JP2011193597A - 回転電機のステータの製造方法及び製造装置 - Google Patents

回転電機のステータの製造方法及び製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ステータコアのスロットにコイルを変形させながら挿入する際に、ステータコアの変形や傷付きを防止する。
【解決手段】複数の保持溝22aがスロット12の開口部12aと同じピッチで形成された治具20をステータコア10の内側に配置し、複数のコイル40をその一側辺41a及び他側辺41bが治具20の保持溝22aにそれぞれ挿入され、かつ両コイルエンド42aが保持溝22aの両端部から突出する状態にセットする。押圧手段により両コイルエンド42aにステータコア10の軸方向から押圧力を加えてコイル40の一側辺41aと他側辺41bとの間隔を拡げるとともに、押し出し手段によりコイル40に対して一側辺41a及び他側辺41bを保持溝22aから対応するスロット12内に押し出す力を加えて、一側辺41a及び他側辺41bをステータコア10のスロット12に挿入する。
【選択図】図4

Description

本発明は、回転電機のステータの製造方法及び製造装置に係り、詳しくは予め巻線(導体線)により形成された複数のコイルの一側辺及び他側辺を互いに異なるスロットに挿入して形成されるステータの製造及び製造装置に関する。
複数のスロットが内周に開口する開口部を有し、かつ放射状に形成された環状のステータコアに、予め閉ループを成すように形成されたコイルを分布巻きとなるように挿入する際には、二つのスロットに跨って挿入されるコイルの挿入部(側辺)の間隔を、放射状に広がるスロットの溝形状に合わせて広げながら挿入する必要がある。
従来、固定子鉄心(ステータコア)のスロットに、略亀甲形状に成形されたコイルを挿入する際、コイルの直線状部分を押し出し片によって放射状に押し出すことにより、直線状部分をスロットに沿って移動させてコイルをスロットに挿入することが開示されている(特許文献1参照)。その際、コイルの上下両端部分はV字状に成形されているため、直線状部分をスロットに沿って移動させると、V字形状部分は固定子鉄心側に近付くように変形されるとしている。コイルの導体線として、断面形状が略円形に限らず、矩形等他の形状であっても構わない旨も記載されている。
また、ステータコアのスロットに、予め巻線された複数のコイルの一側辺をそれぞれ挿入し、その後、前記複数のコイルの他側辺をそれぞれ他のスロットに挿入して、ステータコアの端面から見たときコイルが螺旋状に重なった形態をなすステータの製造方法が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2の方法では、スリット状の複数の保持溝からなりステータコアのスロットのピッチの整数倍のピッチで形成される第1保持溝群と、第1保持溝群と同じピッチで形成される第2保持溝群とが外周に形成された治具を用いる。そして、予め巻線された複数のコイルの一側辺を、前記第1保持溝群に、他側辺を第2保持溝群のうちの、前記一側辺を挿入した保持溝と隣接する保持溝にそれぞれ挿入して、各コイルを前記治具の円周に沿って配列する。この治具を前記ステータコアの内周に挿入して、各コイルの一側辺を押出し手段によって外径側に押出して、前記ステータコアの対応するスロットに挿入する。次に、前記治具をステータコアのスロットに対して所定角度回動させて、第2保持溝が、前記ステータコアの対応するスロットに整合するように位置決めした後、他側辺を押出し手段によって外径側に押出して、前記ステータコアの対応するスロットに挿入する。
特開2009−195011号公報 特開2007−166849号公報
丸線のように変形し易い材料(巻線)を使用した場合は、特許文献1に記載されたように、コイルの直線状部分をステータコアの内側から外側に押出して、スロットに慣らわせて拡げることでコイルのスロットへの挿入が可能と考えられる。しかし、平角線で形成されたコイルにおいては丸線で形成されたコイルのようには変形し難いため、直線状部分を押しただけではコイルは容易に変形せず、直線状部分とスロット壁面との間に大きな摩擦力が作用する状態で非常に大きな力でコイルをスロットへ押し込む必要がある。
また、特許文献2の方法においては、コイルを丸線のように変形し易い材料で、かつスロットに挿入される部分である直線状部分(一側辺及び他側辺)を構成する巻線束の配置がスロットや保持溝の形状に合わせて変化可能であることが前提になる。したがって、コイルとして平角線で形成されたもののように一側辺及び他側辺の形状がスロットや保持溝の形状に合わせて変化できないものに関しては適用できない。
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ステータコアのスロットに、平角線で形成されたコイルのように変形に大きな力を必要とするコイルを変形させながら挿入する場合でも、ステータコアの変形や傷付きを防ぐことができる回転電機のステータの製造方法及び製造装置を提供することにある。
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、複数のスロットが内周に開口する開口部を有し、かつ前記開口部から底部に向かってスロットピッチが拡がるように形成された環状のステータコアに、予め巻線により形成された複数のコイルの一側辺及び他側辺を互いに異なるスロットに挿入して形成されるステータを製造する回転電機のステータの製造方法である。複数のコイルとして、少なくともステータコアのスロット内に収まる一側辺及び他側辺は成形されたものを使用し、複数の保持溝が前記ステータコアのスロットの開口部と対向する状態で前記ステータコアの内側に配置可能な治具を使用する。そして、前記複数のコイルをその一側辺及び他側辺の少なくとも一方が前記ステータコアの内側に配置された前記治具の保持溝に挿入され、かつ両コイルエンドが前記治具の前記保持溝が形成された部分の両端面よりも外部に突出する状態にセットする。そして、押圧手段により前記両コイルエンドにステータコアの軸方向から押圧力を加えて前記コイルの一側辺と他側辺との間隔を拡げ、押し出し手段により前記コイルに対して前記保持溝に挿入された側辺を前記保持溝から対応するスロット内に押し出す力を加えて前記一側辺及び他側辺をステータコアのスロットに挿入する。
