JP3950217B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハンドル操舵トルクに応じて転舵輪を駆動する際のアシスト力を電動機により発生させるようにした電動パワーステアリング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車などの操舵装置において、転舵時の最大転舵角度を規定するためのストッパ手段を設けて、転舵輪の最大転舵角度を制限している。たとえば、ラック・アンド・ピニオン構造のものでは、ラックの両端部にストッパを設け、そのストッパをギヤボックスへ衝当させることによりラックのストローク制限をしているものがある。また、リサーキュレート・ボール構造のものではピットマンアームをフレームなどに衝当させている。
【0003】
転舵輪の転舵角度は、エンジン・トランスミッションの寸法及び配置や、車両フレーム、またはサスペンションアーム類などとの干渉といった制約の中で、車両の目標とする取り回し性能を達成するために可能な限り大きく設定している。その制約の中の1つに、降雪時や路面凍結時に装着するタイヤチェーンを考慮する必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記要件としては、タイヤチェーンの装着時においても最大転舵時に他の部品と干渉しないとするものであり、最大転舵角度をタイヤチェーンの装着分を含めて設定することになる。したがって、通常走行時(タイヤチェーン非装着時)には最大転舵角度までに余裕があることになり、通常走行時の最大転舵角度が犠牲になっているという問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決して、転舵輪の最大転舵角度を好適に設定し得ることを実現するために、本発明に於いては、ハンドル操舵トルクに応じて転舵輪を駆動する際のアシスト力を電動機により発生させるようにした電動パワーステアリング装置において、操舵角を検出する操舵角センサと、前記操舵トルクを検出する操舵トルクセンサと、少なくとも前記操舵角及び前記操舵トルクに基づいて補助操舵トルクを算出する補助操舵トルク設定手段と、少なくとも前記補助操舵トルクに基づいて前記電動機の目標電流を算出する目標電流設定手段と、タイヤチェーンなどの滑り止め手段を前記転舵輪に装着したことを判別するチェーン装着判別手段と、前記滑り止め手段の非装着状態における最大操舵角よりも小さい制限操舵角以上の転舵を制限するための大きな操舵反力を前記電動機により発生させるための操舵角制限トルクを設定する操舵角制限トルク設定手段とを有し、前記チェーン装着判別手段により前記滑り止め手段の装着状態を判断しかつ前記操舵角センサにより検出された操舵角が前記制限操舵角に達した場合には、前記目標電流設定手段では前記補助操舵トルクと前記操舵角制限トルクとに基づいて目標電流を算出することにより前記大きな操舵反力を前記電動機により発生させるものとした。
【0006】
このようにすることにより、タイヤチェーンなどの滑り止め手段を装着した場合には、滑り止め手段の非装着状態における最大操舵角よりも小さい制限操舵角に達したら大きな操舵反力が発生し、それ以上操舵することができなくなり、転舵輪の最大転舵角度が通常時よりも制限されるため、タイヤチェーンとホイールハウス内面との干渉を防止できる。このように、チェーン装着状態判別時にのみ転舵角を制限することから、チェーン非装着状態の通常時にはその最大転舵角度をチェーンのホイールハウス内面に対する干渉を考慮すること無く極力大きくすることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面に示された具体例に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0008】
図1に、本発明が適用された車両の操向車輪用操舵装置の概略構成を示す。この装置は、ステアリングホイール1に一体結合されたステアリングシャフト2に自在継手を有する連結軸3を介して連結されたピニオン4、及びピニオン4に噛合して車幅方向に往復動し得ると共に、タイロッド5を介して転舵輪としての左右の前輪6のナックルアーム7にその両端が連結されたラック軸8で構成されたラック・アンド・ピニオン機構からなる。また、そのラック・アンド・ピニオンを介しての手動操舵力を軽減するための補助操舵力を発生するべく、ラック軸8の中間部に同軸的に電動機9が配設されている。
【0009】
さらに、ピニオン4に作用する操舵トルクを検出するための操舵トルクセンサ11と、ステアリングホイール1の回転角(操舵角)をラック・アンド・ピニオン機構部で検出するための操舵角センサ12と、車両の走行速度に対応した車速信号を出力するための車速センサ13と、これらの検出値に基づいて電動機9の出力を制御するための制御ユニット14とが設けられている。また、本発明に基づく滑り止め装着判別手段としてのタイヤチェーン装着判別器15が設けられており、そのタイヤチェーン装着判別器15からの判別信号が制御ユニット14に入力するようになっている。このようにして、操舵反力発生制御手段が設けられている。
【0010】
