以下、本発明に係る車両用制御装置を、車両1に搭載された車両用制御装置100に具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下の説明において参照する図面において、矢印U−Dは、車両1の上下方向を示し、矢印L−Rは車両1の左右方向、矢印F−Bは車両1の前後方向を示す。
先ず、本実施形態に係る車両1の概略構成について、図1を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、車両1は、車体フレームBFを備え、当該車体フレームBFには、複数(本実施形態では4輪)の車輪2が配設されている。又、車両1は、車輪駆動装置3と、懸架装置4と、操舵装置5と、を備えている。車輪駆動装置3は、車輪2の一部(後述する左前輪2FL、右前輪2FR)を回転駆動する。懸架装置4は、各車輪2を車体フレームBFに懸架する。懸架装置4の詳細については、図面を参照しつつ詳細に説明する。そして、操舵装置5は、車輪2の内の一部(後述する左前輪2FL、右前輪2FR)を操舵する。
図1に示すように、車輪2は、左前輪2FL、右前輪2FR、左後輪2RL、右後輪2RRを含む。左前輪2FL、右前輪2FRは、車両1の前方側(矢印F方向側)の左右に位置する。左後輪2RL、右後輪2RRは、車両1の後方側(矢印B方向側)の左右に位置する。
尚、本実施形態においては、左前輪2FL及び右前輪2FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成される。そして、左後輪2RL及び右後輪2RRは、車両1の走行に伴って従動される従動輪として構成される。更に、図1に示すように、本実施形態における車輪2は、左前輪2FL、右前輪2FR、左後輪2RL、右後輪2RRが全て同じ形状および特性に構成されている。又、各車輪2におけるトレッド幅(図1左右方向の寸法)も同一の幅に構成されている。
上述したように、車輪駆動装置3は、左前輪2FL、右前輪2FRを回転駆動するための装置である。後述するように、車輪駆動装置3は、電動モータ3Aにより構成される(図3参照)。当該電動モータ3Aは、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して、左前輪2FL、右前輪2FRに夫々接続されている(図1参照)。
運転者がアクセルペダル61を操作した場合、車輪駆動装置3は、左前輪2FL、右前輪2FRに対して、回転駆動力を付与する。これにより、左前輪2FL、右前輪2FRは、アクセルペダル61の操作量に応じて回転駆動する。尚、左前輪2FLと右前輪2FRの回転差は、デファレンシャルギヤにより吸収される。
そして、懸架装置4は、所謂、サスペンションとして機能し、路面から車輪2を介して車体フレームBFに伝わる振動を緩和する。各懸架装置4は、夫々、伸縮可能に構成されており、各車輪2に対応して配設されている(図1参照)。又、本実施形態においては、左後輪2RL及び右後輪2RRに配設された懸架装置4は、左後輪2RL、右後輪2RRのキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構として機能する。尚、懸架装置4の具体的構成については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
操舵装置5は、所謂、ラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成されている。当該操舵装置5は、運転者によるステアリング63の操作を、左前輪2FL、右前輪2FRに伝えて操舵する。
当該操舵装置5において、運転者によるステアリング63の操作(回転)は、まず、ステアリングコラム51を介してユニバーサルジョイント52に伝達される。その後、ステアリング63の操作は、ユニバーサルジョイント52により角度を変えられつつ、ステアリングボックス53のピニオン53Aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53Aに伝達された回転運動は、ラック53Bの直線運動に変換される。ここで、ラック53Bの両端には、タイロッド54が接続されている。従って、タイロッド54は、ラック53Bの直線運動に伴って移動し、ナックル55を押し引きする。従って、車両1は、右前輪2FR及び左前輪2FLに対して、ステアリング63の操作に応じた所定の舵角を付与し得る。
そして、車両1は、アクセルペダル61、ブレーキペダル62、ステアリング63を有している。アクセルペダル61、ブレーキペダル62、ステアリング63は、運転者により操作される操作部材である。アクセルペダル61、ブレーキペダル62は、当該アクセルペダル61、ブレーキペダル62の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度等)に応じて、車両1の走行速度や制動力等を決定する。そして、車輪駆動装置3は、アクセルペダル61等の操作状態により決定された走行速度等に応じて駆動制御される。ステアリング63は、当該ステアリング63の操作状態(ステア角、ステア角速度等)に応じて、車両1の操舵角等を決定する。操舵装置5は、ステアリング63の操作状態に応じて、左前輪2FL、右前輪2FRを操舵する。
車両用制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、アクセルペダル61、ブレーキペダル62やステアリング63の操作状態に応じてキャンバ角調整装置44(図3参照)を作動制御する。
続いて、本実施形態に係る懸架装置4の構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。上述したように、左後輪2RL及び右後輪2RRに対応する懸架装置4は、サスペンションとして機能すると共に、キャンバ角調整機構としても機能する。一方、左前輪2FL及び右前輪2FRに対応する懸架装置4は、サスペンションとしてのみ機能する。
ここで、懸架装置4において、サスペンションとして機能する構成については、周知の構成と同様であるので、その説明を省略し、キャンバ角調整機構として機能する構成のみについて説明する。即ち、左後輪2RL及び右後輪2RRに係る懸架装置4の構成について、右後輪2RRに対応する懸架装置4を例示して説明する。尚、左後輪2RLに対応する懸架装置4は、右後輪2RRの懸架装置と同様の構成である。
図2は、車両1前方側から後方側を見た場合の右後輪2RRに対応する懸架装置4を示している。図2に示すように、懸架装置4は、ナックル43と、右後輪モータ44RRと、ウォームホイール45及びアーム46と、可動プレート47とを有している。ナックル43は、ストラット41及びロアアーム42を介して車体フレームBFに支持されている。右後輪モータ44RRは、右後輪2RRのキャンバ角の調整に要する駆動力を発生する。ウォームホイール45及びアーム46は、右後輪モータ44RRに生じた駆動力を伝達する。可動プレート47は、ナックル43に対して揺動可能に取り付けられており、ウォームホイール45及びアーム46から伝達された右後輪モータ44RRの駆動力により、揺動駆動される。
ナックル43は、車輪2を操舵可能に支持している。図2に示すように、ナックル43の上端(図2中、上側)は、ストラット41と連結されており、ナックル43の下端(図2中、下側)は、ボールジョイントを介して、ロアアーム42と連結されている。
右後輪モータ44RRは、DCモータにより構成され、可動プレート47を揺動駆動するための駆動力を付与する。当該右後輪モータ44RRの出力軸44Aにはウォーム(図示せず)が形成されている。