ここで、「成形された」とは、互いに接触する状態に巻かれた巻線に力が加えられてもその形状が保持される状態にあることを意味する。例えば、丸線を複数本束ねて全体として扁平な状態の巻線として使用した場合、その扁平形状が維持されるように樹脂で固めたり、合成樹脂製の絶縁シートを外側に巻き付けたりされた状態を意味する。巻線が平角線の場合は、巻き付けをフラットワイズで行ってもエッジワイズで行っても、互いに接触する状態に巻かれた巻線は、丸線の場合のような処理を行わなくても、接触状態が維持されるため、複数層積層された状態が「成形された」に相当する。また、「スロットピッチ」とは、隣り合う二つのスロットの中心線間の距離を意味する。
この発明では、ステータコアに分布巻きを形成する状態で組み込まれるコイルは、予め巻線により形成された複数のコイルの一側辺及び他側辺が治具の保持溝に挿入された状態、又は一側辺及び他側辺の一方が治具の保持溝に挿入され他方がスロットに挿入された状態で、かつ両コイルエンドが治具の保持溝が形成された部分の両端面よりも外部に突出する状態にセットされる。その状態で、押圧手段により両コイルエンドにステータコアの軸方向から押圧力が加えられるとコイルの一側辺と他側辺との間隔が拡げられる。また、押し出し手段によりコイルに対して一側辺及び他側辺を保持溝から押し出す力が加えられると、一側辺及び他側辺が保持溝から対応するスロット内に押し出されてコイルがステータコアに組み付けられる。スロットピッチは、スロットの開口部の位置で最も小さく、スロットの底部で最も大きくなるため、治具の保持溝に挿入されている一側辺及び他側辺を単純にステータコアのスロットに向けて押し出すと、コイルの一側辺と他側辺との間隔がスロットピッチより小さな状態でコイルがスロットの底部に向けて移動される。そのため、コイルの一側辺及び他側辺がスロットの壁面に接触した状態で、スロットの壁面からの反力で一側辺と他側辺との間隔が拡げられながら移動され、スロットの壁面の変形や傷付きが生じる場合がある。しかし、この発明では、コイルは押圧手段による押圧力でコイルの一側辺と他側辺との間隔が拡げられながら、押し出し手段によりスロットの底部に向けて移動される。したがって、ステータコアのスロットに、平角線で形成されたコイルのように変形に大きな力を必要とするコイルを変形させながら挿入する場合でも、ステータコアの変形や傷付きを防ぐことができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記複数のコイルは、前記両側辺が共に前記ステータコアの内側に配置された前記治具の保持溝に挿入された状態にセットされる。この発明では、一側辺及び他側辺の一方が治具の保持溝に挿入され他方がスロットに挿入された状態にコイルをセットする場合と異なり、セットの際にコイルエンドがステータコアと干渉するのを回避するようにコイル形状に特別な制約を設ける必要がない。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記巻線として平角線を使用する。この発明では、巻線に断面円形や断面楕円形の巻線を使用した場合に比べてコイルの占積率の向上を図ることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記コイルは、両方のコイルエンドが凸形状に形成されている。コイルとして一方のコイルエンドのみ凸形状に形成されているコイルに対して押圧手段により両コイルエンドにステータコアの軸方向から押圧力が加えられた場合でも、コイルがその一側辺と他側辺との間隔が拡がるように形成することは可能である。しかし、この発明のように、両方のコイルエンドが凸形状に形成されている方が、一側辺と他側辺とが平行な状態を維持しつつその間隔が拡がるように変形し易い。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記押圧手段による押圧力の付与及び前記押し出し手段による押し出し力の付与は、全周一度に行われる。したがって、押圧力の付与及び押し出し力の付与を全周の一部ずつ順に行う場合のように、押圧手段及び押し出し手段を、押圧力の付与及び押し出し力の付与を行うためのコイルと対応する箇所に相対回動させる必要がない。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記押圧手段による押圧力の付与及び前記押し出し手段による押し出し力の付与は、一部のコイルに対して行いつつ全周に亘って行われる。したがって、押圧力の付与及び押し出し力の付与を全周一度に行う場合に比べて、押圧手段及び押し出し手段に加わる負荷が小さくなるとともに、装置の小型化を図ることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の発明において、前記押し出し手段は、前記コイルに対して力を作用させる箇所が回転可能に構成されている。押し出し手段が、コイルに対し同じ箇所においてのみ接する構成では、摩擦力が大きくなるとともに摩耗が進み易くなる。しかし、この発明では、押し出し手段は、コイルに対して力を作用させる箇所が回転可能に構成されているため、コイルに接して力を作用させている箇所における摩擦力が大きくなると回転されて他の箇所がコイルに接する状態になるため、摩擦による応力が抑制されるとともに特定部分の摩耗が進み易くなることも抑制される。
前記の第2の目的を達成するため、請求項8に記載の発明は、複数のスロットが内周に開口する開口部を有し、かつ前記開口部から底部に向かってスロットピッチが拡がるように形成された環状のステータコアに、予め巻線により形成された複数のコイルの一側辺及び他側辺を互いに異なるスロットに挿入してステータを形成する回転電機のステータの製造装置である。そして、複数の保持溝がステータコアの開口部と同じピッチで形成され、かつ前記保持溝が前記スロットの開口部と対向する状態で前記ステータコアの内側に配置可能な治具と、前記ステータコア及びステータコアの内側に配置された前記治具を、同心状態で支持する支持部とを備える。また、前記支持部に支持された前記ステータコア及び前記治具に対して、複数のコイルの一側辺及び他側辺の少なくとも一方が前記ステータコアの内側に配置された前記治具の保持溝に挿入され、かつ両コイルエンドが前記治具の前記保持溝が形成された部分の両端面よりも外部に突出する状態において、前記両コイルエンドにステータコアの軸方向から押圧力を加える押圧手段と、前記コイルに対して前記保持溝に挿入された側辺を前記保持溝から対応するスロット内に押し出す力を加える押し出し手段とを備える。
