JP2011108642A - 固体高分子型燃料電池用電極電解質およびそれを用いた電極ワニス、電極ペースト、膜−電極接合体 - Google Patents
固体高分子型燃料電池用電極電解質およびそれを用いた電極ワニス、電極ペースト、膜−電極接合体 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】下記一般式(1)で表されるポリアリーレン系共重合体を含む固体高分子型燃料電池用電極電解質。
(式(1)中、Eは、それぞれ独立に、直接結合、−O−,−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−基からなる1種の構造を示し、Ar31、Ar32、Ar33は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環若しくは含窒素複素環を有する2価または3価の有機基又は水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されたこれらの有機基を示す。R31は、直接結合、−O(CH2)p−、−O(CF2)p−、−(CH2)p−、−(CF2)p−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
【選択図】なし
Description
[1]下記一般式(1)で表される構造単位を含むポリアリーレン系共重合体を含むことを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極電解質。
Ar31、Ar33は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環若しくは含窒素複素環を有する2価または3価の有機基又は水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されたこれらの有機基を示す。
fは1〜5の整数を示し、
gは0〜4の整数を示し、hは0〜1の整数を示す。
[2]下記一般式(2)で表される構造単位を含む[1]の固体高分子型燃料電池用電極電解質。
R31は、直接結合、−O(CH2)p−、−O(CF2)p−、−(CH2)p−、−(CF2)p−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す(pは、1〜12の整数を示す)。
fは1〜5の整数を示し、
gは0〜4の整数を示し、
hは0〜1の整数を示す。
[3]さらに、スルホン酸基を有する構造単位を含む[1]または[2]の固体高分子型燃料電池用電極電解質。
[5]さらに、下記一般式(4-1)で表される芳香族構造を有する構造単位を含む[1]〜[4]の固体高分子型燃料電池用電極電解質。
[7]前記(d)/{(d)+(e)}×100の値が、0.1〜7未満である[6]の固体高分子型燃料電池用電極電解質。
[8]イオン交換容量が、0.5〜3.5meq/gである[1]〜[7]の固体高分子型燃料電池用電極電解質。
[9]前記[1]〜[8]の固体高分子型燃料電池用電極電解質を含むことを特徴とする電極ワニス。
[11]ペーストを構成する溶媒が水と少なくとも1種類以上の有機溶剤との混合溶媒であり、その混合溶媒がプロトン伝導膜の貧溶媒である[8]の電極ペースト。
[12]前記[1]〜[8]の固体高分子型燃料電池用電極電解質と触媒粒子とを含むことを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極。
[13]前記[12]の固体高分子型燃料電池用電極を、高分子電解質膜の少なくとも片面に備える膜−電極接合体。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極電解質は、ホスホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体(以後、ホスホン化ポリアリーレンということもある)を含むことを特徴としている。
このような構造を有するホスホン化ポリアリーレンは、過酸化物に対するラジカル耐性を向上でき、かつ、高いプロトン伝導度を保持できる。また、電子密度の低い芳香族環にホスホン酸基が導入されており、ポリアリーレンの主鎖にホスホン酸基を導入したり、また電子密度が高い芳香族環(たとえば−O−、−S−に結合した芳香族環)、すなわち、電子密度の低い芳香環上に導入されたものではないホスホン酸基では、プロトン伝導度が低下するため十分なラジカル耐性を得ようとし導入量を増やすと著しい伝導度の低下を示す。さらにまた、本発明では、ホスホン酸エステル基では無く、脱保護されたホスホン酸基の状態で導入されているため、伝導性の無いホスホン酸エステル基のように導入によってプロトン伝導性が大幅に低下することなく、伝導性を保持できる。
本発明のポリアリーレン系共重合体は、ホスホン酸基を有する構造単位を有し、好ましくは、さらにスルホン酸基を有する構造単位および芳香族構造を有する構造単位を有する。
ホスホン酸基を有する構造単位は、下記式(1)で表される。
eは0〜10の整数を示し、好ましくは0〜5、より好ましくは0〜2を示す。
gは0〜4の整数を示し、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2を示す。
hは0〜1の整数を示す。
また、ホスホン酸基を有する構造単位は、好ましくは下記式(2)で表される。