ウォームホイール45は、右後輪モータ44RRの出力軸44Aに形成されたウォームと噛み合い、当該ウォームと共に食い違い軸歯車対を構成している。当該ウォームホイール45は、右後輪モータ44RRの駆動力をアーム46に伝達する。
アーム46は、ウォームホイール45から伝達される右後輪モータ44RRの駆動力を可動プレート47に伝達する。図2に示すように、当該アーム46の一端(図2中、右側)は、第1連結軸48を介して、ウォームホイール45の回転軸45Aから偏心した位置に連結されている。一方、当該アーム46の他端(図2中、左側)は、第2連結軸49を介して、可動プレート47の上端に連結されている。
可動プレート47は、車輪2を回転可能に支持する。上述したように、可動プレート47の上端(図2中、上側)は、アーム46に連結されており、可動プレート47の下端(図2中、下側)は、キャンバ軸50を介して、ナックル43に揺動可能に軸支されている。
当該懸架装置4において、ウォームホイール45は、右後輪モータ44RRの駆動に伴って回転する。そして、ウォームホイール45の回転運動は、アーム46の直線運動に変換される。アーム46が直線運動することにより、可動プレート47は、キャンバ軸50を揺動軸として揺動駆動する。この結果、右後輪2RRのキャンバ角は、右後輪モータ44RRの駆動に伴って、所望の角度に調整される。
本実施形態においては、右後輪2RRの懸架装置4は、ウォームホイール45を回転させ、第1連結軸48、第2連結軸49及びウォームホイール45の回転軸45Aの位置関係を変更することで、右後輪2RRのキャンバ角を所定の状態(第1キャンバ状態及び第2キャンバ状態)に調整し得る。
第1キャンバ状態は、車体フレームBFから車輪2に向かう方向(矢印R方向)に向かって、第1連結軸48、回転軸45A、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する状態をいう。当該第1キャンバ状態では、車輪2(例えば、右後輪2RR)のキャンバ角は、マイナス方向の所定の角度(本実施形態では−3°)に調整される。ここで、第1キャンバ状態におけるキャンバ角を「第1キャンバ角」といい、第1キャンバ状態を「キャンバがオン」という。
そして、第2キャンバ状態は、車両1が通常状態(即ち、通常走行時)にある場合の車輪2に対するキャンバ付与の状態をいう。本実施形態において、第2キャンバ状態は、車体フレームBFから車輪2に向かう方向(矢印R方向)に向かって、回転軸45A、第1連結軸48、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する状態をいう。この場合、図2に示すように、車輪2(例えば、右後輪2RR)のキャンバ角は、0°に調整される。即ち、第1キャンバ状態は、第2キャンバ状態に対して、マイナス方向に所定角度のキャンバ(即ち、ネガティブキャンバ)が付与された状態となる。ここで、第2キャンバ状態におけるキャンバ角を「第2キャンバ角」といい、第2キャンバ状態を「キャンバがオフ」という。
この点、本実施形態においては、第2キャンバ角を0°としていたが、この態様に限定されるものではない。即ち、車両1が通常状態にある場合に、第1キャンバ角よりも小さなキャンバ角で、ネガティブキャンバが付与されていれば、この状態が第2キャンバ状態に相当し、この時のキャンバ角が第2キャンバ角となることはもちろんである。
尚、本実施形態に係る車両1において、左後輪2RLに係る懸架装置4は、右後輪モータ44RRが左後輪モータ44RLである点、左後輪2RLのキャンバ角を調整する点を除き、上述した右後輪2RRに係る懸架装置4と同様の構成である。従って、当該車両1は、右後輪2RR及び左後輪2RLの懸架装置4を制御することで、右後輪2RR及び左後輪2RLを、第1キャンバ状態及び第2キャンバ状態に調整し得る。即ち、当該車両1は、後輪(即ち、右後輪2RR、左後輪2RL)に対して、ネガティブキャンバを付与し得る。
又、本実施形態に係る車両1においては、車輪2のキャンバ角が調整された状態(即ち、第1キャンバ状態又は第2キャンバ状態)であれば、回転軸45A、第1連結軸48、第2連結軸49は、左右方法(矢印R、L方向)に直線状に並ぶ。この場合、車輪2に外力が加わったとしても、アーム46を回動させる方向の力は発生することはない。従って、当該車両1は、車輪2に外力が加わった場合であっても、車輪2(右後輪2RR、左後輪2RL)のキャンバ角を維持し得る。
次に、車両1に搭載される車両用制御装置100について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図3に示すように、車両用制御装置100は、CPU71、ROM72及びRAM73を備えている。CPU71、ROM72、RAM73は、バスライン74を介して、入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75は、各種周辺装置(例えば、車輪駆動装置3、キャンバ角調整装置44等)と接続されている。
CPU71は、車両用制御装置100による制御の中枢を担う中央演算処理装置である。当該CPU71は、ROM72に格納されている制御プログラム(例えば、図4〜図9参照)を実行することにより、バスライン74等を介して接続された各種周辺装置を制御する。
ROM72は、制御プログラム(例えば、図4〜図9参照)や固定値データ)等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。又、当該ROM72は、限界キャンバ付与基準データ72A、第1安定キャンバ付与基準データ72B、第2安定キャンバ付与基準データ72C、タイヤ温度に関する基準値データを記憶している。
限界キャンバ付与基準データ72Aは、左後輪2RL、右後輪2RRに対して、後述する限界キャンバを付与するか否かを決定する際の基準を示す。当該限界キャンバ付与基準データ72Aは、後述する各種センサ(例えば、アクセルペダルセンサ装置61Aやヨーレートセンサ装置81)の数値により構成され、走行する車両1が挙動限界にあることを意味する。当該限界キャンバ付与基準データ72Aは、アクセルペダルセンサ装置61A、ブレーキペダルセンサ装置62A、ステアリングセンサ装置63A、ヨーレートセンサ装置81、加速度センサ装置80の値に係る基準値を含んでいる。尚、本実施形態において、限界キャンバは、車両1の挙動限界における走行安定性を高めるためのキャンバを意味する。
第1安定キャンバ付与基準データ72B、第2安定キャンバ付与基準データ72Cは、左後輪2RL、右後輪2RRに対して、後述する安定キャンバを付与するか否かを決定する際の基準を示す。当該第1安定キャンバ付与基準データ72B、第2安定キャンバ付与基準データ72Cは、各種センサ(例えば、ステアリングセンサ装置63A等)の数値により構成され、当該車両1が所定速度以上で略直進している状態であることを意味する。尚、本実施形態において、安定キャンバは、車両1が所定速度以上で略直進している場合における快適性を高めるためのキャンバを意味する。
そして、第1安定キャンバ付与基準データ72Bは、車両1の走行速度、ステアリング63の操作量を、基準として含んでいる。当該第1安定キャンバ付与基準データ72Bは、後述する安定状態判断処理(S8)において、安定キャンバを付与するか否かを判断する際に参照される。
