これに対し、本発明者は、コイルを形成した内歯形状のステータ鉄心のスロット内に、容易にウェッジ部材を挿入できる手法を提案している(例えば、特願2003−177139号参照)。具体的には、ステータ鉄心の軸線方向に移動可能な挿入路形成部材(ローラ)を、ウェッジ部材の第1軸線方向端よりも第1軸線方向に位置させつつ、ステータ鉄心の裏面側から第1軸線方向に移動させて、挿入路形成部材(ローラ)の少なくとも一部をスロット内側開口部を通してコイル成形済スロット内に挿入し、コイル成形済スロット内に配置された巻線をステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させている。このようにすることで、ウェッジ部材の挿入経路を形成し、コイルを形成した内歯形状のステータ鉄心のスロット内に、容易にウェッジ部材を挿入できるようにしている。
ところが、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入した後にも、ステータ鉄心(スロット)に対する挿入路形成部材(ローラ)の径方向位置をウェッジ部材の挿入時と同じにして、挿入路形成部材(ローラ)を第2軸線方向(第1軸線方向と反対方向)に移動させて、挿入路形成部材(ローラ)を元の位置(ステータ鉄心の裏面側位置)に戻すようにしていた。このため、挿入路形成部材(ローラ)によって、挿入したウェッジ部材を径方向外側に向かって押圧し過ぎてしまい、ウェッジ部材が変形、破損してしまう危険性があった。
また、上記手法によれば、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入する際、コイル成形済スロット(第1,第2スロット)のスロット内側開口部から、巻線(素線)がはみ出ていたとしても、はみ出ている巻線(素線)を、挿入路形成部材(ローラ)によってスロット内に納めることも可能としている。しかしながら、はみ出ている巻線(素線)をスロット内に納める際、この巻線(素線)がスロットの角部と接触して傷ついてしまう等の不具合が生じる危険性があった。特に、複数本の素線がねじれた状態ではみ出ている場合には、ねじれた状態で無理に押し込むため、巻線(素線)が傷ついてしまうばかりでなく、適切にスロット内に挿入できず、ウェッジ部材の挿入が妨げられる危険性があった。
また、上記手法では、ステータ鉄心の裏面側から挿入路形成部材(ローラ)の一部をコイル成形済スロット内に挿入する際、挿入路形成部材(ローラ)とコイル成形済スロットとの位置ずれが生じ、ウェッジ部材を適切にコイル成形済スロット内に挿入できなくなる虞もあった。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、コイルを形成した内歯形状のステータ鉄心のスロット内に、容易に、且つ適切にウェッジ部材を挿入できるステータの製造装置、ステータの製造方法を提供することを目的とする。
その解決手段は、表面とこれに平行な裏面とを有するリング状で内歯形状のステータ鉄心について、互いに隣接する上記内歯で構成されるスロットのうち、第1スロット内及び第2スロット内に1本または複数本の素線からなる巻線を挿入し、上記第1スロットと上記第2スロットとの間に上記巻線を渡らせてコイルを成形してなるステータの製造装置であって、上記ステータ鉄心の軸線方向のうち、上記裏面から上記表面に向かう方向を第1軸線方向、その逆を第2軸線方向としたとき、上記コイルが既に成形された上記第1スロット及び上記第2スロットのうち少なくともいずれかのコイル成形済スロット内に、このコイル成形済スロットのうち上記ステータ鉄心の内側に開口するスロット内側開口部を上記コイル成形済スロット内から閉塞するウェッジ部材を上記裏面側から挿入するウェッジ挿入機構を備え、上記ウェッジ挿入機構は、上記ウェッジ部材を上記ステータ鉄心の上記裏面側から上記第1軸線方向に移動させるウェッジ移動機構と、挿入路形成機構であって、挿入路形成部材を有し、この挿入路形成部材を、上記ウェッジ移動機構により移動される上記ウェッジ部材の第1軸線方向端よりも上記第1軸線方向に位置させつつ、上記裏面側から上記第1軸線方向に移動させて、この挿入路形成部材の少なくとも一部を上記スロット内側開口部を通して上記コイル成形済スロット内に挿入し、このコイル成形済スロット内に配置された上記巻線を上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させて、当該挿入路形成部材に続いて上記コイル成形済スロット内に挿入される上記ウェッジ部材の挿入路を形成する挿入路形成機構と、を含み、上記挿入路形成機構は、上記挿入路形成部材を上記第1軸線方向に移動させる間、上記挿入路形成部材を、その少なくとも一部が上記スロット内側開口部から上記コイル成形済スロット内に侵入する第1径方向位置に保持し、上記ウェッジ部材を上記コイル成形済スロット内に挿入した後、上記挿入路形成部材を上記第2軸線方向に移動させる間、上記挿入路形成部材を、上記第1径方向位置よりも径方向内側の第2径方向位置であって、上記挿入路形成部材の少なくとも一部が上記スロット内側開口部から上記コイル成形済スロット内に侵入する第2径方向位置に保持する、径方向位置調整機構を有し、上記ウェッジ部材を上記コイル成形済スロット内に挿入した後、上記第2径方向位置に保持された上記挿入路形成部材を上記第2軸線方向に移動させて、上記挿入したウェッジ部材のうち上記スロット内側開口部から径方向内側にはみ出した部位を、上記挿入路形成部材によって上記コイル成形済スロット内に納めることを可能としてなるステータの製造装置である。
本発明のステータの製造装置では、挿入路形成機構が、挿入路形成部材を第1軸線方向に移動させる間、挿入路形成部材を第1径方向位置に保持し、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入した後、挿入路形成部材を第2軸線方向に移動させる間、挿入路形成部材を第1径方向位置よりも径方向内側の第2径方向位置に保持する径方向位置調整機構を有する。従って、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入した後は、挿入路形成部材を、ウェッジ挿入時よりも径方向内側に位置させつつ第2軸線方向に移動させ、ステータ鉄心の裏面側に戻すことができる。このため、一旦挿入したウェッジ部材を、挿入路形成部材によって径方向外側に向かって押圧し過ぎてしまい、挿入したウェッジ部材を変形、破損させてしまう危険性を低減することができる。
ウェッジ部材としては、いわゆるウェッジ紙と呼ばれる絶縁紙や絶縁性樹脂シートを所定形状に成形したものや、絶縁性樹脂の成型体などが挙げられる。またウェッジ部材の形態は、スロット内側開口部付近の形状等を考慮し、スロット内に配置された巻線がスロット内側開口部からステータ鉄心の内周側にはみ出すのを防止できる形態であればいずれのものも採用できる。例えば断面略U字形やV字形としたものが挙げられる。
ところで、挿入路形成部材によって、コイル成形済スロット内に配置された巻線をステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させつつ、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入した場合、径方向外側に向けて移動させた巻線のスプリングバックによって、挿入したウェッジ部材が径方向内側に押圧され、その一部がスロット内側開口部から径方向内側にはみ出してしまう虞がある。
これに対し、本発明のステータの製造装置では、挿入路形成部材の第2径方向位置を、第1径方向位置よりも径方向内側であって、挿入路形成部材の少なくとも一部がスロット内側開口部からコイル成形済スロット内に侵入する位置としている。これにより、仮に、挿入したウェッジ部材の一部がスロット内側開口部から径方向内側にはみ出してしまったとしても、挿入路形成部材によってウェッジ部材をスロット内に納めることができる。
さらに、上記いずれかのステータの製造装置であって、前記挿入路形成部材は、前記ステータ鉄心の軸線方向及び径方向に直交する回転軸部材と、この回転軸部材の周りに回転自在に保持された円板状のローラであって、自身の少なくとも一部が前記コイル成形済スロット内に挿入されるローラと、を有するステータの製造装置とすると良い。
本発明のステータの製造装置では、挿入路形成部材がローラを有し、このローラの少なくとも一部をコイル成形済スロット内に挿入する形態で挿入路を形成する。従って、挿入路を形成する際、ローラが回転しながらスロット内の巻線と当接して、これを径方向外側に向けて移動させる。このため、巻線が挿入路形成部材(ローラ)によって擦れにくくなり、巻線の絶縁被覆を傷付けにくくなる。
さらに、上記のステータの製造装置であって、前記径方向位置調整機構は、前記ローラを前記第1軸線方向に移動させる間、前記回転軸部材を、上記ローラが前記第1径方向位置となる第1軸位置に移動させて保持し、上記ローラを前記第2軸線方向に移動させる間、上記回転軸部材を、上記ローラが前記第2径方向位置となる第2軸位置に移動させて保持するように構成されてなるステータの製造装置とすると良い。
本発明のステータの製造装置では、径方向位置調整機構が、挿入路形成部材を第1軸線方向に移動させる間、挿入路形成部材の回転軸部材をローラが第1径方向位置となる第1軸位置に移動させて保持し、挿入路形成部材を第2軸線方向に移動させる間、回転軸部材をローラが第2径方向位置となる第2軸位置に移動させて保持するように構成されている。このような径方向位置調整機構は、挿入路形成部材の回転軸部材の位置を第1軸位置と第2軸位置との間で変更するだけで、ローラの位置(第1径方向位置と第2径方向位置)を調整できる。
本発明の径方向位置調整機構としては、例えば、ステータ鉄心の軸線方向に移動するシャフト(挿入路形成機構を構成するもの)に対し、回転軸部材を内部に保持する(挿入させる)形態で挿入路形成部材を保持できるように形成された長孔形状の軸保持溝であって、当該軸保持溝の第1軸線方向端に第2軸位置が位置し、当該軸保持溝の第2軸線方向端に第1軸位置が位置する溝が挙げられる。
このような径方向位置調整機構によれば、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入するために、シャフトを第1軸線方向に移動させ、挿入路形成部材をステータ鉄心の裏面側から第1軸線方向に移動させると、コイル(巻線)と係合したローラが第2軸線方向に力を受けるので、回転軸部材が軸保持溝の第2軸線方向端に位置する第1軸位置に配置できる。従って、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入する間、回転軸部材を第1軸位置に保持することができる。
一方、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入した後、シャフトを第2軸線方向に移動させると、コイル(巻線)と係合したローラが、今度は第1軸線方向に力を受けるので、回転軸部材が軸保持溝の第1軸線方向端に位置する第2軸位置に配置される。従って、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入した後、シャフトを第2軸線方向に移動させる間、回転軸部材を第2軸位置に保持することができる。
さらに、上記のステータの製造装置であって、前記径方向位置調整機構は、前記回転軸部材を自身の内部に保持する軸保持溝であって、上記回転軸部材が前記第1軸位置となる第1軸保持部と、この第1軸保持部よりも前記径方向内側で且つ前記第1軸線方向に位置し、上記回転軸部材が前記第2軸位置となる第2軸保持部と、上記第1軸保持部と上記第2軸保持部とを結び、上記第1軸線方向に向かうにしたがって上記径方向内側に位置する軸移行部と、を有する軸保持溝を備えてなるステータの製造装置とすると良い。
本発明の製造装置では、径方向位置調整機構を、第1軸保持部と第2軸保持部と両者を結ぶ軸移行部とを有する軸保持溝で構成しているので、構造が簡易であり、安価である。
さらに、上記いずれかのステータの製造装置であって、前記ローラは、自身の外周に前記巻線と当接する当接面を有し、上記当接面は、上記ローラの板厚方向中央に近づくにしたがって前記回転軸部材に近づく斜面を含み、上記板厚方向中央が最も上記回転軸部材に接近する形状を有してなるステータの製造装置とすると良い。
本発明のステータの製造装置では、ローラの当接面が、ローラの板厚方向中央に近づくにしたがって回転軸部材に近づく斜面を含み、板厚方向中央が最も回転軸部材に接近する形状を有している。このため、ウェッジ部材の挿入路を形成すべく、ローラを第1径方向位置で第1軸線方向に移動させることで、最も径方向内側に位置する巻線(素線)を、ローラの当接面の傾斜に沿ってローラの板厚方向中央に寄せつつ、直線状に整形することが可能となる。これにより、スロット内側開口部に隣り合うスロットの内壁とスロット内の巻線との間に間隙を形成することができるので、ウェッジ部材をスロット内に挿入する際、挿入抵抗を低減することができ、スムーズにウェッジ部材を挿入することができる。