スルホン酸基を有する構造単位は、例えば、下記式(3)で表される構造単位を挙げることができる。本発明のポリアリーレン系共重合体は、スルホン酸基を有する構造単位を含むことで、プロトン伝導度をより高くすることができる。また、本発明のポリアリーレン系共重合体は、上述したホスホン酸基を有する構造単位とスルホン酸基を有することで、高いプロトン伝導度を保持しつつ、耐久性を向上させることができる。このことは、ホスホン酸基を有することで、スルホン酸基の脱離等が抑制されるためと推察される。
Zは、−O−、−S−、直接結合、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CH2)l−(lは1〜10の整数である)、またはC(CH3)2−を示す。
R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属原子または脂肪族炭化水素基、脂環基または酸素を含む複素環を含む炭化水素基からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。ただし、上記式中に含まれる全てのR12およびR13のうち少なくとも1個は水素原子である。
スルホン酸基を有する構成単位は、好ましくは、下記式(3−1)で表される繰り返し単位から構成される。
上記式(3)又は(3−1)で表される繰り返し単位は、好ましくは、下記式(3−2)で表される構造単位を挙げることができる。
スルホン酸基を有する構造単位の具体的構造としては、下記を挙げることができる。
[芳香族構造を有する構造単位]
芳香族構造を有する構造単位は、下記式(4)で表される。
Bは酸素原子または硫黄原子であり、
s、tは、それぞれ独立に、0〜4の整数を示し、rは、0または1以上の整数を示す。
このような構成単位として具体的には、以下のものが例示される。
かかるポリアリーレン系共重合体は、下記一般式(5)で表される。
ポリアリーレン系共重合体1モルが有するホスホン酸基のモル数を(d)、スルホン酸基のモル数を(e)とするとき、(d)/{(d)+(e)}×100の値は例えば0.01〜100であり、0.1〜50であることがより好ましく、0.1〜20であることがさらに好ましく、プロトン伝導度を高く保持する観点からは0.1〜7未満であることがよりさらに好ましく、耐久性を向上させる観点からは3〜10であることがさらに好ましい。(d)/{(d)+(e)}×100の値を上記範囲とすることにより、プロトン伝導度が高く、かつ発電性能を高くすることができ、耐久性を向上させることができる。
本発明で使用されるポリアリーレン系共重合体は、例えば下記に示すA1法、B1法、C1法の3通りの方法を用いて製造することができる。
例えば、特開2004−137444号公報に記載の方法で、ホスホン酸基を有する構造単位となるホスホン酸化合物と、必要に応じてスルホン酸基を有する構造単位となるスルホン酸エステルと、芳香族構造を有する構造単位となるモノマー、またはオリゴマーとを共重合させ、ホスホン酸エステル基を脱エステル化、ホスホン酸塩は脱イオン化し、スルホン酸エステル基はスルホン酸基にそれぞれ変換することにより合成することができる。ただし、前述の(d)/((d)+(e))×100の値が100であるポリアリーレン系共重合体を合成する場合には、以上の合成方法において、スルホン酸基を有する構造単位となるスルホン酸エステルを使用せずに合成する。
ホスホン酸基を有する構造単位は、ポリアリーレン系共重合体の重合原料として、例えば、下記一般式(1−1)あるいは(1−2)で表される芳香族化合物を使用することにより製造することができる。
R32は、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリール基、金属イオン、オニウムイオン、水素を示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。フッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられる。アリル基としては、プロペニル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。このうち、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基が好ましい。
Xはフッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2Rb(ここで、Rbはアルキル基、フッ素置換アルキル基またはアリール基を示す)から選ばれる原子または基を示す。このうち、塩素、臭素が好ましい。
式(1−2)で表される構造の具体例としては、下記に示される構造が挙げられる。
本発明のポリアリーレン系共重合体は、スルホン酸基を有する構造単位を有していてもよい。スルホン酸基を有する構造単位は、ポリアリーレン系共重合体の重合原料として、例えば、下記式(3−3)で示されるスルホン酸エステル類を使用することにより導入することができる。
Zは、−O−、−S−、直接結合、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CH2)l−(lは1〜10の整数である)、−C(CH3)2−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。
