JP2011124330A - 酸化亜鉛系半導体の成長方法及び半導体発光素子の製造方法 - Google Patents

酸化亜鉛系半導体の成長方法及び半導体発光素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【目的】
平坦性と配向性に優れ、低欠陥・低転位密度で、基板残留不純物の拡散・蓄積が極めて抑制されたZnO系単結晶の成長方法を提供する。また、高性能かつ高信頼性の半導体素子、特に、発光効率及び素子寿命に優れた高性能な半導体発光素子を提供する
【解決手段】
MOCVD法により、酸素を含まない有機金属化合物と極性酸素材料とを用い、アンモニア(NH)ガスを供給しつつ基板上に600℃ないし850℃の範囲の成長温度でZnO系単結晶層を成長する単結晶成長工程と、上記ZnO系単結晶層上に、n型及びp型ZnO系半導体層のうち少なくとも1つを含むデバイス層を成長する工程と、を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、酸化亜鉛(ZnO)系半導体の成長方法及び半導体素子の製造方法に関し、特に、MOCVD法により、ZnO基板上に酸化亜鉛系半導体層を成長する方法及び酸化亜鉛系半導体発光素子の製造方法に関する。
酸化亜鉛(ZnO)は、室温で3.37eVのバンドギャップエネルギーを有する直接遷移型の半導体で、青ないし紫外領域の光素子用の材料として期待されている。特に、励起子の束縛エネルギーが60meV、また屈折率n=2.0と半導体発光素子に極めて適した物性を有している。また、発光素子、受光素子に限らず、表面弾性波(SAW)デバイス、圧電素子等にも広く応用が可能である。さらに、原材料が安価であるとともに、環境や人体に無害であるという特徴を有している。
ZnO基板は水熱合成法により安定した製造が可能となっている。しかし、インゴット製造方法において、LiOH(水酸化リチウム)、KOH(水酸化カリウム)を鉱化剤として用いる。そのためにインゴット結晶中にLi(リチウム)やK(カリウム)等の不純物が残留する。特にLi(リチウム)は、ZnO単結晶インゴット中に取り込まれ残留し易い。このようなインゴットから製造されたZnO単結晶基板上に、例えばZn酸化物系半導体発光素子層を形成した場合、素子層へLi等が拡散すると、半導体発光素子の電気特性や発光効率を低下させる問題が生じる。
このような水熱合成法により製造されたZnO基板の界面不純物の問題を回避するために、緩衝層(バッファ層)を用いて結晶成長を行う方法が開示されている(例えば、特許文献1)。より詳細には、基板表面近傍に不純物が過度に存在する場合において、酸化性ガス雰囲気下で基板の熱処理を行うこと、及び500℃以下の低温でバッファ層を形成することが開示されている。
しかしながら、現在製造されているZnO基板は、その製造工程において1000℃以上の高温で基板中の不純物除去等がなされている。そのため、1000℃以下の温度で熱処理を実施しても、不純物を基板自体の濃度以下に低減することはできない。また、基板によりバラツキはあるが、具体的なLiの残留濃度は、概ね1×1014〜1×1017atoms/cm3である。例えば、SIMSのLi検出下限界値は5×1013〜1×1014atoms/cm3であり、それ以下の濃度のLiは含まれていても検出できない。
また低温バッファ層は、結晶性の完全性が低く、その上に成長する成長層へ欠陥や転位を導入させ、また、当該欠陥や転位を介して不純物が拡散し易いという問題がある。
特許第4045499号公報
本発明は、ZnO単結晶基板が近年の基板製造技術の進歩により半導体素子製造用基板として高い品質に達していると考えられるものの、このような高品質のZnO基板を用いた場合であっても、MOCVD法によるZnO系半導体結晶の成長において、以下のような問題点を有しているという知見を得、かかる特有の問題を解決せんとしてなされたものである。 すなわち、残留不純物(Li等)の少ないZnO基板を用いた場合であっても、当該不純物が成長層中に拡散する問題があることがわかった。すなわち、例えばSIMS等の分析機器の検出限界以下の濃度であっても成長層中を拡散する場合があることが明らかとなった。また、このような基板残留不純物の成長層への拡散は成長層の結晶性を阻害するため、成長層内における拡散及び蓄積を抑制することが重要である。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、平坦性と配向性に優れ、低欠陥・低転位密度で、基板残留不純物の拡散・蓄積が極めて抑制されたZnO系単結晶の成長方法を提供することにある。また、高性能かつ高信頼性の半導体素子、特に、発光効率及び素子寿命に優れた高性能な半導体発光素子を提供することにある。さらに、製造歩留まりが高く、量産性に優れた半導体発光素子を提供することにある。
本発明の方法は、MOCVD法によりZnO単結晶の基板上にZnO系結晶層を成長する方法であって、
酸素を含まない有機金属化合物と極性酸素材料とを用い、アンモニア(NH)ガスを供給しつつ基板上に600℃ないし850℃の範囲の成長温度でZnO系単結晶層を成長する単結晶成長工程と、
上記ZnO系単結晶層上に、n型及びp型ZnO系半導体層のうち少なくとも1つを含むデバイス層を成長する工程と、を有することを特徴としている。
また、本発明の半導体素子は、MOCVD法によりZnO単結晶の基板上にZnO系半導体層を積層して形成された半導体素子であって、
アンモニア(NH)ガスを供給しつつ前記基板上に600℃ないし850℃の範囲の成長温度で前記基板上に直接成長されたZnO系単結晶層と、
上記ZnO系単結晶層上に成長された、n型及びp型ZnO系半導体層のうち少なくとも1つを含むデバイス層と、を有することを特徴としている。
結晶成長に用いたMOCVD装置の構成を模式的に示す図である。 実施例1及び2の結晶成長シーケンスを示す図である。 基板上にZnO単結晶層を成長した実施例1及び2の成長層の構成を示す断面図である。 実施例3の結晶成長シーケンスを示す図である。 基板上にZnO単結晶層及びZnO系単結晶層を成長した実施例3の成長層の構成を示す断面図である。 比較例2の結晶成長シーケンスを示す図である。 実施例1及び2の結晶成長層の評価結果の一覧を示す図である。 比較例1及び2の結晶成長層の評価結果の一覧を示す図である。 実施例1のZnO成長層(EMB1)の(100)ωのロッキングカーブを示図である。 実施例2のZnO成長層(EMB2)の(100)ωのロッキングカーブを示す図である。 実施例1の成長層及び基板の深さ方向のSIMS測定プロファイルを示す図である。 実施例2の成長層及び基板の深さ方向のSIMS測定プロファイルを示す図である。 比較例1の成長層及び基板の深さ方向のSIMS測定プロファイルを示す図である。 比較例2の成長層及び基板の深さ方向のSIMS測定プロファイルを示す図である。 実施例3の成長層及び基板の深さ方向のSIMS測定プロファイルを示す図である。 比較例3の成長層及び基板の深さ方向のSIMS測定プロファイルを示す図である。 本発明によるZnO系LEDの製造に用いられるデバイス層付き基板の構成を示す断面図である。 本発明を半導体素子に適用した例であり、図16に示すLEDデバイス層付き基板を用いて製造した半導体発光素子を模式的に示す(a)平面図及び(b)断面図である。
以下においては、MOCVD法によりZnO単結晶基板上に結晶欠陥や転位の少ない高品質で単結晶性に優れた酸化亜鉛(ZnO)系半導体結晶層を成長する方法について図面を参照して詳細に説明する。また、本実施形態に係る実施例の成長方法及び成長層の特徴、構成及び効果を説明するための比較例についても詳述する。また、本発明の成長方法により形成された半導体素子として、半導体発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を例に説明する。
