以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態における制御部100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFを支持する複数(本実施形態では、四輪)の車輪2と、それら複数の車輪2(本実施形態では、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)を回転駆動するインホイールモータ等の車輪駆動装置3(3FL,3FR,3RL,3RR)と、各車輪2を車体フレームBFに懸架する複数の懸架装置4と、複数の車輪2の内の一部(本実施形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵装置5とを主に備えて構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪2FL、2FRと、車両1の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪2RL,2RRと、を備えている。なお、本実施形態では、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRは、車輪駆動装置3(3FL,3FR,3RL,3RR)により回転駆動される駆動輪として構成されると共に、車両1の走行状態に応じて駆動力が分配制御される。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2F及び左右の後輪2RL,2RRRを回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3a(3FLa,3FRa,3RLa,3RRa)により構成されている(図3参照)。
本実施形態では、左右の前輪2FL,2FRの車輪駆動装置3FL,3FRと左右の後輪2RL,2RRの車輪駆動装置3RL,3RRを独立して制御できる構成となっている。例えば、通常は左右の前輪2FL,2FRのみを駆動し、スタート時、全開加速時、四輪駆動時及び制動時には後輪2RL,2RRを駆動させる。
なお、本実施形態では、車輪駆動装置3(3FL,3FR,3RL,3RR)としてインホイールモータ等の電動モータ3a(3FLa,3FRa,3RLa,3RRa)を各車輪2に配置する構成としたが、他の形態として、車輪駆動装置3を図示しないデファレンシャルギヤ及びドライブシャフトを介して左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRに接続する構成としてもよい。
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FR及び/又は左右の後輪2RL,2RRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FR及び/又は左右の後輪2RL,2RRがアクセルペダル61の操作量に応じて回転駆動される。
懸架装置4は、路面から車輪2を介して車体フレームBFに伝わる振動を緩和するための装置、いわゆるサスペンションとして機能するものであり、伸縮可能に構成され、図1に示すように、各車輪2に対応してそれぞれ設けられている。また、本実施形態における懸架装置4のうち、後輪2RL,2RRに配置した懸架装置4は、後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構としての機能を兼ね備えている。
ここで、図2を参照して、後輪2RL,2RRの懸架装置4の詳細構成について説明する。図2は、右後輪2RRの懸架装置4RRの正面図である。なお、ここでは、キャンバ角調整機構44〜50として機能する構成のみについて説明し、サスペンションとして機能する構成については周知の構成と同様であるので、その説明を省略する。また、各懸架装置4のうちキャンバ角調整機構44〜50の構成は、後輪2RL,2RRにおいてそれぞれ共通であるので、右の後輪2RRに対応する懸架装置4RRを代表例として図2に図示する。
懸架装置4は、図2に示すように、ストラット41及びロアアーム42を介して車体フレームBFに支持されるナックル43と、駆動力を発生するRRモータ44RRと、そのRRモータ44RRの駆動力を伝達するウォームホイール45及びアーム46と、それらウォームホイール45及びアーム46から伝達されるRRモータ44RRの駆動力によりナックル43に対して揺動駆動される可動プレート47とを主に備えて構成されている。
ナックル43は、車輪2を支持するものであり、図2に示すように、上端(図2上側)がストラット41に連結されると共に、下端(図2下側)がボールジョイントを介してロアアーム42に連結されている。
RRモータ44RRは、可動プレート47に揺動駆動のための駆動力を付与するものであり、DCモータにより構成され、その出力軸44aにはウォーム(図示せず)が形成されている。
ウォームホイール45は、RRモータ44RRの駆動力をアーム46に伝達するものであり、RRモータ44RRの出力軸44aに形成されたウォームに噛み合い、かかるウォームと共に食い違い軸歯車対を構成している。
アーム46は、ウォームホイール45から伝達されるRRモータ44RRの駆動力を可動プレート47に伝達するものであり、図2に示すように、一端(図2右側)が第1連結軸48を介してウォームホイール45の回転軸45aから偏心した位置に連結される一方、他端(図2左側)が第2連結軸49を介して可動プレート47の上端(図2上側)に連結されている。
可動プレート47は、車輪2を回転可能に支持するものであり、上述したように、上端(図2上側)がアーム46に連結される一方、下端(図2下側)がキャンバ軸50を介してナックル43に揺動可能に軸支されている。なお、可動プレート47は、インホイールモータ等の車輪駆動装置3(3RR)のケースを兼ねることもできる。
上述したように構成される懸架装置4によれば、RRモータ44RRが駆動されると、ウォームホイール45が回転すると共に、ウォームホイール45の回転運動がアーム46の直線運動に変換される。その結果、アーム46が直線運動することで、可動プレート47がキャンバ軸50を揺動軸として揺動駆動され、後輪2RL,2RRのキヤンバ角が調整される。
なお、本実施形態では、各モータ44、ウォームホイール45、アーム46、可動プレート47、各連結軸48,49及びキャンバ軸50でキャンバ角調整機構44〜50を構成する。そして、本実施形態では、各連結軸48,49及びウォームホイール45の回転軸45aが、車体フレームBFから車輪2に向かう方向(矢印R方向)において、第1連結軸48、回転軸45a、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第1キャンバ状態(図3に示す状態)と、回転軸45a、第1連結軸48、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第2キャンバ状態(図2に示す状態)とのいずれか一方のキャンバ状態となるように後輪2RL,2RRのキヤンバ角が調整される。
これにより、後輪2RL,2RRのキャンバ角が調整された状態では、後輪2RL,2RRに外力が加わったとしても、アーム46を回動させる方向の力は発生せず、後輪2RL,2RRのキャンバ角を維持することができる。
また、本実施形態では、第1キャンバ状態(図3に示す状態)において、後輪2RL,2RRのキャンバ角がマイナス方向の所定の角度(本実施の形態では−3°、以下「第1キャンバ角」と称す)に調整され、後輪2RL,2RRにネガティブキャンバが付与される。一方、第2キャンバ状態(図2に示す状態)では、後輪2RL,2RRのキャンバ角が0°(以下「第2キャンバ角」と称す)に調整される。
