JP2011162668A - 熱収縮チューブ用樹脂組成物並びにこれを用いた架橋チューブ及び熱収縮チューブ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 構成モノマー単位として、少なくともテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロポリプロピレン、及びエチレンを含む部分水素化フッ素樹脂;並びに多官能性モノマーを含有するフッ素系樹脂の組成物であって、前記樹脂組成物をチューブ状に成形した成形品を電子線照射により架橋してなるチューブを、前記部分水素化フッ素樹脂の融点以上の温度で2倍拡径した後、さらに前記部分水素化フッ素樹脂の融点以上の温度をかけて熱収縮させたチューブサンプル(膜厚0.8mm)の230℃雰囲気下での100%モジュラスが1.0kg/cm2以上である。
【選択図】 なし
Description
フッ素系樹脂のうち、ETFE樹脂(四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂)、PVDF樹脂(ビニリデンフルオロライド樹脂)等の部分水素化フッ素樹脂は、TFE樹脂(四フッ化エチレン樹脂)等のパーフルオロ系フッ素樹脂と比べて、若干耐熱性が劣るものの、溶融成形が可能であることから、電線、ケーブルの端末やパイプ等の接続部を被覆保護するチューブ材料として、幅広く用いられている。
また、収縮後に内部の接続部の細部の様子を確認できるように、透明性に優れることも求められる。
しかしながら、現行の熱収縮チューブでは、いずれも上記要求のすべてを充足することができないのが現状である。
検討の結果、平型電線の被覆に適用した場合、円筒形パイプや複数本を集束してなる太い径のワイヤの被覆に適応した場合では予測できなかった新たな問題が生じることが見出された。通常、平型電線を熱収縮チューブで被覆しようとする場合、通常、図1に示すように、熱収縮チューブ1内に平型電線2を挿通させた状態で加熱処理して、熱収縮チューブ1を熱収縮させる。このとき、図2に示すように、平型電線2のエッジ部2aで収縮後のチューブ1’の膜が破れたりすることがある。また、平型電線2を構成している素線の一部が何らかの理由で切断していたために、ブレードワイヤから突き出ていた場合には、図3に示すように、突き出た素線3が熱収縮したチューブ1’の膜を突き破ることがある。
<部分水素化フッ素樹脂>
はじめに、本発明の熱収縮チューブ用樹脂組成物の主成分となる部分水素化フッ素樹脂について説明する。
本発明で用いられる部分水素化フッ素樹脂は、構成モノマー単位として、少なくともヘキサフルオロポリプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、及びエチレン(Et)を含むものである。以下、本発明で用いる部分水素化フッ素樹脂を、構成モノマー単位の頭文字をとってHTE系共重合体という。
CH=CF(CF2)nH
式中、nは2〜10の整数であり、好ましくは2〜5である。このフルオロビニル化合物構成単位の含有率は、HTE系共重合体あたり、0〜10モル%とすることが好ましい。
本発明で使用される多官能性モノマーとしては、分子内に炭素―炭素不飽和結合を2以上有する、種々の化合物を用いることができる。例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート等があげられる。これらのうち、分子内に2つ以上のアリル基を有する化合物が好ましく、より好ましくは、トリアリルシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルベンジルイソシアヌレート、ジアリルカルボキシメチルイソシアヌレート等の2個以上のアリル基含有シアヌレート類である。
0.3質量部未満では、連続使用可能温度が200℃未満となり、高度の耐熱性は得られない。また、十分な架橋が行われないため、架橋による強度向上効果が不十分なためと推察されるが、平型電線の被覆に用いると、図2、図3で示したような問題が生じやすくなる。一方、多官応性モノマーの配合量が10質量部を超えると、架橋が過剰となって剛性が高くなりすぎるため、得られる架橋体は2倍膨張することができても、3倍膨張が困難となる。
本発明の熱収縮チューブ用樹脂組成物は、HTE系共重合体及び多官能性モノマーを含有するもので、調製した樹脂組成物をチューブ状に成形した成形品を電子線照射により架橋してなるチューブ状成形品(架橋チューブ)を、当該組成物の主成分となるHTE系共重合体の融点以上の温度下で2倍拡径した後、さらに前記HTE系共重合体の融点以上の温度をかけて熱収縮させたチューブサンプルのフィルム(膜厚0.8mm)の230℃雰囲気下で引っ張り試験したときの100%モジュラスが、1.0kg/cm2以上となるものである。
