JP5697634B2 - 光学フィルム、セキュリティ製品、および真贋判定方法 - Google Patents

光学フィルム、セキュリティ製品、および真贋判定方法 Download PDF

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Description

本発明は、セキュリティ製品に用いる光学フィルム、および、これを用いたセキュリティ製品、ならびに、真贋判定方法に関する。
金券や有価証券、プリペイドカード等の有価物、権利証書、IDカード等の証明書は、偽造されることによって種々の損害を被る可能性がある。また、コンピュータソフト、音楽ソフト、映像ソフト等、著作権によって保護されるべきものは、偽造、変造あるいは複製を防止するための種々の工夫がなされている。
このような、IDカードや音楽ソフト等において、その偽造を防止する方法は、大きく分けて、従来次のような三種類に分類することができる。
第1の方法は、透かし、マイクロ文字、ホログラムに代表される高度な印刷技術を用いるものであり、これは紙幣、商品券、株券、クレジットカード、音楽CD等に使われている。
第2の方法は、磁気記録媒体、IC、光記録媒体等に暗号情報を記録して偽造防止を図るものであり、プリペイドカード、乗車券、定期券等に用いられている。
第3の方法は、パンチ穴等の、修復ができないように物理的な力で変形させる方法で、テレフォンカード等に用いられている。
かかる状況のもと、セキュリティ製品に光学フィルムを用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、支持体上に配向膜と光学異方性層とを有する光学位相差素子であって、該配向膜が光反応性基を有する化合物の少なくとも一種を含有し、且つ該光学異方性層が進相軸または遅相軸が異なる領域を少なくとも三種以上有する光学位相差素子を用いて、情報を記録し、偏光膜を用いて観察して真正品か否かを観察することが開示されている。
特開2007−25202号公報
しかしながら、上記セキュリティ製品では、二色性色素を必要とする。本発明では、かかる二色性色素を用いずに識別可能なセキュリティ製品を提供することを目的とする。また、このようなセキュリティ製品や調整光が必要な製品に利用可能な光学フィルムを提供することを目的とする。
かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、下記(1)、(15)、(16)および(18)より上記課題を解決しうることを見出した。さらに好ましくは、下記(2)〜(14)、(17)により解決された。
(1)少なくとも、第1位相差領域と、第2位相差領域と、第3位相差領域を含むパターン光学異方性層を有し、それら少なくとも第1位相差領域と、第2位相差領域と、第3位相差領域は、同一面内において同じ位相差領域が連続しないように配置、すなわち、少なくとも、第1位相差領域と、第2位相差領域と、第3位相差領域とが、同一面内において任意の順番にて順次隣接して配置されており、
第1位相差領域と、第3位相差領域とは、面内遅相軸方向が互いに異なり、第2位相差領域は、第1位相差領域および第3位相差領域の何れか一方と、遅相軸方向が平行であり、かつ、面内レターデーションが異なることを特徴とする、光学フィルム。
(2)偏光膜を更に有する、(1)に記載の光学フィルム。
(3)パターン光学異方性層は、波長550nmの面内レターデーションRe(550)が0〜10nmの透明支持体上に形成されている、(1)又は(2)に記載の光学フィルム。
(4)上記した少なくとも第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域はストライプ状に形成されている、(1)〜(3)のいずれかに記載の光学フィルム。
(5)それらストライプ状の少なくとも第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域の延在方向と、偏光膜の吸収軸とは、平行または直交する、(2)及び(2)に係る(3)に係る(4)に記載の光学フィルム。
(6)第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域の面内遅相軸と、偏光膜の吸収軸とがそれぞれ±45°の角度をなす、(2)〜(5)のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(7)第1位相差領域および第3位相差領域の波長550nmの面内レターデーションRe(550)が、それぞれ、100〜190nmである、(1)〜(6)のいずれかに記載の光学フィルム。
(8)第2位相差領域の波長550nmの面内レターデーションRe(550)が、50〜150nmである、(1)〜(7)のいずれかに記載の光学フィルム。
(9)第2位相差領域のRe(550)と第2位相差領域と遅相軸方向が平行であり、かつ、面内レターデーションが異なる位相差領域のRe(550)の差が20nm以上である、(1)〜(8)のいずれかに記載の光学フィルム。
(10)光学フィルムを構成するいずれかの層が紫外線吸収剤を含有する、(1)〜(9)のいずれかに記載の光学フィルム。
(11)第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域が、それぞれ、重合性基を有するディスコティック液晶化合物を含む組成物から形成されている、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(12)第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域の少なくとも1領域において、前記ディスコティック液晶の配向状態が、垂直配向状態に固定されている、(11)に記載の光学フィルム。
(13)パターン光学異方性層が、一方向に配向処理された配向膜上に形成されている、(1)〜(12)のいずれかに記載の光学フィルム。
(14)配向膜が、一方向にラビング処理されたラビング配向膜である(13)に記載の光学フィルム。
(15)(1)〜(14)のいずれかに記載の光学フィルム2枚を有することを特徴とする偏光膜対。
(16)(1)〜(14)のいずれかに記載の光学フィルムを使用したことを特徴とするセキュリティ製品。
(17) 透明支持体の片面又は両面に(1)〜(14)のいずれかに記載の光学フ
ィルムを少なくとも2枚有し、かかる少なくとも2枚の光学フィルムのうち、少なくとも一枚の光学フィルムを一方を可動とし、かかる可動である光学フィルムの移動に伴いに伴って透光量を調整できるようにしたことを特徴とするセキュリティ製品。
(18)製品を偏光膜を用いて観察して、(16)又は(17)に記載のセキュリティ製品を有する製品が真正品であることを判別することを特徴とする真贋判定方法。
本発明により、識別力の高いセキュリティ商品を提供することが可能になった。また、各種調光が必要な製品に利用可能な光学フィルムを提供することが可能になった。
本発明におけるパターン光学異方性層の一例を示す上面図である。 本発明におけるパターン光学異方性層の一例を示す上面図である。 本発明におけるパターン光学異方性層の他の一例を示す上面図である。 本発明の光学フィルムの一例を示す断面図である。 本発明における偏光膜とパターン光学異方性層の関係の一例を示す概略図である。 本発明の光学フィルムを2枚組み合わせて用いる場合の実施態様の一例を示す概略図である。 本発明の光学フィルムを2枚組み合わせて用いる場合の、パターン光学異方性層をスライドさせる前後の状態を示す概略図である。 実施例4における、配向膜作成のためのマスクの位置と、ワイヤーグリッド偏光子の吸収軸の方向を示す概略図である。 実施例4における、光学異方性層作成のための、マスクの位置を示す概略図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
[Re及びRth]
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルタをマニュアルで交換するか、又は測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
式(11)
Figure 0005697634
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
式(11)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
式(12):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(12)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本発明の光学フィルムは少なくとも、第1位相差領域と、第2位相差領域と、第3位相差領域とが、同一面内において同じ位相差領域が連続しないように配置されているパターン光学異方性層を有し、第1位相差領域と、第3位相差領域は、面内遅相軸方向が互いに異なり、第2位相差領域は、第1位相差領域および第3位相差領域の何れか一方と、遅相軸方向が平行であり、かつ、面内レターデーションが異なることを特徴とする。このような手段を採用することにより、自然光の下で観察しても均一なフィルムとして認識されるだけである一方、偏光膜をかざし、該偏光膜の吸収軸と光学フィルムが有する偏光膜の吸収軸を直交させたとき、高いコントラストで像を確認することができる。
以下、本発明の光学フィルムについて詳細に説明する。図1は、本発明のパターン光学異方性層10の一例を示す上面図であって、1は第1位相差領域を、2は第2位相差領域を、3は第3位相差領域を示している。本実施形態では、第1〜第3の位相差領域しか設けられていないが、第4の位相差領域が設けられていても良いことは言うまでもない。これらの位相差領域は、互いに、等しい形状であるのが好ましい。また、それぞれの配置は、均等であることが好ましい。本実施形態におけるパターン光学異方性層は、第1位相差領域、第2位相差領域、および、第3位相差領域が、それぞれ、該順にストライプ状に交互に配置された構造となっているが、ストライプ状に限るものではない。また、本実施形態では、ストライプは、光学フィルムの長手方向に形成されていてもよいし、長手方向に垂直な方向に形成されていてもよい。
また、第1位相差領域と、第2位相差領域と、第3位相差領域の間(境界線)の幅は、1〜100μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
本発明では、第1位相差領域と、第3位相差領域は、面内遅相軸方向が互いに異なることを特徴とする。図2は、本発明のパターン光学異方性層において、面内遅相軸の方向を示した概略図であって、各符号は図1と共通する(以下の図において同じ)。矢印は、面内遅相軸方向を示している。図2に示すように、第1位相差領域と第3位相差領域は、面内遅相軸方向が、互いに異なる。第1位相差領域と第3位相差領域の面内遅相軸方向は、70〜110°の角度差を有することが好ましく、80〜100°の角度差を有することがより好ましく、90°の角度差を有することがさらに好ましい。
第1位相差領域と第3位相差領域の面内遅相軸方向は、それぞれ、光学フィルムの任意の辺(好ましくは、位相差領域によって形成されるストライプ)に対し、±45°であることが好ましい。
第1位相差領域および第3位相差領域の波長550nmの面内レターデーションRe(550)は、それぞれ、100〜190nmであることが好ましく、120〜170nmであることがより好ましく、125〜140nmであることがさらに好ましい。また、第1位相差領域および第3位相差領域のRe(550)の差は、30nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、4nm以下であることがさらに好ましい。このような構成とすることにより、第1位相差領域と第3位相差領域のコントラストを大きくできる。
第2位相差領域は、第1位相差領域および第3位相差領域の何れか一方と、遅相軸方向が平行であり、かつ、面内レターデーションが異なることを特徴とする。例えば、図2では、第2位相差領域は、第1位相差領域と遅相軸が平行であり、面内レターデーションが小さくなっている。
第2位相差領域の波長550nmの面内レターデーションRe(550)は、50〜150nmであることが好ましく、60〜120nmであることが好ましい。
また、第2位相差領域の面内レターデーションRe(550)は、第1位相差領域および第3位相差領域のうち、遅相軸方向が平行である方の位相差領域(図2では第1位相差領域)の面内レターデーションRe(550)との差が、20nm以上であることが好ましく、40〜100nmであることがより好ましく、60〜80nmであることがさらに好ましい。このような構成とすることにより、コントラストがより明確になる傾向にある。
本発明における光学異方性層は、さらに、図3に示すように第4位相差領域を有していてもよい。
第4位相差領域は、第1位相差領域および第3位相差領域のうち、第2位相差領域と遅相軸方向が平行ではない方の位相差領域と、遅相軸方向が平行であり、かつ、面内レターデーションが異なることが好ましい。図4では、第4位相差領域は、第3位相差領域と面内遅相軸方向が平行でありかつ、面内レターデーションが異なる。
第4位相差領域の波長550nmの面内レターデーションRe(550)は、50〜150nmであることが好ましく、60〜120nmであることが好ましい。
第4位相差領域と該第4位相差領域と遅相軸方向が平行である方の位相差領域(図3の場合は、第3位相差領域)の面内レターデーションRe(550)との差は、20nm以上であることが好ましく、40〜100nmであることがより好ましく、60〜80nmであることがさらに好ましい。このような構成とすることにより、コントラストがより明確になる傾向にある。
本発明の光学フィルムは、好ましくは、偏光膜を有する。図4は、本発明の光学フィルムが偏光膜を有する態様の一例を示す断面概略図である。図4において、10はパターン光学異方性層であり、11は透明支持体であり、12は配向膜であり、13は偏光膜であり、14は偏光膜保護フィルムを示している。このように、偏光膜を設けることにより、例えば、透明支持体11側から偏光板を翳して観察することにより、パターン光学異方性層10のパターンに対応した様々なパターンが観察できる。