第2安定キャンバ付与基準データ72Cは、第1安定キャンバ付与基準データ72Bと同様に、車両1の走行速度、ステアリング63の操作量を、基準として含んでいる。当該第2安定キャンバ付与基準データにおける車両1の走行速度は、第1安定キャンバ付与基準データよりも大きく設定されている。又、第2安定キャンバ付与基準データ72Cにおけるステアリング63の操作量は、第1安定キャンバ付与基準データ72Bにおけるステアリング63の操作量よりも小さく設定されている。即ち、第2安定キャンバ付与基準データ72Cは、第1安定キャンバ付与基準データ72Bに対して、安定キャンバを付与する基準として、高い基準を示す。そして、第2安定キャンバ付与基準データ72Cは、後述する安定状態判断処理(S57)において、安定キャンバを付与するか否かを判断する際に参照される。
そして、RAM73は、書き換え可能なメモリであり、制御プログラムの実行時に各種演算結果を一時的に記憶する。又、RAM73は、後述する外部温度センサ装置85により取得された外部温度を格納する。RAM73に格納された外部温度は、後述するタイヤ温度推定処理(S2)において、タイヤ温度を推定する際に参照される。
図3に示すように、RAM73には、キャンバフラグ73A、操作状態フラグ73B、車両状態フラグ73C、安定状態フラグ73D、偏摩耗荷重フラグ73Eが設けられている。これらの各フラグは、後述する制御プログラムを実行する際に適宜参照される。
キャンバフラグ73Aは、車輪2(左後輪2RL及び右後輪2RR)が第1キャンバ状態にあるか否かを示すフラグである。キャンバフラグ73Aがセットされている場合に、CPU71は、後輪(左後輪2RL及び右後輪2RR)のキャンバ角が第1キャンバ角に調整され、ネガティブキャンバが付与された状態(即ち、キャンバがオンの状態)にあると判断する。
操作状態フラグ73Bは、車両1に対する操作が所定の条件を満たすか否かを示すフラグであり、後述する操作状態判断処理(図5参照)の実行時に切り替えられる。尚、操作状態フラグ73Bは、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合にセットされる。
車両状態フラグ73Cは、走行中における車両1の状態が挙動限界にあるか否かを示すフラグであり、後述する車両状態判断処理(図6参照)の実行時に切り換えられる。尚、車両状態フラグ73Cは、ヨーレート又は横Gが所定の基準値以上である場合にセットされる。
安定状態フラグ73Dは、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを示すフラグであり、後述する安定状態判断処理(図7参照)の実行時に切り替えられる。安定状態フラグ73Dは、車両1の走行速度が所定の走行速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合にセットされる。
偏摩耗荷重フラグ73Eは、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行する場合に、車輪2の接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある接地荷重(以下「偏摩耗荷重」と称す)であるか否かを示すフラグである。当該偏摩耗荷重フラグ73Eは、後述する偏摩耗荷重判断処理(図9参照)の実行時に切り替えられる。
車輪駆動装置3は、入出力ポート75に接続されており、左前輪2FL、右前輪2FR(図1参照)を回転駆動する。当該車輪駆動装置3は、電動モータ3Aと、駆動制御回路(図示せず)とを有している。電動モータ3Aは、左前輪2FL、右前輪2FRに回転駆動力を付与する駆動源である。駆動制御回路は、CPU71からの指示に基づいて、電動モータ3Aを駆動制御する。
尚、本発明に係る車輪駆動装置3の駆動源は、電動モータ3Aに限定されるものではなく、他の駆動源を採用することも可能である。例えば、他の駆動源として、油圧モータやエンジン等を用いることも可能である。
キャンバ角調整装置44は、入出力ポート75に接続されており、車輪2(左後輪2RL及び右後輪2RR)のキャンバ角を調整する。キャンバ角調整装置44は、左後輪モータ44RL、右後輪モータ44RR、駆動制御回路(図示せず)を有している。上述したように、右後輪モータ44RRは、右後輪2RRに係る懸架装置4の可動プレート47(図2参照)を揺動させる駆動力を付与する。そして、左後輪モータ44RLは、左後輪2RLに係る懸架装置4の可動プレート47を揺動させる駆動力を付与する。そして、駆動制御回路は、CPU71からの指示に基づいて、左後輪モータ44RL、右後輪モータ44RRを駆動制御する。
加速度センサ装置80は、入出力ポート75に接続されており、車両1の加速度を検出し、検出結果をCPU71に出力する。加速度センサ装置80は、前後方向加速度センサ80Aと、左右方向加速度センサ80Bと、出力回路(図示せず)を有している。当該出力回路は、前後方向加速度センサ80A、左右方向加速度センサ80Bの検出結果を処理して、CPU71に対して出力する。
前後方向加速度センサ80Aは、車両1の前後方向(図1中、矢印F−B方向)に関する加速度を検出する。即ち、前後方向加速度センサ80Aは、所謂、前後Gを検出する。そして、左右方向加速度センサ80Bは、車両1の左右方向(図1中、矢印L−R方向)に関する加速度を検出する。即ち、左右方向加速度センサ80Bは、所謂、横Gを検出する。尚、本実施形態では、前後方向加速度センサ80A、左右方向加速度センサ80Bは、圧電素子を利用した圧電型センサによって構成される。
又、CPU71は、加速度センサ装置80から取得した前後方向加速度センサ80A、左右方向加速度センサ80Bの検出結果(前後G、横G)を時間積分することで、2方向(前後方向及び左右方向)の速度をそれぞれ算出する。そして、CPU71は、2方向(前後方向及び左右方向)の速度成分を合成することにより、車両1の走行速度を取得する。
ヨーレートセンサ装置81は、入出力ポート75に接続されており、車両1のヨーレートを検出し、当該検出結果をCPU71に出力する。ヨーレートセンサ装置81は、ヨーレートセンサ81Aと、出力回路(図示せず)を有している。ヨーレートセンサ81Aは、車両1の重心を通る鉛直軸(図1中、矢印U−D方向軸)回りの車両1の回転角速度を検出する。そして、出力回路は、ヨーレートセンサ81Aの検出結果を処理し、CPU71に出力する。
そして、ロール角センサ装置82は、入出力ポート75に接続されており、車両1のロール角を検出し、当該検出結果をCPU71に出力する。ロール角センサ装置82は、ロール角センサ82Aと、出力回路(図示せず)とを有している。ロール角センサ82Aは、車両1の重心を通る前後軸(図1中、矢印F−B方向軸)回りの車両1の回転角を検出する。そして、出力回路は、ロール角センサ82Aの検出結果を処理し、CPU71に出力する。
本実施形態において、ヨーレートセンサ81A及びロール角センサ82Aは、光学式ジャイロセンサにより構成されている。そして、ヨーレートセンサ81A、ロール角センサ82Aは、サニャック効果により回転角速度及び回転角を検出する。
この点、本発明においては、ヨーレートセンサ81A及びロール角センサ82Aとして、他の種類のジャイロセンサを採用してもよい。例えば、ヨーレートセンサ81A、ロール角センサ82Aは、機械式ジャイロセンサや流体式ジャイロセンサ等のジャイロセンサを用いて構成することもできる。
サスストロークセンサ装置83は、入出力ポート75に接続されており、左後輪2RL及び右後輪モータ44RRに係る懸架装置4の伸縮量を検出し、検出結果をCPU71に出力する。サスストロークセンサ装置83は、左リアサスストロークセンサ83RLと、右リアサスストロークセンサ83RRと、出力回路(図示せず)を有している。左リアサスストロークセンサ83RLは、左後輪2RLに係る懸架装置4の伸縮量を検出する。右リアサスストロークセンサ83RRは、右後輪2RRに係る懸架装置4の伸縮量を検出する。そして、出力回路は、左リアサスストロークセンサ83RL、右リアサスストロークセンサ83RRの検出結果を処理し、CPU71に出力する。