この発明では、請求項1及び請求項2に記載の発明による製造方法を実施することができ、ステータコアのスロットに、平角線で形成されたコイルのように変形に大きな力を必要とするコイルを変形させながら挿入する場合でも、ステータコアの変形や傷付きを防止した状態で回転電機のステータを製造することができる。
本発明によれば、ステータコアのスロットに、平角線で形成されたコイルのように変形に大きな力を必要とするコイルを変形させながら挿入する場合でも、ステータコアの変形や傷付きを防ぐことができる。
(a)はステータの製造装置の模式正面図、(b)は(a)のA−A線断面図。 治具の模式斜視図。 (a)はコイルの模式斜視図、(b)はコイルの模式平面図。 (a)はコイルの挿入された治具がステータコアの内側に配置された状態の模式平面図、(b)は片側のコイルエンドの突出状態を示す模式図。 挿入作業開始の際の押し出し体とコイルとの関係を示す模式図。 (a)は押圧体によるコイルの押圧作用を示す模式図、(b)は別の実施形態における押圧方法を示す模式図。 (a),(b)は挿入時の作用を示す模式図。 一側辺がスロットの底部に達した状態の模式平面図。 ステータの模式斜視図。 (a)は別の実施形態の押し出し手段の配置を示す模式断面図、(b)は別の実施形態の押し出し手段の模式斜視図。 別の実施形態の押し出し手段の模式図。 (a),(b)は別の実施形態のコイルエンドの形状を示す部分模式図、(c)は巻線の別の実施形態を示す部分模式斜視図。
以下、本発明をコイルが重ね巻きでステータコアに組み付けられるステータの製造に具体化した一実施形態を図1〜図9にしたがって説明する。
図1(a),(b)に示すように、ステータの製造装置は、ステータコア10及び治具20を支持する支持部30と、コイル(図3に図示)40に押圧力を加える押圧手段50と、押圧手段50により押圧されて変形する状態のコイル40に対してステータコア10の径方向へ力を加える押し出し手段60とを備えている。
ステータコア10は、環状に形成されるとともにその内周に複数のティース11が一定間隔で、かつその中心線がステータコア10の中心から放射状に延びる直線上に位置するように形成され、隣り合うティース11の間にスロット12が形成されている。詳述すると、ステータコア10には複数のスロット12が内周に開口する開口部12aを有し、かつ開口部12aから底部に向かってスロットピッチが拡がるように形成されている。スロットピッチとは隣り合う二つのスロット12の中心線間の距離を意味する。
図2に示すように、治具20は、支柱21と、その上端に固定されるとともに、略円柱状に形成された本体22とを有する。支柱21の下端には、治具20を支持部30に固定する円板状の固定部23が形成されている。本体22は、その外周面に複数の保持溝22aが、本体22の径方向に延びる状態で形成されている。保持溝22aは、ステータコア10のスロット12の開口部12aのピッチと同じピッチで形成されている。そして、治具20は、保持溝22aがステータコア10のスロット12の開口部12aに対してそれぞれ対向する状態で、ステータコア10の内側に配置可能に形成されている。
支持部30は、ステータコア10及びその内側に配置された治具20を同心状態で支持可能に形成されている。詳述すると、支持部30は、ベースB上に設けられたレール15に沿って直線移動可能に配置された支持フレーム31を有し、支持フレーム31は駆動手段32により往復移動可能になっている。駆動手段32は、モータMにより駆動されるボールねじ機構(図示せず)を介して支持フレーム31を往復移動させる。
支持フレーム31は、上下一対の支持プレート31aが4本の支柱31bで連結されて構成されている。ステータコア10及び治具20を収納支持する収納支持体33は、上側の支持プレート31aに対して回転可能に支持されている。収納支持体33は、略有底円筒状に形成されるとともに、その外周にギヤ体34aが固定されている。収納支持体33には治具20の固定部23が通過可能な孔が形成されている。下側の支持プレート31a上には回転軸35がギヤ体34aと同軸上に上下方向に延びる状態で設けられ、回転軸35の上部にはギヤ体34aと同径で歯数も同じギヤ体34bが一体回転可能に固定されている。ギヤ体34bの上面には治具20の固定部23が着脱可能に取り付けられるようになっている。支持フレーム31には、ギヤ体34a,34bにそれぞれ噛合するギヤ36a,36bが固定された回転軸37が設けられている。回転軸37にはウォームホイール38が一体回転可能に固定されている。そして、手動あるいはモータにより駆動される図示しないウォームを介してウォームホイール38が回転されることにより回転軸37が回転され、回転軸37の回転によりギヤ36a,36b及びギヤ体34a,34bを介して収納支持体33及び治具20が回転されるようになっている。収納支持体33と治具20とは分離されているが、ギヤ体34a,34bが同じ回転速度で回転されるため、収納支持体33と治具20とは同じ回転速度で回転される。
図3(a)に示すように、コイル40は、巻線40aとして平角線が使用され、巻線40aの巻き付けがエッジワイズで行われて縦長の亀甲形に形成されている。コイル40は、平行に延びる直線状部分の一側辺41a及び他側辺41bと、一側辺41a及び他側辺41bに連続するとともに、互いに逆方向に山形に折り曲げられたコイルエンド42a,42bとを有している。即ち、両方のコイルエンド42a,42bが凸形状に形成されている。一側辺41a及び他側辺41bは、ステータコア10の軸方向の長さより長く形成され、一側辺41a及び他側辺41bがスロット12に挿入(収容)された状態において、その端部がステータコア10の端面から突出するようになっている。なお、図3(a)では、コイル40を単純な亀甲形に表しているが、実際はコイルエンド42a,42bが捩じれた状態に形成されており(捩れの図示は省略)、図3(b)に示すように、一側辺41a及び他側辺41bの対向する面がテーパ状となるように形成されている。また、平角線は絶縁被覆されている。