上記制御ユニット14における制御要領を図2の回路ブロック図を参照して以下に示す。本制御ユニット14内には、上記操舵角センサ12で検出された操舵角信号θHが入力される操舵角制限トルク設定手段16と、同じく操舵角信号θHが入力されると共に、操舵トルクセンサ11で検出された操舵トルク信号Tsと車速センサで検出された車速信号Vsとがそれぞれ入力される補助操舵トルク設定手段17とが設けられている。
【0011】
補助操舵トルク設定手段17では、上記各信号値から電動機9に対する駆動信号出力の基となる補助操舵トルクTaを算出し、操舵角制限トルク設定手段16では、上記操舵角信号θHが所定値以上になったら補助操舵トルクを制限するための操舵角制限トルクTrを算出する。それら各トルク信号値Ta・Trは、制御ユニット14内に設けられた加算器18に入力するようになっているが、操舵角制限トルクTrは切り替え手段19を介して加算器18に入力するようになっている。その切り替え手段19は、タイヤチェーン装着判別器15からの判別信号Crによりスイッチング動作するものであり、タイヤチェーン装着時に操舵角制限トルクTrを加算器18に入力させるように切り替わる。
【0012】
さらに本制御ユニット14内には、加算器18の出力信号に基づいて電動機9の目標駆動電流を算出するための目標電流設定手段20と、その目標電流設定手段20にて算出された目標電流Itが入力されると共に電動機9を駆動制御するための出力電流制御手段21とが設けられている。その出力電流制御手段21には、制御ユニット14の外部にて電動機9に駆動電流を出力するべく設けられた駆動回路22からのフィードバック電流信号が入力するようになっている。このようにして、電動機19による補助操舵トルクが発生して、軽い操舵力で転舵可能になる。
【0013】
本発明に基づく操舵角制限トルク設定手段16では、前記したように操舵角θHに応じて操舵角制限トルクTrを求めるが、その制御を図3のフロー図を参照して以下に示す。図3において、その第1ステップST1では操舵角信号θHの読み込みを行い、次の第2ステップST2では第1ステップST1で読み込んだ操舵角θHに応じた操舵角制限トルクを図4に示されるテーブルから求める。
【0014】
図4のテーブルでは操舵角θHに対する操舵角制限トルクTrの信号出力状態を示す図であり、図に良く示されるように、操舵角が0〜所定の制限操舵角θc(たとえば右回転側を正とした場合には左回転側を負として−θcになる)の間では操舵角制限トルクTrが0であり、制限操舵角θc以上になったら操舵角制限トルクTrは所定の制限値Tcになるようにされている。この制限操舵角θcは、前輪6に装着したタイヤチェーン分のスペースをタイヤハウス内面と前輪6との間に確保した場合の最大転舵角度である。したがって、タイヤチェーン非装着時の通常走行時における最大操舵角θmaxは上記制限操舵角θcよりも大きい。
【0015】
そして、第3ステップST3にて、第2ステップST2で図4から求めた操舵角制限トルクTrを出力する。なお、操舵角制限トルクTrは、切り替え手段19がオフの場合には加算器18に出力されることはない。したがって、切り替え手段19がオフの場合(通常走行時に対応する)には、最大転舵角度はメカニカル的に規定されることになる。
【0016】
それに対して、切り替え手段19がオンの場合には操舵角制限トルクTrが切り替え手段19を介して加算器18に出力されることになる。この場合には、操舵角が制限操舵角θc(−θc)以上になったら上記したように制限値Tcが出力され、目標電流設定手段20には制限値Tcを減算した信号値が入力されるため、制限値Tcを大きく設定することにより、負の信号が目標電流設定手段20に入力して、電動機19により操舵反力が発生する。
【0017】
これにより、前輪6が制限操舵角θc(−θc)に達したら、大きな操舵反力が生じて、メカニカル的ストッパにより制限された場合のようにそれ以上操舵することができなくなる。この制限操舵角θc(−θc)の値を、前輪6へのチェーン装着状態におけるチェーンの膨らみ分を回避できる隙間をホイールハウス内面との間に設けるように設定しておくことにより、チェーン装着状態で限度一杯まで転舵した場合にチェーンとホイールハウス内面とが干渉することを防止できる。
【0018】
また、図5に本発明に基づく操舵角θHに対するタイヤ(前輪6)転舵角θTの変化を示すが、図において実線は内輪の場合の変化であり、想像線は外輪の場合の変化である。図に示されるように、上記メカニカル的ストッパによる場合の最大操舵角θmaxではタイヤ転舵角がθ1になるが、上記したようにタイヤチェーン装着を判別した場合の最大操舵角は最大操舵角θmaxよりも小さな制限操舵角θcで制限され、その場合のタイヤ転舵角はθ2(<θ1)となる。
【0019】
それに対して、本発明が適用されない場合には、その最大転舵角を、タイヤチェーンの非装着状態においても装着時を考慮して、チェーンがホイールハウス内面に干渉しないように設定しておく必要があり、その最大操舵角は図5におけるθcとなり、タイヤ最大転舵角も図におけるθ2になる。
【0020】