尚、本実施形態では、左リアサスストロークセンサ83RL、右リアサスストロークセンサ83RRは、ひずみゲージとして構成されており、各懸架装置4のショックアブソーバ(図示せず)に夫々配設されている。
そして、CPU71は、サスストロークセンサ装置83から入力された左リアサスストロークセンサ83RL、右リアサスストロークセンサ83RRの検出結果(伸縮量)に基づいて、各車輪2の接地荷重を取得する。ここで、車輪2の接地荷重は、懸架装置4の伸縮量と比例関係にある。従って、懸架装置4の伸縮量をX、懸架装置4の減衰定数をkとすると、車輪2の接地荷重Fは、F=kXとなる。
接地荷重センサ装置84は、入出力ポート75に接続されており、車輪2(右後輪2RR、左後輪2RL)の接地荷重を検出し、検出結果をCPU71に出力する。接地荷重センサ装置84は、左後輪接地荷重センサ84RLと、右後輪接地荷重センサ84RRと、出力回路(図示せず)を有している。左後輪接地荷重センサ84RLは、左後輪2RLの接地荷重を検出する。右後輪接地荷重センサ84RRは、右後輪2RRの接地荷重を検出する。そして、出力回路は、左後輪接地荷重センサ84RL、右後輪接地荷重センサ84RRの検出結果を処理し、CPU71に出力する。
尚、本実施形態では、左後輪接地荷重センサ84RL、右後輪接地荷重センサ84RRは、ピエゾ抵抗型の荷重センサとして構成されており、各懸架装置4のショックアブソーバ(図示せず)に夫々配設されている。
アクセルペダルセンサ装置61Aは、入出力ポート75に接続されており、アクセルペダル61の操作量を検出し、検出結果をCPU71に出力する。アクセルペダルセンサ装置61Aは、角度センサ(図示せず)と、出力回路(図示せず)とを有している。角度センサは、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する。出力回路は、角度センサの検出結果を処理し、CPU71に出力する。
ブレーキペダルセンサ装置62Aは、入出力ポート75に接続されており、ブレーキペダル62の操作量を検出し、検出結果をCPU71に出力する。ブレーキペダルセンサ装置62Aは、角度センサ(図示せず)と、出力回路(図示せず)とを有している。角度センサは、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する。出力回路は、角度センサの検出結果を処理し、CPU71に出力する。
ステアリングセンサ装置63Aは、入出力ポート75に接続されており、ステアリング63の操作量を検出し、検出結果をCPU71に出力する。ステアリングセンサ装置63Aは、角度センサ(図示せず)と、出力回路(図示せず)とを有している。角度センサは、ステアリング63のステア角を検出する。出力回路は、角度センサの検出結果を処理し、CPU71に出力する。
尚、本実施形態では、各角度センサは、電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータにより構成されている。又、CPU71は、アクセルペダルセンサ装置61A、ブレーキペダルセンサ装置62A、ステアリングセンサ装置63Aから入力された各角度センサの検出結果(操作量)を時間微分することで、アクセルペダル61、ブレーキペダル62の踏み込み速度及びステアリング63のステア角速度を取得する。更に、CPU71は、取得したステアリング63のステア角速度を時間微分することで、ステアリング63のステア角加速度を取得する。
外部温度センサ装置85は、入出力ポート75に接続されており、車両1の周囲の外気温を検出し、検出結果をCPU71に出力する。外部温度センサ装置85により検出された外気温は、CPU71を介して、RAM73に格納される。当該外気温は、後述するタイヤ温度推定処理(S2)において、タイヤ温度を推定する際に参照される。
図3に示すように、入出力ポート75には、他の入出力装置90が接続されている。当該他の入出力装置90としては、ナビゲーション装置等が例示される。ナビゲーション装置は、GPSを利用して車両1の現在位置を取得し、その取得した車両1の現在位置を、道路に関する情報が記憶された地図データに対応付け、表示等を行うことで、車両1の運行に関するナビゲーション等を行う。
次に、本実施形態に係る車両用制御装置100により実行されるメイン制御プログラムについて、図面を参照しつつ説明する。図4に示すように、先ず、CPU71は、図3に示す各種センサ(アクセルペダルセンサ装置61A等)から検出結果を取得し、RAM73に格納する。各種センサの検出結果をRAM73に格納すると、CPU71は、S2に処理を移行する。
S2では、CPU71は、タイヤ温度推定処理を実行する。タイヤ温度推定処理(S2)においては、CPU71は、S1で取得した各種センサの検出結果を用いて、車輪2に係るタイヤの表面温度(以下、タイヤ温度という)を推定して算出する。
ここで、タイヤ温度推定処理(S2)における具体的な処理内容について説明する。先ず、CPU71は、接地荷重センサ装置84により検出した車輪2の接地荷重と、加速度センサ装置80により検出した横Gの値をRAM73から取得し、車輪2の接地荷重、横G値に基づいて、タイヤ力を推定して算出する。又、CPU71は、加速度センサ装置80、ステアリングセンサ装置63Aの検出結果(即ち、車両1の走行速度やステアリング63のステア角等)に基づいて、車輪2のスリップ角を推定して算出する。
そして、CPU71は、算出したタイヤ力、スリップ角と共に、外部温度センサ装置85により検出した外気温と、加速度センサ装置80検出結果に基づき算出した車両1の走行速度を、RAM73から取得する。その後、CPU71は、タイヤ力、スリップ角、走行速度、外気温と、下記(1)の式を用いて、タイヤ温度Tを推定する。
タイヤ温度Tは、
(dT/dt)=(q/W)−κ(T−T0)…(1)
により、推定することができる。ここで、
T:タイヤ温度
T0:外気温(路面温度)
W:タイヤの熱容量
q:熱流速
である。
そして、上記(1)の式を構成する熱容量qは、
q=FVsinα…(2)
を用いて算出することができる。ここで、上記(2)の式において、
F:タイヤの合力
V:車両1の走行速度
α:コンバインドスリップ率
である。タイヤの合力Fは、各車輪2におけるタイヤ力により求められる。従って、CPU71は、推定したタイヤ力を用いて、タイヤの合力Fを求め得る。又、コンバインドスリップ率αは、各車輪2におけるスリップ角により求められる。従って、CPU71は、推定した各車輪2のスリップ角を用いて、コンバインドスリップ率αを求め得る。尚、上記(1)、(2)の式においては、外部温度センサ装置85により検出された外気温は、車両1が走行する路面温度と略同じ温度であるものとする。
上述したセンサ群(例えば、ステアリングセンサ装置63A等)の検出結果と、上記(1)、(2)の式を用いることにより、CPU71は、車両1におけるタイヤ温度を推定し得る。推定したタイヤ温度をRAM73に格納した後、CPU71は、S3に処理を移行する。
S3においては、CPU71は、操作状態判断処理を実行する。操作状態判断処理(S3)では、CPU71は、後述する操作状態判断処理プログラム(図5参照)を実行することにより、車両1に対する操作に基づいて、当該車両1が挙動限界にあるか否かを判断し、操作状態フラグ73Bを切り替える。操作状態判断処理(S3)の詳細については、後に図面を参照しつつ説明する。操作状態判断処理を終了すると、CPU71は、S4に処理を移行する。