透明支持体11は、通常、ポリマーフィルムであり、複屈折の小さいフィルムが好ましい。このようなフィルムを採用することにより、透明支持体の複屈折の影響を受けることなく、パターン光学異方性層10のパターンを正確に再現できる。
配向膜12は、パターン光学異方性層10に液晶化合物を用いる場合に、液晶化合物を配向させるために設ける。従って、パターン光学異方性層10の形成方法によっては不要な場合もある。
偏光膜保護フィルム14は、本実施形態では、偏光膜13の一方の面上にのみ設けられている。本実施形態では、パターン光学異方性層10がもう一方の偏光膜保護フィルムの役割を果たしているためである。もちろん、偏光膜13のもう一方の面上にも、偏光膜保護フィルムを設けても良いことは言うまでもない。
さらに、図示していないが、接着層等の構成層を含んでいても良いことは言うまでもない。
本発明では、前記第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域の面内遅相軸と、前記偏光膜13の吸収軸とがそれぞれ±45°の角度をなすことが好ましい。図5は、偏光膜13の吸収軸と、光学異方性層10の面内遅相軸の関係を示したものであって、偏光膜13の吸収軸と、光学異方性層10の面内遅相軸がそれぞれ±45°の角度をなしている。
また、本発明の光学フィルムを2枚組み合わせる場合、一方の光学フィルムの偏光膜の吸収軸は、上記ストライプと直交し、他方の光学フィルムの偏光膜の吸収軸は上記ストライプと平行となるように設定することが好ましい。この点については、詳細を後述する。
以下、本発明の構成層の好ましい材料や製法等について説明する。本発明の光学フィルムがこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
<パターン光学異方性層>
本発明におけるパターン光学異方性層は、液晶組成物(好ましくは、ディスコティック液晶化合物を含む組成物)を利用して、各位相差領域を形成するのが好ましく、液晶を主成分とする同一の硬化性液晶組成物を利用して、各位相差領域を形成するのが好ましく、パターン露光により各位相差領域を形成するのが好ましい。
より具体的には、パターン光学異方性層を形成する第1の態様は、液晶の配向制御に影響を与える複数の作用を利用し、その後、外部刺激(熱処理等)によりいずれかの作用を消失させて、所定の配向制御作用を支配的にする方法である。例えば、配向膜による配向制御能と、液晶組成物中に添加される配向制御剤の配向制御能との複合作用により、液晶を、所定の配向状態とし、それを固定して一の位相差領域を形成した後、外部刺激(熱処理等)により、いずれかの作用(例えば配向制御剤による作用)を消失させて、他の配向制御作用(配向膜による作用)を支配的にし、それによって他の配向状態を実現し、それを固定して他の位相差領域を形成する。例えば、所定のピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基が、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。前記ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。しかし、その効果は、ある温度を超えて加熱すると、水素結合が切断され、前記ピリジニウム化合物等の配向膜表面における密度が低下し、その作用を消失する。その結果、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向し、液晶は平行配向状態になる。この方法の詳細については、特願2010−141345号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
パターン光学異方性層を形成する第2の態様は、パターン配向膜を利用する態様である。この態様では、互いに異なる配向制御能を有するパターン配向膜を形成し、その上に、液晶組成物を配置し、液晶を配向させる。液晶は、パターン配向膜のそれぞれの配向制御能によって配向規制され、互いに異なる配向状態を達成する。それぞれの配向状態を固定することで、配向膜のパターンに応じた位相差領域のパターンが形成される。パターン配向膜は、印刷法、ラビング配向膜に対するマスクラビング、光配向膜に対するマスク露光等を利用して形成することができる。また、配向膜を一様に形成し、配向制御能に影響を与える添加剤(例えば、上記オニウム塩等)を別途所定のパターンで印刷することによって、パターン配向膜を形成することもできる。大掛かりな設備が不要である点や製造容易な点で、印刷法を利用する方法が好ましい。この方法の詳細については、特願2010−173077号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
また、上記第1及び第2の態様を併用してもよい。一例は、配向膜中に光酸発生剤を添加する例である。この例では、配向膜中に光酸発生剤を添加し、露光量(露光強度)のオン・オフに加えて、露光量を変えることで実現できるハーフ露光により3種類以上の位相差領域を形成することができる。
すなわち、パターン露光により、光酸発生剤が分解して酸性化合物が発生した領域と、光酸発生剤の一部が分解して酸性化合物が発生した領域と、光酸発生剤が分解せず、酸性化合物が発生していない領域とを形成する。光未照射部分では光酸発生剤はほぼ未分解のままであり、配向膜材料、液晶、及び所望により添加される配向制御剤の相互作用が配向状態を支配し、液晶を、その遅相軸がラビング方向と直交する方向に配向させる。配向膜へ光照射し、酸性化合物が発生すると、その相互作用はもはや支配的ではなくなり、ラビング配向膜のラビング方向が配向状態を支配し、液晶は、その遅相軸をラビング方向と平行にして平行配向する。前記配向膜に用いられる光酸発生剤としては、水溶性の化合物が好ましく用いられる。この方法の詳細については、特願2010−289360号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
ラビング配向膜は、ラビング処理によって配向制御能を発現する。通常、一方向にラビング処理された配向膜上で液晶を配向させると、液晶は、ラビング方向に対して、その遅相軸を平行にして、又は直交にして配向する。いずれの配向状態になるかは、配向膜材料、液晶、及び配向制御剤の1以上の種類等によって決定される。本発明では、配向膜への紫外線照射によって発生する酸性化合物の効果により、配向膜材料を分解、及び/又は、配向制御剤の配向膜界面偏在性を変化させて、ラビング方向に対して液晶の遅相軸が直交配向した配向状態、及びラビング方向に対して液晶の遅相軸が平行配向した配向状態を、それぞれ実現している。各位相差領域の形状及び配置は、フォトマスクを選択することで、所望の形状及び配置のパターンにすることができる。立体画像表示用の画像表示装置に用いられる態様では、各位相差領域が、互いの短辺の長さがほぼ等しい帯状であり、かつ交互に繰り返しパターニングされていることが好ましい。
前記配向膜に用いられる光酸発生剤としては、水溶性の化合物が好ましく用いられる。使用可能な光酸発生剤の例には、Prog. Polym. Sci., 23巻、1485頁(1998年)に記載の化合物が含まれる。
前記光酸発生剤としては、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が特に好ましく用いられる。ピリジニウム塩、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩の好ましい例としては、下記の一般式で表される塩をそれぞれ挙げることができる。
Figure 0005697634
Figure 0005697634
Figure 0005697634
式中、Rはそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基もしくは分岐アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖アルコキシ基もしくは分岐アルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、又はハロゲン原子である。Yは、炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基もしくは分岐アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖アルコキシ基もしくは分岐アルコキシ基である。X―は、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩の対アニオンを表し、分解により生じる酸性化合物のアニオンになる。好ましくはPF6 -又はBF4 -である。例えば、X―がBF4 -である光酸発生剤からは、分解により酸HBF4が発生し、X―がPF6 -である光酸発生剤からは、HPF6が発生する。
以下に、本発明に利用可能な光酸発生剤の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 0005697634
Figure 0005697634
Figure 0005697634
前記配向膜の形成に利用される組成物は、塗布液として調製するのが好ましい。塗布の調製に用いられる溶媒は、水を含有しているのが好ましく、より好ましくは水を20質量%以上、さらに好ましくは50〜80質量%含む。含水溶媒により調製した塗布液を使用することで、支持体上に塗布する際、溶媒による支持体の溶出を抑制または制御することができる。
前記配向膜組成物中の各成分の含有量は、安定な配向膜を形成できるように適宜設定することができる。例えば、主成分である配向膜用ポリマー材料の含有量は、組成物(溶媒を含む)の合計量に対して2.0〜10.0質量%、好ましくは2.0〜5.0質量%とすることができる。光酸発生剤の添加量は、前述のオニウム塩の対アニオンとイオン交換し得る範囲で適宜設定することができ、例えば、配向膜用ポリマー材料に対して0.1〜10.0質量%、好ましくは0.5〜5.0質量%とすることができる。また、組成物における溶媒量は、例えば、組成物の合計量に対して80〜98質量%、好ましくは90〜97質量%とすることができる。
前記光学異方性層の形成に用いられる組成物の一例は、重合性基を有する液晶化合物の少なくとも1種、及び配向制御剤の少なくとも1種を含有する液晶組成物である。その他、重合開始剤及び増感剤を含有していてもよい。
以下、各材料について詳細に説明する。
[重合性基を有する液晶化合物]
本発明の光学異方性層の主原料として使用可能な液晶としては、棒状液晶及びディスコティック液晶を挙げることができ、ディスコティック液晶が好ましく、前記のとおり重合性基を有するディスコティック液晶がより好ましい。
棒状液晶としては、例えば、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、世界特許(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、同11−513019号及び特願2001−64627号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。
前記棒状液晶化合物としては、下記一般式(X)で表される化合物が好ましい。
一般式(X)
1−L1−Cy1−L2−(Cy2−L3n−Cy3−L4−Q2
式中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に重合性基を表し、L1及びL4はそれぞれ独立に二価の連結基を表し、L2及びL3はそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し、Cy1、Cy2及びCy3はそれぞれ独立に二価の環状基を表し、nは0、1又は2である。
式中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に重合性基である。重合性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。
本発明の光学異方性層の主原料として使用可能なディスコティック液晶としては、前記のとおり重合性基を有する化合物が好ましい。
[ディスコティック液晶化合物]
ディスコティック液晶化合物には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
前記ディスコティック液晶化合物には、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、又は置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の、液晶性を示す化合物も含まれる。分子又は分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
ディスコティック液晶化合物から光学異方性層を形成した場合、最終的に光学異方性層に含まれる化合物は、もはや液晶性を示す必要はない。例えば、低分子のディスコティック液晶化合物が熱、又は光で反応する基を有しており、熱又は光によって該基が反応して、重合又は架橋し、高分子量化することによって、光学異方性層が形成される場合などは、光学異方性層中に含まれる化合物は、もはや液晶性を失っていてもよい。
ディスコティック液晶化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報、特開2006−76992号公報明細書中の段落番号[0052]、特開2007−2220号公報明細書中の段落番号[0040]〜[0063]に記載されている。例えば下記一般式(DI)、(DII)で表される化合物が高い複屈折性を示すので好ましい。さらに下記一般式(DI)、(DII)表される化合物の中でも、ディスコティック液晶性を示す化合物が好ましく、特に、ディスコティックネマチック相を示す化合物が好ましい。下記化合物の詳細(式中の符号の定義、及びその好ましい範囲)については、上記公報に具体的記載がある。
Figure 0005697634
また、前記円盤状液晶化合物の好ましい例には、特開2005−301206号公報に記載の化合物も含まれる。
[オニウム塩化合物(配向膜側配向制御剤)]
