JP2013073022A - 複屈折パターンを有する物品 - Google Patents

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怜男奈 池田
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Ichiro Amimori
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Abstract

【課題】液晶性化合物を含む組成物から形成された層を含む複屈折パターンを有する物品であって、耐薬品性がよく、人体への悪影響が少ない物品の提供。
【解決手段】複屈折性が異なる領域を二つ以上含むパターン化光学異方性層を含む物品であって、前記パターン化光学異方性層が少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された光学異方性層から作製された層であり、前記パターン化光学異方性層における前記液晶性化合物の残存量が前記パターン化光学異方性層の質量に対して、0〜15質量%である物品。前記組成物は好ましくは前記液晶性化合物が有する反応性基と反応できる反応性基を3つ以上有するモノマーを含む。
【選択図】なし

Description

本発明は複屈折パターンを有する物品に関する。より詳しくは、本発明は液晶性化合物を含む組成物から形成された層を含む複屈折パターンを有する物品に関する。
複屈折パターンを有する物品は、偏光性を有しない光源では不可視であるが、偏光フィルタにより可視化することが可能となる潜像を有する。複屈折パターンを有する物品は反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物を用いて作製することが可能である(特許文献1〜5)。
しかし、液晶性化合物を用いて作製された複屈折パターンを有する物品は、耐薬品性が悪かったり、人体に影響して皮膚のかぶれなどを引き起こしたりする場合がある。
特開2009−69793号公報 特開2010−113249号公報 特開2009−175208号公報 特開2008−80501号公報 特開2008−83093号公報
本発明は、液晶性化合物を含む組成物から形成された層を含む複屈折パターンを有する物品であって、耐薬品性がよく、人体への悪影響が少ない物品の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意研究を重ねてきた。反応性基を有する液晶性化合物は光照射等により反応して重合し複屈折性の層を形成するが、作製された層には重合せずに未反応の液晶性化合物が残存する。本発明者らはこのような未反応の液晶性化合物の量が、人体への影響や耐薬品性に関わっていることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、以下[1]〜[8]を提供するものである。
[1]複屈折性が異なる領域を二つ以上含むパターン化光学異方性層を含む物品であって、
前記パターン化光学異方性層が少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された光学異方性層から作製された層であり、
前記パターン化光学異方性層における前記液晶性化合物の残存量が前記パターン化光学異方性層の質量に対して、0〜15質量%である物品。
[2]前記組成物が、前記液晶性化合物が有する反応性基と反応できる反応性基を3つ以上有するモノマーを、前記光学異方性層形成前の前記組成物中の前記液晶性化合物の質量に対して0.1質量%〜50質量%含む[1]に記載の物品。
[3]前記モノマーが液晶性を有さないモノマーである[2]に記載の物品。
[4]前記モノマーの反応性基の少なくとも1つがアクリル基、メタクリル基またはエポキシ基である[2]または[3]に記載の物品。
[5]前記液晶性化合物がラジカル重合性の反応性基またはカチオン重合性の反応性基を有する[1]〜[4]のいずれか一項に記載の物品。
[6]前記液晶性化合物が1分子中にラジカル重合性の反応性基およびカチオン重合性の反応性基を有する[1]〜[4]のいずれか一項に記載の物品。
[7]前記ラジカル重合性の反応性基がアクリル基およびメタクリル基から選択される1つ以上の基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基およびエポキシ基から選択される1つ以上の基である[5]または[6]に記載の物品。
[8]前記パターン化光学異方性層が、以下の工程を含む方法で形成された層である[1]〜[7]のいずれか一項に記載の物品。
(1)前記組成物を加熱または光照射して前記光学異方性層を形成する工程
(2)前記光学異方性層をパターン露光する工程;
(3)前記パターン露光後の層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
本発明により、液晶性化合物を含む組成物から形成された層を含む複屈折パターンを有する物品であって、耐薬品性がよく、人体への悪影響が少ない物品が提供される。
基本的な複屈折パターンを有する物品(透過型および反射型)の構成を模式的に示す図である。 支持体上にパターン化光学異方性層を有する複屈折パターンを有する物品の構成を模式的に示す図である。 配向層を有する複屈折パターンを有する物品の構成を模式的に示す図である。 粘着層を有する複屈折パターンを有する物品の構成を模式的に示す図である。 印刷層を有する複屈折パターンを有する物品の構成を模式的に示す図である。 力学特性制御層および転写層を有する転写型の複屈折パターンを有する物品の構成を模式的に示す図である。 添加剤層を有する複屈折パターンを有する物品の構成を模式的に示す図である。 パターン化光学異方性層を複数有する複屈折パターンを有する物品の構成を模式的に示す図である。 基本的な複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。 支持体または仮支持体上に光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。 配向層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。 粘着層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。 印刷層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。 力学特性制御層および転写層を有する転写型複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。 添加剤層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。 光学異方性層を複数有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。 実施例で行った露光のパターンを示す図である。 実施例の複屈折パターンを有する物品を偏光板を介して観察した際に視認されるパターンの拡大図である。 実施例の複屈折パターンを有する物品に粘着剤シートを貼り付けてシール化した後に適当な大きさに切断し、商品券に貼り付けた例を示す図である
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、レターデーションは透過または反射の分光スペクトルから、Journal of Optical Society of America,vol.39,p.791−794(1949)や特開2008−256590号公報に記載の方法を用いて位相差に換算する、スペクトル位相差法を用いて測定することができる。前記文献は透過スペクトルを用いた測定法であるが、特に反射の場合は、光が光学異方性層を2回通過するため、反射スペクトルより換算された位相差の半分を光学異方性層の位相差とすることができる。レターデーションは特に指定がなければ正面レタ−デーションを指す。本明細書におけるレターデーションは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmの波長で測定されたものを意味し、特に色に関する記載がなければ545±5nmの波長で測定されたものを意味する。
