以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における制御装置100が搭載される車両1の上面視を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印FWDは、車両1の前進方向を示す。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら各車輪2の内の一部(本実施の形態では左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2のキャンバ角を調整する懸架装置4と、その懸架装置4に支持される車体フレームBFと、ステアリング63の操作に伴って各車輪2の内の一部(本実施の形態では左右の前輪2FL,2FR)を操舵するステアリング装置5とを主に備え、車輪2のキャンバ角を調整して車輪2の性能を発揮させることで、悪路走行時における乗り心地の向上を図ることができるように構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の進行方向FWD前方側に位置する左右の前輪2FL,2FRと、進行方向FWD後方側に位置する左右の後輪2RL,2RRとの4輪を備えている。また、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3から付与される回転駆動力により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動する従動輪として構成されている。なお、車輪2の詳細構成については、図5を参照して後述する。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与して回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3aにより構成されている(図4参照)。電動モータ3aは、図1に示すように、ディファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して、左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の踏み込み状態に応じた回転速度で回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、ディファレンシャルギヤにより吸収される。
懸架装置4は、いわゆるサスペンションとして機能する装置であり、図1に示すように、各車輪2に対応して配設されている。また、本実施の形態における懸架装置4は、上述したように、車輪2のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置としての機能を兼ね備えている。
ここで、図2及び図3を参照して、懸架装置4の詳細構成について説明する。図2及び図3は、懸架装置4の正面図であり、図3(a)は、車輪2のキャンバ角がプラス方向(ポジティブ)に調整された状態が図示され、図3(b)は、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に調整された状態が図示されている。なお、図2及び図3では、発明の理解を容易とするために、ドライブシャフト31等の図示を省略し、図面を簡素化している。また、各懸架装置4の構成は、それぞれ共通であるので、右の前輪2FRに対応する懸架装置4を代表例として、図2及び図3に図示する。
懸架装置4は、図2に示すように、ストラット式(マクファーソン式)の機構により構成され、アクスルハブ41と、サスペンションアーム42と、FRアクチュエータ43FRとを主に備えている。
アクスルハブ41は、車輪2を回転可能に支持するものであり、図2に示すように、車両1の内側(図2右側)から車輪2を支持すると共に、サスペンションアーム42を介してFRアクチュエータ43FRに連結されている。サスペンションアーム42は、アクスルハブ41をFRアクチュエータ43FRに連結するものであり、第1〜第3アーム42a〜42cを備えている。
第1アーム42a及び第2アーム42bは、一端(図2左側)がアクスルハブ41の上部(図2上側)及び下部(図2下側)にそれぞれ軸支される一方、他端(図2右側)が第3アーム42cの上端(図2上側)及び下端(図2下側)にそれぞれ軸支されている。また、第1アーム42a及び第2アーム42bは、互いに対向して配置されると共に、第3アーム42cは、アクスルハブ41に対向して配置されている。これにより、アクスルハブ41とサスペンションアーム42(第1〜第3アーム42a〜42c)とにより、4節のリンク機構が構成される。
なお、サスペンションアーム42には、路面Gから車体フレームBFに伝わる衝撃を緩和するコイルばね及びそのコイルばねの振動を減衰させるショックアブソーバ(いずれも図示せず)が配設されている。
FRアクチュエータ43FRは、サスペンションアーム42と車体フレームBFとを連結するものであり、油圧シリンダにより構成されている。このFRアクチュエータ43FRは、図2に示すように、本体部(図2上側)が車体フレームBFに軸支される一方、ロッド部(図2下側)が第3アーム42cに軸支されている。
ここで、第2アーム42bは、キャンバ軸44を介してアクスルハブ41に軸支されており、FRアクチュエータ43FRが伸縮駆動されると、アクスルハブ41とサスペンションアーム42とにより構成されるリンク機構(以下、単に「リンク機構」と称す。)が屈伸し、キャンバ軸44を中心軸として車輪2が揺動する(図3参照)。
即ち、一般に、車輪2は、路面Gとの間の摩擦により、路面Gに対して滑りを生じないため、リンク機構は、車輪2の接地面に最も近くに配置されるキャンバ軸44を固定軸として屈伸する。その結果、キャンバ軸44を中心軸として車輪2が揺動する。
また、キャンバ軸44は、アクスルハブ41が車輪2を車両1の内側から支持する構成であるので、車両1の正面視において、車輪2の中心線Mよりも車両1の内側(図2右側)に配置されている。
上述したように構成される懸架装置4によれば、図3(a)及び図3(b)に示すように、図2に示す状態からFRアクチュエータ43FRが伸縮駆動されると、リンク機構が屈伸し、車輪2がキャンバ軸44を中心軸として矢印A方向または矢印B方向へ揺動することで、車輪2のキャンバ角が調整される。また、FRアクチュエータ43FRが伸縮駆動されると、リンク機構が屈伸し、FRアクチュエータ43FRを介してサスペンションアーム42に連結された車体フレームBFが昇降することで、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hが変更される。即ち、FRアクチュエータ43FRを伸縮駆動することで、車輪2のキャンバ角を調整するのと同時に、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hを変更することができる。
ここで、本実施の形態では、上述したように、車両1の正面視において、キャンバ軸44が車輪2の中心線Mよりも車両1の内側に配置される構成であるので、図3(a)に示すように、FRアクチュエータ43FRを収縮駆動することで、車輪2のキャンバ角をプラス方向(ポジティブ)に調整することができる。同時に、車体フレームBFが上昇することで、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hを広げることができる。
一方、図3(b)に示すように、FRアクチュエータ43FRを伸長駆動することで、車輪2のキャンバ角をマイナス方向(ネガティブ)に調整することができる。同時に、車体フレームBFが下降することで、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hを縮めることができる。
図1に戻って説明する。ステアリング装置5は、ラックアンドピニオン式の機構により構成され、ステアリングシャフト51と、フックジョイント52と、ステアリングギヤ53と、タイロッド54と、ナックル55とを主に備えている。
このステアリング装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作は、まず、ステアリングシャフト51を介してフックジョイント52に伝達されると共に、フックジョイント52により角度を変えられつつ、ステアリングギヤ53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動して、ナックル55を押し引きすることで、車輪2の操舵角が調整される。
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の踏み込み状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3の制御が行われる。ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作に伴って、車輪2がステアリング装置5により操舵される。
同様に、車高調整スイッチ64は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(オン/オフ)に応じて、リンク駆動装置43の制御が行われる。また、車高調整スイッチ64は、原位置スイッチ64aと、上昇スイッチ64bと、下降スイッチ64cとを備えており、各スイッチ64a〜64cは、押下された場合にオンの状態となる押しボタン式のオン/オフスイッチとして構成されている。
なお、原位置スイッチ64aがオンの状態は車体フレームBFと路面Gとの間隔H(図2参照)を予め設定された間隔に復帰させることが運転者により指示された状態に、上昇スイッチ64bがオンの状態は車体フレームBFと路面Gとの間隔Hを広げることが運転者により指示された状態に、下降スイッチ64cがオンの状態は車体フレームBFと路面Gとの間隔Hを縮めることが運転者により指示された状態に、それぞれ対応する。
