以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における制御装置100が搭載される車両1の上面視を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印FWDは、車両1の前進方向を示す。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFに支持される複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら各車輪2の内の一部(本実施の形態では左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2を車体フレームBFに懸架すると共に各車輪2のキャンバ角を独立に調整する懸架装置4と、ステアリング63の操作に伴って各車輪2の内の一部(本実施の形態では左右の前輪2FL,2FR)を操舵するステアリング装置5とを主に備え、車輪2のキャンバ角を調整することで、加減速時および制動時における車体フレームBFの姿勢変化を抑制して、加減速性能および制動性能の向上を図ることができるように構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車体フレームBFは、車両1の骨格をなすと共に各種装置(車輪駆動装置3など)を搭載するためのものであり、懸架装置4に支持されている。
車輪2は、図1に示すように、車体BFの前方側(矢印FWD側)に配置される左右の前輪2FL,2FRと、車体フレームBFの後方側(反矢印FWD側)に配置される左右の後輪2RL,2RRとの4輪を備えている。また、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3から付与される回転駆動力により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動する従動輪として構成されている。なお、車輪2の詳細構成については、図5を参照して後述する。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与して回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3aにより構成されている(図4参照)。電動モータ3aは、図1に示すように、ディファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して、左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の踏み込み状態に応じた回転速度で回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、ディファレンシャルギヤにより吸収される。
懸架装置4は、いわゆるサスペンションとして機能する装置であり、図1に示すように、各車輪2に対応して設けられている。また、本実施の形態における懸架装置4は、上述したように、車輪2のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置としての機能を兼ね備えている。
ここで、図2及び図3を参照して、懸架装置4の詳細構成について説明する。図2及び図3は、懸架装置4の正面図であり、図3(a)は、車輪2のキャンバ角がプラス方向(ポジティブ)に調整された状態が図示され、図3(b)は、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に調整された状態が図示されている。なお、図2及び図3では、発明の理解を容易とするために、ドライブシャフト31等の図示を省略し、図面を簡素化している。また、各懸架装置4の構成はそれぞれ共通であるので、ここでは右の前輪2FRに対応する懸架装置4を代表例として図2及び図3に図示する。
懸架装置4は、図2に示すように、ストラット式(マクファーソン式)の機構により構成され、アクスルハブ41と、サスペンションアーム42と、FRアクチュエータ43FRとを主に備えている。
アクスルハブ41は、車輪2を回転可能に支持するものであり、図2に示すように、車両1の内側(図2右側)から車輪2を支持すると共に、サスペンションアーム42を介してFRアクチュエータ43FRに連結されている。サスペンションアーム42は、アクスルハブ41をFRアクチュエータ43FRに連結するものであり、第1〜第3アーム42a〜42cを備えている。
第1アーム42a及び第2アーム42bは、一端(図2左側)がアクスルハブ41の上部(図2上側)及び下部(図2下側)にそれぞれ軸支される一方、他端(図2右側)が第3アーム42cの上端(図2上側)及び下端(図2下側)にそれぞれ軸支されている。また、第1アーム42a及び第2アーム42bは、互いに対向して配置されると共に、第3アーム42cは、アクスルハブ41に対向して配置されている。これにより、アクスルハブ41とサスペンションアーム42(第1〜第3アーム42a〜42c)とにより、4節のリンク機構が構成される。
なお、サスペンションアーム42には、路面Gから車体フレームBFに伝わる衝撃を緩和するコイルばね及びそのコイルばねの振動を減衰させるショックアブソーバ(いずれも図示せず)が取り付けられている。
FRアクチュエータ43FRは、サスペンションアーム42と車体フレームBFとを連結すると共に車体フレームBFを支持するものであり、油圧シリンダにより構成されている。このFRアクチュエータ43FRは、図2に示すように、本体部(図2上側)が車体フレームBFに軸支される一方、ロッド部(図2下側)が第3アーム42cに軸支されている。
ここで、第2アーム42bは、キャンバ軸44を介してアクスルハブ41に軸支されており、FRアクチュエータ43FRが伸縮駆動されると、アクスルハブ41とサスペンションアーム42とにより構成されるリンク機構(以下、単に「リンク機構」と称す。)が屈伸し、キャンバ軸44を中心軸として車輪2が揺動駆動される(図3参照)。
即ち、通常、車輪2は、路面Gとの間の摩擦により、路面Gに対して滑りを生じないため、リンク機構は、車輪2の接地面に最も近いキャンバ軸44を固定軸として屈伸する。その結果、キャンバ軸44を中心軸として車輪2が揺動駆動される。
また、キャンバ軸44は、アクスルハブ41が車輪2を車両1の内側から支持する構成であるので、車両1の正面視において、車輪2の中心線Mよりも車両1の内側(図2右側)に配置されている。
上述したように構成される懸架装置4によれば、図3に示すように、図2に示す状態からFRアクチュエータ43FRが伸縮駆動されると、リンク機構が屈伸し、車輪2がキャンバ軸44を中心軸として揺動駆動されることで、車輪2のキャンバ角が調整される。また、FRアクチュエータ43FRが伸縮駆動されると、リンク機構が屈伸し、車輪2がキャンバ軸44を中心軸として揺動駆動されることで、懸架装置4(FRアクチュエータ43FR)に支持された車体フレームBFが昇降する。即ち、FRアクチュエータ43FRが伸縮駆動されることで、車輪2のキャンバ角が調整されると同時に、車体フレームBFが昇降する。
ここで、本実施の形態では、上述したように、車両1の正面視において、キャンバ軸44が車輪2の中心線Mよりも車両1の内側に配置される構成であるので、図3(a)に示すように、FRアクチュエータ43FRが収縮駆動されると、車輪2がキャンバ軸44を中心軸として矢印A方向へ揺動駆動され、車輪2のキャンバ角がプラス方向(ポジティブ)に調整される。同時に、車体フレームBFが上昇する(即ち、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hが広がる)。
一方、図3(b)に示すように、FRアクチュエータ43FRが伸長駆動されると、車輪2がキャンバ軸44を中心軸として矢印B方向へ揺動駆動され、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に調整される。同時に、車体フレームBFが下降する(即ち、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hが縮まる)。
図1に戻って説明する。ステアリング装置5は、ラックアンドピニオン式の機構により構成され、ステアリングシャフト51と、フックジョイント52と、ステアリングギヤ53と、タイロッド54と、ナックル55とを主に備えている。
このステアリング装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作は、まず、ステアリングシャフト51を介してフックジョイント52に伝達されると共に、フックジョイント52により角度を変えられつつ、ステアリングギヤ53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動して、ナックル55を押し引きすることで、車輪2の操舵角が調整される。
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の踏み込み状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3の制御が行われる。また、ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作に伴って、車輪2がステアリング装置5により操舵される。
制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62の踏み込み状態を検出し、その検出結果に応じて車輪駆動装置3を制御することで、各車輪2を回転駆動する。或いは、後述するキャンバ制御処理(図8参照)において、車両1が加速状態または減速状態であるかを判断し、その判断結果に応じてリンク駆動装置43を制御する。
ここで、図4を参照して、制御装置100の詳細構成について説明する。図4は、制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。制御装置100は、図4に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の複数の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74によって接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71によって実行される制御プログラム(例えば、図8に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶するための書き換え不能な不揮発性のメモリであり、RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。また、ROM72には、ピッチ角マップ72a及びキャンバ角マップ72bが設けられている。なお、ピッチ角マップ72a及びキャンバ角マップ72bの詳細については、図12及び図13を参照して後述する。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの命令に基づいて制御する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
リンク駆動装置43は、リンク機構(図2及び図3参照)を屈伸させるための装置であり、リンク機構に屈伸のための駆動力を付与する4個のFL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRと、それら各アクチュエータ43FL〜43RRをCPU71からの命令に基づいて制御する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRは、上述したように、油圧シリンダにより構成され、各油圧シリンダ(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)にオイル(油圧)を供給する油圧ポンプ(図示せず)と、その油圧ポンプから各油圧シリンダに供給されるオイルの供給方向を切り換える電磁弁(図示せず)とを主に備えて構成されている。
CPU71からの指示に基づいて、リンク駆動装置43の制御回路が油圧ポンプを駆動制御すると、その油圧ポンプから供給されるオイル(油圧)によって、各油圧シリンダが伸縮駆動される。また、電磁弁がオン/オフされると、各油圧シリンダの駆動方向(伸長または収縮)が切り替えられる。
リンク駆動装置43の制御回路は、各油圧シリンダの伸縮量を伸縮センサ(図示せず)により監視し、CPU71から指示された目標値(伸縮量)に達した油圧シリンダは、伸縮駆動が停止される。なお、伸縮センサによる検出結果は、制御回路からCPU71に出力され、CPU71は、その検出結果に基づいて各車輪2のキャンバ角を得ることができる。
加速度センサ装置81は、車両1(図1参照)の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後および左右方向加速度センサ81a,81bと、それら各加速度センサ81a,81bの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
前後方向加速度センサ81aは車体フレームBF(図1参照)の前後方向(図1上下方向)の加速度を検出するセンサであり、左右方向加速度センサ81bは車体フレームBFの左右方向(図1左右方向)の加速度を検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ81a,81bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。なお、前後方向加速度センサ81aにより検出される車体フレームBFの前後方向の加速度は、車両1が加速状態である場合に正の値で検出され、車両1が減速状態である場合に負の値で検出される。
CPU71は、加速度センサ装置81から入力された前後方向加速度センサ81a及び左右方向加速度センサ81bの検出結果(加速度)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ得ると共に、かかる2方向の速度成分を合成することで、車両1の対地速度を得ることができる。
接地荷重センサ装置82は、各車輪2の接地面が路面から受ける荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の接地面が路面から受ける荷重をそれぞれ検出するFL〜RR荷重センサ82FL〜82RRと、それら各荷重センサ82FL〜82RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各荷重センサ82FL〜82RRがピエゾ抵抗型の3軸荷重センサとして構成されている。これら各荷重センサ82FL〜82RRは、各車輪2のサスペンション軸(図示せず)上に配設され、車輪2が路面から受ける荷重を車両1の前後方向、左右方向および高さ方向の3方向で検出する。
ジャイロセンサ装置83は、車両1の回転角速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の中心を通り車両1の前後方向に沿う軸、左右方向に沿う軸および高さ方向に沿う軸の3つの軸を中心軸としてそれぞれ回転する車体フレームBFの回転角速度を回転方向に対応付けて検出するジャイロセンサ(図示せず)と、そのジャイロセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、ジャイロセンサがサニャック効果の原理を利用して動作する光ファイバジャイロにより構成されている。但し、他の種類のジャイロセンサを用いることは当然可能である。他の種類のジャイロセンサとしては、例えば、機械式のジャイロセンサや圧電式のジャイロセンサ等が例示される。