上記式(3−3)で表されるモノマーは、好ましくは下記式(3−4)で表される構造を有する。
芳香族構造を有する構造単位、下記式(4−2)からなるモノマーから誘導される。
芳香族構造を有する構造単位は、ポリアリーレン系共重合体の重合原料として、例えば、下記一般式(4−3)で表されるオリゴマーを使用することにより得られる。
A、Dは独立に直接結合または、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CF2)l−(lは1〜10の整数である)、−(CH2)l−(lは1〜10の整数である)、−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびハロゲン化炭化水素基を示す)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、
Bは独立に酸素原子または硫黄原子であり、
R1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部またはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基、ニトリル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。
s、tは0〜4の整数を示し、rは0または1以上の整数を示す。]
上記式(4−3)で表されるオリゴマーの具体的な例としては、下記が挙げられる。
目的のポリアリーレン系共重合体を得るためは、まず、上記一般式(1)で表される構造単位となりうる上記一般式(1−1)、(1−2)で表されるモノマーと、上記一般式(3-1)で表される構造単位となりうる一般式(3-4)で表されるモノマーと、上記一般式(4)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマーの前駆体すなわち一般式(4-2)または(4-3)とを共重合させ、前駆体のポリアリーレンを得ることが必要である。この共重合は、触媒の存在下に行われるが、この際使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、(1)遷移金属塩および配位子となる化合物(以下、「配位子成分」という。)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、ならびに(2)還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために、遷移金属塩以外の塩を添加してもよい。
(1)少量の塩酸を含む過剰量の水またはアルコールに、上記ポリアリーレンを投入し、5分間以上撹拌する方法
(2)トリフルオロ酢酸中で上記ポリアリーレンを80〜120℃程度の温度で5〜10時間程度反応させる方法
(3)ポリアリーレン中のスルホン酸エステル基(−SO3R)、ホスホン酸エステル基1モルに対して1〜9倍モルのリチウムブロマイドを含む溶液、例えばN−メチルピロリドンなどの溶液中で上記ポリアリーレンを80〜150℃程度の温度で3〜10時間程度反応させた後、塩酸を添加する方法
などを挙げることができる。
なお、後述するB1およびC1法のように、スルホン化ないしアルキルスルホン酸基を直接導入する際には、あらかじめ上記のように、法で、ホスホン酸エステル基やホスホン酸塩基を加水分解ないしイオン交換していてもよく、またスルホン酸基を導入後、ホスホン酸エステル基やホスホン酸塩基を加水分解ないしイオン交換していてもよい。
例えば、特開2001−342241号公報に記載の方法で、上記一般式(1-1)または(1-2)で表されるホスホン酸化合物と、上記一般式(3-1)で表される骨格を有しスルホン酸基、スルホン酸エステル基を有しないモノマーと、上記一般式(4)で表される構造単位となりうるモノマー、またはオリゴマー、すなわち一般式(4-2)または(4-3)とを共重合させ、この重合体を、スルホン化剤を用いて、スルホン化することにより合成することもできる。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極電解質は、上記ポリアリーレン系共重合体以外に、酸化防止剤、硫酸、リン酸などの無機酸、リン酸ガラス、タングステン酸、リン酸塩水和物、β-アルミナプロトン置換体、プロトン導入酸化物等の無機プロトン伝導体粒子、カルボン酸を含む有機酸、スルホン酸を含む有機酸、ホスホン酸を含む有機酸、適量の水などを添加されていてもよい。
本発明の電極ワニスは上記固体高分子型燃料電池用電極電解質が溶媒中に分散ないし溶解したものであり、電極ペーストは、上記電極電解質、触媒粒子および溶媒を含むペーストであり、これらには必要に応じて分散剤、炭素繊維などの他の成分を含んでいてもよい。
触媒粒子は、触媒が、カーボン、金属酸化物の担体に担持されたもの、または、触媒の単体からなる。
本発明の電極ワニス、電極ペーストに用いられる溶媒としては、上記固体高分子型燃料電池用電極電解質を溶解または分散する溶媒であればよく、特に限定されるものではない。また、1種類単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。触媒等の電極材料と混合してペーストを作製する前に、前記固体高分子型燃料電池用電極電解質を下記溶媒に溶解したワニスを調製しておくとハンドリングが容易になる。
