可能であり、たとえば、文献「デジタルハードコピー技術」:岩本明人、小寺宏曄責任編集 共立出版 P.33 に詳しく記載されている方法を用いることができる。このうち、代表的な技術としては、ルックアップテーブル(LUT)を利用する技術が挙げられ、特開平10−39555号公報、特開平11−167633号公報等、画像処理技術として広く用いられている。
スキャナーあるいはデジタルカメラ、あるいは、コンピュータ等で作成した画像データを用意する;これを所望のLUTを参照しながら、露光機に適合した画像パターンに変化する;変換されたデータは、各描画単位に相当する光強度データとして露光部に入力される;露光機は、そのデータに基づき、指定されて光強度を指定された位置に露光する;これにより、所望の光パターンを記録材料に露光する。
後述の実施例1で用いた複屈折パターン作製材料P−1の感度特性(露光量と位相差の関係)は図19の様になる。
上述の材料を用いて、多色カラー画像形成する場合、その色表現は、たとえば、赤(R)、緑(G)、青(B)、黒(K)の色に対して、
(I)350nm<Re(R)<370nm、
(II)240nm<Re(G)<280nm;
(III)160nm<Re(B)<220nm;
(IV)120nm<Re(K)<160nm
の位相差を選ぶことができる。上記の中でRe値に幅あるのは、表現色には、官能的な要素があるからであり、より厳密には、後述で使うような、色度図上の座標を指定すれば、より一義的に決定する事ができる。また他の色に対しても同様に適宜、位相差を選択することができる。
このようにして、位相差の量に応じて、色度図上のどの点の位置の色が表示できるかが決定でき、このデータをルックアップテーブル(LUT)とすることができる。作製したLUT用いて、表現したい色に対応する照射光量を決定することができる。
描画単位は、人が視認可能な単位などを考慮して、1.25μm以上40μm以下程度、好ましくは5μm以上30μm以下程度、の1辺を有する略正方形、あるいはこの正方形に内接する略円形であればよい。ビーム径は対応して描画単位の1辺の長さの0.3倍以上5倍以下、好ましくは0.5倍以上3倍以下の範囲であればよい。
上記のように、面積階調方式と強度階調方式を組み合わせることで、より表現力を高めることができる。特に2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を行うことにより色を表現する複屈折パターンでは、一般に印刷で知られている色設計を当てはめることが難しく、面積階調方式と強度階調方式を組み合わせる特別な色表現方式が好適である。
複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行ってもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レターデーション値が一番低い)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レターデーション値が一番高い)でベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。この手法は、異なる領域の間で、露光条件だけでは与え得ないような差異(光学軸の方向の違いや非常に大きなレターデーションの差異など)を持たせたい時に有用である。
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。
なお、複屈折パターンはレターデーションが実質的に0である領域を含んでいてもよい。例えば、2種類以上の反応性基を有する液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成した場合において、パターン露光で未露光であると上記ベークによってレターデーションが消失し、実質的に0となる場合がある。
上記のように、未露光領域にベークを行うことによってレターデーションを実質的に0にすることが可能であるため、複屈折パターンを有する物品には、パターン露光に基づく潜像に加えて、熱書き込みによる潜像が含まれていてもよい。熱書き込みはサーマルヘッド又は、赤外線やYAGなどのレーザ描画を用いて行うことができる。例えば、サーマルヘッドを有する小型のプリンタとの組み合わせで、秘匿を必要とする情報(個人情報、暗証番号、意匠性を損なう商品管理コードなど)を簡便に潜像化することができ、ダンボール箱などに熱書き込みする赤外線やYAGレーザをそのまま用いることもできる。
複屈折パターン作製材料は、上述のように露光及びベークを行って複屈折性パターンを作製された後に、さらに様々な機能を持った機能性層を積層され、複屈折パターンを有する物品となっていてもよい。機能性層としては、特に限定されるものではないが、例えば、表面層、印刷層、などがあげられる。
表面層としては、反射光沢を制御する散乱層、表面の傷つきを防止するハードコート層、指紋付着やマジックなどの落書きを防止する撥水撥油層、帯電によるごみつきを防止する帯電防止層などが挙げられる。散乱層としては、エンボスによる表面凹凸層、粒子などのマット剤を含むマット層が好ましい。ハードコート層としては、少なくとも1種類の二官能以上の重合性モノマーを含む層を光照射または熱により重合した層が好ましい。表面層は、パターン形成前の複屈折パターン作製材料にすでに設けられていてもよい。複屈折パターン作製材料においては、表面層は、例えば、添加剤層として、設けておくことができる。
特に半透過半反射層を用いた態様の場合、光学干渉によるムラが顕在化することがある。そのため、光学異方性層との屈折率差を小さくするため、屈折率が1.4〜1.7で膜厚が30μm以上、好ましくは50μm以上、特に好ましくは100μm以上の保護層を光学的に接触した状態で貼合することにより、ムラを低減できるので好ましい。光学的な接触には、屈折率マッチングオイルや粘着剤、接着剤を用いることができるが、簡便性から粘着剤または接着剤が好ましい。
印刷層とは、可視または紫外線や赤外線などで視認できるパターンを形成した層などが挙げられる。UV蛍光インクやIRインクはそれ自体もセキュリティ印刷であるため、セキュリティ性が向上するので好ましい。印刷層を形成する方法は特に限定はないが、一般的に知られているフレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷の他、インクジェットやゼログラフィなどを用いることができる。また、解像度を1200dpi以上のマイクロ印刷にすることによっても、セキュリティ性を高めることができるので好ましい。
複屈折パターン作製材料に上述のように露光及びベークを行って得られる物品は通常はほぼ無色透明であるか、印刷層などに基づく像が視認できるのみである一方で、二枚の偏光板で挟まれた場合、あるいは反射層又は半透過反射層を有する物品につき、偏光板を介した場合においては、追加の特徴的な明暗、あるいは色を示し容易に目視で認識できる。この性質を生かして、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品は、例えば偽造防止手段として利用することができる。すなわち、複屈折パターンを有する物品は、偏光板を用いることで通常の目視ではほぼ不可視である多色の画像が識別することができる。複屈折パターンは偏光板を介さずにコピーしても何も映らず、逆に偏光板を介してコピーすると永続的な、つまりは偏光板無しでも目視可能なパターンとして残る。従って複屈折パターンの複製は困難である。このような複屈折パターンの作製法は広まっておらず、材料も特殊であることから、偽造防止手段として用いるに適していると考えられる。