図1は、結晶成長に用いたMOCVD装置5の構成を模式的に示している。MOCVD装置5の装置構成の詳細について以下に説明する。また、結晶成長材料については後に詳述する。
[装置構成]
MOCVD装置5は、ガス供給部5A、反応容器部5B及び排気部5Cから構成されている。ガス供給部5Aは、有機金属化合物材料を気化して供給する部分と、気体材料ガスを供給する部分と、これらのガスを輸送する機能を備えた輸送部とから構成されている。
常温で液体(または固体)である有機金属化合物材料は、気化し蒸気として供給する。本実施例においては、亜鉛(Zn)源としてDMZn(ジメチル亜鉛)、マグネシウム(Mg)源としてCp2Mg(ビスシクロペンタジエニルマグネシウム)、ガリウム(Ga)源としてTEGa(トリエチルガリウム)をそれぞれ用いた。
まず、DMZnの供給について説明する。図1に示すように、窒素ガスを流量調整装置(マスフローコントローラ)21S にて所定の流量とし、ガス供給弁21Mを通してDMZn格納容器21Cに送り、DMZn蒸気を窒素ガス中に飽和させる。そして、DMZn飽和窒素ガスを取出し弁21E、圧力調整装置21Pを通して、成長待機時には第1ベント配管(以下、第1VENTライン(VENT1)という。)28Vに、成長時には第1ラン配管(以下、第1RUNライン(RUN1)という。)28Rに供給する。なお、この際、圧力調整装置21Pによって格納容器内圧を一定に調整する。またDMZn格納容器は恒温槽21Tで一定温度に保たれる。
また、その他の有機金属化合物材料Cp2Mg、TEGaについても同様である。すなわち、これらの材料をそれぞれ格納する格納容器22C(Cp2Mg),23C(TEGa)に流量調整装置22S、23Sを経た所定の流量の窒素ガスが送気され、取出し弁22E、23E及び圧力調整装置22P、23Pを通して、成長待機時には第1VENTライン(VENT1)28Vに、成長時には第1RUNライン(RUN1)28Rにこれらのガスが供給される。
また、酸素源としての液体材料であるHO(水蒸気)は格納容器24Cに流量調整装置24Sを経た所定の流量の窒素ガスが送気され、取出し弁24E、圧力調整装置24Pを通して、成長待機時には第2ベント配管(以下、第2VENTライン(VENT2)という。)29Vに、成長時には第2ラン配管(以下、第2RUNライン(RUN2)という。)29Rに供給される。
p型不純物源としては、気体材料であるNH(アンモニア)ガスを用いた。NHガスは、流量調整装置25Sにより所定の流量が供給される。待機時には第2VENTライン(VENT2)29V、成長時には第2RUNライン(RUN2)29Rに供給される。なお、当該ガスは、窒素やAr(アルゴン)などの不活性ガスで希釈されていても構わない。
上記した液体または固体材料の蒸気と気体材料(以下、材料ガスという。)は、第1RUNライン(RUN1)28R、第2RUNライン(RUN2)29Rを通して反応容器部5Bのシャワーヘッド30に供給される。なお、第1RUNライン(RUN1)28R及び第2RUNライン(RUN2)29Rのそれぞれにも流量調整装置20C、20Bが設けられており、材料ガスはキャリアガス(窒素ガス)によって反応容器(チャンバ)39の上部に取付けられたシャワーヘッド30に送り込まれる。
なお、シャワーヘッド30は、基板10の主面(成長面)に対向する噴出面を有し、当該噴出面内に亘って材料ガスの噴出孔が列及び行方向に多数(例えば、数10〜100)形成されている。また、当該噴出面の有効噴出直径は基板の外径よりも大きい。
当該噴出孔は、第1RUNライン128Rから供給される有機金属化合物材料ガス(II族ガス)が噴出される第1の噴出孔と、第2RUNライン129Rから供給されるHO(水蒸気)(VI族ガス)が噴出される第2の噴出孔と、からなっている。そして、第1RUNライン128Rからのガスと第2RUNライン129Rからのガスは混合されずにそれぞれ第1の噴出孔及び第2の噴出孔から噴出されるように構成されている。第1の噴出孔及び第2の噴出孔はほぼ同数で互いに数mmの間隔で設けられ、有機金属化合物材料ガス及びHOが均一に混合するように、各列及び各行において交互に配置されている。
反応容器39内には材料ガスを基板10に吹付けるシャワーヘッド30、基板10、基板10を保持するサセプタ19、サセプタ19を加熱するヒーター49が設置されている。そして、ヒーター49によって基板を室温から1100℃程度まで加熱できる構造となっている。
なお、本実施例における基板温度とは、基板を載置するサセプタ19の表面の温度を指している。すなわち、MOCVD法の場合、サセプタ19から基板10への熱伝達は直接接触、およびサセプタ19と基板10間に存在するガスにより行なわれる。本実施例で用いた成長圧力1kPa〜120kPa(Pa:パスカル)の間では、基板10の表面温度はサセプタ19の表面温度より0℃〜10℃低い程度である。
また、反応容器39にはサセプタ19を回転させる回転機構が設けられている。より詳細には、サセプタ19はサセプタ支持筒48に支持され、サセプタ支持筒48はステージ41上に回転自在に支持されている。そして、回転モータ43がサセプタ支持筒48を回転させることによりサセプタ19(すなわち、基板10)を回転させる。なお、上記したヒーター49は、サセプタ支持筒48内に設置されている。
排気部5Cは、容器内圧力調整装置51と排気ポンプ52で構成されており、容器内圧力調整装置51にて反応容器39内の圧力を0.1kPaないし120kPa程度まで調整できる構造となっている。
[結晶成長材料]
本実施例においては、有機金属化合物材料(または有機金属材料)として、構成分子内に酸素を含まない材料を用いた。酸素を含まない有機金属材料は、水蒸気(酸素材料又は酸素源)との反応性が高く、低成長圧力、あるいは水蒸気と有機金属(MO)の流量比(FH2O/FMO比)又はVI/II比が低い領域においてもZnO系結晶の成長を可能とする。
本実施例及び比較例においては、DMZn、Cp2Mg、TEGa(半導体材料用高純度品)を用いたが、II族材料として、DEZn(ジエチル亜鉛)、MeCp2Mg(ビスメチルペンタジエニルマグネシウム)、EtCp2Mg(ビスエチルペンタジエニルマグネシウム)等を用いることができる。また、III族材料として、TMGa(トリメチルガリウム)、TMAl(トリメチルアルミニウム)、TEAl(トリエチルアルミニウム)、TIBA(トリイソブチルアルミニウム)などを利用することができる。
酸素材料(以下、酸素源という。)としては、極性酸素材料(極性酸素源)が適している。特に、HO(水蒸気)は、分子内に水素原子が結合した側と孤立電子対側でδ、δに大きく分極しており、酸化物結晶表面への吸着能力が優れている。
また、HO分子は、水素原子結合手と孤立電子対で4面体構造をとり、sp型混成軌道の閃亜鉛鉱構造(Zincblende/Cubic)、ウルツ鉱構造(Wurtzeite/Hexagonal)の酸化物結晶の成長では、優先的に酸素サイトに配向吸着する優れた酸素源である。他の酸素源として、同様に、双極子モーメントが大きくO原子がsp型混成軌道を取る低級アルコール類でも良い。すなわち、具体的には、酸素源として、HO(水蒸気)以外に、低級アルコール類、特に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールの炭素数が1〜5の低級アルコール類が利用できる。なお、本実施例にはHO(超純水:関東化学(株)製、規格:Ultrapur)を用い、比較例にはO(酸素)、NO(亜酸化窒素)を用いた。