制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62の踏み込み状態を検出し、その検出結果に応じて車輪駆動装置3を制御することで、各車輪2を回転駆動する。また、車高調整スイッチ64の操作状態を検出し、その検出結果に応じてリンク駆動装置43を制御することで、各車輪2のキャンバ角を調整して、車体フレームBFと路面Gとの間隔H(図2参照)を変更する。或いは、後述するキャンバ制御処理(図8参照)において、走行路が悪路であるか否かを判断し、その判断結果に応じてリンク駆動装置43を制御する。
ここで、図4を参照して、制御装置100の詳細構成について説明する。図4は、制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。制御装置100は、図4に示すように、CPU71、EEPROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の複数の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置であり、計時回路71aが設けられている。計時回路71aは、時間を計測するための回路であり、この計時回路71aにより計時を行うことができる。
EEPROM72は、CPU71によって実行される制御プログラムや固定値データ等を書き換え可能に記憶すると共に、電源遮断後も内容を保持可能な不揮発性のメモリであり、RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。また、EEPROM72には、図8に図示されるフローチャート(キャンバ制御処理など)のプログラムが格納されると共に、規定値メモリ72a、規定時間メモリ72b及び履歴メモリ72cが設けられている。
規定値メモリ72aは、後述するキャンバ制御処理(図8参照)において、走行路が悪路であるか否かを判断するための閾値となる車体フレームBF(図1参照)の車両1高さ方向(図1紙面表裏方向)の加速度を記憶するメモリであり、設計段階で予め設定された数値が記憶されている。
CPU71は、この規定値メモリ72aの内容に基づいて、走行路が悪路であるか否かを判断することができる。なお、本実施の形態では、CPU71は、後述する上下方向加速度センサ81cの検出結果(加速度)が既定値メモリ72aに記憶されている閾値(加速度)よりも大きい状態が規定時間継続した場合に、走行路が悪路であると判断する。
規定時間メモリ72bは、キャンバ制御処理において、走行路が悪路であるか否かを判断するための閾値となる時間を記憶するメモリであり、規定値メモリ72aの内容と同様に、設計段階で予め設定された数値が記憶されている。
CPU71は、この規定時間メモリ72bの内容に基づいて、走行路が悪路であるか否かを判断することができる。なお、本実施の形態では、上述したように、CPU71は、上下方向加速度センサ81cの検出結果(加速度)が規定値メモリ72aに記憶されている閾値(加速度)よりも大きい状態が規定時間継続した場合に、走行路が悪路であると判断するが、かかる状態の継続時間を計時回路71aにより計測し、その計測結果(継続時間)が規定時間メモリ72bに記憶されている閾値(時間)を経過した場合に、走行路が悪路であると判断する。
履歴メモリ72cは、過去に走行した走行路の情報(走行路が悪路であることを識別する識別情報など)を広域座標系の位置情報に対応付けて記憶するメモリであり、後述するナビゲーション装置82のマンマシンインタフェース(操作部)から運転者により書き込み可能に構成されている。CPU71は、この履歴メモリ72cの内容に基づいて、走行路の情報を得ることができる。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの命令に基づいて制御する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
リンク駆動装置43は、上述したように、リンク機構を屈伸させることで車輪2を揺動駆動するための装置であり、リンク機構に屈伸のための駆動力を付与する4個のFL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRと、それら各アクチュエータ43FL〜43RRをCPU71からの命令に基づいて制御する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRは、上述したように、油圧シリンダにより構成され、各油圧シリンダにオイル(油圧)を供給する油圧ポンプ(図示せず)と、その油圧ポンプから各油圧シリンダに供給されるオイルの供給方向を切り換える電磁弁(図示せず)とを主に備えて構成されている。
CPU71からの指示に基づいて、リンク駆動装置43の制御回路が油圧ポンプを駆動制御すると、その油圧ポンプから供給されるオイル(油圧)によって、各油圧シリンダ(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)が伸縮駆動される。また、電磁弁がオン/オフされると、各油圧シリンダ(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)の駆動方向(伸長または収縮)が切り替えられる。
リンク駆動装置43の制御回路は、各油圧シリンダ(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)の伸縮量を伸縮センサ(図示せず)により監視し、CPU71から指示された目標値(伸縮量)に達した油圧シリンダ(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)は、伸縮駆動が停止される。なお、伸縮センサによる検出結果は、制御回路からCPU71に出力され、CPU71は、その検出結果に基づいて各車輪2のキャンバ角および車体フレームBFと路面Gとの間隔H(図2参照)を得ることができる。
加速度センサ装置81は、車体フレームBFの加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後、左右および上下方向加速度センサ81a,81b,81cと、それら各加速度センサ81a,81b,81cの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
前後方向加速度センサ81aは車体フレームBFの車両1前後方向(図1上下方向)の加速度を、左右方向加速度センサ81bは車体フレームBFの車両1左右方向(図1左右方向)の加速度を、上下方向加速度センサ81cは車体フレームBFの車両1高さ方向(図1紙面表裏方向)の加速度を、それぞれ検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ81a,81b,81cが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
CPU71は、加速度センサ装置81から入力された前後方向加速度センサ81a及び左右方向加速度センサ81bの検出結果(加速度)を時間積分して、2方向(前後および左右方向)の速度をそれぞれ得ると共に、かかる2方向の速度成分を合成することで、車両1の対地速度を得ることができる。
ナビゲーション装置82は、車両1の現在位置や目的地までの経路案内などを表示する装置であり、GPS衛星からGPS信号(車両1の位置情報など)を受信するGPS受信機(図示せず)と、地図データ等の各種情報が記憶された記憶媒体から走行路の情報(走行路が悪路であることを識別する識別情報など)を読み取る情報読取装置(図示せず)と、操作部、LCD及びスピーカ等から構成されるマンマシンインタフェース装置(図示せず)とを主に備えている。
CPU71は、このナビゲーション装置82のGPS受信機により受信されたGPS信号に基づいて、広域座標系における車両1の現在位置を得ることができると共に、情報読取装置により読み取られた地図データに基づいて、走行路の情報を得ることができる。
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の踏み込み状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の踏み込み状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング63の回転角度を回転方向に対応付けて検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aの処理回路から入力された各角度センサの検出結果により、各ペダル61,62の踏み込み量およびステアリング63の回転角度を得ると共に、その検出結果を時間微分することで、各ペダル61,62の踏み込み速度およびステアリング63の回転速度を得ることができる。
車高調整スイッチセンサ装置64dは、車高調整スイッチ64の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、原位置スイッチ64aのオン/オフ状態を検出するオン/オフセンサ(図示せず)と、上昇スイッチ64bのオン/オフ状態を検出するオン/オフセンサ(図示せず)と、下降スイッチ64bのオン/オフ状態を検出するオン/オフセンサ(図示せず)と、それら各オン/オフセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
図4に示す他の入出力装置83としては、例えば、走行路の路面状況を非接触で検出する光学センサ、或いは、走行路が悪路である場合に運転者により操作されるスイッチの操作状態(オン/オフ)を検出する装置などが例示される。
