以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例である車輪装置1の側面図であり、図2は、車輪装置1の平面図であり、図3は、車輪装置1の正面図である。なお、車輪装置1の進行方向(移動方向)は、図1及び図2の左右方向を、図3の紙面に対する垂直方向を、それぞれ意味する。
図1から図3に示すように、車輪装置1は、1つの主車輪2と、2つの大径補助輪3,3と、2つの小径補助輪4,4と、これらの主車輪2と4個の補助輪3,3,4,4とを相互に連結する揺動アーム5とを備えている。この車輪装置1は、取付対象物10の下端部の幅方向両側(図3左右両側)、即ち、取付対象物10の進行方向に対する直交方向の両側にそれぞれ取り付けられて使用されるものである。
ここで、取付対象物10は、例えば、車輪付きキャリーケース(キャリーバック)、手荷物運搬用のキャリーカート、その他の車輪を介して移動可能な運搬用器具であり、本実施例では手荷物運搬用のキャリーカートに適用した場合について説明している。このキャリーカート10は、その幅方向両側(図3左右両側)に車輪装置1をそれぞれ取り付けるためのメインビーム11を備えており、このメインビーム11の軸方向両端(図3左右両側)には、車輪装置1の主車輪2の車軸(以下「主車軸」という。)2aが同軸状に一体的に形成されている。
このキャリーカート10は、バックフレーム12を備えている。このバックフレーム12は、その下端部がメインビーム11に設けられる主車軸2aに揺動可能に連結されており、このメインビーム11との連結部分から垂直上方に延設されている。
また、このバックフレーム12の上端部(先端部)には使用者により把持されるハンドル(図示せず。)が設けられており、その下端部には荷物を載置するためのベースフレーム13が略水平に延設されている。なお、ベースフレーム13とメインビーム11とは別体でも良く、メインビーム11をベースフレーム13の一部としても良い。
図1に示すように、車輪装置1の主車輪2は、その車軸2aによってキャリーカート10に対して回動可能に支持される側面視円形状の車輪である。この主車軸2aは、主車輪2の円中心部に軸通されており、揺動アーム5の長手方向(進行方向に一致する方向(図1左右方向)をいう。以下同じ。)中央部にも軸通されている。
2つの大径補助輪3,3は、いずれも主車輪2と同じ外径を有する大径サイズの側面視円形状の車輪であり、2つの小径補助輪4,4は、いずれも主車輪2より外径の小さな小径サイズの側面視円形状の車輪であり、各小径補助輪4の外径は、主車輪2又は大径補助輪3の外径の1/2とされている。
揺動アーム5は、その長手方向中央にある主車軸2aの軸通部分から車輪装置1の進行方向一方側及び他方側(図1左右両側)へそれぞれ水平状に延設されており、この各延設部分の先端部が斜め上方へ向けて傾斜角度28°〜29°で略く字形に曲折形成されている。また、この揺動アーム5は、主車軸2aの中心を通る垂直線(「垂直中心線」ともいう。)y1に対して線対称な形状に形成されている。
2つの大径補助輪3,3及び2つの小径補助輪4,4は、主車軸2aの垂直中心線y1に対して対称となるように、揺動アーム5における進行方向両側部分に大径補助輪3及び小径補助輪4の組が一組ずつ配設されている。具体的には、大径補助輪3は、揺動アーム5の各曲折部分に1つずつ回動可能に車軸3aを介して取着され、小径補助輪4は、揺動アーム5の各延設部分の先端部に1つずつ回動可能に車軸4aを介して取着されている。
2つの大径補助輪3,3によれば、その進行方向一方側(図1左側)にある大径補助輪3と主車輪2との車軸間距離L1、及び、その進行方向他方側(図1右側)にある大径補助輪3と主車輪2との車軸間距離L2は等しくされている(L1=L2)。また、これらの大径補助輪3,3の車軸間距離L3は、主車輪2又は各大径補助輪3の半径を3倍した長さに等しく、大径補助輪3,3の間には、主車輪2又は各大径補助輪3の半径と同じ長さの間隔Wが進行方向に空けられている。
また、各大径補助輪3の車軸3aの中心位置及び主車軸2aの中心位置は平坦な走行路面21からの高さが等しくされている。そして、これらの主車輪2及び2つの大径補助輪3,3は、いずれも半径が同じなため、走行路面21が平坦な場合に同時接地するようになっている。
各小径補助輪4とそれに隣り合う大径補助輪3との車軸間距離L4,L5は大径補助輪3の半径より若干長くなっており、各小径補助輪4は、その外周下端が大径補助輪3の車軸3aの中心を通る水平線(「水平中心線」ともいう。)x1とほぼ同じ高さとなっている。
