JP2011178226A - 車両用制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の旋回状況に応じた走行安定性を向上できる車両用制御装置を提供すること。
【解決手段】車両の操舵角を取得する操舵角取得手段と、その操舵角取得手段により取得された操舵角の絶対値の時間微分値が正の所定値以上であるかを判断する時間微分値判断手段と、時間微分値判断手段により時間微分値が正の所定値以上であると判断されるときにキャンバ角調整装置を作動させて車輪の内の少なくとも旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整する第1キャンバ角調整手段と、を備えているので、車両の操舵角が中立から左旋回方向または中立から右旋回方向に変化するときに、少なくとも旋回外輪に応答性の高いキャンバスラストを発生させて、車両のオーバーステア傾向への変化を小さくすることができる。これにより、車両の旋回状況に応じた走行安定性を向上できる。
【選択図】図6
【解決手段】車両の操舵角を取得する操舵角取得手段と、その操舵角取得手段により取得された操舵角の絶対値の時間微分値が正の所定値以上であるかを判断する時間微分値判断手段と、時間微分値判断手段により時間微分値が正の所定値以上であると判断されるときにキャンバ角調整装置を作動させて車輪の内の少なくとも旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整する第1キャンバ角調整手段と、を備えているので、車両の操舵角が中立から左旋回方向または中立から右旋回方向に変化するときに、少なくとも旋回外輪に応答性の高いキャンバスラストを発生させて、車両のオーバーステア傾向への変化を小さくすることができる。これにより、車両の旋回状況に応じた走行安定性を向上できる。
【選択図】図6
Description
本発明は、車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置を備えた車両に用いられる車両用制御装置に関し、特に、車両の旋回状況に応じた走行安定性を向上できる車両用制御装置に関するものである。
従来より、車両の走行状態に応じて車輪のキャンバ角を調整することで、車両の走行安定性を確保する技術が知られている。この種の技術に関し、例えば特許文献1には、車両が所定の速度以上で走行するときにネガティブキャンバを車輪に付与することで、車両の限界走行性能を向上させる技術が開示されている。特許文献1に開示される技術では、車両の速度に基づいてネガティブキャンバを付与するので、速度が速い場合は、旋回時であってもネガティブキャンバが付与され、走行安定性が向上する一方で操舵性が低下する。一方、速度が遅い場合は、旋回時であってもネガティブキャンバが付与されないので、操舵性は確保できるが走行安定性が低下する。
ここで、車両が旋回するときの挙動を本発明者らが分析したところ、挙動が大きく変化するのは、操舵角が中立から左または右に変化するときであることがわかった。このときの車両の走行安定性を向上させることができれば、車両の旋回性能を向上できる。
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、車両の速度に基づいて車輪のキャンバ角を調整するので、車両の旋回状況に応じた走行安定性を向上できないという問題点があった。特に、旋回開始時のように車両の状態が遷移する旋回状況では、オーバーステア傾向を生じ易く不安定になり易いが、その遷移に応じて車両の走行安定性を向上させることができないという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、車両の旋回状況に応じた走行安定性を向上できる車両用制御装置を提供することを目的としている。
この目的を達成するために、請求項1記載の車両用制御装置は、複数の車輪と、それら複数の車輪の内の少なくとも一部の車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置と、を備えた車両に用いられるものであり、操舵角取得手段により車両の操舵角が取得されると、時間微分値判断手段により操舵角の絶対値の時間微分値が正の所定値以上であるかが判断される。時間微分値判断手段により時間微分値が正の所定値以上であると判断されると、第1キャンバ角調整手段により、キャンバ角調整装置が作動されて車輪の内の少なくとも旋回外輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整されるので、車両の旋回状況に応じた走行安定性を向上できる効果がある。
即ち、車両の操舵角が中立から左または中立から右に変化するときは、車両が一時的にオーバーステア傾向に変化し、車両の挙動が一時的に不安定になり易い。また、車両の操舵角が中立から左または中立から右に変化するときは、操舵角の絶対値の時間微分値が正の値を示す。車両用制御装置は、時間微分値判断手段により時間微分値が正の所定値以上であると判断されるときにキャンバ角調整装置を作動させて車輪の内の少なくとも旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整する第1キャンバ角調整手段を備えているので、時間微分値が大きいと判断されるとき、即ち車両の挙動変化が大きいときに車輪を第1キャンバ角に調整することで、応答性の高いキャンバスラストを発生させて、車両のオーバーステア傾向への変化を小さくすることができる。これにより、車両の走行安定性を向上できる。
請求項2記載の車両用制御装置によれば、第1キャンバ角は、車両が直進走行をするときのキャンバ角の所定角と異なる角度であるので、第1キャンバ角調整手段により車輪のキャンバ角を調整することで生じるキャンバスラストの大きさや向きを、車両が直進走行をするときに車輪に生ずるキャンバスラストの大きさや向きと異ならせることができる。これにより、請求項1記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、車両の車幅方向に生じるキャンバスラストにより、車両が旋回するときの走行安定性を向上できる効果がある。
請求項3記載の車両用制御装置によれば、時間微分値判断手段により時間微分値が正の所定値より小さいと判断される場合に、第2キャンバ角調整手段により、キャンバ角調整装置を作動させて車輪のキャンバ角が、車両が直進走行をするときのキャンバ角の所定角と同一乃至は第1キャンバ角よりも所定角に近い第2キャンバ角に調整されるので、左旋回方向または右旋回方向から中立へと操舵角が変化するときは時間微分値がマイナスになり、正の所定値より小さくなるため、車輪のキャンバ角が第2キャンバ角に調整される。これによりキャンバスラストが減少するので、請求項1又は2に記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、左旋回方向または右旋回方向から中立へと操舵角が変化するときの操舵性を確保できる効果がある。