本発明では、前述のように、重合性基を有する液晶化合物、特に、重合性基を有するディスコティック液晶の垂直配向を実現するために、オニウム塩を添加することが好ましい。オニウム塩は配向膜界面に偏在し、液晶分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用をする。
オニウム塩としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1)
Z−(Y−L−)nCy+・X‐
式中、Cyは5又は6員環のオニウム基であり、L、Y、Z、Xは、後述する一般式(II)におけるL23、L24、Y22、Y23、Z21、Xに同義であり、その好ましい範囲も同一であり、nは2以上の整数を表す。
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、ピラゾリウム環、イミダゾリウム環、トリアゾリウム環、テトラゾリウム環、ピリジニウム環、ピラジニウム環、ピリミジニウム環、トリアジニウム環が好ましく、イミダゾリウム環、ピリジニウム環が特に好ましい。
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、配向膜材料と親和性のある基を有するのが好ましい。オニウム塩化合物は、酸発生剤が分解していない部分(未露光部分)では配向膜材料との親和性が高く配向膜界面に偏在している。一方、酸発生剤が分解し酸性化合物が発生している部分(露光部分)では、オニウム塩のアニオンがイオン交換し親和性が低下し配向膜界面における偏在性が低下している。水素結合は、液晶を配向させる実際の温度範囲内(室温〜150℃程度)において、結合状態にも、その結合が消失した状態にもなり得るので、水素結合による親和性を利用するのが好ましい。但し、この例に限定されるものではない。
例えば、配向膜材料としてポリビニルアルコールを利用する態様では、ポリビニルアルコールの水酸基と水素結合を形成するために、水素結合性基を有しているのが好ましい。水素結合の理論的な解釈としては、例えば、H.Uneyama and K.Morokuma、Journal of American Chemical Society、第99巻、第1316〜1332頁、1977年に報告がある。具体的な水素結合の様式としては、例えば、J.N.イスラエスアチヴィリ著、近藤保、大島広行訳、分子間力と表面力、マグロウヒル社、1991年の第98頁、図17に記載の様式が挙げられる。具体的な水素結合の例としては、例えば、G.R.Desiraju、Angewante Chemistry International Edition English、第34巻、第2311頁、1995年に記載のものが挙げられる。
水素結合性基を有する5又は6員環のオニウム基は、オニウム基の親水性の効果に加え、ポリビニルアルコールと水素結合することによって、配向膜界面の表面偏在性を高めるとともに、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交配向性を付与する機能を促進する。好ましい水素結合性基としては、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、酸アミド基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、含窒素複素環基(例えば、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、1,3,5−トリアジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、コハクイミド基、フタルイミド基、マレイミド基、ウラシル基、チオウラシル基、バルビツール酸基、ヒダントイン基、マレイン酸ヒドラジド基、イサチン基、ウラミル基などが挙げられる)を挙げることができる。更に好ましい水素結合性基としては、アミノ基、ピリジル基を挙げることができる。
例えば、イミダゾリウム環の窒素原子ように、5又は6員環のオニウム環に、水素結合性基を有する原子を含有していることも好ましい。
nは、2〜5の整数が好ましく、3又は4であるのがより好ましく、3であるのが特に好ましい。複数のL及びYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。nが3以上である場合、一般式(1)で表されるオニウム塩は、3つ以上の5又は6員環を有しているため、前記ディスコティック液晶と強い分子間π−π相互作用が働くため、該ディスコティック液晶の垂直配向、特に、ポリビニルアルコール配向膜上では、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交垂直配向を実現することができる。
前記一般式(1)で表されるオニウム塩は、下記一般式(2a)で表されるピリジニウム化合物又は下記一般式(2b)で表されるイミダゾリウム化合物であることが特に好ましい。
一般式(2a)及び(2b)で表される化合物は、主に、前記一般式(I)〜(IV)で表されるディスコティック液晶の配向膜界面における配向を制御することを目的として添加され、ディスコティック液晶の分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。
Figure 0005697634
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基を表す。
23は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又は−O−CO−AL−CO−O−であるのが好ましく、ALは、炭素原子数が1〜10のアルキレン基である。L23は、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−または−O−CO−AL−CO−O−が好ましく、単結合または−O−がさらに好ましく、−O−が最も好ましい。
24は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−または−N=N−であるのが好ましく、−O−CO−又は−CO−O−がより好ましい。mが2以上のとき、複数のL24が交互に、−O−CO−及び−CO−O−であるのがさらに好ましい。
22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20のアルキル基で置換されたアミノ基である。
22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環または6員環が好ましい。R23は水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜12のジアルキル置換アミノ基であるのがさらに好ましく、水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜8のジアルキル置換アミノ基であるのがよりさらに好ましい。R23が無置換アミノ基及び置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位が置換されていることが好ましい。
Xはアニオンである。
Xは、一価のアニオンであることが好ましい。アニオンの例には、ハライドイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)およびスルホン酸イオン(例、メタンスルホネートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン)が含まれる。
22及びY23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。
前記5又は6員環が置換基を有していてもよい。好ましくは、Y22及びY23のうち少なくとも1つは、置換基を有する5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。Y22およびY23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環を部分構造として有する2価の連結基であるのが好ましい。6員環は、脂肪族環、芳香族環(ベンゼン環)および複素環を含む。6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびシクロヘキサジエン環を含む。6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環を含む。6員環に、他の6員環または5員環が縮合していてもよい。
置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1〜12のアルキル基および炭素原子数が1〜12のアルコキシ基を含む。アルキル基およびアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12のアシル基または炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。置換基は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。置換基は2以上であってもよく、例えば、Y22及びY23がフェニレン基である場合は、1〜4の炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基で置換されていてもよい。
なお、mは1又は2であり、2であるのが好ましい。mが2のとき、複数のY23及びL24は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基である。
mが2の場合、Z21は、シアノ、炭素原子数が1〜10のアルキル基または炭素原子数が1〜10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数4〜10のアルコキシ基であるのがさらに好ましい。
mが1の場合、Z21は、炭素原子数が7〜12のアルキル基、炭素原子数が7〜12のアルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルキル基または炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)または芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることがさらに好ましい。
pは、1〜10の整数である。pは、1または2であることが特に好ましい。Cp2p
は、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。Cp2pは、直鎖状アル
キレン基(−(CH2p−)であることが好ましい。
式(2b)中、R30は、水素原子又は炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。
前記式(2a)又は(2b)で表される化合物の中でも、下記式(2a')又は(2b’)で表される化合物が好ましい。
Figure 0005697634
式(2a’)及び(2b’)中、式(2a)と同一の符号は同一の意義であり、好ましい範囲も同様である。L25はL24と同義であり、好ましい範囲も同様である。L24及びL25は、−O−CO−又は−CO−O−であるのが好ましく、L24が−O−CO−で、且つL25が−CO−O−であるのが好ましい。
23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。n23は0〜4、n24は1〜4、及びn25は0〜4を表す。n23及びn25が0で、n24が1〜4(より好ましくは1〜3)であるのが好ましい。
30は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、特開2006−113500号公報明細書中[0058]〜[0061]に記載の化合物が挙げられる。
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。但し、下記式中、アニオン(X-)は省略した。
Figure 0005697634
式(2a)及び(2b)の化合物は、一般的な方法で製造することができる。例えば、式(2a)のピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
オニウム塩は、その添加量が、液晶化合物に対して5質量%を超えることはなく、0.1〜2質量%程度であるのが好ましい。
前記一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基に、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基(一般式(2a)及び(2a’)において、R22が無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20のアルキル基で置換されたアミノ基)が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。前記ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、一般式(2a’)で表されるように、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。
さらに、前記一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩を併用すると、光分解により光酸発生剤から放出された酸性化合物とアニオン交換し、該オニウム塩の水素結合力及び親水性が変化することにより配向膜界面における偏在性が低下し、液晶が、その遅相軸を、ラビング方向に対して平行にして配向する、平行配向を促進するようになる。これは、塩交換により、オニウム塩が配向膜に均一に分散され配向膜表面における密度が低下し、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向するためである。
[フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤)]
