以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFを支持する複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2を車体フレームBFに懸架する複数の懸架装置4と、複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵装置5とを主に備えて構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪2FL,2FRと、車両1の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪2RL,2RRとを備えている。なお、本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動される従動輪として構成されている。
また、車輪2は、図1に示すように、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRが全て同じ形状および特性に構成され、そのトレッドの幅(図1左右方向の寸法)が同一の幅に構成されている。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRを回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3aにより構成されている(図3参照)。また、電動モータ3aは、図1に示すように、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の操作量に応じて回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、デファレンシャルギヤにより吸収される。
懸架装置4は、路面から車輪2を介して車体フレームBFに伝わる振動を緩和するための装置、いわゆるサスペンションとして機能するものであり、伸縮可能に構成され、図1に示すように、各車輪2に対応してそれぞれ設けられている。また、本実施の形態における懸架装置4は、車輪2のキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構としての機能を兼ね備えている。
ここで、図2を参照して、懸架装置4の詳細構成について説明する。図2は、懸架装置4の正面図である。なお、ここでは、キャンバ角調整機構として機能する構成のみについて説明し、サスペンションとして機能する構成については周知の構成と同様であるので、その説明を省略する。また、各懸架装置4の構成は、各車輪2においてそれぞれ共通であるので、右の前輪2FRに対応する懸架装置4を代表例として図2に図示する。但し、図2では、理解を容易とするために、ドライブシャフト31等の図示が省略されている。
懸架装置4は、図2に示すように、ストラット41及びロアアーム42を介して車体フレームBFに支持されるナックル43と、駆動力を発生するFRモータ44FRと、そのFRモータ44FRの駆動力を伝達するウォームホイール45及びアーム46と、それらウォームホイール45及びアーム46から伝達されるFRモータ44FRの駆動力によりナックル43に対して揺動駆動される可動プレート47とを主に備えて構成されている。
ナックル43は、車輪2を操舵可能に支持するものであり、図2に示すように、上端(図2上側)がストラット41に連結されると共に、下端(図2下側)がボールジョイントを介してロアアーム42に連結されている。
FRモータ44FRは、可動プレート47に揺動駆動のための駆動力を付与するものであり、DCモータにより構成され、その出力軸44aにはウォーム(図示せず)が形成されている。
ウォームホイール45は、FRモータ44FRの駆動力をアーム46に伝達するものであり、FRモータ44FRの出力軸44aに形成されたウォームに噛み合い、かかるウォームと共に食い違い軸歯車対を構成している。
アーム46は、ウォームホイール45から伝達されるFRモータ44FRの駆動力を可動プレート47に伝達するものであり、図2に示すように、一端(図2右側)が第1連結軸48を介してウォームホイール45の回転軸45aから偏心した位置に連結される一方、他端(図2左側)が第2連結軸49を介して可動プレート47の上端(図2上側)に連結されている。
可動プレート47は、車輪2を回転可能に支持するものであり、上述したように、上端(図2上側)がアーム46に連結される一方、下端(図2下側)がキャンバ軸50を介してナックル43に揺動可能に軸支されている。
上述したように構成される懸架装置4によれば、FRモータ44FRが駆動されると、ウォームホイール45が回転すると共に、ウォームホイール45の回転運動がアーム46の直線運動に変換される。その結果、アーム46が直線運動することで、可動プレート47がキャンバ軸50を揺動軸として揺動駆動され、車輪2のキャンバ角が調整される。
なお、本実施の形態では、各連結軸48,49及びウォームホイール45の回転軸45aが、車体フレームBFから車輪2に向かう方向(矢印R方向)において、第1連結軸48、回転軸45a、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第1キャンバ状態と、回転軸45a、第1連結軸48、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第2キャンバ状態(図2に示す状態)とのいずれか一方のキャンバ状態となるように車輪2のキャンバ角が調整される。
これにより、車輪2のキャンバ角が調整された状態では、車輪2に外力が加わったとしても、アーム46を回動させる方向の力は発生せず、車輪2のキャンバ角を維持することができる。
また、本実施の形態では、第1キャンバ状態において、車輪2のキャンバ角がマイナス方向の所定の角度(本実施の形態では−3°、以下「第1キャンバ角」と称す)に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与される。一方、第2キャンバ状態(図2に示す状態)では、車輪2のキャンバ角が0°(以下「第2キャンバ角」と称す)に調整される。
図1に戻って説明する。操舵装置5は、運転者によるステアリング63の操作を左右の前輪2FL,2FRに伝えて操舵するための装置であり、いわゆるラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成されている。
この操舵装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作(回転)は、まず、ステアリングコラム51を介してユニバーサルジョイント52に伝達され、ユニバーサルジョイント52により角度を変えられつつステアリングボックス53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動する。その結果、タイロッド54がナックル55を押し引きすることで、車輪2に所定の舵角が付与される。
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3が駆動制御される。ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(ステア角、ステア角速度など)に応じて、操舵装置5により左右の前輪2FL,2FRが操舵される。
車両用制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態に応じてキャンバ角調整装置44(図3参照)を作動制御する。
次いで、図3を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。図3は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図3に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図4から図7に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。
RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、図3に示すように、キャンバフラグ73a、状態量フラグ73b、走行状態フラグ73c及び偏摩耗荷重フラグ73dが設けられている。
キャンバフラグ73aは、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態にあるか否かを示すフラグであり、CPU71は、このキャンバフラグ73aがオンである場合に、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態にあると判断する。
状態量フラグ73bは、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを示すフラグであり、後述する状態量判断処理(図4参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における状態量フラグ73bは、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この状態量フラグ73bがオンである場合に、車両1の状態量が所定の条件を満たしていると判断する。
走行状態フラグ73bは、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを示すフラグであり、後述する走行状態判断処理(図5参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における走行状態フラグ73cは、車両1の走行速度が所定の走行速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この走行状態フラグ73cがオンである場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
偏摩耗荷重フラグ73dは、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角の状態、即ち、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行する場合に、車輪2の接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある接地荷重(以下「偏摩耗荷重」と称す)であるか否かを示すフラグであり、後述する偏摩耗荷重判断処理(図6参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。CPU71は、この偏摩耗荷重フラグ73dがオンである場合に、車輪2の接地荷重がタイヤに偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であると判断する。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。但し、車輪駆動装置3は、電動モータ3aに限られず、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、油圧モータやエンジン等が例示される。
キャンバ角調整装置44は、各車輪2のキャンバ角を調整するための装置であり、上述したように、各懸架装置4の可動プレート47(図2参照)に揺動のための駆動力をそれぞれ付与する合計4個のFL〜RRモータ44FL〜44RRと、それら各モータ44FL〜44RRをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。
加速度センサ装置80は、車両1の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後方向加速度センサ80a及び左右方向加速度センサ80bと、それら各加速度センサ80a,80bの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
前後方向加速度センサ80aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1矢印F−B方向)の加速度、いわゆる前後Gを検出するセンサであり、左右方向加速度センサ80bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1矢印L−R方向)の加速度、いわゆる横Gを検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ80a,80bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
また、CPU71は、加速度センサ装置80から入力された各加速度センサ80a,80bの検出結果(前後G、横G)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の走行速度を取得することができる。
ヨーレートセンサ装置81は、車両1のヨーレートを検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る鉛直軸(図1矢印U−D方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角速度を検出するヨーレートセンサ81aと、そのヨーレートセンサ81aの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ロール角センサ装置82は、車両1のロール角を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る前後軸(図1矢印F−B方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角を検出するロール角センサ82aと、そのロール角センサ82aの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、ヨーレートセンサ81a及びロール角センサ82aがサニャック効果により回転角速度および回転角を検出する光学式ジャイロセンサにより構成されている。但し、他の種類のジャイロセンサを採用することは当然可能である。他の種類のジャイロセンサとしては、例えば、機械式や流体式などのジャイロセンサが例示される。
サスストロークセンサ装置83は、各懸架装置4の伸縮量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各懸架装置4の伸縮量をそれぞれ検出する合計4個のFL〜RRサスストロークセンサ83FL〜83RRと、それら各サスストロークセンサ83FL〜83RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各サスストロークセンサ83FL〜83RRがひずみゲージとして構成されており、これら各サスストロークセンサ83FL〜83RRは、各懸架装置4のショックアブソーバ(図示せず)にそれぞれ配設されている。
CPU71は、サスストロークセンサ装置83から入力された各サスストロークセンサ83FL〜83RRの検出結果(伸縮量)に基づいて、各車輪2の接地荷重を取得する。即ち、車輪2の接地荷重と懸架装置4の伸縮量とは比例関係を有しているので、懸架装置4の伸縮量をXとし、懸架装置4の減衰定数をkとすると、車輪2の接地荷重Fは、F=kXとなる。
接地荷重センサ装置84は、各車輪2の接地荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の接地荷重をそれぞれ検出する合計4個のFL〜RR接地荷重センサ84FL〜84RRと、それら各接地荷重センサ84FL〜84RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各接地荷重センサ84FL〜84RRがピエゾ抵抗型の荷重センサとして構成されており、これら各接地荷重センサ84FL〜84RRは、各懸架装置4のショックアブソーバ(図示せず)にそれぞれ配設されている。
サイドウォール潰れ代センサ装置85は、各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代をそれぞれ検出する合計4個のFL〜RRサイドウォール潰れ代センサ85FL〜85RRと、それら各サイドウォール潰れ代センサ85FL〜85RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各サイドウォール潰れ代センサ85FL〜85RRがひずみゲージとして構成されており、これら各サイドウォール潰れ代センサ85FL〜85RRは、各車輪2内にそれぞれ配設されている。
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング63のステア角を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。また、CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力された各角度センサの検出結果(操作量)を時間微分して、各ペダル61,62の踏み込み速度およびステアリング63のステア角速度を取得することができる。更に、CPU71は、取得したステアリング63のステア角速度を時間微分して、ステアリング63のステア角加速度を取得することができる。
図3に示す他の入出力装置90としては、例えば、GPSを利用して車両1の現在位置を取得すると共にその取得した車両1の現在位置を道路に関する情報が記憶された地図データに対応付けて取得するナビゲーション装置などが例示される。
次いで、図4を参照して、状態量判断処理について説明する。図4は、状態量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の状態量が所定の条件を満たすかを判断する処理である。
CPU71は、状態量判断処理に関し、まず、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)、ブレーキペダル62の操作量(踏み込み量)及びステアリング63の操作量(ステア角)をそれぞれ取得し(S1、S2、S3)、それら取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する(S4)。なお、S4の処理では、S1〜S3の処理でそれぞれ取得した各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量と、それら各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量にそれぞれ対応してROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回する場合に、車輪2がスリップする恐れがあると判断される限界値)とを比較して、現在の各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
その結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であると判断される場合には(S4:Yes)、状態量フラグ73bをオンして(S5)、この状態量判断処理を終了する。即ち、この状態量判断処理では、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合に、車両1の状態量が所定の条件を満たすと判断する。