次いで、図5から図7を参照して、車輪2の詳細構成について説明する。図5は、車両1の上面視を模式的に示した模式図であり、図6及び図7は、車両1の正面視を模式的に示した模式図である。なお、図6では、車輪2のキャンバ角がプラス方向(ポジティブ)に調整された状態が図示され、図7では、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に調整された状態が図示されている。
車輪2は、図5に示すように、外側トレッド21及び内側トレッド22の2種類のトレッドを備え、各車輪2において、外側トレッド21が車両1の外側に配置され、内側トレッド22が車両1の内側に配置されている。また、車輪2は、外側トレッド21と内側トレッド22とが互いに異なる特性に構成され、外側トレッド21が内側トレッド22に比して軟らかい特性(ゴム硬度の低い特性)に構成されている。なお、本実施の形態では、両トレッド21,22の幅寸法(図5左右方向寸法)が同一に構成されている。
上述したように構成される車輪2によれば、図6に示すように、リンク駆動装置43が制御され、車輪2のキャンバ角θL,θRがプラス方向(ポジティブ)に調整されると、車両1の外側に配置される外側トレッド21の接地(接地面積)が増加する一方、車両1の内側に配置される内側トレッド22の接地(接地面積)が減少する。これにより、外側トレッド21と内側トレッド22との接地比率を変更できるので、接地比率の高いトレッド、即ち、外側トレッド21の特性による影響を大きくして、外側トレッド21の特性により得られる性能を車輪2に発揮させることができる。
ここで、本実施の形態では、上述したように、車輪2は、外側トレッド21を内側トレッド22に比して軟らかい特性(ゴム硬度の低い特性)とする構成であるので、外側トレッド21の軟らかい特性、即ち、弾性に富み、外力に対して変形し易い特性によって、車両1が路面Gから受ける衝撃を緩和することができる。
これに対し、図7に示すように、リンク駆動装置43が制御され、車輪2のキャンバ角θL,θRがマイナス方向(ネガティブ)に調整されると、車両1の外側に配置される外側トレッド21の接地(接地面積)が減少する一方、車両1の内側に配置される内側トレッド22の接地(接地面積)が増加する。これにより、接地比率の低いトレッド、即ち、外側トレッド21の特性による影響を小さくすることができる。
これにより、外側トレッド21の軟らかい特性(ゴム硬度の低い特性)、即ち、高グリップ特性によって、車輪2の転がり抵抗が大きくなることを回避できるので、燃費の悪化を抑制して、燃費性能の向上を図ることができる。
次いで、図8を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図8は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置100の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、車体フレームBFの車両1高さ方向の加速度(以下、「車両1の振動」と称す。)を加速度センサ装置81(上下方向加速度センサ81c)により検出し(S1)、その検出結果(加速度)が規定値メモリ72bに記憶されている閾値(加速度)よりも大きいか否かを判断する(S2)。
その結果、検出結果(加速度)が規定値メモリ72bに記憶されている閾値(加速度)よりも大きいと判断される場合には(S2:Yes)、計時回路71aにより計時を開始すると共に(S3)、再び、S1及びS2の処理と同様に、車両1の振動を検出し(S4)、その検出結果(加速度)が規定値メモリ72bに記憶されている閾値(加速度)よりも大きいか否かを判断する(S5)。
その結果、S3の処理で計時を開始してからの計測時間が規定時間メモリ72bに記憶されている閾値(時間)を経過したか否かを判断し(S6)、経過していないと判断される場合には(S6:No)、S4の処理に回帰する。
一方、S6の処理の結果、計時を開始してからの計測時間が規定時間メモリ72bに記憶されている閾値(時間)を経過したと判断される場合には(S6:Yes)、車両1の振動が規定値メモリ72aに記憶されている閾値(加速度)よりも大きいと判断される状態が規定時間継続しており、走行路が悪路であると判断されるので、リンク駆動装置43を制御して、車輪2のキャンバ角をプラス方向(ポジティブ)に調整し(S7)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の外側に配置される外側トレッド21の接地(接地面積)が増加するので、外側トレッド21の特性による影響を大きくして、車両1が路面Gから受ける衝撃を緩和することができる。その結果、悪路走行時における乗り心地の向上を図ることができる。
また、リンク駆動装置43を制御して、車輪2のキャンバ角をプラス方向(ポジティブ)に調整することで、同時に、車体フレームBFが上昇するので、車体フレームBFと路面Gとの間隔H(図2参照)を広げることができる。その結果、悪路走行時に、車体フレームBFが路面Gに接触する現象、いわゆる底つき現象を防止することができる。
一方、S2及びS5の処理の結果、加速度センサ装置81(上下方向加速度センサ81c)の検出結果(加速度)が規定値メモリ72bに記憶されている閾値(加速度)よりも大きくない、即ち、検出結果(加速度)が規定値メモリ72bに記憶されている閾値(加速度)以下であると判断される場合には(S2:No、S5:No)、走行路は悪路でないと判断されるので、リンク駆動装置43を制御して、車輪2のキャンバ角を0度に調整し(S8)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、外側トレッド21の接地(接地面積)が減少するので、外側トレッド21の特性による影響を小さくして、燃費性能の向上を図ることができる。また、車輪2のキャンバ角を0度に調整することで、車輪2に横力を発生させることがなく、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。
以上のように、本実施の形態によれば、加速度センサ装置81(上下方向加速度センサ81c)の検出結果(加速度)に基づいて、走行路が悪路であるかを判断するので、走行路が悪路であるかを容易かつ正確に判断することができる。
また、加速度センサ装置81(上下方向加速度センサ81c)の検出結果(加速度)が規定値メモリ72aに記憶されている閾値(加速度)よりも大きいと判断される状態が規定時間継続した場合に、走行路が悪路であると判断するので、過剰に走行路が悪路であると判断することなく、走行路が悪路であるかの判断を適正に行うことができる。
なお、図8に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項5に記載のキャンバ制御手段としてはS7及びS8の処理が、悪路判断手段としては、S2、S5及びS6の処理が、それぞれ該当する。
その結果、リンク駆動装置43の制御(キャンバ角の調整)を効率良く行うことができ、悪路走行時における乗り心地の向上を効率的に図ることができる。更に、リンク駆動装置43の制御を効率良く行うことができれば、悪路走行時における乗り心地の向上を図りつつも、余計なリンク駆動装置43の制御を不要として、悪路でない走行路(例えば舗装路など)の走行時における乗り心地の向上を図ることができる。
次いで、図9を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、加速度センサ装置81(上下方向加速度センサ81c)の検出結果(加速度)に基づいて、走行路が悪路であるか否かを判断する場合を説明したが、第2実施の形態は、ナビゲーション装置82又は過去メモリ72cから取得した走行路の情報に基づいて、走行路が悪路であるか否かを判断するように構成されている。なお、第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図9は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置100の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理に関し、まず、車両1の現在位置をナビゲーション装置82(GPS受信機)により取得すると共に(S21)、ナビゲーション装置82から走行路の情報を取得し(S22)、その取得した走行路の情報に基づいて、走行路が悪路であるか否かを判断する(S23)。
なお、S22の処理では、情報読取装置により読み取られた地図データに基づいて、走行路が悪路であることを識別する識別情報を走行路の情報として取得する。即ち、情報読取装置により読み取られた地図データにより、車両1の現在位置における走行路が未舗装路や山道などである場合に、走行路が悪路であることを識別する識別情報を取得する。また、S23の処理では、車両1の現在位置に対して所定距離だけ前方(50m前方)の走行路が悪路であるか否かを判断する。
その結果、走行路が悪路であると判断される場合には(S23:Yes)、リンク駆動装置43を制御して、車輪2のキャンバ角をプラス方向(ポジティブ)に調整し(S24)、このキャンバ制御処理を終了する。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、悪路走行時における乗り心地の向上を図ることができる。
一方、走行路が悪路でないと判断される場合には(S23:No)、履歴メモリ72cから走行路の情報を取得し(S25)、その取得した走行路の情報に基づいて、走行路が悪路であるか否かを判断する(S26)。なお、S26の処理では、車両1の現在位置に対して所定距離だけ前方(50m前方)の走行路が悪路であるか否かを判断する。
その結果、走行路が悪路であると判断される場合には(S26:Yes)、リンク駆動装置43を制御して、車輪2のキャンバ角をプラス方向(ポジティブ)に調整し(S24)、このキャンバ制御処理を終了する。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、悪路走行時における乗り心地の向上を図ることができる。