また、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入する際、コイル成形済スロット(第1,第2スロット)のスロット内側開口部から、巻線(素線)がはみ出ていたとしても、はみ出ている巻線(素線)を、ローラの当接面の傾斜に沿ってローラの板厚方向中央に寄せつつ、スロット内に納めることができる。従って、はみ出ている巻線(素線)を再びスロット内に納める際、この巻線(素線)がスロットの角部と接触して傷ついてしまう等の不具合を防止できる。特に、複数本の素線がねじれた状態ではみ出ている場合でも、これらの素線を順にローラの当接面の傾斜に沿ってローラの板厚方向中央に寄せることができ、これらの素線を整列させてスロット内に納めることができる。
なお、ローラの当接面の形状としては、例えば、断面略V字形状や、断面略U字形状などが挙げられる。なお、当接面の角部は、巻線(素線)を傷つけないようにするため、R面取り形状とするのが好ましい。
さらに、上記いずれかのステータの製造装置であって、上記ステータ鉄心の前記表面より前記第1軸線方向に位置する第1アームであって、当該第1アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、前記巻線のうち上記第1スロット内に挿入された第1スロット挿入部より上記第1軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第1アームと、上記第1アームについて上記移動をさせる第1アーム移動機構と、上記ステータ鉄心の前記裏面より前記第2軸線方向に位置する第2アームであって、当該第2アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第1スロット挿入部より上記第2軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第2アームと、上記第2アームについて上記移動をさせる第2アーム移動機構と、上記ステータ鉄心の上記裏面より上記第2軸線方向に位置する第3アームであって、当該第3アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第2スロット内に挿入された第2スロット挿入部より上記第2軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第3アームと、上記第3アームについて上記移動をさせる第3アーム移動機構と、上記ステータ鉄心の上記表面より上記第1軸線方向に位置する第4アームであって、当該第4アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第2スロット挿入部より上記第1軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第4アームと、上記第4アームについて上記移動をさせる第4アーム移動機構と、を備え、前記ウェッジ挿入機構によって、前記ウェッジ部材を、前記コイルが既に成形された上記第1スロット及び上記第2スロットのうち少なくともいずれかの前記コイル成形済スロット内に挿入する際、上記第1〜第4アームのうち、少なくとも上記ウェッジ部材を挿入する上記コイル成形済スロット側に位置するウェッジ挿入スロット側アームについて、上記巻線をたぐった状態を保持するように構成されてなるステータの製造装置とすると良い。
本発明の製造装置では、ウェッジ挿入機構によって、ウェッジ部材を、コイルが既に成形された第1スロット及び第2スロットのうち少なくともいずれかのコイル成形済スロット内に挿入する際、第1〜第4アームのうち、少なくともウェッジ部材を挿入するコイル成形済スロット側に位置するウェッジ挿入スロット側アームについて、巻線をたぐった状態を保持するように構成されている。具体的には、例えば、ウェッジ部材を挿入するコイル成形済スロットが第1スロットの場合には、ウェッジ挿入スロット側アームが、第1スロット側に位置する第1,第2アームとなるので、少なくとも第1,第2アームについて巻線をたぐった状態を保持する。このため、ウェッジ部材を挿入するコイル成形済スロットのスロット内側開口部から、巻線(素線)がはみ出し難くなる。従って、コイル成形済スロットのスロット内側開口部からはみ出た巻線(素線)によってウェッジ部材の挿入が妨げられる等の不具合を抑制でき、適切にウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入することが可能となる。
さらに、上記のステータの製造装置であって、前記第1〜第4アーム移動機構は、前記第1〜第4アームのうち、少なくとも前記ウェッジ挿入スロット側アームについて、前記コイルを成形すべく最後に前記巻線をたぐった後、前記ウェッジ挿入機構が前記ウェッジ部材を上記コイル成形済スロット内に挿入し終えるまでの間、上記巻線を解放することなく上記巻線をたぐった状態を保持するように構成されてなるステータの製造装置とすると良い。
一旦巻線がコイル成形済スロットからはみ出てしまうと、はみ出た巻線をコイル成形済スロット内に戻さなければならず、煩わしい。これに対し、本発明の製造装置では、第1〜第4アーム移動機構は、第1〜第4アームのうち少なくともウェッジ挿入スロット側アームについて、コイルを成形すべく最後に巻線をたぐった後、ウェッジ挿入機構がウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入し終えるまでの間、巻線を解放することなく巻線をたぐった状態を保持するように構成されている。このため、ウェッジ部材を挿入するコイル成形済スロットのスロット内側開口部から、巻線(素線)がはみ出てしまう不具合を抑制できる。さらには、ウェッジ部材を、コイル成形済スロット内の所定位置に、スムーズに挿入することができる。
さらに、上記いずれかのステータの製造装置であって、前記ウェッジ挿入機構は、前記コイル成形済スロットである前記第1スロット及び前記第2スロットの両者に、同時に前記ウェッジ部材を挿入するように構成されてなるステータの製造装置とするのが好ましい。
このような製造装置では、コイルが既に成形された第1スロット及び第2スロットの両者に、同時に、ウェッジ部材を挿入できる。このため、1回の挿入動作で、2つのスロットにウェッジ部材を挿入できるから、第1スロットと第2スロットとに2回の挿入動作でウェッジ部材を挿入する場合と比較して、ウェッジ部材挿入にかかる時間を半分に短縮することができる。
さらに、上記いずれかのステータの製造装置であって、上記製造装置は、前記コイルを同時に複数成形する複数コイル同時製造装置であり、前記ウェッジ挿入機構は、同時に上記コイルが成形されたコイル成形済スロットのいずれにも、同時に前記ウェッジ部材を挿入するように構成されてなるステータの製造装置とするのが好ましい。
このような製造装置では、複数のコイルを同時に成形し、同時にコイルが成形されたコイル成形済スロットのいずれにも、ウェッジ部材を同時に挿入できる。このため、1回の挿入動作で、各コイルに対応する多数のスロットにウェッジ部材を同時挿入できるから、この製造装置で複数のコイルを同時に成形できる上に、ウェッジ挿入も一度に済ますことができ、ウェッジ挿入にかかる時間を大幅に短縮できる。
他の解決手段は、表面とこれに平行な裏面とを有するリング状で内歯形状のステータ鉄心について、互いに隣接する上記内歯で構成されるスロットのうち、第1スロット内及び第2スロット内に1本または複数本の素線からなる巻線を挿入し、上記第1スロットと上記第2スロットとの間に上記巻線を渡らせてコイルを成形してなるステータの製造装置であって、上記ステータ鉄心の軸線方向のうち、上記裏面から上記表面に向かう方向を第1軸線方向、その逆を第2軸線方向としたとき、上記コイルが既に成形された上記第1スロット及び上記第2スロットのうち少なくともいずれかのコイル成形済スロット内に、このコイル成形済スロットのうち上記ステータ鉄心の内側に開口するスロット内側開口部を上記コイル成形済スロット内から閉塞するウェッジ部材を上記裏面側から挿入するウェッジ挿入機構を備え、上記ウェッジ挿入機構は、上記ウェッジ部材を上記ステータ鉄心の上記裏面側から上記第1軸線方向に移動させるウェッジ移動機構と、挿入路形成機構であって、上記ステータ鉄心の軸線方向及び径方向に直交する回転軸部材と、この回転軸部材の周りに回転自在に保持された円板状のローラであって、自身の外周に上記巻線と当接する当接面を有するローラと、を備え、このローラを、上記ウェッジ移動機構により移動される上記ウェッジ部材の第1軸線方向端よりも上記第1軸線方向に位置させつつ、上記裏面側から上記第1軸線方向に移動させて、このローラの少なくとも一部を上記スロット内側開口部を通して上記コイル成形済スロット内に挿入し、このコイル成形済スロット内に配置された上記巻線を上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させて、当該ローラに続いて上記コイル成形済スロット内に挿入される上記ウェッジ部材の挿入路を形成する挿入路形成機構と、を含み、上記ローラの上記当接面は、当該ローラの板厚方向中央に近づくにしたがって上記回転軸部材に近づく斜面を含み、上記板厚方向中央が最も上記回転軸部材に接近する形状を有してなるステータの製造装置である。
本発明の製造装置では、挿入路形成部材を構成するローラの当接面が、当該ローラの板厚方向中央に近づくにしたがって回転軸部材(ローラの中心)に近づく斜面を含み、板厚方向中央が最も回転軸部材(ローラの中心)に接近する形状を有している。
このため、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入する際、コイル成形済スロット(第1,第2スロット)のスロット内側開口部から、巻線(素線)がはみ出ていたとしても、はみ出ている巻線(素線)を、ローラの当接面の傾斜に沿ってローラの板厚方向中央に寄せつつ、スロット内に納めることができる。従って、はみ出ている巻線(素線)をスロット内に納める際、この巻線(素線)がスロットの角部と接触して傷ついてしまう等の不具合を防止できる。特に、複数本の素線がねじれた状態ではみ出ている場合でも、これらの素線を順にローラの当接面の傾斜に沿ってローラの板厚方向中央に寄せることができ、これらの素線を整列させてスロット内に納めることができる。
なお、ローラの当接面の形状としては、例えば、断面略V字形状や略U字形状などが挙げられる。なお、当接面の角部は、巻線(素線)を傷つけないようにするため、R面取り形状とするのが好ましい。
さらに、他の解決手段は、表面とこれに平行な裏面とを有するリング状で内歯形状のステータ鉄心について、互いに隣接する上記内歯で構成されるスロットのうち、第1スロット内及び第2スロット内に1本または複数本の素線からなる巻線を挿入し、上記第1スロットと上記第2スロットとの間に上記巻線を渡らせてコイルを成形してなるステータの製造装置であって、上記ステータ鉄心の軸線方向のうち、上記裏面から上記表面に向かう方向を第1軸線方向、その逆を第2軸線方向としたとき、上記ステータ鉄心の上記表面より上記第1軸線方向に位置する第1アームであって、当該第1アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第1スロット内に挿入された第1スロット挿入部より上記第1軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第1アームと、上記第1アームを移動させる第1アーム移動機構と、上記ステータ鉄心の上記裏面より上記第2軸線方向に位置する第2アームであって、当該第2アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第1スロット挿入部より上記第2軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第2アームと、上記第2アームを移動させる第2アーム移動機構と、上記ステータ鉄心の上記裏面より上記第2軸線方向に位置する第3アームであって、当該第3アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第2スロット内に挿入された第2スロット挿入部より上記第2軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第3アームと、上記第3アームを移動させる第3アーム移動機構と、上記ステータ鉄心の上記表面より上記第1軸線方向に位置する第4アームであって、当該第4アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第2スロット挿入部より上記第1軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第4アームと、上記第4アームを移動させる第4アーム移動機構と、上記コイルが既に成形された上記第1スロット及び上記第2スロットのうち少なくともいずれかのコイル成形済スロット内に、このコイル成形済スロットのうち上記ステータ鉄心の内側に開口するスロット内側開口部を上記コイル成形済スロット内から閉塞するウェッジ部材を、上記裏面側から上記第1軸線方向に移動させて挿入するウェッジ挿入機構と、を備え、このウェッジ挿入機構によって、上記ウェッジ部材を上記コイル成形済スロット内に挿入する際、上記第1〜第4アームのうち、少なくとも上記ウェッジ部材を挿入する上記コイル成形済スロット側に位置するウェッジ挿入スロット側アームについて、上記巻線をたぐった状態を保持するように構成されてなるステータの製造装置である。