一方、S4の処理の結果、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量のいずれもが所定の操作量より小さいと判断される場合には(S4:No)、状態量フラグ73bをオフして(S6)、この状態量判断処理を終了する。
次いで、図5を参照して、走行状態判断処理について説明する。図5は、走行状態判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断する処理である。
CPU71は、走行状態判断処理に関し、まず、車両1の走行速度を取得し(S11)、その取得した車両1の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する(S12)。なお、S12の処理では、S11の処理で取得した車両1の走行速度と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の車両1の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する。
その結果、車両1の走行速度が所定の速度より小さいと判断される場合には(S12:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
一方、S12の処理の結果、車両1の走行速度が所定の速度以上であると判断される場合には(S12:Yes)、ステアリング63の操作量(ステア角)を取得し(S13)、その取得したステアリング63の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S14)。なお、S14の処理では、S13の処理で取得したステアリング63の操作量と、ROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、図4に示す状態量判断処理において、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断するためのステアリング63の操作量より小さい値)とを比較して、現在のステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S14:Yes)、走行状態フラグ73cをオンして(S15)、この走行状態判断処理を終了する。即ち、この走行状態判断処理では、車両1の走行速度が所定の速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
一方、S14の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S14:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
次いで、図6を参照して、偏摩耗荷重判断処理について説明する。図6は、偏摩耗荷重判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行する場合に、車輪2の接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であるか否かを判断する処理である。
CPU71は、偏摩耗荷重判断処理に関し、まず、各懸架装置4の伸縮量が所定の伸縮量以下であるか否かを判断する(S21)。なお、S21の処理では、サスストロークセンサ装置83により各懸架装置4の伸縮量を検出すると共に、その検出された各懸架装置4の伸縮量と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の各懸架装置4の伸縮量が所定の伸縮量以下であるか否かを判断する。
その結果、各懸架装置4の内の少なくとも1の懸架装置4の伸縮量が所定の伸縮量より大きいと判断される場合には(S21:No)、その伸縮量の大きい懸架装置4に対応する車輪2の接地荷重が所定の接地荷重より大きく、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S21の処理の結果、各懸架装置4の伸縮量が所定の伸縮量以下であると判断される場合には(S21:Yes)、車両1の前後Gが所定の加速度以下であるか否かを判断する(S22)。なお、S22の処理では、加速度センサ装置80(前後方向加速度センサ80a)により検出された車両1の前後Gと、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の車両1の前後Gが所定の加速度以下であるか否かを判断する。
その結果、車両1の前後Gが所定の加速度より大きいと判断される場合には(S22:No)、左右の前輪2FL,2FR又は左右の後輪2RL,2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S22の処理の結果、車両1の前後Gが所定の加速度以下であると判断される場合には(S22:Yes)、車両1の横Gが所定の加速度以下であるか否かを判断する(S23)。なお、S23の処理では、加速度センサ装置80(左右方向加速度センサ80b)により検出された車両1の横Gと、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の車両1の横Gが所定の加速度以下であるか否かを判断する。
その結果、車両1の横Gが所定の加速度より大きいと判断される場合には(S23:No)、左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S23の処理の結果、車両1の横Gが所定の加速度以下であると判断される場合には(S23:Yes)、車両1のヨーレートが所定のヨーレート以下であるか否かを判断する(S24)。なお、S24の処理では、ヨーレートセンサ装置81により検出された車両1のヨーレートと、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の車両1のヨーレートが所定のヨーレート以下であるか否かを判断する。
その結果、車両1のヨーレートが所定のヨーレートより大きいと判断される場合には(S24:No)、左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S24の処理の結果、車両1のヨーレートが所定のヨーレート以下であると判断される場合には(S24:Yes)、車両1のロール角が所定のロール角以下であるか否かを判断する(S25)。なお、S25の処理では、ロール角センサ装置82により検出された車両1のロール角と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の車両1のロール角が所定のロール角以下であるか否かを判断する。
その結果、車両1のロール角が所定のロール角より大きいと判断される場合には(S25:No)、左右の前輪2FL,2FR又は左右の後輪2RL,2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S25の処理の結果、車両1のロール角が所定のロール角以下であると判断される場合には(S25:Yes)、各車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以下であるか否かを判断する(S26)。なお、S26の処理では、接地荷重センサ装置84により検出された各車輪2の接地荷重と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の各車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以下であるか否かを判断する。
その結果、各車輪2の内の少なくとも1の車輪2の接地荷重が所定の接地荷重より大きいと判断される場合には(S26:No)、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S26の処理の結果、各車輪2の接地荷重が所定の荷重以下であると判断される場合には(S26:Yes)、各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であるか否かを判断する(S27)。なお、S27の処理では、サイドウォール潰れ代センサ装置85により検出された各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であるか否かを判断する。
その結果、各車輪2の内の少なくとも1の車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代より大きいと判断される場合には(S27:No)、その潰れ代の大きい車輪2の接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S27の処理の結果、各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であると判断される場合には(S27:Yes)、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S28)。なお、S28の処理では、アクセルペダルセンサ装置61aにより検出されたアクセルペダル61の操作量と、ROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、図4に示す状態量判断処理において、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断するためのアクセルペダル61の操作量より小さい値)とを比較して、現在のアクセルペダル61の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する。
その結果、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S28:No)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S28の処理の結果、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S28:Yes)、ブレーキペダル62の操作量(踏み込み量)が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S29)。なお、S29の処理では、ブレーキペダルセンサ装置62aにより検出されたブレーキペダル62の操作量と、ROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、図4に示す状態量判断処理において、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断するためのブレーキペダル62の操作量より小さい値)とを比較して、現在のブレーキペダル62の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する。
その結果、ブレーキペダル62の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S29:No)、左右の前輪2FL,2FRの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S29の処理の結果、ブレーキペダル62の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S29:Yes)、ステアリング63の操作量(ステア角)が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S30)。なお、S30の処理では、ステアリングセンサ装置63aにより検出されたステアリング63の操作量と、ROM72に予め記憶されている閾値(本実施の形態では、図4に示す状態量判断処理において、車両1の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断するためのステアリング63の操作量より小さい値、且つ、図5に示す走行状態判断処理において、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断するためのステアリング63の操作量より大きい値)とを比較して、現在のステアリング63の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S30:No)、左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S30の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S30:Yes)、ステアリング63の操作速度(ステア角速度)が所定の速度以下であるか否かを判断する(S31)。なお、S31の処理では、ステアリング63の操作量を時間微分して取得されるステアリング63の操作速度と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在のステアリング63の操作速度が所定の速度以下であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操作速度が所定の速度より大きいと判断される場合には(S31:No)、左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S31の処理の結果、ステアリング63の操作速度が所定の速度以下であると判断される場合には(S31:Yes)、ステアリング63の操作加速度(ステア角加速度)が所定の加速度以下であるか否かを判断する(S32)。なお、S32の処理では、ステアリング63の操作速度を時間微分して取得されるステアリング63の操作加速度と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在のステアリング63の操作加速度が所定の加速度以下であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操作加速度が所定の加速度より大きいと判断される場合には(S32:No)、左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S32の処理の結果、ステアリング63の操作加速度が所定の加速度以下であると判断される場合には(S32:Yes)、偏摩耗フラグ73dをオフして(S34)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
次いで、図7を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図7は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を調整する処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、状態量フラグ73bがオンであるか否かを判断し(S41)、状態量フラグ73bがオンであると判断される場合には(S41:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S42)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S42:No)、FL〜RRモータ44FL〜44RRを作動させて、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、各車輪2にネガティブキャンバを付与すると共に(S43)、キャンバフラグ73aをオンして(S44)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たす場合、即ち、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であり、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回すると車輪2がスリップする恐れがあると判断される場合には、車輪2にネガティブキャンバを付与することで、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。
一方、S42の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S42:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S43及びS44の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S41の処理の結果、状態量フラグ73bがオフであると判断される場合には(S41:No)、走行状態フラグ73cがオンであるか否かを判断し(S45)、走行状態フラグ73cがオンであると判断される場合には(S45:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S46)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S46:No)、FL〜RRモータ44FL〜44RRを作動させて、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、各車輪2にネガティブキャンバを付与すると共に(S47)、キャンバフラグ73aをオンして(S48)、S49の処理を実行する。
これにより、車両1の走行状態が所定の直進状態である場合、即ち、車両1の走行速度が所定の速度以上であると共にステアリング63の操作量が所定の操作量以下であり、車両1が比較的高速で直進している場合には、車輪2にネガティブキャンバを付与することで、車輪2の横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保することができる。
一方、S46の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S46:Yes)、車輪2のキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S47及びS48の処理をスキップして、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであるか否かを判断する(S49)。その結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであると判断される場合には(S49:Yes)、FL〜RRモータ44FL〜44RRを作動させて、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、各車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S50)、キャンバフラグ73aをオフして(S51)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重である場合、即ち、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行すると、タイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れがある場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。