請求項4記載の車両用制御装置によれば、時間微分値判断手段の判断基準となる正の所定値は、走行速度が速くなるにつれて小さくなるように設定されるので、走行速度が速くなるにつれ、操舵角の絶対値の時間微分値に対して、キャンバ角調整装置を敏感に作動させることができる。ここで、走行速度が速くなるにつれ車両の挙動の変化も大きくなるところ、請求項4記載の車両用制御装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、キャンバ角調整装置を敏感に作動させることにより、車両の走行速度に関わらず、車両の挙動の変化を小さくすることができ走行安定性を向上できる効果がある。また、走行速度が遅くなるにつれキャンバ角調整装置の作動が鈍感になるので、キャンバ角調整装置の駆動エネルギーの消耗を防止でき、省エネルギー性を向上できる効果がある。
請求項5記載の車両用制御装置によれば、走行速度取得手段により取得された走行速度が所定の走行速度以上であるかを判断する走行速度判断手段を備え、第1キャンバ角調整手段は、走行速度判断手段により走行速度が所定の走行速度以上であると判断され、かつ、時間微分値判断手段により時間微分値が正の所定値以上であると判断される場合に車輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整する。ここで、走行速度が遅いときは、キャンバ角の調整による車両の走行安定性を向上させる効果が現れ難いところ、請求項5記載の車両用制御装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、効果の乏しい走行速度においてキャンバ角が調整されることを防止して、キャンバ角調整装置の駆動エネルギーの消耗を防止し、省エネルギー性を向上できると共に、効果の乏しい走行速度においてキャンバ角が調整されることによる車輪の偏磨耗を防止できる効果がある。
請求項6記載の車両用制御装置によれば、キャンバ角調整装置は車輪の内の後輪に配設され、第1キャンバ角調整手段は後輪のキャンバ角を調整するので、請求項1から5のいずれかに記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、車両の装置構成を簡素化することができる効果がある。
請求項7記載の車両用制御装置によれば、車両はアンダーステア傾向に初期設定されているので、操舵角が中立から左旋回方向または中立から右旋回方向に変化して車両が一時的にオーバーステア傾向に変化しても、車両の旋回特性を全体としてほぼアンダーステア傾向に維持できる。これにより、請求項1から6のいずれかに記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、車両の旋回安定性を向上できる効果がある。
請求項8記載の車両用制御装置によれば、第1キャンバ角は、車両が直進走行をするときのキャンバ角の所定角からネガティブ方向に変化した角度であるので、第1キャンバ角調整手段により車輪のキャンバ角が第1キャンバ角に調整されることにより、旋回中心方向のキャンバスラストを旋回外輪に発生させることができる。これにより、請求項1から7のいずれかに記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、旋回のときに車両前側が旋回円の外側に膨らむことを防止できる効果がある。
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFを支持する複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の後輪2RL,2RR)を車体フレームBFに懸架する複数の懸架装置4及び複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を車体フレームBFに懸架する複数の懸架装置40と、複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵装置5とを主に備えて構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪2FL,2FRと、車両1の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪2RL,2RRとを備えている。なお、本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成されている。また、車輪2は、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRが全て同じ形状、外径および特性に構成されている。なお、左右の後輪2RL,2RRを車体フレームBFに回転可能に支持するシャフト(車軸)及び後輪2RL,2RRを駆動する車輪駆動装置の図示は省略している。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRを回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3aにより構成されている(図3参照)。また、電動モータ3aは、図1に示すように、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31(車軸)を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の操作量に応じて回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、デファレンシャルギヤにより吸収される。
懸架装置4,40は、路面から車輪2を介して車体フレームBFに伝わる振動を緩和するための装置、いわゆるサスペンションとして機能するものであり、伸縮可能に構成され、図1に示すように、懸架装置4は左右の後輪2RL,2RRに、懸架装置40は左右の前輪2FL,2FRにそれぞれ設けられている。また、本実施の形態における懸架装置4は、車輪2のキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構としての機能を兼ね備えている。
ここで、図2を参照して、懸架装置4の詳細構成について説明する。図2は、懸架装置4の正面図である。なお、ここでは、キャンバ角調整機構として機能する構成のみについて説明し、サスペンションとして機能する構成については周知の構成と同様であるので、その説明を省略する。また、各懸架装置4の構成は、左右の後輪2RL,2RRにおいてそれぞれ共通であるので、右の後輪2RRに対応する懸架装置4を代表例として図2に図示する。但し、図2では、理解を容易とするためにドライブシャフト31等の図示が省略されている。
懸架装置4は、図2に示すように、ストラット41及びロアアーム42を介して車体フレームBFに支持されるナックル43と、駆動力を発生するRRモータ44RRと、そのRRモータ44RRの駆動力を伝達するウォームホイール45及びアーム46と、それらウォームホイール45及びアーム46から伝達されるRRモータ44RRの駆動力によりナックル43に対して揺動駆動される可動プレート47とを主に備えて構成されている。
