以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFを支持する複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2を車体フレームBFに懸架する複数の懸架装置4と、複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵装置5とを主に備えて構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪2FL,2FRと、車両1の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪2RL,2RRとを備えている。なお、本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成され、左右の後輪2RL,2RRも同様に駆動輪として構成されている。また、車輪2は、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRが全て同じ形状、外径および特性に構成され、そのトレッドの幅(図1左右方向の寸法)が同一の幅に構成されている。なお、左右の後輪2RL,2RRを車体フレームBFに回転可能に支持するシャフト(車軸)及び後輪2RL,2RRを駆動する車輪駆動装置の図示は省略している。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRを回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3aにより構成されている(図3参照)。また、電動モータ3aは、図1に示すように、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31(車軸)を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の操作量に応じて回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、デファレンシャルギヤにより吸収される。
懸架装置4は、路面から車輪2を介して車体フレームBFに伝わる振動を緩和するための装置、いわゆるサスペンションとして機能するものであり、伸縮可能に構成され、図1に示すように、各車輪2に対応してそれぞれ設けられている。また、本実施の形態における懸架装置4は、車輪2のキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構としての機能を兼ね備えている。
ここで、図2を参照して、懸架装置4の詳細構成について説明する。図2は、懸架装置4の正面図である。なお、ここでは、キャンバ角調整機構として機能する構成のみについて説明し、サスペンションとして機能する構成については周知の構成と同様であるので、その説明を省略する。また、各懸架装置4の構成は、各車輪2においてそれぞれ共通であるので、右の前輪2FRに対応する懸架装置4を代表例として図2に図示する。但し、図2では、理解を容易とするためにドライブシャフト31等の図示が省略されている。
懸架装置4は、図2に示すように、ストラット41及びロアアーム42を介して車体フレームBFに支持されるナックル43と、駆動力を発生するFRモータ44FRと、そのFRモータ44FRの駆動力を伝達するウォームホイール45及びアーム46と、それらウォームホイール45及びアーム46から伝達されるFRモータ44FRの駆動力によりナックル43に対して揺動駆動される可動プレート47とを主に備えて構成されている。
ナックル43は、車輪2を操舵可能に支持するものであり、図2に示すように、上端(図2上側)がストラット41に連結されると共に、下端(図2下側)がボールジョイントを介してロアアーム42に連結されている。FRモータ44FRは、可動プレート47に揺動駆動のための駆動力を付与するものであり、DCモータにより構成され、その出力軸44aにはウォーム(図示せず)が形成されている。ウォームホイール45は、FRモータ44FRの駆動力をアーム46に伝達するものであり、FRモータ44FRの出力軸44aに形成されたウォームに噛み合い、かかるウォームと共に食い違い軸歯車対を構成している。
アーム46は、ウォームホイール45から伝達されるFRモータ44FRの駆動力を可動プレート47に伝達するものであり、図2に示すように、一端(図2右側)が第1連結軸48を介してウォームホイール45の回転軸45aから偏心した位置に連結される一方、他端(図2左側)が第2連結軸49を介して可動プレート47の上端(図2上側)に連結されている。可動プレート47は、車輪2を回転可能に支持するものであり、上述したように、上端(図2上側)がアーム46に連結される一方、下端(図2下側)がキャンバ軸50を介してナックル43に揺動可能に軸支されている。
上述したように構成される懸架装置4によれば、FRモータ44FRが駆動されると、ウォームホイール45が回転すると共に、ウォームホイール45の回転運動がアーム46の直線運動に変換される。その結果、アーム46が直線運動することで、可動プレート47がキャンバ軸50を揺動軸として揺動駆動され、車輪2のキャンバ角が調整される。
なお、本実施の形態では、各連結軸48,49及びウォームホイール45の回転軸45aが、車体フレームBFから車輪2に向かう方向(矢印R方向)において、第1連結軸48、回転軸45a、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第1キャンバ状態と、回転軸45a、第1連結軸48、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第2キャンバ状態(図2に示す状態)とのいずれか一方のキャンバ状態となるように車輪2のキャンバ角が調整される。
これにより、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ状態若しくは第2キャンバ状態に調整された状態では、車輪2に外力が加わったとしても、アーム46を回動させる方向の力は発生せず、車輪2のキャンバ角を維持することができる。また、本実施の形態では、第1キャンバ状態において、車輪2のキャンバ角がマイナス方向の所定の角度(本実施の形態では−3°、以下「第1キャンバ角」と称す)に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与される。一方、第2キャンバ状態(図2に示す状態)では、車輪2のキャンバ角が0°(以下「第2キャンバ角」と称す)に調整される。
図1に戻って説明する。操舵装置5は、運転者によるステアリング63の操作を左右の前輪2FL,2FRに伝えて操舵するための装置であり、いわゆるラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成されている。この操舵装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作(回転)は、まず、ステアリングコラム51を介してユニバーサルジョイント52に伝達され、ユニバーサルジョイント52により角度を変えられつつステアリングボックス53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動する。その結果、タイロッド54がナックル55を押し引きすることで、車輪2に所定の舵角が付与される。