図1(a)に示すように、押圧手段50は、ベースBに対して立設されたボールねじ機構51により昇降可能な一対の昇降支持体52a,52bを備えている。昇降支持体52a,52bは同期して互いに逆方向へ移動可能に設けられている。即ち、一方の昇降支持体52aが上昇する際は他方の昇降支持体52bが下降し、一方の昇降支持体52aが下降する際は他方の昇降支持体52bが上昇する。ボールねじ機構51は、モータ53の正転駆動時に昇降支持体52aを下降させるとともに昇降支持体52bを上昇させ、モータ53の逆転駆動時に昇降支持体52aを上昇させるとともに昇降支持体52bを下降させる。
昇降支持体52a,52bには、それぞれ押圧体54a,54bが支持されている。押圧体54a,54bはローラ55で構成され、ローラ55は、昇降支持体52a,52bに略平行に突設された支持軸に回転可能に支持されている。
押圧体54aは、昇降支持体52aの上昇により収納支持体33から離れる方向へ移動し、昇降支持体52aの下降により収納支持体33へ近づく方向へ移動する。押圧体54bは、昇降支持体52bの下降により収納支持体33から離れる方向へ移動し、昇降支持体52bの上昇により収納支持体33へ近づく方向へ移動する。また、押圧体54a,54bは、支持フレーム31の水平移動により、収納支持体33と対向する位置と、収納支持体33と対向しない位置とに相対移動される。
押圧体54a,54bは、収納部33aに収納されたステータコア10及び治具20間に配置されたコイル40(図3に図示)のコイルエンド42a,42bに対向して離れた待機位置と、コイルエンド42a,42bと当接してコイル40を上下方向から押し潰すように作用する押圧力を加える作用位置とに配置される。即ち、押圧体54a,54bは、コイル40に対して力を作用させる箇所を構成し、押圧手段50は、コイル40に対して力を作用させる箇所が回転可能に構成されている。
押し出し手段60は、押圧手段50を構成する昇降支持体52a,52bに、それぞれ押し出し体61a,61bが支持されている。押し出し体61a,61bは、ローラ62で構成されている。ローラ62は、昇降支持体52a,52bに垂直方向に突設された支持軸に回転可能に支持されている。押し出し体61a,61bは、押圧手段50の押圧体54a,54bにより押圧されて変形する状態のコイル40に対して、一側辺41a及び他側辺41bを保持溝22aから対応するスロット12内に押し出す力を加えることが可能に構成されている。詳述すると、押し出し体61a,61bは、押圧体54a,54bが作用位置に配置された状態において、ローラ62がコイル40のコイルエンド42a,42bに対して治具20の中心側から接触可能に昇降支持体52a,52bに取り付けられている。
次に前記のように構成された製造装置を用いたステータの製造方法を説明する。
まず、治具20を支持部30から取り外した状態において、コイルエンド42a,42bが本体22の外周にほぼ沿って延びるように、コイル40の一側辺41a及び他側辺41bを各保持溝22aに挿入する。図4に示すように、各コイル40は、一側辺41aが保持溝22aの開口部寄りに位置し、他側辺41bが保持溝22aの底部側(奥側)に位置する状態で治具20に保持される。なお、各コイル40のコイルエンド42a,42bは、隣接するコイルエンド42a,42b同士が干渉しないように形成されている。また、各コイル40は、両コイルエンド42a,42bが対応する保持溝22aの両端部から突出する状態、即ち本体22の両端面よりも外部に突出する状態にセットされる。
次に、押圧体54a,54b及び押し出し体61a,61bを収納支持体33と対向しない位置に配置した状態で、コイル40が前述の状態に取り付けられた治具20を支持部30の収納支持体33にその上方から取り付ける。詳述すると、治具20を固定部23側から収納部33aに挿入し、支柱21が収納支持体33の下方に突出した状態で固定部23をギヤ体34bの上面に固定する。
次に、ステータコア10を、その軸心と治具20の軸心とが同軸状態となる状態で下降移動させて、収納部33aに挿入する。
次に押圧体54a,54b及び押し出し体61a,61bが収納支持体33と対向した状態となる位置に支持フレーム31を移動させる。この状態からモータ53を正転駆動させると、上側の昇降支持体52aは下降し、下側の昇降支持体52bは上昇する。そして、図6(a)に2点鎖線示すように、押圧体54a,54bがそれぞれコイル40のコイルエンド42a,42bの凸部に当接したときに、図5に示すように、押し出し体61aが1つのコイル40のコイルエンド42aに治具20の中心側、即ち保持溝22aの底部側から当接する状態になる。なお、図示しないが、下側の押し出し体61bもコイルエンド42bに治具20の中心側、即ち保持溝22aの底部側から当接する状態になる。この状態から更に上側の昇降支持体52aの下降及び下側の昇降支持体52bの上昇が継続すると、図6(a)に実線で示すように、押圧手段50の押圧体54a,54bにより両コイルエンド42a,42bにステータコア10の軸方向から押圧力が加えられる。そして、コイル40は、一側辺41aと他側辺41bとの間隔が拡げられる。
また、押し出し体61a,61bがコイルエンド42a,42bに当接したときから昇降支持体52a,52bの移動に同期して、支持フレーム31がボールねじ機構51から離れる方向へ移動される。そして、押し出し体61a,61bからコイルエンド42a,42bに加わる力は、コイル40の一側辺41a及び他側辺41bをステータコア10及び治具20の径方向へ移動させるように作用する。