p型不純物材料としては、結晶成長過程において閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造のO(酸素)サイトに置換し易い化合物が適している。特に、NHは、上記HOと同様な作用があり適している。具体的には、p型不純物材料として、NH(アンモニア)、(CHNNH(ジメチルヒドラジン)、(CH)NHNH(モノメチルヒドラジン)などのヒドラジン類、PH3(フォスフィン)、RPH、RPH、RPなどのアルキル燐化合物、AsH3(アルシン)、RPH、RPH、RPなどのアルキル砒素化合物などを利用できる。
キャリアガス(雰囲気ガス)としては、上記した結晶成長材料と反応しない不活性ガスが適している。また、HO(水蒸気)、NHなど結晶成長材料の基板表面への吸着を妨げないガスが良い。具体的には、キャリアガス及び雰囲気ガスとして、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、Kr(クリプトン)、Xe(キセノン)またはN(窒素)などのいわゆる不活性ガスを利用できる。本実施例及び比較例においては、残留O濃度が0.1ppm未満の高純度N(窒素)ガスを用いた。
ZnO(酸化亜鉛)基板は、ウルツ鉱(ウルツァイト)構造の結晶で、代表的な基板切り出し面には、{0001}面であるc面、{11−20}面であるa面、{10−10}面であるm面、{10−12}面であるr面がある。また、c面には、Zn極性面(+c面)とO極性面(−c面)がある。
以下に説明する実施例及び比較例においては、水熱合成法(hydrothermal method)で製造されたインゴットより切出されたZnO単結晶基板を用いた。なお、高温熱処理(1000℃以上)等の処理により基板由来の不純物である残留Liの濃度を低減した基板を用いた。
また、ZnO単結晶基板10として、基板主面(結晶成長面)がZn極性面(+c面)である基板(以下、c面ZnO単結晶基板ともいう。)が好ましい。下記実施例及び比較例においては、結晶成長面がZn極性面である基板を用いた。また、基板主面(結晶成長面)がa軸およびm軸の何れかに傾いた基板であることが好ましい。下記実施例及び比較例においては、具体的には、(0001)面が [10−10]方向に0.5°傾いた基板((0001)0.5°off to [10−10])、いわゆる0.5°オフ基板(あるいは、c面がm軸方向に0.5°傾いた0.5°オフ基板)を用いた。
また、以下に説明する実施例および比較例においては、XRD(100)ωロッキングカーブのFWHMが40arcsec未満のZnO単結晶基板を用いた。
[ZnO単結晶の成長方法]
本実施例においては、まず、XRD(100)ωロッキングカーブのFWHMが40arcsec未満のダメージ層の薄いZnO単結晶基板を選別した。当該選別した基板にエッチングを行い、ダメージ層を除去した。当該エッチングにより良好な表面平坦性が得られた。
エッチング液として、EDTA・2Na(エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム)0.2mol/L溶液とEDA(エチレンジアミン)の99%溶液を20:1の比で混ぜた混合溶液を用いた。このエッチング液(EDTA・2Na:EDA=20:1)のエッチングレートは0.7μm/h(である。なお、当該エッチング液は、特開2007−1787に開示されている。また、エッチング液の混合比は5:1〜30:1程度で良好にエッチングを行うことができる。
上記エッチング液に、室温で、20min(分)間浸し表面層をエッチングした。その後、水洗にてエッチング液を除去し、有機溶剤洗浄(アセトンまたはアルコール)にて脱水した。最後に、有機溶剤を加熱し、蒸気雰囲気中にて乾燥した。なお、温度および時間等のエッチング条件は、基板表面処理、保管状態により異なる。
図2は、実施例1の結晶成長シーケンス(EMB1)を示し、該図を参照して本実施例における成長方法について以下に詳細に説明する。なお、以下の説明においては、説明及び理解の容易さのため、実施例nに係る図、成長層、データ等について、EMBn等のように表す場合がある。また、後述する比較例nについても同様に、CMPn等のように表す場合がある。
まず、表面層をエッチングしたZnO単結晶基板(以下、ZnO基板又は単に基板ともいう。)10を反応容器39内のサセプタ19にセットし、真空に排気後、反応容器圧力を10kPaに調整した(時刻T=T1)。また、回転機構によりZnO基板10を10rpmの回転数で回転した。
次に、第1RUNライン(RUN1)28R及び第2RUNライン(RUN2)29Rからそれぞれ窒素(N)ガスを2000cc/min(合計4000cc/min)の流量でシャワーヘッド30に送気し、ZnO基板10に吹付けた。
なお、第1RUNライン(RUN1)28R及び第2RUNライン(RUN2)29Rからシャワーヘッド30に供給するガス流量は、常に一定流量に保った。すなわち、成長待機時及び成長時などにおいて有機金属材料ガス及び気体材料を供給する際には、有機金属材料ガス及び気体材料の流量分だけ第1RUNライン(RUN1)28R及び第2RUNライン(RUN2)29Rに設けた流量調整装置20C、20Bの流量を増減し、シャワーヘッド30に供給するガス流量を一定に保った。
次に、反応容器39内の圧力を10kPaから上昇させた(T=T2)。圧力が80kPaに安定した後、基板温度を室温(RT)から昇温を開始するとともにHO(水蒸気)の流量(FH2O)を640μmol/minに調整して第2RUNライン(RUN2)29RからZnO基板10に吹付けた(T=T3)。
基板温度が所定の高成長温度Tg(本実施例においては、Tg=800℃)になって(T=T4)から1分間待機し、DMZnの流量(FDMZn)を10μmol/minに調整し、第1RUNライン(RUN1)28Rを通してシャワーヘッド30からZnO基板10に吹き付け結晶成長を開始した(T=T5)。
また、成長開始から10秒間の開始オフセット時間後(T=T6)に、NH(アンモニアガス)を1.0μmol/minの流量(FNH3)でシャワーヘッド30からZnO基板10に吹き付けた。
成長開始(T=T5)から30min経過時(T=T8)において、DMZnを第1RUNライン28Rから第1VENTライン28Vに切替えて成長を終了した。なお、当該成長終了時(T=T8)の10秒(終了オフセット時間)前(T=T7)にNHの供給を停止した。このように30min間の成長(成長時間EG=30min)を行い、図3の断面図に示すように、ZnO系半導体層として厚さ約0.5μm(マイクロメートル)のZnO単結晶層11を形成した。
なお、ここで、当該所定の高成長温度とは、熱安定状態の成長が行われる温度(高温)を意味し、当該高温成長(本実施例においては、Tg=800℃)により単結晶の成長を行った。なお、「熱安定状態」の定義及び意義については、後に詳細に説明する。
成長終了後、圧力を80kPaに保ったまま、基板温度が200℃に低下するまで水蒸気(HO)を流しながら冷却した(T=T9〜T10)。その後、圧力をポンプ真空(〜10−1Pa程度)まで減圧し、同時にHOの供給を停止した。基板温度が室温になるまで待ち成長を終了した。なお、冷却中の圧力減圧とHO供給停止は、室温(RT)まで待ってから切換えても良い。