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3が駆動制御される。ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(ステア角、ステア角速度など)に応じて、操舵装置5により左右の前輪2FL,2FRが操舵される。
車両用制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態に応じてキャンバ角調整装置44(図3参照)を作動制御する。
次いで、図3を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。図3は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図3に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図4から図7に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。
RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、図3に示すように、キャンバフラグ73a、状態量フラグ73b、走行状態フラグ73c、4輪チェーンフラグ73d、前輪チェーンフラグ73e及び後輪チェーンフラグ73fが設けられている。
キャンバフラグ73aは、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態にあるか否かを示すフラグであり、CPU71は、このキャンバフラグ73aがオンである場合に、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態にあると判断する。
状態量フラグ73bは、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを示すフラグであり、後述する状態量判断処理(図5参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における状態量フラグ73bは、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この状態量フラグ73bがオンである場合に、車両1の状態量が所定の条件を満たしていると判断する。
走行状態フラグ73cは、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを示すフラグであり、後述する走行状態判断処理(図6参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における走行状態フラグ73cは、車両1の走行速度が所定の走行速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この走行状態フラグ73cがオンである場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
4輪チェーンフラグ73d、前輪チェーンフラグ73e及び後輪チェーンフラグ73fは、いずれの車輪2(前輪2FL,2FR、後輪2RL,2RR、図1参照)にタイヤチェーンが装着されているかを示すフラグであり、後述する車輪状態判断処理(図4参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。CPU71は、4輪チェーンフラグ73dがオンである場合に、全ての車輪2(前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RR)にタイヤチェーンが装着された状態にあると判断する。同様にCPU71は、前輪チェーンフラグ73eがオンである場合に、前輪2FL,2FR(図1参照)にタイヤチェーンが装着された状態にあると判断し、後輪チェーンフラグ73fがオンである場合に、後輪2RL,2RR(図1参照)にタイヤチェーンが装着された状態であると判断する。また、CPU71は、4輪チェーンフラグ73d、前輪チェーンフラグ73e及び後輪チェーンフラグ73fの全てがオフである場合に、いずれの車輪2もタイヤチェーンが装着されていない状態にあると判断する。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。但し、車輪駆動装置3は、電動モータ3aに限られず、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、油圧モータやエンジン等が例示される。
キャンバ角調整装置44は、各車輪2のキャンバ角を調整するための装置であり、上述したように、各懸架装置4の可動プレート47(図2参照)に揺動のための駆動力をそれぞれ付与する合計4個のFL〜RRモータ44FL〜44RRと、それら各モータ44FL〜44RRをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。
加速度センサ装置80は、車両1の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後方向加速度センサ80a、左右方向加速度センサ80b及び上下方向加速度センサ80cと、それら各加速度センサ80a,80b,80cの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
前後方向加速度センサ80aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1矢印F−B方向)の加速度、いわゆる前後Gを検出するセンサであり、左右方向加速度センサ80bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1矢印L−R方向)の加速度、いわゆる横Gを検出するセンサであり、上下方向加速度センサ80cは、車両1の上下方向(図2矢印U−D方向)の加速度、いわゆる上下Gを検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ80a,80b,80cが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
また、CPU71は、加速度センサ装置80から入力された各加速度センサ80a,80bの検出結果(前後G、横G)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の走行速度を取得することができる。
回転速度センサ装置81は、車輪2(図1参照)の回転速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、左前輪2FLを支持するドライブシャフト31(車軸)の回転速度を検出するFL回転速度センサ81FLと、右前輪2FRを支持するドライブシャフト31(車軸)の回転速度を検出するFR回転速度センサ81FRと、左後輪2RLを支持するシャフト(車軸)(図示せず)の回転速度を検出するRL回転速度センサ81RLと、右後輪2RRを支持するシャフト(車軸)(図示せず)の回転速度を検出するRR回転速度センサ81RRと、それら各回転速度センサ81FL,81FR,81RL,81RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