一方、S49の処理の結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオフであると判断される場合には(S49:No)、車輪2の接地荷重は偏摩耗荷重ではなく、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行しても、タイヤ(トレッド)が偏摩耗する恐れはないと判断されるので、S50及びS51の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S45の処理の結果、走行状態フラグ73cがオフであると判断される場合には(S45:No)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S52)。その結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S52:Yes)、FL〜RRモータ44FL〜44RRを作動させて、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、各車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S53)、キャンバフラグ73aをオフして(S54)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たしておらず車両1の走行状態が所定の直進状態でない場合、即ち、車両1の走行安定性を優先して確保する必要がない場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、キャンバスラストの影響を回避して、省燃費化を図ることができる。
一方、S52の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S52:No)、車輪2のキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S53及びS54の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
以上説明したように、第1実施の形態によれば、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角(第1キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、車輪2へのネガティブキャンバの付与が解除されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。即ち、車輪2の接地荷重が大きいほどタイヤの摩耗に対して不利な傾向があるため、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上である場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。その結果、タイヤの寿命を向上させることができる。また、タイヤの偏摩耗を抑制することで、タイヤの接地面が不均一となるのを防止して、車両1の走行安定性を確保することができる。更に、タイヤの偏摩耗を抑制できるので、その分、省燃費化を図ることができる。
また、第1実施の形態によれば、車両1の状態量が所定の条件を満たすと判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。また、車両1の状態量が所定の条件を満たしていないと判断され、且つ、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合には、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角(第1キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、車輪2へのネガティブキャンバの付与が解除されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。よって、走行安定性の確保とタイヤの偏摩耗の抑制との両立を図ることができる。
また、第1実施の形態によれば、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2の横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保することができる。また、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断され、且つ、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合には、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角(第1キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、車輪2へのネガティブキャンバの付与が解除されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。よって、直進安定性の確保とタイヤの偏摩耗の抑制との両立を図ることができる。
なお、図4に示すフローチャート(状態量判断処理)において、請求項2記載の状態量取得手段としてはS1〜S3の処理が、図5に示すフローチャート(走行状態判断処理)において、請求項1記載の走行状態取得手段としてはS11及びS13の処理が、図6に示すフローチャート(偏摩耗荷重判断処理)において、請求項1記載の接地荷重情報取得手段としてはS21〜32の処理が、請求項5記載の伸縮量取得手段としてはS21の処理においてサスストロークセンサ装置83により各懸架装置4の伸縮量を検出する処理が、図7に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載の接地荷重判断手段としてはS49の処理が、第1キャンバ角調整手段としてはS50の処理が、請求項2記載の状態量判断手段としてはS41の処理が、第2キャンバ角調整手段としてはS43の処理が、請求項1記載の走行状態判断手段としてはS45の処理が、第3キャンバ角調整手段としてはS47の処理が、それぞれ該当する。
次いで、図8から図11を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、車両用制御装置100の制御対象である車両1が、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRを含む全ての車輪2のキャンバ角をキャンバ角調整装置44により調整可能に構成される場合を説明したが、第2実施の形態における車両201は、左右の後輪202RL,202RRのみのキャンバ角がキャンバ角調整装置244により調整可能とされ、左右の前輪202FL,202FRについてはキャンバ角の調整を行わない構成とされている。
また、第1実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRを含む全ての車輪2が同じ構成とされる場合を説明したが、第2実施の形態における車両201は、左右の前輪202FL,202FRと左右の後輪202RL,202RRとが異なる構成とされている。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図8は、第2実施の形態における車両用制御装置200が搭載される車両201を模式的に示した模式図である。なお、図8の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両201の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
まず、車両201の概略構成について説明する。図8に示すように、車両201は、複数(本実施の形態では4輪)の車輪202を備え、それら車輪202は、車両201の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪202FL,202FRと、車両201の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪202RL,202RRとを備えている。なお、本実施の形態では、左右の前輪202FL,202FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪202RL,202RRは、車両201の走行に伴って従動される従動輪として構成されている。
車輪202は、左右の前輪202FL,202FRが互いに同じ形状および特性に構成されると共に、左右の後輪202RL,202RRが互いに同じ形状および特性に構成されている。また、左右の前輪202FL,202FRは、そのトレッドの幅(図8左右方向の寸法)が、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅よりも広い幅に構成されている。なお、左右の前輪202FL,202FRのトレッドと左右の後輪202RL,202RRのトレッドとは同じ特性に構成されている。
また、車輪202は、左右の前輪202FL,202FRが懸架装置204により車体フレームBFに懸架される一方、左右の後輪202RL,202RRが懸架装置4により車体フレームBFに懸架されている。なお、懸架装置204は、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角を調整する機能が省略されている点(即ち、図2に示す懸架装置4において、FRモータ44FRによる伸縮機能が省略されている点)を除き、その他の構成は懸架装置4と同じ構成であるので、その説明を省略する。
このように、第2実施の形態における車両201は、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅が、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くされているので、前輪202FL,202FRの路面に対する摩擦係数を、後輪202RL,202RRの路面に対する摩擦係数よりも大きくすることができる。その結果、制動力の向上を図ることができる。また、左右の前輪202FL,202FRが駆動輪とされる本実施の形態においては、加速性能の向上を図ることができる。
一方、左右の後輪202RL,202RRの転がり抵抗を、左右の前輪202FL,202FRの転がり抵抗よりも小さくできるので、その分、省燃費化を図ることができる。また、左右の後輪202RL,202RRにキャンバ角を付与できるので、車両201の旋回時には、左右の後輪202RL,202RRの対地キャンバ角を補正できると共に、車両201の旋回特性をアンダステア傾向とすることができ、車両201の旋回安定性を確保することができる。更に、車両201の直進時には、左右の後輪202RL,202RRの横剛性を利用して、車両201の直進安定性を確保することができる。
車両用制御装置200は、上述したように構成される車両201の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態に応じてキャンバ角調整装置244(図9参照)を作動制御する。
次いで、図9を参照して、車両用制御装置200の詳細構成について説明する。図9は、車両用制御装置200の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置200は、主に、第1実施の形態における車両用制御装置100のキャンバ角調整装置44に代えて、キャンバ角調整装置244を備えている。
キャンバ角調整装置244は、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を調整するための装置であり、左右の後輪202RL,202RRにキャンバ角をそれぞれ付与する合計2個のRL,RRモータ44RL,44RRと、それら各モータ44RL,44RRをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。即ち、第2実施の形態におけるキャンバ角調整装置244は、第1実施の形態におけるキャンバ角調整装置44の一部(左右の前輪202FL,202FRに対応するFL,FRモータ44FL,44FR)を省略して構成されている。
サスストロークセンサ装置283は、各懸架装置4の伸縮量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各懸架装置4の伸縮量をそれぞれ検出するRL,RRサスストロークセンサ83RL,83RRと、それら各サスストロークセンサ83RL,83RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。即ち、第2実施の形態におけるサスストロークセンサ装置283は、第1実施の形態におけるサスストロークセンサ装置83の一部(左右の前輪202FL,202FRに対応するFL,FRサスストロークセンサ83FL,83FR)を省略して構成されている。
接地荷重センサ装置284は、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重をそれぞれ検出するRL,RR接地荷重センサ84RL,84RRと、それら各接地荷重センサ84RL,84RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。即ち、第2実施の形態における接地荷重センサ装置284は、第1実施の形態における接地荷重センサ装置84の一部(左右の前輪202FL,202FRに対応するFL,FR接地荷重センサ84FL,84FR)を省略して構成されている。
サイドウォール潰れ代センサ装置285は、左右の後輪202RL,202RRのタイヤサイドウォールの潰れ代を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、左右の後輪202RL,202RRのタイヤサイドウォールの潰れ代をそれぞれ検出するRL,RRサイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRと、それら各サイドウォール潰れ代センサ85RL,85RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。即ち、第2実施の形態におけるサイドウォール潰れ代センサ装置285は、第1実施の形態におけるサイドウォール潰れ代センサ装置85の一部(左右の前輪202FL,202FRに対応するFL,FRサイドウォール潰れ代センサ85FL,85FR)を省略して構成されている。
次いで、図10を参照して、第2実施の形態における偏摩耗荷重判断処理について説明する。図10は、第2実施の形態における偏摩耗荷重判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置200の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪202RL,202RRにネガティブキャンバが付与された状態で車両201が走行する場合に、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であるか否かを判断する処理である。なお、第1実施の形態における偏摩耗荷重判断処理と同一の処理については同一の符号を付して説明する。
CPU71は、第2実施の形態における偏摩耗荷重判断処理に関し、まず、各懸架装置4の伸縮量が所定の伸縮量以下であるか否かを判断する(S221)。なお、S221の処理では、サスストロークセンサ装置283により各懸架装置4の伸縮量を検出すると共に、その検出された各懸架装置4の伸縮量と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の各懸架装置4の伸縮量が所定の伸縮量以下であるか否かを判断する。
その結果、各懸架装置4の内の少なくとも1の懸架装置4の伸縮量が所定の伸縮量より大きいと判断される場合には(S221:No)、その伸縮量の大きい懸架装置4に対応する車輪202(左右の後輪202RL,202RR)の接地荷重が所定の接地荷重より大きく、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S221の処理の結果、各懸架装置4の伸縮量が所定の伸縮量以下であると判断される場合には(S221:Yes)、車両1の前後Gが所定の加速度以下であるか否かを判断する(S22)。その結果、車両1の前後Gが所定の加速度より大きいと判断される場合には(S22:No)、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きい可能性があると推定され、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S22の処理の結果、車両1の前後Gが所定の加速度以下であると判断される場合には(S22:Yes)、車両1の横Gが所定の加速度以下であるか否かを判断する(S23)。その結果、車両1の横Gが所定の加速度より大きいと判断される場合には(S23:No)、左の後輪202RL又は右の後輪202RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S23の処理の結果、車両1の横Gが所定の加速度以下であると判断される場合には(S23:Yes)、車両1のヨーレートが所定のヨーレート以下であるか否かを判断する(S24)。その結果、車両1のヨーレートが所定のヨーレートより大きいと判断される場合には(S24:No)、左の後輪202RL又は右の後輪202RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S24の処理の結果、車両1のヨーレートが所定のヨーレート以下であると判断される場合には(S24:Yes)、車両1のロール角が所定のロール角以下であるか否かを判断する(S25)。その結果、車両1のロール角が所定のロール角より大きいと判断される場合には(S25:No)、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きい可能性があると推定され、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S25の処理の結果、車両1のロール角が所定のロール角以下であると判断される場合には(S25:Yes)、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重が所定の接地荷重以下であるか否かを判断する(S226)。なお、S226の処理では、接地荷重センサ装置284により検出された左右の後輪202RL,202RRの接地荷重と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の左右の後輪202RL,202RRの接地荷重が所定の接地荷重以下であるか否かを判断する。