本発明の製造装置では、ウェッジ挿入機構によって、ウェッジ部材を、コイルが既に成形された第1スロット及び第2スロットのうち少なくともいずれかのコイル成形済スロット内に挿入する際、第1〜第4アームのうち、ウェッジ部材を挿入するコイル成形済スロット側に位置するウェッジ挿入スロット側アームについて、巻線をたぐった状態を保持するように構成されている。このため、ウェッジ部材を挿入するコイル成形済スロットのスロット内側開口部から、巻線(素線)がはみ出し難くなる。従って、コイル成形済スロットのスロット内側開口部からはみ出た巻線(素線)によってウェッジ部材の挿入が妨げられる等の不具合を抑制でき、適切にウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入することが可能となる。
さらに、上記のステータの製造装置であって、前記第1〜第4アーム移動機構は、前記第1〜第4アームのうち、少なくとも前記ウェッジ挿入スロット側アームについて、前記コイルを成形すべく最後に前記巻線をたぐった後、前記ウェッジ挿入機構が前記ウェッジ部材を上記コイル成形済スロット内に挿入し終えるまでの間、上記巻線を解放することなく上記巻線をたぐった状態を保持するように構成されてなるステータの製造装置とすると良い。
一旦巻線がコイル成形済スロットからはみ出てしまうと、はみ出た巻線をコイル成形済スロット内に戻さなければならず、煩わしい。これに対し、本発明の製造装置では、第1〜第4アーム移動機構は、第1〜第4アームのうち少なくともウェッジ挿入スロット側アームについて、コイルを成形すべく最後に巻線をたぐった後、ウェッジ挿入機構がウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入し終えるまでの間、巻線を解放することなく巻線をたぐった状態を保持するように構成されている。このため、ウェッジ部材を挿入するコイル成形済スロットのスロット内側開口部から、巻線(素線)がはみ出てしまう不具合を抑制できる。さらには、ウェッジ部材を、コイル成形済スロット内の所定位置に、スムーズに挿入することができる。
さらに、上記いずれかのステータの製造装置であって、前記第1〜第4アームは、アーム本体部と、このアーム本体部の先端に位置し、前記巻線に掛合するヘッド部と、を有し、前記ウェッジ挿入機構は、前記ウェッジ部材の挿入に先立ち、前記巻線をたぐった状態の前記ウェッジ挿入スロット側アームのうち上記ステータ鉄心の前記裏面より前記第2軸線方向に位置するウェッジ挿入裏面側アームの上記ヘッド部に対し、自身の押圧面において径方向内側から当接し、上記ウェッジ挿入裏面側アームを、上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて押圧する当接部材を有してなるステータの製造装置とすると良い。
本発明の製造装置では、ウェッジ挿入機構が、ウェッジ部材の挿入に先立ち、ウェッジ挿入裏面側アームのヘッド部に対し径方向内側から当接し、ウェッジ挿入裏面側アームをステータ鉄心の径方向外側に向けて押圧する当接部材を有している。このため、ウェッジ部材の挿入に先立ち、当接部材によってウェッジ挿入裏面側アームをステータ鉄心の径方向外側に向けて押圧することができる。このとき、ウェッジ挿入裏面側アームに対する当接部材の位置が固定されるので、ウェッジ挿入裏面側アームに対するウェッジ挿入機構の位置(軸線方向に直交する方向の位置)を位置決めすることができる。
ところで、ウェッジ挿入裏面側アームは、巻線をたぐった状態で保持されているため、ステータ鉄心、さらには、スロットに対するウェッジ挿入裏面側アームの位置は、固定されている。従って、当接部材によってウェッジ挿入裏面側アームをステータ鉄心の径方向外側に向けて押圧することで、ウェッジ部材の挿入に先立ち、軸線方向に直交する方向について、コイル成形済スロットに対するウェッジ挿入機構の位置を固定することができる。このため、ウェッジ部材を、適切にコイル成形済スロット内に挿入することができる。
さらに、上記のステータの製造装置であって、前記当接部材は、前記押圧面において前記ウェッジ挿入裏面側アームに当接すると共に上記ウェッジ挿入裏面側アームの前記ヘッド部に嵌合する形状を有してなるステータの製造装置とすると良い。
本発明の製造装置では、当接部材が、その押圧面においてウェッジ挿入裏面側アームに当接すると共にウェッジ挿入裏面側アームのヘッド部に嵌合する形状を有している。従って、この当接部材は、ウェッジ部材の挿入に先立ち、ウェッジ挿入裏面側アームのヘッド部に嵌合する形態で、ウェッジ挿入裏面側アームを径方向外側に向けて押圧する。このため、ウェッジ挿入裏面側アームに対し、当接部材を確実に固定させることができるので、軸線方向に直交する方向について、コイル成形済スロットに対するウェッジ挿入機構の位置を確実に固定することができる。このため、ウェッジ部材を、より適切に、コイル成形済スロット内に挿入することができる。
さらに、上記いずれかのステータの製造装置であって、前記ウェッジ挿入機構は、前記ウェッジ部材の挿入に先立ち、前記当接部材を前記押圧面において前記ウェッジ挿入裏面側アームの前記ヘッド部に当接させつつ径方向外側に向けて移動させることにより、上記ウェッジ挿入裏面側アームを径方向外側に向けて移動させ、上記ウェッジ部材を挿入する間、その位置を保持させるアーム移動保持機構を含むステータの製造装置とすると良い。
前述のように、本発明の製造装置では、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入する際、第1〜第4アームのうち少なくともウェッジ挿入スロット側アームについて、巻線をたぐった状態としている。このように、ウェッジ挿入スロット側アームについて巻線をたぐった状態とすれば、ウェッジ挿入スロット側アームをステータ鉄心の径方向外側に配置できるので、挿入されるウェッジ部材がウェッジ挿入スロット側アームのうちステータ鉄心の裏面側に位置するウェッジ挿入裏面側アームと当接(干渉)する危険性は小さい。
しかしながら、特に、スロット内に高密度に多数の巻線(素線)を配置させた場合は、ウェッジ挿入スロット側アームについて巻線をたぐった状態としても、ウェッジ挿入スロット側アームを十分に径方向外側に配置できず、挿入されるウェッジ部材がウェッジ挿入スロット側アームのうちステータ鉄心の裏面側に位置するウェッジ挿入裏面側アームと当接(干渉)し、ウェッジ部材に座屈等が生じたり、ウェッジ部材の挿入が妨げられる危険性がある。
これに対し、本発明の製造装置は、ウェッジ部材の挿入に先立ち、巻線をたぐった状態としているウェッジ挿入裏面側アームを、さらに、ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させ、ウェッジ部材を挿入する間、その位置を保持するアーム移動保持機構を有している。このため、ウェッジ挿入裏面側アームを、巻線をたぐり終えた位置よりも、さらに径方向外側の位置に保持できるので、挿入されるウェッジ部材がウェッジ挿入裏面側アームと当接(干渉)してしまうのを防止できる。従って、ウェッジ部材の座屈等を防止でき、ひいては、ウェッジ部材を適切にコイル成形済スロット内に挿入することができる。
なお、アーム移動保持機構としては、各種の機構を採用できるが、たとえば、当接部材に径方向内側から当接しつつ摺動する径方向位置決め面であって、径方向の位置が第2軸線方向に向かうにしたがって径方向外側に位置する斜面と、この斜面に続いて第2軸線方向に沿って延びる延長面とを含む径方向位置決め面を有するシャフトをステータ鉄心の軸線方向に移動させる機構を持つものが挙げられる。この機構によれば、シャフトを第1軸線方向に移動させると、まず、径方向位置決め面の斜面が当接部材に摺動する間、当接部材が径方向外側に移動する。続いて、径方向位置決め面の延長面が当接部材に摺動するので、当接部材の径方向位置が保持される。すなわち、シャフトを第1軸線方向に移動させるだけで、当接部材を径方向外側に移動させ、その位置を保持することができる。
他の解決手段は、表面とこれに平行な裏面とを有するリング状で内歯形状のステータ鉄心について、互いに隣接する上記内歯で構成されるスロットのうち、第1スロット内及び第2スロット内に1本または複数本の素線からなる巻線を挿入し、上記第1スロットと上記第2スロットとの間に上記巻線を渡らせてコイルを成形してなるステータの製造方法であって、上記ステータ鉄心の軸線方向のうち、上記裏面から上記表面に向かう方向を第1軸線方向、その逆を第2軸線方向としたとき、上記コイルが既に成形された上記第1スロット及び上記第2スロットのうち少なくともいずれかのコイル成形済スロット内に、このコイル成形済スロットのうち上記ステータ鉄心の内側に開口するスロット内側開口部を上記コイル成形済スロット内から閉塞するウェッジ部材を挿入するウェッジ挿入工程であって、上記ウェッジ部材を上記ステータ鉄心の上記裏面側から上記第1軸線方向に移動させると共に、挿入路形成部材を、上記ウェッジ部材の第1軸線方向端よりも上記第1軸線方向に位置させつつ、上記裏面側から上記第1軸線方向に移動させて、この挿入路形成部材の少なくとも一部を上記スロット内側開口部を通して上記コイル成形済スロット内に挿入させ、このコイル成形済スロット内に配置された上記巻線を上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させて、当該挿入路形成部材に続いて上記コイル成形済スロット内に挿入される上記ウェッジ部材の挿入路を形成し、上記ウェッジ部材を上記挿入路に挿入するウェッジ挿入工程と、上記ウェッジ部材を上記コイル成形済スロット内に挿入した後、上記挿入路形成部材を上記第2軸線方向に移動させ、上記ステータ鉄心の上記裏面側の位置に戻す復帰工程と、を備え、上記ウェッジ挿入工程では、上記挿入路形成部材を、自身の少なくとも一部が上記スロット内側開口部から上記コイル成形済スロット内に侵入する第1径方向位置に保持しつつ、上記第1軸線方向に移動させ、上記復帰工程では、上記挿入路形成部材を、上記第1径方向位置よりも径方向内側の第2径方向位置であって、上記挿入路形成部材の少なくとも一部が上記スロット内側開口部から上記コイル成形済スロット内に侵入する第2径方向位置に保持しつつ、上記挿入路形成部材を上記第2軸線方向に移動させて、上記ウェッジ挿入工程で挿入した上記ウェッジ部材のうち上記スロット内側開口部から径方向内側にはみ出した部位を、上記挿入路形成部材によって上記コイル成形済スロット内に納めるステータの製造方法である。
本発明のステータの製造方法では、ウェッジ挿入工程において、挿入路形成部材を第1径方向位置に保持しつつ第1軸線方向に移動させ、復帰工程では、挿入路形成部材を、第1径方向位置よりも径方向内側の第2径方向位置に保持つつ第2軸線方向に移動させる。このため、挿入したウェッジ部材を、復帰工程において、挿入路形成部材によって径方向外側に向かって押圧し過ぎてしまい、挿入したウェッジ部材を変形、破損させてしまう危険性を低減することができる。
なお、挿入路形成部材としては、例えば、ステータ鉄心の軸線方向及び径方向に直交する回転軸部材と、この回転軸部材の周りに回転自在に保持された円板状のローラとを有するものを用いることができる。
ところで、挿入路形成部材によって、コイル成形済スロット内に配置された巻線をステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させつつ、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入すると、径方向外側に向けて移動させた巻線のスプリングバックによって、挿入したウェッジ部材が径方向内側に押圧され、その一部がスロット内側開口部から径方向内側にはみ出してしまう虞がある。
これに対し、本発明の製造方法では、挿入路形成部材の第2径方向位置を、第1径方向位置よりも径方向内側であって、挿入路形成部材の少なくとも一部がスロット内側開口部からコイル成形済スロット内に侵入する位置としている。これにより、仮に、挿入したウェッジ部材の一部がスロット内側開口部から径方向内側にはみ出してしまったとしても、挿入路形成部材によってウェッジ部材をスロット内に納めることができる。