ナックル43は、車輪2を操舵可能に支持するものであり、図2に示すように、上端(図2上側)がストラット41に連結されると共に、下端(図2下側)がボールジョイントを介してロアアーム42に連結されている。RRモータ44RRは、可動プレート47に揺動駆動のための駆動力を付与するものであり、DCモータにより構成され、その出力軸44aにはウォーム(図示せず)が形成されている。ウォームホイール45は、RRモータ44RRの駆動力をアーム46に伝達するものであり、RRモータ44RRの出力軸44aに形成されたウォームに噛み合い、かかるウォームと共に食い違い軸歯車対を構成している。
アーム46は、ウォームホイール45から伝達されるRRモータ44RRの駆動力を可動プレート47に伝達するものであり、図2に示すように、一端(図2右側)が第1連結軸48を介してウォームホイール45の回転軸45aから偏心した位置に連結される一方、他端(図2左側)が第2連結軸49を介して可動プレート47の上端(図2上側)に連結されている。可動プレート47は、車輪2を回転可能に支持するものであり、上述したように、上端(図2上側)がアーム46に連結される一方、下端(図2下側)がキャンバ軸50を介してナックル43に揺動可能に軸支されている。
上述したように構成される懸架装置4によれば、RRモータ44RRが駆動されると、ウォームホイール45が回転すると共に、ウォームホイール45の回転運動がアーム46の直線運動に変換される。その結果、アーム46が直線運動することで、可動プレート47がキャンバ軸50を揺動軸として揺動駆動され、車輪2のキャンバ角が調整される。
なお、本実施の形態では、各連結軸48,49及びウォームホイール45の回転軸45aが、車体フレームBFから車輪2に向かう方向(矢印R方向)において、第1連結軸48、回転軸45a、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第1キャンバ状態と、回転軸45a、第1連結軸48、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第2キャンバ状態(図2に示す状態)とのいずれか一方のキャンバ状態となるように車輪2のキャンバ角が調整される。
これにより、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ状態若しくは第2キャンバ状態に調整された状態では、車輪2に外力が加わったとしても、アーム46を回動させる方向の力は発生せず、車輪2のキャンバ角を維持することができる。また、本実施の形態では、第1キャンバ状態において、車輪2のキャンバ角がマイナス方向の所定の角度(本実施の形態では−4.5°、以下「第1キャンバ角」と称す)に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与される。一方、第2キャンバ状態(図2に示す状態)では、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角より絶対値が小さく、第1キャンバ角よりポジティブ方向の所定の角度(本実施の形態では−1.5°、以下「第2キャンバ角」と称す)の定常角に調整される。
なお、懸架装置40は、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角を調整する機能が省略されている点(即ち、図2に示す懸架装置4において、RRモータ44RRによる伸縮機能が省略されている点)を除き、その他の構成は懸架装置40と同じ構成であるので、その説明を省略する。即ち、後輪2RL,2RRのキャンバ角は第1キャンバ角または第2キャンバ角に調整可能であるが、前輪2FL,2FRはキャンバ角の調整ができない構成とされている。
図1に戻って説明する。操舵装置5は、運転者によるステアリング63の操作を左右の前輪2FL,2FRに伝えて操舵するための装置であり、いわゆるラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成されている。この操舵装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作(回転)は、まず、ステアリングコラム51を介してユニバーサルジョイント52に伝達され、ユニバーサルジョイント52により角度を変えられつつステアリングボックス53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動する。その結果、タイロッド54がナックル55を押し引きすることで、前輪2FL,2FR(車輪2)に所定の舵角が付与される。
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3が駆動制御される。ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(ステア角、ステア角速度など)に応じて、操舵装置5により左右の前輪2FL,2FRが操舵される。
車両用制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態に応じてキャンバ角調整装置44(図3参照)を作動制御する。
次いで、図3を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。図3は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図3に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図5に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。また、ROM72には、図3に示すように閾値関数72aが設けられている。
ここで、図4を参照して、閾値関数72aについて説明する。図4は閾値関数72aの内容を模式的に示した模式図である。閾値関数72aは、車両1の走行速度と車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整するための閾値(後述する操舵角θの絶対値の時間微分値の閾値T)との関係を示す関数である。CPU71は、この閾値関数72aの内容に基づいて、現在の車両1の走行速度における閾値Tを取得する。
閾値関数72aによれば、図4に示すように、車両1の走行速度がVaよりも小さい場合には閾値Tは設定されていない。即ち、車両の走行速度がVaよりも小さい場合には、車輪2のキャンバ角の調整は行われない。また、閾値Tは、車両1の走行速度がVaの場合に最大値Tmaxに規定され、車両1の走行速度がVaから増加するにつれて曲線的に小さくなるように規定されている。そして、車両1の走行速度がVbの場合に最小値Tminに規定されると共に、車両1の走行速度がVbから増加しても最小値Tminで一定に規定されている。