上記したMOCVD装置を用い、ZnO単結晶基板上にZnO単結晶の成長を行った。実施例2(EMB2)においては、実施例1と同じシーケンスで結晶成長を行った。結晶成長時におけるNH(アンモニアガス)の流量を3.0μmol/minと実施例1の場合に比べて増加させた点を除いて、ZnO単結晶基板、基板のエッチング処理、成長材料、成長シーケンス(図2)及び成長条件などの成長方法は実施例1の場合と同じであった。
すなわち、成長開始(T=T5)から10秒間の開始オフセット時間後(T=T6)に、NH(アンモニアガス)を3.0μmol/minの流量(FNH3)でシャワーヘッド30からZnO基板10に供給した。30min間の成長(成長時間EG=30min)を行い、厚さ約0.5μmの単結晶層11を形成した。
本実施例においては、上記した実施例1及び2と同様にZnO単結晶基板上にNH(アンモニアガス)を供給してZnO単結晶層を成長させ、さらに、当該NH供給成長のZnO単結晶層上に、n−ZnO層、発光層及びp−MgZn(1−x)O層の成長を行った。
用いたZnO単結晶基板、ZnO基板のエッチング等の基板処理は実施例1及び2と同様である。図4に示す結晶成長シーケンス及び図5に示す成長層の断面図を参照して本実施例(EMB3)における成長方法について以下に詳細に説明する。
まず、ZnO単結晶基板10をサセプタ19にセットし、反応容器圧力を10kPaに調整した(時刻T=T11)。なお、回転機構によりZnO基板10を10rpmの回転数で回転した。
次に、第1RUNライン(RUN1)28R及び第2RUNライン(RUN2)29Rからそれぞれ窒素(N)ガスを2000cc/min(合計4000cc/min)の流量でシャワーヘッド30に送気し、ZnO基板10に吹付けた。第1RUNライン(RUN1)28R及び第2RUNライン(RUN2)29Rからシャワーヘッド30に供給するガスの総流量を、成長待機時、成長時及び成長終了後の一定期間においても一定流量に保った点は実施例1及び2と同様である。
次に、反応容器39内の圧力を10kPaから上昇させた(T=T12)。圧力が80kPaに安定した後、基板温度を室温(RT)から昇温を開始するとともにHO(水蒸気)の流量(FH2O)を640μmol/minに調整して第2RUNライン(RUN2)29RからZnO基板10に吹付けた(T=T13)。
基板温度が所定の成長温度Tg(本実施例においては、Tg=800℃)になって(T=T14)から1分間待ち、DMZnの流量(FDMZn)を10μmol/minに調整し、第1RUNライン(RUN1)28Rを通してシャワーヘッド30からZnO基板10に吹き付け結晶成長を開始した(T=T15)。
成長開始(T=T15)から10秒間のオフセット時間後(T=T16)に、NHを0.3μmol/minの流量(FNH3)でシャワーヘッド30からZnO基板10に供給した。成長開始(T=T15)から6min経過時(T=T17、成長時間GS=6min)において、NHガスのみ基板への供給を停止し、図5に示すように、厚さが約0.1μmのZnO単結晶層11を形成した。NHガスのみ供給を停止するのと同時に、n型ドーパントとしてTEGaを0.5nmol/min(ナノモル/分)の流量(FTEGa)で第1RUNライン(RUN1)28Rを通してシャワーヘッド30からZnO基板10に供給した(T=T17)。6min間の成長を行い(T=T17〜T18、成長時間GN=6min)、n−ZnO系半導体層として厚さ約0.1μmのn−ZnO単結晶層12を形成した。
さらに、成長温度Tg(800℃)及び成長圧力(80kPa)を保った状態で、DMZnの流量(FDMZn)を2μmol/minに減少させ、同時にTEGaの供給を停止し(T=T18)、発光層(又は活性層:ACT)13の成長を開始した。成長開始からDMZnを6min間供給し(T=T18〜T19、成長時間GA=6min)、ZnO系半導体発光層として厚さ約0.02μmのアンドープZnO単結晶発光層13を形成した。
成長温度Tgを800℃に保った状態で、DMZnの供給停止(T=T19)後、圧力を10kPaに減圧した。圧力が10kPaになってから1分間待機して安定した後に、DMZn(流量10μmol/min)及びCp2Mg(流量0.55μmol/min)を第1RUNライン(RUN1)28Rを通してシャワーヘッド30からZnO基板10に供給した(T=T20)。これと同時にHO(水蒸気)の流量を60μmol/minとし、また、pドーパントとしてのNH(アンモニアガス)の流量を6.0μmol/minに調整して第2RUNライン(RUN2)29RからZnO基板10に供給し、成長を開始した(T=T20)。40min間の成長を行い(T=T20〜T21、成長時間GP=40min)、p−ZnO系半導体層として厚さ約70nm(ナノメートル)、N(窒素)濃度が8×1019個・cm−3のp−MgZn(1−x)O(x=0.25)単結晶層14を形成した。
p−MgZn(1−x)O層14の成長終了後、圧力を10kPaに保ったまま、基板温度が200℃に低下するまで水蒸気(HO)を流しながら冷却した(T=T21〜T22)。その後、圧力をポンプ真空(〜10−1Pa程度)まで減圧し、同時にHOの供給を停止した。
なお、本実施例おいて、Mgを含まない結晶(ZnO結晶)の場合よりも低圧(減圧)及び低水蒸気流量の条件でMgZnO結晶の成長を行ったのは、次の理由による。すなわち、低圧(10kPa)で成長するとガス濃度が薄くなり成長速度を遅くできる。また、低水蒸気流量にすることで、有機金属材料との不要な反応を抑制できる。そこで、歪みを内在したMgZnO結晶層の成長には、成長速度を遅くし、不要な反応を抑えた低圧、低水蒸気流量の条件が特に適しており、欠陥や転位の導入の抑制に有効である。また、成長速度が遅くなることで成長層厚に対する水蒸気供給量(積分値)は増加するので、低圧、低水蒸気流量環境においても欠陥(特に、酸素欠損)の無いMgZnO単結晶層を成長することができる。
[比較例1〜3]
上記した実施例1〜3により成長したZnO系単結晶層の評価のため、比較例として以下の成長方法、成長条件で結晶成長を行った。
[比較例1]
比較例1(CMP1)においては、上記したMOCVD装置を用い、ZnO単結晶基板上にZnO単結晶の成長を行った。より具体的には、ZnO単結晶層の成長をNH(アンモニアガス)を供給せずに行った点、及び25min間の成長時間で層厚が約0.4μmのZnO単結晶層(CMP1)を成長した点を除いて、実施例1の成長シーケンス(図2)と同じシーケンスで結晶成長を行った。また、これらの点を除き、ZnO単結晶基板、基板のエッチング処理、成長材料等の成長条件、成長方法は実施例1の場合と同じであった。
[比較例2]
比較例2(CMP2)の成長シーケンスを図6に示す。比較例2において、反応容器圧力を80kPaに調整し、基板温度を800℃まで昇温、安定させるまでのシーケンス(T=U1〜U4)は実施例1及び2の場合(T=T1〜T4)と同じであった。比較例2においては、基板温度が800℃で安定した後、NH(アンモニアガス)を基板10に供給した状態で、14min間の熱処理を行った(T=U5〜U6)。なお、HO(水蒸気)を供給した状態で、当該熱処理を行った。また、熱処理終了(T=U6)の後、NHの供給は行わなかった。
熱処理を終了後、基板温度(Tg)を800℃、圧力を80kPaに保った状態で、DMZnを10μmol/minの流量でZnO基板10に供給し、結晶成長を30min間行った(T=U7〜U8、成長時間EG=30min)。これにより層厚が約0.5μmのZnO単結晶層(CMP2)を成長した。なお、ZnO単結晶層の成長をNH(アンモニアガス)を供給せずに行った点は比較例1の場合と同じであった。成長終了後の冷却、真空までの減圧、水蒸気の供給停止等の一連の工程(T=U8〜U10)は、上記実施例及び比較例の場合と同じであった。
[比較例3]