本実施の形態においては、CPU71は、FL回転速度センサ81FL及びFR回転速度センサ81FRの検出結果から(例えば各検出結果を平均することにより)、前輪2FL,2FRを支持するドライブシャフト31(車軸)の回転速度を取得し、RL回転速度センサ81RL及びRR回転速度センサ81RRの検出結果から(例えば各検出結果を平均することにより)、後輪2RL,2RRを支持するシャフト(車軸)(図示しない)の回転速度を取得することができる。
温度センサ装置82は、車両1の外気温度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、外気温度を検出する温度センサ82aと、その温度センサ82aの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング63のステア角を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。また、CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力された各角度センサの検出結果(操作量)を時間微分して、各ペダル61,62の踏み込み速度およびステアリング63のステア角速度を取得することができる。更に、CPU71は、取得したステアリング63のステア角速度を時間微分して、ステアリング63のステア角加速度を取得することができる。
図3に示す他の入出力装置90としては、例えば、ヨーレートセンサ装置、ロール角センサ装置などが例示される。ヨーレートセンサ装置は、車両1のヨーレートを検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る鉛直軸(図1矢印U−D方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角速度を検出するヨーレートセンサと、そのヨーレートセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路とを主に備えている。ロール角センサ装置は、車両1のロール角を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る前後軸(図1矢印F−B方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角を検出するロール角センサと、そのロール角センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路とを主に備えている。
また、他の入出力装置90として、例えば、GPSを利用して車両1の現在位置を取得すると共にその取得した車両1の現在位置を道路に関する情報が記憶された地図データに対応付けて取得するナビゲーション装置なども例示される。さらに、いずれの車輪2にタイヤチェーンが装着されたかを運転者等の入力操作によりCPU71に出力する入出力装置も例示される。
次いで、図4を参照して、車輪状態判断処理について説明する。図4は、車輪状態判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車輪2にタイヤチェーンが装着されているかを判断する処理である。
CPU71は、車輪状態判断処理に関し、まず、前輪2FL,2FR(図1参照)を支持するドライブシャフト31(車軸)の回転速度、後輪2RL,2RRを支持するシャフト(図示しない車軸)の回転速度、車両1の上下G(上下方向加速度)、車両1の外気温度をそれぞれ取得する(S1,S2,S3)。なお、これらの処理は、回転速度センサ装置81、上下方向加速度センサ80c(加速度センサ装置80)、温度センサ装置82を用いてそれぞれ行われる。
次にCPU71は、所定の連続する上下Gがあるか否かを判断する(S4)。なお、S4の処理では、CPU71は取得される上下Gより振動数を算出すると共に、上下Gを2回時間積分して変位を算出し、これらの数値とROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、所定の連続する上下Gがあるか否かを判断する(S4)。なお、この閾値は、車輪2にタイヤチェーンを装着した状態で走行する車両1に生じる上下Gに基づいて導き出される値と、車輪2にタイヤチェーンが装着されていない状態で走行する車両1に生じる上下Gに基づいて導き出される値との間に定められている。
その結果、所定の連続する上下Gがないと判断される場合には(S4:No)、車輪2にタイヤチェーンが装着されていないことによって車両1は振動していないことを示しており、車輪2にタイヤチェーンが装着されていないと判断されるので、4輪チェーンフラグ73d、前輪チェーンフラグ73e及び後輪チェーンフラグ73fを全てオフして(S5)、この車輪状態判断処理を終了する。
一方、S4の処理の結果、所定の連続する上下Gがあると判断される場合には(S4:Yes)、車輪2にタイヤチェーンが装着されている可能性が高いと判断されるので、次にCPU71は、外気温度は所定の外気温度以下であるか否かを判断する(S6)。ここで、所定の外気温度は、積雪や凍結のおそれがありタイヤチェーンの装着が必要とされる温度(例えば10℃)であり、ROM72に予め記憶されている。その結果、外気温度が所定の外気温度より高いと判断される場合には(S6:No)、取得された上下Gはタイヤチェーンによるものではなく、例えば非舗装の路面からの振動等であると判断されるので、4輪チェーンフラグ73d、前輪チェーンフラグ73e及び後輪チェーンフラグ73fを全てオフして(S5)、この車輪状態判断処理を終了する。
これに対し、S6の処理の結果、外気温度は所定の外気温度以下であると判断される場合には(S6:Yes)、車輪2にタイヤチェーンが装着されていると判断されるので、次にCPU71は、回転速度の異なる車軸はあるか否かを判断する(S7)。その結果、回転速度の異なる車軸がないと判断される場合には(S7:No)、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRの4輪にタイヤチェーンが装着されていると判断されるので、4輪チェーンフラグ73dをオンして(S8)、この車輪状態判断処理を終了する。
一方、S7の処理の結果、回転速度の異なる車軸があると判断される場合には(S7:Yes)、前輪2FL,2FR又は後輪2RL,2RRのいずれかにタイヤチェーンが装着されていると判断されるため、次にCPU71は、前輪2FL,2FRの車軸の回転速度は後輪2RL,2RRの車軸の回転速度より小さいか否かを判断する(S9)。その結果、後輪2RL,2RRの車軸の回転速度が前輪2FL,2FRの車軸の回転速度より小さいと判断される場合には(S9:No)、タイヤチェーンの厚さの分だけ後輪2RL,2RRの外径が前輪2FL,2FRよりも大きくなった結果、後輪2RL,2RRの車軸の回転速度が前輪2FL,2FRの車軸の回転速度より小さいものと判断される。即ち、後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されていると判断されるので、後輪チェーンフラグ73eをオンして(S10)、この車輪状態判断手段を終了する。