本発明の電極ペーストやワニスには、必要に応じてさらに分散剤を添加してもよい。このような分散剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。
本発明の電極ペーストには、必要に応じてさらに炭素繊維を添加することができる。このような炭素繊維しては、レーヨン系炭素繊維、PAN系炭素繊維、リグニンポバー系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維等を用いることができ、好ましくは、気相成長炭素繊維である。
本発明の電極ペーストやワニスには、必要に応じてさらに他の成分を添加することができる。たとえば、フッ素系ポリマーやシリコン系ポリマーなどの撥水剤を添加してもよい。撥水剤は生成する水を効率よく排出する効果を奏し、発電性能の向上に寄与する。
本発明の電極ペースト全量に対して、触媒粒子の含有量は1〜20質量%、好ましくは3〜15質量%であり、固体高分子型燃料電池用電極電解質の含有量は0.5〜30質量%、好ましくは1〜15質量%であり、溶媒の含有量は50〜95質量%、好ましくは70〜90質量%である。また、必要に応じて用いられる分散剤の含有量は0〜10質量%、好ましくは0〜2質量%であり、炭素繊維の含有量は0〜20質量%、好ましくは1〜10質量%である。なお、上記成分の含有量の合計が、100質量%を超えることはない。
上記分散剤の含有量が、0〜10質量%の範囲内にあると保存安定性に優れた電極ペーストや電極ペーストが得られる。
上記炭素繊維の含有量が、0〜20質量%の範囲内にあると、電極反応率の低下を抑制できる。
本発明の電極ペースト及び電極ワニスは、たとえば、上記各成分を上記含有量となるように混合し、従来公知の方法で混練することにより調製することができる。
本発明に係る固体高分子型燃料電池用電極は、上記電極ペーストを転写基材上に塗布し、溶媒を除去することにより得られる。すなわち、本発明の電極は、上記本発明の固体高分子型燃料電池用電極電解質および上記触媒粒子を含む。
本発明の膜−電極接合体(以下「MEA」ともいう)では、上記電極が固体高分子電解質膜の少なくとも片面に備えられており、上記転写基材上に形成された電極層を、該電解質膜の少なくとも片面、好ましくは両面に転写することにより得られる。
また、固体高分子型燃料電池を製造する場合には、優れたプロトン伝導性と熱水耐性、加工性とを有するため、上述した構成単位(1)、(3-1)および(4)を含むポリアリーレン系共重合体から得られる固体高分子型燃料電池用電極電解質と上記固体高分子電解質膜とが好適に用いられる。
以下、実施例を挙げ本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の合成実施例に限定されるものではない。また、実施例において、「%」とは特に断りのない限り「質量%」を意味する。
各合成実施例・合成比較例で得られた共重合体をN−メチルピロリドン緩衝溶液(以下、NMP緩衝溶液という。)に溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。NMP緩衝溶液は、NMP(3L)/リン酸(3.3mL)/臭化リチウム(7.83g)の比率で調整した。
ポリアリーレン系共重合体の重合反応に使用した原料全体の中に存在するホスホン酸基の量とスルホン酸基の量の比率である。
得られたポリアリーレン系共重合体の水洗水がpH4〜6になるまで洗浄して、フリーの残存している酸を除去後、十分に洗浄し、乾燥後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解し、フェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液にて滴定し、中和点からイオン交換容量を求めた。
交流抵抗は、5mm幅の短冊状の試料膜の表面に、白金線(f=0.5mm)を押し当て、恒温恒湿装置中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンス測定から求めた。すなわち、85℃、相対湿度90%の環境下で交流10kHzにおけるインピーダンスを測定した。抵抗測定装置として、(株)NF回路設計ブロック製のケミカルインピーダンス測定システムを用い、恒温恒湿装置には、(株)ヤマト科学製のJW241を使用した。白金線は、5mm間隔に5本押し当てて、線間距離を5〜20mmに変化させ、交流抵抗を測定した。線間距離と抵抗の勾配から、膜の比抵抗を算出し、比抵抗の逆数からプロトン伝導度を算出した。
比抵抗R(Ω・cm)=0.5(cm)×膜厚(cm)×抵抗線間勾配(Ω/cm)
3質量%の過酸化水素に硫酸鉄・七水和物を鉄イオンの濃度が5ppmになるようにフェントン試薬を調製した。50mlのガラス製サンプル管に50gのフェントン試薬を採取し、2cm×3cmに切削した高分子電解膜を投入後、密栓後、45℃の恒温水槽に浸漬させ、24時間のフェントン試験を行った。フェントン試験後、フィルムを取り出し、イオン交換水にて水洗後、25℃・相対湿度50%で12時間放置し、各種物性測定を行った。フェントン試験における重量保持率は、下記の数式により算出した。
フェントン試験における重量保持率(%)=フェントン試験後のフィルム重量/フェントン試験前のフィルム重量×100