CPU71は、ジャイロセンサ装置83から入力されたジャイロセンサの検出結果(回転角速度)を時間積分して、3方向(前後方向、左右方向および高さ方向)の回転角、即ち、ピッチ角、ロール角およびヨー角をそれぞれ得ることができる。
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の踏み込み状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。CPU71は、アクセルペダルセンサ装置61aの検出結果(アクセルべダル61の踏み込み量)から、アクセル開度を算出することができる。
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の踏み込み状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。CPU71は、ブレーキペダルセンサ装置62aの検出結果(ブレーキべダル62の踏み込み量)から、ブレーキ開度を算出することができる。
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング63の回転角を回転方向に対応付けて検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力された各角度センサの検出結果により、各ペダル61,62の踏み込み量およびステアリング63の回転角を得ると共に、その検出結果を時間微分することで、各ペダル61,62の踏み込み速度およびステアリング63の回転速度を得ることができる。
図4に示す他の入出力装置84としては、例えば、車両1(車体フレームBF)の路面に対する姿勢(傾斜など)を非接触で計測する光学センサなどが例示される。
次いで、図5から図7を参照して、車輪2の詳細構成について説明する。図5は、車両1の上面視を模式的に示した模式図であり、図6及び図7は、車両1の正面視を模式的に示した模式図である。なお、図6では、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に調整された状態が図示され、図7では、車輪2のキャンバ角が0度に調整された状態が図示されている。
車輪2は、図5に示すように、第1トレッド21及び第2トレッド22の2種類のトレッドを備え、各車輪2において、第1トレッド21が車両1の内側に配置され、第2トレッド22が車両1の外側に配置されている。また、車輪2は、第1トレッド21と第2トレッド22とが互いに異なる特性に構成され、第1トレッド21が第2トレッド22に比してグリップ力の高い特性に構成されている。なお、本実施の形態では、両トレッド21,22の幅寸法(図5左右方向寸法)が同一に構成されている。
上述したように構成される車輪2によれば、図6に示すように、リンク駆動装置43(図4参照)が制御され、車輪2のキャンバ角θL,θRがマイナス方向(ネガティブ)に調整されると、車両1の内側へ向けて、車輪2にキャンバスラストFnが発生する。これにより、発生したキャンバスラストFnをグリップ力として利用することで、車輪2のグリップ力を高めることができ、車両1の加減速性能および制動性能の向上を図ることができる。
また、車輪2のキャンバ角θL,θRがマイナス方向に調整されることで、車両1の内側に配置される第1トレッド21の接地(接地面積)が増加する一方、車両1の外側に配置される第2トレッド22の接地(接地面積)が減少する。これにより、第1トレッド21と第2トレッド22との接地比率を変更できるので、接地比率の高いトレッド、即ち、第1トレッド21の特性による影響を大きくして、第1トレッド21の特性により得られる性能を車輪2に発揮させることができる。
ここで、本実施の形態では、上述したように、車輪2は、第1トレッド21を第2トレッド22に比してグリップ力の高い特性とする構成であるので、第1トレッド21のグリップ力の高い特性を発揮させて、車両1の加減速性能および制動性能のより一層の向上を図ることができる。
これに対し、図7に示すように、リンク駆動装置43が制御され、車輪2のキャンバ角が0度に調整されると、第1トレッド21と第2トレッド22との接地比率がほぼ等しくなる。これにより、第1トレッド21の接地比率を低くできるので、第1トレッド21のグリップ力の高い特性による影響を小さくして、車輪2の転がり抵抗を小さくすることができる。その結果、燃費の悪化を抑制して、燃費性能の向上を図ることができる。また、車輪2のキャンバ角が0度に調整されることで、車輪2に横力が発生せず、その分、燃費性能のより一層の向上を図ることができる。
次いで、図8を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図8は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置100の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、車両1の加速度を加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)により検出し(S1)、その検出結果(加速度)が0よりも大きいか否かを判断する(S2)。その結果、車両1の加速度が0よりも大きいと判断される場合には(S2:Yes)、車両1が加速状態であり、車体フレームBFの姿勢が後傾になっていると考えられるので、リンク駆動装置43を制御して、前輪(左右の前輪2FL,2FR)のキャンバ角をマイナス方向(ネガティブ)に調整すると共に(S3)、後輪(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を0度に調整して(S4)、このキャンバ制御処理を終了する。なお、S3の処理では、前輪(左右の前輪2FL,2FR)のキャンバ角を規定角度(本実施の形態では1度)だけマイナス方向に調整する。
これにより、左右の前輪2FL,2FRにキャンバスラストを発生させることができるので(図6参照)、その発生させたキャンバスラストをグリップ力として利用することで、左右の前輪2FL,2FRのグリップ力を高めることができ、車両1の加速性能の向上を図ることができる。
また、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角をマイナス方向に調整することで、同時に、車体フレームBFの前方側を下降させることができるので、加速時に車体フレームBFの姿勢が後傾となる現象、いわゆるノーズリフトを抑制することができる。その結果、車体フレームBFの姿勢変化に起因する車両1の重心移動を抑制して、左右の前輪2FL,2FRの接地荷重と左右の後輪2RL,2RRの接地荷重との均等化を図ることができるので、車輪2のグリップ力を発揮させて、加速性能のより一層の向上を図ることができる。
更に、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角をマイナス方向に調整することで、第1トレッド21の接地比率を高くすることができるので、第1トレッド21のグリップ力の高い特性を発揮させて、車両1の加速性能のより一層の向上を図ることができる。
一方、S2の処理の結果、車両1の加速度が0よりも大きくない、即ち、0以下であると判断される場合には(S2:No)、次いで、車両1の加速度が0よりも小さいか否かを判断する(S5)。その結果、車両1の加速度が0よりも小さいと判断される場合には(S5:Yes)、車両1が減速状態であり、車体フレームBFの姿勢が前傾になっていると考えられるので、リンク駆動装置43を制御して、後輪(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角をマイナス方向(ネガティブ)に調整すると共に(S6)、前輪(左右の前輪2FL,2FR)のキャンバ角を0度に調整して(S7)、このキャンバ制御処理を終了する。なお、S6の処理では、後輪(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を規定角度(本実施の形態では1度)だけマイナス方向に調整する。
これにより、左右の後輪2RL,2RRにキャンバスラストを発生させることができるので(図6参照)、その発生させたキャンバスラストをグリップ力として利用することで、左右の後輪2RL,2RRのグリップ力を高めることができ、車両1の減速性能および制動性能の向上を図ることができる。
また、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角をマイナス方向に調整することで、同時に、車体フレームBFの後方側を下降させることができるので、減速時および制動時に車体フレームBFの姿勢が前傾となる現象、いわゆるノーズダイブを抑制することができる。その結果、車体フレームBFの姿勢変化に起因する車両1の重心移動を抑制して、左右の前輪2FL,2FRの接地荷重と左右の後輪2RL,2RRの接地荷重との均等化を図ることができるので、車輪2のグリップ力を発揮させて、減速性能および制動性能のより一層の向上を図ることができる。
更に、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角をマイナス方向に調整することで、第1トレッド21の接地比率を高くできるので、第1トレッド21のグリップ力の高い特性を発揮させて、車両1の減速性能および制動性能のより一層の向上を図ることができる。
一方、S5の処理の結果、車両1の加速度が0よりも小さくない、即ち、0であると判断される場合には(S5:No)、車両1が一定の速度で走行している状態であり、車体フレームBFの姿勢を制御する必要はないと考えられるので、リンク駆動装置43を制御して、前輪(左右の前輪2FL,2FR)及び後輪(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を0度に調整し(S8)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地比率を低くすることができるので、第1トレッド21のグリップ力の高い特性による影響を小さくして、車輪2の転がり抵抗を小さくすることができる。その結果、燃費の悪化を抑制して、燃費性能の向上を図ることができる。また、車輪2のキャンバ角を0度に調整することで、車輪2に横力を発生させることがなく、その分、燃費性能のより一層の向上を図ることができる。
次いで、図9から図14を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、車輪2が第1トレッド21及び第2トレッド22の2種類のトレッドを備える場合を説明したが、第2実施の形態では、車輪202が第1トレッド21、第2トレッド22及び第3トレッド223の3種類のトレッドを備えて構成されている。なお、第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。また、第2実施の形態では、車両201を第1実施の形態における制御装置100によって制御するものとして説明する。
図9は、第2実施の形態における車両201の上面視を模式的に示した模式図であり、図10及び図11は、車両201の正面視を模式的に示した模式図である。なお、図10では、車輪202のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に調整された状態が図示され、図11では、車輪202のキャンバ角がプラス方向(ポジティブ)に調整された状態が図示されている。
車輪202は、図9に示すように、第1トレッド21、第2トレッド22及び第3トレッド223の3種類のトレッドを備え、各車輪202において、第1トレッド21が車両201の内側に配置されると共に、第3トレッド223が車両201の外側に配置され、第2トレッド22が第1トレッド21と第3トレッド223との間に配置されている。
また、第3トレッド223は、少なくとも第2トレッド22に比してグリップ力の高い特性に構成されている。なお、本実施の形態では、各トレッド21,22,223の幅寸法(図9左右方向寸法)が同一に構成されている。
上述したように構成される車輪202によれば、図10に示すように、リンク駆動装置43(図4参照)が制御され、車輪202のキャンバ角θL,θRがマイナス方向(ネガティブ)に調整されると、車両201の内側へ向けて、車輪202にキャンバスラストFnが発生する。これにより、第1実施の形態における車輪2の場合と同様に、発生したキャンバスラストFnをグリップ力として利用することで、車輪202のグリップ力を高めることができ、車両201の加減速性能および制動性能の向上を図ることができる。
また、車輪202のキャンバ角θL,θRがマイナス方向に調整されることで、車両201の内側に配置される第1トレッド21の接地(接地面積)が増加する一方、第1トレッド21よりも車両201の外側に配置される第2トレッド22及び第3トレッド223の接地(接地面積)が減少する。これにより、第1実施の形態における車輪2の場合と同様に、各トレッド21,22,223の接地比率を変更できるので、接地比率の高いトレッド、即ち、第1トレッド21のグリップ力の高い特性を発揮させて、車両201の加減速性能および制動性能のより一層の向上を図ることができる。
これに対し、図11に示すように、リンク駆動装置43が制御され、車輪202のキャンバ角θL,θRがプラス方向(ポジティブ)に調整されると、車両201の外側へ向けて、車輪202にキャンバスラストFpが発生する。これにより、発生したキャンバスラストFpをグリップ力として利用することで、車輪202のグリップ力を高めることができ、車両201の加減速性能および制動性能の向上を図ることができる。
また、車輪202のキャンバ角θL,θRがプラス方向に調整されることで、車両201の外側に配置される第3トレッド223の接地(接地面積)が増加する一方、第3トレッド223よりも車両201の内側に配置される第1トレッド21及び第2トレッド22の接地(接地面積)が減少する。これにより、第3トレッド223の接地比率を高くできるので、第3トレッド223のグリップ力の高い特性を発揮させて、車両201の加減速性能および制動性能のより一層の向上を図ることができる。
次いで、図12を参照して、ピッチ角マップ72aについて説明する。図12は、ピッチ角マップ72aの内容を模式的に示した模式図である。ピッチ角マップ72aは、車両201の加速度とピッチ角との関係を記憶したマップである。
ここで、ピッチ角とは、車両201(図9参照)の中心を通り車両201の左右方向(図9左右方向)に沿う軸を中心軸として回転する車体フレームBFの回転角であり、車体フレームBFの姿勢が後傾となる場合に正の値で表されると共に、車体フレームBFの姿勢が前傾となる場合に負の値で表される。CPU71は、このピッチ角マップ72aの内容に基づいて、現在の加速度におけるピッチ角を得ることができる。
なお、図12において、横軸に示す加速度は、加速度0よりも図12右側が増加方向を、加速度0よりも図12左側が減少方向を、それぞれ表していると共に、縦軸に示すピッチ角は、角度0度よりも図12上側が増加方向を、角度0度よりも図12下側が減少方向を、それぞれ示している。
ピッチ角マップ72aによれば、図12に示すように、加速度が0の状態(即ち、車両201が加速状態でも減速状態でもない状態、車両201が一定の速度で走行している状態)では、ピッチ角が0度に規定されている。加速度が0の状態から増加すると(即ち、車両201が加速状態となると)、その増加に伴って車体フレームBFの姿勢が漸次後傾となることで、ピッチ角が直線的に漸次増加するように規定されている。そして、加速度がAmaxに達すると、車両201の構造上、車体フレームBFの姿勢が後傾となり得る限界の状態となることで、ピッチ角が最大値Pmaxに規定されている。なお、加速度がAmaxから更に増加しても、既に車体フレームBFの姿勢が後傾となり得る限界の状態に達しているので、ピッチ角はPmaxに維持される。