その結果、左右の後輪202RL,202RRの内の少なくとも1の車輪202の接地荷重が所定の接地荷重より大きいと判断される場合には(S226:No)、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S226の処理の結果、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重が所定の荷重以下であると判断される場合には(S226:Yes)、左右の後輪202RL,202RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であるか否かを判断する(S227)。なお、S227の処理では、サイドウォール潰れ代センサ装置285により検出された左右の後輪202RL,202RRのタイヤサイドウォールの潰れ代と、ROM72に予め記憶されている閾値とを比較して、現在の左右の後輪202RL,202RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であるか否かを判断する。
その結果、左右の後輪202RL,202RRの内の少なくとも1の車輪202のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代より大きいと判断される場合には(S227:No)、その潰れ代の大きい車輪202の接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S227の処理の結果、左右の後輪202RL,202RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であると判断される場合には(S227:Yes)、アクセルペダル61の操作量(踏み込み量)が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S28)。その結果、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S28:No)、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S28の処理の結果、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S28:Yes)、ステアリング63の操作量(ステア角)が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S30)。その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S30:No)、左の後輪202RL又は右の後輪202RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S30の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S30:Yes)、ステアリング63の操作速度(ステア角速度)が所定の速度以下であるか否かを判断する(S31)。その結果、ステアリング63の操作速度が所定の速度より大きいと判断される場合には(S31:No)、左の後輪202RL又は右の後輪202RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S31の処理の結果、ステアリング63の操作速度が所定の速度以下であると判断される場合には(S31:Yes)、ステアリング63の操作加速度(ステア角加速度)が所定の加速度以下であるか否かを判断する(S32)。その結果、ステアリング63の操作加速度が所定の加速度より大きいと判断される場合には(S32:No)、左の後輪202RL又は右の後輪202RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断されるので、偏摩耗荷重フラグ73dをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S32の処理の結果、ステアリング63の操作加速度が所定の加速度以下であると判断される場合には(S32:Yes)、偏摩耗フラグ73dをオフして(S34)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
次いで、図11を参照して、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理について説明する。図11は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置200の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を調整する処理である。なお、第1実施の形態におけるキャンバ制御処理と同一の処理については同一の符号を付して説明する。
CPU71は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理に関し、まず、状態量フラグ73bがオンであるか否かを判断し(S41)、状態量フラグ73bがオンであると判断される場合には(S41:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S42)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S42:No)、RL,RRモータ44RL,44RRを作動させて、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、左右の後輪202RL,202RRにネガティブキャンバを付与すると共に(S243)、キャンバフラグ73aをオンして(S44)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両201の状態量が所定の条件を満たしている場合、即ち、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であり、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両201が加速、制動または旋回すると左右の後輪202RL,202RRがスリップする恐れがあると判断される場合には、左右の後輪202RL,202RRにネガティブキャンバを付与することで、左右の後輪202RL,202RRに発生するキャンバスラストを利用して、車両201の走行安定性を確保することができる。
一方、S42の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S42:Yes)、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S243及びS44の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S41の処理の結果、状態量フラグ73bがオフであると判断される場合には(S41:No)、走行状態フラグ73cがオンであるか否かを判断し(S45)、走行状態フラグ73cがオンであると判断される場合には(S45:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S46)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S46:No)、RL,RRモータ44RL,44RRを作動させて、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、左右の後輪202RL,202RRにネガティブキャンバを付与すると共に(S247)、キャンバフラグ73aをオンして(S48)、S49の処理を実行する。
これにより、車両201の走行状態が所定の直進状態である場合、即ち、車両201の走行速度が所定の速度以上であると共にステアリング63の操作量が所定の操作量以下であり、車両201が比較的高速で直進している場合には、左右の後輪202RL,202RRにネガティブキャンバを付与することで、左右の後輪202RL,202RRの横剛性を利用して、車両201の直進安定性を確保することができる。
一方、S46の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S46:Yes)、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S247及びS48の処理をスキップして、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであるか否かを判断する(S49)。その結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであると判断される場合には(S49:Yes)、RL,RRモータ44RL,44RRを作動させて、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、左右の後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S250)、キャンバフラグ73aをオフして(S51)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重が偏摩耗荷重である場合、即ち、左右の後輪202RL,202RRにネガティブキャンバが付与された状態で車両201が走行すると、タイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れがある場合には、左右の後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。
一方、S49の処理の結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオフであると判断される場合には(S49:No)、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重は偏摩耗荷重ではなく、左右の後輪202RL,202RRにネガティブキャンバが付与された状態で車両201が走行しても、タイヤ(トレッド)が偏摩耗する恐れはないと判断されるので、S250及びS51の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S45の処理の結果、走行状態フラグ73cがオフであると判断される場合には(S45:No)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S52)。その結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S52:Yes)、RL,RRモータ44RL,44RRを作動させて、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、左右の後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S253)、キャンバフラグ73aをオフして(S54)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両201の状態量が所定の条件を満たしておらず車両201の走行状態が所定の直進状態でない場合、即ち、車両201の走行安定性を優先して確保する必要がない場合には、左右の後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除することで、キャンバスラストの影響を回避して、省燃費化を図ることができる。
一方、S52の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S52:No)、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S253及びS54の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
なお、図10に示すフローチャート(偏摩耗荷重判断処理)において、請求項1記載の接地荷重情報取得手段としてはS221、S22〜25、S226、S227、S28及びS30〜S32の処理が、請求項5記載の伸縮量取得手段としてはS221の処理においてサスストロークセンサ装置283により各懸架装置4の伸縮量を検出する処理が、図11に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載の接地荷重判断手段としてはS49の処理が、第1キャンバ角調整手段としてはS250の処理が、請求項2記載の状態量判断手段としてはS41の処理が、第2キャンバ角調整手段としてはS243の処理が、請求項1記載の走行状態判断手段としてはS45の処理が、第3キャンバ角調整手段としてはS247の処理が、それぞれ該当する。
次いで、図12から図16を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、車両1,201の走行状態が所定の直進状態であると判断され、且つ、車輪2,202の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合に、車輪2,202のキャンバ角が第2キャンバ角に調整される場合について説明した。これに対し、第3実施の形態では、車両201の走行状態が所定の直進状態であると判断されると共に、車輪202の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断され、且つ、車輪202の接地荷重が所定の条件を満たさないと判断される場合に、車輪202のキャンバ角が第1キャンバ角に維持される場合について説明する。また、第3実施の形態で説明する車両用制御装置300は、第2実施の形態における車両201に搭載される車両用制御装置200に代えて搭載されるものとして説明する。なお、第1実施の形態および第2実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
まず、図12を参照して、第3実施の形態における車両用制御装置300の電気的構成について説明する。図12は車両用制御装置300の電気的構成を示したブロック図である。計時装置385は時間を計測するための装置であり、各計時装置は、CPU71からの指示に基づいて時間を計測する計時回路(図示せず)と、その計時回路により計測された時間を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。なお、第1計時装置385aは後述する走行状態判断処理(図13参照)において時間を計測する装置であり、第2計時装置385bは後述する偏磨耗荷重判断処理(図15参照)において時間を計測する装置であり、第3計時装置385cは後述するキャンバ制御処理(図16参照)において時間を計測する装置である。
RAM373は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、図12に示すように、キャンバフラグ73a、状態量フラグ73b、走行状態フラグ73c、偏摩耗荷重フラグ73dに加え、第1計時フラグ373e及び第2計時フラグ373fが設けられている。
第1計時フラグ373eは、第1計時装置385aが時間を計時中か否かを示すフラグであり、走行状態判断処理(図13参照)の実行中にオン又はオフに切り替えられる。第2計時フラグ373fは、第2計時装置385bが時間を計時中か否かを示すフラグであり、偏磨耗荷重判断処理(図15参照)の実行中にオン又はオフに切り替えられる。
次いで、図13を参照して、第3実施の形態における走行状態判断処理について説明する。図13は、走行状態判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置300の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断する処理である。
CPU71は、走行状態判断処理に関し、まず、車両201の走行速度を取得し(S11)、その取得した車両201の走行速度が所定の速度以上であるか否かを判断する(S12)。その結果、車両201の走行速度が所定の速度以上であると判断される場合には(S12:Yes)、ステアリング63の操作量(ステア角)を取得し(S13)、その取得したステアリング63の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S14)。その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S14:Yes)、第1計時フラグ373eがオンであるか否かを判断する(S61)。その結果、第1計時フラグ373eがオフであると判断される場合には(S61:No)、第1計時装置385aにより計時を開始し(S62)、第1計時フラグ373eをオンして(S63)、この走行状態判断処理を終了する。
一方、S61の処理の結果、第1計時フラグ373eがオンであると判断される場合には(S61:Yes)、第1計時装置385aにより計時が開始されてから所定の時間が経過したか否かを判断する(S64)。この所定の時間は予め設定されROM72に記憶されている。その結果、所定の時間が経過していると判断される場合には(S64:Yes)、走行状態フラグ73cをオンすると共に(S65)、第1計時装置385aによる計時を終了して(S66)、第1計時フラグ373eをオフし(S67)、この走行状態判断処理を終了する。即ち、この走行状態判断処理では、車両201の走行速度が所定の速度以上であると共に、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断され、且つ、この状態が所定時間継続したと判断される場合に、走行状態フラグ73cがオンされる。
これに対し、S12の処理の結果、車両201の走行速度が所定の速度より小さいと判断される場合(S12:No)、S14の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S14:No)、第1計時装置385aによる計時を終了すると共に(S68)、第1計時フラグ373eをオフし(S69)、走行状態フラグ73cをオフして(S70)、この走行状態判断処理を終了する。また、S64の処理の結果、第1計時装置385aにより計時が開始されてから所定の時間が経過していないと判断される場合には(S64:No)、走行状態フラグ73cをオフして(S70)、この走行状態判断処理を終了する。
次いで、図14及び図15を参照して、第3実施の形態における偏摩耗荷重判断処理について説明する。図14及び図15は、偏摩耗荷重判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置300の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪202RL,202RRにネガティブキャンバが付与された状態で車両201が走行する場合に、後輪202RL,202RRの接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であるか否かを判断する処理である。なお、偏摩耗荷重判断処理のうち図14に示す部分は、第2実施の形態における偏磨耗荷重判断処理と同一なので、同一の符号を付してその説明を省略する。
図14に示すS221〜S32のいずれかの処理の結果、後輪202RL,202RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断される場合には(図14:A)、図15に示すようにCPU71は第2計時フラグ373fがオンであるか否かを判断する(S71)。その結果、第2計時フラグ373fがオフであると判断される場合には(S71:No)、第2計時装置385bにより計時を開始すると共に(S72)、第2計時フラグ373fをオンして(S73)、この偏磨耗荷重判断処理を終了する。