比較例3(CMP3)においては、NH(アンモニアガス)を供給せずに結晶成長を行った点を除いて、実施例3の場合と同じであった。すなわち、ZnO単結晶基板上にNHを供給せずにZnO単結晶層、及び当該ZnO単結晶層上に、n−ZnO層(層厚0.1μm)、発光層(層厚20nm)及びp−MgZn(1−x)O(x=0.20)層の成長を行った。なお、p−MgZn(1−x)O(x=0.20)層の成長時間は160minであり、層厚は約0.3μmであった。
[結晶成長層の詳細な評価結果及び物性]
以下に、上記した実施例1〜3、及び比較例1〜3における結晶成長層の評価結果及び物性等について図を参照して詳細に説明する。なお、図7A及び7Bは、それぞれ上記実施例及び比較例の各結晶成長層の評価結果の一覧を示している。なお、図中、1Enは指数表記であり、例えば、1E17は1×1017を表している。上記した結晶成長層について、以下の方法により評価・分析を行った。
表面モフォロジは、微分偏光顕微鏡、SEM(Scanning Electron Microscope)及びAFM(Atomic Force Microscope)により評価を行った。結晶配向性及び平坦性は、RHEED(reflection high-energy electron diffraction)により評価を行った。また、結晶配向性及び欠陥・転位密度については、X線回折(XRD:X-Ray Diffractometer)で評価した。結晶中の不純物濃度については、二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により評価した。
なお、XRD分析において、上記実施例および比較例ではc面ZnO単結晶基板10上にZnO系結晶層を成長したので、XRDの2θ測定およびω(ロッキングカーブ)測定を行い、c軸長については(002)2θで、配向性(チルティング、ツイスティングの程度)については(002)ω、(100)ω の半値幅(FWHM:full width at half maximum)で評価した。もっとも、1μm程度以下の薄膜の場合、(002)ω測定値は基板のX線回折強度が強く、また成長層のX線回折強度が弱いため、正確に評価できない。一方で、(100)ω測定は、c軸を基準に89°で入射・回折させることで薄膜(30nm程度)でも感度良く配向性を評価できる。以上より、ZnO系結晶層のXRD評価は、(100)ωのFWHM値を指標とした。
<1.実施例1及び2、比較例1及び2の成長層>
1.1 平坦性
実施例1及び実施例2のZnO成長層11(EMB1,EMB2)の表面は鏡面であった。また、微分偏向顕微鏡、SEM、AFMにより表面状態を詳細に観察したところ、平坦かつ良好な表面モフォロジを有していることが確認された。
1.2 配向性
図8及び図9は、それぞれ実施例1及び実施例2のZnO成長層11(EMB1,EMB2)の(100)ωのロッキングカーブを示している。図7A、図8及び図9に示すように、(100)ωのロッキングカーブの半値全幅(FWHM)はそれぞれ23.3arcsec(EMB1)、32.5arcsec(EMB2)であり、ZnO単結晶基板と同等以下の非常に狭い値であった。すなわち、ZnO単結晶基板に対して、ZnO単結晶層11が高い配向性(原子配列の乱れが無い、欠陥、転位が低密度)でエピタキシャル成長していることがわかった。
1.3 不純物拡散プロファイル
図10は、実施例1のZnO成長層(EMB1)及び基板の深さ方向のSIMS測定結果であり、Li,Al及びZnの濃度の深さ方向プロファイルを示している。なお、横軸の深さ(μm)は成長層表面を基準(ゼロ)として示している。図10及び図7Aに示すように、基板10にn型不純物として添加されているAl(アルミニウム)は、基板深部から界面(A)まで濃度2×1017atoms/cm3と一定に保たれている。そして、ZnO単結晶層11内の界面から0.15μmの地点(B)にて検出下限界値(LM(Al)と表記)である5×1014atoms/cm3まで減少している。
これに対し、ZnO単結晶基板10に含まれるLi(リチウム)は、基板深部で濃度2×1016atoms/cm3である。そして基板(ZnO sub)10及びZnO単結晶層(ZnO epi)11の界面(X)を基準とし、基板10内の深さ0.67μmの地点(C)からLi濃度の減少が始まり、基板10内の深さ0.13μmの地点(D)で検出下限界値(LM(Li)と表記)である8×1013atoms/cm3まで減少している。さらに、界面(X)では検出下限界値LM以下まで減少している。すなわち、ZnO単結晶層11と基板10との界面から基板10内の一定の深さの領域まで基板由来不純物であるLiの濃度が基板深部よりも低減され(当該領域をリチウム濃度低減領域という。)、また成長結晶層内の濃度も検出限界以下の極めて低い値であった。従って、本発明によれば、基板10内のn型不純物(Al)の濃度は一定で、基板10内の表面層(リチウム濃度低減領域)のLiの濃度を選択的に低減することができる。
また、図11は、実施例2のZnO成長層(EMB2)及び基板の深さ方向のSIMS測定結果であり、Li及びSiの濃度の深さ方向プロファイルを示している。上記したように、実施例2は、NH(アンモニアガス)の流量を実施例1の場合の3倍(3.0μmol/min)に増加させてZnO単結晶層11を成長した場合である。
図11及び図7Aに示すように、基板10にn型不純物として添加されているAlは、基板深部から界面(A)まで濃度2×1017atoms/cm3と一定に保たれている。そして、ZnO単結晶層11内の界面から0.08μmの地点(B)にて検出下限界値(LM(Al)である5×1014atoms/cm3まで減少している。
一方、基板10に含まれるLiは、基板深部で濃度5×1016atoms/cm3である。そして基板10及びZnO単結晶層11の界面(X)を基準とし、基板10内の深さ0.53μmの地点(C)からLi濃度の減少が始まり、基板10内の深さ0.03μmの地点(D)で検出下限界値(LM(Li))である8×1013atoms/cm3まで減少している。さらに、界面(X)では検出下限界値LM以下まで減少している。すなわち、実施例1の場合と同様に、基板10内の一定の深さ(リチウム濃度低減領域)まで基板10に含まれるLiの濃度を選択的に低減することができた。また、結晶成長層内のLi濃度も検出限界以下の極めて低い値であった。
このように、本発明の方法によれば、ZnO単結晶基板に含有されているLiを選択的に低減することができる。また、成長したZnO単結晶層11の結晶性は良好に保たれており、ZnO単結晶基板10に含有されているAlの拡散も抑制されている。
基板由来の元素であるLiのZnO成長層への拡散が無く、また、Alの拡散も極めて抑制されているので、原子の欠損(Zn欠損、O欠損)や欠陥(点欠陥)および転位(螺旋転位、刃状転位)密度は極めて低いと言える。
なお、ZnO結晶においてN(窒素)はp型不純物であるため、n型基板直上のZnO単結晶層に含まれることは素子構造上好ましくない場合がある。しかし、成長時においてNHと同時にTEGaやTMAl等のドーパントを供給して、ZnO単結晶層のGa(ガリウム)やAl(アルミニウム)濃度がN(窒素)濃度以上になるように調整すれば問題はない。例えば、GaやAl濃度が2×1018〜1×1019atoms/cm3になるようにTEGaやTMAlを添加(co-dope)すれば良い。あるいは、例えば、半導体素子製造プロセスなどにおいて、この層をEDTA・2NaとEDA混合溶液等でエッチングして除去すれば良い。