一方、走行路が悪路でないと判断される場合には(S26:No)、リンク駆動装置43を制御して、車輪2のキャンバ角を0度に調整し(S27)、このキャンバ制御処理を終了する。これにより、第1実施の形態の場合と同様に、燃費性能の向上を図ることができる。
以上のように、本実施の形態によれば、ナビゲーション装置82(GPS受信機)により取得された車両1の現在位置と、ナビゲーション装置82(情報読取装置により読み取られた地図データ)又は履歴メモリ72cから取得した走行路の情報とに基づいて、走行路が悪路であるか否かを判断するので、走行路が悪路であるかを容易かつ正確に判断することができる。
また、ナビゲーション装置82(GPS受信機)により取得された車両1の現在位置と、ナビゲーション装置82(情報読取装置により読み取られた地図データ)又は履歴メモリ72cから取得した走行路の情報とに基づいて、走行路が悪路であるか否かを判断することで、走行路が悪路であるかを早期に判断することができる。即ち、車両1の現在位置に対して所定距離だけ前方(本実施の形態では、50m前方)の走行路が悪路であるかを判断することができる。
その結果、リンク駆動装置43の制御(キャンバ角の調整)を十分な余裕を持って行うことができるので、制御遅延を生じさせることなく、悪路走行時における乗り心地の向上を適切に図ることができる。
なお、図9に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項5に記載のキャンバ制御手段としてはS24及びS27の処理が、悪路判断手段としては、S22,S24,S25,S26の処理が、それぞれ該当する。
次いで、図10を参照して、第3実施の形態について説明する。上記各実施の形態では、キャンバ制御処理(図8及び図9参照)により走行路が悪路であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角を調整することで、同時に、車体フレームBFと路面Gとの間隔H(図2参照)を変更する場合を説明したが、第3実施の形態は、かかる間隔Hを運転者の指示により変更可能に構成されている。なお、上記各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図10は、第3実施の形態における車高制御処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置100の電源が投入されている間、第1実施の形態におけるキャンバ制御処理(図8参照)又は第2実施の形態におけるキャンバ制御処理(図9参照)に並行して、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、車高制御処理に関し、まず、原位置スイッチ64aがオンされたか否かを車高調整スイッチ装置64dの検出結果により判断し(S31)、オンされたと判断される場合には(S31:Yes)、リンク駆動装置43を制御して、車輪2のキャンバ角を0度に調整し(S32)、この車高制御処理を終了する。
これにより、車体フレームBFと路面Gとの間隔H(図2参照)を車輪2のキャンバ角が0度の状態に対応する間隔(設計段階で予め設定される間隔であって、懸架装置4を構成する各部品の寸法などにより決まる間隔)に復帰させることができる。
一方、S31の処理の結果、原位置スイッチ64aはオンされていないと判断される場合には(S31:No)、次いで、上昇スイッチ64bがオンされたか否かを車高調整スイッチ装置64dの検出結果により判断し(S33)、オンされたと判断される場合には(S33:Yes)、FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRの収縮駆動が可能であるか否か、即ち、FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRを収縮させることができるか否かを判断する(S34)。その結果、FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRの収縮駆動が可能であると判断される場合には(S34:Yes)、リンク駆動装置43を制御して、車輪2のキャンバ角をプラス方向(ポジティブ)に調整する(S35)。
これにより、車体フレームBFが上昇するので、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hを広げることができる。その結果、車体フレームBFが路面Gに接触する現象、いわゆる底つき現象を防止することができる。
一方、FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRの収縮駆動が可能でないと判断される場合には(S34:No)、車輪2のキャンバ角を現状よりもプラス方向(ポジティブ)に調整できないということであり、この場合には、S35の処理をスキップして、この車高制御処理を終了する。
S33の処理の結果、上昇スイッチ64bはオンされていないと判断される場合には(S33:No)、次いで、下降スイッチ64bがオンされたか否かを車高調整スイッチ装置64dの検出結果により判断し(S36)、オンされたと判断される場合には(S36:Yes)、FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRの伸長駆動が可能であるか否か、即ち、FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRを伸長させることができるか否かを判断する(S37)。その結果、FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRの院長駆動が可能であると判断される場合には(S37:Yes)、リンク駆動装置43を制御して、車輪2のキャンバ角をマイナス方向(ネガティブ)に調整する(S38)。
これにより、車体フレームBFが下降するので、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hを縮めることができる。その結果、車両1の走行安定性の向上を図ることができる。
一方、FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRの伸長駆動が可能でないと判断される場合には(S37:No)、車輪2のキャンバ角を現状よりもマイナス方向(ネガティブ)に調整できないということであり、この場合には、S38の処理をスキップして、この車高制御処理を終了する。
以上のように、本実施の形態によれば、車高調整スイッチ装置64dの検出結果に基づいて、リンク駆動装置43を制御するので、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hを運転者が任意に変更することができる。その結果、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hを運転者の所望の状態に設定することができる。更に、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hを運転者の所望の状態に設定することができるので、使い勝手が良く、利便性の向上を図ることができる。
次いで、図11から図16を参照して、第4実施の形態について説明する。上記第1実施の形態では、キャンバ制御処理(図8参照)により走行路が悪路であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角を調整する場合を説明した。これに対し、第4実施の形態は、走行路が悪路であると判断される場合に車輪2のキャンバ角を調整した後、悪路によって車両1の受ける振動の度合いが規定のレベルとなるように車輪2のキャンバ角を補正することで、悪路走行時における乗り心地の向上を図りつつ、車両のエネルギー消費量を抑制することができるように構成されている。
また、上記第1実施の形態では、上下方向加速度センサ81cの検出結果(加速度)に基づいて車両1の振動の度合いを検出し、走行路が悪路であるか否かを判断する場合を説明したが、第4実施の形態では、車両1の対地速度である車速の変動(車速変動)に基づいて車両1の振動の度合いを検出し、走行路が悪路であるか否かを判断するように構成されている。なお、上記各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図11は、第4実施の形態における制御装置200の電気的構成を示したブロック図である。この制御装置200は、第1実施の形態における制御装置100に代えて車両1(図1参照)の各部を制御するための装置である。この第4実施の形態における制御装置200において、第1実施の形態における制御装置100(図4参照)と相違する点は、EEPROM272がEEPROM72に代えて設けられている点、RAM273がRAM73に代えて設けられている点、並びに入出力ポート75にはキャンバ角センサ装置45が接続されている点である。また、第4実施の形態における制御装置200において、加速度センサ装置81には上下方向加速度センサ81cが備えられていない点が、第1実施の形態における制御装置100と相違する。
EEPROM272は、CPU71によって実行される制御プログラムや固定値データ等を書き換え可能に記憶すると共に、電源遮断後も内容を保持可能な不揮発性のメモリである。このEEPROM272は、規定値メモリ272d、既定時間メモリ272e、タイヤ軟面率マップ272f、及び悪路キャンバ角設定マップ272gを有している。