本明細書において、レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。さらに、レターデーションが実質的に0とは、レターデーションが5nm以下であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域の任意の波長を指す。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
[複屈折パターンの定義]
複屈折パターンとは、広義には複屈折性の異なる2つ以上の領域が2次元の面内または3次元的に配置されて描かれたパターンを差す。なお特に2次元の面内においては、複屈折性は屈折率が最大となる遅相軸の方向と領域内のレターデーションの大きさの2つのパラメータにより定義される。例えば液晶性化合物による位相差フィルムなどにおける面内の配向欠陥や厚み方向の液晶の傾斜分布も広義には複屈折パターンと言えるが、狭義にはあらかじめ決めたデザインなどを基に、意図して複屈折性を制御してパターン化したものを複屈折パターンと定義することが望ましい。複屈折パターンは特に記載しない限り、複数層に渡っていてもよく、複数層のパターンの境界は一致していても異なっていてもよい。
[複屈折パターンを有する物品]
本明細書において、「複屈折パターンを有する物品」とは、複屈折性の異なる領域を2つ以上有する物品を意味する。本発明の物品は、パターン化光学異方性層を含む。本発明の物品は、パターン化光学異方性層のほか、後述する各種機能層を含んでいてもよい。本発明の物品は、基材上に直接、または他の層を介して後述の光学異方性層を塗布し、乾燥、パターン露光などの工程を経て形成されたものであってもよく、仮支持体および接着層等を有する複屈折パターン転写箔から、所定のプロセスを経ることによりパターン化光学異方性層を基材となる物品に転写させて形成されたものであってもよい。複屈折パターン転写箔を用いる態様については特開2010−113249号公報の記載を参照できる。
[パターン化光学異方性層]
本明細書において「パターン化光学異方性層」とは複屈折パターンを有する光学異方性層のことであり、複屈折性の異なる領域を2つ以上有する光学異方性層を意味する。パターン化光学異方性層は複屈折性の異なる領域を3つ以上有することがさらに好ましい。複屈折性が同一である個々の領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。パターン化光学異方性層は例えば、後述のように、液晶性化合物を含む組成物から形成された層を用い、パターン露光を含む方法で複屈折のパターンを形成することによって作製される。
本発明の物品は、パターン化光学異方性層において、未反応で残存する液晶性化合物の量がパターン化光学異方性層の質量に対し0〜15質量%であり、好ましくは0〜10質量%である。上記の量が15質量%を超えると、物品のパターン化光学異方性層部分の耐薬品性が悪くなったり、皮膚のかぶれを起こしやすくなったりする。未反応で残存する液晶性化合物の量はパターン化光学異方性層をメタノールで抽出し、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で対象の液晶性化合物を定量することにより確認できる。
[複屈折パターンを有する物品の構成]
図1〜8は、複屈折パターンを有する物品の例である。複屈折パターンを有する物品は少なくとも一層のパターン化光学異方性層101を有する。本明細書において「パターン化光学異方性層」とは複屈折性が異なる領域をパターン状に有する光学異方性層を意味する。パターン化光学異方性層は例えば後述の複屈折パターン作製材料を用いて容易に作製することができる。
図では複屈折性が異なる領域を101A、101B、101Cとして例示する。
図1(a)、(b)はそれぞれ、最も基本的な透過型および反射型の本発明の物品の構成を示す。
透過型の場合、パターン化光学異方性層を挟んで、光源および観測点は反対側にあり、偏光フィルタなどを用いて作製された偏光光源から出た光がパターン化光学異方性層を通過して面内で異なる楕円偏光が出射され、観測点側でさらに偏光フィルタを通過させて情報を可視化する。ここで偏光フィルタは直線偏光フィルタでも円偏光フィルタでも楕円偏光フィルタでもよく、偏光フィルタ自身が複屈折パターンまたは二色性パターンを有していてもよい。
反射型の場合、光源および観測点はいずれも、パターン化光学異方性層から見て片側にあり、反対側の面には反射層がある。偏光フィルタなどを用いて作製された偏光光源から出た光がパターン化光学異方性層を通過、反射層で反射して再び複屈折パターンを有する物品を通過して面内で異なる楕円偏光が出射され、観測点側でさらに偏光フィルタを通過させて情報を可視化する。ここで偏光フィルタは直線偏光フィルタでも円偏光フィルタでも楕円偏光フィルタでもよく、偏光フィルタ自身が複屈折パターンまたは二色性パターンを有していてもよい。また、光源と観測で同一の偏光フィルタを用いてもよい。反射層13は反射性の高いホログラム層や電極層などと兼ねてもよい。反射層は支持体からみてパターン化光学異方性層側でも反対側でもよいが、支持体の制約が少ないことからパターン化光学異方性層側であることが好ましい。
さらに反射層は部分的に光を反射し、部分的に光を透過する半透過半反射層でもよく、その場合複屈折パターンを有する物品は透過、反射の両方の画像を可視化させることができるだけでなく、複屈折パターンを有する物品の半透過半反射層の下側にある文字や画像などの一般的な情報を光学異方性層の上側からフィルタなしに視認することができる。
図2(a)、(b)は支持体又は仮支持体(11)上にパターン化光学異方性層101を有する、それぞれ透過型、反射型の例である。仮支持体の場合、仮支持体を剥離後、粘着剤や接着剤を用いて対象とする物品にパターン化光学異方性層101を転写することも可能である。
図3(a)、(b)に示す複屈折パターンを有する物品は配向層14を有する例である。配向層14は液晶性化合物の配向を助けるための層として機能する。
図4(a)〜(d)は粘着層15を有する物品の例である。シールラベルのような物品を作製するときに粘着層が必要となる。一般に粘着層には離型紙または離型フィルムが貼合されており、実用性の観点から好ましい。さらには、一旦対象物に貼合した後、剥離しようとすると特定のパターンで対象物に粘着剤が残るような特殊粘着層でもよい。
図5(a)〜(c)は印刷層16を有する本発明の物品の例である。印刷層は不可視な複屈折パターンに重ねて可視の画像を与えるものが一般的だが、たとえばUV蛍光染料やIR染料などによる不可視なセキュリティ印刷と組み合わせることもできる。印刷層は光学異方性層の上でも下でも、さらには支持体からみて光学異方性層と反対側でもよく、印刷層に透過性があれば複屈折パターンによる潜像をフィルタで可視化した際、印刷と潜像が重なって見えるようになる。
図6(a)〜(d)は力学特性制御層17および転写層18を有する転写型の複屈折パターンを有する物品の例である。力学特性制御層は転写層が対象物に接触した際、所定の条件を満たしたときに対象物に光学異方性層が転写するように剥離性をコントロールする層である。力学特性制御層としては、隣接する層との剥離性を付与する剥離層や、転写時に均一に応力をかけることにより転写性を向上させるクッション層のようなものが挙げられる。転写層としては一般的な粘着剤、接着剤の他、熱により接着性を発現するホットメルト接着剤、紫外線照射によって接着性を発現するUV接着剤、さらには接着剤を転写したいパターンに印刷した層が挙げられる。図には示さないが、配向層と力学特性制御層を兼ねてもよい。また、反射層のない転写型材料でも、対象物が反射性を有していれば反射型にすることができる。
図7(a)〜(d)は、添加剤層を有するものである。添加剤層には、後述のように光学異方性層に可塑剤や光重合開始剤を後添加するための層、表面保護のためのハードコート層、指紋付着やマジックペンによる落書き防止の撥水層、タッチパネル性を付与する導電層、赤外線を透過させないことにより赤外線カメラで見えなくする遮蔽層、左右円偏光のいずれかを通過させないことにより円偏光フィルタで画像を見えなくする円偏光選択反射層、光学異方性層に感光性を付与する感光層、RFIDのアンテナとして作用するアンテナ層、水没した際に変色するなどして水没を検知する水没検知層、温度により色の変わるサーモトロピック層、潜像の色を制御する着色フィルタ層、透過型で光源側の偏光/非偏光を切り替えると潜像が可視化する偏光層、磁気記録性を付与する磁性層等の他、マット層、散乱層、潤滑層、感光層、帯電防止層、レジスト層などとしての機能を有するものが含まれる。