図1に戻って説明する。操舵装置5は、運転者によるステアリング63の操作を左右の前輪2FL,2FRに伝えて操舵するための装置であり、いわゆるラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成されている。
この操舵装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作(回転)は、まず、ステアリングコラム51を介してユニバーサルジョイント52に伝達され、ユニバーサルジョイント52により角度を変えられつつステアリングボックス53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動する。その結果、タイロッド54がナックル55を押し引きすることで、車輪2に所定の舵角が付与される。
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3が駆動制御される。ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(ステア角、ステア角速度など)に応じて、操舵装置5により左右の前輪2FL,2FRが操舵される。
制御部100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態に応じてキャンバ角調整機構44(図4参照)を作動制御する。
次いで、図4を参照して、制御部100の詳細構成について説明する。図4は、制御部100の電気的構成を示したブロック図である。制御部100は、図4に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図5から図7に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。
RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、図4に示すように、キャンバフラグ73a、状態量フラグ73b及び走行状態フラグ73cが設けられている。
キャンバフラグ73aは、後輪2RL,2RRのキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態にあるか否かを示すフラグであり、CPU71は、このキャンバフラグ73aがオンである場合に、後輪2RL,2RRのキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態にあると判断する。
状態量フラグ73bは、車両1が安定か不安定かを判断するもので、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを示すフラグであり、後述する状態量判断処理(図5参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における状態量フラグ73bは、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1つの操作量が所定の操作量以上である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この状態量フラグ73bがオンである場合に、車両1の状態量が所定の条件を満たしていると判断する。
走行状態フラグ73bは、車両1が高速直進中かそれ以外かを判断するもので、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを示すフラグであり、後述する走行状態判断処理(図6参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における走行状態フラグ73cは、車両1の走行速度が所定の走行速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この走行状態フラグ73cがオンである場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRに回転駆動力を付与する各電動モータ3FLa,3FRa,3RLa,3RRaと、その電動モータ3FLa,3FRa,3RLa,3RRaをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。ただし、車輪駆動装置3は、電動モータ3FLa,3FRa,3RLa,3RRaに限られず、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、油圧モータやエンジン等が例示される。
モータ44は、後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整するための装置であり、上述したように、各懸架装置4の可動プレート47(図2及び図3参照)に揺動のための駆動力をそれぞれ付与する合計2個のRLモータ44RL、RRモータ44RL〜44RRと、それら各モータ44RL,44RRをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。
加速度センサ装置80は、車両1の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後方向加速度センサ80a及び左右方向加速度センサ80bと、それら各加速度センサ80a,80bの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
前後方向加速度センサ80aは、車内1(車体フレームBF)の前後方向(図1矢印F−B方向)の加速度、いわゆる前後Gを検出し取得するセンサであり、左右方向加速度センサ80bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1矢印L−R方向)の加速度、いわゆる横Gを検出し取得するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ80a,80bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
また、CPU71は、加速度センサ装置80から入力された各加速度センサ80a、80bの検出結果(前後G、横G)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の走行速度を取得することができる。
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の操作量を検出し取得すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の操作量を検出し取得すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操作量を検出し取得すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング63のステア角を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
後輪制駆動力センサ装置64aは、後輪2RL,2RRが制駆動力を発生しているかを検出し取得すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、後輪2RL,2RRの電動モータ3RLa,3RRaの回転を検出する回転センサ(図示せず)と、その回転センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。また、CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力された各角度センサの検出結果(操作量)を時間微分して、各ペダル61,62の踏み込み速度及びステアリング63のステア角速度を取得することができる。さらに、CPU71は、取得したステアリング63のステア角速度を時間微分して、ステアリング63のステア角加速度を取得することができる。