また、揺動アーム5が水平状態、即ち、主車輪2及び2つの大径補助輪3,3が同時接地して水平に並設された状態で、各小径補助輪4の車軸4aの中心位置は、主車輪2及び大径補助輪3の車軸3aの中心位置に比べて高く、かつ、小径補助輪4の垂直線y2との接点P1が大径補助輪3の垂直線y3との接点P2に比べて高くなっており、結果、各小径補助輪4は、揺動アーム5の揺動中心となる車軸2aの中心よりも高い位置で段差20の壁面22と当接されることとなる。
具体的には、個々の小径補助輪4に関する車軸4aの中心位置の高さ(接点P1の高さ)H1は、個々の大径補助輪3に関する車軸3aの中心位置の高さ(接点P2の高さ)H2の約1.5倍となっている。このため、主車輪2及び2つの大径補助輪3,3が平坦な走行路面21に接地した状態にあって、各小径補助輪4は同じ走行路面21に対して接地不能となるとともに、当該小径補助輪4,4のいずれか一方がまず初めに段差20に乗り上がるようになる。
なお、段差20は、キャリーカート10の車輪装置1が当初接地している平坦な走行路面(「段差下段面」ともいう。)21から垂直に立設された壁面(「段差壁面」ともいう。)22が、その壁面の上端部で別の平坦な走行路面(「段差上段面」ともいう。)23と直角に交差して角部(「段差角部」ともいう。)24を成したものである。
また、2つの小径補助輪4,4及び2つの大径補助輪3,3は、主車軸2aの垂直中心線y1上において主車輪2の直上にある1つの点であって当該点で各大径補助輪3の車軸3aの中心を通る中心線が直角交差するもの(以下「仮想中心点P3」という。)を想定した場合、その仮想中心点P3を中心とする仮想円Cに内接する位置に配設されている。結果、これら4個の補助輪3,3,4,4が段差20(図5(c)参照。)と接触した状態は、仮想円Cに等しい円形状の車輪が当該段差20と接触したときの状態に近づけられる。
また、このようにして4個の補助輪3,3,4,4を配設することにより、車輪装置1の進行方向一方(図1左側)にある小径補助輪4は、それに隣り合う大径補助輪3よりも揺動アーム5の延設部分の先端部の傾斜方向(図1左上方向)に湾出されており、この湾出量が当該小径補助輪4の半径の長さより若干長くなっている。一方、車輪装置1の進行方向他方(図1右側)にある小径補助輪4は、それに隣り合う大径補助輪3よりも揺動アーム5の延設部分の先端部の傾斜方向(図1右上方向)に湾出されており、この湾出量が当該小径補助輪4の半径の長さより若干長くなっている。
このように配設された小径補助輪4は、大径補助輪3よりも車輪装置1の進行方向両側へそれぞれ湾出されるので、真っ先に段差壁面22に当接されやすく、かつ、段差上段面23に乗り上がって段差角部24に引っ掛かりやすくなっている。しかも、小径補助輪4は、その車軸4aの中心位置が大径補助輪3の車軸3aの中心位置に比べても高くて、かつ、大径補助輪3よりも小サイズであるので、大径補助輪3に比べて回転抵抗も小さくて段差壁面22を転動しやすく、段差上段面23にも更に乗り上がりやすくなっている。
また、揺動アーム5及びこれに取着される4個の補助輪3,3,4,4並びに当該各補助輪用の車軸3a,3a,4a,4a、その他の揺動アーム5に補助輪3,3,4,4を取着する部品を含めた部品群(「揺動アームユニット」という。)6は、全体として主車軸2aの垂直中心線y1に対して対称な重量配分がなされている。つまり、揺動アームユニット6は、その重心が主車軸2aの垂直中心線y1上に位置しており、その姿勢が水平状態を維持するようになっている。
さらに、揺動アーム5には、その中心部に相当する主車軸2aの軸通部分の直下にウェイト部5aが設けられている。このウェイト部5aは、揺動アームユニット6の重心が主車軸2aの中心位置よりも下方に所定量偏移した位置となるよう調整するための錘として機能するものである。このウェイト部5aは、主車軸2aの中心位置の直下に安定点(復帰位置)を有しており、この安定点に復帰するように揺動アーム5に対して主車軸2aを中心とした回転力を作用させる。
よって、揺動アームユニット6が傾斜した場合には、このウェイト部5aが主車軸2aの中心直下にある安定点P4に復帰しようとすることによる回転力を、揺動アーム5に対して作用させることができるので、その結果、揺動アームユニット6が、図1に示す状態から上下反転して引っ繰り返ることを防止でき、かつ、もしそのような状態となったときには反転復帰を容易に行うことができる。
図2に示すように、主車輪2及び大径補助輪3,3はいずれも車輪幅が等しく、小径補助輪4,4は主車輪2よりも車輪幅が小さく形成されている。また、各小径補助輪4の車輪幅は互いに等しくなっている。また、揺動アーム5は小径補助輪4と幅が略等しい肉厚状に形成されており、上記したように、この揺動アーム5の長手方向中央部に主車軸2aが軸通されている。