一方、比較例1及び比較例2について、深さ方向のSIMS測定結果を図12及び図13に示す。前述のように、比較例1はNHを供給せずにZnO単結晶層の成長を行った点を除いて実施例1の場合と同様である。図12に示すように、比較例1(CMP1)においては、ZnO単結晶基板10のLi、及びn型不純物として添加されているAlは、基板深部においても界面(X)においても、それぞれ3×1015atoms/cm3及び1.3×1017atoms/cm3と一定の濃度であった。すなわち、実施例1及び実施例2の場合のような基板10内でのLiの低減効果は得られなかった。
また、前述のように、比較例2は、ZnO単結晶層の成長を行う前にHO(水蒸気)及びNHを供給しつつ「熱処理」を行った点を除いて実施例1の場合と同様である。図12に示すように、比較例2(CMP2)においても、ZnO単結晶基板10のLi、及びn型不純物として添加されているAlは、基板深部においても界面においても、それぞれ6×1016atoms/cm3及び3×1017atoms/cm3と一定の濃度であった。すなわち、比較例2においても、実施例1及び実施例2の場合のような基板10内でのLiの低減効果は得られなかった。
1.4 熱安定状態の結晶層の成長
上記したように、本発明によれば、ZnO単結晶基板の表面層(すなわち、基板内部)のLi濃度を低減するとともに、Li濃度がSIMS検出下限界値以下であるZnO単結晶層を成長することができる。このような利点を得るためには、前述のように、高成長温度でステップフローモード(2次元成長モード)成長を行うことが前提となる。つまり、本発明のLiの低減作用が結晶成長に伴う現象だからであり、Liなどの不純物は欠陥や転位などの介在によって拡散するからである。基板上に成長するZnO層が多結晶または結晶性の低い単結晶層では、その上に成長するZnO系半導体層の結晶性も低く、容易にLiが拡散するからである。従って、基板上に成長するZnO層は優れた結晶性を有する単結晶層である必要がある。本発明のZnO成長層が優れた結晶性を有する点について以下により詳細に説明する。
(熱安定状態の単結晶層)
本実施例及び比較例においては、バッファ層を形成せずに、ZnO基板上にZnO単結晶層を直接成長した。すなわち、上記した熱安定状態の成長が行われる所定の高成長温度で「熱安定状態」のZnO単結晶層をZnO基板上に直接成長した。
一般に、結晶基板上に薄膜を成長する場合の成長過程として、(a)フランク・ファンデアメルベ(Frank-van der Merwe)様式、(b)ボルマ・ウェーバ(Volmer-Weber)様式、(c)ストランスキ・クラスタノフ(Stranski-Krastanow)様式が知られている。(例えば、「結晶成長ハンドブック」、日本結晶成長学会、1995)。
上記した平坦性、配向性(XRD)、不純物拡散(SIMS)等の評価結果から、実施例1及び2の高温成長のZnO単結晶層(EMB1、EMB2)は、層状成長の様式であるフランク・ファンデアメルベ様式により成長された単結晶層である。すなわち、熱安定状態の単結晶層であり、平坦性及び配向性に優れ、界面での不純物の拡散・蓄積が無く、欠陥・転位密度の低い完全性の高いZnO単結晶層であることがわかった。
ここで、本明細書でいう「熱安定状態」の結晶とは、化学結合状態が安定した結晶を指す。より詳細には、フランク・ファンデアメルベ成長様式で成長し、結晶工学的に“単結晶”の結晶であり、熱力学的には“熱平衡状態”の結晶であると定義することができる。
例えば、本実施例のように高温(800℃)で成長したZnO結晶の化学結合状態は、熱化学的に安定した結合をとっている(基底状態)。そのため、熱処理によって容易に結晶の状態が変移することはない。
一方、例えば、低温成長の結晶などは「準」熱安定状態の結晶である。「準熱安定状態」とは、化学結合状態が不安定な結晶を指す。より詳細には、ストランスキ・クラスタノフ成長様式に近似した様式で成長し、結晶工学的に“単結晶”であり、熱力学的には“準熱平衡状態”の結晶であると定義することができる。なお、正確には非熱平衡状態であるが、最安定状態でない薄膜単結晶層の状態を、多結晶薄膜の状態と区別するために準熱平衡状態と定義する。一例を挙げれば、低温(例えば、400℃)で成長したZnOバッファ層は準熱平衡状態であり、その化学結合状態は熱化学的に安定な状態(熱安定状態)まで遷移していない。従って、高温(例えば、900℃)での熱処理により結晶の状態は著しく変移する(すなわち、熱安定状態に変移する)。
なお、付言すれば、「非熱安定状態」の結晶とは、結晶工学的に“アモルファス”や“多結晶”であり、熱力学的には“非熱平衡状態”の結晶であると定義することができる。一例を挙げれば、低温(例えば、400℃)で成長したZnOアモルファスまたは多結晶バッファ層は「非熱平衡状態」である。従って、高温(例えば、900℃)での熱処理により結晶結合状態及び表面状態は著しく変移する。しかし、始発状態がアモルファスまたは多結晶状態なので、完全性の高い単結晶、また表面状態もステップとテラスで構成された状態まで変移できない。すなわち、「熱安定状態」への遷移はできない。
<2.実施例3及び比較例3の成長層>
2.1 不純物拡散プロファイル
図14は、実施例3の結晶成長層(EMB3)及び基板の深さ方向のSIMS測定結果であり、Li,Al及びZnの濃度の深さ方向プロファイルを示している。なお、横軸の深さ(μm)は成長層表面を基準(ゼロ)として示している。前述のように、実施例3は、実施例1及び2と同様にNHを供給して基板上にZnO単結晶層(以下、Li低減結晶層ともいう。)11を約0.1μmの層厚で成長させ、さらに、当該Li低減結晶層上にn−ZnO層12(層厚0.1μm)、発光層(層厚20nm)13及びp−MgZn(1−x)O(x=0.25)層14(層厚0.1μm)の成長を行った場合である。すなわち、実施例3の結晶成長層はシングルヘテロ(Single Hetero-)構造(以下、SH構造という。)を有している。
図14に示すように、ZnO単結晶基板10のLi濃度は界面(X)にて1×1014atoms/cm3以下に低減している。また積層したZnO単結晶層11、n−ZnO層12、発光層13及びMgZnO単結晶層を通してLi濃度はSIMS検出下限界値(LM(Li):8×1013atoms/cm3)以下である。
図15は、比較例3の結晶成長層(CMP3)の深さ方向のSIMS測定結果を示している。前述のように、比較例3は、Li低減結晶層を適用しなかった点を除いて、実施例3と同じである。すなわち、NHを供給せずに基板上にZnO単結晶層(層厚0.1μm)を成長し、その上にn−ZnO層(層厚0.1μm)、発光層(層厚20nm)13及びp−MgZn(1−x)O(x=0.20)層(層厚0.3μm)の成長を行った。
ZnO基板界面(X)におけるLi濃度は8×1015atoms/cm3と高いが、ZnO単結晶層では検出下限界値以下まで減少している。しかし、MgZn(1−x)O単結晶層においてLiは3×1014atoms/cm3の濃度で蓄積されている。
これはZnO結晶成長層のLi濃度が検出下限界値以下であっても、LiはZnO成長層中を拡散し、MgZn(1−x)O単結晶層に拡散(蓄積)されるからであると解される。
これに対し、上記したように、実施例3のp−MgZn(1−x)O層14においては、Li濃度はSIMS検出下限界値以下であり、当該MgZnO単結晶層への基板由来Liの拡散・蓄積は抑制されている。
2.2 ZnO系結晶層(デバイス層)へのLiの拡散
半導体発光素子などの半導体素子を作成する際に、結晶層中に基板由来不純物のLiが拡散すると素子特性を劣化させる要因となる。例えば、n型半導体層、発光層及びp型半導体層から構成されるデバイス層をZnO基板上に形成する場合、上記したように、ZnO結晶成長層のLi濃度が検出下限界値以下であっても、デバイス層中に基板由来不純物のLiが拡散し、素子特性を劣化させる要因となる。