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、液晶の空気界面における配向を制御することを目的として添加され、液晶の分子の空気界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。さらに、ムラ、ハジキなどの塗布性も改善される。
本発明に使用可能なフルオロ脂肪族基含有共重合体としては、特開2004−333852号、同2004−333861号、同2005−134884号、同2005−179636号、及び同2005−181977号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。特に好ましくは、特開2005−179636号、及び同2005−181977号の各公報及び明細書に記載の、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含むポリマーである。
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、その添加量が、液晶化合物に対して2質量%を超えることはなく、0.1〜1質量%程度であるのが好ましい。
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、フルオロ脂肪族基の疎水性効果により空気界面への偏在性を高めると共に、空気界面側に低表面エネルギーの場を提供し、液晶、特にディスコティック液晶のチルト角を増加させることができる。さらに、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含む共重合成分を有すると、これらのアニオンと液晶のπ電子との電荷反発により液晶化合物の垂直配向を実現することができる。
[溶媒]
光学異方性層の形成に利用する、前記組成物は塗布液として調製するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
[重合開始剤]
前記の重合性基を有する液晶化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、所望の液晶相を示す配向状態とした後、重合反応を進行させて、該配向状態を固定する(上記方法の5)工程)。固定化は、液晶化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。紫外線照射による、光重合反応により固定化するのが好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
[増感剤]
また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン等が含まれる。光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。液晶化合物の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。
[その他の添加剤]
前記組成物は、重合性液晶化合物とは別に、非液晶性の重合性モノマーを含有していてもよい。重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が2以上の多官能モノマー、例えば、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレートを用いると、耐久性が改善されるので好ましい。前記非液晶性の重合性モノマーは、非液晶性成分であるので、その添加量が、液晶化合物に対して40質量%を超えることはなく、0〜20質量%程度であるのが好ましい。
この様にして形成する光学異方性層の厚みについては特に制限されないが、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがより好ましい。
<偏光膜>
本発明の光学フィルムは、好ましくは、偏光膜を有する。偏光膜は、光学異方性層フィルムの表面(透明支持体側表面)と偏光膜の表面とを貼り合わせるのが好ましく、本発明の位相差フィルムの配向膜のラビング方向と、偏光膜の透過軸との交差角は、略90度として貼り合せるのが好ましい。厳密に0度である必要はなく、製造上許容される±5度程度の誤差は、本発明の効果に影響するものではなく、許容される。また、偏光膜の他方の面には、上述のとおり、セルロースアシレートフィルム等の偏光膜保護フィルムが貼り合せられているのが好ましい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜があり、本発明にはいずれを使用してもよい。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の製造方法は、例えば、特開2011−128584号公報の記載を参酌することができる。
<偏光膜保護フィルム>
偏光膜の表面に貼合される保護フィルムには、透明なポリマーフィルムを用いることが好ましい。透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。保護フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム、およびポリオレフィンを含むポリオレフィンフィルム、アクリルフィルムが好ましい。セルロースアシレートフィルムの中でも、セルローストリアセテートフィルムが好ましい。また、ポリオレフィンフィルムの中でも、環状ポリオレフィンを含むポリノルボルネンフィルムが好ましい。前記保護フィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることがさらに好ましい。
<透明支持体>
本発明の光学フィルムは、透明支持体を有する。透明支持体としては、面内及び厚み方向の位相差がほとんどない部材を用いることが好ましい。
本発明に使用可能な透明支持体を形成する材料としては、光学性能透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるポリマーが好ましく、上述のRe、Rthが、上述した式(I)を満たす範囲であればどのような材料を用いても良い。例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
また、前記透明支持体を形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
また、前記透明支持体を形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。
以下に、前記透明支持体の例として、主にセルロースアシレートについて詳細を説明するが、その技術的事項は、他の高分子フィルムについても同様に適用できることは明らかである。
セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載されているが、本発明は、該記載に制限されるものではない。
セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。本発明のセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることがのぞましい。更には置換度が2.75〜3.00であることがのぞましく、2.85〜3.00であることがよりのぞましい。
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でも芳香族基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれ更に置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基のうちで、実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなる場合においては、その置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性が低下できる。
より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、更にのぞましくは2.65〜3.00である。また、セルロースの水酸基に置換するアシル置換基がアセチル基のみからなる場合には、フィルムの光学異方性が低下できることに加え、更に添加剤との相溶性、使用する有機溶剤への溶解性の観点で置換度が2.80〜2.99であることが好ましく、2.85〜2.95であることがより好ましい。
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であるのが好ましく、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることが更に好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。本発明のセルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下である。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%の含水率が知られている。セルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロースアシレートの合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
セルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
支持体として用いるフィルムの作製には、セルロースアシレートとともに、種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、微粒子、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、光学特性調整剤など)を使用することができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程(セルロースアシレート溶液の作製工程)における何れでもよいが、ドープ作製工程の最後に添加剤を添加し調製する工程を行ってもよい。
これらの添加剤の添加量を調整することにより、0nm≦Re(550)≦10nmを満たすセルロースアシレートフィルムを作製することができ、当該フィルムを支持体として用いることで、支持体の光学特性の影響をほとんど受けずに、本発明の光学フィルム中に含まれる全ての前記第1及び第2の位相差領域のReを、110nm≦Re(550)≦165nmの範囲にすることができる。Re値は、120≦Re(550)≦145であることが好ましく、130≦Re(550)≦145であることが特に好ましい。
また、後述する光学異方性層との関係では、前記透明支持体のRthと光学異方性層(λ/4板)のRthの合計が|Rth|≦20nmを満たすために、透明支持体は、−150nm≦Rth(630)≦100nmを満たすことが好ましい。
前記セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物を、少なくとも一種含有することものぞましい態様である。
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物について説明する。フィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を利用することで、光学的異方性を低下させることができる。光学的異方性を低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
低位相差のセルロースアシレートフィルムを作製するためには、上述のようにフィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制して光学的異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜7である化合物が好ましい。logP値が7を超える化合物は、セルロースアシレートとの相溶性に乏しく、フィルムの白濁や粉吹きを生じやすい。また、logP値が0よりも小さな化合物は親水性が高いために、セルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させる場合がある。logP値として更に好ましい範囲は、1〜6であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.− Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。なお本明細書に記載のlogPの値は、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)により求めたものである。
光学的異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有してもよいし、含有しなくてもよい。また光学的異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
光学的異方性を低下させる化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、更に好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また光学的異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
光学的異方性を低下させる化合物の添加量は、セルロースアシレートに対し0.01〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
光学的異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
光学的異方性を低下させる化合物を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ作製工程の最後に行ってもよい。