図3に戻って説明する。RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、図3に示すように、キャンバフラグ73aが設けられている。キャンバフラグ73aは、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態にあるか否かを示すフラグであり、CPU71は、このキャンバフラグ73aがオンである場合に、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態にあると判断する。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。但し、車輪駆動装置3は、電動モータ3aに限られず、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、油圧モータやエンジン等が例示される。
キャンバ角調整装置44は、各車輪2のキャンバ角を調整するための装置であり、上述したように、各懸架装置40の可動プレート47(図2参照)に揺動のための駆動力をそれぞれ付与する合計2個のRLモータ、RRモータ44RL,44RRと、それら各モータ44RL,44RRをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。
加速度センサ装置81は、車両1の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後方向加速度センサ81a、左右方向加速度センサ81bと、それら各加速度センサ81a,81bの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
前後方向加速度センサ81aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1矢印F−B方向)の加速度、いわゆる前後Gを検出するセンサであり、左右方向加速度センサ81bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1矢印L−R方向)の加速度、いわゆる横Gを検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ81a,81bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
また、CPU71は、加速度センサ装置81から入力された各加速度センサ81a,81bの検出結果(前後G、横G)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の走行速度を取得することができる。
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ステアリングセンサ装置63aは、図示しないステアリング軸の回転角(操舵角θ)を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング軸の回転角を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。また、CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力された各角度センサの検出結果(操作量)を時間微分して、各ペダル61,62の踏み込み速度および操舵角θの絶対値の時間微分値(d|θ|/dt)を取得することができる。また、ステアリング軸の回転方向(操舵方向)や操舵角θの時間微分値(dθ/dt)を取得することもできる。
図3に示す他の入出力装置90としては、例えば、ヨーレートセンサ装置、ロール角センサ装置などが例示される。ヨーレートセンサ装置は、車両1のヨーレートを検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る鉛直軸(図1矢印U−D方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角速度を検出するヨーレートセンサと、そのヨーレートセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路とを主に備えている。ロール角センサ装置は、車両1のロール角を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る前後軸(図1矢印F−B方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角を検出するロール角センサと、そのロール角センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路とを主に備えている。
また、他の入出力装置90として、例えば、GPSを利用して車両1の現在位置を取得すると共にその取得した車両1の現在位置を道路に関する情報が記憶された地図データに対応付けて取得するナビゲーション装置なども例示される。
次いで、図5を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図5は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、各車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を調整する処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず車両1の走行速度を取得し(S1)、取得した車両1の走行速度が所定の走行速度(本実施の形態においては、図4に図示したVa)より小さいか否かを判断する(S2)。その結果、車両1の走行速度が所定の走行速度以上であると判断される場合には(S2:No)、操舵角θを取得する(S3)。
次いで、CPU71は操舵角θの絶対値の時間微分値(d|θ|/dt)が閾値T以上か否かを判断する(S4)。なお、S4の処理では、CPU71は、ROM72に記憶されている閾値関数72a(図4参照)に、S1の処理で取得した車両1の走行速度を代入し、その走行速度における閾値Tを取得する。その結果、操舵角の絶対値の時間微分値(d|θ|/dt)が閾値T以上であると判断される場合には(S4:Yes)、次にキャンバフラグ73aはオンであるか否かを判断する(S5)。キャンバフラグ73aはオンであると判断される場合には(S5:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されている(ネガティブキャンバが付与されている)ので、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S5の処理の結果、キャンバフラグ73aはオフであると判断される場合には(S5:No)、キャンバ角調整装置44を作動させて車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第1キャンバ角に調整し(S6)、キャンバフラグ73aをオンして(S7)、このキャンバ制御処理を終了する。