ステータコア10のスロットピッチは、スロット12の開口部12aの位置で最も狭く(小さく)、スロット12の底部で最も広く(大きく)なり、治具20の保持溝22aもスロット12の延長線上で延びるように形成されている。そのため、コイル40に対して単にステータコア10の軸心からの放射方向に向かう力を加えたとき、一側辺41a及び他側辺41bの間隔が変化しないと、図7(b)に2点鎖線で示すように、一側辺41a及び他側辺41bはスロット12からはみ出す。しかし、実際にはコイル40の一側辺41a及び他側辺41bは、スロット12及び保持溝22aの壁面にガイドされてスロット12の底部に向けて移動される。その際、コイル40の一側辺41a及び他側辺41bの間隔を拡げるための力がスロット12及び保持溝22aの壁面から一側辺41a及び他側辺41bに加わり、スロット12及び保持溝22aの壁面にはその反力が一側辺41a及び他側辺41bから加わる。一側辺41a及び他側辺41bの間隔を拡げるのに要する力は大きなため、一側辺41a及び他側辺41bとスロット12及び保持溝22aの壁面との間に大きな力が加わった状態で一側辺41a及び他側辺41bが摺動すると、スロット12及び保持溝22aの壁面の変形や傷付きが生じたり、コイル40の絶縁被覆が剥がれたりする場合がある。
しかし、この実施形態では、コイル40は、押圧手段50の押圧体54a,54bによる押圧力でコイル40の一側辺41aと他側辺41bとの間隔が拡げられながら、押し出し手段60の押し出し体61a,61bによりスロット12の底部に向けて移動されるため、図7(a)に示すように、一側辺41a及び他側辺41bは、それぞれ円滑にスロット12の延びる方向へ移動される。したがって、ステータコア10のスロット12に、平角線で形成されたコイル40のように変形に大きな力を必要とするコイル40を変形させながら挿入する場合でも、ステータコア10の変形や傷付きあるいはコイル40の絶縁被覆の剥がれを防ぐことができる。
押圧手段50及び押し出し手段60は、一度の作業でコイル40の一側辺41a及び他側辺41bをスロット12への最終挿入(収容)位置まで移動させるのではなく、複数回の作業で最終挿入(収容)位置まで移動させる。そして、押圧体54a,54bが一度の作業分だけ押圧方向へ移動された時点で、押圧手段50及び押し出し手段60による作業が中断される。
その状態でギヤ体34a,34bが所定角度回転され、ステータコア10と治具20が収納支持体33と共に回転される。そして、次に押圧手段50及び押し出し手段60の作用を受けるコイル40は、押圧体54a,54bによる押圧作用及び押し出し体61a,61bによる押し出し作用を受けながら移動する。その結果、次のコイル40の一側辺41a及び他側辺41bが所定量スロット12の底部側へ向かって移動される。以下、同様の作業が全周にわたって繰り返されて各コイル40に対する1回の押圧及び押し出し作業が終了する。
次に、モータ53が所定量正転駆動され、上側の昇降支持体52aの下降及び下側の昇降支持体52bの上昇が行われるとともに、押し出し体61a,61bが昇降支持体52a,52bの移動に同期して、支持フレーム31がボールねじ機構51から離れる方向へ所定量移動される。そして、前記と同様に、コイル40は、押圧手段50の押圧体54a,54bによる押圧力でコイル40の一側辺41aと他側辺41bとの間隔が拡げられながら、押し出し手段60の押し出し体61a,61bによりスロット12の底部に向けて移動される。以下、前記と同様にステータコア10と治具20が収納支持体33と共に回転されることにより、各コイル40に対する2周目の押圧及び押し出し作業が行われる。
そして、この作業が複数回繰り返されると、図8に示すように、各コイル40の一側辺41aがスロット12の底部に達する位置まで移動された状態になる。その後、他側辺41bがスロット12の底部に達する状態になるまで押圧体54a,54bによる他側辺41bの移動が行われる。
その後、押圧体54a,54b及び押し出し体61a,61bを収納支持体33からステータコア10を取り出すのに支障とならない位置に移動させた後、コイル40がスロット12の所定位置に挿入されたステータコア10を収納支持体33から取り出す。その後、各コイル40の巻線40aの端部の結線が行われて、図9に示すようなステータSが完成する。
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)ステータの製造方法は、複数の保持溝22aがステータコア10のスロット12の開口部12aと対向する状態でステータコア10の内側に配置可能な治具20を使用する。また、コイル40として、予め巻線40aにより形成され、少なくともステータコア10のスロット12内に収まる部分(一側辺41a及び他側辺41b)は成形されたものを使用する。そして、各コイル40の一側辺41a及び他側辺41bが共にステータコア10の内側に配置された治具20の保持溝22aに挿入され、かつ両コイルエンドが保持溝22aの両端部から突出する状態にセットする。その状態で、押圧手段50により両コイルエンド42a,42bにステータコア10の軸方向から押圧力を加えてコイル40の一側辺41aと他側辺41bとの間隔を拡げ、押し出し手段60によりコイル40に対して一側辺41a及び他側辺41bを保持溝22aから対応するスロット12内に押し出す力を加えて、一側辺41a及び他側辺41bをスロット12に挿入する。したがって、コイル40の変形時にステータコア10に力が加わるのが抑制されるため、ステータコア10のスロット12に、平角線で形成されたコイル40のように変形に大きな力を必要とするコイル40を変形させながら挿入する場合でも、ステータコア10の変形や傷付きを防ぐことができるとともに巻線40aの絶縁被覆の剥がれを防止することができる。
(2)コイル40の変形時に治具20、具体的には保持溝22aの壁面に過大な力が加わらないことにより治具20自体に対する強度の要求が小さくなるため、モータの設計自由度が上がる。なぜならば、ステータSが使用されるモータの径が小さかったり、コイル量が多かったりすると、治具20の隣接する保持溝22a間の肉厚が薄くなり強度が下がるため、それを考慮してモータの設計を行う必要がある。しかし、保持溝22aの壁面に過大な力が加わらない場合は、そのような配慮が不要になるからである。
(3)コイル40を形成する巻線40aとして平角線を使用している。したがって、巻線40aに断面円形や断面楕円形の巻線40aを使用した場合に比べてコイル40の占積率の向上を図ることができる。
(4)コイル40は、両方のコイルエンド42a,42bが凸形状に形成されている。コイル40として、例えば、一方のコイルエンド42aのみ凸形状に形成されているコイル40に対して押圧手段50により両コイルエンド42a,42bにステータコア10の軸方向から押圧力が加えられた場合でも、コイル40がその一側辺41aと他側辺41bとの間隔が拡がるように形成することは可能である。しかし、両方のコイルエンドが凸形状に形成されている方が、一側辺と他側辺とが平行な状態を維持しつつその間隔が拡がるように変形し易い。