光学的異方性を低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80〜99%である。当該化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面及び中心部の化合物量を測定して求めることができる。
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物の具体例としては、例えば、特開2006−199855号公報の[0035]〜[0058]記載の化合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
本発明の光学フィルムは、視認側に配置されるので、外光の影響、特に紫外線の影響を受けやすい。そのために、透明支持体として利用されるポリマーフィルム等には、紫外線(UV)吸収剤を添加するのが望ましい。
UV吸収剤は、中でも、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|及び|Rth(400)−Rth(700)|の双方を低下させる化合物が好ましく、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%使用するのがよい。
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるために、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|及び|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物をセルロースアシレートフィルムに添加する場合、分光透過率が優れていることが要求される。本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがのぞましい。
UV吸収剤は揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
UV吸収剤は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
セルロースアシレートフィルムのUV吸収剤の具体例としては、例えば、特開2006−199855号公報の[0059]〜[0135]に記載の化合物が挙げられる。
前記セルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上が更に好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下が更に好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ調製し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、更にメインのセルロースアシレート溶液(ドープ液)と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。これらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤微粒子の添加量は1m3あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
前記セルロースアシレートフィルムには、光学的に異方性を低下する化合物、UV吸収剤の他に、用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。更にまた、赤外吸収剤としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れの時期でも良いが、ドープ作製工程の最後に添加剤を添加するのがよい。更にまた、各添加剤の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
また、可塑剤については、後述の実施例の中には、可塑剤を添加したものとしていないものがあるが、光学的に異方性を低下する化合物などが可塑剤としての効果を及ぼす化合物の場合には、可塑剤を添加する必要がないのは言うまでもない。
前記セルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレート溶液を用いた溶液製膜法により製造するのが好ましい。セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよく、更には冷却溶解法あるいは高温溶解方法、更にはこれらの組み合わせで実施される。セルロースアシレート溶液の調製、更には溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
前記セルロースアシレート溶液のドープ透明度としては85%以上であることがのぞましい。より好ましくは88%以上であり、更に好ましくは90%以上であることがのぞましい。本発明においてはセルロースアシレートドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認した。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、島津製作所)で550nmの吸光度を測定した。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロースアシレート溶液の透明度を算出した。
前記セルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来のセルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。本発明のセルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
また、セルロースアシレートフィルムの厚さは10〜120μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜90μmが更に好ましい。
透明支持体として用いるポリマーフィルムの一例は、Reが0〜10nmであり、且つRthの絶対値が20nm以下の低位相差フィルムである。
[湿度膨張係数]
前記ポリマーフィルムの湿度膨張係数は、熱膨張係数との組合せにより、適宜、設定することができるが、3.0×10-6〜500×10-6/%RHが好ましく、4.0×10-6〜100×10-6/%RHがより好ましく、5.0×10-6〜50×10-6/%RHが更に好ましく、5.0×10-6〜40×10-6/%RHが最も好ましい。
なお、熱膨張係数は、ISO11359−2に準じて測定することができ、サンプルを室温から80℃まで昇温させた後、60℃から50℃に降温するときのフィルムの長さの傾きから算出することができる。
また、湿度膨張係数を測定する際には、弾性率が最大となる方向を長手方向として切り出した長さ25cm(測定方向)、幅5cmのフィルム試料を用意し、該試料に20cmの間隔でピン孔を空け、25℃、相対湿度10%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL0とする)。次いで、試料を25℃、相対湿度80%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL1とする)。これらの測定値を用いて下記式により湿度膨張係数を算出する。
湿度膨張係数[/%RH]={(L1−L0)/L0}/(R1−R0
[弾性率]
前記ポリマーフィルムの弾性率は特に限定されないが、1〜50GPaが好ましく、5〜50GPaがより好ましく、7〜20GPaが更に好ましい。弾性率はポリマーの種類、添加剤の種類及び量、延伸によって制御することができる。
なお、弾性率は、長さ150mm、巾10mmのフィルム試料を用意し、25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ISO527−3:1995の規格に準じ、初期試料長100mm、引張速度10mm/minにて測定し、応力−歪み曲線の初期の傾きから求めた引張り弾性率である。フィルム試料の長さ方向と幅方向の取り方によって一般に弾性率は異なるが、本発明では弾性率が最大となる方向でフィルム試料を用意して測定した値を本発明の弾性率として表記する。なお、音速が最大となる方向における弾性率をE1、それと直交する方向における弾性率をE2としたとき、それらの比(E1/E2)は、フィルムのしなやかさを保ちつつも寸法変化を小さくする観点から、1.1〜5.0であることが好ましく、1.5〜3.0であることがより好ましい。
なお、本発明において音速(音波伝播速度)が最大となる方向は、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、配向性測定機(SST−2500:野村商事(株)製)を用いて、超音波パルスの縦波振動の伝搬速度が最大となる方向として求めた。
[全光透過率、ヘイズ]
本発明において、サンプルを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ヘイズメーター(NDH 2000:日本電色工業(株)製)を用いて測定した値を全光透過率、及びヘイズとした。
前記ポリマーフィルムの全光透過率は、光源からの光を効率的に使用して、パネルの消費電力を低減する観点から、高いほうが好ましく、具体的には85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、92%以上であることが更に好ましい。また、本発明のフィルムのヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが更にまた好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。
[引裂き強度]
本発明において、引裂き強度(エルメンドルフ引裂き法)は、フィルムの遅相軸と平行な方向、及び直交する方向を長手方向として、それぞれ64mm×50mmの試料を切り出し、25℃、相対湿度60%にて2時間調湿後、軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定し、小さい方の値をフィルムの引裂き強度とした。
前記ポリマーフィルムの引裂き強度は、フィルムの脆さの観点から、3〜50gであることが好ましく、5〜40gであることがより好ましく、10〜30gであることが更に好ましい。
[膜厚]
前記ポリマーフィルムの厚さは、製造コストを下げる観点から、10〜1000μmであることが好ましく、40〜500μmであることがより好ましく、40〜200μmであることが特に好ましい。
<紫外線吸収剤>
本発明では、光学フィルムを構成するいずれかの層が紫外線吸収剤を含むことが好ましい。さらに、光学異方性層よりも視認側の層が紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤は、また、偏光膜保護フィルムおよび/または基材フィルムに含まれることが好ましい。紫外線吸収剤としては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|及び|Rth(400)−Rth(700)|の双方を低下させる化合物が好ましい。例えば、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%の割合添加することができる。
紫外線吸収剤は揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、特開2006−199855号公報の[0059]〜[0135]に記載の化合物が挙げられる。
次に、本発明の光学フィルムの用途について説明する。本発明の光学フィルムの第一の用途としては、セキュリティ製品が挙げられる。
本発明のセキュリティ製品は、前記光学位相差素子からなる。即ち、支持体上に形成された光学異方性層は、遅相層または面内レターデーションが互いに異なる領域を少なくとも3つ有する、即ち、前記光学異方性層はそれぞれ異なる偏光情報が記録された3つ以上の領域を有する。人間の目は透過または反射してきた光の総量で明るさや色を認識しているが、その光が自然光であるか偏光であるかは認識できない。本発明のセキュリティ製品を、偏光膜を通して観察するか、直線偏光を照射することによって、潜在として記録された偏光情報が認識される。
より具体的に説明する。
本発明のセキュリティ製品の全面を透過あるいは反射してきた光の総量は等しいが、セキュリティ製品が含む光学異方性層は、遅相軸または面内レターデーションが互いに異なる領域を三種以上有するので、ある領域を透過又は反射した光は垂直方向の偏光成分が多く、また他の領域を透過又は反射した光は水平方向の偏光成分が多いなど偏光情報が記録されている。従って、偏光膜を通して観察するか、直線偏光を照射することによって、ある方向の直線偏光のみを人間の目に届かせることができる。即ち、潜像として記録されていた偏光情報を認識することが可能となる。これらの情報は、複写機によるコピー等では複写できないので、例えば、金券、有価証券、権利証書、証明書類、チケットまたはカードなどにこの原理を利用したセキュリティ製品を貼付しておけば、偏光膜を通しての観察や直線偏光照射によって容易に真贋判定が可能となる。
特に、本発明の光学フィルムを2枚用い、少なくとも一方を可動とし、可動に伴って透光量を調整できるようにすることによって、より複雑な潜像が可能になり、高い偽造防止効果が期待できる。光学フィルムを2枚用いる場合は、それぞれの光学フィルムの偏光膜の吸収軸が直交し、かつ、パターン光学異方性層10の各位相差領域が、反転した状態で組み合わせることが好ましい。
例えば、図6に示す実施形態では、2枚の光学フィルム(1)、(2)が、ぞれぞれ、ガラス基板15上に設けられている。光学フィルム(1)は、ガラス基板15、偏光膜保護フィルム14、偏光膜13、透明支持体11、パターン光学異方性層10の順に積層されている。ここで、ガラス基板15と偏光膜保護膜14、および、透明支持体11と偏光膜13は、例えば、接着剤で貼り合わせることができる(図示せず)。また、透明支持体11と光学異方性層10の間には、配向膜が含まれている場合もある。光学フィルム(1)の偏光膜の吸収軸は、パターン光学異方性層10のストライプに対し直交するように設定されている。一方、光学フィルム(2)は、ガラス基板15、偏光膜保護フィルム14、偏光膜13、パターン光学異方性層10、透明支持体11の順に積層されている。ここで、ガラス基板と基材フィルム11、および、パターン光学異方性層10と偏光膜は、例えば、接着剤で貼り合わせることができる(図示せず)。また、透明支持体と光学異方性層10の間には、配向膜が含まれている場合もある。光学フィルム(2)の偏光膜の吸収軸は、パターン光学異方性層10のストライプに対し、平行となるように設定されている。