3重量%の過酸化水素に硫酸鉄・七水和物を鉄イオンの濃度が5ppmになるようにフェントン試薬を調製した。50mlのガラス製サンプル管に50gのフェントン試薬を採取し、2cm×3cmに切削した高分子電解膜を投入後、密栓後、45℃の恒温水槽に浸漬させ、24時間のフェントン試験を行った。フェントン試験後、フィルムを取り出し、イオン交換水にて水洗後、25℃・相対湿度50%で12時間放置し、フェントン試験前後での重量保持率およびイオン交換容量保持率の測定を行った。フェントン試験における重量保持率は、下記の数式により算出した。
フェントン試験における重量保持率(%)=フェントン試験後のフィルム重量/フェントン試験前のフィルム重量×100
フェントン試験におけるイオン交換容量保持率(%)=フェントン試験後のイオン交換容量/フェントン試験前のイオン交換容量×100
フィルムを2.0cm×3.0cmにカットし秤量して、試験用のテストピースとした。24℃、相対湿度(RH)50%条件下にて状態調整した後、このフィルムを、ポリカーボネート製の250ml瓶に入れ、そこに約100mlの蒸留水を加え、プレッシャークッカー試験機(HIRAYAMA MFS CORP製、 PC−242HS)を用いて、120℃で24時間加温した。試験終了後、各フィルムを熱水中から取り出し、軽く表面の水をキムワイプで拭き取り、寸法を測定し膨潤率を求めた。この膜を24℃、RH50%条件下で状態調整し、水を留去して、熱水試験後の膜の寸法を測定し収縮率を求めた。膨順収縮量は、下記式にしたがって求めた。
膨潤率=(含水時の2cm辺の寸法/2+含水時の3cm辺の寸法/3)×100/2
収縮率=(乾燥時の2cm辺の寸法/2+乾燥時の3cm辺の寸法/3)×100/2
面内寸法変化率=(膨潤率−100)+(100−収縮率)
撹拌羽根、温度計、窒素導入管を取り付けた2Lの3口フラスコに1,4−ジクロロベンゼン134.0g(0.91mol)、3−ブロモベンゾイルクロライド100.0g(0.46mol)、塩化アルミニウム121.5g(0.91mol)を取り、135℃で4時間撹拌した。反応終了後、氷水に滴下し、トルエンから抽出を行った。1%炭酸水素ナトリウム水溶液により中和した後、飽和食塩水で洗浄し、濃縮を行った。ヘキサンから再結晶を行うことにより、下記式(30−1)を得た。収量96.1gであった。
撹拌羽根、温度計、窒素導入管を取り付けた1Lの3口フラスコに(30−1)33.0g(0.1mol)、2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン13.43g(0.11mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム5.78g(5mmol)、トリエチルアミン11.13g(0.11mol)を取り、80℃で3時間撹拌した。反応終了後、析出した塩をろ過で取除き溶媒を濃縮した。トルエンから再結晶で精製を行い、下記式(30−3)を得た。収量20.4gであった。
攪拌機、冷却管を備えた3Lの三口フラスコに、クロロスルホン酸(233.0g、2mol)を加え、続いて2,5−ジクロロベンゾフェノン(30−4)(100.4g、400mmol)を加え、100℃のオイルバスで8時間反応させた。所定時間後、反応液を砕氷(1000g)にゆっくりと注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを留去し、淡黄色の粗結晶(3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸クロリド)(30−5)を得た。粗結晶は精製することなく、そのまま次工程に用いた。
撹拌機、温度計、冷却管、Dean−Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三つ口のフラスコに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン67.3g(0.20mol)、4,4’−ジクロロベンゾフェノン(4,4’−DCBP)60.3g(0.24mol)、炭酸カリウム71.9g(0.52mol)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)300mL、トルエン150mLをとり、オイルバス中、窒素雰囲気下で加熱し撹拌下130℃で反応させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean−Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。反応温度を130℃から徐々に150℃まで上げた。その後、反応温度を徐々に150℃まで上げながら大部分のトルエンを除去し、150℃で10時間反応を続けた後、4,4’−DCBP10.0g(0.040mol)を加え、さらに5時間反応した。得られた反応液を放冷後、副生した無機化合物の沈殿物を濾過除去し、濾液を4Lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し乾燥後、テトラヒドロフラン300mLに溶解した。これをメタノール4Lに再沈殿し、目的の化合物95g(収率85%)を得た。