すなわち、本発明が適用されない車両にあってはチェーン装着の有無に関わらず最大転舵角がθ2に制限されるのに対して、本発明によれば、チェーン装着状態に対しては同じであるが、チェーン非装着状態にあっては、タイヤチェーンとホイールハウス内面との干渉を考慮しないで良いため、操舵角θHを極力大きく設定することができる。したがって、車両の小回り性能を大幅に向上させることができる。
【0021】
なお、本実施の形態にあっては、チェーン非装着時の操舵角θHの制限をメカニカル的ストッパを用いて行うようにしたが、制限値Tcを最大操舵角θmax時にも発生させるように設定すると共に、タイヤチェーン装着判別器15の信号により所定操舵角θc時と最大操舵角θmax時とにそれぞれ制限値Tcを出力させるように制御しても良い。この場合には、左右の最大転舵角の設定を電気的に調整することができ、完成検査における転舵角の調整を容易に行うことができる。
【0022】
また、チェーン装着の有無の判別は、タイヤチェーン装着判別器15からの信号により決定されるが、そのタイヤチェーン装着判別器15にあっては例えば手動切換スイッチであって良く、タイヤチェーンの装着/非装着に応じてドライバーがスイッチのオン/オフを切り替えるようにして良い。また、例えば車体上下動検出Gセンサを用いて、タイヤチェーン装着状態での走行時における特有の車体振動数を検出し、自動的にタイヤチェーン装着の有無を判別するようにしても良い。
【0023】
【発明の効果】
このように本発明によれば、従来の電動パワーステアリング装置の電動機制御手段の中にタイヤチェーン装着の有無を判別するための滑り止め装着判別信号を入力して、その判別信号に基づいて操舵角制限トルクを設定することにより、タイヤチェーン装着時には任意(車種別に設定)の制限操舵角に達した際に電動機による反力を増大させることによって最大転舵角の制限を行うことができ、タイヤチェーンを装着していない通常走行時には上記最大転舵角をレイアウト的に最大位置まで可能にして転舵輪の最大転舵角を極力増大し、通常走行時の車両小回り性能を向上させることができる。
また、タイヤチェーン非装着時の最大転舵角の制限をストッパなどの機械的な手段を用いて行っても良く、その場合には、タイヤチェーン装着時のみ電動パワーステアリング装置の電動機による反力を増大させることによる最大操舵角の制限を行えば良いため、装置をシンプル化かつ低コスト化し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された車両の操向車輪用操舵装置の概略構成を示す図。
【図2】本発明に基づく操舵反力発生制御手段を示す回路ブロック図。
【図3】本発明に基づく制御フロー図。
【図4】操舵角に対する操舵角制限トルクの制御テーブルを示す図。
【図5】操舵角に対するタイヤ転舵角の変化を示す図。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3 連結軸
4 ピニオン
5 タイロッド
6 前輪
7 ナックルアーム
8 ラック軸
9 電動機
11 操舵トルクセンサ
12 操舵角センサ
13 車速センサ
14 制御ユニット
15 タイヤチェーン装着判別器
16 操舵角制限トルク設定手段
17 補助操舵トルク設定手段
18 加算器
19 切り替え手段
20 目標電流設定手段
21 出力電流制御手段
22 駆動回路

Claims (2)

  1. ハンドル操舵トルクに応じて転舵輪を駆動する際のアシスト力を電動機により発生させるようにした電動パワーステアリング装置において、
    操舵角を検出する操舵角センサと、前記操舵トルクを検出する操舵トルクセンサと、少なくとも前記操舵角及び前記操舵トルクに基づいて補助操舵トルクを算出する補助操舵トルク設定手段と、少なくとも前記補助操舵トルクに基づいて前記電動機の目標電流を算出する目標電流設定手段と、タイヤチェーンなどの滑り止め手段を前記転舵輪に装着したことを判別するチェーン装着判別手段と、前記滑り止め手段の非装着状態における最大操舵角よりも小さい制限操舵角以上の転舵を制限するための大きな操舵反力を前記電動機により発生させるための操舵角制限トルクを設定する操舵角制限トルク設定手段とを有し、
    前記チェーン装着判別手段により前記滑り止め手段の装着状態を判断しかつ前記操舵角センサにより検出された操舵角が前記制限操舵角に達した場合には、前記目標電流設定手段では前記補助操舵トルクと前記操舵角制限トルクとに基づいて目標電流を算出することにより前記大きな操舵反力を前記電動機により発生させることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記チェーン装着判別手段により前記滑り止め手段の装着状態であると判断された場合に前記操舵角制限トルクを前記目標電流設定手段に入力させるべく前記操舵角制限トルク設定手段と前記目標電流設定手段との間に設けられた切り替え手段と、前記切り替え手段を介した前記操舵角制限トルクを前記補助操舵トルクと共に前記目標電流設定手段に入力させるための加算器とが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
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