(5)押圧手段50による押圧力の付与及び押し出し手段60による押し出し力の付与は、部分的に分けて行われる。したがって、押圧力の付与及び押し出し力の付与を全周同時に行う場合に比べて、押圧手段50及び押し出し手段60に掛かる負荷が小さくなるとともに、装置の小型化を図ることができる。
(6)押圧手段50による押圧力の付与及び押し出し手段60による押し出し力の付与を、部分的に分けて行うことにより全周にわたるコイル40の挿入を行うとともに、1周で挿入完了させずに複数周繰り返して、即ちステータコア10及び治具20を複数回回転させてコイル40の挿入を完了する。したがって、各コイル40を1回の押圧及び押し出し動作で所定位置まで移動させる場合に比べて、コイル40の移動が円滑に行われる。
(7)押し出し手段60は、押し出し体61a,61bがローラ62で構成されている。即ち、押し出し手段60は、コイル40に対して力を作用させる箇所が回転可能に構成されている。したがって、コイル40に接して力を作用させている箇所における摩擦力が大きくなると、その箇所が移動されて他の箇所がコイル40に接する状態になるため、摩擦による応力が抑制されるとともに特定部分の摩耗が進み易くなることも抑制される。
(8)押圧手段50は、押圧体54a,54bがローラ55で構成され、コイル40に対して力を作用させる箇所が回転可能に構成されている。したがって、コイル40に接して力を作用させている箇所における摩擦力が大きくなると、その箇所が移動されて他の箇所がコイル40に接する状態になるため、摩擦による応力が抑制されるとともに特定部分の摩耗が進み易くなることも抑制される。
(9)押圧手段50の昇降支持体52a,52bを昇降させる駆動部はモータ53により駆動され、押し出し手段60の押し出し体61a,61bをステータコア10及び治具20に対して相対移動させる駆動部もモータMで駆動される。したがって、押圧手段50により両コイルエンド42a,42bにステータコア10の軸方向から押圧力を加えてコイル40の一側辺41aと他側辺41bとの間隔を拡げる動作と、押し出し手段60によりコイル40に対して他側辺41bを保持溝22aから対応するスロット12内に押し出す力を加える動作の同期が容易になる。
(10)複数のコイル40は、その一側辺41aが保持溝22aの開口部寄りに、他側辺41bが保持溝22aの底部側寄りに位置するように治具20の保持溝22aに挿入された状態にセットされる。したがって、各コイル40の一側辺41a及び他側辺41bが共に保持溝22aの開口部寄りに位置するように治具20の保持溝22aに挿入された状態にセットされる場合に比べて、治具20をステータコア10の内側に配置可能にするためのコイルエンド42a,42bの形状の自由度が大きくなる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 押し出し手段60は、コイル40の一側辺41a及び他側辺41bをステータコア10のスロット12の奥側(底部側)に移動させる力を加えることができればよい。例えば、両コイルエンド42a,42bの一方にのみ力を加える構成、即ち、押し出し体61a,61bの一方を省略してもよい。
○ 押し出し手段60は、コイルエンド42a,42bに力を加えるのではなく、一側辺41a及び他側辺41bに力を加える構成にしてもよい。例えば、図10(a)に示すように、治具20の本体22に押し出し手段60を収容する収容部24を形成し、収容部24に押し出し手段60を設ける。押し出し手段60として、例えば、ソレノイド63を使用し、そのプランジャの先端に押し出し体64を設ける。押し出し体64は、1つのコイル40の一側辺41a及び他側辺41bの少なくとも一方に当接可能であればよい。押圧手段50によって隣接する複数のコイル40に同時に押圧力が加えられる構成の場合は、押し出し体64も同時に複数のコイル40に当接して押し出し力を加えるように形成される。
○ 押し出し手段60によるコイル40の他側辺41bの保持溝22aからの押し出しは、図10(b)に示すように、コイル40よりも保持溝22aの奥にセットした引っ張り具65を治具20の外周側に配置された図示しない引っ張り装置により引っ張ることで行ってもよい。引っ張り具65としては、紐、棒、板等が使用される。引っ張り装置は、ステータコア10の両端面の近くに配置されるとともに、半径方向に進退可能に設けられたフックで引っ張り具65を引っ張る。また、引っ張り具65と同様な構成の部材を、治具20の保持溝22aより内側に設けられた押し出し手段60で押し出すようにしてもよい。
○ 押し出し手段60の押し出し体61a,61bは、ローラ62のようにコイル40に対して力を作用させる箇所が回転可能に構成されている必要はなく、コイル40に対して斜めに当接してコイル40との摩擦による応力を抑制できればよい。例えば、ヘラのような板材で構成してもよい。また、コイル40に対して力を作用させる箇所が回転可能な構成として、歯車やキャタピラのように複数の凹凸を備えた部材を採用してもよい。
○ 押圧体54a,54bによりコイル40に押圧力を加える場合、最初は図6(a)に示すように、押圧体54a,54bを治具20及びステータコア10の軸方向に移動させてコイルエンド42a,42bを押圧し、その後は治具20及びステータコア10を回転させて、図6(b)に2点鎖線示すように、押圧体54a,54bの相対移動によりコイル40を押圧するようにしてもよい。また、図6(b)の状態で複数回回転させる場合は、回転に応じてさらに押圧体54a,54bの位置を治具20及びステータコア10に押し付ける方向に変化させてもよい。
○ 押圧手段50の押圧体54a,54bは、ローラ55のようにコイル40に対して力を作用させる箇所が回転可能に構成されている必要はなく、板材やブロック体で構成してもよい。