図8(a)〜(c)に示す複屈折パターンを有する物品は、パターン化光学異方性層を複数有するものである。複数の光学異方性層の面内遅相軸は同一でも異なっていてもよい。複数の光学異方性層の複屈折性が異なる領域は互いに同一でも異なっていてもよい。図には示さないが、パターン化光学異方性層は3つ以上あってもよい。レターデーションあるいは遅相軸の向きが互いに異なる光学異方性層を2層以上設け、それぞれに独立したパターンを与えることにより、さらに多彩な機能を有する潜像を形成することができる。
[複屈折パターン作製材料]
以下に、複屈折パターン形成法の一例である、複屈折パターン作製材料を用いる方法について説明する。複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経ることで複屈折パターンを有する物品を作成することができる材料を指す。複屈折パターンの形成法については、特に記載がない限りこの方法に限定されない。
複屈折パターン作製材料は通常、フィルム、またはシート形状であればよい。複屈折パターン作製材料は、光学異方性層又は、光学異方性層のみからなるもののほか、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有しているものであってもよい。機能性層としては、支持体、配向層、反射層、粘着層などが挙げられる。また、転写材料として用いられる複屈折パターン作製用材料、又は転写材料を用いて作製された複屈折パターン作製材料などにおいて、仮支持体、力学特性制御層を有していてもよい。
図9(a)に示す複屈折パターン作製材料は、光学異方性層12のみからなる複屈折パターン作製材料の例である。 光学異方性層は、複屈折性を有する層であり、液晶性化合物から形成された層である。例えば、仮支持体上に適用された液晶性化合物を含む組成物を加熱または光照射した結果、得られた層が自己支持性を有する場合、仮支持体を剥離することにより 図9(a)に示す複屈折パターン作製材料が作製できる。
光学異方性層から、後述の方法などにより、パターン化光学異方性層を形成される。パターン形成のためには、フォトマスクによる露光あるいは走査露光などのパターン露光を用いることが好ましい。該パターニング工程に加えて必要に応じて熱や薬液による漂白、現像などと組み合わせてパターンを形成することもできる。この場合支持体の制約が少ないことから熱による漂白、現像が好ましい。図9(b)に示す複屈折パターン作製材料は、自己支持性を有する光学異方性層12に反射層13を付した例である。
図10(a)、(b)は支持体または仮支持体11上に光学異方性層12を有する例である。仮支持体の場合、粘着剤や接着剤を用いて対象とする物品に光学異方性層を転写することも可能である。
図11(a)〜(c)に示す複屈折パターン作製材料は配向層14を有する例である。
図12(a)〜(d)は粘着層を有する複屈折パターン作製材料の例である。
図13(a)〜(d)は印刷層を有する複屈折パターン作製材料の例である。
図14(a)〜(d)は力学特性制御層および転写層を有する転写型複屈折パターン作製材料の例である。
図15(a)〜(d)は添加剤層を有する複屈折パターン作製材料の例である。
図16(a)〜(d)に示す複屈折パターン作製材料は光学異方性層を複数有するものである。複数の光学異方性層の面内遅相軸は同一でも異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。図には示さないが、光学異方性層は3つ以上あってもよい。複屈折パターン作製材料は配向層を含むことが好ましいが、光学異方性層自体が配向層を兼ねることで図16(c)のように配向層を省略することもできる。転写型複屈折パターン作製材料を用いれば、複屈折パターンを有する層を複数有する物品の作製を容易に行うことができる。
例えば特開2009−175208号公報に記載のような感光性を有する複屈折パターン作製材料を用いた場合、露光量により照射部のレターデーションを制御することができ、未露光部のレターデーションを実質的に0にすることもできる。
以下、複屈折パターン作製材料、それを用いた複屈折パターンを有する物品の作製方法および複屈折パターンを有する物品の材料、作製方法等について、詳細に説明する。ただし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、他の態様についても、以下の記載および従来公知の方法を参考にして実施可能であって、本発明は以下に説明する態様に限定されるものではない。
[光学異方性層]
複屈折パターン作製材料における光学異方性層は、レターデーションを測定したときにレターデーションが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有する層である。
光学異方性層は20℃においてレターデーションが5nm以上であればよく、10nm以上10000nm以下であることが好ましく、20nm以上2000nm以下であることが最も好ましい。レターデーションが5nm以下では複屈折パターンの形成が困難である場合がある。レターデーションが10000nmを越えると、誤差が大きくなり実用できる精度を達成することが困難である場合がある。
光学異方性層は、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物および後述のモノマーを含む組成物から形成すればよい。例えば光学異方性層は、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物および後述の反応性基を3つ以上有するモノマーを含む溶液を支持体上に塗布して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化して作製すればよい。光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
[液晶性化合物]
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物を用いることが好ましい。
なお、本明細書において、液晶性化合物を含む組成物から形成された層について記載されるとき、この形成された層において液晶性を有する化合物が含まれる必要はない。例えば、前記低分子液晶性化合物が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものが含まれる層であってもよい。また、液晶性化合物としては、2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。2種以上の液晶性化合物の混合物の場合、少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
好ましくは、架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有する液晶性化合物を用い、条件を選択して2種類以上の反応性基の一部の種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有するポリマーを含む光学異方性層を作製するとよい。架橋機構としては縮合反応、水素結合、重合など特に限定はないが、2種以上のうち少なくとも一方は重合が好ましく、2種類以上の異なる重合を用いることがさらに好ましい。一般に架橋反応は、重合に用いられるビニル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基だけでなく、水酸基、カルボン酸基、アミノ基なども用いることができる。