また、S4の処理の結果、操舵角の絶対値の時間微分値(d|θ|/dt)は閾値Tより小さいと判断される場合には(S4:No)、次にキャンバフラグ73aはオンであるか否かを判断する(S8)。キャンバフラグ73aはオフであると判断される場合には(S8:No)、車輪2のキャンバ角は第2キャンバ角に調整されているので、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S8の処理の結果、キャンバフラグ73aはオンであると判断される場合には(S8:Yes)、キャンバ角調整装置44を作動させて車輪2(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し(S9)、キャンバフラグ73aをオフして(S10)、このキャンバ制御処理を終了する。
また、S2の処理の結果、取得した車両1の走行速度が所定の走行速度(図4に図示したVa)より小さいと判断される場合には(S2:Yes)、次にキャンバフラグ73aはオンであるか否かを判断する(S11)。キャンバフラグ73aはオフであると判断される場合には(S11:No)、車輪2のキャンバ角は第2キャンバ角に調整されているので、このキャンバ制御処理を終了する。一方、キャンバフラグ73aはオンであると判断される場合には(S11:Yes)、S9の処理にスキップし、キャンバ角調整装置44を作動させて車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し(S9)、キャンバフラグ73aをオフして(S10)、このキャンバ制御処理を終了する。
次に、図6を参照して、車両1が車線を変更するときの車輪2のキャンバ角の調整について説明する。図6(a)は第1実施の形態における車両用制御装置100(以下「本発明品」と称す)が搭載された車両1の車線変更の軌跡を示す模式図であり、図6(b)は時間tと操舵角θとの関係を示す模式図であり、図6(c)は時間tと操舵角θの絶対値|θ|との関係を示す模式図であり、図6(d)は時間tと操舵角θの絶対値|θ|の時間微分値d|θ|/dtとの関係を示す模式図であり、図6(e)は時間tとキャンバ角Aとの関係を示す模式図であり、図6(f)は時間tと車両1の旋回特性との関係を示す模式図である。ここでは、図6(a)に示すように、直線道路を直進(図6左から右)する車両1が、左隣の車線に車線変更をする場合について説明する。なお、本実施の形態においては、操舵角θは図6(b)において中立を0[deg]とし、中立から左旋回方向を+、中立から右旋回方向を−とする。
図6(a)に示すような車線変更をする車両は、まずステアリング63(図1参照)を左回りに転舵させて左に旋回を開始して目的の車線に侵入しつつ、ステアリング63を右回りに転舵させて車両1の進行方向を立て直し、再度ステアリング63を左回りに転舵させて中立に保ち、変更した車線で直進走行を行う。以上のようにステアリング63が操作されることにより、図6(b)に示すように、時間tと共に操舵角θが0〜+θ〜0〜−θ〜0と変化する。
ここで、キャンバ制御処理(図5参照)のS4の処理において、操舵角θの絶対値|θ|の時間微分値d|θ|/dt(図6(d)参照)が正の所定値(閾値T)以上であると判断される場合に、キャンバ制御処理のS6の処理において、車輪2が第1キャンバ角(本実施の形態では−4.5°)に調整される(図6(e)参照)。車輪2が第1キャンバ角に調整されるのは、図6(b)を参照すると、操舵角θが中立(0)から左旋回方向(+θ)または中立(0)から右旋回方向(−θ)に変化するときである。これらの車両1の挙動が一時的に不安定になり易いときに、車輪2が第1キャンバ角に調整されることで応答性の高いキャンバスラストが生じるため、車両1の挙動が一時的に不安定になることが防止され、車両1の走行安定性を向上できる。
特に、操舵角θが中立(0)から右旋回方向(−θ)に変化するときに(図6(b)参照)、時間微分値d|θ|/dtは反転して最大値を示すので(図6(d)参照)、車輪2のキャンバ角は第1キャンバ角に必ず調整される。これにより、隣の車線に進入した車両1の進行方向を立て直すときに、車両1の挙動が一時的に不安定になることが防止され、車両の走行安定性を向上できる。
また、図6(f)に示すように、車両1はアンダーステア傾向(US)に初期設定されているので、旋回状況に応じて車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整することで、操舵角の変化に伴う一時的なオーバーステア傾向(OS)の変化を抑制できる。これにより、図6(f)に示すように、車両の旋回特性を全体としてほぼアンダーステア傾向(US)に維持できる。これにより車両の旋回安定性を向上できる。
また、キャンバ制御処理(図5参照)のS4の処理において、時間微分値が閾値Tより小さいと判断される場合に、キャンバ角調整装置44を作動させて車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角より小さな第2キャンバ角に調整するので(図6(e)参照)、左旋回方向(−θ)または右旋回方向(+θ)から中立(0)へと操舵角θが変化するときは、車輪のキャンバ角が定常角の方向へ調整される。その結果、左旋回方向または右旋回方向から中立へと操舵角が変化するときに、ステアリング63(図1参照)が操作し難くなることが防止され、操舵性を確保できる。
次に、図7及び図8を参照して、本発明品と比較例とを対比することにより、本発明品についてさらに説明する。図7(a)は、操舵角θの絶対値|θ|が正の所定値(T1)以上であると判断されるときに、車輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整する車両用制御装置(以下「比較例1」と称す)が搭載された車両が、車線を変更するときの時間tと操舵角θとの関係を示す模式図であり、図7(b)は時間tとキャンバ角Aとの関係を示す模式図であり、図7(c)は時間tと車両の旋回特性との関係を示す模式図である。なお、比較例1における車両は、ここに記載した以外の構成は第1実施の形態における車両と同様の構成とされている。
比較例1における車両では、操舵角θの絶対値|θ|に基づいてキャンバ角を調整するので、図7(b)に示すように、車線の変更を開始してから終了するまでの間、ほぼ継続して車輪が第1キャンバ角に調整される。これにより、図7(c)に示すように、旋回中は初期設定よりもアンダーステア傾向(US)が強くなり操舵性が低下する(旋回し難くなる)。また、操舵角θが+θから−θに変化する時間は、操舵角の絶対値|θ|が所定値(T1)より小さくなるため、車輪は第2キャンバ角に調整される(図7(b)参照)。これによりキャンバスラストが減少する。その結果、車両の旋回性能が急激に変化し、車両が一時的に不安定になる。
これに対し本発明品は、車線の変更を開始するとき、及び、変更した車線に侵入した車両の向きを変えるときに車輪2が第1キャンバ角に調整されるので(図6(e)参照)、応答性の高いキャンバスラストが発生し、車両1をアンダーステア傾向にすることができ、走行安定性を向上できる。また、これら以外の旋回状況では車輪2が第2キャンバ角に調整されるので、操舵性を確保できる。