一方、S71の処理の結果、第2計時フラグ373fがオンであると判断される場合には(S71:Yes)、第2計時装置385bにより計時が開始されてから所定の時間が経過したか否かを判断する(S74)。この所定の時間は予め設定されROM72に記憶されている。その結果、所定の時間が経過していると判断される場合には(S74:Yes)、偏磨耗荷重フラグ73dをオンすると共に(S75)、第2計時装置385bによる計時を終了して(S76)、第2計時フラグ373fをオフし(S77)、この偏磨耗荷重判断処理を終了する。即ち、この偏磨耗荷重判断処理では、後輪202RL,202RRの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定される状態が所定時間継続したと判断される場合に、偏摩耗荷重フラグ73dをオンする。
これに対し、図14に示すS221〜S32の処理の結果、後輪202RL,202RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重以下と推定され、かかる後輪202RL,202RRの接地荷重が偏摩耗荷重でないと判断される場合には(図14:B)、図15に示すように第2計時装置385bによる計時を終了すると共に(S78)、第2計時フラグ373fをオフし(S79)、偏磨耗荷重フラグ73dをオフして(S80)、この偏磨耗荷重判断処理を終了する。また、S74の処理の結果、第2計時装置385bにより計時が開始されてから所定の時間が経過していない(車両201が所定の状態が継続されていない)と判断される場合には(S74:No)、偏磨耗荷重フラグ373fをオフして(S80)、この偏磨耗荷重判断処理を終了する。
次いで、図16を参照して、第3実施の形態におけるキャンバ制御処理について説明する。図16は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置300の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を調整する処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、状態量フラグ73bがオンであるか否かを判断し(S41)、状態量フラグ73bがオンであると判断される場合には(S41:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S42)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S42:No)、RL及びRRモータ44RL,44RRを作動させて、後輪202RL,202RRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、後輪202RL,202RRにネガティブキャンバを付与すると共に(S243)、キャンバフラグ73aをオンして(S44)、第3計時装置385cによる計時を終了して(S81)、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S42の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S42:Yes)、後輪202RL,202RRのキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S43及びS44の処理をスキップし、第3計時装置385cによる計時を終了して(S81)、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S41の処理の結果、状態量フラグ73bがオフであると判断される場合には(S41:No)、走行状態フラグ73cがオンであるか否かを判断し(S45)、走行状態フラグ73cがオンであると判断される場合には(S45:Yes)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S46)。その結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S46:No)、RL及びRRモータ44RL,44RRを作動させて、後輪202RL,202RRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、後輪202RL,202RRにネガティブキャンバを付与すると共に(S247)、キャンバフラグ73aをオンし(S48)、第3計時装置385cによる計時を開始して(S82)、S49の処理を実行する。これにより、車両201の走行状態が所定の直進状態である場合、後輪202RL,202RRにネガティブキャンバを付与することで、後輪202RL,202RRの横剛性を利用して、車両201の直進安定性を確保できる。
一方、S46の処理の結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S46:Yes)、後輪202RL,202RRのキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S247,S48及びS82の処理をスキップして、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであるか否かを判断する(S49)。その結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであると判断される場合には(S49:Yes)、第3計時装置385cにより計時が開始されてから所定の時間が経過したか否かを判断し(S83)、所定の時間が経過していると判断される場合には(S83:Yes)、RL及びRRモータ44RL,44RRを作動させて、後輪202RL,202RRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S84)、キャンバフラグ73aをオフし(S85)、第3計時装置385cによる計時を終了して(S86)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、後輪202RL,202RRの接地荷重が偏摩耗荷重である場合、即ち、後輪202RL,202RRにネガティブキャンバが付与された状態で車両201が走行すると、タイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れがある場合には、後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。
これに対し、S49の処理の結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオフであると判断される場合には(S49:No)、後輪202RL,202RRの接地荷重は偏摩耗荷重ではなく、後輪202RL,202RRにネガティブキャンバが付与された状態で車両201が走行しても、タイヤ(トレッド)が偏摩耗する恐れはないと判断されるので、第3計時装置385cによる計時を終了し(S87)、S83〜S86の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
また、S83の処理の結果、所定の時間が経過していないと判断される場合には(S83:No)、S84,S85及びS86の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。このように、偏磨耗荷重フラグ73dがオンであると判断される場合であっても(S49:Yes)、S83の処理の結果、所定の時間が経過していない(後輪202RL,202RRにネガティブキャンバが付与された所定の状態が車両201に継続している)と判断される場合に(S83:No)、後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を維持することで、後輪202RL,202RRのキャンバ角の頻繁な切り替わりを抑制できる。
一方、S45の処理の結果、走行状態フラグ73cがオフであると判断される場合には(S45:No)、キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S52)。その結果、キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S52:Yes)、RL及びRRモータ44RL,44RRを作動させて、後輪202RL,202RRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S253)、キャンバフラグ73aをオフし(S54)、第3計時装置385cによる計時を終了して(S88)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両201の状態量が所定の条件を満たしておらず車両201の走行状態が所定の直進状態でない場合、即ち、車両201の走行安定性を優先して確保する必要がない場合には、後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除することで、キャンバスラストの影響を回避して、省燃費化を図ることができる。
一方、S52の処理の結果、キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S52:No)、後輪202RL,202RRのキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S253及びS54の処理をスキップして、第3計時装置385cによる計時を終了し(S88)、このキャンバ制御処理を終了する。
以上説明したように、第3実施の形態によれば、偏磨耗荷重判断処理において(図15参照)、車輪202の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断されるのに加え、第2計時装置385bによる計時により所定の時間が経過した(接地荷重に関する情報に基づいて車両201が所定の状態が継続されている)と判断される場合に(S74:Yes)、偏磨耗荷重フラグ73dがオンされる(S75)。そのため、キャンバ制御処理(図16参照)において、S84の処理の実行により車輪202のキャンバ角が頻繁に第2キャンバ角に調整されることを回避でき、キャンバ角の頻繁な切り替わりを抑制できる。これにより、路面の継ぎ目や部分的な舗装等による不連続な凹凸によって、走行中の車両201の懸架装置4の伸縮量が突発的に変化するような場合に、車輪202のキャンバ角を第1キャンバ角に維持できる。
また、第3実施の形態によれば、キャンバ制御処理(図16参照)において走行状態フラグ73cがオンである場合(S45)、車輪202のキャンバ角が第1キャンバ角に調整されてから、第3計時装置385cによる計時により所定の時間が経過したと判断される場合に(S83:Yes)、車輪202のキャンバ角が第2キャンバ角に調整される(S84)。一方、S83の処理の結果、所定の時間が経過していない(車輪202のキャンバ角が第1キャンバ角に調整された所定の状態が、接地荷重に関する情報に基づいて車両201に継続されている)と判断される場合に(S83:No)、車輪202のキャンバ角が第1キャンバ角に維持される。この場合も、車輪202の接地荷重が所定の接地荷重以上と判断されるたびにキャンバ角調整装置244が作動して車輪202のキャンバ角が第2キャンバ角に調整されることを回避でき、キャンバ角の頻繁な切り替わりを抑制できる。
また、第3実施の形態によれば、走行状態判断処理において(図13参照)、車両201の走行状態が所定の直進状態であると判断される場合であっても、第1計時装置385aによる計時により所定の時間が経過したと判断される場合に(S64:Yes)、走行状態フラグ73cがオンされる(S65)。そのため、キャンバ制御処理(図16参照)のS247の処理が実行されて、キャンバ角調整装置244が作動して車輪202のキャンバ角が頻繁に第1キャンバ角に調整されることを回避でき、キャンバ角の頻繁な切り替わりを抑制できる。
なお、図13に示すフローチャート(走行状態判断処理)において、請求項4記載の待機手段としてはS64の処理の結果、実行されるS70の処理が該当する。図15に示すフローチャート(偏磨耗荷重判断処理)において、請求項1記載の継続状態判断手段としてはS74の処理が該当する。図16に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載の継続状態判断手段としてはS83の処理が、維持手段としてはS83の処理の結果S84の処理をスキップする処理が、それぞれ該当する。
次いで、図17から図18を参照して、第4実施の形態について説明する。第3実施の形態では偏磨耗荷重判断処理(図15参照)において、偏磨耗荷重フラグ73dをオンするか否かを、所定の時間が経過するか否かを考慮して判断する場合について説明した。これに対し、第4実施の形態では、走行状態を示す所定期間内の状態値が所定条件を満たすか否かを考慮して判断する場合について説明する。また、第4実施の形態で説明する車両用制御装置400は、第2実施の形態における車両201に搭載される車両用制御装置200に代えて搭載されるものとして説明する。なお、第1実施の形態および第2実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
まず、図17を参照して、第4実施の形態における車両用制御装置400の電気的構成について説明する。RAM473は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、図17に示すように、キャンバフラグ73a、状態量フラグ73b、走行状態フラグ73c、偏摩耗荷重フラグ73dに加え、リングバッファメモリ473eが設けられている。
リングバッファメモリ473eは、後輪2RL,2RRの接地荷重の履歴を記憶するリングバッファであり、接地荷重センサ装置284のRL接地荷重センサ84RL及びRR接地荷重センサ84RRによる検出結果(接地荷重)が所定のレートでサンプリングされ、接地荷重がサンプリング時間に対応付けられて順次書き込まれる。このリングバッファメモリ473eへの書き込みは、リングバッファの先頭アドレスから順に行われ、その書き込みがリングバッファの最終アドレスへ至ると、再度リングバッファの先頭アドレスに戻って、その先頭アドレスから書き込みが継続される。
CPU71は、リングバッファメモリ473eから所定時間内の接地荷重を読み出し、ROM72に記憶された所定の閾値(接地荷重)と比較し、閾値を超えた接地荷重のサンプリング数をカウントする。閾値を超えた接地荷重のサンプリング数が少ない場合は、後輪2RL,2RRの接地荷重が突発的に生じていると推定できる。
次いで、図18を参照して、第4実施の形態における偏摩耗荷重判断処理について説明する。図18は、偏摩耗荷重判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置400の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪202RL,202RRにネガティブキャンバが付与された状態で車両201が走行する場合に、後輪202RL,202RRの接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であるか否かを判断する処理である。なお、状態量判断処理、走行状態判断処理およびキャンバ制御処理は、第1実施の形態から第3実施の形態のいずれかと同様にできるので、説明を省略する。
図18に示すS221〜S32のいずれかの処理の結果、後輪202RL,202RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断される場合には(S221〜S32:No)、CPU71は、リングバッファメモリ473eから所定時間内の接地荷重を読み出し、所定時間内の接地荷重が所定の閾値(接地荷重)を超えたサンプリング数をカウントする(S91)。次いで、CPU71はそのサンプリング数と、ROM72に記憶された所定の閾値(サンプリング数)とを比較する(S92)。その結果、カウントされたサンプリング数が閾値以上であると判断される場合は(S92:Yes)、後輪202RL,202RRの接地荷重が大きな状態が継続しており、接地荷重に関する情報に基づいて車両201が所定の状態が継続されていると判断され、偏摩耗を引き起こすおそれがあると判断されるので、偏磨耗荷重フラグ73dをオンして(S93)、この偏磨耗荷重判断処理を終了する。
一方、S92の処理の結果、カウントされたサンプリング数が閾値未満であると判断される場合は(S92:No)、後輪2RL,2RRの接地荷重は突発的であり、偏摩耗を引き起こすおそれがないと判断されるので、偏磨耗荷重フラグ73dをオフして(S94)、この偏磨耗荷重判断処理を終了する。
以上説明したように第4実施の形態によれば、偏磨耗荷重判断処理において(図18参照)、車輪202の接地荷重が所定の接地荷重以上であるとの判断に加え、カウントされたサンプリング数が閾値以上であると判断される場合に(S92:Yes)、偏磨耗荷重フラグ73dがオンされる(S93)。そのため、キャンバ制御処理おいて、キャンバ角調整装置244が作動して車輪202のキャンバ角が頻繁に第2キャンバ角に調整されることを回避でき、キャンバ角の頻繁な切り替わりを抑制できる。これにより、路面の継ぎ目や部分的な舗装等による不連続な凹凸によって車輪202の接地荷重が突発的に加わるような場合に、車輪202のキャンバ角を第1キャンバ角に維持できる。なお、図18に示すフローチャート(偏磨耗荷重判断処理)において、請求項1記載の継続状態判断手段としてはS92の処理が該当する。
次いで、図19を参照して、第5実施の形態について説明する。第4実施の形態では偏磨耗荷重判断処理(図18参照)において、偏磨耗荷重フラグ73dをオンするか否かを、所定期間内の状態値が所定条件を満たすか否かを考慮して判断する場合について説明した。これに対し第5実施の形態では、走行状態を示す状態値が所定条件を満たすか否かを考慮して判断する場合について説明する。また、第5実施の形態における偏磨耗荷重判断処理は、第2実施の形態における車両201に搭載される車両用制御装置200において実行されるものとして説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図19は第5実施の形態における偏摩耗荷重判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置200の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理である。なお、状態量判断処理、走行状態判断処理およびキャンバ制御処理は、第1実施の形態と同様にできるので、説明を省略する。