本明細書において、架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有する化合物とは、段階的に異なる架橋反応工程を用いて架橋させる化合物であり、各段階の架橋反応工程では、それぞれの架橋機構に応じた反応性基が官能基として反応する。また、例えば側鎖に水酸基を有するポリビニルアルコールのようなポリマーの場合で、ポリマーを重合する重合反応を行った後、側鎖の水酸基をアルデヒドなどで架橋させた場合は2種類以上の異なる架橋機構を用いたことになるが、本明細書において2種類以上の異なる反応性基を有する化合物というときは、好ましくは、支持体等の上に層を形成した時点において該層中で2種類以上の異なる反応性基を有する化合物であって、その後にその反応性基を段階的に架橋させることができる化合物であればよい。特に好ましい態様として2種以上の重合性基を有する液晶性化合物を用いることが好ましい。段階的に架橋させる反応条件として、温度の違い、光(照射線)の波長の違い、重合機構の違いのいずれでもよいが、反応を分離しやすい点から重合機構の違いを用いることが好ましく、用いる開始剤の種類によって制御することがさらに好ましい。重合機構としては、ラジカル重合性基とカチオン重合性基の組み合わせが好ましい。前記ラジカル重合性基がビニル基、(メタ)アクリル基であり、かつ前記カチオン重合性基がエポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。以下に反応性基の例を示す。
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく 用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。棒状液晶性化合物の例としては特開2008−281989号公報に記載のものが挙げられる。
以下に、棒状液晶性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
本発明の他の態様として、前記光学異方性層に円盤状液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の円盤状液晶性化合物の層または重合性の円盤状液晶性化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であることが好ましい。前記円盤状液晶性化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記円盤状液晶性化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基(L)が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的に円盤状液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。円盤状液晶性化合物の例としては特開2008−281989号公報に記載のものが挙げられる。
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体、又は全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体のいずれであってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
[モノマー]
前記の液晶性化合物を含む組成物は、前記液晶性化合物が有する反応性基と反応できる反応性基を3つ以上有するモノマーを含むことが好ましい。このようなモノマーの使用により、形成されるパターン化光学異方性層中の未反応で残存する液晶性化合物の量を調整することができる。前記モノマーは、液晶性を有さないモノマーであることが好ましい。このようなモノマーの好ましい例としては前記液晶性化合物が有する反応性基にもよるが、アクリル基、メタクリル基またはエポキシ基を有するモノマーがあげられる。具体的なモノマーの例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロルプロパントリアクリレート、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物、3、4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3、'4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレートがあげられる。
モノマーは前記液晶性化合物の質量、より詳細には前記光学異方性層作製前の組成物中の前記液晶性化合物の質量に対して、0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、0.5質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.7質量%〜5質量%であることがさらに好ましい。
[溶媒]
液晶性化合物を含有する組成物を、塗布液として、例えば支持体又は後述する配向層等の表面に塗布する場合の塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
[配向固定化]
液晶性化合物の配向の固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の架橋反応により実施することが好ましく、反応性基の重合反応により実施することがさらに好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
[偏光照射による光配向]
前記光学異方性層は、偏光照射による光配向で面内のレターデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。偏光照射は、特開2009−69793号公報の段落「0091」〜「0092」の記載、特表2005−513241号公報(国際公開WO2003/054111)の記載などを参照して行うことができる。
[ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化]
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有するポリマーを含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−22〜I−25)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、10〜400mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜200mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜500mW/cm2であることが好ましく、10〜300mW/cm2であることがより好ましく、20〜100mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
[水平配向剤]
前記光学異方性層の形成用組成物中に、特開2009−69793号公報の段落「0098」〜「0105」に記載の、一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、特開2009−69793号公報の段落「0098」〜「0105」に記載の一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
[2層以上の光学異方性層]
上記のように複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層は互いにほぼ同等のレターデーションを有していてもよく、異なるレターデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いている2層以上の光学異方性層を用いることによって、大きなレターデーションを有するパターンを作製することができる。
光学異方性層を2層以上含む複屈折パターン作製材料を作製する方法としては、複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写するなどの方法が挙げられる。このうち複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
[光学異方性層の後処理]