さらに、主車軸2aは、進行方向に対する直交方向に向かって揺動アーム5を貫通しており、揺動アーム5に対して相対的に空転可能となっている。このため、揺動アーム5は、この主車軸2aを中心として(図1の矢印方向に向けて)揺動可能となる。
また、主車軸2aの基端部は車輪装置1のキャリーカート10のメインビーム11と一体的に連結されており、主車軸2aの先端部には揺動アーム5の外れ止め用の止めナット7が螺合されている。この主車軸2aの基端側には主車輪2が回動可能に支持されており、揺動アーム5は、この主車輪2と止めナット7との間に配設されている。
揺動アーム5における主車輪2の配設側面には主車輪2とともに2つの小径補助輪4,4も配設されており、一方の小径補助輪4、主車輪2及び、他方の小径補助輪4は、この順序で進行方向に一列状に並んで列設されている。一方、揺動アーム5における主車輪2の反配設側面には残る2つの大径補助輪3,3が配設されており、これらの2つの大径補助輪3,3は、進行方向に一列状に並んで列設されている。
このため、揺動アーム5における長手方向両端部からは主車輪2の配設側へ向けて小径補助輪4の車軸4aがそれぞれ突出されており、この各軸4aに小径補助輪4が回動可能に取着されている。また、揺動アーム5の長手方向一方側(図2左側)にある小径補助輪4と主車輪2との車軸4a,2a間の部分、及び、揺動アーム5の長手方向他方側(図2右側)にある小径補助輪4と主車輪2との車軸4a,2a間の部分からは、主車輪2の反配設側(図2下側)へ向けて大径補助輪3の車軸3aがそれぞれ突出されている。さらに、各大径補助輪3の車軸3aの軸径は主車軸2aの軸径と同じであり、各小径補助輪4の車軸4aの軸径は主車軸2aの軸径より小さくされている。
また、2つの大径補助輪3,3は、主車輪2に対し、進行方向に直交する方向において異なる位置にある。このため、主車輪2及び2つの大径補助輪3,3は、平坦な走行路面21に同時接地する場合、キャリーカート10を三点支持により安定支持するようになっている。
このように、上記した主車輪2、大径補助輪3,3及び小径補助輪4,4は、平面視千鳥状に配設されており、その進行方向において互い重なり合うように配設され(図1参照。)、進行方向に前後する車輪同士の車軸間距離L1〜L5の短縮化が図られている。このようにすることで、車輪装置1のうち進行方向に隣り合っている車輪同士間にできる凹み8(図1参照。)を小さくでき、車輪装置1が段差20を乗り越える際に当該凹み8に段差角部24が填り込むことによる振動を抑制している。
図3に示すように、車輪装置1は、キャリーカート10の進行方向に対する直交方向両側にそれぞれ取り付けられる。各車輪装置1において、主車輪2と各大径補助輪3との間には、進行方向に対する直交方向に所定の間隔wが空けられており、この所定の間隔wは、主車輪2又は各大径補助輪3の車輪幅より大きくされている。かかる間隔wがあることで、これらの主車輪2及び大径補助輪3,3の3つの車輪を同時に転動させてキャリーカート10を運搬する際の走行安定性を向上できる。
次に、図4を参照して、上記のように構成された車輪装置1の動作について説明する。図4(a)〜図4(f)は、段差高さHが主車輪2の半径の約1.1倍である場合に車輪装置1が段差20を乗り越える過程を段階的に図示した動作説明図であり、図5(a)〜図5(f)は、段差高さHが主車輪2の半径の約2倍である場合に車輪装置1が段差20を乗り越える過程を段階的に図示した動作説明図である。
図4(a)に示すように、キャリーカート10のバックフレーム12は、ハンドルが使用者により把持されることで前方(図4(a)左側)傾けられ、前方斜め上方(図4(a)中の矢印方向。以下同じ。)へ引っ張られる。すると、このバックフレーム12を介して車輪装置1の主車軸2aにバックフレーム12の傾斜方向に一致する方向の外力が加えられ、この外力の水平成分が車輪装置1を走行させる駆動力となって、キャリーカート10が前方へ移動される。
このキャリーカート10の移動時において、車輪装置1は、主車輪2及び2つの大径補助輪3,3の3つの車輪が同時に接地して転動するので、平坦な走行路面21上を安定走行することができる。しかも、この車輪装置1は、キャリーカート10のバックフレーム12を前方斜め上方へ引っ張って移動させることで、その前方(図4(a)左側)の走行路面21にある段差20をスムーズに乗り越えることができる。
キャリーカート10のバックフレーム12が前方斜め上方へ引っ張られることにより車輪装置1が段差20を越える場合、車輪装置1の前側(図4(a)〜図4(f)の左側及び図5(a)〜図5(f)の左側をいう。以下同じ。)にある小径補助輪4(A)は、段差壁面22に当接した後、その段差壁面22を上方に向かって転動し、図4(b)に示すように、段差20を越えて段差上段面23に乗り上がる。