さらに、上記いずれかのステータの製造方法であって、前記ウェッジ挿入工程に先立って、前記ステータ鉄心の前記表面より前記第1軸線方向に位置する第1アームであって、当該第1アームを上記ステータ鉄心の径方向外側向けて移動させたときに、前記巻線のうち前記第1スロット内に挿入された第1スロット挿入部より上記第1軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第1アームと、上記ステータ鉄心の前記裏面より前記第2軸線方向に位置する第2アームであって、当該第2アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第1スロット挿入部より上記第2軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第2アームと、上記ステータ鉄心の上記裏面より上記第2軸線方向に位置する第3アームであって、当該第3アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第2スロット内に挿入された第2スロット挿入部より上記第2軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第3アームと、上記ステータ鉄心の上記表面より上記第1軸線方向に位置する第4アームであって、当該第4アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第2スロット挿入部より上記第1軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第4アームと、を用いて前記コイルを成形する巻線工程を備え、前記ウェッジ挿入工程では、少なくとも、上記コイルが既に成形された上記第1スロット及び上記第2スロットのうち少なくともいずれかの前記コイル成形済スロット内に前記ウェッジ部材を挿入する間、上記第1〜第4アームのうち、少なくとも上記ウェッジ部材を挿入する上記コイル成形済スロット側に位置するウェッジ挿入スロット側アームについて、上記巻線をたぐった状態を保持するステータの製造方法とすると良い。
本発明のウェッジ挿入工程では、少なくとも、コイルが既に成形された第1スロット及び第2スロットのうち少なくともいずれかのコイル成形済スロット内に挿入する間、第1〜第4アームのうち、少なくともウェッジ部材を挿入するコイル成形済スロット側に位置するウェッジ挿入スロット側アームについて、巻線をたぐった状態を保持する。このため、ウェッジ部材を挿入するコイル成形済スロットのスロット内側開口部から、巻線(素線)がはみ出し難くなる。従って、コイル成形済スロットのスロット内側開口部からはみ出た巻線(素線)によってウェッジ部材の挿入が妨げられる等の不具合を抑制でき、適切にウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入することが可能となる。
さらに、上記のステータの製造方法であって、前記第1〜第4アームのうち、少なくとも前記ウェッジ挿入スロット側アームについて、前記巻線工程において前記コイルを成形すべく最後に前記巻線をたぐった後、前記ウェッジ挿入工程において前記ウェッジ部材を上記コイル成形済スロット内に挿入し終えるまでの間、上記巻線を解放させることなく、上記巻線をたぐった状態を保持させるステータの製造方法とすると良い。
一旦巻線がコイル成形済スロットからはみ出てしまうと、はみ出た巻線をコイル成形済スロット内に戻さなければならず、煩わしい。これに対し、本発明の製造方法では、第1〜第4アームのうち、少なくともウェッジ挿入スロット側アームについて、コイルを成形すべく最後に巻線をたぐった後、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入し終えるまでの間、巻線を解放させることなく、巻線をたぐった状態を保持させる。このため、ウェッジ部材を挿入するコイル成形済スロットのスロット内側開口部から、巻線(素線)がはみ出てしまう不具合を抑制できる。さらには、ウェッジ部材を、コイル成形済スロット内の所定位置に、スムーズに挿入することができる。
他の解決手段は、表面とこれに平行な裏面とを有するリング状で内歯形状のステータ鉄心について、互いに隣接する上記内歯で構成されるスロットのうち、第1スロット内及び第2スロット内に1本または複数本の素線からなる巻線を挿入し、上記第1スロットと上記第2スロットとの間に上記巻線を渡らせてコイルを成形してなるステータの製造方法であって、上記ステータ鉄心の軸線方向のうち、上記裏面から上記表面に向かう方向を第1軸線方向、その逆を第2軸線方向としたとき、上記ステータ鉄心の上記表面より上記第1軸線方向に位置する第1アームであって、当該第1アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第1スロット内に挿入された第1スロット挿入部より上記第1軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第1アームと、上記ステータ鉄心の上記裏面より上記第2軸線方向に位置する第2アームであって、当該第2アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第1スロット挿入部より上記第2軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第2アームと、上記ステータ鉄心の上記裏面より上記第2軸線方向に位置する第3アームであって、当該第3アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第2スロット内に挿入された第2スロット挿入部より上記第2軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第3アームと、上記ステータ鉄心の上記表面より上記第1軸線方向に位置する第4アームであって、当該第4アームを上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させたときに、上記巻線のうち上記第2スロット挿入部より上記第1軸線方向に位置する上記巻線に掛合してこの巻線をたぐる第4アームと、を用いて上記コイルを成形する巻線工程と、上記コイルが既に成形された上記第1スロット及び上記第2スロットのうち少なくともいずれかのコイル成形済スロット内に、このコイル成形済スロットのうち上記ステータ鉄心の内側に開口するスロット内側開口部を上記コイル成形済スロット内から閉塞するウェッジ部材を挿入するウェッジ挿入工程と、を備え、上記ウェッジ挿入工程では、少なくとも上記ウェッジ部材を上記コイル成形済スロット内に挿入する間、上記第1〜第4アームのうち、少なくとも上記ウェッジ部材を挿入する上記コイル成形済スロット側に位置するウェッジ挿入スロット側アームについて、上記巻線をたぐった状態を保持するステータの製造方法である。
本発明のウェッジ挿入工程では、少なくとも、コイルが既に成形された第1スロット及び第2スロットのうち少なくともいずれかのコイル成形済スロット内にウェッジ部材を挿入する間、第1〜第4アームのうち、ウェッジ部材を挿入するコイル成形済スロット側に位置するウェッジ挿入スロット側アームについて、巻線をたぐった状態を保持する。このため、ウェッジ部材を挿入するコイル成形済スロットのスロット内側開口部から、巻線(素線)がはみ出し難くなる。従って、コイル成形済スロットのスロット内側開口部からはみ出た巻線(素線)によってウェッジ部材の挿入が妨げられる等の不具合を抑制でき、適切にウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入することが可能となる。
さらに、上記のステータの製造方法であって、前記第1〜第4アームのうち、少なくとも前記ウェッジ挿入スロット側アームについて、前記巻線工程において前記コイルを成形すべく最後に前記巻線をたぐった後、前記ウェッジ挿入工程において前記ウェッジ部材を前記コイル成形済スロット内に挿入し終えるまでの間、上記巻線を解放させることなく、上記巻線をたぐった状態を保持させるステータの製造方法とすると良い。
一旦巻線がコイル成形済スロットからはみ出てしまうと、はみ出た巻線をコイル成形済スロット内に戻さなければならず、煩わしい。これに対し、本発明の製造方法では、第1〜第4アームのうち、少なくともウェッジ挿入スロット側アームについて、コイルを成形すべく最後に巻線をたぐった後、ウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入し終えるまでの間、巻線を解放させることなく、巻線をたぐった状態を保持させる。このため、ウェッジ部材を挿入するコイル成形済スロットのスロット内側開口部から、巻線(素線)がはみ出てしまう不具合を抑制できる。さらには、ウェッジ部材を、コイル成形済スロット内の所定位置に、スムーズに挿入することができる。
さらに、上記いずれかのステータの製造方法であって、前記ウェッジ挿入工程では、前記ウェッジ部材の挿入に先立ち、前記巻線をたぐった状態の前記ウェッジ挿入スロット側アームのうち、前記ステータ鉄心の前記裏面より前記第2軸線方向に位置するウェッジ挿入裏面側アームを、さらに、上記ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させ、上記ウェッジ部材を挿入する間、その位置を保持するステータの製造方法とすると良い。
前述のように、本発明の製造方法では、少なくともウェッジ部材をコイル成形済スロット内に挿入する間、第1〜第4アームのうち少なくともウェッジ挿入スロット側アームについて、巻線をたぐった状態としている。このように、ウェッジ挿入スロット側アームについて巻線をたぐった状態とすれば、ウェッジ挿入スロット側アームをステータ鉄心の径方向外側に配置できるので、挿入されるウェッジ部材がウェッジ挿入スロット側アームのうちステータ鉄心の裏面側に位置するウェッジ挿入裏面側アームと当接(干渉)する危険性は小さい。
しかしながら、特に、スロット内に高密度に多数の巻線(素線)を配置させた場合は、ウェッジ挿入スロット側アームについて巻線をたぐった状態としても、ウェッジ挿入スロット側アームを十分に径方向外側に配置できず、挿入されるウェッジ部材がウェッジ挿入スロット側アームのうちステータ鉄心の裏面側に位置するウェッジ挿入裏面側アームと当接(干渉)し、ウェッジ部材に座屈等が生じたり、ウェッジ部材の挿入が妨げられる危険性がある。
これに対し、本発明の製造方法では、ウェッジ部材の挿入に先立ち、巻線をたぐった状態としているウェッジ挿入裏面側アームを、さらに、ステータ鉄心の径方向外側に向けて移動させ、ウェッジ部材を挿入する間、その位置を保持する。このため、ウェッジ挿入裏面側アームを、巻線をたぐり終えた位置よりも、さらに径方向外側の位置に保持できるので、挿入されるウェッジ部材がウェッジ挿入裏面側アームと当接(干渉)してしまうのを防止できる。従って、ウェッジ部材の座屈等を防止でき、ひいては、ウェッジ部材を適切にコイル成形済スロット内に挿入することができる。
まず、本実施例にかかるステータ2を備えたモータ1について、図1を参照して説明する。このモータ1は、ロータ9とステータ2とからなる三相モータである。このうち、ロータ9は、回転軸91を中心とする円筒形のロータ本体92と、永久磁石93とからなる8極の永久磁石ロータである。永久磁石93は、ロータ本体92に、平面視花びらのように、外周面近傍に沿ってジグザグに配置固着されてなる。一方、ステータ2はこのロータ9を包囲するように配置されている。
図2及び図3に示すこのステータ2は、3相8極の分布巻きステータである。このステータ2は、図4に示すように、平面視リング状で、48ヶのティース(内歯)4、及び隣り合うティース4で構成される48ヶのスロット5を有するステータ鉄心3を備える。
また、それぞれ8ヶのU相コイル7u,V相コイル7v,W相コイル7wを備える。これらのコイルは、U相,V相,W相の各相毎に、16本の素線(ペア素線)6Pを1組とした巻線6を用い、U相巻線6u,V相巻線6v,W相巻線6wを所定のスロット5(U相,V相,W相スロット5u,5v,5w)に挿入し、各ティース4に分布巻きによって巻き付けて形成してなる。
具体的には、図2及び図5〜図7に示すように、U相コイル7uは、スロット5のうちU相スロット5uに挿入されて、その間のティース4に巻回される。同様に、V相コイル7vは、V相スロット5vに挿入されてその間のティース4に、W相コイル7wは、W相スロット5wに挿入されてその間のティース4にそれぞれ巻回される。従って、U相,V相,W相スロット5u,5v,5wは、2つのU相スロット5u、2つのV相スロット5v、及び2つのW相スロット5wが、この順にステータ2(鉄心3)の周方向(図2において時計回り)に繰り返し並ぶように配置される。