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上の為のコロナ処理や、柔軟性向上の為の可塑剤添加、保存性向上の為の熱重合禁止剤添加、反応性向上の為のカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中のポリマーが未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて配向固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる添加剤層を用いる方法もあげられる。この際に浸漬させる添加剤、特には光重合開始剤の種類や量により、後に述べる複屈折パターン作製材料へのパターン露光時の各領域への露光量と最終的に得られる各領域のレターデーションとの関係を調整し、所望する材料特性に近づけることが可能である。
前記光学異方性層上に形成する添加剤層は、フォトレジストのような感光性樹脂層の他、反射光沢を制御する散乱層、表面の傷つきを防止するハードコート層、指紋付着やマジックなどの落書きを防止する撥水撥油層、帯電によるごみつきを防止する帯電防止層などの表面層と共用してもよい。感光性樹脂層としては、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の光重合開始剤を含んでいることが好ましい。ポリマーとしては特に限定はないが、ハードコート性を持たせるためにはTgの高い材料が好ましい。
[支持体]
複屈折パターン作製材料は、力学的な安定性を保つ目的で支持体を有してもよい。複屈折パターン作製材料における支持体がそのまま複屈折パターンを有する物品における支持体となっていてもよく、複屈折パターンを有する物品における支持体が複屈折パターン作製材料における支持体とは別に(複屈折パターン形成時または形成後に、複屈折パターン作製材料における支持体と代わって又は追加で)設けられてもよい。支持体としては特に限定はなく、剛直なものでもフレキシブルなものでもよい。剛直な支持体としては特に限定はないが表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、アルミ板、鉄板、SUS板などの金属板、樹脂板、セラミック板、石板などが挙げられる。フレキシブルな支持体としては特に限定はないがセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。取扱いの容易さから、剛直な支持体の膜厚としては、100〜3000μmが好ましく、300〜1500μmがより好ましい。フレキシブルな支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。後述する反射層の代わりに、支持体自体が反射機能を有することもまた好ましい。
[配向層]
既に説明したように、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、アゾベンゼンポリマーやポリビニルシンナメートに代表される偏光照射により液晶の配向性を発現する光配向層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。配向層としてはラビングの態様ではポリビニルアルコールを含むことが好ましく、配向層の上または下の少なくともいずれか1層と架橋できることが特に好ましい。配向方向を制御する方法としては、光配向層およびマイクログルーブが好ましい。光配向層としては、ポリビニルシンナメートのように二量化によって配向性を発現するものが特に好ましく、マイクログルーブとしてはあらかじめ機械加工またはレーザ加工により作製したマスターロールのエンボス処理が特に好ましい。
[粘着層]
複屈折パターン作製材料は、後述のパターン露光及びベーク後に作製される複屈折パターンを有する物品をさらに他の物品に貼付するための粘着層を有していてもよい。粘着層の材料は特に限定されないが、複屈折パターン作製の為のベークの工程を経てた後でも粘着性を有する材料であることが好ましい。粘着層は、複屈折パターン形成後の複屈折パターンを有する物品上に形成してもよい。
[塗布方法]
光学異方性層、所望により形成される配向層、などの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
[複屈折パターンを有する物品の作製]
複屈折パターン作製材料に少なくとも、パターン露光及び加熱(ベーク)をこの順に行うことにより、複屈折パターンを有する物品を作製することができる。
[パターン露光]
本明細書において、パターン露光とは、複屈折パターン作製材料の一部の領域のみが露光されるように行う露光又は2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を意味する。互いに露光条件の異なる露光には、未露光(露光しないこと)が含まれていてもよい。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画する走査露光を用いてもよい。また、複屈折パターン作製材料の形態が枚葉であればバッチ式露光、ロール形態であればRtoR式露光でもよい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザ等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜500mJ/cm2程度である。パターン露光の解像度を1200dpi以上にすることにより、マイクロ印刷潜像が形成でき、好ましい。解像度を高めるためには、パターン露光時にパターン化光学異方性層が固体であり、尚且つ厚みが10μm以下であることが必要であり、好ましい。厚み10μm以下で実現するためにはパターン化光学異方性層が重合性液晶化合物を含む層を配向固定化したものであることが好ましく、重合性液晶化合物が架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有することが特に好ましい。また、RtoR式露光を使用する場合に用いる巻き芯としては、特に制限は無いが、外径10mm〜3000mm程度のものが好ましく、より好ましくは20mm〜2000mm程度のもの、さらに好ましくは30mm〜1000mm程度のものである。巻き芯に巻きつける際のテンションとしては、特に制限は無いが、1N〜2000N程度が好ましく、より好ましくは3N〜1500N程度であり、さらに好ましくは5N〜1000N程度である。
[パターン露光時の露光条件]
複屈折パターン作製材料の2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を行う際、「2つ以上の領域」は互いに重なる部位を有していても有していなくてもよいが、互いに重なる部位を有していないことが好ましい。パターン露光は複数回の露光によって行われてもよく、もしくは、例えば領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。すなわち、パターン露光時に、異なる露光条件で露光された2つ以上の領域を生ずるような形で露光が行われていればよい。走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、露光領域の照射スポットを変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能であり、好ましい。
露光条件としては、特に限定はされないが、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、露光量、露光時の温度、露光時の雰囲気等が挙げられる。この中で、条件調整の容易性の観点から、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、および露光量が好ましく、露光照度、露光時間および露光量がさらに好ましい。パターン露光時に相異なる露光条件で露光された領域はその後、焼成を経て相異なる、かつ露光条件によって制御された複屈折性を示す。特に異なるレターデーション値を与える。すなわち、パターン露光の際に領域ごとに露光条件を調整することにより、焼成を経た後に領域ごとに異なる、かつ所望のレターデーションを有する複屈折パターンを作製することが可能である。なお、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域間の露光条件は不連続に変化させてもよいし、連続的に変化させてもよい。