○ 押圧手段50による押圧力の付与及び押し出し手段60による押し出し力の付与を部分的に行う場合、押し出し手段60を治具20の複数箇所に設けてもよい。例えば、図11に示すように、治具20の本体22に押し出し手段60を収容する収容部24を周方向に等間隔に4箇所形成し、各収容部24に押し出し手段60を設ける。押し出し手段60として、例えば、ソレノイド63を使用し、そのプランジャの先端に押し出し体64を設ける。また、押圧手段50は、収納支持体33の上下両側の4箇所に収納支持体33の周方向に等間隔に配置可能に設ける。この場合、押圧手段50を1箇所設けた場合と異なり、ステータコア10及び治具20を90度回転させることにより、ステータコア10の全周にわたって押圧力の付与及び押し出し力の付与を行うことができる。
○ 押圧手段50による押圧力の付与及び押し出し手段60による押し出し力の付与を全周一度に行うようにしてもよい。例えば、押し出し体として、治具20の保持溝22aより内側に複数の円弧状の押し出し体を上から見た場合において一部が重なる状態で円周状に配置し、各押し出し体を同時に治具20の外側に向かって径方向に移動させる。各押し出し体を移動させる駆動手段としては、回転するカムを利用する構成や油圧シリンダにより駆動する構成などがある。この場合、押圧力の付与及び押し出し力の付与をステータコア10の全周にわたって配置されたコイル40の一部ずつ順に行う場合と異なり、押圧手段50及び押し出し手段60を、押圧力の付与及び押し出し力の付与を行うためのコイル40と対応する箇所に相対回動させる必要がない。即ち、収納支持体33を回転させる構成が不要になる。
○ 押圧手段50による押圧力の付与及び押し出し手段60による押し出し力の付与を全周一度に行う場合、押し出し体として、押し出し棒を保持溝22aの一側辺41a及び他側辺41bの挿入部より奥側と、保持溝22aの開口部との間を移動可能に設ける。そして、その押し出し棒を特許文献2の公報に開示された押圧治具のように、保持溝22aと同数の複数枚のプッシャが放射状に軸に取り付けられたものを使用して、押し出し棒を一斉に保持溝22aの開口部側へ移動させるようにしてもよい。
○ 押圧手段50は、昇降支持体52a,52bがボールねじ機構により同時に昇降される構成に限らない。例えば、昇降支持体52a,52bに支持された押圧体54a,54bの片側がコイル40に接した後、反対側が移動する機構としてもよい。
○ コイル40は、押圧手段50により両コイルエンド42a,42bにステータコア10の軸方向から押圧力が加えられたときに、コイル40の一側辺41aと他側辺41bとの間隔が拡がるように変形可能であればよく、両方のコイルエンド42a,42bが凸形状に形成されている必要はない。例えば、両コイルエンド42a,42bの一方のみ凸形状に形成されている形状のコイル40であってもよい。しかし、両方のコイルエンド42a,42bが凸形状に形成されている方が、押圧手段50により押圧力が加えられた際に、一側辺41aと他側辺41bとの間隔が円滑に拡がり易いため好ましい。
○ コイルエンド42a,42bの凸形状は、山形状に限らない。例えば、図12(a)に示すように、半楕円形状に形成されたり、図12(b)に示すように、水平に延びる先端の両側に一側辺41a及び他側辺41bに連続する傾斜部を有する形状に形成されたりしてもよい。
○ コイル40を構成する巻線40aは平角線に限らず、例えば、図12(c)に示すように、断面が円形の巻線40aを複数本整列させた状態で使用してもよい。即ち、コイル40は、丸線が複数本整列された状態で所定形状に巻き付けられたものであってもよい。この場合、コイル40の少なくともステータコア10のスロット12内に収まる部分は成形されたものとするため、複数本の巻線40aは、コイル40に形成された状態において一側辺41a及び他側辺41bの部分が束ねられた形状を維持するように樹脂等で固められたり、絶縁シートが巻き付けられたりする。巻線40aは一列でなく複数列に整列されてもよい。
○ 押圧手段50の昇降支持体52a,52bを昇降させる構成や、押し出し手段60の押し出し体61a,61bをステータコア10及び治具20に対して相対移動させる構成は、駆動部をモータ53,Mで駆動するボールねじ機構を備えた構成に限らない。例えば、昇降支持体52a,52bをそれぞれ油圧シリンダで駆動する構成にしたり、支持フレーム31を油圧シリンダで駆動する構成にしたりしてもよい。
○ 昇降支持体52a,52bをそれぞれリニアモータで駆動する構成にしたり、支持フレーム31を駆動する駆動手段32としてリニアモータを使用したりしてもよい。
○ 押圧手段50による押圧時にコイル40が所定の形状以外に崩れるのを防ぐために、コイル40の外側にガイドとなるもの、例えば、ガイドプレートやガイドバーを配置してもよい。
○ ギヤ体34aとギヤ36aとのギヤ比及びギヤ体34bとギヤ36bとのギヤ比が同じであれば、両ギヤ体34a,34bを互いに同径で歯数も同じ構成にしなくてもよい。
○ 治具20の保持溝22aにコイル40の一側辺41a及び他側辺41bを挿入した状態にセットする場合、各コイル40の一側辺41a及び他側辺41bが共に保持溝22aの開口部寄りに位置するように治具20の保持溝22aに挿入された状態にセットしてもよい。
○ 治具20の保持溝22aにコイル40の一側辺41a及び他側辺41bを挿入した状態ではなく、コイル40の一側辺41a又は他側辺41bを治具20の保持溝22aに挿入し、保持溝22aに挿入されなかった一側辺41a又は他側辺41bをスロット12に挿入した状態からコイル40のスロット12への挿入作業を開始してもよい。この場合、ステータコア10の内側に治具20を配置する際にコイルエンドがステータコア10と干渉しない特殊な形状にする必要がある。
○ ステータコア10及び治具20を、複数のコイル40の一側辺41aがスロット12に挿入され、他側辺41bが治具20の保持溝22aにそれぞれ挿入され、かつ両コイルエンド42a,42bがステータコア10の両端部から突出する状態で、収納支持体33内にセットする場合、ステータコア10及び治具20のいずれを先にセットしてもよい。
○ ステータコア10の各スロット12に一側辺41a及び他側辺41bが1個ずつ挿入されたステータSに限らず、各スロット12に一側辺41a及び他側辺41bが複数個(例えば、2個)ずつ挿入されたステータSに適用してもよい。そして、ステータコア10に前述と同様にしてコイル40を挿入した後、治具20を収納支持体33から取り出す。次に挿入すべき複数のコイル40をステータコア10及び治具20との間にセットした後、前述した一連の挿入作業を行うことにより、コイル40の挿入が完了する。