一方、加速度が0の状態から減少すると(即ち、車両201が減速状態となると)、その減少に伴って車体フレームBFの姿勢が漸次前傾となることで、ピッチ角が直線的に漸次減少するように規定されている。そして、加速度がAminに達すると、車両201の構造上、車体フレームBFの姿勢が前傾となり得る限界の状態となることで、ピッチ角が最小値Pminに規定されている。なお、加速度がAminから更に減少しても、既に車体フレームBFの姿勢が前傾となり得る限界の状態に達しているので、ピッチ角はPminに維持される。
次いで、図13を参照して、キャンバ角マップ72bについて説明する。図13は、キャンバ角マップ72bの内容を模式的に示した模式図である。キャンバ角マップ72bは、車両201のピッチ角と車輪202のキャンバ角との関係を記憶したマップである。CPU71は、このキャンバ角マップ72bの内容に基づいて、車両201の加減速時および制動時における車体フレームBFの姿勢変化を抑制するべく、ピッチ角に対応して調整すべき車輪202のキャンバ角を得ることができる。
なお、図13において、実線Fは左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角に、実線Rは左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角に、それぞれ対応する。また、横軸に示すキャンバ角は、角度0度よりも図13右側がマイナス方向を、角度0度よりも図13左側がプラス方向を、それぞれ表していると共に、縦軸に示すピッチ角は、角度0度よりも図13上側が増加方向を、角度0度よりも図13下側が減少方向を、それぞれ表している。
キャンバ角マップ72bによれば、図13に示すように、ピッチ角が0度の状態(即ち、車体フレームBFの姿勢が前傾でも後傾でもない状態、車体フレームBFが路面と平行な状態)では、車体フレームBFの姿勢を制御する必要はないので、左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がいずれも0度に規定されている。
ピッチ角が0度の状態から増加すると、その増加に伴って車体フレームBFの姿勢が漸次後傾となるので、車体フレームBFの前方側を下降させると共に後方側を上昇させて姿勢変化を抑制するべく、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角がマイナス方向へ直線的に漸次増加するように規定されると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がプラス方向へ直線的に漸次増加するように規定されている。
そして、ピッチ角が最大値Pmaxの状態(車体フレームBFの姿勢が後傾となり得る限界の状態)で、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が最大値θmmaxに規定されると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が最大値θpmaxに規定されている。ここで、本実施の形態では、最大値θmmax,θpmaxは、車両201の構造上、左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪2RL,2RRをマイナス方向およびプラス方向に調整し得る最大のキャンバ角にそれぞれ設定されている。
これに対し、ピッチ角が0度の状態から減少すると、その減少に伴って車体フレームBFの姿勢が漸次前傾となるので、車体フレームBFの前方側を上昇させると共に後方側を下降させて姿勢変化を抑制するべく、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角がプラス方向へ直線的に漸次増加するように規定されると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がマイナス方向へ直線的に漸次増加するように規定されている。
そして、ピッチ角が最小値Pminの状態(車体フレームBFの姿勢が前傾となり得る限界の状態)で、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が最大値θpmaxに規定されると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が最大値θmmaxに規定されている。
次いで、図14を参照して、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理について説明する。図14は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置100の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理に関し、まず、車両201の加速度を加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)により検出し(S21)、その検出結果(加速度)が0であるか否かを判断する(S22)。その結果、車両201の加速度が0であると判断される場合には(S22:Yes)、車両201が一定の速度で走行している状態であり、車体フレームBFの姿勢を制御する必要はないと考えられるので、リンク駆動装置43を制御して、前輪(左右の前輪202FL,202FR)及び後輪(左右の後輪202RL,202RR)のキャンバ角を0度に調整し(S23)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21及び第3トレッド223の接地比率を低くすることができるので、第1トレッド21及び第3トレッド223のグリップ力の高い特性による影響を小さくして、車輪202の転がり抵抗を小さくすることができる。その結果、燃費の悪化を抑制して、燃費性能の向上を図ることができる。また、車輪202のキャンバ角を0度に調整することで、車輪202に横力を発生させることがなく、その分、燃費性能のより一層の向上を図ることができる。
一方、S22の処理の結果、車両201の加速度が0でないと判断される場合には(S22:No)、車両201が加速状態または減速状態であり、車体フレームBFの姿勢が後傾または前傾になっていると考えられるので、S21の処理で検出した加速度に対応するピッチ角をピッチ角マップ72a(図12参照)から取得すると共に(S24)、その取得したピッチ角に対応して調整すべき車輪202のキャンバ角をキャンバ角マップ72b(図13参照)から取得する(S25)。なお、CPU71は、キャンバ角マップ72bから左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角をそれぞれ取得する。
車輪202のキャンバ角を取得した後は、その取得したキャンバ角となるように、リンク駆動装置43を制御して、前輪(左右の前輪202FL,202FR)及び後輪(左右の後輪202RL,202RR)のキャンバ角を調整し(S26)、このキャンバ制御処理を終了する。
具体的には、車両201が加速状態の場合、例えば、車両201の加速度をA1とすると、その加速度A1に対応するピッチ角を図12に示すピッチ角マップ72aからP1と取得し、その取得したピッチ角P1に対応する左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を図13に示すキャンバ角マップ72bからそれぞれθ1及びθ2と取得して、その取得したキャンバ角となるように前輪(左右の前輪202FL,202FR)及び後輪(左右の後輪202RL,202RR)のキャンバ角を調整する。
即ち、車両201が加速状態の場合には、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角をマイナス方向(ネガティブ)に調整すると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角をプラス方向(ポジティブ)に調整する。
これにより、左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRにキャンバスラストをそれぞれ発生させることができるので(図10及び図11参照)、その発生させたキャンバスラストをグリップ力として利用することで、左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRのグリップ力をそれぞれ高めることができ、車両201の加速性能の向上を図ることができる。
また、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角をマイナス方向に調整することで、同時に、車体フレームBFの前方側を下降させると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角をプラス方向に調整することで、同時に、車体フレームBFの後方側を上昇させることができるので、加速時における車体フレームBFのノーズリフトを抑制することができる。その結果、第1実施の形態の場合と同様に、車体フレームBFの姿勢変化に起因する車両201の重心移動を抑制して、左右の前輪202FL,202FRの接地荷重と左右の後輪202RL,202RRの接地荷重との均等化を図ることができるので、車輪202のグリップ力を発揮させて、加速性能のより一層の向上を図ることができる。
更に、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角をマイナス方向に調整することで、第1トレッド21の接地比率を高くすると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角をプラス方向に調整することで、第3トレッド223の接地比率を高くすることができるので、第1トレッド21及び第3トレッド223のグリップ力の高い特性を発揮させて、車両201の加速性能のより一層の向上を図ることができる。
一方、車両201が減速状態の場合には、例えば、車両201の加速度をA2とすると、その加速度A2に対応するピッチ角を図12に示すピッチ角マップ72aからP2と取得し、その取得したピッチ角P2に対応する左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を図13に示すキャンバ角マップ72bからそれぞれθ2及びθ1と取得して、その取得したキャンバ角となるように前輪(左右の前輪202FL,202FR)及び後輪(左右の後輪202RL,202RR)のキャンバ角を調整する。
即ち、車両201が減速状態の場合には、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角をプラス方向(ポジティブ)に調整すると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角をマイナス方向(ネガティブ)に調整する。
これにより、左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRにキャンバスラストをそれぞれ発生させることができるので(図10及び図11参照)、その発生させたキャンバスラストをグリップ力として利用することで、左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRのグリップ力をそれぞれ高めることができ、車両201の減速性能および制動性能の向上を図ることができる。
また、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角をプラス方向に調整することで、同時に、車体フレームBFの前方側を上昇させると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角をマイナス方向に調整することで、同時に、車体フレームBFの後方側を下降させることができるので、減速時および制動時における車体フレームBFのノーズダイブを抑制することができる。その結果、第1実施の形態の場合と同様に、車体フレームBFの姿勢変化に起因する車両201の重心移動を抑制して、左右の前輪202FL,202FRの接地荷重と左右の後輪202RL,202RRの接地荷重との均等化を図ることができるので、車輪202のグリップ力を発揮させて、減速性能および制動性能のより一層の向上を図ることができる。
更に、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角をプラス方向に調整することで、第3トレッド223の接地比率を高くすると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角をマイナス方向に調整することで、第1トレッド21の接地比率を高くすることができるので、第1トレッド21及び第3トレッド223のグリップ力の高い特性を発揮させて、車両201の減速性能および制動性能のより一層の向上を図ることができる。
以上のように、本実施の形態によれば、左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角をいずれも調整して車体フレームBFを昇降させるので、調整すべき車輪202のキャンバ角を大きくしなくても(例えば、調整すべきキャンバ角を半分としても)、加減速時および制動時における車体フレームBFの姿勢変化を抑制することができる。その結果、車輪202のキャンバ角を大きく調整することに起因して車輪202の転がり抵抗が大きくなることを回避できるので、燃費の悪化を抑制して、燃費性能の向上を図ることができる。
次いで、図15から図22を参照して、第3実施の形態について説明する。上記第2実施の形態では、左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角をいずれも調整して車体フレームBFを昇降させることにより、加減速時および制動時における車体フレームBFの姿勢変化を抑制する場合を説明した。
これに対し、第3実施の形態では、左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRのいずれか一方のキャンバ角を調整して車体フレームBFを昇降させると共に、車両201の加速度(又は減速度)が所定レベル未満である場合に、他方の車輪のキャンバ角を維持し、車両201の加速度(又は減速度)が所定レベル以上である場合に、他方の車輪のキャンバ角を漸次増加させる。そして、各車輪202のグリップ力を高めると共にそのグリップ力を発揮させて、車両201の加減速性能および制動性能の向上を図りつつ、車両201のエネルギー消費量を抑制することができるように構成されている。
また、第2実施の形態では、車両201の加速度を加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)により検出して、車両201の加減速状態を判断する場合を説明したが、第3実施の形態では、車両201のアクセル開度およびブレーキ開度に基づいて、車両201の加減速状態を判断する。
なお、上記各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。また、第3実施の形態では、第2実施の形態における車両201を制御装置300によって制御するものとして説明する。
図15は、第3実施の形態における制御装置300の電気的構成を示したブロック図である。この第3実施の形態における制御装置300において、上記各実施の形態における制御装置100(図4参照)と相違する点は、ROM372がROM72に代えて設けられている点、及びRAM373がRAM73に代えて設けられている点である。
ROM372は、CPU71によって実行される制御プログラム(例えば、図17から図22のフローチャートで図示される各種処理を実行するプログラム)や固定値データ等を記憶するための書き換え不能な不揮発性のメモリである。このROM372は、規定値メモリ372a及びキャンバ角マップ372bを有している。