このとき、車輪装置1の後側(図4(a)〜図4(f)及び図5(a)〜図5(f)の右側をいう。以下同じ。)にある大径補助輪3(B)が、段差下段面21に相当する平坦な走行路面21に当接して段差壁面22側(図4(b)左側)へ向けて転動される。
また、このような動作に伴って、揺動アーム5が主車軸2aを中心として回転され、揺動アーム5の前側部分5Aが上昇され、前側の大径補助輪3(A)及び主車輪2が走行路面21から離反して浮き上がり、前側の小径補助輪4(A)が段差上段面23から離れて、前側の大径補助輪3(A)が段差壁面22に当接される。
それから、図4(c)に示すように、前側の大径補助輪3(A)が段差壁面22を上方へ向けて転動し、かつ、後側の大径補助輪3(B)が段差下段面21を段差壁面22側(図4(c)左側)へ向けて更に転動することにより、揺動アーム5が主車軸2aを中心として更に回転され、揺動アーム5の前側部分5Aが更に上昇され、図4(d)に示すように、前側の大径補助輪3(A)が段差上段面23に乗り上がって、主車輪2が段差角部24と当接する。
それから、主車輪2が転動して段差壁面22を越えて段差上段面23に乗り上がると、揺動アーム5が主車軸2aを中心に逆方向に回転されて、図4(e)に示すように、後側の大径補助輪3(B)が段差20を乗り越え、図4(f)に示すように、最終的に車輪装置1全体が段差上段面23に乗り上がって、キャリーカート10の車輪装置1の段差越えが完了する。
図5(a)に示すように、図4に示した段差20よりも高い段差20を乗り越える場合、車輪装置1の前側の小径補助輪4(A)が段差壁面22に当接すると、図5(b)に示すように、その段差壁面22を上方に向かって転動する。このとき、車輪装置1の後側の大径補助輪3(B)は、段差下段面21に相当する平坦な走行路面21に当接したまま段差壁面22側(図5(b)左側)へ向けて転動される。
また、このような動作に伴って、揺動アーム5が主車軸2aを中心に回転され、揺動アーム5の前側部分5Aが上昇され、前側の大径補助輪3(A)及び主車輪2が走行路面21から離反して浮き上がり、前側の小径補助輪4(A)が段差上段面23から離れて、前側の大径補助輪3(A)が段差壁面22に当接される。
それから、前側の大径補助輪3(A)が段差壁面22を上方に向けて転動し、かつ、後側の大径補助輪3(B)が段差下段面21を段差壁面22側へ向けて転動することにより、揺動アーム5が主車軸2aを中心に更に回転され、揺動アーム5の前側部分5Aが更に上昇され、図5(c)に示すように、前側の大径補助輪3(A)が段差20を乗り越える。
このあと、主車輪2が段差壁面22に当接して転動すると、揺動アーム5の前側部分5Aが更に上昇されて、図5(d)に示すように、主車輪2が段差角部24にまで達すると、段差下段面21に後側の大径補助輪3(B)及び小径補助輪4(B)の双方が当接した格好となる。このように、不安定に傾いた車輪装置1ではあるが、その後側にある大径補助輪3(B)及び小径補助輪4(B)が同時に段差下段面21に当接する形態で支持されるので、その安定性を維持することができる。
しかも、図5(d)に示すように、揺動アーム5の前側部分5Aが大きく浮き上がった格好で傾斜した車輪装置1によれば、その後側の小径補助輪4(B)は、同じく後側の大径補助輪3(B)よりも更に後方(図5(d)右側)にて段差下段面21に接地しているので、この小径補助輪4(B)の存在によって、車輪装置1が段差20に乗り上がる際に後方に転倒することも防止される。
そして、主車輪2が転動して段差壁面22を越えて段差上段面23に乗り上がると、揺動アーム5が主車軸2aを中心に逆方向に回転されて、図5(e)に示すように、後側の大径補助輪3(B)が段差20を乗り越え、図5(f)に示すように、最終的に車輪装置1全体が段差上段面23に乗り上がって、キャリーカート10の車輪装置1の段差越えが完了する。
なお、車輪装置1は、上記した動作とは逆の動作によって、段差上段面23から段差下段面21へと段差20を下ることもできる。
次に、図6から図11を参照して、上記第1実施例の変形例について説明する。第2実施例の車輪装置50は、上記した第1実施例の車輪装置1に対し、揺動アームの形態を変更したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付し、異なる部分には異なる符号を付して、その説明する。
図6は、第2実施例の車輪装置50の走行形態を示した側面図であって走行形態の揺動アーム55を図示したものであり、図7は、車輪装置50の側面図であって非接地形態の揺動アーム55を図示したものであり、図8は、車輪装置50の平面図であって走行形態の揺動アーム55を図示したものであり、図9は、車輪装置50の正面図であって走行形態の揺動アーム55を図示したものである。