図19に示すS221〜S32のいずれかの処理の結果、後輪202RL,202RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断される場合には(S221〜S32:No)、CPU71は、接地荷重センサ装置284により検出される接地荷重を時間微分して得られる時間微分値(接地荷重の変化の大きさ)と、ROM72に記憶された所定の閾値とを比較する(S95)。その結果、接地荷重の変化の大きさが閾値以下であると判断される場合は(S95:Yes)、接地荷重の変化は小さいが接地荷重は漸次増加しており、車両201が所定の状態が継続されていると判断されるので、偏磨耗荷重フラグ73dをオンして(S93)、この偏磨耗荷重判断処理を終了する。
一方、S95の処理の結果、接地荷重の変化の大きさが閾値より大きいと判断される場合は(S95:No)、後輪2RL,2RRの接地荷重はタイヤが受ける衝撃等によって突発的に生じていると判断されるので、偏磨耗荷重フラグ73dをオフして(S94)、この偏磨耗荷重判断処理を終了する。
以上説明したように第5実施の形態によれば、偏磨耗荷重判断処理において(図19参照)、車輪202の接地荷重が所定の接地荷重以上であるとの判断に加え、接地荷重の変化の大きさが閾値以下であると判断される場合に(S95:Yes)、偏磨耗荷重フラグがオンされる(S93)。そのため、キャンバ制御処理おいて、キャンバ角調整装置244が作動して車輪202のキャンバ角が頻繁に第2キャンバ角に調整されることを回避でき、キャンバ角の頻繁な切り替わりを抑制できる。これにより、路面の継ぎ目や部分的な舗装等による不連続な凹凸によって車輪202の接地荷重が突発的に変化するような場合に、車輪202のキャンバ角を第1キャンバ角に維持できる。なお、図19に示すフローチャート(偏磨耗荷重判断処理)において、請求項1記載の継続状態判断手段としてはS95の処理が該当する。
次いで、図20から図21を参照して、第6実施の形態について説明する。第1実施の形態ではキャンバ制御処理(図7参照)において、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRにネガティブキャンバが付与された状態で偏磨耗荷重フラグ73d(図3参照)がオンである場合に(S49:Yes)、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を解除する場合について説明した。これに対し、第6実施の形態では、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRにネガティブキャンバが付与された状態で偏磨耗荷重フラグ73dがオンである場合に、前輪2FL,2FRへのネガティブキャンバの付与を解除する場合について説明する。また、第6実施の形態で説明する車両用制御装置500は、第1実施の形態における車両1に搭載される車両用制御装置100に代えて搭載されるものとして説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
まず、図20を参照して、第6実施の形態における車両用制御装置500の電気的構成について説明する。RAM573は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、図20に示すように、前輪キャンバフラグ573a、後輪キャンバフラグ573b、状態量フラグ73b、走行状態フラグ73c、偏摩耗荷重フラグ73dが設けられている。
前輪キャンバフラグ573aは、前輪2FL,2FRのキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態にあるか否かを示すフラグであり、CPU71は、この前輪キャンバフラグ573aがオンである場合に前輪2FL,2FRのキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態にあると判断する。後輪キャンバフラグ573bは、後輪2RL,2RRのキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態にあるか否かを示すフラグであり、CPU71は、この後輪キャンバフラグ573bがオンである場合に後輪2RL,2RRのキャンバ角が第1キャンバ角に調整された状態にあると判断する。
次いで、車両用制御装置500で実行される偏磨耗荷重判断処理について、図19を参照しながら説明する。偏磨耗荷重判断処理では、CPU71は、図19に示すS221の処理に代えて、各懸架装置4の内の少なくとも1の懸架装置4の伸縮量が所定の伸縮量以下であるか否かを判断する。また、図19に示すS226の処理に代えて、各車輪2(前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RR)の接地荷重が所定の接地荷重以下であるか否かを判断する。さらに図19に示すS227の処理に代えて、各車輪2(前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RR)のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定の潰れ代以下であるか否かを判断する。
これらの処理の結果、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのいずれかの接地荷重が所定の接地荷重より大きいと推定され、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断される場合には(S221〜S32:No)、CPU71は、接地荷重センサ装置84により検出される接地荷重を時間微分して得られる時間微分値(接地荷重の変化の大きさ)と、ROM72に記憶された所定の閾値とを比較する(S95)。その結果、接地荷重の変化の大きさが閾値以下であると判断される場合は(S95:Yes)、接地荷重の変化は小さいが接地荷重は漸次増加しており、車両1が所定の状態が継続されていると判断されるので、偏磨耗荷重フラグ73dをオンして(S93)、この偏磨耗荷重判断処理を終了する。
一方、S95の処理の結果、接地荷重の変化の大きさが閾値より大きいと判断される場合は(S95:No)、前輪2FL,2FR又は後輪2RL,2RRの接地荷重はタイヤが受ける衝撃等によって突発的に生じていると判断されるので、偏磨耗荷重フラグ73dをオフして(S94)、この偏磨耗荷重判断処理を終了する。
次いで、図21を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図21は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置500の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を調整する処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、状態量フラグ73bがオンであるか否かを判断し(S101)、状態量フラグ73bがオンであると判断される場合には(S101:Yes)、後輪キャンバフラグ573bがオンであるか否かを判断する(S102)。その結果、後輪キャンバフラグ573bがオフであると判断される場合には(S102:No)、RLモータ及びRRモータ44RL,44RRを作動させて、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与する(S103)。後輪キャンバフラグ573bをオンした後(S104)、前輪キャンバフラグ573aがオンであるか否かを判断する(S105)。
なお、S102の処理の結果、後輪キャンバフラグ573bがオンであると判断される場合は(S102:Yes)、後輪2RL,2RRのキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S103及びS104の処理をスキップして、S105の処理を実行する。
S105の処理の結果、前輪キャンバフラグ573aがオフであると判断される場合には(S105:No)、FLモータ及びFRモータ44FL,44FRを作動させて、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、前輪2FL,2FRにネガティブキャンバを付与する(S106)。前輪キャンバフラグ573aをオンした後(S107)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たす場合、即ち、各ペダル61,62の操作量およびステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であり、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両1が加速、制動または旋回すると車輪2がスリップする恐れがあると判断される場合には、車輪2(前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RR)にネガティブキャンバを付与することで、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。
また、車両1の状態量が所定の条件を満たす場合には、S102〜S107の処理において、ネガティブキャンバを後輪2RL,2RRに付与した後、前輪2FL,2FRに付与するので、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのキャンバ角が同時に調整されることを防止すると共に、後輪2RL,2RRに発生するキャンバスラストを効果的に利用できる。これにより、車輪2のキャンバ角が調整されるときの車両1の走行安定性を向上できる。
一方、S105の処理の結果、前輪キャンバフラグ573aがオンであると判断される場合には(S105:Yes)、前輪2FL,2FRのキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S106及びS107の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S101の処理の結果、状態量フラグ73bがオフであると判断される場合には(S101:No)、走行状態フラグ73cがオンであるか否かを判断し(S108)、走行状態フラグ73cがオンであると判断される場合には(S108:Yes)、後輪キャンバフラグ573bがオンであるか否かを判断する(S109)。その結果、後輪キャンバフラグ573bがオフであると判断される場合には(S109:No)、RLモータ及びRRモータ44RL,44RRを作動させて、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与する(S110)。後輪キャンバフラグ573bをオンした後(S111)、前輪キャンバフラグ573aがオンであるか否かを判断する(S112)。
なお、S109の処理の結果、後輪キャンバフラグ573bがオンであると判断される場合は(S109:Yes)、後輪2RL,2RRのキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S110及びS111の処理をスキップして、S112の処理を実行する。
S112の処理の結果、前輪キャンバフラグ573aがオフであると判断される場合には(S112:No)、RLモータ及びRRモータ44RL,44RRを作動させて、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、前輪2FL,2FRにネガティブキャンバを付与し(S113)、前輪キャンバフラグ573aをオンして(S114)、S115の処理を実行する。
これにより、車両1の走行状態が所定の直進状態である場合、即ち、車両1の走行速度が所定の速度以上であると共にステアリング63の操作量が所定の操作量以下であり、車両1が比較的高速で直進している場合には、車輪2にネガティブキャンバを付与することで、車輪2の横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保することができる。
また、車両1の走行状態が所定の直進状態である場合には、S109〜S114の処理において、ネガティブキャンバを後輪2RL,2RRに付与した後、前輪2FL,2FRに付与するので、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのキャンバ角が同時に調整されることを防止すると共に、後輪2RL,2RRに発生するキャンバスラストを効果的に利用できる。これにより、車輪2のキャンバ角が調整されるときの車両1の直進安定性を向上できる。
一方、S112の処理の結果、前輪キャンバフラグ573aがオンであると判断される場合には(S112:Yes)、前輪2FL,2FRのキャンバ角は既に第1キャンバ角に調整されているので、S113及びS114の処理をスキップして、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであるか否かを判断する(S115)。その結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオンであると判断される場合には(S115:Yes)、FLモータ及びFRモータ44FL,44FRを作動させて、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、前輪2FL,2FRへのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S116)、前輪キャンバフラグ573aをオフして(S117)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重である場合、即ち、前輪2FL,2FRにネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行すると、前輪2FL,2FRのタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れがある場合には、前輪2FL,2FRへのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。さらに後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与は維持されるので、後輪2RL,2RRの横剛性を利用して車両1の直進安定性を確保できる。
一方、S115の処理の結果、偏摩耗荷重フラグ73dがオフであると判断される場合には(S115:No)、車輪2の接地荷重は偏摩耗荷重ではなく、前輪2FL,2FRにネガティブキャンバが付与された状態で車両1が走行しても、タイヤ(トレッド)が偏摩耗する恐れはないと判断されるので、S116及びS117の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S108の処理の結果、走行状態フラグ73cがオフであると判断される場合には(S108:No)、前輪キャンバフラグ573aがオンであるか否かを判断する(S118)。その結果、前輪キャンバフラグ573aがオンであると判断される場合には(S118:Yes)、FLモータ及びFRモータ44FL,44FRを作動させて、左右の前輪2FL,2FRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、前輪2FL,2FRへのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S119)、前輪キャンバフラグ573aをオフして(S120)、S121の処理を実行する。
なお、S118の処理の結果、前輪キャンバフラグ573aがオフであると判断される場合は(S118:No)、前輪2FL,2FRのキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S119及びS120の処理をスキップして、S121の処理を実行する。
S121の処理の結果、後輪キャンバフラグ573bがオンであると判断される場合には(S121:Yes)、RLモータ及びRRモータ44RL,44RRを作動させて、左右の後輪2RL,2RRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を解除すると共に(S122)、後輪キャンバフラグ573bをオフして(S123)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の状態量が所定の条件を満たしておらず車両1の走行状態が所定の直進状態でない場合、即ち、車両1の走行安定性を優先して確保する必要がない場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、キャンバスラストの影響を回避して、省燃費化を図ることができる。
また、この場合にS119〜S123の処理において、前輪2FL,2FRのネガティブキャンバの付与を解除した後、後輪2RL,2RRのネガティブキャンバの付与を解除するので、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのキャンバ角が同時に調整されることを防止できる。これにより、車輪2のキャンバ角が調整されるときの車両1の走行安定性を確保できる。
一方、S121の処理の結果、後輪キャンバフラグ573bがオフであると判断される場合には(S121:No)、後輪2RL,2RRのキャンバ角は既に第2キャンバ角に調整されているので、S122及びS123の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
以上説明したように、第6実施の形態によれば、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合に、前輪2FL,2FRのキャンバ角が第2キャンバ角(第1キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、前輪2FL,2FRへのネガティブキャンバの付与が解除される。これにより前輪2FL,2FRのタイヤの偏摩耗を抑制することができる。
即ち、車両1は前輪2FL,2FR側に質量の大きな車輪駆動装置3が搭載されているので、前輪2FL,2FRの接地荷重は後輪2RL,2RRの接地荷重に比べて大きくなり易い。また、制動力が加わると車両1の荷重が前輪2FL,2FR側に移動するので、前輪2FL,2FRの接地荷重は後輪2RL,2RRの接地荷重に比べて大きくなり易い。また、車両1が旋回するときにはステアリング63の操作により前輪2FL,2FRが操作されるので、前輪2FL,2FRは偏磨耗に対して不利な傾向がある。よって、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上である場合には、前輪2FL,2FRへのネガティブキャンバの付与を解除することで、前輪2FL,2FRのタイヤの偏摩耗を抑制することができる。その結果、タイヤの寿命を向上させることができる。また、タイヤの偏摩耗を抑制することで、タイヤの接地面が不均一となるのを防止して、車両1の走行安定性を確保することができる。更に、タイヤの偏摩耗を抑制できるので、その分、省燃費化を図ることができる。
また、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRにネガティブキャンバが付与された状態で、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合は、後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与は維持される。偏磨耗し難い後輪2RL,2RRへのネガティブキャンバの付与を維持することにより、車両1の直進安定性を確保できる。これにより前輪2FL,2FRの偏磨耗を防止できると共に、車両1の直進安定性を確保できる。