S4に移行すると、CPU71は、車両状態判断処理を実行する。車両状態判断処理(S4)では、CPU71は、後述する車両状態判断処理プログラム(図6参照)を実行することにより、ヨーレート、横Gに基づいて、当該車両1が挙動限界にあるか否かを判断し、車両状態フラグ73Cを切り替える。車両状態判断処理(S4)の詳細については、後に図面を参照しつつ説明する。車両状態判断処理(S4)を終了すると、CPU71は、S5に処理を移行する。
S5では、CPU71は、操作状態フラグ73B、車両状態フラグ73Cの状態に基づいて、限界キャンバが必要であるか否かを判断する。即ち、CPU71は、操作状態フラグ73B、車両状態フラグ73Cの状態に基づいて、当該車両1が挙動限界にあるか否かを判断する。具体的には、CPU71は、操作状態フラグ73B、車両状態フラグ73Cの何れか一方がセットされていれば、限界キャンバの付与が必要であると判断する。限界キャンバが必要である場合(S5:YES)、CPU71は、S6に処理を移行する。一方、限界キャンバが不要である場合(S5:NO)、CPU71は、S8に処理を移行する。
S6では、CPU71は、キャンバフラグ73Aに基づいて、左後輪2RL及び右後輪2RRにネガティブキャンバが付与されているか(即ち、キャンバがオンであるか)否かを判断する。キャンバフラグ73Aがセットされ、ネガティブキャンバが付与されている場合(S6:YES)、CPU71は、そのまま、当該メイン制御プログラムを終了する。一方、キャンバフラグ73Aがクリアされており、第2キャンバ状態(キャンバ角が0度)である場合(S6:NO)、CPU71は、S7に処理を移行する。
S7に移行すると、CPU71は、キャンバ角調整装置44を制御し、左後輪2RL及び右後輪2RRにネガティブキャンバ(即ち、限界キャンバ)を付与する。即ち、CPU71は、左後輪2RL及び右後輪2RRを、第2キャンバ状態から第1キャンバ状態に変更する。この時、CPU71は、キャンバフラグ73Aをセットする。ネガティブキャンバを付与した後、CPU71は、当該メイン制御プログラムを終了する。
S8においては、CPU71は、安定状態判断処理を行う。安定状態判断処理(S8)では、CPU71は、走行速度、ステアリング63の操作量と、第1安定キャンバ付与基準データ72Bとの比較結果に基づいて、安定キャンバが必要な走行状態であるか否かを判断し、安定状態フラグ73Dを切り替える。当該安定状態判断処理では、CPU71は、後述する安定状態判断処理プログラムを実行する。安定状態判断処理の詳細については、後に図面を参照しつつ説明する。安定状態判断処理(S8)を終了すると、CPU71は、S9に処理を移行する。
S9では、CPU71は、安定状態フラグ73Dの状態に基づいて、安定キャンバが必要であるか否かを判断する。即ち、CPU71は、安定状態フラグ73Dの状態に基づいて、当該車両1が所定速度以上で略直進走行しているか否かを判断する。具体的には、CPU71は、安定状態フラグ73Dがセットされていれば、安定キャンバの付与が必要であると判断する。安定キャンバが必要である場合(S9:YES)、CPU71は、S10に処理を移行する。一方、安定キャンバが不要である場合(S9:NO)、CPU71は、S11に処理を移行する。
S10に移行すると、CPU71は、安定キャンバ処理を実行する。安定キャンバ処理(S10)では、CPU71は、後述する安定キャンバ処理プログラムを実行する。即ち、CPU71は、車輪2の荷重が偏摩耗荷重であるか否か、及び、車輪2のタイヤ温度が高温であるか否か等を判断し、所定の条件を満たしている場合に、安定キャンバを付与する。又、所定の場合、CPU71は、第1安定キャンバ付与基準データ72Bから第2安定キャンバ付与基準データ72Cに変更して、安定キャンバの付与に関する判断を再び行う。安定キャンバ処理(S10)の詳細については、後に図面を参照しつつ説明する。安定キャンバ処理(S10)を終了すると、CPU71は、メイン制御プログラムを終了する。
S11では、CPU71は、S6と同様に、キャンバフラグ73Aに基づいて、左後輪2RL及び右後輪2RRにネガティブキャンバが付与されているか否かを判断する。ネガティブキャンバが付与されている場合(S11:YES)、CPU71は、S12に処理を移行する。一方、第2キャンバ状態(キャンバ角が0度)である場合(S11:NO)、CPU71は、そのまま、当該メイン制御プログラムを終了する。
S12においては、CPU71は、キャンバ角調整装置44を制御し、左後輪2RL及び右後輪2RRを、第1キャンバ状態から第2キャンバ状態に変更する。この時、CPU71は、キャンバフラグ73Aをクリアする。左後輪2RL及び右後輪2RRのキャンバ角を0度に調整した後、CPU71は、当該メイン制御プログラムを終了する。
続いて、操作状態判断処理(S3)で実行される操作状態判断処理プログラムについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。操作状態判断処理(S3)に移行すると、CPU71は、先ず、アクセルペダルセンサ装置61Aにより検出されたアクセルペダル61の操作量を、RAM73から取得する(S21)。
その後、S22において、CPU71は、ブレーキペダルセンサ装置62Aにより検出されたブレーキペダル62の操作量を取得し、ステアリングセンサ装置63Aにより検出されたステアリング63の操作を取得する(S23)。アクセルペダル61、ブレーキペダル62、ステアリング63の操作量を取得した後、CPU71は、S24に処理を移行する。
S24では、CPU71は、S21〜S23で取得したアクセルペダル61、ブレーキペダル62、ステアリング63の操作量と、限界キャンバ付与基準データ72Aを構成するアクセルペダル61、ブレーキペダル62、ステアリング63の操作量に関する基準値を比較する。そして、CPU71は、アクセルペダル61、ブレーキペダル62、ステアリング63の操作量の内、少なくとも一の操作量が基準値を超えているか否かを判断する。基準値を超える操作量が存在する場合(S24:YES)、CPU71は、S25に処理を移行する。一方、基準値を超える操作量が存在しない場合(S24:NO)、CPU71は、S26に処理を移行する。
S25においては、CPU71は、基準値を超える操作量に係る操作によって、車両1が挙動限界にあると判断し、操作状態フラグ73Bをセットする。操作状態フラグ73Bをセットした後、CPU71は、操作状態判断処理プログラムを終了し、メイン制御プログラムのS4に処理を移行する。
S26では、CPU71は、操作状態フラグ73Bをクリアする。操作状態フラグ73Bをクリアした後、CPU71は、操作状態判断処理プログラムを終了し、メイン制御プログラムのS4に処理を移行する。
次に、車両状態判断処理(S4)で実行される車両状態判断処理プログラムについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。車両状態判断処理(S4)に移行すると、CPU71は、ヨーレートセンサ装置81により検出されたヨーレートを、RAM73から取得する(S31)。ヨーレートを取得した後、CPU71は、S32に処理を移行する。
S32では、CPU71は、取得したヨーレートと、限界キャンバ付与基準データ72Aを構成するヨーレートに関する基準値を比較する。そして、CPU71は、ヨーレートが基準値以上であるか否かを判断する。取得したヨーレートが基準値以上である場合(S32:YES)、CPU71は、車両1の鉛直軸回りの回転角速度が基準を超え、挙動限界にあると判断し、S36に処理を移行する。一方、取得したヨーレートが基準値未満である場合(S32:NO)、CPU71は、S33に処理を移行する。