規定値メモリ272dは、後述する悪路判断処理(図14参照)において、走行路が悪路であるか否かを判断するための閾値となる車両1の車速変動(第1規定値)と、その悪路判断処理において、走行路が悪路であると判断された場合に悪路の度合いが大きいか小さいかを判断するための閾値となる車両1の車速変動(第2規定値)と、後述するキャンバ角補正処理(図16参照)において、車輪2のキャンバ角を補正する場合に、車両1が受ける振動の度合いの目標値となる車両1の車速変動(第3規定値)とを記憶するためのメモリであり、いずれも設計段階で予め設定された数値が記憶されている。
CPU71は、この規定値メモリ272dに記憶された第1規定値の内容に基づいて、走行路が悪路であるか否かを判断することができる。即ち、CPU71は、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a及び左右方向加速度センサ81b)の検出結果(加速度)から車両1の対地速度(車速)を算出し、更に後述する規定時間メモリ272eに記憶された規定時間における車速の変化量から車速変動を算出する。また、車速変動を算出する間、アクセルペダルセンサ装置61aからアクセルペダル61の踏み込み量(アクセル踏み込み量)を所定の時間間隔(規定時間メモリ272eに記憶された規定時間の1/5の間隔)で取得する。そして、所定の時間間隔毎に取得したアクセル踏み込み量がほぼ一定で、且つ、算出した車速変動が第1規定値以上である場合に、走行路が悪路であると判断する。
また、CPU71は、規定値メモリ272dに記憶された第2規定値の内容に基づいて、走行路が悪路であると判断された場合に悪路の度合いが大きいか小さいかを判断することができる。ここで、悪路の度合いとは、悪路によって車両1が受ける振動の度合いのことであり、本実施の形態では、加速度センサ装置81の検出結果(加速度)から算出された車速変動の大きさから、悪路の度合い(振動の度合い)を判断する。即ち、CPU71は、車速変動が第2規定値以上である場合に悪路の度合いが大きいと判断し、第2規定値よりも小さい場合に悪路の度合いが小さいと判断する。
また、CPU71は、車両1の受ける振動の度合い(車速変動)が規定値メモリ272dに記憶された第3規定値となるように、車輪2のキャンバ角を補正することができる。即ち、CPU71は、走行路が悪路であると判断された場合に、後述する悪路キャンバ角設定処理(図15参照)において、外側トレッド21の接地(接地面積)を増加させて、車両1が路面Gから受ける衝撃を緩和するように、一旦、車輪2のキャンバ角を調整する。そして、キャンバ角の調整後、キャンバ角補正処理において、加速度センサ装置81の検出結果(加速度)から算出された車速変動が第3規定値となるように、車輪2のキャンバ角を補正する。
本実施の形態において、この第3規定値は上述した第1規定値よりも小さい値となるように設定されている。これにより、車輪2のキャンバ角を補正して車速変動が第3規定値となった後においても、その車速変動が第1規定値以上となって、走行路が悪路と判断されるのを防止することができる。
また、本実施の形態において、第3規定値は、車輪駆動装置3が左右の前輪2FL、2FRを回転駆動する場合に、それら左右の前輪2FL、2FRに与えられるエネルギー(回転駆動力)が減少するように、値が設定されている。従って、車両1の車速変動がこの第3規定値となるように車輪2のキャンバ角を補正することにより、車両1を走行させる際に必要となるエネルギー消費量を抑制することができる。
規定時間メモリ272eは、悪路判断処理及びキャンバ角補正処理において、車速変動を検出するための規定時間を記憶するメモリであり、規定値メモリ272dの内容と同様に、設計段階で予め設定された数値が記憶されている。
CPU71は、この規定時間メモリ272eの内容(規定時間)に基づいて、その規定時間における車速変動を求めることができる。また、悪路判断処理において、車速変動を求めるのと同時に、この規定時間の1/5の時間間隔でアクセルペダルセンサ装置61aからアクセル踏み込み量を取得することができる。そして、このアクセル踏み込み量が一定で、且つ、車速変動が規定値メモリ272dに記憶された第1規定値以上である場合に、走行路が悪路であると判断する。
タイヤ軟面率マップ272fは、走行路が悪路と判断された場合に悪路キャンバ角設定処理において参照されるマップであり、規定時間における車速変動とタイヤ軟面率との関係を予め記憶したマップである。タイヤ軟面率は、内側トレッド22に比して軟らかい特性に構成されている外側トレッド21の接地比率を示す指標で、車輪2の接地面積に対する外側トレッド21の接地面積の割合で示される。このタイヤ軟面率が大きいほど、外側トレッド21の接地比率が大きいので、外側トレッド21の軟らかい特性、即ち、弾力に富み、外力に対して変更し易い特性によって、車両1が路面Gから受ける衝撃を緩和することができる。
悪路キャンバ角設定マップ272gは、タイヤ軟面率マップ272fと同様に、悪路キャンバ角設定処理において参照されるマップで、タイヤ軟面率とキャンバ角との関係を予め記憶したマップである。
ここで、図12(a)及び(b)を参照して、タイヤ軟面率マップ272f及び悪路キャンバ角設定マップ272gの詳細について説明する。まず、図12(a)は、タイヤ軟面率マップ272fの内容を模式的に示した模式図である。CPU71は、このタイヤ軟面率マップ272fの内容に基づいて、車両1の車速変動の大きさから、悪路走行時において車輪2に設定すべきタイヤ軟面率を取得する。なお、縦軸に示したタイヤ軟面率は、車体1が路面Gから受ける衝撃を緩和して、車速変動が規定値メモリ272dに記憶された第3規定値よりも小さい値となる外側トレッド21の接地比率(車輪2の接地面積に対する外側トレッド21の接地面積の割合)を、シミュレーションにより求めたものである。
このタイヤ軟面率マップ272fによれば、図12(a)に示すように、車速変動が悪路の判断閾値である第1規定値δ1の状態では、タイヤ軟面率がx1に規定される。このタイヤ軟面率x1は、車輪2のキャンバ角が0度である場合のタイヤ軟面率である。そして、車速変動が所定値δ2になるまで、その車速変動の大きさに比例してタイヤ軟面率が直線的に増加する。また、車速変動が所定値δ2以上の状態では、タイヤ軟面率がx2となるように規定されている。
一般に、車速変動が大きいほど悪路による振動が大きいと判断できるので、このタイヤ軟面率マップ272fにより車速変動が大きいほど車輪2に設定すべきタイヤ軟面率を大きくすることで、悪路による振動を確実に緩和させることが可能となる。そして、車速変動が所定値δ2以上ではタイヤ軟面率が最大値x2に維持されるので、外側トレッド21の接地面積が極端に多くなることによって、車両1を走行させる際に必要となるエネルギー消費量が増大するのを抑制することができる。
一方、図12(b)は、悪路キャンバ角設定マップ272gの内容を模式的に示した図である。CPU71は、この悪路キャンバ角設定マップ272gの内容に基づいて、タイヤ軟面率マップ272fにより設定したタイヤ軟面率から、車輪2に付与すべきキャンバ角(悪路キャンバ角)を決定する。この悪路キャンバ角設定マップ272gは、車輪2について実測した実測値に基づくものである。
この悪路キャンバ角設定マップ272gによれば、図12(b)に示すように、タイヤ軟面率が、タイヤ軟面率マップ272fによって取得できる最小値x1である場合は、悪路キャンバ角として0度が規定される。そして、タイヤ軟面率の増加に比例してキャンバ角が直線的に増加し、タイヤ軟面率がタイヤ軟面率マップ272fによって取得できる最大値x2である場合は、キャンバ角がθ2となるように規定されている。
図11に戻って、説明する。RAM273は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。このRAM273は、悪路フラグ273a、悪路度合フラグ273b、及び状態記憶メモリ273cを有している。
悪路フラグ273aは、後述する悪路判断処理(図14参照)において、走行路が悪路であるか否かを判断した結果を記憶するためのフラグである。このフラグには、走行路が悪路であると判断された場合に「1」が記憶され、走行路が悪路でないと判断された場合に「0」が記憶される。
CPU71は、後述するキャンバ制御処理(図13参照)の実行中に、悪路フラグ273aの内容を参照し、悪路キャンバ角設定処理(図15参照)やキャンバ角補正処理(図16)を実行するか否かを決定することができる。即ち、悪路フラグ273aが「1」の場合、CPU71は悪路キャンバ角設定処理及びキャンバ角補正処理を実行する。一方、悪路フラグ273aが「0」の場合、悪路キャンバ角設定処理及びキャンバ角補正処理を実行せずに、キャンバ制御処理を終了する。
悪路度合フラグ273bは、悪路判断処理(図14参照)において、走行路が悪路であると判断された場合(即ち、悪路フラグ273aに「1」を記憶した場合)に、走行路の悪路の度合い(車両1の受ける振動の度合い)の大小を判断し、悪路の度合いが大きい場合には「1」を、小さい場合には「0」を記憶するためのフラグである。
CPU71は、悪路キャンバ角設定処理(図15参照)を実行中に悪路度合フラグ273bの内容を参照し、この悪路度合フラグ273bの内容に基づいて、車輪2に対して悪路キャンバ角設定マップ272gから算出した悪路キャンバ角を付与する場合に、その車輪2のキャンバ角を一度に変化させる量、即ち、キャンバ角増減量を決定することができる。即ち、悪路度合フラグ273bが「1」の場合はキャンバ角増減量としてβを設定し、悪路度合フラグ273bが「0」の場合はキャンバ角増減量としてαを設定する。本実施の形態では、キャンバ角増減量βがキャンバ角増減量αよりも大きくなるように設定する。
状態記憶メモリ273cは、悪路判断処理(図14参照)において、走行路が悪路であるか否かを判断する前に、CPU71によって算出された車速変動と、車速変動を算出する間にアクセルペダルセンサ装置61aから所定時間間隔(規定時間メモリ272eに記憶された規定時間の1/5の間隔)で取得されたアクセル踏み込み量とを記憶するためのメモリである。