[マスク露光]
露光条件の異なる露光領域を生じる手段の一つとして、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の下で同一時間の露光を行うことで異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
[走査露光]
走査露光は、例えば、光により所望の2次元パターンを描画面上に形成する描画装置を応用して行うことができる。
このような描画装置の代表的な例として、光ビーム発生手段から導出された光ビームを、光ビーム偏向走査手段を介して被走査体上に走査させることにより、所定の画像等を記録するように構成された画像記録装置がある。この種の画像記録装置では、画像等の記録に際して、光ビーム発生手段から導出される光ビームを画像信号に対応して変調させる(特開平7−52453号公報)。
また主走査方向に回転するドラムの外周面に貼着された被走査体上に対してレーザビームを副走査方向に走査することで記録を行うタイプ、および、ドラムの円筒内周面に貼着された被走査体上に対してレーザビームを回転走査させることで記録を行うタイプ(特許2783481号)の装置も使用できる。
さらに、描画ヘッドにより2次元パターンを描画面上に形成する描画装置を用いることもできる。例えば、半導体基板や印刷版の作製で用いられている、露光ヘッドにより所望の2次元パターンを感光材料等の露光面上に形成する露光装置が使用できる。このような露光ヘッドとして代表的なものは、多数の画素を有し所望の2次元パターンを構成する光点群を発生させる画素アレイを備えている。この露光ヘッドを、露光面に対して相対移動させながら動作させることにより、所望の2次元パターンを露光面上に形成することができる。
上記のような露光装置としては、たとえば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を露光面に対して所定の走査方向に相対的に移動させるとともに、その走査方向への移動に応じてDMDのメモリセルに多数のマイクロミラーに対応した多数の描画点データからなるフレームデータを入力し、DMDのマイクロミラーに対応した描画点群を時系列に順次形成することにより所望の画像を露光面に形成する露光装置が提案されている(特開2006−327084号公報)。
露光ヘッドが備える空間光変調素子としては、上記のDMDの以外の、空間光変調素子を使用することもできる。なお、空間光変調素子は、反射型および透過型のいずれでもよい。そのほかの空間光変調素子の例としては、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)タイプの空間光変調素子(SLM;Special Light Modulator)、電気光学効果により透過光を変調する光学素子(PLZT素子)、液晶光シャッタ(FLC)等の液晶シャッターアレイなどが挙げられる。なお、MEMSとは、IC製造プロセスを基盤としたマイクロマシニング技術によるマイクロサイズのセンサ、アクチュエータ、そして制御回路を集積化した微細システムの総称であり、MEMSタイプの空間光変調素子とは、静電気力を利用した電気機械動作により駆動される空間光変調素子を意味している。
さらに、回折格子ライトバルブ(GLV;Grating Light Valve)を複数ならべて二次元状に構成したものを用いることもできる。
露光ヘッドの光源としては、上記したレーザ光源の他に、ランプ等も使用可能である。
[2つ以上の光学異方性層のパターン露光]
複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行ってもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レターデーション値が一番低い)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レターデーション値が一番高い)でベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。この手法は、異なる領域の間で、露光条件だけでは与え得ないような差異(光学軸の方向の違いや非常に大きなレターデーションの差異など)を持たせたい時に有用である。
[加熱(ベーク)]
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。加熱に使用する機器としては、温風炉、マッフル炉、IRヒーター、セラミックヒーター、電気炉等が使用できる。また、複屈折パターン作製材料の形態が枚葉であればバッチ式加熱、ロール形態であればRtoR式加熱でもよい。RtoR式加熱を使用する場合に用いる巻き芯としては、特に制限は無いが、外径10mm〜3000mm程度のものが好ましく、より好ましくは20mm〜2000mm程度のもの、さらに好ましくは30mm〜1000mm程度のものである。巻き芯に巻きつける際のテンションとしては、特に制限は無いが、1N〜2000N程度が好ましく、より好ましくは3N〜1500N程度であり、さらに好ましくは5N〜1000N程度である。
なお、複屈折パターンはレターデーションが実質的に0である領域を含んでいてもよい。例えば、2種類以上の反応性基を有する液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成した場合において、パターン露光で未露光であると上記ベークによってレターデーションが消失し、実質的に0となる場合がある。
ベークを行った複屈折パターン材料の上には、新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光とベークを行ってもよい。この場合、一度目及び二度目の露光条件で組み合わせて、二度目のベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。この手法は、例えば互いに遅相軸の方向が異なる複屈折性を持つ二つの領域を互いに重ならない形で作りたい時に有用である。
[熱書き込み]
上記のように、未露光領域にベークを行うことによってレターデーションを実質的に0にすることが可能であるため、複屈折パターンを有する物品には、パターン露光に基づく潜像に加えて、熱書き込みによる潜像が含まれていてもよい。熱書き込みはサーマルヘッド又は、赤外線やYAGなどのレーザ描画を用いて行うことができる。例えば、サーマルヘッドを有する小型のプリンタとの組み合わせで、秘匿を必要とする情報(個人情報、暗証番号、意匠性を損なう商品管理コードなど)を簡便に潜像化することができ、ダンボール箱などに熱書き込みする赤外線やYAGレーザをそのまま用いることもできる。
[本発明の物品の機能性層]
本発明の物品が含みうる機能性層としてはパターン化光学異方性層の他に、支持体、配向層、印刷層等のほか、複屈折パターン転写箔を用いて作製された物品場合においては、接着層、などが挙げられる。これらの機能性層はあらかじめ複屈折パターン作製材料に含まれていてもよいし、パターン化光学異方性層が作製された後に形成されてもよい。
機能性層はディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)による塗布により形成することができる。またこの場合、二層以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。また機能性層の性質に応じて、上記の他の形成法が用いられてもよい。
[支持体]
本発明の物品を構成する支持体としては特に限定はなく剛直なものでもフレキシブルなものでもよいが、フレキシブルなものが好ましい。剛直な支持体としては特に限定はないが表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、アルミ板、鉄板、SUS板などの金属板、樹脂板、セラミック板、石板などが挙げられる。フレキシブルな支持体としては特に限定はないがセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。取扱いの容易さから、剛直な支持体の膜厚としては、100〜3000μmが好ましく、300〜1500μmがより好ましい。フレキシブルな支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。