また、第6実施の形態によれば、車両1の状態量が所定の条件を満たすと判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2に発生するキャンバスラストを利用して、車両1の走行安定性を確保することができる。また、車両1の状態量が所定の条件を満たしていないと判断され、且つ、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合には、前輪2FL,2FRのキャンバ角が第2キャンバ角(第1キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、前輪2FL,2FRへのネガティブキャンバの付与が解除されるので、前輪2FL,2FRのタイヤの偏摩耗を抑制することができる。よって、走行安定性の確保とタイヤの偏摩耗の抑制との両立を図ることができる。
また、第6実施の形態によれば、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断される場合に、車輪2のキャンバ角が第1キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2の横剛性を利用して、車両1の直進安定性を確保することができる。また、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断され、且つ、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合には、前輪2FL,2FRのキャンバ角が第2キャンバ角(第1キャンバ角よりも絶対値が小さいキャンバ角)に調整され、前輪2FL,2FRへのネガティブキャンバの付与が解除される。これにより前輪2FL,2FRのタイヤの偏摩耗を抑制することができる。よって、直進安定性の確保とタイヤの偏摩耗の抑制との両立を図ることができる。
また、偏磨耗荷重判断処理において(図19参照)、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であるとの判断に加え、接地荷重の変化の大きさが閾値以下であると判断される場合に(S95:Yes)、偏磨耗荷重フラグがオンされる(S93)。そのため、キャンバ制御処理おいて、キャンバ角調整装置44が作動して車輪2のキャンバ角が頻繁に第2キャンバ角に調整されることを回避でき、キャンバ角の頻繁な切り替わりを抑制できる。これにより、路面の継ぎ目や部分的な舗装等による不連続な凹凸によって車輪2の接地荷重が突発的に変化するような場合に、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に維持できる。
なお、図19に示すフローチャート(偏磨耗荷重判断処理)において、請求項1記載の継続状態判断手段としてはS95の処理が、図21に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載の接地荷重判断手段としてはS115の処理が、第1キャンバ角調整手段としてはS116の処理が、請求項2記載の状態量判断手段としてはS101の処理が、第2キャンバ角調整手段としてはS103及びS106の処理が、請求項1記載の走行状態判断手段としてはS108の処理が、第3キャンバ角調整手段としてはS110及びS113の処理が、それぞれ該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記各実施の形態で説明した第1キャンバ角および第2キャンバ角の値は任意に設定することができる。
上記各実施の形態では、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量に基づいて、車両1,201の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、各ペダル61,62及びステアリング63の操作量に代えて、他の状態量に基づいて車両1,201の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断することは当然可能である。他の状態量としては、例えば、各ペダル61,62及びステアリング63の操作速度や操作加速度のように、運転者により操作される操作部材の状態を示すものでも良く、或いは、車両1,201自体の状態を示すものでも良い。車両1,201自体の状態を示すものとしては、車両1,201の前後G、横G、ヨーレート、ロール角などが例示される。
上記各実施の形態では、車両1,201の走行速度およびステアリング63の操作量に基づいて、車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ステアリング63の操作量のみに基づいて、車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断しても良い。また、ステアリング63の操作量に代えて、ステアリング63の操作速度や操作加速度のように、ステアリング63の操作状態に基づいて、車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断しても良く、或いは、車両1,201の横G、ヨーレートなどのように、車両1,201自体の状態量に基づいて、車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断しても良い。また、車両1,201の走行速度およびステアリング63の操作量に代えて、他の情報に基づいて車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断することは当然可能である。他の情報としては、例えば、他の入出力装置90として例示したナビゲーション装置により取得される情報であって、車両1,201の現在位置が地図データの高速道路上や幹線道路上など所定の区間において車両1,201が直進すると判断される直線道路上に位置する場合などが例示される。この場合には、直線道路の先にカーブが存在したり右左折を必要とする道路状況において、車両1,201が旋回するたびにキャンバ角調整装置44,244を作動させてしまうことがなく、キャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。
上記各実施の形態では、車両1,201の状態量が所定の条件を満たすか否かを判断する状態量判断処理において、アクセルペダル61の操作量、ブレーキペダル62の操作量およびステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断するための各操作量の判断基準を、車輪2,202のキャンバ角が第2キャンバ角の状態で車両1,201が加速、制動または旋回する場合に、車輪2,202がスリップする恐れがあると判断される限界値とする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、単に車両1,201の状態量(例えば、各ペダル61,62の操作量やステアリング63の操作量など)に基づいて設定しても良い。
また、上記各実施の形態では、車輪2,202の接地荷重が偏摩耗荷重であるか否かを判断する偏摩耗荷重判断処理において、懸架装置4の伸縮量、車両1,201の前後G、横G、ヨーレート、ロール角、車輪2,202の接地荷重、タイヤサイドウォールの潰れ代、アクセルペダル61の操作量、ブレーキペダル62の操作量、ステアリング63の操作量、操作速度、操作加速度が所定値以下であるかを判断するための判断基準が、それぞれROM72に予め記憶された一定値である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、天候や路面の状況を取得し、その取得した天候や路面の状況に応じて各判断基準を変更する構成としても良い。この場合には、より高精度に車輪2,202の接地荷重が偏摩耗荷重であるか否かを判断でき、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。
上記各実施の形態では説明を省略したが、キャンバ制御処理のS53,S253,S119及びS122の処理において(図7、図11及び図21参照)、各車輪2又は左右の後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除する場合に、所定時間(例えば3秒など)の経過を待ってから解除しても良い。この場合には、山道などの車両1,201が頻繁に旋回する道路状況において、車両1,201が旋回するたびにキャンバ角調整装置44,244を作動させてしまうことがなく、キャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。
上記第4実施の形態、第5実施の形態および第6実施の形態では、偏磨耗荷重判断処理において、車輪2,202の接地荷重が所定の接地荷重以上であるとの判断に加え、所定期間内の接地荷重や接地荷重の変化の大きさを状態値として考慮する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、車輪2,202の接地荷重と代用可能な他の状態値を採用することが可能である。
他の状態値としては、例えば、サスストロークセンサ装置83,283により検出される懸架装置4の伸縮量、加速度センサ装置80により検出される前後Gや横G、ヨーレートセンサ装置81により検出されるヨーレート、ロール角センサ装置82により検出されるロール角、サイドウォール潰れ代センサ装置85,285により検出されるタイヤサイドウォールの潰れ代、アクセルペダルセンサ装置61aにより検出されるアクセルペダル61の操作量、ステアリングセンサ装置63aにより検出されるステアリング63の操作速度や操作加速度が挙げられる。これらの状態値を単独で又は組み合わせて採用できる。
上記第4実施の形態では、所定期間内の状態値(接地荷重)と予め設定された閾値とを比較する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の形態とすることも可能である。他の形態としては、例えば、所定期間内の状態値(接地荷重)の平均値を求め、この平均値を閾値とし、サンプリングした状態値と比較するものが挙げられる。
上記第6実施の形態では、キャンバ制御処理において、車輪2の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合に、前輪2FL,2FRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、前輪2FL,2FRのキャンバ角は第1キャンバ角に維持しつつ、後輪2RL,2RRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整するようにすることも当然可能である。即ち、後輪2RL,2RRの駆動力により走行する後輪駆動の車両や、後輪2RL,2RR側に車輪駆動装置3が搭載される車両等のように、後輪2RL,2RR側の荷重が前輪2FL,2FR側の荷重よりも大きな車両では、前輪2FL,2FRに比べ後輪2RL,2RRが磨耗し易い。このような場合に、前輪2FL,2FRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整することにより後輪2RL,2RRに偏磨耗が生じることを防止しつつ、前輪2FL,2FRにより車両の安定性を確保できる。
また、上記第6実施の形態において、接地荷重が所定の接地荷重以上であるのは前輪2FL,2FR又は後輪2RL,2RRであるのかを判断し、所定の接地荷重以上であると判断される前輪2FL,2FR又は後輪2RL,2RRのキャンバ角を第2キャンバ角に調整することも可能である。例えば、車両1が制動されるときは前輪2FL,2FRの接地荷重が後輪2RL,2RRの接地荷重より大きくなる傾向がみられ、車両1が加速されるときは後輪2RL,2RRの接地荷重が前輪2FL,2FRの接地荷重より大きくなる傾向がみられる。状況に応じてキャンバ角を第2キャンバ角に調整する車輪2を切り替えることにより、車輪2の偏磨耗を効果的に防止できる。
上記第1実施の形態から第6実施の形態では、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RR(又は202RL,202RR)にネガティブキャンバを付与する場合、或いは後輪2RL,2RR(又は202RL,202RR)にネガティブキャンバを付与する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与するのに代えて、若しくは後輪2RL,2RRにネガティブキャンバを付与するのに加えて、前輪2FL,2FRのキャンバ角を調整して前輪2FL,2FRにポジティブキャンバを付与することも可能である。
ここで、図22を参照して、前輪2FL,2FRにポジティブキャンバを付与するための懸架装置104の詳細構成について説明する。図22は、懸架装置104の正面図である。なお、ここでは、キャンバ角調整機構として機能する構成のみについて説明し、サスペンションとして機能する構成については周知の構成と同様であるので、その説明を省略する。また、各懸架装置104の構成は、左右の前輪2FL,2FRにおいてそれぞれ共通であるので、右の前輪2FRに対応する懸架装置104を代表例として図22に図示する。但し、図22では、理解を容易とするために、ドライブシャフト31等の図示が省略されている。また、第1実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
アーム146は、ウォームホイール45から伝達されるFRモータ44FRの駆動力を可動プレート47に伝達するものであり、図22に示すように、一端(図22右側)が第1連結軸148を介してウォームホイール45の回転軸45aから偏心した位置に連結される一方、他端(図2左側)が第2連結軸49を介して可動プレート47の上端(図22上側)に連結されている。
懸架装置104によれば、FRモータ44FRが駆動されると、ウォームホイール45が回転すると共に、ウォームホイール45の回転運動がアーム146の直線運動に変換される。その結果、アーム146が直線運動することで、可動プレート47がキャンバ軸50を揺動軸として揺動駆動され、車輪2のキャンバ角が調整される。
なお、本実施の形態では、各連結軸148,49及びウォームホイール45の回転軸45aが、車体フレームBFから車輪2に向かう方向(矢印R方向)において、回転軸45a、第1連結軸148、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第1キャンバ状態と、第1連結軸148、回転軸45a、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第2キャンバ状態(図22に示す状態)とのいずれか一方のキャンバ状態となるように車輪2のキャンバ角が調整される。これにより、車輪2のキャンバ角が調整された状態では、車輪2に外力が加わったとしても、アーム146を回動させる方向の力は発生せず、車輪2のキャンバ角を維持することができる。
また、本実施の形態では、第1キャンバ状態において、車輪2のキャンバ角がプラス方向の所定の角度(第1キャンバ角)に調整され、車輪2にポジティブキャンバが付与される。一方、第2キャンバ状態(図22に示す状態)では、車輪2のキャンバ角が0°(第2キャンバ角)に調整される。前輪2FL,2FR(車輪2)がプラス方向の所定の角度に調整されて、前輪2FL,2FRにポジティブキャンバが付与されると、発生するキャンバスラストを利用して車両1の走行安定性を確保できる。
上記各実施の形態では説明を省略したが、各実施の形態における車両1,201の車輪2,202の一部または全部を、他の実施の形態における車輪2,202の一部または全部と置換しても良い。例えば、第1実施の形態における車両用制御装置100により制御される車両1の車輪2を、第2実施の形態における車両201の車輪202に変更しても良い。
上記第1実施の形態では、車両用制御装置100の制御対象である車両1の車輪2が、全て同じ形状および特性に構成され、そのトレッドの幅が同一の幅に構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図23に示すように、第1トレッド21及び第2トレッド22の2種類のトレッドを備える構成としても良い。この場合には、各車輪2において、第1トレッド21を車両1の内側に配置し、第2トレッド22を車両1の外側に配置すると共に、第2トレッド22を第1トレッド21よりも硬度の高い材料により構成し、第1トレッド21を第2トレッド22に比してグリップ力の高い特性(高グリップ特性)に構成する一方、第2トレッド22を第1トレッド21に比して転がり抵抗の小さい特性(低転がり特性)に構成することが好ましい。これにより、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、車輪2にネガティブキャンバを付与することで、第1トレッド21の高グリップ特性を発揮させて、車両1の走行安定性を確保することができる。一方、車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に調整し、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、第2トレッド22の低転がり特性を発揮させて、省燃費化を図ることができる。なお、図23は、車両1を模式的に示した模式図である。
上記第2実施の形態では、左右の後輪202RL,202RRを、左右の前輪202FL,202FRよりも低転がり抵抗とするための手法として、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くする手法を一例として説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の手法を採用しても良い。
例えば、他の手法としては、左右の後輪202RL,202RRのトレッドを、左右の前輪202FL,202FRのトレッドよりも硬度の高い材料から構成し、左右の前輪202FL,202FRのトレッドを左右の後輪202RL,202RRのトレッドよりもグリップ力の高い特性(高グリップ性)とする一方、左右の後輪202RL,202RRのトレッドを左右の前輪202FL,202FRのトレッドよりも転がり抵抗の小さい特性(低転がり抵抗)とする第1の手法、左右の後輪202RL,202RRのトレッドのパターンを、左右の前輪202FL,202FRのトレッドのパターンよりも低転がり抵抗のパターンとする(例えば、左右の後輪202RL,202RRのトレッドのパターンをラグタイプ又はブロックタイプとし、左右の後輪202RL,202RRのトレッドのパターンをリブタイプとする)第2の手法、左右の後輪202RL,202RRの空気圧を、左右の前輪202FL,202FRの空気圧よりも高圧とする第3の手法、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの厚み寸法を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの厚み寸法よりも薄い寸法とする第4の手法、或いは、これら第1から第4の手法および第2実施の形態における手法(トレッドの幅を異ならせる手法)の一部または全部を組み合わせる第5の手法、が例示される。
