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上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、筒状または軸状の保持体の内周面または外周面に形成された凹状または凸状の保持体側嵌合部に噛合って支持された状態で相対的に回転しながら平板環状の被押圧体に対して相対的に押し付けまたは離隔される平板環状のプレート体であって、被押圧体に押し付けられて摩擦接触する環状の押圧部を有した平板環状の押圧体と、保持体における保持体側嵌合部と対向する押圧体の外周面または内周面に凸状または凹状に設けられ、保持体側嵌合部と噛合った状態で嵌合するプレート側嵌合部と、前記プレート側嵌合部に凸状に突出する突出部を備えることにある。
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記プレート体において、突出部は、プレート側嵌合部の立ち上り部分に形成されていることにある。
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記プレート体において、突出部は、押圧体の径方向外側に向かって凸状に突出して形成されていることにある。
また、請求項に係る本発明の他の特徴は、前記プレート体において、突出部は、押圧体の外周面または内周面に少なくとも3つ以上形成されており、押圧体は、被押圧体に押し付けられて同被押圧体とともに回転して回転駆動力の伝達を行なう摩擦クラッチ装置内に保持体を介して配置されることにある。
このように構成した請求項に係る本発明の他の特徴によれば、プレート体は、保持体の外周面または内周面に少なくとも3つ以上の突出部を備えている。これにより、被押圧体とともにプレート体が回転する摩擦クラッチ装置においては、プレート体の外周面または内周面と保持体の表面との間において、プレート体の全周において略均一の隙間(クリアランス)が常に確保される。このため、プレート体の回転停止位置に関わらず保持体とプレート体との間の機能性流動媒体の流動性を常に確保することができ、精度良く機能性流動媒体の機能の維持や引き摺りトルクの低減を図ることができる。
また、請求項に係る本発明の他の特徴は、前記プレート体において、突出部は、押圧体の外周面または内周面に少なくとも1つ以上形成されており、押圧体は、回転駆動する被押圧体に押し付けられて同被押圧体の回転運動を制動するブレーキ装置内に保持体を介して配置されることにある。
このように構成した請求項に係る本発明の他の特徴によれば、プレート体は、保持体の外周面上または内周面上に少なくとも1つ以上の突出部を備えている。これにより、被押圧体に対してプレート体が固定的に設けられたブレーキ装置においては、プレート体の外周面または内周面と保持体の表面との間において、前記突出部が設けられた部分に隙間(クリアランス)が形成される。このため、保持体とプレート体との間において機能性流動媒体の流動性を確保したい位置に突出部が位置するようにプレート体を配置することにより同部分での機能性流動媒体の流動性を確保することができる。特に、プレート体を垂直方向に起立した状態で配置する場合においては、保持部内においてプレート体が自重により落下し易いため、プレート体における突出部を同保持部内の底部側に位置決めして配置することにより同底部での機能性流動媒体の流動性を確保することができ、精度良く機能性流動媒体の機能の維持や引き摺りトルクの低減を図ることができる。なお、ブレーキ装置における機能性流動媒体としては、乾式ブレーキ装置における空気、湿式ブレーキ装置におけるオイルがそれぞれ相当する。すなわち、本発明におけるブレーキ装置としては、プレート体と被押圧体(例えば、回転ディスク)との間に空気が介在する乾式ブレーキ装置、およびプレート体と被押圧体との間にオイルが介在する湿式ブレーキ装置がある。