CPU71は、悪路判断処理(図14参照)を実行中に状態記憶メモリ273cに記憶された車速変動とアクセル踏み込み量とを確認し、そのアクセル踏み込み量が一定で、且つ、車速変動が規定値メモリ272dに記憶された第1規定値以上である場合に、走行路が悪路であると判断することができる。また、CPU71は、悪路キャンバ角設定処理(図15参照)を実行中に状態記憶メモリ273cに記憶された車速変動を確認し、タイヤ軟面率マップ272fより、その車速変動に対して車輪2に設定すべきタイヤ軟面率を設定することができる。
キャンバ角センサ装置45は、各車輪2に実際に付与されているキャンバ角(実キャンバ角)を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、対象物までの距離を測定する4個のFL〜RR距離センサ45FL〜45RRと、それら各距離センサ45FL〜45RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各距離センサ45FL〜45RRがミリ波の伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差に基づいて対象物までの距離を測定するミリ波レーダとして構成されている。これら各距離センサ45FL〜45RRは、車体フレームBF(図1参照)に配設され、各車輪2FL〜2RRまでの距離を測定する。
ここで、各距離センサ45FL〜45RRから各車輪2FL〜2RRまでの距離は、各車輪2FL〜2RRに付与された実キャンバ角に応じて変化する。キャンバ角センサ装置に備えられた処理回路(図示せず)は、このことを利用して、キャンバ角センサ装置45から入力された各距離センサ45FL〜45RRの検出結果(各距離センサ45FL〜45RRから各車輪2FL〜2RRまでの距離)に基づき、各車輪2FL〜2RRの実キャンバ角を算出する。
加速度センサ装置81は、上述した通り、第1実施の形態において車両1の振動を検出するために用いた上下方向加速度センサを備えていない。そこで、本実施の形態では、車両1の振動を、車両1の対地速度(車速)の変動(車速変動)に基づいて検出するように構成されている。車速変動は、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a及び左右方向加速度センサ81b)の検出結果(加速度)に基づいて、CPU71によって算出する。即ち、CPU71は、加速度センサ装置81から入力された前後方向加速度センサ81a及び左右方向加速度センサ81bの検出結果(加速度)から、車両1の対地速度(車速)を算出し、そして、規定時間メモリ272eに記憶された規定時間における車速の変動(車速変動)を算出する。後述する悪路判断処理では、このCPU71によって算出された車速変動に基づいて走行路が悪路であるか否かの判断を行い、また、その悪路度合いを判断する。また、キャンバ角補正処理では、この車速変動が規定値メモリ272dに記憶された第3規定値となるように、車輪2のキャンバ角を補正する。
一般に、車両1には上下方向加速度センサを備えていないものが多いが、前後方向加速度センサ81a及び左右方向加速度センサ81b、若しくは、その他の車速を計測するためのセンサは必ず車両1に備えられている。従って、本実施の形態のように、車速変動によって悪路の判断を行うようにすれば、上下方向加速度センサを新たに設けなくても悪路の判断を行うことができる。
次に、図13を参照して、本実施の形態におけるキャンバ制御処理について説明する。図13は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置200の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、後述する悪路判断処理(図14参照)を実行し(S41)、走行路が悪路であるか否かを判断する。そして、悪路判断処理の結果、悪路フラグ273aが「1」となっているか、即ち、走行路が悪路であるかを判断する(S42)。
その結果、悪路フラグ273aが「1」である場合(S42:Yes)、走行路が悪路であるので、後述する悪路キャンバ角設定処理(図15参照)を実行し(S43)、更に、後述するキャンバ角補正処理(図16参照)を実行して(S44)、このキャンバ制御処理を終了する。一方、S42の処理の結果、悪路フラグ273aが「1」でない場合(S42:No)、悪路フラグ273aは「0」であり、従って、走行路は悪路ではないので、悪路キャンバ設定処理(S43)及びキャンバ角補正処理(S44)をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、悪路判断処理によって走行路が悪路と判断された場合に、悪路キャンバ角設定処理及びキャンバ角補正処理が実行され、後述するように、車輪2に悪路に応じたキャンバ角が付与された上で、車両1の車速変動が目標値(規定値メモリ272dに記憶された第3規定値)となるようにキャンバ角が補正される。
次に、図14を参照して、悪路判断処理について説明する。図14は、悪路判断処理を示すフローチャートである。この処理は、走行路が悪路であるか否かを判断する処理で、CPU71によって実行されるキャンバ制御処理の中で行われる。
CPU71は、悪路判断処理に関し、まず、車両1の対地速度(車速)を加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a及び左右方向加速度センサ81b)の検出結果(加速度)から算出し、規定時間メモリ272eに記憶された規定時間における車速の変動(車速変動)を算出する(S51)。また、このS51の処理では、車速変動の算出と同時に、車速変動が算出される規定時間の間、アクセルペダルセンサ装置61aからアクセルペダル61の踏み込み量(アクセル踏み込み量)を、所定時間間隔(規定時間メモリ272eに記憶された規定時間の1/5の間隔)で取得する。この処理で算出された車速変動と取得されたアクセル踏み込み量とは、状態記憶メモリ273cに記憶される。
次に、状態記憶メモリ273cに記憶されたアクセル踏み込み量が一定で、且つ、規定時間内の車速変動が規定値メモリ272dに記憶された第1規定値以上であるかを判断する(S52)。
S52の処理の結果、アクセル踏み込み量が一定で且つ車速変動が第1規定値以上であると判断された場合は(S52:Yes)、アクセル踏み込み量が一定であるにも係わらず、車速変動が第1所定値以上と大きいのは、悪路の凹凸による影響であると判断することができるので、悪路フラグ273aに「1」を設定する(S54)。これにより、上述したように、キャンバ制御処理によって、悪路キャンバ角設定処理およびキャンバ角補正処理を実行することができる。
更に、状態記憶メモリ273cに記憶された車速変動が、規定値メモリ272dに記憶された第2規定値以上であるかを判断し(S55)、車速変動が第2規定値以上であると判断された場合は(S55:Yes)、悪路度合フラグ273bに「1」を設定する一方(S56)、車速変動が第2規定値未満であると判断された場合は(S55:No)、悪路度合フラグ273bに「0」を設定して(S57)、この悪路判断処理を終了する。この悪路度合フラグ273bにより、後述するように、悪路キャンバ角設定処理において、車輪2に悪路キャンバ角を付与する場合に、そのキャンバ角を一度に変化させる量(キャンバ角増減量)を決定することができる。
一方、S52の処理の結果、車速変動が第1規定値未満である場合は(S52:No)、走行路の凹凸による車速への影響がないため、走行路が悪路ではないと判断することができる。よって、この場合、悪路フラグ273aに「0」を設定し(S53)、この悪路判断処理を終了する。また、S52の処理の結果、アクセル踏み込み量が一定でない場合は(S52:No)、車速変動がこのアクセル踏み込み量の変化によるものであり、走行路が悪路であると判断することはできない。よって、車速変動が第1規定値未満である場合と同様に悪路フラグ273aに「0」を設定し(S53)、この悪路判断処理を終了する。これによって、上述したように、キャンバ制御処理において、悪路キャンバ角設定処理、及びキャンバ角補正処理をスキップさせることができる。
尚、S52の処理において、アクセル踏み込み量の変化の度合いが所定レベルの範囲内にあれば、アクセル踏み込み量が一定であると判断する。これにより、アクセル踏み込み量が振動の影響で変化するような場合であっても、その変化の度合いが所定レベルの範囲内にあり、更に車速変動が第1規定値以上あれば、悪路として判断することができる。
次に、図15を参照して、悪路キャンバ角設定処理について説明する。図15は、悪路キャンバ角設定処理を示すフローチャートである。この処理は、上述した悪路判定処理において走行路が悪路であると判定された場合に、車輪2に対して悪路キャンバ角を付与する処理で、CPU71によって実行されるキャンバ制御処理の中で行われる。
CPU71は、悪路キャンバ角設定処理に関し、まず、悪路判定処理によって状態記憶メモリ273cに記憶された車速変動に対して、車輪2に設定すべき外側トレッド21の接地比率(タイヤ軟面率)を、タイヤ軟面率マップ272fから読み込む(S61)。これにより、車速変動が規定値メモリ272dに記憶された第3規定値よりも小さくなるタイヤ軟面率を決定する。
そして、S61の処理で読み込まれたタイヤ軟面率に対し、車輪2に付与すべき悪路キャンバ角の大きさを、悪路キャンバ角設定マップ272gから読み込む(S62)。これにより、車速変動が第3規定値よりも小さくなる悪路キャンバ角を決定する。
次に、悪路度合フラグ273bの内容を読み出し、悪路度合フラグ273bの内容が「0」であるかを判断する(S63)。そして、悪路度合フラグ273bの内容が「0」であると判断した場合(S63:Yes)、即ち、走行路の悪路の度合い(即ち、車両1の受ける振動の度合い)が小さい場合、車輪2のキャンバ角を一度に変化させる量(キャンバ角増減量)としてαを設定し(S64)、S66の処理へ移行する。一方、S63の処理の結果、悪路度合フラグ273bの内容が「0」でない(即ち、悪路度合いフラグ273bの内容が「1」である)場合(S63:No)、走行路の悪路度合いが大きいので、キャンバ角増減量としてαよりも大きいβを設定し(S65)、S66の処理へ移行する。