図7(A)に、パターン光学異方性層の各位相差領域が反転した状態の一例を示す。この状態では、それぞれの遅相軸は直交する関係にあり、Reは一致するため、いずれの領域も、黒表示となる。そして、パターンを1領域分だけスライド(可動)させた状態が、図7(B)となる。図7(B)の状態では、光学フィルム(1)の第1位相差領域と、光学フィルム(2)の第3位相差領域とでは、Reが同じで遅相軸が平行となり、Reが同じであるため、白表示となり、残りの領域が、灰色表示となる。従って、2枚の組み合わされた光学フィルムは、フィルム面方向にスライドさせることによって、パターン光学異方性層の各位相差領域に異なったReを達成することができ、透光量を調整できる。
また、前述のように、接着剤層を設けてラベル化したセキュリティ製品や、剥離層及びヒートシール層を設けて転写箔化したセキュリティ製品を、コンピュータソフトやビデオソフト、音楽CD等に張り付ければ模造品でないことの証明として利用することも可能である。
また、上記のほか、窓調光用システムとしても用いることができる。窓調光用システムとして用いる場合、本発明の光学フィルムを2枚用いると、位相差領域の重ね併せ方を調整することによって、入射する光の量を調整できる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
(実施例1)
<透明支持体Aの作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
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セルロースアシレート溶液Aの組成
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置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
下記化合物UV−1(紫外線吸収剤) 0.2質量部
下記化合物UV−2(紫外線吸収剤) 0.4質量部
下記化合物UV−3(紫外線吸収剤) 0.4質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
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化合物UV-1
Figure 0005697634
化合物UV-2
Figure 0005697634
化合物UV-3
Figure 0005697634
<<セルロースアセテート透明支持体の作製>>
セルロースアシレート溶液Aを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3〜5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が7%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み80μmのセルロースアセテート保護フィルム(透明支持体A)を作製した。透明支持体Aは紫外線吸収剤を含有しており、Re(550)は1nmであり、Rth(550)は40nmであった。
<<アルカリ鹸化処理>>
セルロースアセテート透明支持体Aを、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアセテート透明支持体Aを作製した。
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アルカリ溶液の組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
<ラビング配向膜付透明支持体の作製>
上記作製した支持体の、鹸化処理を施した面に、下記の組成のラビング配向膜塗布液を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。次に、第一の透過部の横ストライプ幅285μm、第二の透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスクをラビング配向膜上に配置し、室温空気下にて、UV−C領域における照度2.5mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を40秒間照射して、光酸発生剤を分解し酸性化合物を発生させることにより第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域用配向層を形成した。なお、該ストライプマスクは、ハーフトーンマスクであり、第一の透過部のUV-C領域の光の透過率は約10%であり、第二の透過部の透過率は90%以上であった。
最後に、ストライプマスクのストライプに対して45°の角度を保持して500rpmで一方向に1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付透明支持体を作製した。なお、配向膜の膜厚は、0.5μmであった。配向膜において、パターン化された後に第1位相差領域、第2位相差領域、および第3位相差領域のそれぞれに対応する領域に対し、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法、ION−TOF社製TOF−SIMS V)により分析したところ、夫々の領域中における光酸発生剤S−2の存在比が40対2対92であり、第1位相差領域に対応する領域では約60%のS−2が分解し、第2位相差領域に対応する領域ではS−2がほとんど分解していることがわかった。
────────────────────────────────────
配向膜形成用塗布液の組成
────────────────────────────────────
配向膜用ポリマー材料 3.9質量部
(PVA103、クラレ(株)製ポリビニルアルコール)
光酸発生剤(S−2) 0.1質量部
メタノール 36質量部
水 60質量部
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光酸発生剤S−2
Figure 0005697634
<パターン化された光学異方性層Aの作製>
下記の光学異方性層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布量4ml/m2で塗布した。次いで、膜面温度110℃で2分間加熱熟成した後、80℃まで冷却し空気下にて20mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を20秒間照射して、その配向状態を固定化することによりパターン光学異方性層Aを形成した。第一の透過部分(第1位相差領域)は、ラビング方向に対し遅相軸方向が平行にディスコティック液晶が垂直配向しており、第二の透過部分(第2位相差領域)は、ラビング方向に対し遅相軸方向が直交にディスコティック液晶がハイブリッド配向しており、未露光部分(第3位相差領域)は直交に垂直配向していた。なお、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
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光学異方性層用塗布液の組成
────────────────────────────────────
ディスコティック液晶E−1 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 3.0質量部
空気界面配向剤(P−1) 0.4質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 400質量部
────────────────────────────────────
ディスコティック液晶E−1
Figure 0005697634
配向膜界面配向剤(II−1)
Figure 0005697634
空気界面配向剤(P−1)
Figure 0005697634
また、光学異方性層においては、第1位相差領域及び第2位相差領域の空気界面に、II−1のカチオン及び光酸発生剤S−2から発生した酸HBF4のアニオンBF4 -が存在していることが確認された。第3位相差領域の空気界面には、これらのイオンはほとんど観測されず、II−1のカチオン及びBr-が配向膜界面近傍に存在していることがわかった。空気界面におけるそれぞれのイオンの存在比は、II−1のカチオンは50対93対7、BF4 -は46対90対10であった。このことから、第3位相差領域中、配向膜界面配向剤(II−1)は配向膜界面に偏在しているが、第1位相差領域では偏在性が減少し、空気界面にも拡散していること、第2位相差領域では偏在性が著しく減少し、ほとんどが空気界面に拡散していることがわかった。第1位相差領域及び第2位相差領域においては、発生した酸HBF4とII−1がアニオン交換することによってII−1カチオンの拡散が促進されていることが理解できる。
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層を透明支持体から剥離した後、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶の配向、空気界面のディスコティック液晶の配向、遅相軸の方向、及びReをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。
表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、光酸発生剤を含有したPVA系ラビング配向膜にハーフトーンマスク露光した後、一方向にラビング処理した該配向膜上で配向させることによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第3位相差領域、及び、ハイブリッド配向である第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<偏光板Aの作製>
TD80UL(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=2/40)を偏光板A用保護フィルムAとして使用し、この表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理したTD80ULの鹸化面とポリビニルアルコールフィルムを貼り合わせ、さらに、パターン化された光学異方性層A面とポリビニルアルコールフィルムを接着剤で貼り合せ、TD80ULとパターン化された光学異方性層Aが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板Aを作製した。このとき位相差フィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が45°になるように、かつ、位相差フィルムのストライプと吸収軸が平行になるようにした。
(実施例2)
<透明支持体B>
TD80UL(富士フイルム社製)を用意し、透明支持体Bとして使用した。TD80ULの膜厚は80μmであり、紫外線吸収剤を含有しており、面内レターデーションRe(550)は2nm、厚み方向のレターデーションRth(550)は40nmであった。
<パターン化された光学異方性層Bの作製>
透明支持体Aを上記透明支持体Bに変更し、ラビング配向膜塗布液を下記組成に変更した以外は実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層Bの作製を行った。なお、配向膜の膜厚は、0.5μmであり、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
────────────────────────────────────────
配向層用組成
────────────────────────────────────────
配向膜用ポリマー材料 3.9質量部
(PVA103、クラレ(株)製ポリビニルアルコール)
光酸発生剤(I−33) 0.1質量部
メタノール 36質量部
水 60質量部
────────────────────────────────────────
光酸発生剤I−33
Figure 0005697634
形成されたパターン光学異方性層Aの第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域をそれぞれTOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法、ION−TOF社製TOF−SIMS V)により分析したところ、第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域では、対応する配向層中における光酸発生剤I−33の存在比が32対2対92であり、第1位相差領域では約70%のI-33が分解し、第2位相差領域ではI−33がほとんど分解していることがわかった。また、光学異方性層においては、第1位相差領域及び第2位相差領域の空気界面に、II−1のカチオン及び光酸発生剤I−33から発生した酸HBF4のアニオンBF4 -が存在していることが確認された。第3位相差領域の空気界面には、これらのイオンはほとんど観測されず、II−1のカチオン及びBr-が配向膜界面近傍に存在していることがわかった。空気界面におけるそれぞれのイオンの存在比は、II−1のカチオンは60対93対7、BF4 -は55対90対4であった。このことから、第3位相差領域中、配向膜界面配向剤(II−1)は配向膜界面に偏在しているが、第1位相差領域では偏在性が減少し、空気界面にも拡散していること、第2位相差領域では偏在性が著しく減少し、ほとんどが空気界面に拡散していることがわかった。第1位相差領域及び第3位相差領域においては、発生した酸HBF4とII−1がアニオン交換することによってII−1カチオンの拡散が促進されていることが理解できる。