これに対し、前輪2FL,2FRの車軸の回転速度が後輪2RL,2RRの車軸の回転速度より小さいと判断される場合には(S9:Yes)、タイヤチェーンの厚さの分だけ前輪2FL,2FRの外径が後輪2RL,2RRよりも大きくなった結果、前輪2FL,2FRの車軸の回転速度が後輪2RL,2RRの車軸の回転速度より小さいものと判断される。即ち、前輪2FL,2FRにタイヤチェーンが装着されていると判断されるので、前輪チェーンフラグ73eをオンして(S11)、この車輪状態判断手段を終了する。
次に、図5を参照して、状態量判断処理について説明する。図5は、状態量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両の状態量が所定の条件を満たすかを判断する処理である。
CPU71は状態量判断処理に関し、まずアクセルペダル61の操作量(踏み込み量)、ブレーキペダル62の操作量(踏み込み量)及びステアリング63の操作量(ステア角)をそれぞれ取得し(S21、S22、S23)、それら取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する(S24)。なお、S24の処理では、S21〜S23の処理でそれぞれ取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量と、それら各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量にそれぞれ対応してROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回する場合に、車輪2がスリップする恐れがあると判断される限界値)とを比較して、現在の各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
その結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であると判断される場合には(S24:Yes)、状態量フラグ73bをオンして(S25)、この状態量判断処理を終了する。即ち、この状態量判断処理では、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合に、車両1の状態量が所定の条件を満たすと判断する。
一方、S24の処理の結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量のいずれもが所定の操作量より小さいと判断される場合には(S24:No)、状態量フラグ73bをオフして(S26)、この状態量判断処理を終了する。
次いで、図6を参照して、走行状態判断処理について説明する。図6は、走行状態判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断する処理である。
CPU71は、走行状態判断処理に関し、まず、車両1の走行速度を取得し(S31)、その取得した車両1の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する(S32)。なお、S32の処理では、S31の処理で取得した車両1の走行速度と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の車両1の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する。その結果、車両1の走行速度が所定の速度より小さいと判断される場合には(S32:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S36)、この走行状態判断処理を終了する。
一方、S32の処理の結果、車両1の走行速度が所定の速度以上であると判断される場合には(S32:Yes)、ステアリング63の操作量(ステア角)を取得し(S33)、その取得したステアリング63の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S34)。なお、S34の処理では、S33の処理で取得したステアリング63の操作量と、ROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、図5に示す状態量判断処理において、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断するためのステアリング63の操作量より小さい値)とを比較して、現在のステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S34:Yes)、走行状態フラグ73cをオンして(S35)、この走行状態判断処理を終了する。即ち、この走行状態判断手段では、車両1の走行速度が所定の速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
一方、S34の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S34:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S36)、この走行状態判断処理を終了する。
次いで、図7を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図7は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を調整する処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、4輪チェーンフラグ73dがオンであるか否かを判断する(S41)。その結果、4輪チェーンフラグ73dがオンであると判断される場合には(S41:Yes)、次にキャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S53)。S53の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S53:No)、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されている(ネガティブキャンバの付与が解除されている)ので、その後の処理をスキップしてこのキャンバ制御処理を終了する。一方、S53の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S53:Yes)、車輪2のキャンバ角は第1キャンバ角に調整されている(ネガティブキャンバが付与されている)ので、FLモータ44FL、FRモータ44FR、RLモータ44RL及びRRモータ44RRを作動させて、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、各車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S54)、キャンバフラグ73aをオフして(S55)、このキャンバ制御処理を終了する。
即ち、S41の処理の結果、4輪チェーンフラグ73dがオンであると判断される場合には(S41:Yes)、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されているので、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整することで、車輪2とタイヤハウスとのクリアランスを確保でき、タイヤチェーンとタイヤハウスとの干渉を防止できると共に、タイヤチェーンの偏摩耗を防止できる。