ここで、走行路の悪路度合いが小さい場合、タイヤ軟面率マップ272f及び悪路キャンバ角設定マップ272gより明らかな通り、車輪2に付与すべき悪路キャンバ角は小さい。これに対し、S63の処理ではキャンバ増減量をβよりも小さいαに設定するので、車輪2のキャンバ角が大きく変動した場合に運転者が感じる違和感を抑えることができる。一方、走行路の悪路度合いが大きい場合、車輪2に付与すべき悪路キャンバ角は大きい。これに対し、S64の処理によりキャンバ増減量をαよりも大きいβに設定するので、車輪2のキャンバ角を素早く悪路キャンバ角にすることができ、早期に車輪2が路面Gから受ける衝撃を抑制することができる。
次に、S66の処理では、キャンバ角センサ装置45から車輪2の実キャンバ角を取得する。そして、取得した実キャンバ角と、S62の処理で読み込まれた車輪2に付与すべき悪路キャンバ角との差を算出し、その差が規定範囲内であるかを判断する(S67)。その結果、実キャンバ角と悪路キャンバ角との差が規定範囲内にある場合(S67:Yes)、車輪2の実キャンバ角が車輪2に付与すべき悪路キャンバ角となっていると判断し、この悪路キャンバ角設定処理を終了する。
一方、S67の処理の結果、実キャンバ角と悪路キャンバ角との差が規定範囲内にない場合は(S67:No)、車輪2の実キャンバ角が車輪2に付与すべき悪路キャンバ角になっていないので、次のS68〜S70の処理を行い、車輪2の実キャンバ角を悪路キャンバ角に設定する処理を行う。
即ち、S68の処理では、実キャンバ角が悪路キャンバ角よりも大きいかを判断する。そして、実キャンバ角が悪路キャンバ角よりも大きい場合(S68:Yes)、実キャンバ角をS64又はS65で設定したキャンバ角増減量(α又はβ)分だけ減少させるように、リンク駆動装置43を制御し(S69)、S66へ回帰する。一方、S68の処理の結果、実キャンバ角が悪路キャンバ角よりも小さい場合(S68:No)、実キャンバ角をキャンバ角増減量(α又はβ)分だけ増加させるように、リンク駆動装置43を制御し(S70)、S66へ回帰する。そして、S67の処理で、実キャンバ角と悪路キャンバ角との差が規定範囲内となる(S67:Yes)まで、S66〜S70の処理を繰り返し実行する。
このように、走行路が悪路であると判定された場合に、車輪2に対して悪路キャンバ角を付与することによって、車輪2の外側トレッド21の接地比率(タイヤ軟面率)を車速変動が第3規定値よりも小さくなるタイヤ軟面率とすることができる。よって、車両1が路面Gから受ける衝撃を確実に抑制することができる。
次に、図16を参照して、キャンバ角補正処理について説明する。図16は、キャンバ角補正処理を示すフローチャートである。この処理は、上述した悪路キャンバ角設定処理により、車速変動が規定値メモリ272dに記憶された第3規定値よりも小さくなるように車輪2に付与された悪路キャンバ角に対して、車両1の車速変動が第3規定値となるように補正する処理で、CPU71によって実行されるキャンバ制御処理の中で行われる。
CPU71は、キャンバ角補正処理に関し、まず、キャンバ角増減量として微小な値γを設定する(S81)。本実施の形態において、このキャンバ角増減量γは悪路キャンバ角設定処理で設定したキャンバ角増減量αの1/10の値にされている。このように、キャンバ角増減量を微小な値とすることにより、車速変動が確実に第3規定値となるように、車輪2のキャンバ角を補正することができる。
次に、車輪2の実キャンバ角をキャンバ角増減量(γ)だけ減少させるように、リンク駆動装置43を制御する(S82)。これにより、外側トレッド21の接地比率(タイヤ軟面率)が減少するので、車両1が路面Gより受ける衝撃が増え、車速変動も増加する。
次いで、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a及び左右方向加速度センサ81b)の検出結果(加速度)から、規定時間メモリ272eに記憶された規定時間における車速変動を算出する(S83)。そして、算出した車速変動が第3規定値より大きいかを判断し(S84)、車速変動が第3規定値以下である場合(S84:No)、S82の処理に回帰する。そして、S84の処理で、S83で算出した車速変動が第3規定値以下である間、S82〜S84の処理を繰り返し実行する。これにより、車速変動が第3規定値を超えるまで、車輪2の実キャンバ角をキャンバ角増減量(γ)ずつ減少させ、外側トレッド21の接地比率(タイヤ軟面率)を減少させることができる。
また、S84の処理の結果、車速変動が第3規定値より大きいと判断した場合(S84:Yes)、車輪2の実キャンバ角をキャンバ角増減量(γ)だけ増加させるように、リンク駆動装置43を制御して(S85)、このキャンバ角補正処理を終了する。これにより、車輪2の実キャンバ角を車速変動が第3規定値を超える直前の実キャンバ角に戻すことができる。そして、キャンバ角増減量γがキャンバ角増減量αの1/10と微小な値であるので、車速変動が確実に第3規定値となる外側トレッド21の接地比率(タイヤ軟面率)まで減少させることができる。
このように、キャンバ角補正処理では、悪路キャンバ角設定処理によって過剰に増加した外側トレッド21の接地比率を所望の比率(車速変動が第3規定値となる接地比率)に戻すことができるので、車両のエネルギー消費量を確実に抑制することが可能となる。
以上のように、本実施の形態によれば、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a及び左右方向加速度センサ81b)の検出結果から車速変動を算出し、その車速変動の大きさに基づいて走行路が悪路であるかを判断するので、上下方向の振動を検出するセンサ(例えば、上下方向加速度センサ)を設けることなく、走行路が悪路であるかを判断することができる。その結果、走行路の悪路判断のために特別な部品を追加する必要がないので、コストが増加するのを防ぐことができる。
また、走行路が悪路であると判断される場合に、悪路キャンバ角設定処理によって、外側トレッド21の接地比率が増加するように悪路キャンバ角が車輪2に付与されるので、外側トレッド21の軟らかい特性による影響を大きくして、車両1が路面Gから受ける衝撃を緩和することができる。
加えて、キャンバ補正処理によって、車速変動が悪路の判断閾値である第1規定値よりも小さい第3規定値となるように車輪2に付与される実キャンバ角が補正されるので、悪路によって受ける振動の度合いを所望のレベル(車速変動が第3規定値となるレベル)に抑えることができる。よって、外側トレッド21の接地比率(タイヤ軟面率)を必要以上に大きくして、車両1が路面Gから受ける衝撃を無駄に緩和することを防止することができる。その結果、外側トレッド21の接地比率が多くなることに起因して増加する車輪2を駆動するためのエネルギーを抑えることができ、悪路走行時における乗り心地の向上を図りつつ、車両のエネルギー消費量を抑制することができる。
また、本実施の形態によれば、悪路キャンバ角設定処理によって、一旦、外側トレッド21の接地比率(タイヤ軟面率)が車速変動を第3規定値よりも小さくするタイヤ軟面率となるように、車輪2にキャンバ角を付与し、その後、キャンバ角補正処理によって、車速変動が第3規定値となるように車輪2のキャンバ角を補正するので、悪路判断処理により悪路として判断したときから、直接車速変動が第3規定値へ向かうように制御する場合よりも、早期に振動の度合いを第3規定値へ収束させることができる。また、このような構成により、まず、車両1が路面Gから受ける衝撃を確実に抑制することができる。そして、その後に、過剰に増加したタイヤ軟面率を所望の比率(車速変動が第3規定値となるタイヤ軟面率)に戻すことによって、車両1のエネルギー消費量を確実に抑制することができる。
また、タイヤ軟面率マップ272fにより規定されたタイヤ軟面率と車速変動との関係は、実際には走行路の状態によって多少異なる。一方、走行路の凹凸状態の不均一性によって、CPU71により算出される車速変動は誤差を含んでいる。本実施の形態によれば、キャンバ角補正処理によって、車速変動が第3規定値となるように車輪2のキャンバ角を補正するので、このような誤差が生じる場合であっても、確実に振動の度合いを第3規定値へ収束させることができる。
なお、請求項1に記載の振動の度合いとは、本実施の形態では、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a及び左右方向加速度センサ81b)の検出結果(加速度)から算出された、規定時間メモリ272eに記憶された規定時間における車速の変動(車速変動)が該当する。また、請求項1の第1所定レベル及び第2所定レベル、並びに請求項4の第4所定レベルは、それぞれ規定値メモリ272dに記憶された第1規定値、第3規定値、及び第2規定値が該当する。また、請求項2の第3所定レベルは、タイヤ軟面率マップ272fに示すタイヤ軟面率によって得られる車速変動の値が該当する。