○ ステータコア10のスロット12の数は36個に限らず、36個より多くても(例えば、48個)、36個より少なくても(例えば、24個)よい。
○ 1つのコイル40の一側辺41aと他側辺41bとの間に存在するスロット12の数は4個に限らない。例えば、4個より少ない3個にしたり、4個より多い5個にしたりしてもよい。
○ コイル40はカセット式に限らず、例えば、複数個のコイル40が渡り線で連続する状態に形成されたものであってもよい。
○ コイル40は2個のスロット12に跨って組み付けられる分布巻きで、かつコイルが押圧手段50により両側から押圧可能であれば重ね巻きに限らず、例えば、波巻きや同心巻きであってもよい。
○ ステータコア10は、環状をなし、複数のスロット12が内周に開口する開口部12aを有し、かつ開口部12aから底部に向かってスロットピッチが拡がるように形成されていればよく、複数の分割コアを結合して構成された分割コア型であってもよい。しかし、分割コア型の場合は、磁気抵抗が大きくなり、回転電機の出力が上げられないため、分割コア型でない方が好ましい。
○ 押圧手段50による押圧力の付与及び押し出し手段60による押し出し力の付与を、一部のコイル40に対して行いつつ全周に亘って行う場合、ステータコア10及び治具20を所定量回転させる際に、押圧手段50及び押し出し手段60とコイル40とが接触しない状態で行うようにしてもよい。即ち、ステータコア10及び治具20を所定量回転させる場合、その都度、昇降支持体52a,52bを移動させて押圧体54a,54bをコイル40から離間させ、押し出し体61a,61bもコイル40から離間させてからステータコア10及び治具20を所定量回転させる。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の発明において、前記コイルはカセット式である。
S…ステータ、10…ステータコア、12…スロット、12a…開口部、20…治具、22a…保持溝、30…支持部、40…コイル、40a…巻線、41a…一側辺、41b…他側辺、42a,42b…コイルエンド、50…押圧手段、60…押し出し手段。

Claims (8)

  1. 複数のスロットが内周に開口する開口部を有し、かつ前記開口部から底部に向かってスロットピッチが拡がるように形成された環状のステータコアに、予め巻線により形成された複数のコイルの一側辺及び他側辺を互いに異なるスロットに挿入して形成されるステータを製造する回転電機のステータの製造方法であって、
    複数のコイルとして、少なくともステータコアのスロット内に収まる一側辺及び他側辺は成形されたものを使用し、
    複数の保持溝が前記ステータコアのスロットの開口部と対向する状態で前記ステータコアの内側に配置可能な治具を使用するとともに、前記複数のコイルをその一側辺及び他側辺の少なくとも一方が前記ステータコアの内側に配置された前記治具の保持溝に挿入され、かつ両コイルエンドが前記治具の前記保持溝が形成された部分の両端面よりも外部に突出する状態にセットし、
    押圧手段により前記両コイルエンドにステータコアの軸方向から押圧力を加えて前記コイルの一側辺と他側辺との間隔を拡げ、押し出し手段により前記コイルに対して前記保持溝に挿入された側辺を前記保持溝から対応するスロット内に押し出す力を加えて前記一側辺及び他側辺をステータコアのスロットに挿入することを特徴とする回転電機のステータの製造方法。
  2. 前記複数のコイルは、前記両側辺が共に前記ステータコアの内側に配置された前記治具の保持溝に挿入された状態にセットされる請求項1に記載の回転電機のステータの製造方法。
  3. 前記巻線として平角線を使用する請求項1又は請求項2に記載の回転電機のステータの製造方法。
  4. 前記コイルは、両方のコイルエンドが凸形状に形成されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の回転電機のステータの製造方法。
  5. 前記押圧手段による押圧力の付与及び前記押し出し手段による押し出し力の付与は、全周一度に行われる請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の回転電機のステータの製造方法。
  6. 前記押圧手段による押圧力の付与及び前記押し出し手段による押し出し力の付与は、一部のコイルに対して行いつつ全周に亘って行われる請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の回転電機のステータの製造方法。
  7. 前記押し出し手段は、前記コイルに対して力を作用させる箇所が回転可能に構成されている請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の回転電機のステータの製造方法。
  8. 複数のスロットが内周に開口する開口部を有し、かつ前記開口部から底部に向かってスロットピッチが拡がるように形成された環状のステータコアに、予め巻線により形成された複数のコイルの一側辺及び他側辺を互いに異なるスロットに挿入してステータを形成する回転電機のステータの製造装置であって、
    複数の保持溝がステータコアのスロットの開口部と同じピッチで形成され、かつ前記保持溝が前記スロットの開口部と対向する状態で前記ステータコアの内側に配置可能な治具と、
    前記ステータコア及びステータコアの内側に配置された前記治具を同心状態で支持する支持部と、
    前記支持部に支持された前記ステータコア及び前記治具に対して、複数のコイルの一側辺及び他側辺の少なくとも一方が前記ステータコアの内側に配置された前記治具の保持溝に挿入され、かつ両コイルエンドが前記治具の前記保持溝が形成された部分の両端面よりも外部に突出する状態において、前記両コイルエンドにステータコアの軸方向から押圧力を加える押圧手段と、
    前記コイルに対して前記保持溝に挿入された側辺を前記保持溝から対応するスロット内に押し出す力を加える押し出し手段と
    を備えることを特徴とする回転電機のステータの製造装置。
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