規定値メモリ372aは、図17から図22に図示される各種処理において、種々の判断を行う場合の閾値となる各種規定値が記憶されるメモリである。具体的には、後述する車両挙動判定処理(図18参照)において加速度の変化度合いが大きいか小さいかを判断する閾値となるアクセル開度の変化量(第1規定値)と、車両挙動判定処理において減速度の変化度合いが大きいか小さいかを判断する閾値となるブレーキ開度の変化量(第2規定値)と、後述するノーズダイブ時実キャンバ角設定処理(図21参照)において車両201の減速度が大きいか小さいかを判断する閾値となる減速度(第3規定値)と、ノーズリフト時実キャンバ角設定処理(図22参照)において車両201の加速度が大きいか小さいかを判断する閾値となる加速度(第4規定値)と、ノーズダイブ時実キャンバ角設定処理およびノーズリフト時実キャンバ角設定処理において、各々第3規定値および第4規定値に基づき車両201の減速度および加速度が小さいと判断された回数が、所定回数以上になったか否かを判断する閾値となる所定回数(第5規定値)とが、規定値メモリ372aに記憶される。これらの規定値は、いずれも設計段階で予め設定された数値である。
尚、ここで、減速度とは、車両201における単位時間当たりの対地速度の減速度合いを示したものであり、加速度と共に、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)によって検出される。
CPU71は、車両挙動判定処理を実行中に、規定値メモリ372aに記憶されている第1規定値の内容に基づいて、加速度の変化度合いが大きいか小さいかを判断する。即ち、CPU71は、アクセルペダルセンサ装置61aの検出結果(アクセルペダル61の踏み込み量)からアクセル開度を算出し、さらにアクセル開度を時間微分して、アクセル開度の変化量を算出する。ここで、アクセル開度の変化量が大きい場合、それに応じて加速度の変化度合いも大きくなる。従って、算出したアクセル開度の変化量が第1規定値以上である場合に、加速度の変化度合いが大きいと判断する。そして、CPU71は、加速度の変化度合いが大きいか小さいかを判断した後、後述する変化度合フラグ373bにその結果を記憶する。
また、CPU71は、車両挙動判定処理を実行中に、規定値メモリ372aに記憶されている第2規定値の内容に基づいて、減速度の変化度合いが大きいか小さいかを判断する。即ち、CPU71は、ブレーキペダルセンサ装置62aの検出結果(ブレーキペダル62の踏み込み量)からブレーキ開度を算出し、さらにブレーキ開度を時間微分して、ブレーキ開度の変化量を算出する。ここで、ブレーキ開度の変化量が大きい場合、それに応じて減速度の変化度合いも大きくなる。従って、算出したブレーキ開度の変化量が第2規定値以上である場合に、減速度の変化度合いが大きいと判断する。そして、CPU71は、減速度の変化度合いが大きいか小さいかを判断した後、後述する変化度合フラグ373bにその結果を記憶する。
また、CPU71は、ノーズダイブ時実キャンバ角設定処理を実行中に、規定値メモリ372aに記憶されている第3規定値の内容に基づいて、車両201の減速度が大きいか小さいかを判断する。即ち、CPU71は、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)の検出結果から車両201の減速度を取得し、取得した減速度が第3規定値以上である場合に、車両201の減速度が大きいと判断する。更に、CPU71は、ノーズダイブ時実キャンバ角設定処理の中で、第3規定値に基づき車両201の減速度が小さいと判断された回数を、回数カウンタ373dを用いてカウントする。
また、CPU71は、ノーズリフト時実キャンバ角設定処理を実行中に、規定値メモリ372aに記憶されている第4規定値の内容に基づいて、車両201の加速度が大きいか小さいかを判断する。即ち、CPU71は、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)の検出結果から車両201の加速度を取得し、その取得した加速度が第4規定値以上である場合に、車両201の加速度が大きいと判断する。更に、CPU71は、ノーズリフト時実キャンバ角設定処理の中で、第4規定値に基づき車両201の加速度が小さいと判断された回数を、回数カウンタ373dを用いてカウントする。
また、CPU71は、ノーズダイブ時実キャンバ角設定処理において、第3規定値に基づき車両201の減速度が小さいと判断された回数が、所定回数以上になったか否かを、規定値メモリ372aに記憶されている第5規定値の内容に基づいて判断する。また、CPU71は、ノーズリフト時実キャンバ角設定処理において、第4規定値に基づき車両201の加速度が小さいと判断された回数が、所定回数以上になったか否かを、規定値メモリ372aに記憶されている第5規定値の内容に基づいて判断する。即ち、CPU71は、第3規定値に基づき車両201の減速度が小さいと判断された回数および第4規定値に基づき車両201の加速度が小さいと判断された回数がカウントされた回数カウンタ373dの内容を読み出し、そのカウンタ373dの値が第5規定値以上となっている場合に、各々の回数が所定回数以上になったと判断する。
次いで、図16を参照して、キャンバ角マップ372bについて説明する。図16は、キャンバ角マップ372bの内容を模式的に示した模式図である。キャンバ角マップ372bは、車両201の減速度または加速度と車輪202のキャンバ角との関係を記憶したマップであり、図16に示すように、4つのマップによって構成されている。
ここで、図16(a)は、減速時または制動時に車体201の姿勢が前傾となる現象、いわゆるノーズダイブが発生する状態にあり且つ車両201の減速度の変化度合いが小さい場合の、車両201の減速度と車輪202のキャンバ角との関係を示したマップ(以下、「ND_Sマップ」と称す)である。また、図16(b)は、ノーズダイブが発生する状態にあり且つ車両201の減速度の変化度合いが大きい場合の、車両201の減速度と車輪202のキャンバ角との関係を示したマップマップ(以下、「ND_Lマップ」と称す)である。
また、図16(c)は、加速時に車体の姿勢が後傾となる現象、いわゆるノーズリフトが発生する状態にあり且つ車両201の加速度の変化度合いが小さい場合の、車両201の加速度と車輪202のキャンバ角との関係を記憶したマップ(以下、「NL_Sマップ」と称す)である。また、図16(d)は、ノーズリフトが発生する状態にあり且つ車両201の加速度の変化度合いが大きい場合の車両201の加速度と車輪202のキャンバ角との関係を記憶したマップ(以下、「NL_Lマップ」と称す)である。
CPU71は、車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)と、車両201における減速度または加速度の変化度合いとに基づいて、キャンバ角マップ372bを構成する4つのマップから、使用するマップを選択する。そして、選択したマップの内容から、車両201の加減速時および制動時における車体フレームBFの姿勢変化(ノーズダイブおよびノーズリフト)を抑制するべく、車両201の減速度または加速度の大きさに対応して、各車輪202に設定すべきキャンバ角の大きさを算出することができる。
なお、図16(a)〜(d)において、実線Fは左右の前輪202FL,202FRに設定すべきキャンバ角に対応し、実線Rは左右の後輪202RL,202RRに設定すべきキャンバ角に対応する。また、縦軸に示すキャンバ角は、角度0度よりも図16(a)〜(d)下側がマイナス方向(ネガティブ)を、角度0度よりも図16(a)〜(d)上側がプラス方向(ポジティブ)を、それぞれ表している。また、横軸に示す減速度および加速度は、図16(a)〜(d)右側が増加方向を表している。
キャンバ角マップ372bのうち、ND_Sマップによれば、図16(a)に示すように、減速度が0の状態(即ち、車体フレームBFの姿勢が前傾でも後傾でもない状態、車体フレームBFが路面と平行な状態)では、車体フレームBFの姿勢を制御する必要はないので、左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がいずれも0度に規定されている。
なお、その他のマップ(図16(b)〜(d)参照)においても同様に、減速度または加速度が0の状態(即ち、車体フレームBFの姿勢が前傾でも後傾でもない状態、車体フレームBFが路面と平行な状態)では、すべての車輪202のキャンバ角が0度に規定されている。
図16(a)に戻り、ND_Sマップの説明を続ける。減速度が0の状態から増加すると、その増加に伴って、重力の影響により、先ず、車体フレームBFの前方側が徐々に下降してその姿勢が漸次前傾となる。従って、ND_Sマップでは、車体フレームBFの前方側を上昇させて姿勢変化を抑制するべく、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角がプラス方向へ直線的に漸次増加するように規定されている。
一方、減速度が0からD2の範囲(即ち、減速度が小さい範囲)では、車体フレームBFの後方側の上昇量は、前方側の下降量と比較して小さく、無視できる程度である。よって、車体フレームBFの後方側を制御する必要はないので、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がいずれも0度に規定されている。
更に、減速度がD2の状態から増加すると、その増加に伴って、車体フレームBFの後方側が徐々に上昇してその姿勢が漸次前傾となる。よって、車体フレームBFの後方側を下降させて姿勢変化を抑制するべく、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がマイナス方向へ直線的に漸次増加するように規定されている。
なお、左右の前輪202FL,202FRにおけるキャンバ角のプラス方向の増加率は、左右の後輪202RL,202RRにおけるキャンバ角のマイナス方向の増加率よりも大きくなるように規定されている。これは、重力の影響により、車体フレームBFの前方側の下降量が、後方側の上昇量よりも大きいことによる。
そして、減速度が最大値D1(車両201が制御し得る最大の減速度)の状態で、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角がθ1に規定されると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が最大値θ2に規定されている。
次いで、キャンバ角マップ372bのうち、ND_Lマップによれば、図16(b)に示すように、減速度が0の状態から増加すると、その増加に伴って車体フレームBFの前方側が徐々に下降すると共に後方側が徐々に上昇して、その姿勢が漸次前傾となる。従って、車体フレームBFの前方側を上昇させ且つ後方側を下降させて姿勢変化を抑制するべく、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角がプラス方向へ直線的に漸次増加すると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がマイナス方向へ直線的に漸次増加するように規定されている。
ここで、ND_Lマップは、減速度の変化度合いが大きい場合のマップであるので、減速度が小さい範囲であっても、車体フレームBFの後方側は無視できない程度に上昇する。従って、ND_Lマップでは、ND_Sマップ(図16(a)参照)と異なり、減速度が小さい範囲においても、左右の後輪202RL,202RRに対して、マイナス方向(ネガティブ)のキャンバ角を規定している。
また、左右の前輪202FL,202FRにおけるキャンバ角のプラス方向の増加率は、ND_Sマップ(図16(a)参照)と同様に、左右の後輪202RL,202RRにおけるキャンバ角のマイナス方向の増加率よりも大きくなるように規定されている。ただし、左右の前輪202FL,202FRにおけるキャンバ角のプラス方向の増加率、および、左右の後輪202RL,202RRにおけるキャンバ角のマイナス方向の増加率は、共に、ND_Sマップ(図16(a)参照)と比較して、各々大きくなるように規定されている。これは、減速度の変化度合いが大きい場合に、車体フレームBFの前方側の下降量および後方側の上昇量が、減速度の変化度合いが小さい場合よりも大きくなることによる。
ND_Lマップは、減速度がD3の状態で、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角がθ3に規定されると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がθ4に規定されている。ここで、減速度がD3の状態は、車両201の構造によって、車体フレームBFの姿勢が前傾となり得る限界の状態である。従って、減速度がD3から最大値D1の範囲では、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角がθ3に規定されると共に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がθ4に規定されている。
一方、キャンバ角マップ372bのうち、NL_Sマップによれば、図16(c)に示すように、加速度が0の状態から増加すると、その増加に伴って、重力の影響により、先ず、車体フレームBFの後方側が徐々に下降してその姿勢が漸次後傾となる。よって、車体フレームBFの後方側を上昇させて姿勢変化を抑制するべく、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がプラス方向へ直線的に漸次増加するように規定されている。
そして、加速度が0からA2の範囲(即ち、加速度が小さい範囲)では、車体フレームBFの前方側は上昇しない。よって、車体フレームBFの前方側を制御する必要はないので、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角がいずれも0度に規定されている。更に、加速度がA2の状態から増加すると、その増加に伴って、車体フレームBFの前方側が徐々に上昇してその姿勢が漸次後傾となる。よって、車体フレームBFの前方側を下降させて姿勢変化を抑制するべく、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角がマイナス方向へ直線的に漸次増加するように規定されている。
なお、左右の後輪202RL,202RRにおけるキャンバ角のプラス方向の増加率は、左右の前輪202FL,202FRにおけるキャンバ角のマイナス方向の増加率よりも大きくなるように規定されている。これは、重力の影響により、車体フレームBFの後方側の下降量が、前方側の上昇量よりも大きいことによる。
そして、加速度が最大値A1(車両201が制御し得る最大の加速度)の状態で、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がθ5に規定されると共に、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が最大値θ6に規定されている。
次いで、キャンバ角マップ372bのうち、NL_Lマップによれば、図16(d)に示すように、加速度が0の状態から増加すると、NL_Sマップの場合(図16(c)参照)と同様に、その増加に伴って、重力の影響により、先ず、車体フレームBFの後方側が徐々に下降してその姿勢が漸次後傾となる。よって、車体フレームBFの後方側を上昇させて姿勢変化を抑制するべく、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がプラス方向へ直線的に漸次増加するように規定されている。
ただし、NL_Lマップは、加速度の変化度合いが大きい場合のマップであるので、車体フレームBFの後方側の下降量が、NL_Sマップが対象とする加速度の変化度合いが小さい場合よりも大きくなる。従って、左右の後輪202RL,202RRにおけるキャンバ角のプラス方向の増加率は、ND_Sマップ(図16(c)参照)と比較して、大きくなるように規定されている。