S33に移行すると、CPU71は、加速度センサ装置80により検出された横Gを、RAM73から取得する。横Gの値を取得した後、CPU71は、S34に処理を移行する。
S34では、CPU71は、取得した横Gの値と、限界キャンバ付与基準データ72Aを構成する横Gに関する基準値を比較する。そして、CPU71は、取得した横Gが基準値以上であるか否かを判断する。取得した横Gが基準値以上である場合(S34:YES)、CPU71は、車両1が挙動限界にあると判断し、S36に処理を移行する。一方、取得した横Gが基準値未満である場合(S34:NO)、CPU71は、S35に処理を移行する。
S35では、CPU71は、ヨーレート、横Gが何れも基準値未満であることに基づいて、当該車両1が挙動限界にないと判断し、車両状態フラグ73Cをクリアする。車両状態フラグ73Cをクリアした後、CPU71は、車両状態判断処理プログラムを終了し、メイン制御プログラムのS5に処理を移行する。
S36においては、CPU71は、基準値を超えるヨーレート又は横Gに基づいて、車両1の挙動限界にあると判断し、車両状態フラグ73Cをセットする。車両状態フラグ73Cをセットした後、CPU71は、車両状態判断処理プログラムを終了し、メイン制御プログラムのS5に処理を移行する。
続いて、安定状態判断処理(S8、S57)で実行される安定状態判断処理プログラムについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。安定状態判断処理(S8、S57)に移行すると、CPU71は、先ず、加速度センサ装置80の検出結果から算出した車両1の走行速度を、RAM73から取得する(S41)。走行速度を取得した後、CPU71は、S42に処理を移行する。
S42においては、CPU71は、取得した走行速度が安定キャンバ付与基準データを構成する走行速度の基準値以上であるか否かを判断する。ここで、安定キャンバ付与基準データは、S8の場合は「第1安定キャンバ付与基準データ72B」を意味し、S57の場合は「第2安定キャンバ付与基準データ72C」を意味する。取得した走行速度が基準値以上である場合(S42:YES)、CPU71は、S43に処理を移行する。一方、取得した走行速度が基準値未満である場合(S42:NO)、CPU71は、S46に処理を移行する。
S43では、CPU71は、ステアリングセンサ装置63Aにより検出されたステアリング63の操作量を、RAM73から取得する。ステアリング63の操作量を取得した後、CPU71は、S44に処理を移行する。
S44に移行すると、CPU71は、取得したステアリング63の操作量が安定キャンバ付与基準データを構成するステアリング63の操作量に係る基準値以下であるか否かを判断する。この場合の安定キャンバ付与基準データも、S8の場合は「第1安定キャンバ付与基準データ72B」を意味し、S57の場合は「第2安定キャンバ付与基準データ72C」を意味する。取得したステアリング63の操作量が基準値以下である場合(S44:YES)、CPU71は、S45に処理を移行する。一方、取得したステアリング63の操作量が基準値よりも大きい場合(S44:NO)、CPU71は、S46に処理を移行する。
S45においては、CPU71は、車両1が所定以上の走行速度で略直進走行を行っており、安定キャンバが必要な状態であると判断し、安定状態フラグ73Dをセットする。安定状態フラグ73Dをセットした後、CPU71は、安定状態判断処理プログラムを終了する。
S46に移行すると、CPU71は、安定状態フラグ73Dをクリアする。安定状態フラグ73Dをクリアした後、CPU71は、安定状態判断処理プログラムを終了する。
次に、安定キャンバ処理(S10)で実行される安定キャンバ処理プログラムについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。安定キャンバ処理(S10)に移行すると、CPU71は、先ず、偏摩耗荷重判断処理を実行する(S51)。偏摩耗荷重判断処理では、CPU71は、後述する偏摩耗荷重判断処理プログラムを実行することにより、走行速度や各種センサから取得した検出結果に基づいて、車輪2に偏摩耗荷重がかかっているか否かを判断し、偏摩耗荷重フラグ73Eを切り替える。偏摩耗荷重判断処理(S51)の詳細については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。偏摩耗荷重判断処理(S51)を終了すると、CPU71は、S52に処理を移行する。
S52においては、CPU71は、車輪2に偏摩耗荷重かかかっているか否かを判断する。具体的には、CPU71は、偏摩耗荷重フラグ73Eがセットされているか否かに基づいて、当該判断を行う。偏摩耗荷重フラグ73Eがセットされている場合(S52:YES)、CPU71は、S53に処理を移行する。一方、偏摩耗荷重フラグ73Eがクリアされている場合(S52:NO)、CPU71は、S54に処理を移行する。
S53に移行すると、CPU71は、S12と同様に、左後輪2RL及び右後輪2RRを、第1キャンバ状態から第2キャンバ状態に変更する。この時、CPU71は、キャンバフラグ73Aをクリアする。左後輪2RL及び右後輪2RRのキャンバ角を0度に調整した後、CPU71は、当該安定キャンバ処理プログラム及びメイン制御プログラムを終了する。
S54では、CPU71は、タイヤ温度推定処理(S2)で推定したタイヤ温度と、ROM72に格納されているタイヤ温度の基準値を比較し、タイヤ温度が基準値以上の高温であるか否かを判断する。タイヤ温度が基準値以上の高温である場合(S54:YES)、CPU71は、S56に処理を移行する。一方、タイヤ温度が基準値未満である場合(S54:NO)、CPU71は、S55に処理を移行する。
S55においては、CPU71は、キャンバ角調整装置44を制御し、第2キャンバ状態から第1キャンバ状態に変更することで、左後輪2RL及び右後輪2RRにネガティブキャンバ(即ち、安定キャンバ)を付与する。この時、CPU71は、キャンバフラグ73Aをセットする。ネガティブキャンバを付与した後、CPU71は、当該安定キャンバ処理プログラム及びメイン制御プログラムを終了する。
S56に移行すると、CPU71は、タイヤ温度制御をオンする。具体的には、CPU71は、タイヤ温度が高温であることに基づいて、安定キャンバの付与基準を、第1安定キャンバ付与基準データ72Bから第2安定キャンバ付与基準データ72Cに変更する。第2安定キャンバ付与基準データ72Cに変更した後、CPU71は、S57に処理を移行する。
S57では、CPU71は、安定状態判断処理を実行する。安定状態判断処理(S57)において、CPU71は、第2安定キャンバ付与基準データ72Cを用いる点を除いて、S8と同様に、安定状態判断処理プログラム(図7参照)を実行する。即ち、CPU71は、車両1の走行速度、ステアリング63の操作量と、第2安定キャンバ付与基準データ72Cに係る基準値を比較し、安定状態フラグ73Dを切り替える。安定状態判断処理プログラムの詳細については、既に説明しているため、詳細な説明は省略する。安定状態判断処理(S57)を終了すると、CPU71は、S58に処理を移行する。
S58においては、CPU71は、S9と同様に、安定状態フラグ73Dの状態に基づいて、安定キャンバが必要であるか否かを判断する。安定キャンバが必要である場合(S58:YES)、CPU71は、S59に処理を移行する。一方、安定キャンバが不要である場合(S58:NO)、CPU71は、S60に処理を移行する。