特に、半透過半反射層を含む複屈折パターンを有する物品は、紙に印刷された印字や写真などの上から、粘着剤など貼合して用いることができる。また、半透過半反射層を用いた複屈折パターンを有する物品を、ラミネートフィルムや透明ラベルなど粘着機能を有する一般的な物品の一部に貼合することもできる。
また、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品は光学素子への利用も可能である。例えば上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品を構造的な光学素子として用いた場合、特定の偏光にのみ効果を与える特殊な光学素子の作製が可能である。一例として、複屈折パターンを有する回折格子は特定の偏光を強く回折する偏光分離素子として機能し、プロジェクターや光通信分野への応用が可能である。
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────―
配向層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────────―
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
光学異方性層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
重合性液晶化合物(LC−1−1) 32.83
水平配向剤(LC−1−2) 0.35
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、サンアプロ株式会社製) 0.66
重合制御剤
(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 48.09
シクロヘキサノン 20.00
──────────────────────────────────―
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、添加剤層用塗布液OC−1として用いた。ラジカル光重合開始剤RPI−1としては2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)1,3,4−オキサジアゾールを用いた。
添加剤層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
バインダ(B−1) 27.44
ラジカル光重合開始剤(RPI−1) 0.49
メガファックF−176PF(大日本インキ化学工業(株)製) 4.65
メチルエチルケトン 67.42
──────────────────────────────────―
厚さ50μmのポリエチレンナフタレートフィルム(テオネックスQ83、帝人デュポン(株)製)の上にアルミニウムを蒸着し、反射層つき支持体を作製した。そのアルミニウムを蒸着した面上にワイヤーバーを用いて配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.5μmであった。配向層をラビング処理した後、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度80℃で2分間乾燥して液晶相状態として、複屈折パターン作製材料P−1を作製した。
描画単位10μm、1画素を100μmの設定で描画した。ビーム径7μmとした。
下記画像に対して
ハーフトーン部:描画パターン(a)、ドットあたりの露光量7mJ/cm2とした。露光パターンとしては、図22のような面積階調露光を行った(ドットあたりのRe=150nm相当)。なお、図22において、黒い部分が露光を行った部位である。
文字部:画素全面同一露光量とし、その露光量は90mJ/cm2とした
(1画素あたりのRe=360nm相当)露光パターンは画素が均一となるように露光を行った(強度階調露光)。
レターデーションパターンスーパーハイコントラスト直線偏光板(サンリッツ社製)を、その吸収軸の向きと、光学異方性層の遅相軸の向きとの成す角が45°となるように重ねた。その結果、図23に示す潜像が確認できた。
なお、本実施例の加熱では、クリーンオーブンを用いたが、赤外線を用いた加熱なども利用することもできる。
同様に赤色部を観察したところ、一様な露光が達成されていることを確認した。
一方、文字部については、画素内はほぼ均一なパターンが観察された(図24写真2)
図26は、色度図上、レターデーション(位相差)を変更した場合に色調がどのように動くかを示した図である。比較例として、露光量だけを変化させて、表現するとこの線状の色を表現できるが、その他の色表現はできない(左図)。これに対して、面積階調を組み合わせることで線を囲む範囲、を表現することができる(右図)。
11 (仮)支持体
12 光学異方性層
13 反射層又は半透過半反射層
14 配向層
15 粘着層
16 印刷層
17 力学特性制御層
18 転写層
19 添加剤層又は表面層
Claims (10)
- 複屈折性が異なる領域をパターン状に2つ以上有するパターン化光学異方性層を含む物品であって、
前記パターン化光学異方性層における複屈折性が同一の領域はそれぞれ複数の描画単位からなり、
複屈折性が略均一である強度階調方式画素および複屈折性が異なる2種以上の前記描画単位を含む面積階調方式画素を少なくとも含む物品。 - 前記強度階調方式画素が2つ以上の描画単位を含む請求項1に記載の物品。
- 前記面積階調方式画素として、前記の2種以上の描画単位それぞれにおける複屈折性は同一であり、かつ該画素内の前記の2種以上の描画単位の数の比が互いに異なっている画素を2種以上含む請求項1または2に記載の物品。
- 複屈折性が異なる領域がレターデーションの異なる領域である請求項1〜3のいずれか一項に記載の物品。
- 前記パターン化光学異方性層が少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された層である請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
- 前記パターン化光学異方性層が下記(1)〜(3)の工程をこの順で含む方法で形成されたものである請求項5に記載の物品:
(1)液晶性化合物を含む組成物からなる層を加熱または光照射する工程;
(2)該層にパターン露光を行う工程;
(3)得られた層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。 - 前記パターン露光がレーザ光を用いて行われることを特徴とする請求項6記載の物品。
- レーザ光の波長が300nm〜420nmである請求項7に記載の物品。
- レーザ光のビーム径が前記描画単位の描画単位の1辺の長さの0.5倍以上3倍以下である請求項7または8に記載の物品。
- レーザ光のビーム径が5〜30μmである請求項7または8に記載の物品。
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