なお、ここで、デバイス層とは、半導体素子がその機能を果たすために含まれるべき半導体で構成される層を指す。例えば、単純なトランジスタであればn型半導体及びp型半導体のpn接合によって構成される構造層を含む。また、n型半導体層、発光層及びp型半導体層から構成され、注入されたキャリアの再結合によって発光動作をなす半導体構造層を、特に、発光デバイス層という。
発光素子の発光効率を向上するには、発光層の非発光再結合を抑制すること、また、特に、p型ZnO系半導体層のキャリア密度(正孔密度)を高くすることが重要である。Liが発光層(例えば、ZnOまたはZnO/MgZnO−MQW)に拡散すると、非発光再結合センタを形成して発光効率を低下させる。p型ZnO系半導体層に拡散すると、正孔密度を低下させ発光層への正孔注入効率を低下させる。このようにZnO系半導体発光素子においてLiは、発光素子性能を低下させる妨害不純物である。上記したように、特に、Liは、MgZn(1−x)O(0<x≦0.68)層に拡散、蓄積され易いので(比較例3)、ZnO単結晶基板のLi濃度を低減することは重要である。
詳細に調べたところ、LiはZnO系結晶中において非常に拡散し易い(高温:600℃以上)元素であることが解った。すなわち、基板に接して成長したZnO層のLi元素濃度がSIMS検出下限界値以下であっても、若干のLiが格子間または僅かな欠損(Zn欠損、O欠損)や欠陥または転位を介して拡散するものと考えられる。
特に、3元系混晶であるMgZn(1−x)O(0<x≦0.68)のような、若干の歪みを内在した結晶層(すなわち、ZnO結晶層に対してa軸長が整合しc軸長が若干長くなる形態で結晶成長層を形成する)では、欠陥密度がZnO層と比較して高い傾向にあり、Liが取り込まれ易くなる。
このように、MgZn(1−x)O(0<x≦0.68)結晶に、Liが取り込まれると、発光層においては非発光準位を形成したり、多様な発光準位を形成したりして発光効率を低下させる。また、p型不純物を補償するなどしてp型ZnO系半導体の形成(導電型制御)を困難にするという問題がある。
上記したように、本発明によれば、基板10内のn型不純物(Al)の濃度は一定で、基板10内の一定の深さまで基板10に含まれるLiの濃度を選択的に低減することができる。また、ZnO単結晶基板上に形成される成長層及びデバイス層中へのLiの拡散及び蓄積を効果的に抑制することができる。特に、MgZn(1−x)O結晶などの3元系混晶、及び3元以上の多元系結晶へのLiの拡散(及び蓄積)を極めて効果的に防止することができる。従って、半導体素子、特に、SH構造やダブルヘテロ構造(Double Heterostructure)(以下、DH構造)又はQW(量子井戸)構造が用いられるLED(発光ダイオード)などバンドギャップの異なる層を形成する半導体発光素子に有利であり、当該発光素子の高性能化を実現することができる。
<3.成長方法>
ZnO単結晶基板上に熱安定状態のZnO系結晶層であって優れた平坦性と配向性及び欠陥・転位密度の低い結晶を成長させるとともに、基板内部表面領域及び結晶層中のLiを選択的に低減し、また成長層へのLiの拡散を抑制する成長条件について詳細に検討した。
3.1 結晶成長材料
熱安定状態の単結晶層を成長させるためには、水蒸気と分子内に酸素を含まない有機金属材料とを使用し、高温で成長することが必要であることがわかった。前述のように、酸素源としてのHO(水蒸気)は、大きな分極を有する極性酸化ガスであり、高温においても酸化物結晶表面への配向吸着性が優れており、有機金属化合物材料と表面で反応する。また、構成分子内に酸素原子を含まない有機金属材料は、HO(水蒸気)との反応性が高い。平坦性の優れた結晶成長を実現するには、第1に、成長に関わる化学種(水蒸気、有機金属化合物、それらの分解中間体等)が基板表面で反応すること、第2に成長に関わる化学種が結晶表面でマイグレーションし、結晶安定サイトに収まり結晶化する過程が必要である(2次元結晶成長過程)。従って、HOと酸素を含まない有機金属化合物とは、その両方の機能を備える優れた材料の組み合わせである。つまり、水蒸気が酸化物結晶表面に吸着し、有機金属化合物が、吸着した水蒸気を攻撃し、反応・マイグレーションしながら、結晶安定サイトに収まる。この作用により、平坦性の優れた結晶成長が可能となる。同時に、基板への高い配向性と欠陥・転位密度の低い結晶成長が可能となる。
3.2 成長条件
(成長温度、成長圧力、成長速度、VI/II比)
成長温度については、600℃以上から成長上限温度である850℃までの範囲で、成長表面が平坦で、(100)ωのFWHMが35arcsec以下と狭く、ZnO単結晶基板に対する配向性に優れた結晶層が得られることが確認された。なお、平坦性と配向性が向上する650℃以上がさらに好ましい。さらに好適には、欠陥・転位密度が非常に低くなる700℃以上が良い。厳密には、成長上限温度よりも20℃ないし200℃低い温度範囲(成長上限温度の−20℃〜−200℃の温度範囲)が良い。
成長圧力については、低圧(減圧)から常圧までの広い圧力範囲で可能である。好ましくは、成長圧力1kPa以上が良い。成長圧力を低くすると成長速度が低下する。特に、1kPa以下(800℃の場合)にすると成長速度は極端に低下するので実用的に1kPa以上が良い。また、上限は装置の高圧密閉性能の限界である120kPa程度まで実施したが、問題なく成長することができた。
成長速度は0.1nm/min〜70nm/minの範囲が適当である。遅すぎると成長時間が長くなり、速すぎると十分にZnO基板のLi濃度を減少できなくなる。例えば、ZnO基板の界面Li濃度をSIMS検出下限界値以下にするには、10nm/min〜30nm/minが適当である。
水蒸気流量とDMZn流量比であるVI/II比(= FH2O/FDMZn )は、2程度以上なら良く、上限はRUN2配管またはシャワーヘッド内で水蒸気が凝集を起こさない飽和水蒸気量の70%程度までが良い。実用的には1000程度あれば十分である。
(NH流量)
基板Liの低減効果とNH流量との関係について詳細に検討した。その結果、Li低減効果は、水蒸気流量に対するNHのモル流量比Pg(=FNH3/FH2O)で効果が左右されることが判明した。具体的には、Pg=7.8×10−5程度から基板Liの低減効果が現れ、Pg=1.6×10−4以上で界面のLi濃度をSIMS検出下限界値(1×1014)以下まで低減できることが判った。さらに、Pg=7.8×10−4以上であれば、ZnO基板のLi濃度が1×1017atoms/cm3程度であってもSIMS検出下限界値(1×1014)以下まで低減できることが判った。従って、Li濃度を1×1014atoms/cm3以下まで低減する場合には、Pg=1.6×10−4以上であることが好ましい。さらに、Pg=7.8×10−4以上であることがより好ましい。
3.3 NH添加によるLi低減の作用
ZnO基板界面(基板表面層)においてLi元素の濃度が低減される効果がどのようなメカニズムで起こるのかの詳細は現状明らかではない。構成分子内に酸素原子を含まない有機金属材料(DMZn)、極性酸化ガス(HO:水蒸気)を成長材料として用い、NHを供給しつつ熱安定状態のZnO系単結晶をZnO単結晶基板上に直接成長する成長過程において、成長材料の複合化合物又は分解過程の複合化合物が、基板表面のLiと結合し、脱離(飛散)することでLiが除去されるというメカニズムが考えられる。