S59に移行すると、CPU71は、S55と同様に、キャンバ角調整装置44を制御し、左後輪2RL及び右後輪2RRにネガティブキャンバ(即ち、安定キャンバ)を付与する。この時、CPU71は、キャンバフラグ73Aをセットする。ネガティブキャンバを付与した後、CPU71は、当該安定キャンバ処理プログラム及びメイン制御プログラムを終了する。
S60では、CPU71は、タイヤ温度が高温である状態で車両1が走行しているため、ネガティブキャンバを付与すると、車輪2の偏摩耗が進行するものと判断し、S53と同様の処理を行う。車輪2に対するキャンバ角を0度に調整した後、CPU71は、当該安定キャンバ処理プログラム及びメイン制御プログラムを終了する。
続いて、偏摩耗荷重判断処理(S51)で実行される偏摩耗荷重判断処理プログラムについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。偏摩耗荷重判断処理(S51)に移行すると、CPU71は、先ず、左後輪2RL及び右後輪2RRの懸架装置4の伸縮量が所定の基準値以下であるか否かを判断する(S71)。具体的には、CPU71は、サスストロークセンサ装置83によって取得した伸縮量をRAM73から読み出し、ROM72に格納されている基準値と比較することにより、当該判断を行う。懸架装置4の伸縮量が基準値以下である場合(S71:YES)、CPU71は、S72に処理を移行する。一方、少なくとも一の懸架装置4の伸縮量が基準値よりも大きい場合(S71:NO)、CPU71は、伸縮量の大きい懸架装置4に対応する車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断し、S83に処理を移行する。
S72においては、CPU71は、当該車両1の前後Gが所定の基準値以下であるか否かを判断する。具体的には、CPU71は、加速度センサ装置80により取得された前後GをRAM73から読み出し、ROM72に格納されている基準値と比較することにより、当該判断を行う。前後Gが基準値以下である場合(S72:YES)、CPU71は、S73に処理を移行する。一方、前後Gが基準値より大きい場合(S72:NO)、CPU71は、車両1における何れかの車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断し、S83に処理を移行する。
S73では、CPU71は、当該車両1の横Gが所定の基準値以下であるか否かを判断する。具体的には、CPU71は、加速度センサ装置80により取得された横GをRAM73から読み出し、ROM72に格納されている基準値と比較することにより、当該判断を行う。横Gが基準値以下である場合(S73:YES)、CPU71は、S74に処理を移行する。一方、横Gが基準値より大きい場合(S73:NO)、CPU71は、車両1における何れかの車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断し、S83に処理を移行する。
S74に移行すると、CPU71は、当該車両1のヨーレートが所定の基準値以下であるか否かを判断する。具体的には、CPU71は、ヨーレートセンサ装置81により取得されたヨーレートをRAM73から読み出し、ROM72に格納されている基準値と比較することにより、当該判断を行う。ヨーレートが基準値以下である場合(S74:YES)、CPU71は、S75に処理を移行する。一方、ヨーレートが基準値より大きい場合(S74:NO)、CPU71は、車両1における何れかの車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断し、S83に処理を移行する。
S75においては、CPU71は、当該車両1のロール角が所定の基準値以下であるか否かを判断する。具体的には、CPU71は、ロール角センサ装置82により取得されたロール角をRAM73から読み出し、ROM72に格納されている基準値と比較することにより、当該判断を行う。ロール角が基準値以下である場合(S75:YES)、CPU71は、S76に処理を移行する。一方、ヨーレートが基準値より大きい場合(S75:NO)、CPU71は、車両1における何れかの車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断し、S83に処理を移行する。
S76では、CPU71は、当該車両1における各車輪2の接地荷重が所定の基準値以下であるか否かを判断する。具体的には、CPU71は、接地荷重センサ装置84により取得された接地荷重をRAM73から読み出し、ROM72に格納されている基準値と比較することにより、当該判断を行う。各車輪2の接地荷重が基準値以下である場合(S76:YES)、CPU71は、S77に処理を移行する。一方、何れかの車輪2の接地荷重が基準値よりも大きい場合(S76:NO)、CPU71は、当該車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断し、S83に処理を移行する。
S77に移行すると、CPU71は、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)が所定の基準量以下であるか否かを判断する。具体的には、CPU71は、アクセルペダルセンサ装置61Aにより取得されたアクセルペダル61の操作量をRAM73から読み出し、ROM72に格納されている基準値と比較することにより、当該判断を行う。アクセルペダル61の操作量が基準値以下である場合(S77:YES)、CPU71は、S78に処理を移行する。一方、アクセルペダル61の操作量が基準値よりも大きい場合(S77:NO)、CPU71は、左後輪2RL、右後輪2RRの接地荷重が偏摩耗荷重であると判断し、S83に処理を移行する。
S78においては、CPU71は、ブレーキペダル62の操作量(踏み込み量)が処理の基準値以下であるか否かを判断する。具体的には、CPU71は、ブレーキペダルセンサ装置62Aにより取得されたブレーキペダル62の操作量をRAM73から読み出し、ROM72に格納されている基準値と比較することにより、当該判断を行う。ブレーキペダル62の操作量が基準値以下である場合(S78:YES)、CPU71は、S79に処理を移行する。一方、ブレーキペダル62の操作量が基準値よりも大きい場合(S78:NO)、CPU71は、左前輪2FL及び右前輪2FRの接地荷重が偏摩耗荷重であると判断し、S83に処理を移行する。
S79では、CPU71は、ステアリング63の操作量(ステア角)が所定の基準値以下であるか否かを判断する。具体的には、CPU71は、ステアリングセンサ装置63Aによって取得されたステアリング63の操作量をRAM73から読み出し、ROM72に格納されている基準値と比較することにより、当該判断を行う。ステアリング63の操作量が基準値以下である場合(S79:YES)、CPU71は、S80に処理を移行する。一方、ステアリング63の操作量が基準値よりも大きい場合(S79:NO)、CPU71は、左側の車輪2(即ち、左前輪2FL及び左後輪2RL)又は右側の車輪2(即ち、右前輪2FR及び右後輪2RR)の何れかの接地荷重が偏摩耗荷重であると判断し、S83に処理を移行する。
尚、S79における基準値は、操作状態判断処理(S3)中で用いられる限界キャンバ付与基準データ72Aを構成するステアリング63の操作量より小さく、且つ、安定状態判断処理(S8、S57)で直進状態であるか否かを判断に用いられる第1安定キャンバ付与基準データ72B及び第2安定キャンバ付与基準データ72Cを構成するステアリング63の操作量より大きい。