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層Bを透明支持体Bから剥離した後、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶の配向、空気界面のディスコティック液晶の配向、遅相軸の方向、及びReをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。
表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、光酸発生剤を含有したPVA系ラビング配向膜にハーフトーンマスク露光した後、一方向にラビング処理した該配向膜上で配向させることによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第3位相差領域、及び、ハイブリッド配向である第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<偏光板Bの作製>
上記作製したパターン化された光学異方性層B面と実施例1で作製した偏光板Aのポリビニルアルコールフィルム面を接着剤で貼り合せ、偏光板Bを作製した。このときパターン化された光学異方性層Bの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45°になるように、かつ、光学異方性層Bのストライプと吸収軸が平行になるようにした。
(実施例3)
<パターン化された光学異方性層Cの作製>
ハーフトーンマスクを第一の透過部のUV-C領域の光の透過率は約10%、第二の透過部の透過率は約60%のものに変更した以外は実施例2と同様の操作にてパターン化された光学異方性層Cの作製を行った。なお、配向膜の膜厚は、0.5μmであり、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
形成されたパターン光学異方性層Cの第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域をそれぞれTOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法、ION−TOF社製TOF−SIMS V)により分析したところ、第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域では、対応する配向層中における光酸発生剤I−33の存在比が32対15対92であり、第1位相差領域では約70%のI−33が分解し、第2位相差領域では約80%が分解していることがわかった。また、光学異方性層においては、第1位相差領域及び第2位相差領域の空気界面に、II−1のカチオン及び光酸発生剤I−33から発生した酸HBF4のアニオンBF4 -が存在していることが確認された。第3位相差領域の空気界面には、これらのイオンはほとんど観測されず、II−1のカチオン及びBr-が配向膜界面近傍に存在していることがわかった。空気界面におけるそれぞれのイオンの存在比は、II−1のカチオンは60対80対7、BF4 -は55対80対4であった。このことから、第3位相差領域中、配向膜界面配向剤(II−1)は配向膜界面に偏在しているが、第1位相差領域では偏在性が減少し、空気界面にも拡散していること、第2位相差領域では偏在性が著しく減少し、約80%が空気界面に拡散していることがわかった。第1位相差領域及び第2位相差領域においては、発生した酸HBF4とII−1がアニオン交換することによってII−1カチオンの拡散が促進されていることが理解できる。
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層Cを透明支持体Bから剥離した後、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶の配向、空気界面のディスコティック液晶の配向、遅相軸の方向、及びReをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。
表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、光酸発生剤を含有したPVA系ラビング配向膜にハーフトーンマスク露光した後、一方向にラビング処理した該配向膜上で配向させることによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第3位相差領域、及び、ハイブリッド配向である第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<偏光板Cの作製>
上記作製したパターン化された光学異方性層C面と実施例1で作製した偏光板Aのポリビニルアルコールフィルム面を接着剤で貼り合せ、偏光板Cを作製した。このときパターン化された光学異方性層Cの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45°になるように、かつ、光学異方性層Cのストライプと吸収軸が平行になるようにした。
(実施例4)
<透明支持体B>
TD80UL(富士フイルム社製)を用意し、透明支持体Bとして使用した。TD80ULの膜厚は80μmであり、紫外線吸収剤を含有しており、面内レターデーションRe(550)は2nm、厚み方向のレターデーションRth(550)は40nmであった。
<光配向膜付透明支持体Bの作製>
透明支持体Bに、下記構造の光配向材料E−1の1%水溶液を塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射した。このとき、ワイヤーグリッド偏光子(Moxtek社製、ProFlux PPL02)を図8(a)に示すように、方向1にセットして、さらにマスクA(透過部の横ストライプ幅570μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。その後、図8(b)に示すように、ワイヤーグリッド偏光子を方向2にセットして、さらにマスクB(透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅570μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。露光マスク面と光配向膜の間の距離を200μmに設定した。この際用いる紫外線の照度はUV−A領域(波長380nm〜320nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において1000mJ/cm2とした。
Figure 0005697634
<パターン化された光学異方性層Dの作製>
下記の光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、塗布液として用いた。光配向膜付透明支持体A上に該塗布液を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、75℃まで冷却して、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射して、その配向状態を固定化した。このとき、図9に示すように、まず、図8(a)に示した透過部の領域(A)及び遮光部の領域(C)をマスク露光し配向状態を固定化した後、さらに95℃まで加熱し、残った未露光部分である領域(B)を露光して配向状態を固定化した。このようにして、パターン化された光学異方性層Dの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、1.3μmであった。
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光学異方性層用組成
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棒状液晶(LC242、BASF(株)製) 100質量部
空気界面配向剤A 0.3質量部
光重合開始剤 3.3質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.1質量部
メチルエチルケトン 300質量部
────────────────────────────────────────
棒状液晶LC242:WO2010/090429A2記載の棒状液晶
Figure 0005697634
水平配向剤A
Figure 0005697634
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層Dを透明支持体Bから剥離した後、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面の棒状液晶の配向、空気界面の棒状液晶の配向、遅相軸の方向、及びReをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、水平とは、チルト角0°〜20°を表す。
表1に示す結果から、棒状液晶を、偏光露光した光配向膜の存在下で配向させた後、滋紫外線照射による固定化する温度を変えることで、水平配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第3位相差領域、及び、水平配向であるとともに、遅相軸が第一位相差領域と同一で、面内レターデーションが異なる第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<偏光板Dの作製>
上記作製したパターン化された光学異方性層D面と実施例1で作製した偏光板Aのポリビニルアルコールフィルム面を接着剤で貼り合せ、偏光板Dを作製した。このときパターン化された光学異方性層Dの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45°になるように、かつ、光学異方性層Dのストライプと吸収軸が平行になるようにした。
(実施例5)
<透明支持体Cの作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Cを調製した。
────────────────────────────────────
セルロースアシレート溶液Cの組成
────────────────────────────────────
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
────────────────────────────────────
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液Bを調製した。
────────────────────────────────────
添加剤溶液Bの組成
────────────────────────────────────
下記化合物B1(Re低下剤) 40質量部
下記化合物B2(波長分散制御剤) 4質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 80質量部
メタノール(第2溶媒) 20質量部
────────────────────────────────────
化合物B1
Figure 0005697634
化合物B2
Figure 0005697634
<<セルロースアセテート透明支持体Cの作製>>
セルロースアシレート溶液Cを477質量部に、添加剤溶液Bの40質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3〜5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み60μmのセルロースアセテート保護フィルム(透明支持体C)を作製した。透明支持体Cは紫外線吸収剤を含有しておらず、Re(550)は0nmであり、Rth(550)は12.3nmであった。
<<アルカリ鹸化処理>>
セルロースアセテート透明支持体Cを、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアセテート透明支持体Cを作製した。
────────────────────────────────────
アルカリ溶液の組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
<パターン化された光学異方性層Eの作製>
透明支持体Aを上記透明支持体Cに変更した以外は実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層Eの作製を行った。なお、配向膜の膜厚は、0.5μmであり、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層Eを透明支持体Cから剥離した後、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶の配向、空気界面のディスコティック液晶の配向、遅相軸の方向、及びReをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。
表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、光酸発生剤を含有したPVA系ラビング配向膜にハーフトーンマスク露光した後、一方向にラビング処理した該配向膜上で配向させることによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第3位相差領域、及び、ハイブリッド配向である第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<偏光板Eの作製>
上記作製したパターン化された光学異方性層E面と実施例1で作製した偏光板Aのポリビニルアルコールフィルム面を接着剤で貼り合せ、偏光板Eを作製した。このときパターン化された光学異方性層Eの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45°になるように、かつ、光学異方性層Eのストライプと吸収軸が平行になるようにした。
(実施例6)
<透明支持体B>