なお、図1及び図2では、U相コイル7u,V相コイル7v,W相コイル7wにおける各相の巻線6u,6v,6wの巻き方(時計回りと反時計回り、正巻きと逆巻き)の違いを示すため、各相のコイル7u等の側部に「ドット(・印)」及び「クロス(×印)」を示した。各相のコイル7u等のうち、「クロス」で示される側は、各相の外部接続端子65u,65v,65wに近く、「ドット」で示される側は中性点Nに近いことを示している。これにより理解できるように、各相の8ヶのコイル7u,7v,7wは、それぞれ巻き付け方が交互に逆向きになっており、隣り合うコイルで発生する磁界が互いに逆極性となることが判る。
さて、図4に示すステータ鉄心3は、既に説明したように、平面視リング状で、径方向内側に向かって延びる48ヶのティース4、及びこれらのティース4同士の間に位置する同じく48ヶのスロット5を有している。このステータ鉄心3は、例えば方向性珪素鋼板をプレス打ち抜きして形成した鋼板39を積み重ね互いに固着して構成されている。
なお、本実施例では、図3に矢印で示すように、ステータ鉄心3の軸線(中心軸)3Xに沿う方向(軸線方向3XPとする)のうち、ステータ鉄心3の裏面3Bから表面3Aに向かう方向を第1軸線方向3X1とする。この逆に、ステータ鉄心3の表面3Aから裏面3Bに向かう方向を第2軸線方向3X2とする。また、ステータ鉄心3の径方向(径方向3YPとする)のうち、内側に向かう方向を径内方向3Y1とし、この逆に、外側に向かう方向を径外方向3Y2とする。
このステータ鉄心3のティース4に、U相巻線7u,V相巻線7v,W相巻線7wをそれぞれ巻き付け、ステータ2を製造するのであるが、本実施例では、図8にその概要を示すステータ鉄心の製造装置1000を用いて、ステータ鉄心3に巻線を施し、ステータ2を製造する。
この製造装置1000では、ステータ鉄心3(ステータ2)が所定セット位置に位置するようにセットされる。具体的には、このステータ鉄心3は、その表面3Aが上方を、裏面3Bが下方を向き、軸線3Xが鉛直線にほぼ一致するように配置される。
ステータ鉄心3の上方には、巻線6を吐出する第1,第2吐出装置610,620(図10,図11参照)を有する巻線吐出装置600が配置されている。さらに、この巻線吐出装置600(第1,第2吐出装置610,620)を軸線方向3XPに上下動させることができる移動機構800が設けられている。具体的には、図10,図11に示すように、この巻線吐出装置600の第1吐出装置610と第2吐出装置620とは、それぞれ直線走行ユニット(図示しない)に保持され、直線状レール811,821に沿ってそれぞれ軸線方向3XP(図10,図11中紙面に直交する方向)に直線状に移動することができる。その上、移動機構800のうち図示しない機構によって、レールサポート部材813,823及び直線状レール811,821を軸線3Xの周りに回動させることで、第1吐出装置610及び第2吐出装置620を水平方向に対称に回動(揺動)させることができる。
また、図9に示すように、ステータ鉄心3の水平方向周囲には、第1,第2,第3,第4アーム110,210,310,410及びこれらを移動させる第1,第2,第3,第4アーム移動機構100,200,300,400が配置されている。一方、ステータ鉄心3についてこれらと対称の位置には、対称第1,第2,第3,第4アーム1110,1210,1310,1410及びこれらを移動させる対称第1,第2,第3,第4アーム移動機構1100,1200,1300,1400が配置されている(図8参照)。第1〜第4アーム移動機構100〜400及び対称第1〜第4アーム移動機構1100〜1400は、後述するように、第1〜第4アーム110〜410及び対称第1〜第4アーム1110〜1410を移動させる機構である。
さらに、図8に示すように、鉄心3の下方には、後に詳述するように、スロット内にウェッジ部材8を挿入する(図14参照)ためのウェッジ挿入機構700が配置されている(図17,図18参照)。
ここで、本実施例のアーム移動機構について説明する。なお、本実施例では、第1〜第4アーム移動機構100〜400と対称第1〜第4アーム移動機構1100〜1400とは、ステータ鉄心3について対称の位置に配置された同一の機構であるため、第1〜第4アーム移動機構100〜400で代表させて説明する。
第1〜第4アーム移動機構100〜400は、図9に示すように、1−2アーム移動カム150及び3−4アーム移動カム350、第1アーム移動ユニット101、第2アーム移動ユニット201、第3アーム移動ユニット301、第4アーム移動ユニット401を有している。このうち、3−4アーム移動カム350は、第3アーム移動ユニット301及び第4アーム移動ユニット401を作動させる共通のカムであり、軸線方向3XPに延びる弓形状を有している(図12参照)。1−2アーム移動カム150は、第1アーム移動ユニット101及び第2アーム移動ユニット201を作動させる共通のカムであり、3−4アーム移動カム350と同様に、軸線方向3XPに延びる弓形状を有している。
このような1−2アーム移動カム150と3−4アーム移動カム350とは、同期し、かつ同相で同振幅だけ軸線方向3XPに往復移動するように構成されている。具体的には、1−2アーム移動カム150と3−4アーム移動カム350とは、所定の位置で連結され、カムユニット102を形成しており、このカムユニット102が、軸線方向3XPに往復移動するように構成されている。詳細には、図9に示すように、カムユニット102(1−2アーム移動カム150及び3−4アーム移動カム350)を移動させるために、移動駆動軸840の回転運動を、クランク機構850を用いて、軸線方向3XPへの往復直線運動(上下運動)に変換する。
このような構成によれば、移動駆動軸840が一回転することによって、カムユニット102(1−2アーム移動カム150及び3−4アーム移動カム350)が、軸線方向3XPに1回上下に往復運動する(図12,図13参照)。なお、図12は、3−4アーム移動カム350(カムユニット102)が上死点から僅かに第2軸線方向3X2(図中下方)に位置するときを示し、図13は、3−4アーム移動カム350(カムユニット102)が下死点よりも僅かに第1軸線方向3X1(図中上方)に位置するときを示している。
ところで、3−4アーム移動カム350は、図12に示すように、軸線方向3XPに延びる長手方向中央部がステータ鉄心3側(図中右側)に突出した環状弓形の第1カム部材351と、この第1カム部材351の内側のうち軸線方向3XPの中央位置に配置された板状の第2カム部材353とを有している。1−2アーム移動カム150も、図示しないが、3−4アーム移動カム350と同形状の、第1カム部材及び第2カム部材を有している。本実施例では、第2カム部材351と1−2アーム移動カム150の第2カム部材とを、交互に図中左右方向に移動させることにより、1−2アーム移動カム350及び3−4アーム移動カム350において、次述する第1レーン及び第2レーンを交互に形成することができる。
具体的には、図12に示すように、3−4アーム移動カム350が上死点から僅かに第2軸線方向3X2(図中下方)に移動すると、第2カム部材353が、最もステータ鉄心3から離間した位置(図中左側)に配置される。このとき、3−4アーム移動カム350には、第1直線部352b、第1連結部352c、第2直線部352d、第2連結部352e、第3直線部352fによって、第1レーン352Jが形成される。その後、3−4アーム移動カム350が第2軸線方向3X2(図中下方)に移動し、下死点に到達するまでの間、3−4アーム移動カム350において第1レーン352Jが維持される。
次いで、3−4アーム移動カム350が下死点に到達した後、下死点から僅かに第1軸線方向3X1(図中上方)に移動すると、図13に示すように、第2カム部材353が、最もステータ鉄心3に近い位置(図中右側)に移動する。このとき、3−4アーム移動カム350には、第1直線部352b、第4直線部352g、及び第3直線部352fによって第2レーン352Kが形成される。その後、3−4アーム移動カム350が第1軸線方向3X1(図中上方)に移動し、上死点に到達するまでの間、3−4アーム移動カム350において第2レーン352Kが維持される。
一方、1−2アーム移動カム150では、第2カム部材が、3−4アーム移動カム350の第2カム部材353と反対の動きをする。すなわち、1−2アーム移動カム150が上死点から下死点に移動する間、第2カム部材が、最もステータ鉄心3に最も近い位置(図中右側)に配置され、第2レーンを形成する。反対に、1−2アーム移動カム150が下死点から上死点に移動する間、第2カム部材が、最もステータ鉄心3に最も離間した位置(図中左側)に配置され、第1レーンを形成する。
次に、このようなカムユニット102(1−2アーム移動カム150及び3−4アーム移動カム350)の動きを、第1アーム110〜第4アーム410の動きに変換する第1〜第4アーム移動ユニット101〜401の構成及びその動きについて説明する。なお、第1〜第4アーム移動ユニット101〜401は、それぞれ、同一構造を有しており(図9参照)、タイミングは異なるが同じ動作を行うため、ここでは、第3アーム移動ユニット301及び第4アーム移動ユニット401を中心に説明する。
図12に示すように、第3アーム移動ユニット301は、第3カムローラ340、第3リンク機構330、及び第3カムローラ340と第3リンク機構330とを連結する第3連結構造体320を有している。同様に、第4アーム移動ユニット401は、第4カムローラ440、第4リンク機構430、及び第4カムローラ440と第4リンク機構430とを連結する第4連結構造体420を有している。
第3,第4カムローラ340,440は、3−4アーム移動カム350の内側に配置され、3−4アーム移動カム350の内側に接する形態でカム機構をなしている。このような第3,第4カムローラ340,440は、3−4アーム移動カム350によって構成されるレーン(第1レーン352Jあるは第2レーン352K)に倣って移動する。
具体的には、3−4アーム移動カム350が第2軸線方向3X2に移動する間、第3,第4カムローラ340,440は、第3直線部352f、第2連結部352e、第2直線部352d、第1連結部352c、第1直線部352bの順に、第1レーン352Jを移動することとなる(図12参照)。反対に、3−4アーム移動カム350が第1軸線方向3X1に移動する間、第3,第4カムローラ340,440は、第1直線部352b、第3直線部352g、第3直線部352fの順に、第2レーン352Kを移動することとなる(図13参照)。
このように第3,第4カムローラ340,440が移動すると、これに連結された第3,第4連結構造体320,420、及び第3,第4リンク機構330、430が作動し、第3,第4アーム310,410が一連のサイクル動作を行う。なお、第3,第4アーム310,410の動きは、タイミングが異なるのみで同様であるため、ここでは、第4アーム410で代表させて説明する。また、第4アーム410は、U相コイル7u,V相コイル7v,W相コイル7wのいずれのコイルを成形する場合にも用いられるが、いずれの場合も同様な動作であるため、ここでは、U相コイル7uを成形する場合で代表させて説明する。
まず、第1吐出装置610が上方から第2スロット52(第2U相スロット52u)側を第2軸線方向3X2に移動(下降)すると、これと同期して3−4アーム移動カム350が第2軸線方向3X2に移動する。このため、第3直線部352fに位置していた第4カムローラ440(図12参照)が、第2連結部352eを移動する。このとき、第4アーム410は、図10に示すように、第4アームセット位置(図中二点鎖線で示す)を経由して、第4アーム退避位置(図中実線で示す位置)まで移動する。これにより、第4アーム410は、第1吐出装置610との干渉(衝突)を避けることができる。さらに、第1吐出装置610が第4アーム410の側方を通過する間、第4カムローラ440は、第2直線部352dを移動する。このとき、第4アーム410は、第4アーム退避位置に保持される。
さらに、第1吐出装置610が下降すると、第4カムローラ440は、第1連結部352cを移動する。このとき、第4アーム410は、第4アームセット位置を経由して、第4アーム引き位置まで移動する(図11参照)。これにより、吐出された巻線6のうち鉄心3の表面3Aよりも外側に位置する部分をたぐり、そのヘッド部410Hで巻線6を径外方向3Y2に押圧することで、巻線6の形を整えて表面側コイルエンド部7Hを成形することができる。さらに、第1吐出装置610が下死点まで下降する間、第4カムローラ440は、第1直線部352bを移動する。この間、第4アーム410は、第4アーム引き位置(図11中実線で示す位置)に保持されるので、巻線6をたぐった状態を保持する。