攪拌機、温度計、Dean−stark管、窒素導入管、冷却管をとりつけた1Lの三口フラスコに、2,6−ジクロロベンゾニトリル154.8g(0.9mol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン269.0g(0.8mol)、炭酸カリウム143.7g(1.04mol)をはかりとった。窒素置換後、スルホラン1020mL、トルエン510mLを加えて攪拌した。オイルバスで反応液を150℃で加熱還流させた。反応によって生成する水はDean−stark管にトラップした。3時間後、水の生成がほとんど認められなくなったところで、トルエンをDean−stark管から系外に除去した。徐々に反応温度を200℃に上げ、3時間攪拌を続けた後、2,6−ジクロロベンゾニトリル51.6g(0.3mol)を加え、さらに5時間反応させた。
上記一般式(30−2)で表される化合物6.13g(16mmol)と、上記一般式(30−6)で表される化合物 31.75g(79mmol)と前記式(30−7)で合成した疎水性ユニット12.32g(1mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.96g(3.0mmol)、トリフェニルホスフィン10.49g(40mmol)、ヨウ化ナトリウム0.45g(3.0mmol)、亜鉛15.69g(240mmol)の混合物中に乾燥したDMAc166mLを窒素下で加えた。
上記一般式(30−2)で表される化合物6.10g(15.8mmol)と、上記一般式(30−6)で表される化合物 31.62g(78.8mmol)と疎水性ユニットを前記式(30−8)12.3g(1.5mmol)、臭化リチウム41.9g(482.1mmol)を用いる以外は合成実施例1と同様に行った。
上記一般式(30−3)で表される化合物2.92g(7.86mmol)、上記一般式(30−6)で表される化合物36.34g(90.6mmol)、疎水性ユニットを前記式(30−8)12.8g(1.56mmol)、DMAC172ml、臭化リチウム83.10g(956.8mmol)を用いる以外は合成実施例2と同様に行った。
得られたポリマーの分子量をGPCで測定した結果、Mnは77,000、Mwは274,000であった。イオン交換容量は2.45meq/gであった。
上記一般式(30−3)で表される化合物2.19g(5.91mmol)、上記一般式(30−6)で表される化合物37.13g(92.5mmol)、臭化リチウム81.56g(939.1mmol)を用いる以外は合成実施例3と同様に行った。
得られたポリマーの分子量をGPCで測定した結果、Mnは99,000、Mwは310,000であった。イオン交換容量は2.45meq/gであった。
上記一般式(30−3)で表される化合物1.46g(3.94mmol)、上記一般式(30−6)で表される化合物37.92g(94.5mmol)、臭化リチウム80.02g(921.4mmol)を用いる以外は合成実施例3と同様に行った。
得られたポリマーの分子量をGPCで測定した結果、Mnは82,000、Mwは241,000であった。イオン交換容量は2.51meq/gであった。
上記一般式(30−3)で表される化合物0.73g(1.97mmol)、上記一般式(30−6)で表される化合物38.71g(96.5mmol)、臭化リチウム78.48g(903.7mmol)を用いる以外は合成実施例3と同様に行った。
得られたポリマーの分子量をGPCで測定した結果、Mnは84,000、Mwは229,000であった。イオン交換容量は2.54meq/gであった。
上記(30−13)で表される化合物37.50g(93.45mmol)と、上記(30−6)で表される化合物1.31g(4.92mmol)、上記(30−8)で表される化合物12.23g(1.63mmol)、臭化リチウム40.37g(465mmol)へ変更した以外は、合成実施例1と同様にして下記式(30−14)で表されるポリマーを得た。得られたポリマーの分子量をGPCで測定した結果、イオン交換容量を表1に示す。
上記(30−12)で表される化合物37.50g(93.45mmol)と、上記(30−6)で表される化合物1.31g(4.92mmol)、上記(30−8)で表される化合物12.23g(1.63mmol)、臭化リチウム40.37g(465mmol)へ変更した以外は、合成実施例1と同様にして下記式(30−15)で表されるポリマーを得た。得られたポリマーの分子量をGPCで測定した結果、イオン交換容量を表1に示す。
上記一般式(30−6)で表される化合物 39.57g(98.6mmol)と前記式(30−7)で合成した疎水性ユニット15.68g(1.4mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.62g(4.0mmol)、トリフェニルホスフィン10.49g(40mmol)、ヨウ化ナトリウム0.45g(3.0mmol)、亜鉛15.69g(240mmol)の混合物中に乾燥したDMAc182mLを窒素下で加えた。
上記一般式(30−6)で表される化合物 39.37g(98.1mmol)と前記式(30−8)で合成した疎水性ユニット15.58g(1.9mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.62g(4.0mmol)、トリフェニルホスフィン10.49g(40mmol)、ヨウ化ナトリウム0.45g(3.0mmol)、亜鉛15.69g(240mmol)の混合物中に乾燥したDMAc181mLを窒素下で加えた。
一般式(30−6)で表される化合物 39.53g(98.5mmol)と前記式(30−8)で合成した疎水性ユニット12.3g(1.5mmol)を用いる以外は合成比較例2と同様に行った。