一方、S41の処理の結果、4輪チェーンフラグ73dがオフであると判断される場合には(S41:No)、タイヤチェーンが装着されていない車輪2が存在するので、以下の処理において、いずれの車輪2にネガティブキャンバを付与するか否かを判断する。CPU71は、まず、状態量フラグ73bがオンであるか否かを判断する(S42)。S42の処理の結果、状態量フラグ73bがオンであると判断される場合には(S42:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S43)。一方、S42の処理の結果、状態量フラグ73bがオフであると判断される場合には(S42:No)、次に走行状態フラグ73cがオンであるか否かを判断する(S44)。S44の処理の結果、走行状態フラグ73cがオンであると判断される場合には(S44:Yes)、S43の処理を実行する。これに対し、S44の処理の結果、走行状態フラグ73cがオフであると判断される場合には(S44:No)、上述したS53の処理を実行する。
次に、S43の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S43:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されている(ネガティブキャンバが付与されている)ので、その後の処理をスキップしてこのキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S43の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S43:No)、次に、前輪チェーンフラグ73eがオンであるか否かを判断する(S45)。S45の処理の結果、前輪チェーンフラグ73eがオンであると判断される場合には(S45:Yes)、前輪2FL,2FRにタイヤチェーンが装着されているが後輪2RL,2RRには装着されていないので、RLモータ44RL、RRモータ44RRを作動させて、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与すると共に(S51)、キャンバフラグ73aをオンして(S52)、このキャンバ制御処理を終了する。
S45の処理の結果、前輪チェーンフラグ73eがオンでないと判断される場合には(S45:No)、後輪チェーンフラグ73fがオンであるか否かを判断する(S46)。S46の処理の結果、後輪チェーンフラグ73fがオンであると判断される場合には(S46:Yes)、後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されているが前輪2FL,2FRには装着されていないので、FLモータ44FL、FRモータ44FRを作動させて、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、前輪2FL,2FRにネガティブキャンバを付与すると共に(S47)、キャンバフラグ73aをオンして(S48)、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S46の処理の結果、後輪チェーンフラグ73fがオフであると判断される場合には(S46:No)、タイヤチェーンはいずれの車輪2にも装着されていないので、FLモータ44FL、FRモータ44FR、RLモータ44RL及びRRモータ44RRを作動させて、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与すると共に(S49)、キャンバフラグ73aをオンして(S50)、このキャンバ制御処理を終了する。
以上説明した第1実施の形態によれば、タイヤチェーンが装着されていないと判断される車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保できる。また、タイヤチェーンが装着されていると判断される車輪2については、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整され、ネガティブキャンバの付与が行われないので、タイヤチェーンが装着された車輪2とタイヤハウスとのクリアランスを十分確保できる。その結果、タイヤチェーンが車両1のタイヤハウスに接触することが防止されるので、タイヤハウスの設計の自由度を確保できる。さらに、タイヤチェーンが偏摩耗することを防止して、タイヤチェーンの寿命を向上できると共に、積雪路面や凍結路面に対するタイヤチェーンの接地も安定化するため、車両1の走行安定性を確保できる。
また、第1実施の形態によれば、車両1の状態量が所定の条件を満たすと判断される場合に、タイヤチェーンが装着されていない車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。
また、第1実施の形態によれば、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断される場合に、タイヤチェーンが装着されていない車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2の横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保できる。
また、第1実施の形態によれば、タイヤチェーンが装着されていないと判断される車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角(−3°)に調整され、タイヤチェーンが装着されていると判断される車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角(0°)に調整される。即ち、タイヤチェーンが装着されていないと判断される車輪2のキャンバ角は、タイヤチェーンが装着されていると判断される車輪2のキャンバ角より絶対値が大きくなるように調整される。これにより、タイヤチェーンが装着されていない車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保できる。また、タイヤチェーンが装着された車輪2のキャンバ角は、タイヤチェーンが装着されていない車輪2のキャンバ角より絶対値が小さくなるので、タイヤチェーンが偏摩耗することを防止してタイヤチェーンの寿命を向上できる。
なお、図4に示すフローチャート(車輪状態判断手段)において、請求項1記載の車輪状態取得手段としてはS1,S2及びS3の処理が、請求項1記載の非装着位置判断手段としてはS7及びS9の処理が、装着位置判断手段としてはS7及びS9の処理がそれぞれ該当する。図5に示すフローチャート(状態量判断処理)において、請求項2記載の状態量取得手段としてはS21,S22及びS23の処理が、請求項2記載の状態量判断手段としてはS24の処理がそれぞれ該当する。図6に示すフローチャート(走行状態判断手段)において、S31及びS33の処理は走行状態取得手段ということができる。図7に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載のキャンバ角調整手段としてはS47,S49及びS51の処理がそれぞれ該当する。