具体的には、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロペンテン二元共重合エラストマー、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロペンテン−テトラフルオロエチレン三元共重合エラストマー、テトラフルオロエチレン−プロピレン二元共重合エラストマー等のフルオロエラストマーをブレンドしてもよいし、さらには、これらのフルオロエラストマーにETFE系のフルオロポリマーやPVDF系のフルオロポリマーをグラフトしたポリマーをブレンドしてもよい。これらの他のフッ素系樹脂を含有する場合には、上述した、架橋フィルムの100%モジュラスについての特性を満足する必要があることから、ポリマー成分の40質量%以下とすることが好ましい。
本発明の架橋チューブは、上記本発明の樹脂組成物をチューブ状に成形し、次いで電子線照射により架橋したものである。
押出機の種類は特に限定せず、スクリュー式、非スクリュー式のいずれもよいが、好ましくはスクリュー式である。
本発明の熱収縮チューブは、上記本発明の架橋チューブを、冷却固定したものである。
拡径、膨張は、2倍以上、好ましくは3倍以上である。平型電線の被覆に用いる場合、一般に流通している平型電線の挿通を安定的に行うためには、3倍程度の膨張したものであることが好ましい。
(1)引っ張り特性(MPa)
(1−1)初期
樹脂組成物をチューブ状に押出成形した後、電子線照射で架橋して、チューブ状成形品(架橋チューブ)を作製し、次いで、この架橋チューブを押出成形時の内径の2倍に拡径した熱収縮チューブを作製した。この熱収縮チューブを、組成物の主成分となるフッ素系樹脂の融点以上に加熱して熱収縮させることにより測定用サンプルを得た。この測定用サンプルを用いて、JIS K6301「加硫ゴム物理試験方法」の第3項「引張試験」の試験方法に準じて、引張強さ(MPa)及び破断伸び(%)を測定した。
(1−1)で作製した測定用サンプルを250℃のギヤオーブン中で、168時間(7日間)放置後、(1−1)と同様にして、引張強さ(MPa)及び破断伸び(%)を測定した。熱老化後の引張強さが8.2MPa以上、老化後破断伸びが200%以上を充足できないものは耐熱性が不十分と判定した。
(1−1)で作製した測定用サンプルを、230℃に設定した恒温槽に3分間放置した後、取り出し、引張速度50mm/分で引張試験を行い、100%モジュラスを測定した。
(1−1)で作製した架橋チューブを、押出成形時のチューブの内径の2倍に拡径して熱収縮チューブを作製した。この熱収縮チューブについて、突き刺し強度を測定した。
突き刺し荷重の測定は、熱機械分析装置(TMA)を用いて測定した。このTMAに、径0.3mmの押込針を取り付け、室温下(25℃)、5g/分の押込速度で、チューブフィルムに針を押し込んでいき、フィルム厚み残率が0%(貫通状態)のなるときの荷重(g)を調べた。
外径0.15mmの錫メッキ軟銅線を6本撚りし、この撚り線をさらに16本撚りし、平型導体(長径4mm×短径0.8mmの平型導体)を用いて、被覆性を調べた。この平型導体は、実際に航空機用途に用いられるブレードワイヤーに該当する。
作製した熱収縮チューブ(長さ100mm)内に、上記平型導体を図1のように挿通させ、230℃に設定した恒温槽に3分間放置することにより熱収縮させた。熱収縮チューブは、平型導体を被覆するように収縮する。この際、平型導体のエッジ部分における熱収縮チューブの破損の有無(図2参照)、熱収縮チューブが破れて、導体素線が露出(図3参照)していないかどうかを目視で観察した。
各組成物を用いて製造した3倍膨張の熱収縮チューブ10本について上記試験を行い、10本のうち、1本以上のエッジ破損又は素線の露出が認められた場合には、不良(×)とした。エッジ破損、素線の露出が認められなかった場合は、良好(○)とした。
架橋チューブについて、波長400〜800nmの光の平均透過率を、分光光度計を用いて測定した。75%以上の平均透過率を示すものは、透明性を満足する。60%以下では、黄変が認められたことになる。
架橋チューブの一端を閉じ、他端に圧縮空気の配管を接続した状態で、各樹脂組成物の溶融成形温度に設定した恒温槽にいれ、配管から圧縮空気を送り込んで、チューブを2倍膨張、さらには3倍膨張(外径7.5mm)させた。2倍膨張、3倍膨張にあたり、チューブに割れが生じていないかを観察した。割れが認められなかった場合を「○」とした。
3倍膨張して作製した熱収縮チューブ内に、外径5mmのアルミニウム棒を挿通し、230℃に設定した恒温槽内に3分間放置して、熱収縮させた。その後、取り出して、熱収縮チューブのアルミニウム棒の密着状態を目視で観察して、熱収縮性を評価した。アルミニウム棒に密着したものは、熱収縮性良好であり、熱収縮しなかったもの、あるいは熱収縮したがアルミウム棒に密着しなかったものは熱収縮性不良(×)とした。