また、請求項1及び請求項5に記載のキャンバ制御手段としては、図15に示すフローチャート(悪路キャンバ角設定処理)におけるS69及びS70の処理と、図16に示すフローチャート(キャンバ角補正処理)におけるS82の処理とが該当する。また、請求項1に記載の振動検出手段としては、図14に示すフローチャート(悪路判断処理)におけるS51の処理と、図16に示すフローチャート(キャンバ角補正処理)におけるS83の処理とが該当し、請求項1及び請求項5に記載の悪路判断手段としては、図14に示すフローチャート(悪路判断処理)におけるS52の処理が該当する。また、請求項2の悪路キャンバ角設定手段としては、図15に示すフローチャート(悪路キャンバ角設定処理)におけるS61及びS62の処理が該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記各実施の形態では、車輪2を外側トレッド21及び内側トレッド22の2種類のトレッドにより構成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、外側トレッド21及び内側トレッド22に加え、それら外側トレッド21及び内側トレッド22の特性とは異なる特性に構成される第3トレッドを備えていても良い。この場合、第3トレッドを外側トレッド21に比して更に軟らかい特性とする構成であれば、かかる第3トレッドを外側トレッド21よりも車両1の外側に配置することで、悪路走行時における乗り心地のより一層の向上を図ることができる。
上記各実施の形態では、車両1の正面視において、キャンバ軸44を車輪2の中心線Mよりも車両1の内側に配置することで、車輪2のキャンバ角がプラス方向(ポジティブ)に調整されると、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hが広がる一方(図3(a)参照)、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に調整されると、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hが縮まる場合を説明したが(図3(b)参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、キャンバ軸44を車輪2の中心線Mよりも車両1の外側に配置することで、車輪2のキャンバ角がプラス方向(ポジティブ)に調整されると、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hが縮まる一方、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に調整されると、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hが広がるように構成しても良い。
この場合には、車輪2の外側トレッド21を車両1の内側に、内側トレッド22を車両1の外側に、それぞれ配置し、走行路が悪路であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角をマイナス方向(ネガティブ)に調整することで、上記各実施の形態の場合と同様に、悪路走行時における乗り心地の向上を図ると共に、底つき現象を防止することができる。
上記第1実施の形態では、車体フレームBFの車両1高さ方向の加速度により車両1の振動を検出する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、加速度センサ装置81(上下方向加速度センサ81c)により検出された車体フレームBFの車両1高さ方向の加速度を時間積分して振幅を算出し、その振幅に基づいて、車両1の振動を検出しても良く、或いは、照射したレーザ光の反射光におけるドップラ効果を利用した振動計などを用いて車両1の振動を検出しても良い。即ち、車両1の振動を検出できれば良く、その検出方法については限定されるものではない。
上記第1実施の形態では、加速度センサ装置81(上下方向加速度センサ81c)の検出結果(加速度)が規定値メモリ72aに記憶されている閾値(加速度)よりも大きいか否かを判断する場合を説明したが(図8のS2及びS5参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、かかる検出結果(加速度)が規定値メモリ72aに記憶されている閾値(加速度)以上であるか否かを判断しても良い。
上記第1実施の形態では、加速度センサ装置81(上下方向加速度センサ81c)の検出結果(加速度)が規定値メモリ72aに記憶されている閾値(加速度)よりも大きいと判断される状態が規定時間継続した場合に、走行路が悪路であると判断する場合を説明したが(図8のS6:Yes参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、単に、かかる検出結果(加速度)が規定値メモリ72aに記憶されている閾値(加速度)以上または閾値(加速度)よりも大きいと判断される場合に、走行路が悪路であると判断しても良い。
上記第1実施の形態では、加速度センサ装置81(上下方向加速度センサ81c)の検出結果(加速度)が規定値メモリ72bに記憶されている閾値(加速度)以下であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角を0度に調整する場合を説明したが(図8のS8参照)、必ずしもこれに限られるものではない。即ち、外側トレッド21の接地(接地面積)が減少するように、車輪2のキャンバ角を調整すれば良く、その角度については限定されるものではない。
上記第2実施の形態では、ナビゲーション装置82(情報読取装置により読み取られた地図データ)及び過去メモリ72cから取得した走行路の情報に基づいて、走行路が悪路であるか否かを判断する場合を説明したが(図9のS23及びS26参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、いずれか一方に基づいて、走行路が悪路であるか否かを判断しても良い。
上記第2実施の形態では、車両1の現在位置に対して所定距離だけ前方(50m前方)の走行路が悪路であるか否かを判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、車両1の現在位置における走行路が悪路であるか否かを判断しても良い。
上記第3実施の形態では、原位置スイッチ64aがオンされたと判断される場合に、車輪2のキャンバ角を0度に調整する場合を説明したが(図10のS32参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、車体フレームBFと路面Gとの間隔H(図2参照)が運転者により予め設定された間隔となるように、かかる間隔に対応する車輪2のキャンバ角を記憶するメモリをEEPROM72に設け、そのメモリの内容に基づいて、車輪2のキャンバ角を調整しても良い。
上記第4実施の形態では、走行路が悪路であるかを判断する場合に、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a及び左右方向加速度センサ81b)の検出結果(加速度)から車速変動を算出し、その車速変動の大きさに基づいて判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば第1実施の形態にて説明したように、加速度センサ装置81に上下方向加速度センサを設け、その検出結果(加速度)に基づいて、走行路が悪路であるかを判断してもよい。
上記第4実施の形態では、悪路キャンバ角設定処理によって、一旦、外側トレッド21の接地比率(タイヤ軟面率)が、車速変動を規定値メモリ272dに記憶された第3規定値よりも小さくするタイヤ軟面率となるように、車輪2にキャンバ角を付与し、その後、キャンバ角補正処理によって、車速変動が第3規定値となるように車輪2のキャンバ角を補正する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、悪路キャンバ角設定処理によって、タイヤ軟面率が、規定値メモリ272dに記憶された車速変動を悪路の判断閾値である第1規定値以下とするタイヤ軟面率となるように、車輪2にキャンバ角を付与し、その後、キャンバ角補正処理によって、車速変動が第3規定値となるように車輪2のキャンバ角を補正するようにしてもよい。若しくは、タイヤ軟面率マップ272fに基づいてCPU71により車速変動が第3規定値なるタイヤ軟面率を算出し、悪路キャンバ角設定マップ272gに基づいて、算出したタイヤ軟面率となるように車輪2に付与すべきキャンバ角を算出するようにしてもよい。この場合、キャンバ角補正処理を省略してもよい。また、悪路判断処理によって走行路が悪路であると判断された後、悪路キャンバ角設定処理を省略し、キャンバ角補正処理のみを行って、車速変動が第3規定値となるように車輪2のキャンバ角を設定するようにしてもよい。
上記第4実施の形態では、メモリ記憶手段272dに記憶された第3規定値は、メモリ記憶手段272dに記憶された悪路の判断閾値である第1規定値よりも低い値とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第3規定値は第1規定値と同一であってもよい。この場合、規定値メモリ272dには、第1規定値と第2規定値とを記憶し、キャンバ角補正処理では、第3規定値として規定値メモリ272dに記憶された第1規定値を読み出すようにしてもよい。
上記第4実施の形態では、アクセルペダルセンサ装置61aより取得したアクセルペダルの踏み込み量(アクセル踏み込み量)が一定で、且つ、CPU71によって算出された車速変動が規定値メモリ272dに記憶されている第1規定値以上であると判断される場合に、走行路が悪路であると判断する場合を説明したが(図14のS52参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、アクセル踏み込み量が一定で、且つ、車速変動が第1規定値よりも大きいか否かを判断するようにしてもよい。
上記第4実施の形態では、走行路が悪路であると判断される場合に、CPU71によって算出された車速変動が規定値メモリ272dに記憶されている第2規定値以上であると判断される場合に、悪路度合いが大きいと判断する場合を説明したが(図14のS55参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、車速変動が第2規定値よりも大きいか否かを判断するようにしてもよい。