また、本発明は、前記プレート体において、突出部は、同突出部が対向する保持体の表面との隙間が保持体側嵌合部とプレート側嵌合部との隙間未満となる突出量で形成することもできる。これによれば、プレート体における突出部は、同突出部が対向する前記保持体の表面と間の隙間(クリアランス)が保持体に設けられた保持体側嵌合部とプレート体に設けられたプレート側嵌合部との隙間(クリアランス)未満となる突出量で形成されている。すなわち、従来、プレート体の径方向の変位可能量は、保持体に設けられた保持体側嵌合部とプレート体に設けられたプレート側嵌合部との隙間(クリアランス)量に対応している。このため、プレート体に形成する突出部の突出量を、突出部が対向する保持体の表面との隙間を保持体側嵌合部とプレート側嵌合部との隙間未満となる量に設定することによりプレート体の径方向の変位量を従来の変位量より小さくすることができる。この結果、保持体とプレート体との間の隙間をより確保して機能性流動媒体の流動性をより精度良く確保することができ、機能性流動媒体の機能の維持や引き摺りトルクの低減をより確実に図ることができる。
また、本発明は、前記プレート体において、突出部は、押圧体におけるプレート側嵌合部に隣接する外周面または内周面に形成することもできる。これによれば、プレート体は、押圧体におけるプレート側嵌合部に隣接する外周面上または内周面上に突出部が形成されている。これにより、突出部をプレート体における押圧体のプレート側嵌合部上に設ける場合に比べて容易に形成することができる。すなわち、プレート体における押圧体の周面上に形成されるプレート側嵌合部は、保持体の保持体側嵌合部に嵌合させるために形状や位置が高精度に成形される必要がある。一方、プレート体の押圧体におけるプレート側嵌合部に隣接する外周面上または内周面上に突出部を形成する場合においては、保持部の内周面または外周面と干渉しない程度の精度で成形されていればよい。したがって、突出部をプレート体における押圧体のプレート側嵌合部上に設ける場合に比べて容易に形成することができる。
具体的には、請求項6に示すように、平板環状に形成されるとともに回転可能に支持された被押圧体と、筒状または軸状に形成された保持体の内周面または外周面に形成された凹状または凸状の保持体側嵌合部に噛合って回転可能に支持された状態で被押圧体に対して相対的に押し付けられまたは離隔される平板環状のプレート体とを備え、被押圧体とプレート体との間の前記押し付けまたは離隔によって回転駆動力の伝達または遮断を行なう摩擦クラッチ装置において、プレート体は、被押圧体に押し付けられて摩擦接触する環状の押圧部を有した平板環状の押圧体と、保持体における保持体側嵌合部と対向する押圧体の外周面または内周面に凸状または凹状に設けられ、保持体側嵌合部と噛合った状態で嵌合するプレート側嵌合部と、プレート側嵌合部に凸状に突出する突出部を備えるとよい。
また、請求項7に示すように、平板環状に形成されて回転駆動する被押圧体と、筒状または軸状に形成された保持体の内周面または外周面に形成された凹状または凸状の保持体側嵌合部に噛合って回転可能に支持された状態で被押圧体に対して相対的に押し付けられまたは離隔される平板環状のプレート体とを備え、回転駆動する被押圧体にプレート体が押し付けられることにより同被押圧体の回転運動を制動するブレーキ装置において、プレート体は、被押圧体に押し付けられて摩擦接触する環状の押圧部を有した平板環状の押圧体と、保持体における保持体側嵌合部と対向する押圧体の外周面または内周面に凸状または凹状に設けられ、保持体側嵌合部と噛合った状態で嵌合するプレート側嵌合部と、プレート側嵌合部に凸状に突出する突出部を備えるとよい。
嵌合凸部103bは、アウターケース101の嵌合溝101bに嵌合する部分であり、押圧体103aの外周面から放射状に突出して形成されている。すなわち、嵌合凸部103bは、アウターケース101の嵌合溝101bに対応する凸形状であって嵌合溝101bに対してすきま嵌めの嵌め合い関係となる嵌合溝101bより小さい形状に形成されている。この嵌合凸部103bは、嵌合溝101bと同数だけ形成されており、本実施形態においては、押圧体103aの外周面上に等間隔に12個形成されている
この突出部103cは、同突出部103cが対向するアウターケース101の内周面101aとの隙間(クリアランス)Cがアウターケース101に設けられた嵌合溝101bと押圧体103aに設けられた嵌合凸部103bとの隙間(クリアランス)C未満となる突出量で形成されている。この場合、嵌合溝101bと嵌合凸部103bとの隙間Cの幅は、嵌合溝101bの溝幅から嵌合凸部103bの幅(径方向に直交する方向)を減じた長さある。本実施形態においては、隙間(クリアランス)Cが0.15mm、隙間(クリアランス)Cが0.25mmに設定されているが、これらの各隙間C,Cは、摩擦クラッチ装置100の仕様により適宜設定されるものである。