次いで、図8から図11を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、車両用制御装置100の制御対象である車両1が、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角をキャンバ角調整装置44により調整可能に構成される場合を説明したが、第2実施の形態における車両201は、左右の後輪2RL,2RRのみのキャンバ角がキャンバ角調整装置244(図9参照)により調整可能とされ、左右の前輪2FL,2FRについてはキャンバ角の調整を行わない構成とされている。
また、第1実施の形態では、車両用制御装置100の制御対象である車両1が、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRを駆動輪とする4輪駆動方式であり、タイヤチェーンが車輪2の全て(4輪)に装着される場合、前輪2FL,2FR又は後輪2RL,2RRのいずれか一方(2輪)に装着される場合、車輪2のいずれにも装着されない場合があるものを説明した。これに対し第2実施の形態では、車両用制御装置200の制御対象である車両201が前輪2FL,2FRを駆動輪とする前輪駆動方式であり、タイヤチェーンは駆動輪である前輪2FL,2FRに装着されるか、車輪2のいずれにも装着されないかであり、車輪2の全て(4輪)にタイヤチェーンが装着されることがない点で、第1実施の形態と相違する。
図8は、第2実施の形態における車両用制御装置200が搭載される車両201を模式的に示した模式図である。なお、図8の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両201の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
まず、車両201の概略構成について説明する。図8に示すように、車両201は、複数(本実施の形態では4輪)の車輪2を備えて構成されている。本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動される従動輪として構成されている(前輪駆動方式)。また、車輪2は左右の前輪2FL,2FRが懸架装置204により車体フレームBFに懸架される一方、左右の後輪2RL,2RRが懸架装置4により車体フレームBFに懸架されている。なお、懸架装置204は左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角を調整する機能が省略されている点(即ち、図2に示す懸架装置4において、FRモータ44FRによる伸縮機能が省略されている点)を除き、その他の構成は懸架装置4と同じ構成であるので、その説明を省略する。
車両用制御装置200は、上述したように構成される車両201の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態に応じてキャンバ角調整装置244(図9参照)を作動制御する。
次いで、図9を参照して、車両用制御装置200の詳細構成について説明する。図9は、車両用制御装置200の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置200は、主に、第1実施の形態における車両用制御装置100のキャンバ角調整装置44に代えて、キャンバ角調整装置244を備えている。
キャンバ角調整装置244は、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整するための装置であり、左右の後輪2RL,2RRにキャンバ角をそれぞれ付与する合計2個のRL,RRモータ44RL,44RRと、それら各モータ44RL,44RRをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。即ち、第2実施の形態におけるキャンバ角調整装置244は、第1実施の形態におけるキャンバ角調整装置44の一部(左右の前輪2FL,2FRに対応するFLモータ44FL及びFRモータ44FL)を省略して構成されている。
また、車両用制御装置200は、第1実施の形態で説明したRAM73に設けられた4輪チェーンフラグ73d、前輪チェーンフラグ73e及び後輪チェーンフラグ73fに代えて、チェーンフラグ73gが設けられている。チェーンフラグ73gは、キャンバ角を調整できる車輪2(本実施の形態では後輪2RL,2RR)にタイヤチェーンが装着されているかを示すフラグであり、後述する車輪状態判断処理(図10参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。CPU71は、チェーンフラグ73gがオンである場合に、後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着された状態にあると判断する。
次いで、図10を参照して、第2実施の形態における車輪状態判断処理について説明する。図10は、第2実施の形態における車輪状態判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置200の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、キャンバ角を調整できる左右の後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されているかを判断する処理である。
CPU71は、第2実施の形態における車輪状態判断処理に関し、まず、前輪2FL,2FR(図1参照)を支持するドライブシャフト31(車軸)の回転速度、後輪2RL,2RRを支持するシャフト(図示しない車軸)の回転速度、車両201の上下G(上下方向加速度)、車両201の外気温度をそれぞれ取得する(S61,S62,S63)。
次にCPU71は、回転速度の異なる車軸はあるか否かを判断する(S64)。その結果、回転速度の異なる車軸がないと判断される場合には(S64:No)、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されていないと判断されるので、チェーンフラグ73gをオフして(S65)、この車輪状態判断処理を終了する。
一方、S64の処理の結果、回転速度の異なる車軸があると判断される場合には(S64:Yes)、前輪2FL,2FR又は後輪2RL,2RRのいずれかにタイヤチェーンが装着されていると判断されるため、次にCPU71は、前輪2FL,2FRの車軸の回転速度と後輪2RL,2RRの車軸の回転速度とを比較すると共に、回転速度の小さな車軸に支持された車輪2のキャンバ角が調整できるか否かを判断する(S66)。第1実施の形態における車輪状態判断処理(図4参照)で説明したように、タイヤチェーンが装着された車輪2を支持する車軸の回転速度は、タイヤチェーンが装着されていない車輪2を支持する車軸の回転速度より小さくなるので、S66の処理において、前輪2FL,2FRの車軸の回転速度と後輪2RL,2RRの車軸の回転速度とを比較することにより、前輪2FL,2FR又は後輪2RL,2RRのいずれにタイヤチェーンが装着されているかを判断できる。さらに、タイヤチェーンが装着された車輪2のキャンバ角が調整できるか否か(本実施の形態では後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されているか否か)を判断する。その結果、回転速度の小さな車軸のキャンバ角は調整できない、即ち前輪2FL,2FRにタイヤチェーンが装着されていると判断される場合には(S66:No)、チェーンフラグ73gをオフして(S65)、この車輪状態判断手段を終了する。