なお、車輪装置50の進行方向(移動方向)は、図6、図7及び図8の左右方向を、図9の紙面に対する垂直方向を、それぞれ意味している。
図6から図9に示すように、車輪装置50は、1つの主車輪2と、2つの大径補助輪3,3と、2つの小径補助輪4,4と、これらの主車輪2と4個の補助輪3,3,4,4とを相互に連結する揺動アーム55とを備えている。この車輪装置50は、取付対象物10の下端部の幅方向両側(図9左右両側)、即ち、取付対象物10の進行方向に対する直交方向の両側にそれぞれ取り付けられて使用されるものである。
取付対象物10は、第1実施例と同様、メインビーム11、バックフレーム12及びベースフレーム13を備えた手荷物運搬用のキャリーカート10であり、そのメインビーム11の軸方向両端(図9左右両側)には、車輪装置50の主車軸2aが同軸状に一体的に形成されている。また、バックフレーム12は、その下端部がメインビーム11に設けられる主車軸2aに揺動可能に連結されており、メインビーム11との連結部分から垂直上方に延設されている。
また、バックフレーム12の上端部(先端部)には使用者により把持されるハンドル(図示せず。)が設けられ、その下端部には荷物を載置するためのベースフレーム13が略水平に延設されている。なお、ベースフレーム13とメインビーム11とは別体でも良く、メインビーム11をベースフレーム13の一部としても良い。
図6に示すように、車輪装置50の主車輪2は、その車軸2aによってキャリーカート10に対して回動可能に支持される側面視円形状の車輪である。この主車軸2aは、主車輪2の円中心部に軸通されており、揺動アーム55(の基部アーム55a)の長手方向(進行方向に一致する方向(図6左右方向)をいう。以下同じ。)中央部にも軸通されている。
2つの大径補助輪3,3は、いずれも主車輪2と同じ外径を有する大径サイズの側面視円形状の車輪であり、2つの小径補助輪4,4は、いずれも主車輪2より外径の小さな小径サイズの側面視円形状の車輪であり、各小径補助輪4の外径は、主車輪2又は大径補助輪3の外径の1/2とされている。
揺動アーム55は、主車軸2aの中心を通る垂直線(「垂直中心線」ともいう。)y1に対して線対称な形状に形成されており、主に、主車軸2aに揺動可能に取着される基部アーム55aと、その基部アーム55aの進行方向両側に揺動可能に連結される一対の先端アーム55b,55bと、先端アーム55b,55bを基部アーム55aに連結する連結軸55c,55cと、先端アーム55b,55bの可動範囲を規制するストッパ片55d,55dとを備えている。
基部アーム55aは、その長手方向中央にある主車軸2aの軸通部分から車輪装置50の進行方向一方側及び他方側(図6左右両側)へそれぞれ水平状に延設されている。一対の先端アーム55b,55bは、基部アーム55aの主車軸2aの軸通部分の進行方向両側に、その揺動中心となる連結軸55c,55cを介して揺動可能にそれぞれ取着されている。
一方の先端アーム55b(A)は、連結軸55c(A)を介した基部アーム55aとの連結部分(基端部)から進行方向一方側(図6左側)へ向けて水平に延設されており、その先端側が略く字形の鈍角状に曲折され、水平中心線x1に対して斜め上方に所定の傾斜角度(例えば25°〜30°)を成して斜設されている。
他方の先端アーム55b(B)は、連結軸55c(B)を介した基部アーム55aとの連結部分(基端部)から進行方向他方側(図6右側)へ向けて水平に延設されており、その先端側が略く字形の鈍角状に曲折され、水平中心線x1に対して斜め上方に所定の傾斜角度(例えば25°〜30°)を成して斜設されている。
このように各先端アーム55bには、連結軸55cのある基端部から大径補助輪3の車軸3aのある曲折部分まで延設される部位(以下「基部位」という。)と、その大径補助輪3の車軸3aのある曲折部分から小径補助輪4の車軸4aの軸着部分ある先端部まで斜設される部分(以下「先部位」という。)とが設けられている。
さらに、各先端アーム55bには、基部アーム55aの下辺に衝合して当該先端アーム55bの揺動範囲を規制するストッパ片55dが一体形成されている。揺動アーム55は、その各先端アーム55bのストッパ片55dが基部アーム55aの下辺に衝合されることにより、各先端アーム55bの基部位が基部アーム55aと一直線を成すように直列配置された連結形態(以下「走行形態」という。)となる。