一方、加速度が0からA3の範囲(即ち、加速度が小さい範囲)では、ND_Sマップ(図16(c)参照)における加速度が0からA2の範囲と同様に、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角がいずれも0度に規定されている。ただし、加速度の変化度合いが大きいので、車体フレームBFの前方側は、ND_Sマップが対象とする加速度の変化度合いが小さい場合よりも小さな加速度で上昇するようになる。従って、加速度A3は加速度A2よりも小さな値に規定されている。
更に、加速度がA3の状態から増加すると、ND_Sマップ(図16(c)参照)と同様に、その増加に伴って、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角がマイナス方向へ直線的に漸次増加するように規定されている。ただし、加速度の変化度合いが大きいので、車体フレームBFの前方側の上昇量が、ND_Sマップが対象とする加速度の変化度合いが小さい場合よりも大きくなる。従って、左右の前輪202FL,202FRにおけるキャンバ角のマイナス方向の増加率は、ND_Sマップ(図16(c)参照)と比較して、小さくなるように規定されている。
そして、加速度が最大値A1(車両201が制御し得る最大の加速度)の状態で、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がθ7に規定されると共に、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が最大値θ8に規定されている。
このように、キャンバ角マップ372bを構成する4つのマップは、車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)と、減速度または加速度の変化度合いとに応じて、車両201の姿勢変化を抑制できる各車輪202のキャンバ角を規定している。従って、CPU71は、車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)と、減速度または加速度の変化度合いとに基づいて、キャンバ角マップ372bからマップを選択することにより、車両201の姿勢変化を抑制できる最適なキャンバ角を算出し、各車輪202に対して設定することができる。
図15に戻って説明する。RAM373は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、挙動レジスタ373a、変化度合フラグ373b、設定キャンバ角メモリ373c、及び回数カウンタ373dが設けられている。
挙動レジスタ373aは、後述する車両挙動判定処理(図18参照)において、車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)を判定した結果を記憶するためのレジスタである。このレジスタには、車両201においてノーズリフトが発生する状態にあると判定された場合には「2」が記憶され、ノーズダイブが発生する状態にあると判定された場合には「1」が記憶される。また、車両201においてノーズリフトもノーズダイブも発生しない、即ち、車両201において姿勢変化が生じないと判定された場合には「0」が記憶される。
CPU71は、車両挙動判定処理において、アクセルペダルセンサ装置61aの検出結果(アクセルペダル61の踏み込み量)からアクセル開度を算出し、さらに算出したアクセル開度を時間微分してアクセル開度の変化量を算出する。そして、アクセル開度の変化量から加速度が生じるか否かを予測する。ここで、加速度が生じると予測される場合には、この加速度により、車両201においてノーズリフトが発生する状態にあると想定されるので、CPU71は、挙動レジスタに「2」を設定する。
また、加速度が生じないと予測される場合、CPU71は、ブレーキペダルセンサ装置62aの検出結果(ブレーキペダル62の踏み込み量)からブレーキ開度を算出し、さらに算出したブレーキ開度を時間微分してブレーキ開度の変化量を算出する。そして、ブレーキ開度の変化量から減速度が生じるか否かを予測する。ここで、減速度が生じると予測される場合には、この減速度により、車両201においてノーズダイブが発生する状態にあると想定されるので、CPU71は、挙動レジスタに「1」を設定する。
また、加速度が生じないと予測され、且つ、減速度が生じないと予測される場合には、車両201において姿勢変化が生じないと想定されるので、CPU71は、挙動レジスタに「0」を設定する。
変化度合フラグ373bは、後述する車両挙動判定処理(図18参照)において、車両201における加速度または減速度の変化度合いが大きいか小さいかを判断した結果を記憶するためのフラグである。このフラグには、加速度または減速度の変化度合いが大きい場合に「1」が記憶され、加速度または減速度の変化度合いが小さい場合に「0」が記憶される。
CPU71は、車両挙動判定処理において、車両201においてノーズリフトが発生する状態にあると判定された場合(即ち、挙動レジスタ373aに「2」を設定した場合)に、アクセル開度の変化量と規定値メモリ372aに記憶されている第1規定値とに基づいて、加速度の変化度合いが大きいか否かを判断し、その結果を変化度合フラグ373bに記憶する。
また、車両201においてノーズダイブが発生する状態にあると判定された場合(即ち、挙動レジスタ373aに「1」を設定した場合)には、ブレーキ開度の変化量と規定値メモリ372aに記憶されている第2規定値とに基づいて、減速度の変化度合いが大きいか否かを判断し、その結果を変化度合フラグ373bに記憶する。
設定キャンバ角メモリ373cは、後述する加速度キャンバ角算出処理(図19)において算出された各車輪202(左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RR)に設定すべきキャンバ角を記憶するためのメモリである。
CPU71は、加速度キャンバ角算出処理において、挙動レジスタ373aおよび変化度合フラグ373bの内容に基づいて、キャンバ角マップ372bを構成する4つのマップから車両201の状態に適したマップを選択する。そして、選択したマップから、車両201の減速度または加速度に応じて各車輪202(左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RR)に設定すべきキャンバ角を算出し、設定キャンバ角メモリ373cに記憶する。
回数カウンタ373dは、後述するノーズダイブ時実キャンバ角設定処理(図21参照)において、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)から取得した車両201の減速度が規定値メモリ372aに記憶されている第3規定値未満である場合の回数をカウントするカウンタである。また、回数カウンタ373dは、後述するノーズリフト時実キャンバ角設定処理(図22参照)において、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)から取得した車両201の加速度が規定値メモリ372aに記憶されている第5規定値未満である場合の回数をカウントするカウンタも兼ねている。
CPU71は、ノーズダイブ時実キャンバ角設定処理およびノーズリフト時実キャンバ角設定処理において、回数カウンタ373dによるカウントを実行すると共に、回数カウンタ373dを参照して、回数カウンタ373dによってカウントされた値が所定回数(規定値メモリ372aに記憶されている第5規定値)以上になったか否かを判断する。
次いで、図17を参照して、第3実施の形態におけるキャンバ制御処理について説明する。図17は、第3実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置300の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、第3実施の形態におけるキャンバ制御処理に関し、まず、後述する車両挙動判定処理(図18参照)を実行する(S31)。この処理では、車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)と、車両201における減速度または加速度の変化度合いとを判断する。
続いて、後述する加減速キャンバ角算出処理(図19参照)を実行する(S32)。この処理では、車両挙動判定処理により判断された車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)及び減速度または加速度の変化度合いと、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)より取得した減速度または加速度とから、車両201の姿勢変化を抑制するために、各車輪202(左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RR)に設定すべきキャンバ角を算出する。
S32の処理の後、後述する実キャンバ角設定処理(図20参照)を実行し(S33)、キャンバ制御処理を終了する。この実キャンバ角設定処理では、車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)に応じて、左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRに対しキャンバ角を設定する。特に、車両201がノーズダイブを発生する状況では、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が加減速キャンバ角算出処理により算出したキャンバ角となるようにリンク駆動装置43を制御し、車両201がノーズリフトを発生する状況では、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が加減速キャンバ角算出処理により算出したキャンバ角となるようにリンク駆動装置43を制御する。
このように、キャンバ制御処理では、車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)、減速度または加速度の変化度合い、及び、加速度または減速度から、車両201の姿勢変化を抑制するために各車輪202に設定すべきキャンバ角を算出し、ノーズダイブ時には左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が算出したキャンバ角となるよう制御し、ノーズリフト時には左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が算出したキャンバ角となるように制御する。これにより、各車体フレームBFの前方側又は後方側を上昇させることができるので、車体201の姿勢変化を抑制することができる。
次に、図18を参照して、車両挙動判定処理について説明する。図18は、車両挙動判定処理を示すフローチャートである。この処理は、上述したように、車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)と、車両201における減速度または加速度の変化度合いとを判断する処理で、CPU71によって実行されるキャンバ制御処理の中で行われる。
CPU71は、車両挙動判定処理に関し、まず、アクセルペダルセンサ装置61aの検出結果(アクセルペダル61の踏み込み量)から、アクセル開度の変化量を算出する(S41)。そして、アクセル開度の変化量より車両201に加速度が生じると予測されるかを判断する(S42)。ここで、車両201に加速度が生じると予測される場合(S42:Yes)、加速度によって車両201はノーズリフトが発生する状態にあるので、挙動レジスタ373aに「2」を設定する(S43)。
更に、S41の処理で算出したアクセル開度の変化量が規定値メモリ372aに記憶されている第1規定値以上かを判断する(S44)。そして、アクセル開度の変化量が第1規定値以上であると判断される場合(S44:Yes)、加速度の変化度合いが大きいと判断されるので、変化度合フラグ373bに「1」を設定して(S45)、車両挙動判定処理を終了する。一方、アクセル開度の変化量が第1規定値未満であると判断される場合(S44:No)、加速度の変化度合いが小さいと判断されるので、変化度合フラグ373bに「0」を設定して(S46)、車両挙動判定処理を終了する。
一方、S42の処理において、加速度が生じないと予測される場合(S42:No)、次に、ブレーキペダルセンサ装置62aの検出結果(ブレーキペダル62の踏み込み量)から、ブレーキ開度の変化量を算出する(S47)。そして、ブレーキ開度の変化量より車両201に減速度が生じると予測されるかを判断する(S48)。ここで、車両201に減速度が生じると予測される場合(S48:Yes)、減速度によって車両201はノーズダイブが発生する状態にあるので、挙動レジスタ373aに「1」を設定する(S49)。
更に、S47の処理で算出したブレーキ開度の変化量が規定値メモリ372aに記憶されている第2規定値以上かを判断する(S50)。そして、ブレーキ開度の変化量が第2規定値以上であると判断される場合(S50:Yes)、それに応じて減速度の変化度合いが大きいと判断されるので、変化度合フラグ373bに「1」を設定して(S51)、車両挙動判定処理を終了する。一方、ブレーキ開度の変化量が第2規定値未満であると判断される場合(S50:No)、それに応じて減速度の変化度合いが小さいと判断されるので、変化度合フラグ373bに「0」を設定して(S52)、車両挙動判定処理を終了する。
また、S48の処理において、車両201に減速度が生じないと予測される場合(S48:No)、車両201にはノーズリフトもノーズダイブも発生する状態にないと判断できる。よって、車両201において姿勢変化が生じないので、挙動レジスタ373に「0」を設定して(S53)、車両挙動判定処理を終了する。
このように、車両挙動判定処理では、車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)を判断し、その結果を挙動レジスタ373aに記憶することができる。また、車両201の加速度および減速度の変化度合いを判断し、その結果を変化度合フラグ373bに記憶することができる。
また、車両挙動判定処理では、車両201のアクセル開度の変化量から加速度が生じることを予測し、車両201においてノーズリフトが生じる状態であることを判断することができる。更に、車両201のブレーキ開度の変化量から減速度が生じることを予測し、車両201においてノーズダイブが生じる状態であることを判断することができる。このように、本実施の形態では、加速度および減速度を予測して、車両201における挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)を判断しているので、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)によって検出された実際の加速度および減速度から、車両201の挙動を判断する場合と比較して、早期にその判断を行うことができる。
次に、図19を参照して、加速度キャンバ角算出処理について説明する。図19は、加速度キャンバ角算出処理を示すフローチャートである。この処理は、上述したように、車両201の姿勢変化(ノーズダイブ及びノーズリフト)を抑制するために、各車輪202(左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RR)に設定すべきキャンバ角を算出する処理で、CPU71によって実行されるキャンバ制御処理の中で行われる。