このクラッチプレート103は、嵌合凸部103bがアウターケース101の嵌合溝101bに嵌まり込んで互いに噛合うことにより、アウターケース101に対して軸線方向に沿って変位可能、かつ同アウターケース101と一体回転可能な状態で保持される。また、このクラッチプレート103は、本実施形態においては、SPCC(冷間圧延鋼板)材からなる薄板材を環状に打ち抜いて成形される。すなわち、アウターケース101が本発明に係る保持体に相当し、嵌合溝101bが本発明に係る保持体側嵌合部に相当し、嵌合凸部103が本発明に係るプレート側嵌合部に相当する。
摩擦材107bは、前記クラッチプレート103に対する摩擦力を向上させるための紙製部材であり、芯金107aにおける環状部分の径方向の幅に対応する長さの長方形状および三角形状の2つの形状でそれぞれ構成されている。これらの摩擦材107bは、芯金107aに対して互いに所定の隙間を介して配置されており、図示しない接着剤により貼り付けられている。この互いに隣り合う摩擦材107b間の隙間が油溝107cである。油溝107cは、後述するクラッチオイルが通る油路として機能する溝であり、前記摩擦材107bの厚さに対応する深さで形成されている。なお、摩擦材107bは、クラッチ摩擦板107とクラッチプレート103との摩擦力を向上させることができる素材で構成されていれば、紙材以外の素材、例えば、コルク材、ゴム材またはガラス材などを用いることもできる。すなわち、このクラッチ摩擦板107が本発明に係る被押圧体に相当する。
すなわち、車両の操作者がクラッチ操作レバー(図示せず)を操作してプッシュロッド106を後退(図示左側に変位)させた場合には、プッシュロッド106の先端部がレリーズベアリング108aを押圧しない状態となり、押圧カバー108がコイルバネ109cの弾性力によってクラッチプレート103を押圧する。これにより、クラッチプレート103およびクラッチ摩擦板107は、摩擦板ホルダ104の外周面にフランジ状に形成された受け部104b側に変位しつつ互いに押し付けられて摩擦連結された状態となって共に回転駆動する。この結果、入力ギア102に伝達されたエンジンの駆動力がクラッチプレート103、クラッチ摩擦板107、摩擦板ホルダ104およびシャフト105を介して変速機に伝達される。
このようにクラッチプレート103とクラッチ摩擦板107とが摩擦連結された状態においては、クラッチプレート103はクラッチ摩擦板107との摩擦連結により径方向への変位が規制されているため、同方向への変位、すなわちずれが生じることはない。また、この場合、摩擦クラッチ装置100内に充填されたクラッチオイルは、クラッチプレート103およびクラッチ摩擦板107の各内周側に存するクラッチオイルがクラッチプレート103およびクラッチ摩擦板107の回転による遠心力の大きさに応じてクラッチプレート103およびクラッチ摩擦板107の各外周側に向って移動する。これにより、摩擦クラッチ装置100にてクラッチオイルが循環する。
ここで、本発明者らによる実験結果について説明しておく。図5は、図6に示す従来技術に係るクラッチプレート200を用いた図示しない摩擦クラッチ装置における引き摺りトルクに対する本発明に係るクラッチプレート103を用いた摩擦クラッチ装置100における引き摺りトルクの大きさを示したグラフである。この場合、従来技術に係るクラッチプレート200は、図6に示すように、本発明に係るクラッチプレート103における押圧体103aおよび嵌合凸部103bに対応する押圧体201および嵌合凸部202をそれぞれ備えて構成されている。すなわち、クラッチプレート200は、本発明に係るクラッチプレート103における突出部103cを備えていない。そして、クラッチプレート200における押圧体201の外径は、クラッチプレート103における突出部103cの各頂点を結んだ円の直径と略同一である。また、従来技術に係る摩擦クラッチ装置は、本発明に係る摩擦クラッチ装置100に対してクラッチプレート103を除いて同一の構成であり、クラッチプレート103およびクラッチ摩擦板107の回転数は1000rpmである。