上記第2実施の形態では、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅と同一の幅としても良い。この場合でも、かかる構成に上述した第1から第4の手法の一部または全部を組み合わせることで、左右の後輪202RL,202RRを、左右の前輪202FL,202FRよりも低転がり抵抗とすることができる。よって、車両1の走行安定性と省燃費化との両立を図ることができる。
また、上記第2実施の形態では、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅が、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くされる場合を説明したが、これに加え、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を次のように構成することが好ましい。即ち、タイヤ幅L([mm])をタイヤ外径R([mm])で除した値(L/R)を0.1より大きく、かつ、0.4より小さくすることが好ましく(0.1<L/R<0.4)、0.1より大きく、かつ、0.3より小さくすることが更に好ましい(0.1<L/R<0.3)。これにより、車両201の走行安定性を確保しつつ、転がり抵抗を小さくして、省燃費化の向上を図ることができる。なお、トレッドの幅は、リム幅よりも大きくタイヤ幅よりも小さな値となる。
上記第2実施の形態では、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭く構成する場合を説明した。この場合の左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅の設定方法について説明する。
図24(a)及び図24(b)は、懸架装置4に支持された後輪1202RL,1202RRの正面図であり、図25(a)及び図25(b)は、懸架装置4に支持された後輪202RL,202RRの正面図である。なお、これら図24(a)〜図25(b)は、図2に対応する正面図であり、右の後輪1202RR,202RRのみを図示すると共に、懸架装置4の図示が簡略化されている。また、図24(a)〜図25(b)では、車体Bの外形を通る鉛直線(矢印U−D方向線、図2参照)を外形線S(即ち、車両201の全幅を示す線)として二点鎖線を用いて図示している。
後輪1202RL,1202RRは、第2実施の形態で説明した前輪202FL,202FRと同一の幅に構成された車輪である。ここで、車両201は、前後の全車輪202を懸架装置204により支持する既存の車両に対し、後輪側の懸架装置204にのみRL,RRモータ44RL,44RRによる伸縮機能を追加して懸架装置4とすることで構成された車両である。よって、車両201は、図24(a)に示すように、少なくともキャンバ角が定常角(=0°)においては、後輪1202RL,1202RRを外形線Sから外側に突出させない(即ち、保安基準を満たす)ように装着可能とされている。
しかしながら、後輪1202RL,1202RRのキャンバ角を調整する制御を行う場合には、図24(b)に示すように、後輪1202RL,1202RRが外形線Sを越えて外側へ突出し、保安基準を満たすことができないという問題点があった。そのため、後輪1202RL,1202RRのキャンバ角を調整可能な範囲が限定され、十分な角度のキャンバ角を付与することができないという問題点があった。
この場合、懸架装置4自体の配設位置を車両201の内側(図24(a)右側)へ移動させることで、キャンバ角の調整可能範囲を確保することも考えられるが、車両201に大幅な構造の変更を加えることが必要となるため、コストが嵩み、現実的でない。一方、後輪1202RL,1202RRのホイールオフセットを車輪中心線Cから車両201の外側(図24(a)左側)に移動させることで、車両201への構造の変更を行うことなく、比較的大きな角度のキャンバ角を後輪1202RL,1202RRに付与することが可能となる。しかしながら、この場合には、ホイールオフセットの分だけ、後輪1202RL,1202RR自体が車両201の内側へ移動することとなるので、車体Bとの干渉が避けられない。
そこで、本願出願人は、図25(a)に示すように、後輪202RL,202RRのタイヤ幅Wlを狭くすることで、既存の車両(車両201)に大幅な構造の変更を加えることを不要とし、かつ、保安基準を満たしながら、キャンバ角の調整可能範囲を十分に確保することを可能とする構成に想到した。
後輪202RL,202RRのタイヤ幅Wlの設定方法について、図24(a)から図26を参照して説明する。図26は、懸架装置4に支持された車輪の正面図を模式的に図示した模式図であり、キャンバ角θのネガティブキャンバが付与された状態が図示されている。
図26に示すように、車輪の幅寸法をタイヤ幅Wと、直径をタイヤ径Rと、タイヤ中心線(車輪中心線)Cからホイール座面Tまでの距離をホイールオフセットAと、それぞれ規定する。この場合、車輪が外側へ最も突出する位置であるタイヤ外側端Mから、車輪の回転軸とホイール座面Tとの交点である原点Oまでの水平方向の距離である距離Lは次のように算出される。
即ち、図26に示すように、車輪の回転軸と車輪の外側面との交点である位置Pと原点Oとを結ぶ距離は、タイヤ幅Wの半分の値からホイールオフセットAを除算した値(W/2−A)となるので、位置Pから原点Oまでの水平方向の距離である距離Jは、三角比の関係から、J=(W/2−A)・cosθとなる。
一方、位置Pとタイヤ外側端Mとを結ぶ距離は、タイヤ径Rの半分の値(R/2)となるので、タイヤ外側端Kから位置Pまでの水平方向の距離である距離Kは、三角比の関係から、K=(R/2)・sinθとなる。
よって、距離Lは、距離Jと距離Kとの和であるので、これらを加算して、L=(W/2−A)・cosθ+(R/2)・sinθとなる。この関係式をタイヤ幅Wでまとめると、W=2A−R・tanθ+2L/cosθとなる。
車輪のタイヤ外側端Mが車両201の外形線Sを越えて外側へ突出せず、保安基準を満たすためには、距離Lが、原点Oから外形線Sまでの水平方向の距離である距離Z(図24(b)及び図25(b)参照)より小さくなれば良い。よって、タイヤ幅Wを定める上記の式に対し、距離Lの最大値(即ち、距離Z)と、車輪に付与するキャンバ角θの最大値(例えば、3°)とを当てはめることで、車輪のタイヤ幅Wの最大値を決定することができる。
即ち、図24(a)及び図24(b)に示す後輪1202RL,1202RRについては、タイヤ外側端Mが外形線Sを越えて外側に突出しないための最大のキャンバ角をθwとすると、そのタイヤ幅Wwは、W=2A−R・tanθw+2Z/cosθwとなり、図25(a)及び図25(b)に示す後輪202RL,202RRについては、タイヤ外側端Mが外形線Sを越えて外側に突出しないための最大のキャンバ角をθlとすると、そのタイヤ幅Wlは、W=2A−R・tanθl+2Z/cosθlとなる。
なお、各車輪のトレッドの幅は、タイヤ幅Wを越えない範囲に設定される。なお、タイヤ幅Wの最小値は、タイヤ外側端Mをホイール座面Tよりも内側へ配置できないことから、ホイールオフセットAの2倍の値となる。
以上のように、タイヤ幅Wを定める上記の式によれば、車輪のタイヤ幅W(即ち、トレッドの幅)を狭くすることで、車輪に付与するキャンバ角θの最大値を大きくすることができる。即ち、第2実施の形態で説明したように、後輪202RL,202RRのトレッドの幅(タイヤ幅W)を、前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くすることで、既存の車両(車両201)に大幅な構造の変更を加えることを不要とし、かつ、保安基準を満たしつつ、後輪202RL,202RRにおけるキャンバ角の調整可能範囲を確保することができる。
なお、この場合には、前輪202FL,202FRのトレッドの幅を広くすることができるので、制動力の向上を図ることができる。特に、前輪202FL,202FRが駆動輪とされる第2実施の形態においては、加速性能の向上を図ることができる。一方、後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くすることで、これら後輪202RL,202RRの転がり抵抗を、前輪202FL,202FRの転がり抵抗よりも小さくすることができ、その分、省燃費化を図ることができる。
<その他>
<技術的思想>
技術的思想1の車両用制御装置は、車輪としての前輪および後輪と、その車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置と、を備えた車両に用いられるものであって、前記車輪の接地荷重に関する情報を取得する接地荷重情報取得手段と、その接地荷重情報取得手段により取得された前記車輪の接地荷重に関する情報に基づいて、前記車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上であるかを判断する接地荷重判断手段と、その接地荷重判断手段により前記車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させて、少なくとも絶対値が減少するように、前記車輪のキャンバ角を調整する第1キャンバ角調整手段と、を備えている。
技術的思想2の車両用制御装置は、技術的思想1において、前記車両の状態量を取得する状態量取得手段と、その状態量取得手段により取得された前記車両の状態量が所定の条件を満たすかを判断する状態量判断手段と、その状態量判断手段により前記車両の状態量が所定の条件を満たすと判断される場合に、前記キャンバ角調整装置により前記車輪のキャンバ角を調整して前記車輪にポジティブキャンバ又はネガティブキャンバを付与する第2キャンバ角調整手段と、を備え、前記第1キャンバ角調整手段は、前記状態量判断手段により前記車両の状態量が所定の条件を満たしていないと判断され、且つ、前記接地荷重判断手段により前記車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合に、少なくとも前記第2キャンバ角調整手段により調整するキャンバ角よりも絶対値が小さくなるように、前記車輪のキャンバ角を調整する。
技術的思想3の車両用制御装置は、技術的思想1又は2において、前記車両の走行状態を取得する走行状態取得手段と、その走行状態取得手段により取得された前記車両の走行状態が所定の直進状態であるかを判断する走行状態判断手段と、その走行状態判断手段により前記車両の走行状態が所定の直進状態であると判断される場合に、前記キャンバ角調整装置により前記車輪のキャンバ角を調整して前記車輪にポジティブキャンバ又はネガティブキャンバを付与する第3キャンバ角調整手段と、を備え、前記第1キャンバ角調整手段は、前記走行状態判断手段により前記車両の走行状態が所定の直進状態であると判断され、且つ、前記接地荷重判断手段により前記車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合に、少なくとも前記第3キャンバ角調整手段により調整するキャンバ角よりも絶対値が小さくなるように、前記車輪のキャンバ角を調整する。
技術的思想4の車両用制御装置は、技術的思想3において、前記第3キャンバ角調整手段は、前輪および後輪のキャンバ角を調整するものであり、前記第1キャンバ角調整手段は、前記前輪または前記後輪のキャンバ角を調整するものである。
技術的思想5の車両用制御装置は、技術的思想3又は4において、前記接地荷重情報取得手段により取得された前記車輪の接地荷重に関する情報に基づいて、前記車両が所定の状態が継続されているかを判断する継続状態判断手段を備え、前記第1キャンバ角調整手段は、前記走行状態判断手段により前記車両の走行状態が所定の直進状態であると判断されると共に、前記接地荷重判断手段により前記車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断され、且つ、前記継続状態判断手段により前記車両が所定の条件が継続されていると判断される場合に、前記第3キャンバ角調整手段により調整されるキャンバ角を維持する維持手段を備えている。
技術的思想6の車両用制御装置は、技術的思想3から5のいずれかにおいて、前記第3キャンバ角調整手段は、前記車輪のキャンバ角の調整の開始を待機する待機手段を備えている。
技術的思想7の車両用制御装置は、技術的思想1から6のいずれかにおいて、前記車両は、伸縮可能に構成される懸架装置により前記車輪が車体に懸架されるものであり、前記懸架装置の伸縮量を取得する伸縮量取得手段を備え、前記接地荷重判断手段は、前記伸縮量取得手段により取得された前記懸架装置の伸縮量に基づいて、前記車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上であるかを判断する。
<効果>
技術的思想1の車両用制御装置によれば、接地荷重判断手段により車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合に、第1キャンバ角調整手段により、少なくとも絶対値が減少するように車輪のキャンバ角が調整されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。即ち、車輪の接地荷重が大きいほどタイヤの摩耗に対して不利な傾向があるため、車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上である場合には、少なくとも絶対値が減少するように車輪のキャンバ角を調整することで、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。その結果、タイヤの寿命を向上させることができるという効果がある。また、タイヤの偏摩耗を抑制することで、タイヤの接地面が不均一となるのを防止して、車両の走行安定性を確保できるという効果がある。更に、タイヤの偏摩耗を抑制できるので、その分、省燃費化を図ることができるという効果がある。
技術的思想2の車両用制御装置によれば、状態量判断手段により車両の状態量が所定の条件を満たすと判断される場合に、第2キャンバ角調整手段により車輪にポジティブキャンバ又はネガティブキャンバが付与されるので、例えば、車両の前後方向加速度や横方向加速度が大きく、車両が急加速、急制動または急旋回している場合には、車輪に発生するキャンバスラストを利用して、車両の走行安定性を確保することができる。また、状態量判断手段により車両の状態量が所定の条件を満たしていないと判断され、且つ、接地荷重判断手段により車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合には、第1キャンバ角調整手段により、少なくとも第2キャンバ角調整手段により調整されるキャンバ角よりも絶対値が小さくなるように車輪のキャンバ角が調整されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。よって、技術的思想1の効果に加え、走行安定性の確保とタイヤの偏摩耗の抑制との両立を図ることができるという効果がある。
なお、技術的思想2の「車両の状態量」とは、上述した車両の前後方向加速度や横方向加速度のように、車両自体の状態を示すものに限られず、運転者により操作される操作部材の状態を示すもの、例えば、アクセルペダルやブレーキペダルの踏み込み量、ステアリングの操作量などでも良い。
技術的思想3の車両用制御装置によれば、走行状態判断手段により車両の走行状態が所定の直進状態であると判断される場合に、第3キャンバ角調整手段により車輪にポジティブキャンバ又はネガティブキャンバが付与されるので、例えば、比較的直線の多い高速道路や幹線道路などを車両が走行する場合には、車輪の横剛性を利用して、車両の直進安定性を確保することができる。また、走行状態判断手段により車両の走行状態が所定の直進状態であると判断され、且つ、接地荷重判断手段により車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合には、第1キャンバ角調整手段により、少なくとも第3キャンバ角調整手段により調整されるキャンバ角よりも絶対値が小さくなるように車輪のキャンバ角が調整されるので、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。よって、技術的思想1又は2の効果に加え、直進安定性の確保とタイヤの偏摩耗の抑制との両立を図ることができるという効果がある。
なお、技術的思想3の「所定の直進状態」とは、車両の横方向加速度やヨーレート等が所定値以下である場合、車両の進行方向を左右に転換するために運転者により操作される操作部材(例えば、ステアリング等)の操作量が所定の操作量以下である場合、車両の現在位置が地図データの高速道路上や幹線道路上など所定の区間において車両が直進すると判断される直線道路上に位置する場合などが例示される。
技術的思想4の車両用制御装置によれば、第3キャンバ角調整手段により前輪および後輪のキャンバ角が調整されるので、車両の直進安定性を確保できる。さらに第1キャンバ角調整手段により前輪または後輪のキャンバ角が調整されるので、前輪または後輪の偏磨耗を抑制しつつ、ポジティブキャンバ又はネガティブキャンバが後輪または前輪に付与された状態を保つことができる。これにより技術的思想3の効果に加え、タイヤの偏磨耗を抑制すると同時に車両の直進安定性を確保できる効果がある。
技術的思想5の車両用制御装置によれば、走行状態判断手段により車両の走行状態が所定の直進状態であると判断され、且つ、接地荷重判断手段により車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上であると判断される場合であっても、継続状態判断手段により車両が所定の状態が継続されていると判断される場合には、維持手段は、第3キャンバ角調整手段により調整されるキャンバ角を維持する。これにより、技術的思想3又は4の効果に加え、第3キャンバ角調整手段により車輪のキャンバ角が調整された状態において、車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上になるたびにキャンバ角調整装置が作動して車輪のキャンバ角が調整されることを回避でき、キャンバ角の頻繁な切り替わりを抑制できる効果がある。
技術的思想6の車両用制御装置によれば、走行状態判断手段により車両の走行状態が所定の直進状態であると判断される場合であっても、待機手段により、第3キャンバ角調整手段による車輪のキャンバ角の調整の開始が待機される。これにより、技術的思想3から5のいずれかの効果に加え、第3キャンバ角調整手段によりキャンバ角調整装置が駆動され車輪のキャンバ角が調整される場合に、キャンバ角調整装置が頻繁に作動してキャンバ角が頻繁に調整されることを回避でき、キャンバ角の頻繁な切り替わりを抑制できる効果がある。
技術的思想7の車両用制御装置によれば、接地荷重判断手段は、伸縮量取得手段により取得された懸架装置の伸縮量に基づいて、車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上であるかを判断するので、技術的思想1から6のいずれかの効果に加え、懸架装置の伸縮量と車輪の接地荷重との比例関係を利用して、車輪の接地荷重が所定の接地荷重以上であるかを簡単な構造で正確に判断できるという効果がある。