CPU71は、加減速キャンバ角算出処理に関し、まず、RAM373から挙動レジスタ373aの内容を読み出し、挙動レジスタ373aが「1」であるかを判断する(S61)。そして、挙動レジスタ373aが「1」であると判断される場合(S61:Yes)、車両201において、減速によるノーズダイブが発生する状態にあるので、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)から減速度を取得し(S62)、S65の処理へ移行する。ここで取得した減速度は、ノーズダイブによる姿勢変化を抑制するための各車輪202(左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RR)に設定すべきキャンバ角を算出する場合に用いられる。
一方、挙動レジスタ373aが「1」でないと判断される場合(S61:No)、続いて、挙動レジスタ373aが「2」であるかを判断する(S63)。そして、挙動レジスタ373aが「2」であると判断される場合(S63:Yes)、車両201において、加速によるノーズリフトが発生する状態にあるので、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)から加速度を取得し(S64)、S65の処理へ移行する。ここで取得した加速度は、ノーズリフトによる姿勢変化を抑制するための各車輪202(左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RR)に設定すべきキャンバ角を算出する場合に用いられる。
また、S63の処理によって、挙動レジスタ373aが「2」でないと判断される場合(S63:No)、以後の処理をスキップして、加減速キャンバ角算出処理を終了する。即ち、この場合、挙動レジスタ373aの内容は「0」であり、車両201はノーズダイブもノーズリフトも発生しない状態(車両201において姿勢変化が生じない状態)であるので、車両201の姿勢変化を抑制するための各車輪202(左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RR)に設定すべきキャンバ角を算出する必要はない。よって、以後の処理をスキップすることにより、CPU71の負荷を減少させることができる。
S65の処理では、RAM373から挙動レジスタ373a及び変化度合フラグ373bの内容を読み出し、キャンバ角マップ372bを構成する4つのマップから、挙動レジスタ373a及び変化度合フラグ373bの内容に対応したマップを選択する。即ち、挙動レジスタ373aの内容が「1」(車両201においてノーズダイブが発生する状態)で且つ変化度合フラグ373bが「0」(減速度の変化度合いが小さい)の場合、ND_Sマップ(図16(a)参照)を選択し、挙動レジスタ373aの内容が「1」(車両201においてノーズダイブが発生する状態)で且つ変化度合フラグ373bが「1」(減速度の変化度合いが大きい)の場合、ND_Lマップ(図16(b)参照)を選択する。
また、挙動レジスタ373aの内容が「2」(車両201においてノーズリフトが発生する状態)で且つ変化度合フラグ373bが「0」(加速度の変化度合いが小さい)の場合、NL_Sマップ(図16(c)参照)を選択し、挙動レジスタ373aの内容が「2」(車両201においてノーズリフトが発生する状態)で且つ変化度合フラグ373bが「1」(減速度の変化度合いが大きい)の場合、NF_Lマップ(図16(d)参照)を選択する。
そして、キャンバ角マップ372bより選択したマップ(ND_Sマップ、ND_Lマップ、NL_Sマップ、又はNL_Lマップ)から、S62の処理で取得した減速度またはS64の処理で取得した加速度に応じて、車両201の姿勢変化を抑制するための各車輪202(左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RR)に設定すべきキャンバ角を算出し、算出したキャンバ角を設定キャンバ角メモリ373cに記憶する(S66)。そして、S66の処理の後、加速度キャンバ角算出処理を終了する。
このように、車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)と減速度または加速度の変化度合いに基づいてマップを選択し、更に、車両201の実際の減速度または加速度に応じて、各201に設定すべきキャンバ角を算出するので、車両201の姿勢変化を抑制できる最適なキャンバ角を左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRに対して算出することができる。
次に、図20を参照して、実キャンバ角設定処理について説明する。図20は、実キャンバ角設定処理を示すフローチャートである。この処理は、上述したように、車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)に応じて、左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RRに対しキャンバ角を設定する処理で、CPU71によって実行されるキャンバ制御処理の中で行われる。
CPU71は、実キャンバ角設定処理に関し、まず、RAM373から挙動レジスタ373aの内容を読み出し、挙動レジスタ373aが「1」であるかを判断する(S71)。そして、挙動レジスタ373aが「1」であると判断される場合(S71:Yes)、設定キャンバ角メモリ373cから、加速度キャンバ角算出処理により算出された設定すべきキャンバ角を読み出し、リンク駆動装置43(FLアクチュエータ43FL及びFRアクチュエータ43FR)を制御して、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が、設定すべきキャンバ角となるように調整する(S72)。
ここで、挙動レジスタ373aが「1」である場合は、車両201において減速によるノーズダイブが発生する状態にある。このとき、重力の影響によって、車体フレームBFの前方側の下降量は、後方側の上昇量よりも大きくなる。従って、S72の処理により、少なくとも左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角を、加速度キャンバ角算出手段により算出された設定すべきキャンバ角に設定することによって、少なくとも車体フレームBFの前方側を上昇させることができる。その結果、車両201の姿勢変化(ノーズダイブ)を十分に抑制することができる。
そして、これにより、左右の前輪202FL,202FRの接地荷重と左右の後輪202RL,202RRの接地荷重との均等化を図ることができるので、各車輪202のグリップ力を発揮させて、減速性能又は制動性能の向上を図ることができる。また、車両201の搭乗者に対し、車体201の姿勢変化を感じさせることを抑制することができるので、減速時又は制動時の乗り心地の向上を図ることができる。さらに、左右の前輪202FL,202FRにキャンバスラストを発生させることができるので、発生させたキャンバスラストをグリップ力として利用することで、左右の前輪202FL,202FRのグリップ力を高めることができる。その結果、車両201の減速性能または制動性能の向上を図ることができる。
続いて、S72の処理の後、RAM373から変化度合フラグ373bの内容を読み出し、変化度合フラグ373bが「0」であるかを判断する(S73)。そして、変化度合フラグ373bが「0」である場合(S73:Yes)、即ち、車両201の減速度の変化度合いが小さい場合、リンク駆動装置43(RLアクチュエータ43RL及びRRアクチュエータ43RR)を制御して、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が0度になるように調整し(S74)、S76の処理へ移行する。
また、変化度合フラグ373bが「1」である場合(S73:No)、即ち、車両201の減速度の変化度合いが大きい場合、設定キャンバ角メモリ373cから、加速度キャンバ角算出処理により算出された設定すべきキャンバ角を読み出し、リンク駆動装置43(RLアクチュエータ43RL及びRRアクチュエータ43RR)を制御して、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が、設定すべきキャンバ角の0.7倍の大きさになるように調整する(S75)。その後、S76の処理へ移行する。
このように、S74及びS75の処理によって、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角は、加速度キャンバ角算出処理により算出した設定すべきキャンバ角ではなく、その設定すべきキャンバ角よりも小さくなるように(即ち、0度もしくは設定すべきキャンバ角の0.7倍の大きさとなるように)、設定される。ここで、S72の処理により、車体フレームBFの前方側が上昇されることによって、車両201のノーズダイブが十分に抑制されており、また、左右の前輪202FL,202FRに対して高いグリップ力が得られている。よって、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を小さく設定しても、車両201の減速度が小さければ、S72の処理による効果を十分に発揮することができる。また、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を小さく設定することにより、キャンバ角を付与することによって発生するキャンバスラストによるグリップ力を、抑制することができる。よって、左右の後輪202RL,202RRの転がり抵抗を小さくでき、左右の後輪202RL,202RRを回転駆動させるために必要なエネルギー消費量を抑制することができる。
更に、減速度の変化度合いが小さい場合、車体フレームBFの後方側の上昇の量はほとんどないので、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を0度に設定しても、車両201のノーズダイブを十分に抑制することができる。一方、減速度の変化度合いが大きい場合は、減速度の変化度合いが小さい場合と比較して、車両フレームBFの後方側の上昇の量が大きくなる。これに対し、本実施の形態では、減速度の変化度合いが大きい場合には、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を、加速度キャンバ角算出手段により算出された設定すべきキャンバ角の0.7倍の大きさに設定し、車体フレームBFの後方を若干下降させる。これにより、車両201のノーズダイブを十分に抑制することができる。
続いて、S76の処理では、ノーズダイブ時実キャンバ角設定処理(図21参照)を実行する。詳細については後述するが、このノーズダイブ時実キャンバ角設定処理では、車両201の減速度が大きい場合に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が、加速度キャンバ角算出手段により算出されたキャンバ角に向かってマイナス方向(ネガティブ)に0.1度ずつインクリメントされるように、リンク駆動装置43(RLアクチュエータ43RL及びRRアクチュエータ43RR)を制御する。また、車両201の減速度が小さい場合には、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を維持する。S76の処理が終了すると、この実キャンバ角設定処理を終了する。
一方、S71の処理において、挙動レジスタ373aが「1」でないと判断される場合(S71:No)、続いて、挙動レジスタ373aが「2」であるかを判断する(S77)。そして、挙動レジスタ373aが「2」である場合(S77:Yes)、設定キャンバ角メモリ373cから、加速度キャンバ角算出処理により算出された設定すべきキャンバ角を読み出し、リンク駆動装置43(RLアクチュエータ43RL及びRRアクチュエータ43RR)を制御して、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が、設定すべきキャンバ角となるように調整する(S78)。
ここで、挙動レジスタ373aが「2」である場合は、車両201において加速によるノーズリフトが発生する状態にある。このとき、重力の影響によって、車体フレームBFの後方側の下降量は、前方側の上昇量よりも大きくなる。従って、S78の処理により、少なくとも左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を、加速度キャンバ角算出手段により算出された設定すべきキャンバ角に設定することによって、少なくとも車体フレームBFの後方側を上昇させることができる。その結果、車両201の姿勢変化(ノーズリフト)を十分に抑制することができる。
そして、これにより、左右の前輪202FL,202FRの接地荷重と左右の後輪202RL,202RRの接地荷重との均等化を図ることができるので、各車輪202のグリップ力を発揮させて、加速性能の向上を図ることができる。また、車両201の搭乗者に対し、車体201の姿勢変化を感じさせることを抑制することができるので、加速時の向上を図ることができる。さらに、左右の後輪202RL,202RRにキャンバスラストを発生させることができるので、発生させたキャンバスラストをグリップ力として利用することで、左右の後輪202RL,202RRのグリップ力を高めることができる。その結果、車両201の加速性能の向上を図ることができる。
続いて、S78の処理の後、RAM373から変化度合フラグ373bの内容を読み出し、変化度合フラグ373bが「0」であるかを判断する(S79)。そして、変化度合フラグ373bが「0」である場合(S79:Yes)、即ち、車両201の加速度の変化度合いが小さい場合、リンク駆動装置43(FLアクチュエータ43FL及びFRアクチュエータ43FR)を制御して、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が0度になるように調整し(S80)、S82の処理へ移行する。
また、変化度合フラグ373bが「1」である場合(S79:No)、即ち、車両201の加速度の変化度合いが大きい場合、設定キャンバ角メモリ373cから、加速度キャンバ角算出処理により算出された設定すべきキャンバ角を読み出し、リンク駆動装置43(FLアクチュエータ43FL及びFRアクチュエータ43FR)を制御して、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が、設定すべきキャンバ角の0.7倍の大きさになるように調整する(S81)。その後、S82の処理へ移行する。
このように、S80及びS81の処理によって、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角は、加速度キャンバ角算出処理により算出した設定すべきキャンバ角ではなく、その設定すべきキャンバ角よりも小さくなるように(即ち、0度もしくは設定すべきキャンバ角の0.7倍の大きさとなるように)、設定される。ここで、S78の処理によって、車体フレームBFの後方側が上昇されることにより、車両201のノーズリフトが十分に抑制されており、また、左右の後輪202RL,202RRに対して高いグリップ力が得られている。よって、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角を小さく設定しても、車両201の加速度が小さければ、S78の処理による効果を十分に発揮することができる。また、左右の前輪202RL,202RRのキャンバ角を小さく設定することにより、キャンバ角を付与することによって発生するキャンバスラストによるグリップ力を、抑制することができる。よって、左右の前輪202RL,202RRの転がり抵抗を小さくでき、左右の前輪202RL,202RRを回転駆動させるために必要なエネルギー消費量を抑制することができる。