TD80UL(富士フイルム社製)を用意し、透明支持体Bとして使用した。TD80ULの膜厚は80μmであり、紫外線吸収剤を含有しており、面内レターデーションRe(550)は2nm、厚み方向のレターデーションRth(550)は40nmであった。
<パターン化された光学異方性層Fの作製>
透明支持体Aを上記透明支持体Bに変更し、光学異方性層用組成物を下記組成に変更した以外は実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層Fの作製を行った。なお、配向膜の膜厚は、0.5μmであり、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
────────────────────────────────────────
光学異方性層用組成
────────────────────────────────────────
ディスコティック液晶E−3 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 3.0質量部
空気界面配向剤(P−1) 0.4質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9.9質量部
メチルエチルケトン 400質量部
────────────────────────────────────────
ディスコティック液晶E−3
Figure 0005697634
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層Fを透明支持体Bから剥離した後、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶の配向、空気界面のディスコティック液晶の配向、遅相軸の方向、及びReをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。
表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、光酸発生剤を含有したPVA系ラビング配向膜にハーフトーンマスク露光した後、一方向にラビング処理した該配向膜上で配向させることによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第3位相差領域、及び、ハイブリッド配向である第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
<偏光板Fの作製>
上記作製したパターン化された光学異方性層F面と実施例1で作製した偏光板Aのポリビニルアルコールフィルム面を接着剤で貼り合せ、偏光板Fを作製した。このときパターン化された光学異方性層Fの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45°になるように、かつ、光学異方性層Fのストライプと吸収軸が平行になるようにした。
(実施例7)
<偏光板Gの作製>
偏光板をワイヤーグリッドタイプの偏光子に変更し、該ワイヤーグリッドを間に挟むように、両面からパターン化された光学異方性層A面とTD80ULで接着剤で貼り合せ、偏光板Gを作製した。このときパターン化された光学異方性層Aの遅相軸とワイヤーグリッドの吸収軸のなす角度が±45°になるように、かつ、光学異方性層Aのストライプと吸収軸が平行になるようにした。
(比較例1)
<パターン化された光学異方性層Hの作製>
ハーフトーンマスクを、第一の透過部のUV-C領域の光の透過率は約10%、第二の透過部の透過率は約10%のものに変更した以外は実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層Hの作製を行った。なお、配向膜の膜厚は、0.5μmであり、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層Hを透明支持体Aから剥離した後、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶の配向、空気界面のディスコティック液晶の配向、遅相軸の方向、及びReをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。
表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、光酸発生剤を含有したPVA系ラビング配向膜にハーフトーンマスク露光した後、一方向にラビング処理した該配向膜上で配向さたが、第一の透過部と第二の透過部の露光量が等しいため、第1位相差領域と第2位相差領域の遅相軸は平行であり、正面レターデーションも同一であった。
<偏光板Hの作製>
上記作製したパターン化された光学異方性層H面と実施例1で作製した偏光板Aのポリビニルアルコールフィルム面を接着剤で貼り合せ、偏光板Hを作製した。このときパターン化された光学異方性層Hの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45°になるように、かつ、光学異方性層Hのストライプと吸収軸が平行になるようにした。
(評価)
<セキュリティ製品の評価>
結果を表1に示す。評価が良いものから順に、○、○△、△、×となる。作製した各偏光板は、そのまま自然光の下で観察しても均一なフィルムとして認識されるだけであった。次に、偏光板をかざして観察した場合、かざした偏光板の吸収軸をセキュリティ製品の吸収軸と直交させたとき、実施例1、2、5、7の製品では各領域のRe差が大きいため高いコントラストで像を観察することができた。一方、比較例1では、各領域のRe値が同一であり、その円偏光状態も(右左の相違はあるものの)同一であるため、自然光の下で観察したのと同様、均一なフィルムとして認識されるだけであった。
<耐光性の評価>
耐光性試験装置(スーパーキセノンウェザーメーターSX120型(ロングライフキセノンランプ)、スガ試験機(株)製)を用い、放射照度100±25W/m2(波長310nm〜400nm)、試験槽内温度35±5℃、ブラックパネル温度50±5℃、相対湿度65±15%の条件で、JIS K 5600−7−5に準じて耐光性試験25hrを実施した前後に、パターン化された光学異方性の変化や偏光板の偏光度の変化を調べた。変化率が5%以内である場合を◎、10%以内である場合を○、それより大きい場合を△とした。結果を表1に示す。
Figure 0005697634
(実施例8)
<偏光板AAの作製>
TD80UL(富士フイルム社製、550nmにおけるRe/Rth=2/40)を偏光板AA用保護フィルムAAとして使用し、この表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理したTD80ULの鹸化面とポリビニルアルコールフィルムを貼り合わせ、さらに、パターン化された光学異方性層Aの透明支持体A面とポリビニルアルコールフィルムを接着剤で貼り合せ、TD80ULとパターン化された光学異方性層Aが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板AAを作製した。このとき位相差フィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が45°になるように、かつ、位相差フィルムのストライプと吸収軸が直交するようにした。
最後に、前記偏光板AAと実施例1で作製した偏光板Aを図7の状態(B)に示すように貼り合せた。特に、実施例8では、3つの領域でReが異なっており、より偽造防止効果の大きい製品となっていることがわかった。
1 第1位相差領域
2 第2位相差領域
3 第3位相差領域
10 パターン光学異方性層
11 透明支持体
12 配向膜
13 偏光膜
14 偏光膜保護膜
15 ガラス基板

Claims (19)

  1. 少なくとも、第1位相差領域と、第2位相差領域と、第3位相差領域を含むパターン光学異方性層を有し、該少なくとも、第1位相差領域と、第2位相差領域と、第3位相差領域とは、同一面内において任意の順番にて順次隣接して配置されており、
    前記第1位相差領域と、前記第3位相差領域とは、面内遅相軸方向が互いに異なり、
    前記第2位相差領域は、前記第1位相差領域および第3位相差領域の何れか一方と、面内遅相軸方向が平行であり、かつ、面内レターデーションが異なり、
    偏光膜を更に有し、
    前記少なくとも第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域がストライプ状に形成されており、
    前記ストライプ状の少なくとも前記第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域の延在方向と、前記偏光膜の吸収軸とは、平行または直交することを特徴とする、光学フィルム。
  2. 少なくとも、第1位相差領域と、第2位相差領域と、第3位相差領域を含むパターン光学異方性層を有し、該少なくとも、第1位相差領域と、第2位相差領域と、第3位相差領域とは、同一面内において任意の順番にて順次隣接して配置されており、
    前記第1位相差領域と、前記第3位相差領域とは、面内遅相軸方向が互いに異なり、
    前記第2位相差領域は、前記第1位相差領域および第3位相差領域の何れか一方と、面内遅相軸方向が平行であり、かつ、面内レターデーションが異なり、
    偏光膜を更に有し、
    前記第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域の面内遅相軸と、前記偏光膜の吸収軸とがそれぞれ±45°の角度をなすことを特徴とする、光学フィルム。
  3. 少なくとも、第1位相差領域と、第2位相差領域と、第3位相差領域を含むパターン光学異方性層を有し、該少なくとも、第1位相差領域と、第2位相差領域と、第3位相差領域とは、同一面内において任意の順番にて順次隣接して配置されており、
    前記第1位相差領域と、前記第3位相差領域とは、面内遅相軸方向が互いに異なり、
    前記第2位相差領域は、前記第1位相差領域および第3位相差領域の何れか一方と、面内遅相軸方向が平行であり、かつ、面内レターデーションが異なり、
    前記第2位相差領域のRe(550)と、前記第1位相差領域および第3位相差領域のうち前記第2位相差領域と遅相軸方向とが平行である位相差領域のRe(550)の差が20nm以上であることを特徴とする、光学フィルム。
  4. 偏光膜を更に有する、請求項3に記載の光学フィルム。
  5. 前記パターン光学異方性層が、波長550nmの面内レターデーションRe(550)が0〜10nmの透明支持体上に形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  6. 前記少なくとも第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域がストライプ状に形成されている、請求項2〜5の何れか1項に記載の光学フィルム。
  7. 前記少なくとも第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域がストライプ状に形成されており、
    前記ストライプ状の少なくとも前記第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域の延在方向と、前記偏光膜の吸収軸とは、平行または直交する、請求項2又は4に記載の光学フィルム。
  8. 前記第1位相差領域および第3位相差領域の波長550nmの面内レターデーションRe(550)が、それぞれ、100〜190nmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  9. 前記第2位相差領域の波長550nmの面内レターデーションRe(550)が、50〜150nmである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  10. 前記第2位相差領域のRe(550)と、前記第1位相差領域および第3位相差領域のうち前記第2位相差領域と遅相軸方向とが平行である位相差領域のRe(550)の差が20nm以上である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
  11. 前記光学フィルムを構成するいずれかの層が紫外線吸収剤を含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  12. 前記第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域が、それぞれ、重合性基を有するディスコティック液晶化合物を主成分とする組成物から形成されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  13. 前記第1位相差領域、第2位相差領域、及び第3位相差領域の少なくとも1領域において、前記ディスコティック液晶の配向状態が、垂直配向状態に固定されている、請求項12に記載の光学フィルム。
  14. 前記パターン光学異方性層が、一方向に配向処理された配向膜上に形成されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  15. 前記配向膜が、一方向にラビング処理されたラビング配向膜である、請求項14に記載の光学フィルム。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の光学フィルム2枚を有することを特徴とする、偏光膜対。
  17. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の光学フィルムを使用したことを特徴とする、セキュリティ製品。
  18. 透明支持体の片面又は両面に請求項1〜15のいずれか1項に記載の光学フィルムを少なくとも2枚有し、該少なくとも2枚の光学フィルムのうち、少なくとも一枚の光学フィルムを可動とし、該可動である光学フィルムの移動に伴い透光量を調整できるようにしたことを特徴とする、セキュリティ製品。
  19. 偏光膜を用いて製品を観察して、
    請求項18に記載のセキュリティ製品を有する製品が真正品であることを判別することを特徴とする、真贋判定方法。
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