このような揺動アーム55の走行形態においては、主車軸2a及び連結軸55c,55cの中心を結ぶ軸間直線k0と、一方の先端アーム55bにある連結軸55c及び車軸3aの中心を結ぶ軸間直線k1と、他方の先端アーム55bにある連結軸55c及び車軸3aの中心を結ぶ軸間直線k2とが、直線状に繋がった状態となる。すると、主車軸2a、連結軸55c,55c及び車軸3a,3aの全ての中心が同一直線上に配置され、主車輪3及び一対の大径補助輪3が同一直線上に一列配置された形態となる。
このように構成された揺動アーム55によれば、2つの大径補助輪3,3及び2つの小径補助輪4,4が主車軸2aの垂直中心線y1に対して対称となるように、大径補助輪3及び小径補助輪4が一組ずつ各先端アーム55bに配設されている。具体的には、各先端アーム55bの曲折部分に、大径補助輪3が1つずつ回動可能に車軸3aを介して取着され、各先端アーム55bの最先端部に、小径補助輪4が1つずつ回動可能に車軸4aを介して取着されている。
そして、このように大径補助輪3,3が垂直中心線y1に対して対称配置されるため、進行方向一方側(図6左側)にある大径補助輪3と主車輪2との車軸間距離L1と、進行方向他方側(図6右側)にある大径補助輪3と主車輪2との車軸間距離L2とは、等しくなっている(L1=L2)。そのうえ、各小径補助輪4とそれに隣り合う大径補助輪3との車軸間距離L4,L5は、互いに等しく、かつ、大径補助輪3の半径より若干長くなっている。
ここで、大径補助輪3,3の車軸間距離L3は、主車輪2又は各大径補助輪3の半径の3倍より若干大きなっており、さらに、大径補助輪3,3の間には、主車輪2及び各大径補助輪3の半径を超えかつ外径より小さな間隔W(図8参照。)が進行方向に空けられている。また、各小径補助輪4は、その外周下端が大径補助輪3の車軸3aの中心を通る水平線(「水平中心線」ともいう。)x1と高さが等しく、各小径補助輪4の外径は、主車輪2の半径と等しくなっている。
また、揺動アーム55が走行形態にある場合、2つの大径補助輪3,3及び主車輪2の半径はいずれも等しいため、各大径補助輪3の車軸3aの中心位置及び主車軸2aの中心位置の高さが等しくなり、これらが平坦な走行路面21に同時接地するようになっている。
一方、各小径補助輪4の車軸4aの中心位置は、主車輪2及び大径補助輪3の車軸3aの中心位置に比べて高い。また、小径補助輪4及び垂直線y2の接点P1は、大径補助輪3及び垂直線y3の接点P2に比べて高くなっている。具体的には、個々の小径補助輪4に関する車軸4aの中心位置の高さ(接点P1の高さ)H1は、個々の大径補助輪3に関する車軸3aの中心位置の高さ(接点P2の高さ)H2の1.5倍となっている。
そのうえ、車輪装置50の進行方向一方(図6左側)にある小径補助輪4は、それに隣り合う大径補助輪3よりも揺動アーム55の先端アーム55bの先部位の傾斜方向(図6左上方向)に湾出されており、この湾出量が当該小径補助輪4の半径の長さより若干長くなっている。さらに、車輪装置50の進行方向他方(図6右側)にある小径補助輪4は、それに隣り合う大径補助輪3よりも揺動アーム55の先端アーム55bの先部位の傾斜方向(図6右上方向)に湾出されており、この湾出量が当該小径補助輪4の半径の長さより若干長くなっている。
これらのことから、各小径補助輪4は、主車輪2及び2つの大径補助輪3,3が平坦な走行路面21と接地状態にある場合、当該走行路面21には接地不能であるが、揺動アーム55の基部アーム55aの揺動中心となる主車軸2aの中心よりも高い位置で段差20の壁面22と当接可能となって、当該小径補助輪4,4のいずれか一方がまず初めに段差20に乗り上がるようになっている。
また、2つの小径補助輪4,4及び2つの大径補助輪3,3は、仮想円C’に内接する位置に配設されており、これら4個の補助輪3,3,4,4が段差20を乗り降りするときに、あたかも仮想円C’に等しい円形状の車輪が当該段差20を乗り降りするかの如き状況を作り出すことができる。
なお、仮想円C’は、主車軸2aの垂直中心線y1上において主車輪2の直上にある1つの点であって当該点で各大径補助輪3の車軸3aの中心を通る中心線が直角交差するもの(以下「仮想中心点P3’」という。)を想定した場合に、その仮想中心点P3’を中心とした円である。
また、このように仮想円C’に対して配設された各小径補助輪4は、大径補助輪3よりも車輪装置50の進行方向両側へそれぞれ湾出されるので、真っ先に段差壁面22に当接されやすく、かつ、段差上段面23に乗り上がって段差角部24に引っ掛かりやすくなっている。しかも、小径補助輪4は、その車軸4aの中心位置が大径補助輪3の車軸3aの中心位置に比べても高く、かつ、大径補助輪3よりも小サイズであるので、大径補助輪3に比べて回転抵抗も小さくて段差壁面22を転動しやすく、かつ、段差上段面23にも更に乗り上がりやすくなっている。