次に、図8(a)は、操舵角θの時間微分値dθ/dtが正の所定値(T2)以上であると判断されるときに、車輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整する車両用制御装置(以下「比較例2」と称す)が搭載された車両が、車線を変更するときの時間tと操舵角θとの関係を示す模式図であり、図8(b)は時間tと時間微分値dθ/dtとの関係を示す模式図であり、図8(c)は時間tとキャンバ角Aとの関係を示す模式図であり、図8(d)は時間tと車両の旋回特性との関係を示す模式図である。なお、比較例2における車両は、ここに記載した以外の構成は第1実施の形態における車両と同様の構成とされている。
比較例2における車両では、操舵角θの時間微分値dθ/dtに基づいてキャンバ角を調整するので、図8(c)に示すように、変更した車線に侵入した車両の向きを変えるときは(操舵角θが0から−θに変わるときは)、車輪のキャンバ角は第2キャンバ角のままである。このときに車両が一時的に不安定になる。また、車線変更を終えた車両のステアリングを戻すときは(操舵角θが−θから0に変わるときは)、車輪が第1キャンバ角に調整されるので、ステアリング63(図1参照)が重くなり操舵性が低下する。
これに対し本発明品は、変更した車線に侵入した車両の向きを変えるときに(操舵角θが0から−θに変わるときに)車輪2が第1キャンバ角に調整されるので、応答性の高いキャンバスラストが発生し、車両1のオーバーステア傾向への変化を抑制でき、走行安定性を向上できる。また、車線変更を終えた車両1のステアリング63(図1参照)を戻すときは(操舵角θが−θから0に変わるときは)車輪2が第1キャンバ角に調整されないので、操舵性を確保できる。以上のように本発明品によれば、旋回状況に応じた走行安定性と操舵性とを向上できる。
以上説明した第1実施の形態によれば、図4に示すように、閾値(T)は車両1の走行速度が速くなるにつれて小さくなるように設定されるので、走行速度が速くなるにつれ、操舵角の絶対値の時間微分値に対して、キャンバ角調整装置44を敏感に作動させることができる。走行速度が速くなるにつれ車両1の挙動の変化も大きくなるところ、キャンバ角調整装置44を敏感に作動させることにより、車両1の走行速度に関わらず、車両1の挙動の変化を小さくすることができ走行安定性を向上できる。また、走行速度が遅くなるにつれキャンバ角調整装置44の作動を鈍感にできるので、キャンバ角調整装置44の駆動エネルギーの消耗を防止でき、省エネルギー性を向上できる。
また、車両1の走行速度が遅いときはキャンバ角の調整による車両1の走行安定性を向上させる効果が現れ難いところ、キャンバ制御処理(図5参照)のS2の処理において、走行速度が所定の走行速度以上であるかを判断し、走行速度が所定の走行速度以上であると判断される場合にS4の処理を実行するので、効果の乏しい走行速度においてキャンバ角が調整されることを防止して、キャンバ角調整装置の駆動エネルギーの消耗を防止し、省エネルギー性を向上できると共に、効果の乏しい走行速度においてキャンバ角が調整されることによる車輪2の偏磨耗を防止できる。
また、キャンバ角調整装置44は車輪2の内の後輪2RL,2RRに配設され、その後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整するので、車両1の装置構成を簡素化することができる。
なお、図5に示すフローチャート(キャンバ制御処置)において、請求項1記載の操舵角取得手段としてはS3の処理が、時間微分値判断手段としてはS4の処理が、第1キャンバ角調整手段としてはS6の処理がそれぞれ該当する。請求項3記載の第2キャンバ角調整手段としてはS9の処理が、請求項4記載の走行速度取得手段としてはS1の処理が、請求項5記載の走行速度判断手段としてはS2の処理がそれぞれ該当する。
次いで、図9から図12を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、車両用制御装置100の制御対象である車両1が、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角をキャンバ角調整装置44により調整可能に構成される場合を説明したが、第2実施の形態における車両201は、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角がキャンバ角調整装置44により調整可能とされ、左右の後輪2RL,2RRについてはキャンバ角の調整を行わない構成とされている。
また、第1実施の形態では、車両用制御装置100の制御対象である車両1について、左右の後輪2RL,2RRを第1キャンバ角(−4.5°)に調整する場合について説明したが、第2実施の形態においては、左右の前輪2FL,2FRの内の旋回外輪を第1キャンバ角(本実施の形態においては+2.5°)に調整する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図9は、第2実施の形態における車両用制御装置200が搭載される車両201を模式的に示した模式図である。なお、図9の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両201の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
まず、車両201の概略構成について説明する。図9に示すように、車両201は、複数(本実施の形態では4輪)の車輪2を備えて構成されている。本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRが懸架装置204により車体フレームBFに懸架される一方、左右の後輪2RL,2RRが懸架装置40により車体フレームBFに懸架されている。なお、懸架装置40は左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整する機能が省略されている点(即ち、図2に示す懸架装置4において、RRモータ44RRによる伸縮機能が省略されている点)を除き、その他の構成は懸架装置4と同じ構成であるので、その説明を省略する。また、本実施の形態における懸架装置204は、車輪2のキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構としての機能を兼ね備えている。
ここで、図10を参照して、懸架装置204の詳細構成について説明する。図10は、懸架装置204の正面図である。なお、ここでは、キャンバ角調整機構として機能する構成のみについて説明し、サスペンションとして機能する構成については周知の構成と同様であるので、その説明を省略する。また、各懸架装置204の構成は、左右の前輪2FL,2FRにおいてそれぞれ共通であるので、右の前輪2FRに対応する懸架装置204を代表例として図10に図示する。但し、図10では、理解を容易とするためにドライブシャフト31等の図示が省略されている。