前述のように支持体が前記の物品であってもよい。
[接着層]
複屈折パターン転写箔を用いて作製された本発明の物品などにおいては、接着層が含まれていてもよい。接着層としては感圧性樹脂層、感光性樹脂層および感熱性樹脂層などを用いることができる。
[反射層]
複屈折パターン転写を有する物品は必要とする視覚効果を得るために反射層を有していてもよい。反射層としては特に限定されないが、例えばアルミや銀などの金属層、誘電体多層膜の他、パール顔料などの反射性粒子を分散した層、あるいは円偏光選択性反射機能のあるコレステリック液晶層、特開2009−126959公報に記載の反射シート、US Patent Number 5,486,949に記載の反射型偏光分離シートが挙げられる。反射層と複屈折パターン層の間には色を調整するための着色層、偏光層、散乱層を有していてもよい。
反射層は複屈折パターン作製材料において設けられていてもよい。
また、反射層は透過率が30〜95%の半透過半反射層であってもよい。
金属薄膜層に用いられる金属としては特に限定されないがアルミ、クロム、ニッケル、銀、金等が挙げられる。金属薄膜層は、単層膜であっても、多層膜であってもよく、例えば、真空製膜法、物理気相成長法および化学気相成長法等によって製造することができる。反射性の金属粒子を含有する層としては、例えばゴールドやシルバー等のインキで印刷された層が挙げられる。
誘電体薄膜層は単層膜であっても、多層膜であってもよい。用いる材料としては隣接する層との屈折率差が大きい材料を用いて作製された薄膜が好ましい。高屈折率材料としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化インジウム等が挙げられる。低屈折率材料としては、二酸化珪素、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等が挙げられる。
支持体として反射性を有するものを用いてもよい。
[印刷層]
本発明の物品は必要とする視覚効果を得るために印刷層を有していてもよい。印刷層とは、可視または紫外線や赤外線などで視認できるパターンを形成した層などが挙げられる。UV蛍光インクやIRインクはそれ自体もセキュリティ印刷であるため、セキュリティ性が向上するので好ましい。印刷層を形成する方法は特に限定はないが、一般的に知られている凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷の他、インクジェットやゼログラフィなどを用いることができる。インクとしては、各種インクを用いることができるが、耐久性の観点から、UVインクを用いることが好ましい。また、解像度を1200dpi以上のマイクロ印刷にすることによっても、セキュリティ性を高めることができるので好ましい。
[複屈折パターンを有する物品の応用]
本発明の物品表面の複屈折パターンは通常はほぼ無色透明で、ほとんど視認できないか、印刷層などに基づく像が視認できるのみである一方で、偏光板を介した場合においては、追加の特徴的な明暗、あるいは色を示し容易に目視で認識できる。この性質を生かして、本発明の物品は、例えば偽造防止手段として利用することができる。すなわち、複屈折パターン有する物品は、偏光板を用いることで通常の目視ではほぼ不可視である多色の画像が識別することができる。複屈折パターンは偏光板を介さずにコピーしても何も映らず、逆に偏光板を介してコピーすると永続的な、つまりは偏光板無しでも目視可能なパターンとして残る。従って複屈折パターンの複製は困難である。このような複屈折パターンの作製法は広まっておらず、材料も特殊であることから、偽造防止手段として用いるに適していると考えられる。
本発明の物品表面の複屈折パターンは、潜像によるセキュリティ効果だけでなく、例えばパターンをバーコード、QRコードのようにコード化することによって、デジタル情報との連携を図ることができ、さらにはデジタル暗号化も可能となる。また、前述のように高解像度潜像を形成することで偏光板を介しても肉眼では見分けがつかないマイクロ潜像印刷にでき、さらにセキュリティを高めることができる。他にもUV蛍光インク、IRインクなどの不可視インクによる印刷との組み合わせでもセキュリティを高めることができる。
複屈折パターンを転写された物品には、セキュリティだけでなく他の機能の付与、例えば値札や賞味期限などの製品情報表示機能、水につけると色が変色するインクを印刷することによる水没検知機能と組み合わせることも可能である。
[光学素子]
また、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品は光学素子への利用も可能である。例えば上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品を構造的な光学素子として用いた場合、特定の偏光にのみ効果を与える特殊な光学素子の作製が可能である。一例として、複屈折パターンを有する回折格子は特定の偏光を強く回折する偏光分離素子として機能し、プロジェクターや光通信分野への応用が可能である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────―
配向層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────────―
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。4官能エポキシ架橋剤は置換度約4のソルビトールポリグリシジルエーテルである。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
重合性液晶化合物(LC−1−1) 30.35
重合性液晶化合物(LC−1−2) 1.82
水平配向剤(LC−1−3) 0.05
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、サンアプロ株式会社製) 0.66
4官能エポキシ架橋剤(LC−1−4)
(デナコール EX−612、ナガセケムテックス株式会社製) 0.71
重合制御剤
(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 46.34
シクロヘキサノン 20.00
───────────────────────────────────
(光学異方性層用塗布液LC−2の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−2として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
重合性液晶化合物(LC−1−1) 31.06
重合性液晶化合物(LC−1−2) 1.82
水平配向剤(LC−1−3) 0.05
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、サンアプロ株式会社製) 0.66
重合制御剤
(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 46.34
シクロヘキサノン 20.00
──────────────────────────────────―
(添加剤層OC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写接着層用塗布液OC−1として用いた。ラジカル光重合開始剤RPI−1としては2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)1,3,4−オキサジアゾールを用いた。下記組成はその溶液としての使用量である。
──────────────────────────────────―
添加剤層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
バインダ(MH−101−5、藤倉化成(株)製) 7.63
ラジカル光重合開始剤(RPI−1) 0.49