これに対し、回転速度の小さな車軸のキャンバ角は調整できる、即ち後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されている可能性が高いと判断される場合には(S66:Yes)、次に、所定の連続する上下Gがあるか否かを判断する(S67)。なお、タイヤチェーンは駆動輪である前輪2FL,2FRに装着されるべきものであるが、S66の処理を実行することにより、使用者の過誤により従動輪である後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着された場合でも、タイヤチェーンが装着された車輪2にネガティブキャンバが付与されることを防止できる。
S67の処理の結果、所定の連続する上下Gがないと判断される場合には(S67:No)、後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されていないことによって車両1は振動していないことを示しており、後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されていないと判断されるので、チェーンフラグ73gをオフして(S65)、この車輪状態判断処理を終了する。
一方、S67の処理の結果、所定の連続する上下Gがあると判断される場合には(S67:Yes)、後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されている可能性が高いと判断されるので、次にCPU71は、外気温度は所定の外気温度以下であるか否かを判断する(S68)。ここで、所定の外気温度は、積雪や凍結のおそれがありタイヤチェーンの装着が必要とされる温度(例えば10℃)であり、ROM72に予め記憶されている。その結果、外気温度が所定の外気温度より高いと判断される場合には(S68:No)、取得された上下Gはタイヤチェーンによるものではなく、例えば非舗装の路面からの振動等であると判断されるので、チェーンフラグ73gをオフして(S68)、この車輪状態判断処理を終了する。
これに対し、S68の処理の結果、外気温度は所定の外気温度以下であると判断される場合には(S68:Yes)、後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されていると判断されるので、チェーンフラグ73gをオンして(S69)、この車輪状態判断処理を終了する。
次いで、図11を参照して、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理について説明する。図11は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置200の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整する処理である。なお、第2実施の形態における状態量判断処理および走行状態判断処理は、第1実施の形態で説明した状態量判断処理および走行状態判断処理と同様の処理なので説明を省略する。
CPU71は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理に関し、まず、チェーンフラグ73gがオンであるか否かを判断する(S71)、その結果、チェーンフラグ73gがオンであると判断される場合には(S71:Yes)、次にキャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S77)。S77の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S77:No)、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されている(ネガティブキャンバの付与が解除されている)ので、その後の処理をスキップしてこのキャンバ制御処理を終了する。一方、S77の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S77:Yes)、後輪2RL,2RRのキャンバ角は第1キャンバ角に調整されている(ネガティブキャンバが付与されている)ので、RLモータ44RL及びRRモータ44RRを作動させて、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S78)、キャンバフラグ73aをオフして(S79)、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S71の処理の結果、チェーンフラグ73gがオフであると判断される場合には(S71:No)、キャンバ角を調整できる後輪2RL,2RRにタイヤチェーンは装着されていないと判断されるため、次に状態量フラグ73bがオンであるか否かを判断する(S72)。S72の処理の結果、状態量フラグ73bがオンであると判断される場合には(S72:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S73)。
これに対し、S72の処理の結果、状態量フラグ73bがオフであると判断される場合には(S72:No)、次に走行状態フラグ73cがオンであるか否かを判断する(S74)。S74の処理の結果、走行状態フラグ73cがオンであると判断される場合には(S74:Yes)、S73の処理を実行する。これに対し、S74の処理の結果、走行状態フラグ73cがオフであると判断される場合には(S74:No)、上述したS77の処理を実行する。
次に、S73の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S73:Yes)、後輪2RL,2RRのキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されている(ネガティブキャンバが付与されている)ので、その後の処理をスキップしてこのキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S73の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S73:No)、後輪2RL,2RRのキャンバ角はまだ第1キャンバ角に調整されていないので、RLモータ44RL、RRモータ44RRを作動させて、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与すると共に(S75)、キャンバフラグ73aをオンして(S76)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されておらず、かつ、車両201の状態量が所定の条件を満たしている場合、即ち、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であり、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両201が加速、制動または旋回すると左右の後輪2RL,2RRがスリップする恐れがあると判断される場合には、左右の後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与することで、左右の後輪2RL,2RRに発生するキャンバスラストを利用して、車両201の走行安定性を確保することができる。