更に、加速度の変化度合いが小さい場合、車体フレームBFの前方側の上昇の量はほとんどないので、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角を0度に設定しても、車両201のノーズリフトを十分に抑制することができる。一方、加速度の変化度合いが大きい場合は、加速度の変化度合いが小さい場合と比較して、車両フレームBFの前方側の上昇の量が大きくなる。これに対し、本実施の形態では、加速度の変化度合いが大きい場合には、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角を、加速度キャンバ角算出手段により算出された設定すべきキャンバ角の0.7倍の大きさに設定し、車体フレームBFの前方を若干下降させる。これにより、車両201のノーズリフトを十分に抑制することができる。
続いて、S82の処理では、ノーズリフト時実キャンバ角設定処理(図22参照)を実行する。詳細については後述するが、このノーズリフト時実キャンバ角設定処理では、車両201の加速度が大きい場合に、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が、加速度キャンバ角算出手段により算出されたキャンバ角に向かってマイナス方向(ネガティブ)に0.1度ずつインクリメントされるように、リンク駆動装置43(FLアクチュエータ43FL及びFRアクチュエータ43FR)を制御する。また、車両201の加速度が小さい場合には、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角を維持する。S82の処理が終了すると、この実キャンバ角設定処理を終了する。
また、S77の処理において、挙動レジスタ373aが「2」でないと判断された場合(S77:No)、挙動レジスタ373aは「0」、即ち、車両201はノーズダイブもノーズリフトも生じない状態であるので、リンク駆動装置43を制御して、各車輪202(左右の前輪202FL,202FR及び左右の後輪202RL,202RR)のキャンバ角をすべて0度に設定する。これにより、各車輪202にキャンバスラストが発生せず、グリップ力も生じないため、各車輪202の転がり抵抗を小さくできる。よって、各車輪202を回転駆動させるために必要なエネルギー消費量を抑制することができる。
次に、図21を参照して、ノーズダイブ時実キャンバ角設定処理について説明する。図21は、ノーズダイブ時実キャンバ角設定処理を示すフローチャートである。この処理は、上述したように、車両201がノーズダイブを発生する状態にある場合に、車両201の減速度に応じて、左右の後輪202RL,202RRに設定するキャンバ角を調整する処理で、CPU71によって実行される実キャンバ角設定処理の中で行われる。
CPU71は、ノーズダイブ時実キャンバ角設定処理に関し、まず、RAM373の回数カウンタ373dを「0」にする(S91)。これにより、車両201の減速度が小さいと判断された回数をカウントする回数カウンタ373dを初期化する。
次いで、リンク駆動装置43の検出結果(油圧シリンダの伸縮量)から、左右の後輪202RL,202RRに設定されているキャンバ角を算出し、その算出した左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が、設定キャンバ角メモリ373cに記憶されたキャンバ角(即ち、加減速キャンバ角算出処理により算出された設定すべきキャンバ角)未満であるかを判断する(S92)。
ここで、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が、設定すべきキャンバ角以上であると判断される場合は(S92:No)、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角は、すでに、加減速キャンバ角算出処理で算出された設定すべきキャンバ角となっているので、残りの処理をスキップしてノーズダイブ実キャンバ角設定処理を終了する。
一方、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が、設定すべきキャンバ角未満であると判断される場合(S92:Yes)、次いで、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)から車両201の減速度を取得し、その車両201の減速度が規定値メモリ372aに記憶されている第3規定値以上であるかを判断する(S93)。
そして、車両201の減速度が第3規定値以上であると判断される場合(S93:Yes)、リンク駆動装置43(RLアクチュエータ43RL及びRRアクチュエータ43RR)を制御し、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に0.1度だけインクリメントされるように調整する(S94)。そして、S94の処理の後、S92の処理へ回帰する。
一方、車両201の減速度が第3規定値未満であると判断される場合(S93:No)、回数カウンタ373dの値を「1」だけインクリメントする(S95)。次いで、回数カウンタ373dの値が規定値メモリ372aに記憶されている第5規定値以上であるかを判断し(S96)、回数カウンタ373dが第5規定値未満であると判断される場合には(S96:No)、S92の処理へ回帰する。また、回数カウンタ373dの値が第5規定値以上である場合には(S96:Yes)、ノーズダイブ時実キャンバ角設定処理を終了する。
これにより、ノーズダイブ時実キャンバ角設定処理では、車両201の減速度が大きい(第3規定値以上)の場合には、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が、加減速キャンバ角算出処理により算出された設定すべきキャンバ角の大きさとなるまで、マイナス方向(ネガティブ)に0.1度ずつインクリメントされる。従って、車両201の減速度が大きい場合には、車体フレームBFの後方側を漸次下降させることができる。
また、車両201の減速度が小さい(第3規定値未満)の場合には、回数カウンタ372dがカウントアップされ、回数カウンタ372dの値が所定回数(第5規定値)に達するまで、車両201の減速度が大きくなる(第3規定値以上になる)か否かが監視される。従って、回数カウンタ372dの値が所定回数(第5規定値)に達するまでに、車両201の減速度が大きくなる(第3規定値以上になる)場合があれば、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が、加減速キャンバ角算出処理により算出された設定すべきキャンバ角の大きさとなるまで、マイナス方向(ネガティブ)に0.1度ずつインクリメントすることができる。
従って、減速度が大きい場合には、大きく上昇する車体フレームBFの後方側を確実に下降させることができるので、大きく前傾するノーズダイブを確実に抑制することができる。また、左右の後輪202RL,202RRに対しても確実に接地荷重を加えることができる。よって、左右の後輪202RL,202RRのグリップ力を発揮させて、減速性能又は制動性能の向上を図ることができる。
一方、車両201の減速度が小さい(第3規定値未満)の場合は、左右の後輪202RL,202RRに対して制御を行わない。即ち、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角は維持される。具体的には、車両201の減速度が一度も第3規定値以上とならなかった場合は、実キャンバ角設定処理にて左右の後輪202RL,202RRに設定されたキャンバ角(0度または加減速キャンバ角算出処理により算出された設定すべきキャンバ角の0.7倍の大きさ)がそのまま維持される。また、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が、マイナス方向(ネガティブ)に0.1度ずつインクリメントされる途中で、車両201の減速度が小さくなった場合は、左右の後輪202RL,202RRには、そのインクリメントされている途中のキャンバ角が維持される。
減速度が小さい場合には、車体フレームBFの後方側の上昇が小さいので、左右の後輪202RL,202RRには所定の接地荷重がかかっている状態にある。よって、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を維持することにより、左右の後輪202RL,202RRに対して、グリップ力が過剰に付与されるのを抑制することができる。従って、グリップ力の増大により左右の後輪202RL,202RRの転がり抵抗が大きくなり、左右の後輪202RL,202RRを回転駆動させるために必要なエネルギー消費量が増加することを抑制することができる。
次に、図22を参照して、ノーズリフト時実キャンバ角設定処理について説明する。図22は、ノーズリフト時実キャンバ角設定処理を示すフローチャートである。この処理は、上述したように、車両201がノーズリフトを発生する状態にある場合に、車両201の加速度に応じて、左右の前輪202FL,202FRに設定するキャンバ角を調整する処理で、CPU71によって実行される実キャンバ角設定処理の中で行われる。
CPU71は、ノーズリフト時実キャンバ角設定処理に関し、まず、RAM373の回数カウンタ373dを「0」にする(S101)。これにより、車両201の加速度が小さいと判断された回数をカウントする回数カウンタ373dを初期化する。
次いで、リンク駆動装置43の検出結果(油圧シリンダの伸縮量)から、左右の前輪202FL,202FRに設定されているキャンバ角を算出し、その算出した左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が、加減速キャンバ角算出処理により算出され且つ設定キャンバ角メモリ373cに記憶された設定すべきキャンバ角未満であるかを判断する(S102)。
ここで、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が、設定すべきキャンバ角以上であると判断される場合(S102:No)、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角は、すでに、加減速キャンバ角算出処理で算出された設定すべきキャンバ角となっているので、残りの処理をスキップしてノーズリフト実キャンバ角設定処理を終了する。
一方、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が、設定すべきキャンバ角未満であると判断される場合(S102:Yes)、次いで、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)から車両201の加速度を取得し、その車両201の加速度が規定値メモリ372aに記憶されている第4規定値以上であるかを判断する(S103)。
そして、車両201の加速度が第4規定値以上であると判断される場合(S103:Yes)、リンク駆動装置43(FLアクチュエータ43FL及びFRアクチュエータ43FR)を制御し、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に0.1度だけインクリメントされるように調整する(S104)。そして、S104の処理の後、S102の処理へ回帰する。
一方、車両201の加速度が第4規定値未満であると判断される場合(S103:No)、回数カウンタ373dの値を「1」だけインクリメントする(S105)。次いで、回数カウンタ373dの値が規定値メモリ372aに記憶されている第5規定値以上であるかを判断し(S106)、回数カウンタ373dが第5規定値未満であると判断される場合には(S106:No)、S102の処理へ回帰する。また、回数カウンタ373dの値が第5規定値以上である場合には(S106:Yes)、ノーズリフト時実キャンバ角設定処理を終了する。
これにより、ノーズリフト時実キャンバ角設定処理では、車両201の加速度が大きい(第4規定値以上)の場合には、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が、加減速キャンバ角算出処理により算出された設定すべきキャンバ角の大きさとなるまで、マイナス方向(ネガティブ)に0.1度ずつインクリメントされる。従って、車両201の加速度が大きい場合には、車体フレームBFの前方側を漸次下降させることができる。
また、車両201の加速度が小さい(第4規定値未満)の場合には、回数カウンタ372dがカウントアップされ、回数カウンタ372dの値が所定回数(第5規定値)に達するまで、車両201の加速度が大きくなる(第4規定値以上になる)か否かが監視される。従って、回数カウンタ372dの値が所定回数(第5規定値)に達するまでに、車両201の加速度が大きくなる(第4規定値以上になる)場合があれば、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が、加減速キャンバ角算出処理により算出された設定すべきキャンバ角の大きさとなるまで、マイナス方向(ネガティブ)に0.1度ずつインクリメントすることができる。
従って、加速度が大きい場合には、大きく上昇する車体フレームBFの前方側を確実に下降させることができるので、大きく後傾するノーズリフトも確実に抑制することができる。また、左右の前輪202FL,202RRに対しても確実に接地荷重を加えることができる。よって、左右の前輪202FL,202RRのグリップ力を発揮させて、加速性能の向上を図ることができる。
一方、車両201の加速度が小さい(第4規定値未満)の場合は、左右の前輪202FL,202FRに対して制御を行わない。即ち、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角は維持される。具体的には、車両201の加速度が一度も第4規定値以上とならなかった場合は、実キャンバ角設定処理にて左右の前輪202FL,202FRに設定されたキャンバ角(0度または加減速キャンバ角算出処理により算出された設定すべきキャンバ角の0.7倍の大きさ)がそのまま維持される。また、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角が、マイナス方向(ネガティブ)に0.1度ずつインクリメントされる途中で、車両201の加速度が小さくなった場合は、左右の前輪202FL,202FRには、そのインクリメントされている途中のキャンバ角が維持される。
加速度が小さい場合には、車体フレームBFの前方側の上昇が小さいので、左右の前輪202FL,202FRには所定の接地荷重がかかっている状態にある。よって、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角を維持することにより、左右の前輪202FL,202FRにグリップ力が過剰に付与されるのを抑制することができる。従って、グリップ力の増大により左右の前輪202FL,202FRの転がり抵抗が大きくなり、左右の前輪202FL,202FRを回転駆動させるために必要なエネルギー消費量が増加することを抑制することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、減速時には左右の前輪202FL,202FRに対して加減速キャンバ角算出処理で算出された設定すべきキャンバ角を設定し、加速時には左右の後輪202RL,202RRに対して加減速キャンバ角算出処理で算出された設定すべきキャンバ角を設定する。これにより、減速時には車体フレームBFの前方側を上昇させ、加速時には車体フレームBFの後方側を上昇させることができ、減速時や加速時に発生する車両201のノーズダイブやノーズリフトを抑制することができる。よって、車両201の重心移動を抑制することができ、左右の前輪202FL,202RLの接地荷重と後輪202RL,202RRの接地荷重との均等化を図ることができる。従って、各車輪202のグリップ力を発揮させて、加減速性能又は制動性能の向上を図ることができる。