各種フッ素系共重合体(融点が異なる3種類のHTE系共重合体、3種類のTHV系共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ETFE樹脂)及び多官応性モノマー(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)又はトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPM))を下記表に示す質量割合質量で混合し、180℃(HTE1705を用いた場合には240℃)に設定した二軸混合機を用いて、溶融、混練して、樹脂組成物を調製した。
フッ素系ポリマーとして、HTE系共重合体を用いた組成物No.1〜10の組成及び評価結果を表1に、他のフッ素系ポリマーを用いた組成物No.11〜18の組成及び評価結果を表2に示す。
HTE1:3MグループのDyneon社製のHTE1510(融点160℃、MIは10(265℃×5kg))
HTE2:3MグループのDyneon社製のHTE1705(融点210℃、MIは4(265℃×5kg))
HTE3::ダイキン製のネオフロンRP4020(融点160℃、MIは25〜50(265℃×5kg))
THV1:3MグループのDyneon社製のTHV220(VdF(フッ化ビニリデン)、TFE(四フッ化エチレン)、HFP(六フッ化プロピレン)の三元共重合体で、融点120℃)
THV2:3MグループのDyneon社製のTHV610(VdF(フッ化ビニリデン)、TFE(四フッ化エチレン)、HFP(六フッ化プロピレン)の三元共重合体で、融点185℃
THV3:3MグループのDyneon社製のTHV815(VdF(フッ化ビニリデン)、TFE(四フッ化エチレン)、HFP(六フッ化プロピレン)の三元共重合体で、融点225℃)
PVDF:アルケマ製のカイナー2800(VdF(フッ化ビニリデン)とTFE(四フッ化エチレン)の二元共重合体で、融点145℃)
ETFE:3MグループのDyneon社製のET6235で、融点267℃、MIは10(297℃×5kg)
表中のポリマーの括弧内の数値は、樹脂の融点を示す。
Claims (9)
- 構成モノマー単位として、少なくともテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロポリプロピレン、及びエチレンを含む部分水素化フッ素樹脂;並びに多官能性モノマーを含有するフッ素系樹脂の組成物であって、
前記樹脂組成物をチューブ状に成形した成形品を電子線照射により架橋してなるチューブ状成形品(以下、「架橋チューブ」という)を、前記部分水素化フッ素樹脂の融点以上の温度で2倍拡径した後、さらに前記部分水素化フッ素樹脂の融点以上の温度をかけて熱収縮させたチューブサンプル(膜厚0.8mm)の230℃雰囲気下での100%モジュラスが1.0kg/cm2以上である熱収縮チューブ用樹脂組成物。 - 前記部分水素化フッ素樹脂の融点は215℃以下である請求項1に記載の熱収縮チューブ用樹脂組成物。
- 前記架橋チューブを、該架橋チューブの内径の2倍拡径してなるチューブのフィルム(厚み0.4mm)に、常温雰囲気下で針(径0.3mm)を突き刺したときに破断する突き刺し荷重が20g以上である請求項1又は2に記載の熱収縮チューブ用樹脂組成物。
- 前記部分水素化フッ素樹脂における前記各構成モノマー単位の含有率は、テトラフルオロエチレン40〜70モル%、エチレン20〜45モル%、ヘキサフルオロポリプロピレン10〜30モル%である請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮チューブ用樹脂組成物。
- 前記部分水素化フッ素樹脂は、さらに、CH=CF(CF2)nH(式中、nは2〜10の整数である)で示されるモノマー単位を含んでいる請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱収縮チューブ用樹脂組成物。
- 前記多官能性モノマーは、少なくとも2つのアリル基を含有する化合物であって、前記部分水素化フッ素樹脂100質量部あたり、0.3〜10質量部含有されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱収縮チューブ用樹脂組成物。
- 構成モノマー単位として、少なくともテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロポリプロピレン、及びエチレンを含む部分水素化フッ素樹脂;並びに多官能性モノマーを含有するフッ素系樹脂の組成物をチューブ状に押出し、電子線照射により架橋してなる架橋チューブ。
- 請求項7に記載の架橋チューブを、該架橋チューブの内径の少なくとも2倍以上拡径されている熱収縮チューブ。
- 請求項7に記載の架橋チューブを、該架橋チューブの内径の3倍以上拡径されていて、且つ拡径後のチューブ膜厚が0.5mm以下である熱収縮チューブ。
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