懸架装置204は、図10に示すように、ストラット41及びロアアーム42を介して車体フレームBFに支持されるナックル43と、駆動力を発生するFRモータ44FRと、そのFRモータ44FRの駆動力を伝達するウォームホイール45及びアーム246と、それらウォームホイール45及びアーム246から伝達されるFRモータ44FRの駆動力によりナックル43に対して揺動駆動される可動プレート47とを主に備えて構成されている。
アーム246は、ウォームホイール45から伝達されるFRモータ44FRの駆動力を可動プレート47に伝達するものであり、図10に示すように、一端(図10右側)が第1連結軸248を介してウォームホイール45の回転軸45aから偏心した位置に連結される一方、他端(図10左側)が第2連結軸49を介して可動プレート47の上端(図10上側)に連結されている。
上述したように構成される懸架装置204によれば、FRモータ44FRが駆動されると、ウォームホイール45が回転すると共に、ウォームホイール45の回転運動がアーム246の直線運動に変換される。その結果、アーム246が直線運動することで、可動プレート47がキャンバ軸50を揺動軸として揺動駆動され、車輪2のキャンバ角が調整される。
なお、本実施の形態では、各連結軸248,49及びウォームホイール45の回転軸45aが、車体フレームBFから車輪2に向かう方向(矢印R方向)において、回転軸45a、第1連結軸248、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第1キャンバ状態と、第1連結軸248、回転軸45a、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第2キャンバ状態(図10に示す状態)とのいずれか一方のキャンバ状態となるように車輪2のキャンバ角が調整される。
これにより、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ状態若しくは第2キャンバ状態に調整された状態では、車輪2に外力が加わったとしても、アーム246を回動させる方向の力は発生せず、車輪2のキャンバ角を維持することができる。また、本実施の形態では、第1キャンバ状態において、車輪2のキャンバ角がプラス方向の所定の角度(本実施の形態では+2.5°、以下「第1キャンバ角」と称す)に調整され、車輪2にポジティブキャンバが付与される。一方、第2キャンバ状態(図10に示す状態)では、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角より絶対値が小さく、第1キャンバ角よりネガティブ方向の所定の角度(本実施の形態では−1.5°、以下「第2キャンバ角」と称す)の定常角に調整される。
なお、懸架装置40は、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整する機能が省略されている点(即ち、図2に示す懸架装置4において、RRモータ44RRによる伸縮機能が省略されている点)を除き、その他の構成は懸架装置4と同じ構成であるので、その説明を省略する。即ち、前輪2FL,2FRのキャンバ角は第1キャンバ角または第2キャンバ角に調整可能であるが、後輪2RL,2RRはキャンバ角の調整ができない構成とされている。
次に、図11を参照して、車両201に搭載される車両用制御装置200について説明する。車両用制御装置200は、車両201の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態に応じて、キャンバ角調整装置44の一部であるFLモータ44FL,FRモータ44FRを作動制御する。
次いで、図12を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図12は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置200の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR)のキャンバ角を調整する処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず車両1の走行速度を取得し(S1)、取得した車両1の走行速度が所定の走行速度(本実施の形態においては、図4に図示したVa)より小さいか否かを判断する(S2)。その結果、車両1の走行速度が所定の走行速度以上であると判断される場合には(S2:No)、操舵角θ及び操舵方向を取得する(S21)。
次いで、CPU71は操舵角θの絶対値の時間微分値(d|θ|/dt)が閾値T以上か否かを判断する(S4)。その結果、操舵角の絶対値の時間微分値(d|θ|/dt)が閾値T以上であると判断される場合には(S4:Yes)、次にキャンバフラグ73aはオンであるか否かを判断する(S5)。キャンバフラグ73aはオンであると判断される場合には(S5:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されている(ポジティブキャンバが付与されている)ので、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S5の処理の結果、キャンバフラグ73aはオフであると判断される場合には(S5:No)、キャンバ角調整装置44を作動させて車輪2(左右の前輪2FL,2FR)の旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整し(S22)、キャンバフラグ73aをオンして(S7)、このキャンバ制御処理を終了する。なお、S22の処理においては、S21の処理において取得した旋回方向に基づいて、左右の前輪2FL,2FRのいずれが旋回外輪であるかを判断し、左右の前輪2FL,2FRの内の旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角(ポジティブキャンバ)に調整する。
以上説明した第2実施の形態によれば、車両用制御装置200は、左右の前輪2FL,2FRの内の旋回外輪のキャンバ角をポジティブキャンバに調整するので、旋回外輪に発生するキャンバスラストにより、車両201の前輪2FL,2FRに旋回方向と反対向きのモーメントを生じさせ、第1実施の形態と同様に、旋回に伴い車両201の挙動が一時的に不安定になることを防止できる。また、懸架装置204は車輪2の内の前輪2FL,2FRに配設され、前輪2FL,2FRのキャンバ角が調整されるので、車両201の装置構成を簡素化することができる。
なお、図11に示すフローチャート(キャンバ制御処置)において、請求項1記載の操舵角取得手段としてはS21の処理が、第1キャンバ角調整手段としてはS22の処理がそれぞれ該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記各実施の形態で説明した第1キャンバ角および第2キャンバ角の値は任意に設定することができる。