図7に示すように、車輪装置50が路面から空中に持ち上げられて、主車輪2及び補助車輪3,3,4,4の全てが路面から離れた非接地状態となると、揺動アーム55は、走行形態(図6に示す形態)から非接地形態(図7に示す形態)へと自然と変形される。具体的には、車輪装置50が非接地形態となると、揺動アーム55の先端アーム55b,55bは、その自重に加えて補助輪3,3,4,4等の重量が作用することで、連結軸55c,55cを中心に下向きに回転される。
この下向きの回転に伴って、先端アーム55b,55bの先部位同士が近接し、大径補助輪3,3が互いに外接して衝合されることにより、先端アーム55b,55bの回転が停止されて、揺動アーム55が非接地形態(折曲形態の一態様である。)となる。この非接地形態となった揺動アーム55によれば、その先端アーム55b,55bの間隔はこれら双方の基端側(連結軸55cの配設側)に比べて先端側(小径補助輪4の配設側)の方が広く、先端アーム55b,55bがそれぞれ斜め下向きに折れ曲がり垂れ下がる格好で側面視八の字状の連結形態をしている。
このような揺動アーム55の非接地形態では、軸間直線k1と軸間直線k2とが、軸間直線k0に対してそれぞれ180°未満の角度を成して折れ曲がり、主車軸2aの中心に対して車軸3a,3aの中心が同一直線上に存在せず、主車輪2及び一対の大径補助輪3が同一直線上に一列配置され得ない形態となる。
このように揺動アーム55が非接地形態となって先端アーム55b,55bが双方とも下側に折り曲げられることにより、進行方向における車輪装置50全体の長さがコンパクト化されるので、キャリーカート10を不使用時に収納する際に、車輪装置50の存在によりキャリーカート10の収納が邪魔されることを解消できる。
また、揺動アーム55が非接地形態をした車輪装置50によれば、それが路面に置かれると、進行方向一方側の補助輪3(A),4(A)及び進行方向他方側の補助輪3(B),4(B)が路面を転動し、かかる転動によって、先端アーム55b,55bが連結軸55c,55cを中心に上向きに回転されて離間方向に広げられる。この回転に伴ってストッパ片55d,55dが基部アーム55aの下辺に衝合されると、先端アーム55b,55bの回転が停止されて、揺動アーム55が走行形態に復帰し、主車輪3及び大径補助輪3,3が路面に接地される。
ここで、非接地形態の揺動アーム55の先端アーム55b,55bが側面視八の字状に傾いた状態となっているのは、揺動アーム55に垂直荷重を加えるだけで、その垂直荷重の分力を、先端アーム55b,55bの先端側を進行方向両側に広げる外力として作用させるためであり、こうすることで揺動アーム55が非接地形態から走行形態に復帰する場合に、先端アーム55b,55bが連結軸55c,55cを中心に上向きに回転され易くなるからである。
また、揺動アーム55及びこれに取着される4個の補助輪3,3,4,4並びに当該各補助輪用の車軸3a,3a,4a,4a、その他の揺動アーム55に補助輪3,3,4,4を取着する部品群(以下「揺動アームユニット」という。)は、主車軸2aの垂直中心線y1に対して対称な重量配分がなされ、その重心が揺動アーム55が非接地形態のときに主車軸2aの中心の真下に位置するようになっている。
このため、非接地形態のときに揺動アームユニットが、図8に示す状態から上下反転して引っ繰り返ることを防止でき、かつ、もしそのような状態となったときには反転復帰を容易に行うことができる。
図8に示すように、主車輪2及び大径補助輪3,3はいずれも車輪幅が等しく、小径補助輪4,4は主車輪2よりも車輪幅が小さく形成されている。また、各小径補助輪4の車輪幅は互いに等しくなっている。また、基部アーム55aの長手方向中央部には主車軸2aが軸通されている。
さらに、主車軸2aは、進行方向に対する直交方向に向かって基部アーム55aを貫通しており、基部アーム55aに対して相対的に空転可能となっている。このため、基部アーム55aは、この主車軸2aを中心として(図6の矢印方向に向けて)揺動可能となる。
また、主車軸2aの基端部には車輪装置50のキャリーカート10のメインビーム11が一体的に連結されており、主車輪2が回動可能に支持されている。そして、主車軸2aの先端部には基部アーム55aの外れ止め用の止めナット7が螺合されており、この止めナット7と主車輪2との間に、基部アーム55aが配設されている。
また、基部アーム55aにおける主車輪2の反配設側面には、2つの先端アーム55b,55bが配設されている。この基部アーム55aにおける主車輪2の反配設側面の長手方向両端部からは連結軸55c,55cがそれぞれ突出されており、この各連結軸55cには各先端アーム55bが揺動可能に取着されている。