その後、第1吐出装置610が、軸線3Xの周り(図11中時計回り)に回動し、第1スロット51(第1U相スロット51u)側を第1軸線方向3X1に移動する間は、これと同期して3−4アーム移動カム350が第1軸線方向3X1に移動する。このため、図13に示すように、第4カムローラ440は、第1直線部352b、第3直線部352g、第3直線部352fの順に、第2レーン352Kを移動することとなる。このとき、この間、第4アーム410は、第4アーム引き位置に保持されるので、巻線6をたぐった状態を保持する。このため、第4アーム410でたぐった巻線6がばらけてしまう虞がない。次いで、第1吐出装置610が、軸線3Xの周り(図11中反時計回り)に回動し、第2スロット52(第2U相スロット52u)側に移動した後、上述した一連のサイクル動作を繰り返し、表面側コイルエンド部7Hを成形する。
また、第1〜第3アーム110〜310及び対称第1〜第4アーム1110〜1410も、上述の第4アーム410と同様なサイクル動作を行うことで、表面側コイルエンド部7H及び裏面側コイルエンド部7Rを成形する。
以上のように、第1吐出装置610から吐出された巻線6を、それぞれ鉄心3の第1,第2スロット51,52内に挿入し、また、第1ロット51と第2スロット52との間で、鉄心3の表面3A上及び裏面3B上を渡らせて表面側コイルエンド部7Hまたは裏面側コイルエンド部7Rとすることにより、コイル7(U相コイル7u)を形成することができる。これと同時に、第2吐出装置620から吐出された巻線6も、同様に対称第1,第2スロット151,152に挿入し、表面側コイルエンド部7H及び裏面側コイルエンド部7Rを形成することによって、コイル7(U相コイル7u)を形成することができる。このように、本実施例の製造装置1000では、2つのコイル7を同時に形成することができる。
なお、本実施例では、各スロット5における巻線6(素線6p)の占積率を、約70%としている。占積率とは、スロットの中に占める素線(絶縁被覆を含む)の割合をいう。一般に、素線(絶縁被覆を含む)の半径をr(m)、スロット内の素線数をn、スロット断面積(スロット紙等の絶縁物を除いた有効スロット断面積)をA(m2)としたとき、占積率S(%)は、S=(nπr2/A)×100として求められる。
また、以上のようにしてステータ鉄心3にコイル7(7u,7v,7w)を形成する工程が、巻線工程に相当する。
ところで、上述のように、第1スロット51と第2スロット52との間、あるいは対称第1スロット151と対称第2スロット152との間で巻線6を渡らせてコイル7を形成したままでは、その後に、一旦コイル成形済スロット55(コイル7が既に成形された第1,第2スロット51,52及び対称第1,第2スロット151,152)内に挿入された巻線6が、鉄心3の内周円筒面3Iよりも内側にはみ出る虞がある(図15参照)。そこで、図15に示すように、コイル成形済スロット55のスロット内側開口部5A(以下、これを成形済スロット内側開口部55Aともいう)に、絶縁体からなる断面略U字状のウェッジ部材8を配置して、コイル成形済スロット55内から成形済スロット内側開口部55Aを閉塞し、巻線6がコイル成形済スロット55からはみ出るのを防止する。
なお、成形済スロット内側開口部55Aにおけるスロット幅をWSとする。また、鉄心3とコイル成形済スロット55内の巻線6との間には、絶縁フィルム95が介在して、巻線6と鉄心3との間の絶縁を保持している。
具体的には、図14に示すように、ステータ鉄心3(ステータ2)の裏面3B側から、コイル7が形成されたコイル成形済スロット55、つまり巻線6が挿入された第1,第2スロット51,52及び対称第1,第2スロット151,152に、それぞれウェッジ部材8を同時に挿入する。なお、ウェッジ部材8の挿入は、コイル7の形成の後であれば、いずれの時でも可能である。しかし、一旦巻線6がコイル成形済スロット55からはみ出ると、はみ出た巻線6をコイル成形済スロット55内に戻すのを自動化するのは困難であり、作業者の手作業となり易い。このため、本実施例では、各コイル7を巻回した直後にウェッジ部材8をコイル成形済スロット55内に挿入し、次いで、巻線工程において、次のコイルの巻回作業を行うようにしている。すなわち、巻線工程とウェッジ挿入工程とを交互に繰り返し行うようにしている。
ウェッジ部材8は、絶縁性の樹脂成型体であり、図16(a)に示すように、基部83とその両端辺から延びる側壁部84とからなり、断面略U字状で、ステータ鉄心3の厚さに対応した長さを有している。なお、本実施例では、ウェッジ部材8のうち、コイル成形済スロット55内に先に挿入される先端81では、側壁部84がテーパ状に切り欠いた形状とされている。一方、後端82は、側壁部84が先端83とは逆にテーパ状に延びた形状とされている。
さて、このウェッジ部材8を巻線6が挿入されたコイル成形済スロット55内に挿入する。しかしながら、コイル成形済スロット55内に多数の巻線6(素線6p)が挿入されて、コイル成形済スロット55内の空間が少ない場合、即ち、本実施例のように、コイル成形済スロット55における巻線6(素線6p)の占積率が大きい場合(本実施例では約70%)には、ウェッジ部材8の挿入の際に、ウェッジ部材8と巻線6およびステータ鉄心3(ティース4)との間に摩擦が生じ、挿入抵抗となる。この挿入抵抗が大きいと、ウェッジ部材8のコイル成形済スロット55内への挿入が困難となる。
甚だしい場合には、図16(b)に示すように、後端82を図中矢印方向に押圧しても、ウェッジ部材8がコイル成形済スロット55内を進行しないために、基部83が反り、ついには、図16(c)に示すように、側壁部84が左右に開いて変形する座屈現象が生じる。このようになると、ウェッジ部材8のコイル成形済スロット55への挿入は極めて困難となる。このような現象は、モータ1をより高効率とするために、コイル成形済スロット55内おける素線6pの占積率を大きくすると顕著に現れる。
これに対し、本実施例の製造装置1000では、占積率が大きい場合でもウェッジ部材8をコイル成形済スロット55内に挿入可能なウェッジ挿入機構700を備えている。このウェッジ挿入機構700は、図17に示すように、ウェッジ部材8を第1軸線方向3X1(図中上方向)に移動させるウェッジ移動機構710を含んでいる。
ウェッジ移動機構710は、貫通孔711Bを備えた筒状の昇降ロッド711と、この貫通孔711B内に挿通される軸状のガイドポール712とを有する。これらは、製造装置1000のセット位置SPにセットされた鉄心3の軸線3Xと同軸で、鉛直方向(軸線方向3XP)に延びるように配置されている。さらに、ウェッジ移動機構710は、昇降ロッド711をガイドポール712及び軸線3Xに沿って昇降させるために、軸線3Xと平行で鉛直方向(軸線方向3XP)に延びるように配置された直線レール714B及びこれに沿って走行する走行ユニット714Aからなるリニアガイド714と、昇降ロッド711をリニアガイド714(走行ユニット714A)に結合する連結部材713とを有する。
さらに、走行ユニット714Aには、製造装置1000の下方に位置するシャフト715、複数のギアからなる減速器716、タイミングベルト717、回転方向変換のためのギアボックス718、及びハンドル719が順に接続されている。従って、作業者が、ハンドル719を回転させると、ギアボックス718、タイミングベルト717、減速器716を通じてシャフト715が回転され、図示しないギヤ及びチェーンでこのシャフト715に結合された走行ユニット714Aが、直線レール714Bに沿って軸線3Xと平行に昇降するから、これと共に、連結部材713及び昇降ロッド711を昇降させることができる。なお、昇降ロッド711の昇降を、作業者の手動によらず、モータその他の機械的駆動手段を用い行っても良いことは言うまでもない。
かくして、図18に示すように、ステータ鉄心3に同軸に配置された昇降ロッド711を、ガイドポール712に沿って、軸線方向3XP(鉛直方向)に昇降させることができる。
次いで、この昇降ロッド711に形成され、ウェッジ部材8をコイル成形済スロット55に挿入するための各機構について説明する。図19は、昇降ロッド711の要部を示す斜視説明図であり、後述するカバー部材744の1つを透視した状態としている。また、図20は、図19におけるカバー部材744及び圧縮バネ745を除去した状態とし、ブレード部材751及びローラ761とウェッジ部材8との関係を示す斜視説明図である。図23,図24は、ウェッジ部材8を挿入する前の状態を示す斜視説明図であり、ガイドポール712等を省略している。また、図25〜図30は、ステータ鉄心3にウェッジ部材8を挿入する一連の動作を説明する説明図であり、コイル成形済スロット55のうち第2スロット52の中央の位置で軸線方向3XPに切断した断面図に略相当する。
昇降ロッド711は、図19に示すように、ステータ鉄心3と同軸の貫通孔711Bを有する筒形状であり、その側面には軸線方向3XP(図中上下方向)に延びるガイド部材731が固着されている。図20に示すように、このガイド部材731には、溝部732が凹設されており、この溝部732には、軸線方向3XPに延びる板状でウェッジ部材8を搭載するブレード部材751が装着されている。このブレード部材751は、図21に示すように、スロット内側開口部5Aのスロット幅WS(図15参照)よりも薄い板厚WBの板材(WB<WS)からなり、その長手方向(図21(a)中左右方向)に延び、ウェッジ部材8の基部83に当接するウェッジ当接面752を有する。さらに、このウェッジ当接面752より軸線3Xの径方向外側(図21(a)中上方)に突出し、後述するようにウェッジ部材8の後端82を押すウェッジ押圧部753を有している。
また、このガイド部材731には、リニア案内ユニット741が装着されている。具体的には、直線レール743がガイド部材731に軸線方向3XPに延びて固着されており、この直線レール743に沿って、走行ユニット742が軸線方向3XPに移動可能とされている(図20参照)。
また、このガイド部材731の溝部732のうち、第1軸線方向3X1上端側には、挿入路形成部材765が設けられている。この挿入路形成部材765は、回転軸部材764と、この回転軸部材764の周りに回転自在に保持された円板状のローラ761とを有している(図22参照)。このうち、ローラ761は、図22に示すように、径大のローラ部762と、これと同軸でこれより径小の当接部係合部763とを備えている。このうち、ローラ部762は、成形済スロット内側開口部55Aにおけるスロット幅WS(図15参照)よりも狭い(薄い)板厚WRを有している。このようなローラ部762は、後述するように、コイル成形済スロット55内にその一部が挿入されると、これに遅れてコイル成形済スロット55内を進むウェッジ部材8の挿入路SRを形成する(図28参照)。なお、本実施例では、ガイド部材731及び挿入路形成部材765が挿入路形成機構760をなす。
さらに、図22(a)に示すように、ローラ部762のうち、巻線6と当接する当接面762bが、ローラ部762の板厚方向(図中左右方向)中央762cに近づくにしたがって回転軸部材764に近づく斜面を含み、板厚方向中央762cが最も回転軸部材764に接近する形状を有している。具体的には、本実施例では、ローラ部762の当接面762bが、断面略V字形状を有している。このため、後述するように、ウェッジ部材8の挿入路SRを形成すべく、ローラ部762(ローラ761)を第1軸線方向3X1に移動させることで、最も径方向内側に位置する巻線6(素線6P)を、ローラ部762の当接面762bの傾斜に沿って板厚方向中央762cに寄せつつ、直線状に整形することができる。これにより、後述するように、コイル成形済スロット55の内壁面のうち成形済スロット内側開口部55Aに隣り合う開口側内壁面55Bとコイル成形済スロット55内の巻線6(素線6P)との間に間隙を形成することができるので、ウェッジ部材8をコイル成形済スロット55内に挿入する際、挿入抵抗を低減することができ、スムーズにウェッジ部材8を挿入することができる(図31参照)。
また、ウェッジ部材8をコイル成形済スロット55内に挿入する際、成形済スロット内側開口部55Aから、巻線6(素線6P)がはみ出ていたとしても、はみ出ている巻線6(素線6P)を、ローラ部762の当接面762bの傾斜に沿って板厚方向中央762cに寄せつつ、コイル成形済スロット55内に納めることができる。従って、はみ出ている巻線6(素線6P)を再びコイル成形済スロット55内に納める際、この巻線6(素線6P)がコイル成形済スロット55の角部55Dと接触して傷ついてしまう等の不具合を防止できる。特に、複数本の素線6Pがねじれた状態ではみ出ている場合でも、これらの素線6Pを順にローラ部762の当接面762bの傾斜に沿って板厚方向中央762cに寄せることができ、これらの素線6Pを整列させてコイル成形済スロット55内に納めることができる(図31参照)。なお、図22(a)に示すように、ローラ部762の当接面762bの角部は、巻線6(素線6P)を傷つけないようにするため、R面取り形状としている。