一方、減速時において、左右の後輪202RL,202RRに対しては、車両201の減速度が大きい場合(第3規定値以上である場合)に、そのキャンバ角が加減速キャンバ角算出処理で算出された設定すべきキャンバ角となるように漸次そのキャンバ角を増加させ、車両201の減速度が小さい場合(第3規定値未満である場合)に、そのキャンバ角を維持する。これにより、減速度が大きい場合は、上昇量が大きくなる車体フレームBFの後方側を下降させることができ、確実にノーズダイブを抑制することができる。また、減速度が小さい場合は、左右の前輪202FL,202FRに対して付与されたキャンバ角によって必要なグリップ力が得られているので、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を維持することによって、グリップ力が過剰に付与されることを抑制することができる。これにより、グリップ力の増大によって左右の後輪202RL,202RRの転がり抵抗が大きくなり、各車輪202を回転駆動させるために必要なエネルギー消費量が増加することを抑制することができる。
また、加速時においては、左右の前輪202FL,202FRに対して、車両201の加速度が大きい場合(第4規定値以上である場合)に、そのキャンバ角が加減速キャンバ角算出処理で算出された設定すべきキャンバ角となるように漸次そのキャンバ角を増加させ、車両201の加速度が小さい場合(第4規定値未満である場合)に、そのキャンバ角を維持する。これにより加速度が大きい場合は、上昇量が大きくなる車体フレームBFの前方側を下降させることができ、確実にノーズリフトを抑制することができる。また、加速度が小さい場合は、左右の後輪202RL,202RRに対して付与されたキャンバ角によって必要なグリップ力が得られているので、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角を維持することによって、グリップ力が過剰に付与されることを抑制することができる。これにより、グリップ力の増大によって左右の前輪202FL,202FRの転がり抵抗が大きくなり、各車輪202を回転駆動させるために必要なエネルギー消費量が増加することを抑制することができる。
その結果、各車輪202のグリップ力を高めると共にそのグリップ力を発揮させて、車両201の加減速性能および制動性能の向上を図りつつ、車両201のエネルギー消費量を抑制することができる。
なお、請求項1に記載のキャンバ制御手段としては、図20に示すフローチャート(実キャンバ角設定処理)におけるS72,S74,S75,S78,S80,及びS81の処理と、図21に示すフローチャート(ノーズダイブ時実キャンバ角設定処理)におけるS94の処理と、図22に示すフローチャート(ノーズリフト時実キャンバ角設定処理)におけるS104の処理とが該当する。また、状態判断手段としては、図18に示すフローチャート(車両挙動判定処理)におけるS42及びS48の処理が該当する。また、加速度レベル判断手段としては、図21に示すフローチャート(ノーズダイブ時実キャンバ角設定処理)におけるS93の処理と、図22に示すフローチャート(ノーズリフト時実キャンバ角設定処理)におけるS103の処理とが該当する。また、キャンバ角算出手段としては、図19に示すフローチャート(加減速キャンバ角算出処理)におけるS66の処理が該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。また、上記各実施の形態における構成の一部または全部を他の実施の形態における構成の一部または全部と組み合わせることは当然可能である。
上記第1実施の形態では、車両1が加速状態である場合に、前輪(左右の前輪2FL,2FR)のキャンバ角をマイナス方向に調整すると共に後輪(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を0度に調整することで、車体フレームBFの前方側を下降させて、車体フレームBFのノーズリフトを抑制する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、前輪(左右の前輪2FL,2FR)のキャンバ角を0度に調整すると共に後輪(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角をプラス方向に調整することで、車体フレームBFの後方側を上昇させて、車体フレームBFのノーズリフトを抑制しても良い。
また、上記第1実施の形態では、車両1が減速状態である場合に、後輪(左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角をマイナス方向に調整すると共に前輪(左右の前輪2FL,2FR)のキャンバ角を0度に調整することで、車体フレームBFの後方側を下降させて、車体フレームBFのノーズダイブを抑制する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、後輪(左右の前輪2FL,2FR)のキャンバ角を0度に調整すると共に前輪(左右の前輪2FL,2FR)のキャンバ角をプラス方向に調整することで、車体フレームBFの前方側を上昇させて、車体フレームBFのノーズダイブを抑制しても良い。
上記第1実施の形態では、車両1の正面視において、キャンバ軸44を車輪2の中心線Mよりも車両1の内側に配置することで、車輪2のキャンバ角がプラス方向に調整されると、車体フレームBFが上昇する一方、車輪2のキャンバ角がマイナス方向に調整されると、車体フレームBFが下降する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、キャンバ軸44を車輪2の中心線Mよりも車両1の外側に配置することで、車輪2のキャンバ角がプラス方向に調整されると、車体フレームBFが下降する一方、車輪2のキャンバ角がマイナス方向に調整されると、車体フレームBFが上昇するように構成しても良い。
上記第2実施の形態では、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)により検出された車両201の加速度に基づいて、ピッチ角マップ72aからピッチ角を取得する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、アクセルペダルセンサ装置61a及びブレーキペダルセンサ装置62aにより検出されたアクセルペダル61及びブレーキペダル62の踏み込み状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に基づいて、ピッチ角を取得しても良く、或いは、ジャイロセンサ装置83により検出された車両201(車体フレームBF)の回転角速度からピッチ角を取得しても良い。即ち、ピッチ角を取得できれば良く、その取得方法については限定されるものではない。
上記第2実施の形態では、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)により検出された車両201の加速度に基づいて、ピッチ角マップ72aからピッチ角を取得し、リンク駆動装置43を制御する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)により検出された車両201の加速度に基づいて、直接リンク駆動装置43を制御しても良く、或いは、アクセルペダルセンサ装置61a及びブレーキペダルセンサ装置62aにより検出されたアクセルペダル61及びブレーキペダル62の踏み込み状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に基づいて、直接リンク駆動装置43を制御しても良い。即ち、必ずしもピッチ角を取得する必要はない。この場合には、制御を簡素化することができ、制御負担の軽減を図ることができる。
上記第2実施の形態では、車体フレームBFの姿勢変化を抑制するべく、キャンバ角マップ72bから取得したキャンバ角となるように、車輪202のキャンバ角を調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、規定角度(例えば1度)だけ調整しても良い。この場合には、制御を簡素化することができ、制御負担の軽減を図ることができる。
上記第3実施の形態では、アクセルペダルセンサ装置61aの検出結果(アクセルペダル61の踏み込み量)から算出したアクセル開度の変化量と、ブレーキペダルセンサ装置62aの検出結果(ブレーキペダル62の踏み込み量)から算出したブレーキ開度の変化量とに基づいて、加速度および減速度の発生の有無を予測し、車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)を判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)の検出結果(加速度)から、車両201の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)を判断してもよい。また、車両201が、車両201の加速度(又は減速度)を算出する手段を備えていれば、その手段によって算出される加速度(又は減速度)に基づいて、車両の挙動(ノーズダイブの発生の有無およびノーズリフトの発生の有無)を判断してもよい。
また、車両201に変速機が設けられている場合には、その変速機の状態から、加速度および減速度の発生の有無を予測してもよい。例えば、変速装置の制御信号からシフトダウンを検出して、加速度の発生の有無を予測するようにしてもよい。また、車両201に設けられた制動装置の状態から、減速度の発生の有無を予測してもよい。例えば、制動装置においてアンチロックブレーキ制御が行われるか否かによって、減速度の発生の有無を検出するようにしてもよい。
上記第3実施の形態では、アクセルペダルセンサ装置61aの検出結果(アクセルペダル61の踏み込み量)から算出したアクセル開度の変化量と、ブレーキペダルセンサ装置62aの検出結果(ブレーキペダル62の踏み込み量)から算出したブレーキ開度の変化量とに基づいて、車両201の加速度の変化度合い及び減速度の変化度合いを判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)の検出結果(加速度)から、車両201の加速度の変化度合い及び減速度の変化度合いを判断してもよい。また、車両201が、車両201の加速度(又は減速度)を算出する手段を備えていれば、その手段によって算出される加速度(又は減速度)に基づいて、車両201の加速度の変化度合い及び減速度の変化度合いを判断してもよい。
上記第3実施の形態では、車両201においてノーズダイブが発生する状況にある場合に、左右の前輪202FL,202FRに対して、加減速キャンバ角算出処理で算出された設定すべきキャンバ角を設定し、左右の後輪202RL,202RRに対しては、車両201の減速度の大きさに応じて、そのキャンバ角をマイナス方向(ネガティブ)に漸次増加させるか、維持するように制御する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、左右の後輪202RL,202RRに対して、加減速キャンバ角算出処理で算出された設定すべきキャンバ角を設定し、左右の前輪202FL,202FRに対しては、車両201の減速度の大きさに応じて、そのキャンバ角をプラス方向(ポジティブ)に漸次増加させるか、維持するように制御してもよい。
上記第3実施の形態では、車両201においてノーズリフトが発生する状況にある場合に、左右の後輪202RL,202RRに対して、加減速キャンバ角算出処理で算出された設定すべきキャンバ角を設定し、左右の前輪202FL,202FRに対しては、車両201の加速度の大きさに応じて、そのキャンバ角をマイナス方向(ネガティブ)に漸次増加させるか、維持するように制御する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、左右の前輪202FL,202FRに対して、加減速キャンバ角算出処理で算出された設定すべきキャンバ角を設定し、左右の後輪202RL,202RRに対しては、車両201の加速度の大きさに応じて、そのキャンバ角をプラス方向(ポジティブ)側に漸次増加させるか、維持するように制御してもよい。
上記第3実施の形態では、車両201がノーズダイブ(又はノーズリフト)が発生する状態にある場合に、車両201の減速度(又は加速度)が大きいときに、左右の後輪202RL,202RR(又は左右の前輪202FL,202FR)に対して、そのキャンバ角を漸次増加するように制御する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、減速度(又は加速度)が大きい場合に、左右の後輪202RL,202RR(又は左右の前輪202FL,202FR)のキャンバ角を、加減速キャンバ角算出処理で算出された設定すべきキャンバ角となるように設定してもよい。この場合には、制御を簡素化することができ、制御負担の軽減を図ることができる。
上記第3実施の形態では、アクセルペダルセンサ装置61aの検出結果(アクセルペダル61の踏み込み量)より算出したアクセル開度の変化量が、規定値メモリ372aに記憶されている第1規定値以上であると判断される場合に、加速度の変化度合いが大きいと判断する場合を説明したが(図18のS44参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、アクセル開度が第1規定値よりも大きいか否かを判断するようにしてもよい。
上記第3実施の形態では、ブレーキペダルセンサ装置62aの検出結果(ブレーキペダル62の踏み込み量)より算出したアクセル開度が、規定値メモリ372aに記憶されている第2規定値以上であると判断される場合に、減速度の変化度合いが大きいと判断する場合を説明したが(図18のS50参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、ブレーキ開度が第2規定値よりも大きいか否かを判断するようにしてもよい。
上記第3実施の形態では、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)から取得した減速度が、規定値メモリ372aに記憶されている第3規定値以上であると判断される場合に、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角をインクリメントする場合を説明したが(図21のS93)、必ずしもこれに限られるものではなく、減速度が第3規定値よりも大きいか否かを判断するようにしてもよい。
上記第3実施の形態では、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a)から取得した加速度が、規定値メモリ372aに記憶されている第4規定値以上であると判断される場合に、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角をインクリメントする場合を説明したが(図22のS103)、必ずしもこれに限られるものではなく、加速度が第4規定値よりも大きいか否かを判断するようにしてもよい。
上記各実施の形態では、車両1,201の加速度に基づいて、車体フレームBFの姿勢変化を抑制する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、接地荷重センサ装置82により検出された検出結果(車輪2,202の接地面が路面から受ける荷重)に基づいて、リンク駆動装置43を制御することで、車体フレームBFの姿勢変化を抑制しても良い。この場合には、前輪の接地荷重と後輪の接地荷重との差が小さくなるように、リンク駆動装置43を制御することで、上記各実施の形態の場合と同様に、前輪の接地荷重と後輪の接地荷重との均等化を図ることができるので、車輪2,202のグリップ力を発揮させて、加減速性能および制動性能の向上を図ることができる。