S80に移行すると、CPU71は、ステアリング63の操作速度(ステア角速度)が所定の基準値以下であるか否かを判断する。具体的には、CPU71は、ステアリングセンサ装置63Aの検出結果から算出したステア角速度をRAM73から読み出し、ROM72に格納されている基準値と比較することにより、当該判断を行う。ステア角速度が基準値以下である場合(S80:YES)、CPU71は、S81に処理を移行する。一方、ステア角速度が基準値より大きい場合(S80:NO)、CPU71は、左の車輪2又は右の車輪2の何れかの接地荷重が偏摩耗荷重であると判断し、S83に処理を移行する。
S81においては、CPU71は、ステアリング63の操作加速度(ステア角加速度)が所定の基準値以下であるか否かを判断する。具体的には、CPU71は、ステアリングセンサ装置63Aの検出結果から算出したステア角加速度をRAM73から読み出し、ROM72に格納されている基準値と比較することにより、当該判断を行う。ステア角加速度が基準値以下である場合(S81:YES)、CPU71は、S82に処理を移行する。一方、ステア角加速度が基準値より大きい場合(S81:NO)、CPU71は、左の車輪2又は右の車輪2の何れかの接地荷重が偏摩耗荷重であると判断し、S83に処理を移行する。
S82では、CPU71は、S71〜S81における判断結果に基づいて、当該車両1の車輪2に偏摩耗荷重がかかっていないものと判断し、偏摩耗荷重フラグ73Eをクリアする。偏摩耗荷重フラグ73Eをクリアした後、CPU71は、偏摩耗荷重判断処理プログラムを終了し、安定キャンバ処理プログラムのS52に処理を移行する。
S83に移行すると、CPU71は、S71〜S81における判断結果に基づいて、当該車両1の車輪2に偏摩耗荷重がかかっているものと判断し、偏摩耗荷重フラグ73Eをセットする。偏摩耗荷重フラグ73Eをセットした後、CPU71は、偏摩耗荷重判断処理プログラムを終了し、安定キャンバ処理プログラムのS52に処理を移行する。
以上、説明したように、本実施形態に係る車両用制御装置100は、所定の条件(限界キャンバ付与基準データ72A、第1安定キャンバ付与基準データ72B等に規定される条件)を満たした場合に、左後輪2RL及び右後輪2RRの懸架装置4を制御することにより、左後輪2RL及び右後輪2RRのキャンバ角を、所定角度のネガティブキャンバが付与された第1キャンバ状態、又は、キャンバ角が0度に調整された第2キャンバ状態に切り替える。従って、当該車両用制御装置100は、所定の条件を満たした場合に、第1キャンバ状態に調整することで、車両1に走行安定性を付与し得る。
ここで、当該車両用制御装置100は、当該車両1のタイヤ温度が高温である場合(S54:YES)、安定キャンバを付与する基準を、第1安定キャンバ付与基準データ72Bから、第2安定キャンバ付与基準データ72Cに変更する(S56)。そして、当該車両用制御装置100は、変更された基準(即ち、第2安定キャンバ付与基準データ72C)を用いて、再度、安定キャンバを付与すべきか否かを判断する(S57)。
この点、第2安定キャンバ付与基準データ72Cは、第1安定キャンバ付与基準データ72Bよりも高い基準を示す。例えば、第2安定キャンバ付与基準データ72Cにおける走行速度は、第1安定キャンバ付与基準データ72Bよりも大きく、第2安定キャンバ付与基準データ72Cにおけるステアリング63の操作量は、第1安定キャンバ付与基準データ72Bよりも小さく設定されている。従って、第2安定キャンバ付与基準データ72Cに基づいて安定キャンバが付与されるためには、第1安定キャンバ付与基準データ72Bに基づき付与される場合に比べ、より高速で、より厳密な直進走行をしている必要がある。
一般に、車輪2における偏摩耗は、タイヤ温度が高温である走行状態において、車輪2を第1キャンバ状態(ネガティブキャンバを付与している状態)に調整すると、車輪2に偏摩耗荷重がかかることとなり、より一層急速に進行する。本実施形態に係る車両用制御装置100は、第1安定キャンバ付与基準データ72Bの基準を満たすが、第2安定キャンバ付与基準データ72Cの基準を満たさない場合、車輪2のキャンバ角を0度に調整する(S60)。これにより、当該車両用制御装置100は、車輪2における偏摩耗の進行を防止し得る。
又、第2安定キャンバ付与基準データ72Cの基準をも満たす場合、車両1は、第1安定キャンバ付与基準データ72Bの基準のみを満たす場合に比べ、より高速で直進走行している状態にある。この状態は、車両1の走行安定性及び快適性の面で、第1安定キャンバ付与基準データ72Bに係る基準のみを満たす場合に比べ、安定キャンバの付与が必要な状態である。そして、車両用制御装置100は、第2安定キャンバ付与基準データ72Cの基準を満たす場合(S58:YES)、車輪2を第1安定キャンバ状態に調整し、車輪2に安定キャンバを付与する(S59)。これにより、当該車両用制御装置100は、車両走行時の快適性と、タイヤの偏摩耗の防止の両者を考慮して、より適切な状況下でキャンバを付与することができ、車輪2における偏摩耗を防止しつつ、車両1の走行安定性及び快適性を確保し得る。又、車輪2における偏摩耗を防止することにより、当該車両用制御装置100は、タイヤの寿命を向上させることができ、車両1の省燃費化を図り得る。
この点、車両用制御装置100は、限界キャンバの付与基準については、タイヤ温度が高温であるか否かにかかわらず、限界キャンバ付与基準データ72Aを用いる。ここで、限界キャンバは、挙動限界にある車両1の走行安定性を高めるために付与される。即ち、当該車両用制御装置100は、タイヤ温度の高低にかかわらず、一定の基準を満たせば、限界キャンバを付与する。この結果、当該車両用制御装置100は、車両1の挙動限界近傍における走行安定性を、確実に提供し、車両1の安全性を高め得る。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、車両1に配設されている車輪2の内、左後輪2RL及び右後輪2RRのみ、キャンバ角を調整可能な構成としていたが、この態様に限定されるものではない。即ち、車輪2に配設されている4つの車輪2全てについて、メイン制御プログラム(図4参照)に基づく制御を適用してもよい。
又、本実施形態では、限界キャンバを付与するか否かを、操作状態判断処理(S3)におけるアクセルペダル61、ブレーキペダル62、ステアリング63の操作量や、車両状態判断処理(S4)におけるヨーレート、横Gを指標として判断していたが、この態様に限定されるものではない。即ち、車両1が挙動限界にあることを検出することができれば、図3に示すセンサ類を全て用いて判断してもよいし、本実施形態とは別のセンサ類を用いて判断してもよい。
同様に、本実施形態では、安定キャンバを付与するか否かを、安定状態判断処理(S8、S57)における車両1の走行速度、ステアリング63の操作量を、指標として用いて判断しているが、この態様に限定されるものではない。即ち、図3に示すセンサ類を全て用いて判断してもよいし、本実施形態とは別のセンサ類を用いて判断してもよい。
又、本実施形態においては、タイヤ温度推定処理(S2)において、上記(1)、(2)の式に基づいて、タイヤ温度を推定していたが、この態様に限定するものではない。即ち、本発明は、タイヤの外表面の温度を推定することができれば、種々の方式を用いることができる。
更に、本実施形態においては、外気温等の環境条件に基づいて、タイヤ温度を推定する構成であったが、タイヤ温度(即ち、タイヤの外表面の温度)を測定することができれば、直接測定したタイヤ温度を用いる構成とすることも可能である。