ところで、挿入路形成部材765は、回転軸部材764の両端部において、ガイド部材731に形成された長孔形状の軸保持溝738の内部に移動可能に保持されている。詳細には、軸保持溝738は、図19に拡大して示すように、第2軸線方向3X2端部(この部分を第1軸保持部738bとする)が最も径外方向3Y2に位置し、第1軸線方向3X1端部(この部分を第2軸保持部738cとする)が最も径内方向3Y1に位置する長孔形状を有しており、回転軸部材764が、第1軸保持部738bと第2軸保持部738cとの間を連結する軸移行部738dを移動できるように設けられている。これにより、ローラ部762(ローラ761)は、軸線方向3XPに移動しつつ径方向3YPに移動可能となっている。ここで、回転軸部材764が軸保持溝738の第1軸保持部738bに位置するとき、回転軸部材764の位置を第1軸位置、挿入路形成部材765の位置を第1径方向位置とする。一方、回転軸部材764が軸保持溝738の第2軸保持部738cに位置するとき、回転軸部材764の位置を第2軸位置、挿入路形成部材765の位置を第2径方向位置とする。
なお、本実施例の製造装置1000では、回転軸部材764を第1軸位置に、すなわち、挿入路形成部材765を第1径方向位置に位置させると、ローラ部762の一部をコイル成形済スロット55内に挿入させる(本実施例では、このとき、ローラ部762がスロット内側開口部55Aからコイル成形済スロット55内に侵入する深さE1(図31参照)を2.5mmとしている)ことができる位置に、軸保持溝738の第1軸保持部738bを配置している。従って、後述するように、ウェッジ部材8をコイル成形済スロット55内に挿入する間(挿入路形成部材765を第1軸線方向に移動させる間)、先行するローラ部762が巻線6から第2軸線方向3X2に力を受けることにより、回転軸部材764が軸保持溝738の第1軸保持部738bの位置に保持されるので、ローラ部762の一部をコイル成形済スロット55内に挿入させ、ウェッジ部材8の挿入路SRを形成することができる(図28参照)。
さらに、本実施例の製造装置1000では、後述するように、ウェッジ部材8をコイル成形済スロット55内に挿入した後、挿入路形成部材765を第2軸線方向3X2に移動させる間、今度は、ローラ部762が巻線6から第1軸線方向3X1に力を受けることにより、回転軸部材764が軸保持溝738の第2軸保持部738cの位置に保持される。このため、ローラ部762を、ウェッジ部材8の挿入時よりも径内方向3Y1に位置させつつ、ステータ鉄心3の裏面3B側に戻すことができる。このため、一旦、コイル成形済スロット55内に挿入したウェッジ部材8を、ローラ部762によって径外方向3Y2に押圧し過ぎてしまい、挿入したウェッジ部材8を変形、破損させてしまう危険性を低減することができる。
さらに、回転軸部材764を第2軸位置に、すなわち、挿入路形成部材765を第2径方向位置に位置させたとき、ローラ部762の一部をコイル成形済スロット55内に挿入させる(本実施例では、このとき、ローラ部762がスロット内側開口部55Aからコイル成形済スロット55内に侵入する深さE2(図32参照)を1.5mmとしている)ことができる位置に、軸保持溝738の第2軸保持部738cを配置している。従って、仮に、挿入したウェッジ部材8の一部がスロット内側開口部55Aから径内方向3Y1にはみ出してしまったとしても、ローラ部762によってウェッジ部材8をスロット内に納めることができる。
なお、本実施例の製造装置1000では、軸保持溝738が径方向位置調整機構をなす。
さらに、図20に示すように、ガイド部材731は、ブレード部材751の両側に斜面736と延長面735とからなるスライド面734を有している。次述するように、このスライド面734と、このスライド面734をスライド移動する当接部材721とが、第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)を径外方向3Y2に向けて移動させ、ウェッジ部材8を挿入する間、その位置を保持させるアーム移動保持機構730をなす。このスライド面734のうち、斜面736は、鉄心3の軸線3Xからの距離が第2軸線方向(図20での下方)3X2に進むにしたがって大きくなる傾斜をなしている。また、延長面735は、斜面736に続く面であり、軸線3Xに平行な面をなしている。
また、図19に示すように、当接部材721は、その先端部721Bが、第2,第3アーム210,310のヘッド部210H,310H、及び対称第2,第3アーム1210,1310のヘッド部(図示しない)が嵌合する(図23参照)凹形状を有している。この当接部材721のうち径内方向3Y2の部分には、軸線方向3XPに延びる溝部724が形成されており、ローラ761及びウェッジ部材8を軸線方向3XPに挿通可能としている。なお、第1〜第4アーム110〜410ヘッド部110H〜410Hにも、溝部111〜411が形成されており、それぞれ、ローラ761及びウェッジ部材8を軸線方向3XPに挿通可能としている。また、対称第1〜第4アーム1110〜1410のヘッド部(図示しない)についても同様である。
さらに、図19に示すように、当接部材721は、その基端部721Aをカバー部材744で覆われている。また、カバー部材744と当接部材721とは、ピン726で回動自在に結合されている。さらに、カバー部材744は走行ユニット742に固着されている。このため、カバー部材744及び当接部材721は、走行ユニット742と共に、軸線方向3XPに移動可能となる。カバー部材744と当接部材721との間には、圧縮バネ745が介在しており、しかも、この圧縮バネ745は、ピン726よりも第1軸線方向3X1(図中上方)に位置している(図25参照)から、当接部材721は、スライド面734に押しつけられつつ移動することになる。
このため、当接部材721が昇降ロッド711の上端付近に位置している場合には、この当接部材721は、その内側面725において、斜面736に当接してこれに倣う。従って、この場合には、当接部材721の先端部721Bのうち径外方向3Y2を向く押圧面722が、第2軸線方向3X2に進むほど、径外方向3Y2に向かうテーパ面をなす(図25,図26参照)。
一方、当接部材721が昇降ロッド711の上端付近から第2軸線方向3X2(図中下方)に移動した場合には、この当接部材721は、ピン726の回りに回動し、その内側面725が軸線3Xに平行な延長面735に当接してこれに倣う。従って、当接部材721の押圧面722は、延長面735と平行、すなわち、軸線3Xに平行な面となる(図27参照)。
さらに、この当接部材721の内側面725には、係合凹部723が形成されている(図25,図26参照)。この係合凹部723は、前述したローラ761の当接部材係合部763の外周面に適合する凹形状とされている。このため、当接部材721が昇降ロッド711の上端付近に位置するときには、図25,図26に示すように、係合凹部723が当接部材係合部763に係合することによって、当接部材721が昇降ロッド711の上端部付近に保持され、下方に滑り落ちることが防止されている。
また、ガイド部材731は、後述するように、昇降ロッド711を上昇させると、鉄心3の内周円筒面3I内に挿入できる寸法とされている。一方、当接部材721の先端部721Bのうち第1軸線方向3X1を向くアーム当接面727は、昇降ロッド711を上昇させると、第2,第3アーム210,310のヘッド部210H,310H、及び対称第2,第3アーム1210,1310のヘッド部(図示しない)に当接するように配置されている(図26参照)。
また、カバー部材744には、ブレード部材751のウェッジ当接面752と対向して、ウェッジ部材8の径外方向3Y2への移動及び変形防止するウェッジサポート面755を備えるサポート部材754が固着されている(図19,図25参照)。これにより、ウェッジ部材8は、落下することなく、ブレード部材751のウェッジ当接面752とサポート部材754のウェッジサポート面755との間に保持される。
また、後述するように、ウェッジ部材8をコイル成形済スロット55内に挿入するにあたり、巻線6との摩擦などにより、ウェッジ部材8に変形が生じるほどの挿入抵抗が生じた場合でも、ブレード部材751のウェッジ当接面752が、ウェッジ部材8の変形を抑制する。さらには、このウェッジ当接面752と対向するサポート部材754のウェッジサポート面755が、ウェッジ部材8の変形を抑制するため、前述した変形や座屈(図16(b),(c)参照)を防止し、ウェッジ部材8を確実にコイル成形済スロット55内に挿入することができるようになる。
ところで、一旦巻線6がコイル成形済スロット55からはみ出てしまうと、ウェッジ部材8を挿入するに先立ち、はみ出た巻線6をコイル成形済スロット55内に戻さなければならず、煩わしい。これに対し、本実施例の製造装置1000では、カムユニット102(1−2アーム移動カム150及び3−4アーム移動カム350)を上死点に到達させた状態で巻線工程を終了し、ウェッジ挿入工程が終了するまでの間、カムユニット102(1−2アーム移動カム150及び3−4アーム移動カム350)を上死点の位置に保持する(図13参照)。これにより、第1〜第4アーム110〜410について、巻線工程においてコイル7を成形すべく最後に巻線6をたぐった後、ウェッジ挿入機構700がウェッジ部材8をコイル成形済スロット55内に挿入し終えるまでの間、巻線6を解放することなく巻線6をたぐった状態を保持することができる。なお、対称第1〜第4アーム1110〜1410についても同様である。
これにより、ウェッジ部材8を挿入するコイル成形済スロット55のスロット内側開口部55Aから、巻線6(素線6P)がはみ出てしまう不具合を抑制できる。従って、成形済スロット内側開口部55Aからはみ出た巻線6(素線6P)によってウェッジ部材8の挿入が妨げられる等の不具合を抑制でき、適切にウェッジ部材8をコイル成形済スロット55内に挿入することが可能となる。
次いで、図25〜図30を参照して、ウェッジ挿入工程について詳細に説明する。
まず、図17に示すように、作業者が、ハンドル719を回転させることにより、ギアボックス718、タイミングベルト717、減速器716、シャフト715、リニアガイド714がそれぞれ所定の動作をして、連結部材713と共に、ガイドポール712に沿って、軸線方向3X上方(第1軸線方向3X1、図中上方)に昇降ロッド711が持ち上げられる。なお、前述したように、第1〜第4アーム110〜410及び対称第1〜第4アーム1110〜1410は、巻線6をたぐった状態で保持されている。
図25は、当接部材721のアーム当接面727が第3アーム310のヘッド部310Hに当接するよりも直前の状態を示している。昇降ロッド711のブレード部材751とサポート部材754との間にウェッジ部材8を保持し、かつ、係合凹部723がローラ761の当接部材係合部763に係合することによって、当接部材721が昇降ロッド711(ガイド部材731)の上端部に保持された状態から、ウェッジ部材8の挿入を開始する。
従って、当接部材721は、ウェッジ部材8よりも第1軸線方向3X1に位置した状態、つまり上方に位置した状態で持ち上げられる。このため、当接部材721のアーム当接面727が第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)のヘッド部310H等に当接するに先だって、ヘッド部310H等よりも径内方向3Y2の位置に、当接部材721の先端部721Bを挿入できる。この時点では、前述したように、当接部材721の押圧面722が、第2軸線方向3X2に進むほど径外方向3Y2に向かうテーパ面をなすように、当接部材721に姿勢が保たれている。このため、第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)のヘッド部310H等よりも径内方向3Y2の位置に、当接部材721の先端部721Bをスムーズに挿入することができる。
そして、当接部材721のアーム当接面727が第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)のヘッド部310H等に当接すると(図26参照)、当接部材721はこれよりも上方に進めなくなるが、ガイド部材731を含む昇降ロッド711はさらに上昇させることができる。このため、図27に示すように、当接部材721の係合凹部723とローラ761の当接部係合部763との係合が解除され、ガイド部材731が進行(上昇)する一方、当接部材721はアーム当接面727が第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)のヘッド部310H等に当接した状態で取り残される。つまり、相対的に見て、当接部材721がスライド面734をスライド移動することとなる。