得られたポリマーの分子量をGPCで測定した結果、Mnは71,000、Mwは196,000であった。イオン交換容量は2.51meq/gであった。
(合成比較例4)
特許第3841168号に従って、下記(40−3)を合成した。
また、合成実施例4および合成比較例4に示すように、ホスホン酸基が保護されている状態ではなく、脱保護することにより、イオン交換容量を低下させず、プロトン伝導度を維持し、かつ、ラジカル耐性を向上させることができた。
また、合成実施例1〜9に示すように、面内寸法安定率が低く、熱水試験時における寸法安定性に優れることがわかる。
上記一般式(30−6)で表される化合物に替えて上記一般式(30−3)で表される化合物36.54g(98.44mmol)、臭化リチウム153.9g(1.77mol)を用いる以外は合成実施例3と同様に行った。
上記一般式(30−6)で表される化合物に替えて上記一般式(40−5)で表される化合物45.86g(99mmol)、疎水性ユニットを前記式(30−8)8.2g(1.0mmol)、臭化リチウム154.8g(1.78mol)を用いる以外は合成実施例9と同様に行った。
Claims (13)
- 下記一般式(1)で表される構造単位を含むポリアリーレン系共重合体を含むことを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極電解質。
Ar31、Ar32、Ar33は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環若しくは含窒素複素環を有する2価または3価の有機基又は水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されたこれらの有機基を示す。
R31は、直接結合、−O(CH2)p−、−O(CF2)p−、−(CH2)p−、−(CF2)p−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す(pは、1〜12の整数を示す)。
eは0〜10の整数を示し、
fは1〜5の整数を示し、
gは0〜4の整数を示し、hは0〜1の整数を示す。
構造単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構造単位との接続を意味する。) - 下記一般式(2)で表される構造単位を含む請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用電極電解質。
R31は、直接結合、−O(CH2)p−、−O(CF2)p−、−(CH2)p−、−(CF2)p−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す(pは、1〜12の整数を示す)。
eは0〜10の整数を示し、
fは1〜5の整数を示し、
gは0〜4の整数を示し、
hは0〜1の整数を示す。
構造単位の端部における単線のうち、一方に置換基が表示されていないものは隣り合う構造単位との接続を意味する。) - さらに、スルホン酸基を有する構造単位を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子型燃料電池用電極電解質。
- 前記スルホン酸基を有する構造単位が、下記一般式(3−2)で表されるスルホン酸基を有する構造単位を含むことを特徴とする請求項3に記載の固体高分子型燃料電池用電極電解質。
- さらに、
下記一般式(4−1)で表される芳香族構造を有する構造単位を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極電解質。
- ポリアリーレン系共重合体1モルが有するホスホン酸基のモル数を(d)、スルホン酸基のモル数を(e)とするとき、(d)/{(d)+(e)}×100の値が0.01〜100であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極電解質。
- 前記(d)/{(d)+(e)}×100の値が、0.1〜7未満であることを特徴とする請求項6に記載の固体高分子型燃料電池用電極電解質。
- イオン交換容量が、0.5〜3.5meq/gであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極電解質。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極電解質を含むことを特徴とする電極ワニス。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極電解質と触媒粒子を含むことを特徴とする電極ペースト。
- ペーストを構成する溶媒が水と少なくとも1種類以上の有機溶剤との混合溶媒であり、その混合溶媒がプロトン伝導膜の貧溶媒であることを特徴とする請求項10に記載の電極ペースト。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極電解質と触媒粒子とを含むことを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極。
- 請求項12に記載の固体高分子型燃料電池用電極を、高分子電解質膜の少なくとも片面に備える膜−電極接合体。
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