しかし、本発明に係る突出部103cは、嵌合凸部103b上に形成することを排除するものではない。すなわち、図9に示すように、突出部103cを押圧体103aの外周面上に形成した嵌合凸部103b上において径方向外側に向って凸に突出して形成することもできる。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。

Claims (7)

  1. 筒状または軸状の保持体の内周面または外周面に形成された凹状または凸状の保持体側嵌合部に噛合って支持された状態で相対的に回転しながら平板環状の被押圧体に対して相対的に押し付けまたは離隔される平板環状のプレート体であって、
    前記被押圧体に押し付けられて摩擦接触する環状の押圧部を有した平板環状の押圧体と、
    前記保持体における前記保持体側嵌合部と対向する前記押圧体の外周面または内周面に凸状または凹状に設けられ、前記保持体側嵌合部と噛合った状態で嵌合するプレート側嵌合部と、
    前記プレート側嵌合部に凸状に突出する突出部を備えることを特徴とするプレート体。
  2. 請求項1に記載したプレート体において、
    前記突出部は、前記プレート側嵌合部の立ち上り部分に形成されていることを特徴とするプレート体。
  3. 請求項1または請求項2に記載したプレート体において、
    前記突出部は、前記押圧体の径方向外側に向かって凸状に突出して形成されていることを特徴とするプレート体。
  4. 請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したプレート体において、
    前記突出部は、前記押圧体の外周面または内周面に少なくとも3つ以上形成されており、
    前記押圧体は、前記被押圧体に押し付けられて同被押圧体とともに回転して回転駆動力の伝達を行なう摩擦クラッチ装置内に前記保持体を介して配置されることを特徴とするプレート体。
  5. 請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したプレート体において、
    前記突出部は、前記押圧体の外周面または内周面に少なくとも1つ以上形成されており、
    前記押圧体は、回転駆動する前記被押圧体に押し付けられて同被押圧体の回転運動を制動するブレーキ装置内に前記保持体を介して配置されることを特徴とするプレート体。
  6. 平板環状に形成されるとともに回転可能に支持された被押圧体と、
    筒状または軸状に形成された保持体の内周面または外周面に形成された凹状または凸状の保持体側嵌合部に噛合って回転可能に支持された状態で前記被押圧体に対して相対的に押し付けられまたは離隔される平板環状のプレート体とを備え、前記被押圧体と前記プレート体との間の前記押し付けまたは離隔によって回転駆動力の伝達または遮断を行なう摩擦クラッチ装置において、
    前記プレート体は、
    前記被押圧体に押し付けられて摩擦接触する環状の押圧部を有した平板環状の押圧体と、
    前記保持体における前記保持体側嵌合部と対向する前記押圧体の外周面または内周面に凸状または凹状に設けられ、前記保持体側嵌合部と噛合った状態で嵌合するプレート側嵌合部と、
    前記プレート側嵌合部に凸状に突出する突出部を備えることを特徴とする摩擦クラッチ装置。
  7. 平板環状に形成されて回転駆動する被押圧体と、
    筒状または軸状に形成された保持体の内周面または外周面に形成された凹状または凸状の保持体側嵌合部に噛合って回転可能に支持された状態で前記被押圧体に対して相対的に押し付けられまたは離隔される平板環状のプレート体とを備え、回転駆動する前記被押圧体に前記プレート体が押し付けられることにより同被押圧体の回転運動を制動するブレーキ装置において、
    前記プレート体は、
    前記被押圧体に押し付けられて摩擦接触する環状の押圧部を有した平板環状の押圧体と、
    前記保持体における前記保持体側嵌合部と対向する前記押圧体の外周面または内周面に凸状または凹状に設けられ、前記保持体側嵌合部と噛合った状態で嵌合するプレート側嵌合部と、
    前記プレート側嵌合部に凸状に突出する突出部を備えることを特徴とするブレーキ装置。

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