上記各実施の形態では、車両用制御装置100,200が適用される車両1,201が前輪駆動方式である場合について説明したが、これらに限定されるものでははく、後輪駆動方式の車両や4輪駆動方式の車両に適用することも可能である。
上記第1実施の形態では後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整し、上記第2実施の形態では前輪2FL,2FRのキャンバ角を調整する場合について説明したが、これらに限定されるものでははく、キャンバ角調整機能を各懸架装置にもたせることで、4輪のキャンバ角をそれぞれ調整することも可能である。
上記第2実施の形態では、前輪2FL,2FRの旋回外輪のキャンバ角を調整する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、上記第1実施の形態における後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整可能な車両1において、旋回外輪のキャンバ角を調整するようにすることも可能である。
上記各実施の形態では、正の所定値(閾値T)を閾値関数72aに基づいて算出する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、走行速度に対する閾値をマップの形式でROM72に記録しておき、走行速度に応じた閾値をROM72から読み出すようにすることも可能である。
上記各実施の形態では、車輪2のキャンバ角は、キャンバ角調整装置44により第1キャンバ角または第2キャンバ角に調整され、車両1,201が直進走行をするときは、車輪2が第2キャンバ角に設定される場合について説明した。即ち、車両1,201が直進走行をするときのキャンバ角の所定角と、第2キャンバ角とが同一の場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。懸架装置およびキャンバ角調整装置が、車輪2のキャンバ角を任意の角度に調整可能な場合は、第2キャンバ角調整手段は、車輪2のキャンバ角(第2キャンバ角)を第1キャンバ角よりも所定角(車両1,201が直進走行をするときのキャンバ角)に近い角度に調整することが可能である。この場合は、車両1,201が直進走行をするときのキャンバ角の所定角と、第2キャンバ角とは同一でないが、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整されることで、キャンバスラストを減少させて操舵性を確保できる。
100,200 車両用制御装置
1,201 車両
2 車輪
2FL 左の前輪(車輪の一部)
2FR 右の前輪(車輪の一部)
2RL 左の後輪(車輪の一部)
2RR 右の後輪(車輪の一部)
4,204 懸架装置
44 キャンバ角調整装置
44FL FLモータ(キャンバ角調整装置の一部)
44FR FRモータ(キャンバ角調整装置の一部)
44RL RLモータ(キャンバ角調整装置の一部)
44RR RRモータ(キャンバ角調整装置の一部)
1,201 車両
2 車輪
2FL 左の前輪(車輪の一部)
2FR 右の前輪(車輪の一部)
2RL 左の後輪(車輪の一部)
2RR 右の後輪(車輪の一部)
4,204 懸架装置
44 キャンバ角調整装置
44FL FLモータ(キャンバ角調整装置の一部)
44FR FRモータ(キャンバ角調整装置の一部)
44RL RLモータ(キャンバ角調整装置の一部)
44RR RRモータ(キャンバ角調整装置の一部)
Claims (8)
- 複数の車輪と、それら複数の車輪の内の少なくとも一部の車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置と、を備えた車両に用いられる車両用制御装置であって、
前記車両の操舵角を取得する操舵角取得手段と、
その操舵角取得手段により取得された操舵角の絶対値の時間微分値が正の所定値以上であるかを判断する時間微分値判断手段と、
その時間微分値判断手段により前記時間微分値が前記正の所定値以上であると判断される場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させて前記車輪の内の少なくとも旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整する第1キャンバ角調整手段と、を備えていることを特徴とする車両用制御装置。 - 前記第1キャンバ角は、前記車両が直進走行をするときのキャンバ角の所定角と異なる角度であることを特徴とする請求項1記載の車両用制御装置。
- 前記時間微分値判断手段により前記時間微分値が前記正の所定値より小さいと判断される場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバ角を、前記車両が直進走行をするときのキャンバ角の所定角と同一乃至は前記第1キャンバ角よりも前記所定角に近い第2キャンバ角に調整する第2キャンバ角調整手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
- 前記車両の走行速度を取得する走行速度取得手段を備え、
前記正の所定値は、前記走行速度取得手段により取得された前記走行速度が速くなるにつれて小さくなるように設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用制御装置。 - 前記走行速度取得手段により取得された前記走行速度が所定の走行速度以上であるかを判断する走行速度判断手段を備え、
前記第1キャンバ角調整手段は、前記走行速度判断手段により前記走行速度が前記所定の走行速度以上であると判断され、かつ、前記時間微分値判断手段により前記時間微分値が前記正の所定値以上であると判断される場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させて前記車輪の内の少なくとも旋回外輪のキャンバ角を第1キャンバ角に調整することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用制御装置。 - 前記キャンバ角調整装置は、前記車輪の内の後輪に配設され、
前記第1キャンバ角調整手段は、前記後輪のキャンバ角を調整することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用制御装置。 - 前記車両は、アンダーステア傾向に初期設定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の車両用制御装置。
- 前記第1キャンバ角は、前記車両が直進走行をするときのキャンバ角の所定角からネガティブ方向に変化した角度であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の車両用制御装置。
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