界面活性剤 0.03
(メガファックF−176PF、大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 91.85
──────────────────────────────────―
(実施例1:複屈折パターン作製材料P−1の作製)
厚さ50μmのポリイミドフィルム(カプトン200H、東レデュポン(株)製)の上にアルミニウムを60nm蒸着し、反射層つき支持体を作製した。そのアルミニウムを蒸着した面上にワイヤーバーを用いて配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.5μmであった。配向層をラビング処理した後、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度90℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ4.5μmの光学異方性層を形成した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において500mW/cm2、照射量はUV−A領域において500mJ/cm2であった。光学異方性層のレターデーションは400nmであり、20℃で固体のポリマーであった。最後に、光学異方性層の上に添加剤層用塗布液OC−1を塗布、乾燥して0.8μmの添加剤層を形成し、実施例1の複屈折パターン作製材料P−1を作製した。
(実施例2:複屈折パターンを有する物品)
P−1をレーザ走査露光によるデジタル露光機(INPREX IP−3600H、富士フイルム(株)製)にて図17に示すように、0mJ/cm2、8mJ/cm2、25mJ/cm2の露光量を用いてRtoRでパターン露光した。図中、無地で示した領域の露光量が0mJ/cm2、横線で示した領域の露光量が8mJ/cm2、縦線で示した領域の露光量が25mJ/cm2となるように露光した。その後、遠赤外線ヒータ連続炉を用い、RtoRにて、膜面温度が210℃となるように20分間加熱して、複屈折パターンを有する物品P−2を作製した。物品P−2の上に偏光板(HLC−5618、サンリッツ(株)製)をかざしたところ、所定の方向でかざしたときに、物品P−2に施した複屈折パターンを確認することができた。物品P−2の上に偏光板を介して観察されるパターンの拡大図を図18に示す。図中、地のアルミ箔が銀色を呈するのに対し、格子部は紺色ないし水色、斜線部は黄色ないし橙色を呈する二色のパターンが観察される。P−2中の残存モノマー(LC−1−1およびLC−1−2)をメタノールで抽出後、HPLCで定量したところ、P−2中のパターン化光学異方性層の質量に対して9質量%であった。エタノール滴下による表面の白化は見られなかった。また、背面との接着故障も見られなかった。
(比較例1:複屈折パターン作製材料P−3の作製)
厚さ50μmのポリイミドフィルム(カプトン200H、東レデュポン(株)製)の上にアルミニウムを60nm蒸着し、反射層つき支持体を作製した。そのアルミニウムを蒸着した面上にワイヤーバーを用いて配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.5μmであった。配向層をラビング処理した後、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−2を塗布、膜面温度90℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ4.5μmの光学異方性層を形成した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において500mW/cm2、照射量はUV−A領域において500mJ/cm2であった。光学異方性層のレターデーションは400nmであり、20℃で固体のポリマーであった。最後に、光学異方性層の上に添加剤層用塗布液OC−1を塗布、乾燥して0.8μmの添加剤層を形成し、比較例1の複屈折パターン作製材料P−3を作製した。
(比較例2:複屈折パターンを有する物品)
P−3をレーザ走査露光によるデジタル露光機(INPREX IP−3600H、富士フイルム(株)製)にて図1に示すように、0mJ/cm2、8mJ/cm2、25mJ/cm2の露光量を用いてRtoRでパターン露光した。図中、無地で示した領域の露光量が0mJ/cm2、横線で示した領域の露光量が8mJ/cm2、縦線で示した領域の露光量が25mJ/cm2となるように露光した。その後、遠赤外線ヒータ連続炉を用い、RtoRにて、膜面温度が210℃となるように20分間加熱して、複屈折パターンを有する物品P−4を作製した。物品P−2の上に偏光板(HLC−5618、サンリッツ(株)製)をかざしたところ、所定の方向でかざしたときに、物品P−4に施した複屈折パターンを確認することができた。物品P−4の上に偏光板を介して観察されるパターンの拡大図を図18に示す。図中、地のアルミ箔が銀色を呈するのに対し、格子部は紺色ないし水色、斜線部は黄色ないし橙色を呈する二色のパターンが観察される。P−4中の残存モノマー(LC−1−1およびLC−1−2)をメタノールで抽出後、HPLCで定量したところ、P−4中のパターン化光学異方性層の質量に対して20質量%であった。P−3上にエタノールを滴下したところ、白化した。また、背面との接着故障が見られた。
作製された複屈折パターンに粘着剤シートを貼り付けてシール化した後に適当な大きさに切断し、商品券に貼り付けた例を図19に示す。図中の認証部の部分が複屈折パターンの施された反射部である。認証部の複屈折パターンは通常の目視ではほぼ不可視だが、偏光板をかざす事によって二色のパターンとして目視が可能になり、該パターンによって真贋の判別が可能となる。
101 パターン化光学異方性層
11 (仮)支持体
12 光学異方性層
13 反射層又は半透過半反射層
14 配向層
15 粘着層
16 印刷層
17 力学特性制御層
18 転写層
19 添加剤層又は表面層

Claims (8)

  1. 複屈折性が異なる領域を二つ以上含むパターン化光学異方性層を含む物品であって、
    前記パターン化光学異方性層が少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された光学異方性層から作製された層であり、
    前記パターン化光学異方性層における前記液晶性化合物の残存量が前記パターン化光学異方性層の質量に対して、0〜15質量%である物品。
  2. 前記組成物が、前記液晶性化合物が有する反応性基と反応できる反応性基を3つ以上有するモノマーを、前記光学異方性層形成前の前記組成物中の前記液晶性化合物の質量に対して0.1質量%〜50質量%含む請求項1に記載の物品。
  3. 前記モノマーが液晶性を有さないモノマーである請求項2に記載の物品。
  4. 前記モノマーの反応性基の少なくとも1つがアクリル基、メタクリル基またはエポキシ基である請求項2または3に記載の物品。
  5. 前記液晶性化合物がラジカル重合性の反応性基またはカチオン重合性の反応性基を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
  6. 前記液晶性化合物が1分子中にラジカル重合性の反応性基およびカチオン重合性の反応性基を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
  7. 前記ラジカル重合性の反応性基がアクリル基およびメタクリル基から選択される1つ以上の基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基およびエポキシ基から選択される1つ以上の基である請求項5または6に記載の物品。
  8. 前記パターン化光学異方性層が、以下の工程を含む方法で形成された層である請求項1〜7のいずれか一項に記載の物品。
    (1)前記組成物を加熱または光照射して前記光学異方性層を形成する工程
    (2)前記光学異方性層をパターン露光する工程;
    (3)前記パターン露光後の層を50℃以上400℃以下に加熱する工程。
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