具体的には、当初、当接部材721の内側面725は、スライド面734のうち斜面736に当接し、これに倣っていた(図25,図26参照)。しかし、ガイド部材731の進行と共に、当接部材721の内側面725は、スライド面734のうち延長面735に当接するようになる。すると、当接部材721が延長面735に倣って、ピン726の周りに回動するから、押圧面722で第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)のヘッド部310H等を径外方向3Y2に押圧し、径外方向3Y2に移動させることができる(図27参照)。逆に、当接部材721は、延長面735によって、第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)のヘッド部310H等に押しつけられることとなるため、これらとの摩擦によって、下方に落下することなく保持される。
これにより、第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)のヘッド部310H等に対する当接部材721の位置が固定されるので、第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)に対するウェッジ挿入機構700の位置(軸線方向3XPに直交する方向の位置)を位置決めすることができる。
ところで、第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)は、巻線6をたぐった状態で保持されているため、ステータ鉄心3、さらには、コイル成形済スロット55に対する第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)の位置は、固定されている。従って、当接部材721によって第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)を径外方向32に押圧することで、ウェッジ部材8の挿入に先立ち、軸線方向3XPに直交する方向について、コイル成形済スロット55に対するウェッジ挿入機構700の位置を固定することができる。
さらに、前述したように、当接部材721は、その先端部721Bが、第3アーム310等のヘッド部310H等が嵌合する凹形状を有している(図23,図24参照)。従って、当接部材721は、ウェッジ部材8の挿入に先立ち、第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)のヘッド部310H等に嵌合する形態で、第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)を径方向外側に向けて押圧することとなる。このため、第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)に対し、当接部材721を確実に固定させることができるので、軸線方向3XPに直交する方向について、コイル成形済スロット55に対するウェッジ挿入機構700の位置を確実に固定することができる。
なお、スライド面734の延長面735は、ウェッジ部材8よりも下方(第2軸線方向3X2)に延びているため(図20参照)、当接部材721によって、巻線6をたぐった状態の第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)を径外方向3Y2に移動させた後、ウェッジ部材8を挿入し終えるまでの間、その位置を保持することができる。さらには、ウェッジ部材8を挿入し終えるまでの間、軸線方向3XPに直交する方向について、コイル成形済スロット55に対するウェッジ挿入機構700の位置を確実に固定することができる。
一方、ウェッジ部材8は、昇降ロッド711の進行(上昇)にしたがって、ブレード部材751のウェッジ押圧部753に押されて、進行(上昇)する。
ところで、前述のように、本実施例では、第3アーム310等について、巻線6をたぐった状態を保持している。これにより、第3アーム310等を径外方向3Y2に配置できるので、挿入されるウェッジ部材8が第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)と当接(干渉)する危険性は小さい。しかしながら、本実施例のように、スロット5内に高密度に多数の巻線6(素線6P)を配置させた場合(占積率を大きくした場合)は、第3アーム310等について巻線をたぐった状態としても、第3アーム310等(ウェッジ挿入スロット側アーム)を十分に径外方向3Y2に配置できず、挿入されるウェッジ部材8が第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)と当接(干渉)し、ウェッジ部材8に座屈等が生じたり、ウェッジ部材8の挿入が妨げられる危険性がある。
これに対し、本実施例では、上述のように、ウェッジ部材8の挿入に先立ち、巻線6をたぐった状態としている第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)を、さらに、径外方向3Y2に移動させ、ウェッジ部材8を挿入する間、その位置を保持する。このため、第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)を、巻線6をたぐり終えた位置よりも、さらに径外方向3Y2の位置に保持できるので、挿入されるウェッジ部材8が第3アーム310等(ウェッジ挿入裏面側アーム)と当接(干渉)してしまうのを防止できる。
さらに、前述のように、ウェッジ挿入機構700は、ブレード部材751及びウェッジ部材8に先行して第1軸線方向3X1に進むローラ761(ローラ部762)を有している。このローラ部762は、図28に示すように、第1軸線方向3X1に移動すると、コイル成形済スロット55内の巻線6と係合して第2軸線方向3X2に力を受けるので、ウェッジ部材8を挿入する間、回転軸部材764を軸保持溝738の第1軸保持部738bに保持できる。従って、ウェッジ部材8をコイル成形済スロット55内に挿入する間、回転軸部材764を第1軸位置に保持しつつ、ローラ部762を第1軸線方向3X1に移動させることができる。
これにより、ローラ761のローラ部762の一部が、ブレード部材751及びウェッジ部材8に先行してコイル成形済スロット55内を進むから、コイル成形済スロット55内の巻線6を、このローラ部762で径外方向3Y2に移動させることとなる。これにより、ローラ部762の後方には、空間(挿入路SR)が形成される。従って、この挿入路SR内をブレード部材751と共に、ウェッジ部材8が進行することとなるので、ウェッジ部材8がコイル成形済スロット55内の巻線6と接触して生じる摩擦力を低減することができ、ウェッジ部材8の挿入が容易になる。
さらに、図31(図28のB−B断面図に相当)に示すように、ローラ部762の当接面762bが断面略V字形状を有しているため、ウェッジ部材8の挿入路SRを形成すべく、ローラ部762(ローラ761)を第1軸線方向3X1に移動させることで、最も径内方向3Y1に位置する巻線6(素線6P)を、ローラ部762の当接面762bの傾斜に沿って板厚方向中央762cに寄せつつ、直線状に整形することができる。これにより、コイル成形済スロット55の内壁面のうち成形済スロット内側開口部55Aに隣り合う開口側内壁面55Bとコイル成形済スロット55内の巻線6(素線6P)との間に間隙を形成することができるので、ウェッジ部材8がコイル成形済スロット55内の巻線6と接触して生じる摩擦力をより一層低減することができる。
このようにして、図29に示すように、コイル成形済スロット55内にウェッジ部材8を、適切に挿入することができる。
ウェッジ部材8をコイル成形済スロット55内に挿入した後は、復帰工程において、昇降ロッド711(ガイド部材731)を第2軸線方向3X2に移動(下降)させ、ステータ鉄心3の裏面3B側の位置に戻す。この間、ローラ部762(ローラ761)は、図30に示すように、コイル成形済スロット55内の巻線6と係合して第1軸線方向3X1に力を受けるので、今度は、回転軸部材764を軸保持溝738の第2軸保持部738cに保持できる。従って、ウェッジ部材8をコイル成形済スロット55内に挿入した後、回転軸部材764を、第1軸位置よりも径内方向3Y1の位置となる第2軸位置に保持しつつ、ローラ部762を第2軸線方向3X2に移動(下降)させることができる。
このため、一旦、コイル成形済スロット55内に挿入したウェッジ部材8を、ローラ部762によって径外方向3Y2に押圧し過ぎてしまい、挿入したウェッジ部材8を変形、破損させてしまう危険性を低減することができる。
さらには、この間、図32(図30のC−C断面図に相当する)に示すように、ローラ部762の一部をコイル成形済スロット55内に挿入させている。従って、仮に、径外方向3Y2に移動させた巻線6のスプリングバックによって、挿入したウェッジ部材8が径内方向3Y1に押圧され、挿入したウェッジ部材8の一部がスロット内側開口部55Aから径内方向3Y1にはみ出してしまったとしても、ローラ部762によってウェッジ部材8をコイル成形済スロット55内に納めることができる。
なお、本実施例では、復帰工程において、ローラ部762がスロット内側開口部55Aからコイル成形済スロット55内に侵入する深さE2(図32参照)を1.5mmとしている。このように、E2を1.5mmとすることにより、ローラ部762によってウェッジ部材8(及び巻線6)を径外方向3Y2に押圧した後、巻線6のスプリングバックによってウェッジ部材8が径内方向3Y1に移動したとしても、コイル成形済スロット55のスロット内側開口部55Aからはみ出す虞はない。
以上説明したように、巻線6を巻回して2つのコイル7を成形する巻線工程と、2つのコイル7を成形した直後に、ウェッジ部材8を4つのコイル成形済スロット55内に同時に挿入するウェッジ挿入工程とを交互に繰り返すことによって、U相,V相,W相の各相のコイル7(7u,7v,7w)を順に形成(図5〜図7参照)しつつ、順次、ウェッジ部材8を各コイル成形済スロット55内に挿入する。このようにして、ウェッジ部材8が各スロット5内の適切な位置に配置されたステータ2を製造することができる。
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、上記実施例では、コイル7が既に成形されたコイル成形済スロット55のうち第1スロット51及び第2スロット52の両者に、同時に、ウェッジ部材8を挿入した(図14参照)。しかし、第1スロット51への挿入と第2スロット52への挿入とを、2回の挿入動作で別々に行うようにしても良い。しかしながら、第1スロット51及び第2スロット52の両者に、同時に、ウェッジ部材8を挿入したほうが、第1スロット51と第2スロット52とに2回の挿入動作でウェッジ部材を挿入する場合に比して、ウェッジ部材8の挿入にかかる時間を半分に短縮することができる点で好ましい。
また、上記実施例では、第1,第2吐出装置610,620、第1〜第4アーム110〜410及び対称第1〜第4アーム1110〜1410を用いて、2つのコイル7を同時に成形した(図10,図11参照)。しかし、単一の吐出装置(例えば第1吐出装置610)と第1〜第4アーム110〜410とを用いて、コイル7を1つずつ成形するようにしても良い。しかしながら、2つのコイル7を同時に成形するほうが、コイル成形にかかる時間を半分に短縮することができる点で好ましい。
さらに、上記実施例では、上述のように、同時にコイル7が成形された4つのコイル成形済スロット55のいずれにも、ウェッジ部材8を同時に挿入した(図14参照)。しかし、4つのコイル成形済スロット55に対し、複数回の挿入動作によってウェッジ部材8を同時に挿入するようにしても良い。しかしながら、4つのコイル成形済スロット55のいずれにもウェッジ部材8を同時に挿入したほうが、ウェッジ部材8の挿入にかかる時間を大幅に短縮できる点で好ましい。
また、上記実施例では、ローラ部762の当接面762bを、ローラ部762の板厚方向中央762cに近づくにしたがって回転軸部材764に近づく斜面を含み、板厚方向中央762cが最も回転軸部材764に接近する形状(具体的には、断面略V字形状)とした。しかし、ローラ部762の当接面762bは、このような形状に限定されるものではなく、例えば、ローラ部762の板厚方向(回転軸方向)に平行な平坦面としても良い。
また、上記実施例では、復帰工程において、ローラ部762の一部をコイル成形済スロット55内に挿入させて(具体的には、侵入深さE2を1.5mm)(図32参照)、ローラ761(ローラ部762)を第2軸線方向3X2に移動させた。しかし、ローラ部762をコイル成形済スロット55内に挿入させることなく、ローラ761(ローラ部762)を第2軸線方向3X2に移動させるようにしても良い。このようにすれば、挿入したウェッジ部材8を押しつぶしてしまう不具合は、確実に防止できる。