ここで、本実施形態では、例えば、アクセルペダルセンサ装置61a、ブレーキペダルセンサ装置62a及びステアリングセンサ装置63aが状態量取得部と対応し、後輪制駆動力センサ装置64aが後輪制駆動力取得部に対応し、前後方向加速度センサ80a及びステアリングセンサ装置63aが走行状態取得部に対応する。
図4に示す他の入出力装置90としては、例えば、GPSを利用して車両1の現在位置を取得すると共にその取得した車両1の現在位置を道路に関する情報が記憶された地図データに対応付けて取得するナビゲーション装置などが例示される。
次いで、図5を参照して、状態量判断処理について説明する。図5は、状態量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、制御部100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の状態量が所定の条件を満たすかを判断する処理である。
CPU71は、状態量判断処理に関し、まず、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)、ブレーキペダル62の操作量(踏み込み量)及びステアリング63の操作量(ステア角)をそれぞれ取得し(S1、S2、S3)、それら取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する(S4)。なお、S4の処理では、S1〜S3の処理でそれぞれ取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量と、それら各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量にそれぞれ対応してROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、後輪2RL,2RRのキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回する場合に、後輪2RL,2RRがスリップする恐れがあると判断される限界値)とを比較して、現在の各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
その結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であると判断される場合(不安定状態)には(S4:Yes)、状態量フラグ73bをオンして(S5)、この状態量判断処理を終了する。即ち、この状態量判断処理では、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合に、車両1の状態量が所定の不安定状態を満たすと判断する。
一方、S4の処理の結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量のいずれもが所定の操作量より小さいと判断される場合(安定状態)には(S4:No)、状態量フラグ73bをオフして(S6)、車両1の状態量が所定の安定状態を満たすと判断し、この状態量判断処理を終了する。
次いで、図6を参照して、走行状態判断処理について説明する。図6は、走行状態判断処理を示すフローチャートである。この処理は、制御部100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断する処理である。
CPU71は、走行状態判断処理に関し、まず、車両1の走行速度を取得し(S11)、その取得した車両1の走行速度が所定の速度以下であるか否かを判断する(S12)。なお、S12の処理では、S11の処理で取得した車両1の走行速度と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の車両1の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する。
その結果、車両1の走行速度が所定の速度より小さいと判断される場合には(S12:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
一方、S12の処理の結果、車両1の走行速度が所定の速度以上であると判断される場合には(S12:Yes)、ステアリング63の操作量(ステア角)を取得し(S13)、その取得したステアリング63の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S14)。なお、S14の処理では、S13の処理で取得したステアリング63の操作量と、ROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、図5に示す状態量判断処理において、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断するためのステアリング63の操作量より小さい値)とを比較して、現在のステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S14:Yes)、走行状態フラグ73cをオンして(S 15)、この走行状態判断処理を終了する。即ち、この走行状態判断手段では、車両1の走行速度が所定の速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
一方、S14の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S14:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
次いで、図7を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図7は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、制御部100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整する処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、状態量フラグ73bがオンであるか否かを判断し(S41)、状態量フラグ73bがオンであると判断される場合には(S41:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S42)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S42:No)、RLモータ44RL及びRRモータ44RRを作動させて、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、左右の後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与すると共に(S43)、キャンバフラグ73aをオンして(S44)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たす場合、即ち、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であり、後輪2RL,2RRのキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回すると後輪2RL,2RRがスリップする恐れがあり不安定であると判断される場合には、後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与することで、後輪2RL,2RRに発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。