また、後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されておらず、かつ、車両201の走行状態が所定の直進状態である場合、即ち、車両201の走行速度が所定の速度以上であると共にステアリング63の操作量が所定の操作量以下であり、車両201が比較的高速で直進している場合には、左右の後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与することで、左右の後輪2RL,2RRの横剛性を利用して、車両201の直進安定性を確保することができる。
これらに対し、後輪2RL,2RRにタイヤチェーンが装着されている場合は、後輪2RL,2RRを第1キャンバ角に調整することを禁止することにより、後輪2RL,2RRとタイヤハウスとのクリアランスを十分確保できるため、装着されたタイヤチェーンが車両201のタイヤハウスに接触することが防止される。これにより、タイヤハウスの設計の自由度を確保できる。また、タイヤチェーンが偏摩耗することを防止して、タイヤチェーンの寿命を向上できる。
なお、図10に示すフローチャート(車輪状態判断処理)において、請求項1記載の車輪情報取得手段としてはS61,S62及びS63の処理が、非装着位置判断手段としてはS64の処理が、装着位置判断手段としてはS64の処理が、請求項3記載の装備判断手段としてはS66の処理がそれぞれ該当する。図11に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項3記載の調整停止手段としてはS71,S77及びS78の処理がそれぞれ該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記各実施の形態で説明した第1キャンバ角および第2キャンバ角の値は任意に設定することができる。
上記各実施の形態では、車輪状態判断処理において、各車軸の回転速度、車両1,201の上下Gおよび外気温度に基づいてタイヤチェーンの装着に関する情報を取得し、車輪2にタイヤチェーンが装着されているか否か、タイヤチェーンはいずれの車輪2に装着されているかについて判断する場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、各車軸の回転速度、車両1,201の上下Gおよび外気温度に代えて、他の情報に基づくことも当然可能である。他の情報としては、例えば、他の入出力装置90として例示した入出力装置により取得される情報であって、いずれの車輪2にタイヤチェーンが装着されたかを運転者等の入力操作によりCPU71に出力される情報、車輪2にタイヤチェーンが装着されたことを画像処理装置によって取得しCPU71に出力される画像情報が例示される。また、車両1,201の上下Gに代えて、サスペンションの振動や周波数に基づくことも当然可能である。
上記各実施の形態では、車両用制御装置100,200が適用される車両1,201が4輪駆動方式(第1実施の形態)又は前輪駆動方式(第2実施の形態)である場合について説明したが、これらに限定されるものでははく、後輪駆動方式の車両に適用することも可能である。
上記各実施の形態において、第1キャンバ状態では車輪2がマイナス方向の所定の角度に調整され車輪2にネガティブキャンバが付与される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、車輪2のキャンバ角をプラス方向の所定の角度に調整する(車輪2にポジティブキャンバを付与する)場合もある。この場合も車輪2に装着したタイヤチェーンがタイヤハウスに接触することが防止される。よって、タイヤハウスの設計の自由度を確保できると共に、タイヤチェーンが偏摩耗することを防止してタイヤチェーンの寿命を向上できる。また、積雪路面や凍結路面に対するタイヤチェーンの接地も安定化するため、車両の走行安定性を確保できる。
上記各実施の形態では、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量に基づいて、車両1,201の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、各ペダル61,62及びステアリング63の操作量に代えて、他の状態量に基づいて車両1,201の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断することは当然可能である。他の状態量としては、例えば、各ペダル61,62及びステアリング63の操作速度や操作加速度のように、運転者により操作される操作部材の状態を示すものでも良く、或いは、車両1,201自体の状態を示すものでも良い。車両1,201自体の状態を示すものとしては、車両1,201の前後G、横G、ヨーレート、ロール角などが例示される。
上記各実施の形態では、車両1,201の走行速度およびステアリング63の操作量に基づいて、車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ステアリング63の操作量のみに基づいて、車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断しても良い。また、ステアリング63の操作量に代えて、ステアリング63の操作速度や操作加速度のように、ステアリング63の操作状態に基づいて、車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断しても良く、或いは、車両1,201の横G、ヨーレートなどのように、車両1,201自体の状態量に基づいて、車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断しても良い。
また、車両1,201の走行速度およびステアリング63の操作量に代えて、他の情報に基づいて車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断することは当然可能である。他の情報としては、例えば、他の入出力装置90として例示したナビゲーション装置により取得される情報であって、車両1,201の現在位置が地図データの高速道路上や幹線道路上など所定の区間において車両1,201が直進すると判断される直線道路上に位置する場合などが例示される。この場合には、直線道路の先にカーブが存在したり右左折を必要とする道路状況において、車両1,201が旋回するたびにキャンバ角調整装置44,244を作動させてしまうことがなく、キャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。
上記各実施の形態では、車両1,201の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断する状態量判断処理において、アクセルペダル61の操作量、ブレーキペダル62の操作量およびステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断するための各操作量の判断基準を、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両1,201が加速、制動または旋回する場合に、車輪2,202がスリップする恐れがあると判断される限界値とする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、単に車両1,201の状態量(例えば、各ペダル61,62の操作量やステアリング63の操作量など)に基づいて設定しても良い。