なお、基板に含有されているLi,Na,K(水熱合成法による基板などの場合)などのアルカリ金属についても、これらの元素の化学的性質の類似性から同様な基板内部の界面層領域における不純物濃度の低減、成長層中での拡散・蓄積の抑制効果が得られると解される。
このようなLi元素の濃度の低減作用を検証するため、種々のガス、基板熱処理等の成長条件について結晶成長を試みた。より具体的には、600℃〜1000℃以下の温度範囲において下記の条件で結晶成長を試みたがZnO基板表面層近傍のLi濃度の低減効果は見られなかった。なお、下記の材料ガスはキャリアガス(N)に混ぜて用いた。
(1)単一ガス
、NO、HO、NHをそれぞれ単独で用いた基板熱処理を行ったが、Li濃度の低減効果は見られなかった。
(2)複合ガス
(i) O+NH3、(ii) NO+NH3、(iii) HO+NH3 により基板熱処理を行ったが、Li濃度の低減効果は見られなかった。
(3)有機金属との複合ガス
(i) DMZn+HOによる成長を行ったが、Li濃度の低減効果はほとんど見られなかった。
(ii) DMZn+NHによる成長を行ったが、目的外の結晶(Zn)が成長した。
[半導体素子]
本発明を半導体素子に適用した例として、ZnO系半導体発光素子(LED:発光ダイオード)の製造に用いられるデバイス層付き基板67の積層構造を図16に示す。LEDデバイス層付き基板67においては、ZnO単結晶基板61上にデバイス層65が形成されている。デバイス層65は、n−ZnO系半導体層62、発光層63、p−ZnO系半導体層64から構成されている。また、n−ZnO系半導体層62は、NHを供給しつつZnO基板上に直接成長された熱安定状態の第1のn−ZnO層62A(Li低減結晶層)、電流拡散層である第2のn−ZnO系半導体層62B、正孔のバリアとして機能する第3のn−ZnO系半導体層62Cから構成されている。p−ZnO系半導体層64は、電子のバリアとして機能する第1のp−ZnO系半導体層64A、電極との接触抵抗を低くする第2のp−ZnO系半導体層64Bから構成されている。
デバイス層65の半導体積層構造は、上記した実施例の成長方法に基づいて、あるいは適宜改変して形成すればよい。例えば、実施例6の成長方法の成長シーケンス及び成長条件と同様にして、材料ガス、ドーパントガス等を切り換えて、各半導体層を順次成長することができる。また、各半導体層の組成(バンドギャップ)、層厚、導電型及びドープ濃度(キャリア濃度)などは、半導体発光素子の所要特性等に応じて適宜改変又は選択することができる。例えば、第1のn−ZnO層62Aの代わりにアンドープのZnO層を採用し、第2のn−ZnO系半導体層62BはGaドープのZnO層であり、第3のn−ZnO系半導体層62CはGaドープのMgZn1−xO(0<x≦0.68)層であり、発光層63はZnO層及びMgZn1−xO層からなる量子井戸(QW)発光層であり、第1のp−ZnO系半導体層64Aは窒素(N)ドープのMgZn1−xO(0<x≦0.68)層であり、第2のp−ZnO系半導体層64Bは窒素(N)ドープのZnO層であるように形成することができる。
図17(a)、(b)は、上記LEDデバイス層付き基板67にn側電極及びp側電極を形成し、スクライブ及びブレーキングにより個片化することによって形成した半導体発光素子(LED)70を示す。図17(a)は、半導体発光素子70の上面図であり、図17(b)は、図17(a)の線A−Aにおける断面図である。
ZnO系半導体発光素子70においては、ZnO基板61にはn側接続電極71としてTi/Auが形成され、p−ZnO系半導体層64にはp側透光性電極72としてNi−O/Au、及びp側接続電極73としてNi/Pt/Auが形成されている。なお、ここで、「X/Y」との表記は、XがZnO系半導体層側に形成され、Yがその上に積層された構造を意味する。
MgZnO系半導体層は、酸化物透光性導電膜と接合性が良好であるため、n側接続電極71にITO等、p側透光性電極72にCuAlO等、さらにp側接続電極73にNiO等を使用することができる。このような構成にすれば、透明半導体発光素子を形成できる。なお、図中、矢印は投光方向を示している。
以上説明したように、本発明によれば、NHを供給しつつZnO基板上に熱安定状態のZnO系単結晶が直接成長される。本発明の成長方法によれば、平坦性及び配向性に優れ、低欠陥・低転位密度の完全性の高いZnO系単結晶層の成長を可能としつつ、ZnO基板に含まれ、成長層の結晶性を阻害する不純物(Liなど)の基板内における濃度を選択的に低減することができ、成長層内における当該不純物の拡散及び蓄積を効果的に抑制することができる。
従って、半導体素子等への適用においては、高品質の結晶積層構造を形成できるため、優れた特性の半導体素子を提供することができる。さらに、電気的特性及び発光効率に優れたZnO系半導体発光素子を提供することができる。
特に、ZnO系半導体素子を実現するうえで最大の課題であるp型導電性制御性を向上することができる。すなわち、欠陥や転位及び不純物に起因してp型ドーパントによる正電荷のキャリア(正孔)が補償される問題を改善し、良好な導電性のp型半導体結晶を得ることができる。
従って、本発明によれば、平坦性及び配向性に優れ、欠陥・転位密度が低く、不純物拡散が抑制された完全性の高いZnO系結晶の成長が可能であり、優れた電気的特性、光学的特性等を有する高性能で、歩留まりの高い半導体発光素子等の半導体素子の製造が可能となる。
5 MOCVD装置
10,61 基板
11 ZnO成長層
12 n−ZnO単結晶層
13 発光層
14 p−MgZn(1−x)O単結晶層
62A n−ZnO層
65 デバイス層

Claims (6)

  1. MOCVD法によりZnO単結晶の基板上にZnO系結晶層を成長する方法であって、
    酸素を含まない有機金属化合物と極性酸素材料とを用い、アンモニア(NH)ガスを供給しつつ前記基板上に600℃ないし850℃の範囲の成長温度でZnO系単結晶層を成長する単結晶成長工程と、
    前記ZnO系単結晶層上に、n型及びp型ZnO系半導体層のうち少なくとも1つを含むデバイス層を成長する工程と、を有することを特徴とする方法。
  2. 前記n型及びp型ZnO系半導体層は、MgZn1−xO(0<x≦0.68)単結晶層を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記極性酸素材料は水蒸気(HO)であり、前記水蒸気の流量に対する前記NHのモル流量比が7.8×10−5以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記基板は前記基板に由来する不純物としてリチウム(Li)を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1に記載の方法。
  5. 前記ZnO系単結晶層はZnO層であり、前記ZnO層及び前記n型及びp型ZnO系半導体層中の前記リチウムの濃度は、1×1014atoms/cm3以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
  6. MOCVD法によりZnO単結晶の基板上にZnO系半導体層を積層して形成された半導体素子であって、
    アンモニア(NH)ガスを供給しつつ前記基板上に600℃ないし850℃の範囲の成長温度で前記基板上に直接成長されたZnO系単結晶層と、
    前記ZnO系単結晶層上に成長された、n型及びp型ZnO系半導体層のうち少なくとも1つを含むデバイス層と、を有することを特徴とする半導体素子。
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