一方、S42の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S42:Yes)、後輪2RL,2RRのキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S43及びS44の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S41の処理の結果、状態量フラグ73bがオフであると判断される場合には(S41:No)、後輪制駆動力センサ装置64aからの情報を取得し、後輪2RL,2RRに制駆動力が発生している四輪駆動又は回生状態であるか否かを判断する(S45)。
後輪2RL,2RRに制駆動力が発生していない前輪駆動状態と判断される場合には(S45:No)、走行状態フラグ73cがオンであるか否かを判断し(S46)、走行状態フラグ73cがオンであると判断される場合には(S46:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S42)。
その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S42:No)、RLモータ44RL及びRRモータ44RRを作動させて、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、左右の後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与すると共に(S43)、キャンバフラグ73aをオンして(S44)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の後輪2RL,2RRに制駆動力が発生していない前輪駆動状態で、車両1の走行状態が所定の直進状態である場合、即ち、車両1の走行速度が所定の速度以上であると共にステアリング63の操作量が所定の操作量以下であり、車両1が比較的高速で直進している場合には、後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与することで、後輪2RL,2RRの横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保することができる。
一方、S42の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S42:Yes)、後輪2RL,2RRのキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S43及びS44の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S45の処理の結果、後輪に制駆動力が発生している四輪駆動又は回生状態であると判断される場合には(S45:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S47)。その結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S48:Yes)、RLモータ44RL及びRRモータ44RRを作動させて、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、各車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S48)、キャンバフラグ73aをオフして(S49)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たしておらず車両が安定であると判断され、後輪2RL,2RRに制駆動力が発生している四輪駆動状態である場合、即ち、車両1の走行安定性を優先して確保する必要がなく、偏摩耗の心配がある場合には、後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を解除することで、キャンバスラストの影響を回避して、省燃費化を図ることができる。
一方、S47の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S47:No)、後輪2RL,2RRのキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S48及びS49の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
また、S46の処理の結果、走行状態フラグ73cがオフであると判断される場合には(S46:No)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S47)。その結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S47:Yes)、RLモータ44RL及びRRモータ44RRを作動させて、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S48)、キャンバフラグ73aをオフして(S49)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たしておらず車両が安定であると判断され、後輪2RL,2RRに制駆動力が発生していない前輪駆動状態の場合であって、車両1の走行状態が所定の直進状態でない場合、即ち、車両1の走行安定性を優先して確保する必要がない場合には、後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を解除することで、キャンバスラストの影響を回避して、省燃費化を図ることができる。
一方、S47の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S47:No)、後輪2RL,2RRのキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S48及びS49の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
本実施形態によれば、車両1の走行状態に応じて前輪2FL,2FRと後輪2RL,2RRの駆動力が分配制御される四輪駆動車両に用いられる車両用キャンバ角制御装置において、車両1の状態量を取得する状態量取得部61a,62a,63aと、後輪2RL,2RRの制駆動力の有無を取得する後輪制駆動力取得部64aと、車両1の走行状態を取得する走行状態取得部80a,63aと、後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構44〜50と、状態量取得部61a,62a,63a、後輪制駆動力取得部64a及び走行状態取得部80a,63aに基づいて、キャンバ角調整機構44〜50を制御する制御部100と、を有するので、タイヤの偏摩耗を抑制して、タイヤの寿命を向上させると共に車両の走行安定性を確保することが可能となる。
また、本実施形態によれば、制御部100は、状態量取得部61a,62a,63aにより取得された車両1の状態量が所定の安定状態であり、後輪制駆動力取得部64aにより後輪2RL,2RRの制駆動力が取得されず、走行状態取得部80a,63aにより取得された車両1の走行状態が所定の直進状態である場合、キャンバ角調整機構44〜50により後輪2RL,2RRのキャンバ角をネガティブキャンバに制御するので、二輪駆動で所定の直進状態で走行している場合の車両の走行安定性を確保することが可能となる。
なお、本実施形態では、キャンバ角調整機構44〜50を後輪2RL,2RRのみに設けたが、前輪2FL,2FRにもキャンバ角調整機構44〜50を設けてもよい。この場合、後輪2RL,2RRのネガティブキャンバを解除する場合、前輪2FL,2FRのネガティブキャンバも解除する構成とする。