また、これらの先端アーム55b,55bにおける基部アーム55aの配設側面には、2つの小径補助輪4,4が進行方向に一列状に並んで列設されている。この先端アーム55b,55bの基部アーム55aの配設側面の長手方向先端部からは小径補助輪4の車軸4aがそれぞれ突出されており、この各軸4aには各小径補助輪4が回動可能に取着されている。
また、これらの先端アーム55b,55bにおける小径補助輪4,4の反配設側面には、残る2つの大径補助輪3,3が進行方向に一列状に並んで配設されている。この先端アーム55b,55bの小径補助輪4,4の反配設側面における長手方向中間部分からは大径補助輪3の車軸3aがそれぞれ突出されており、この各車軸3aには各大径補助輪4が回動可能に取着されている。
また、2つの大径補助輪3,3は、主車輪2に対し、進行方向に直交する方向において異なる位置にある。このため、主車輪2及び2つの大径補助輪3,3は、平坦な走行路面21に同時接地する場合、キャリーカート10を三点支持により安定支持するようになっている。
上記した主車輪2、大径補助輪3,3及び小径補助輪4,4は、平面視千鳥状に配設されており、進行方向に前後する車輪同士の車軸間距離L1〜L5の短縮化が図られている。このようにすることで、車輪装置50のうち進行方向に隣り合っている車輪同士間にできる凹み8(図6参照。)を小さくでき、車輪装置50が段差20を乗り越える際に当該凹み8に段差角部24が填り込むことによる振動を抑制している。
図9に示すように、車輪装置50は、キャリーカート10の進行方向に対する直交方向両側にそれぞれ取り付けられる。各車輪装置50において、主車輪2と各大径補助輪3との間には、進行方向に対する直交方向に所定の間隔wが空けられており、この所定の間隔wは、主車輪2又は各大径補助輪3の車輪幅より大きくされている。かかる間隔wがあることで、これらの主車輪2及び大径補助輪3,3の3つの車輪を同時に転動させてキャリーカート10を運搬する際の走行安定性を向上できる。
次に、図10及び図11を参照して、上記のように構成された車輪装置50の動作について説明する。図10(a)〜図10(i)は、段差高さHが主車輪2の半径の約2倍である場合に車輪装置50が段差20を乗り越える過程を段階的に図示した動作説明図である。
図10(a)に示すように、キャリーカート10のバックフレーム12は、ハンドルが使用者により把持されることで前方(図10(a)左側)傾けられ、前方斜め上方(図10(a)中の矢印方向。以下同じ。)へ引っ張られる。すると、このバックフレーム12を介して車輪装置50の主車軸2aにバックフレーム12の傾斜方向に一致する方向の外力が加えられ、この外力の水平成分が車輪装置50を走行させる駆動力となって、キャリーカート10が前方へ移動される。
このキャリーカート10の移動時において、車輪装置50は、主車輪2及び2つの大径補助輪3,3の3つの車輪が同時に接地して転動するので、平坦な走行路面21上を安定走行することができる。しかも、この車輪装置50は、キャリーカート10のバックフレーム12を前方斜め上方へ引っ張って移動させることで、図10(b)から図10(i)に示す一連の動作を経て、その前方(図10(a)左側)の走行路面21にある段差20をスムーズに乗り越えることができる。
段差20を越える場合、先ずは、車輪装置50の前側(図10(a)〜図10(i)及び図11(a)〜図11(g)の左側をいう。以下同じ。)にある小径補助輪4(A)が段差壁面22に当接したまま段差壁面22を上方に向かって転動し、車輪装置50の後側(図10(a)〜図10(i)及び図11(a)〜図11(g)の右側をいう。以下同じ。)にある大径補助輪3(B)が段差下段面21に相当する平坦な走行路面21に当接して段差壁面22に接近する方向(図10左側をいう。以下同じ。)へ向けて転動する。
図10(b)に示す姿勢から図10(c)に示す姿勢へ変化する過程では、揺動アーム55全体が走行形態のまま一体となって主車軸2aを中心として回転され、この回転により揺動アーム55における前側部分が後側部分に対して相対的に上昇され、その結果、前側の大径補助輪3(A)及び主車輪2が走行路面21から離反して浮き上がる。そして、図10(c)に示すように、前側の小径補助輪4(A)が段差上段面23に乗り上がるとともに、前側の大径補助輪3(A)が段差壁面22に当接される。
図10(c)に示す姿勢から図10(d)に示す姿勢へ変化する過程では、前側の大径補助輪3(A)が段差壁面22に当接したまま上方に向かって転動する一方、後側の大径補助輪3(B)が段差下段面21上を段差壁面22に近接する方向へ更に転動する。そして、この前側の大径補助輪3(A)の転動によって、揺動アーム55全体が一体となって主車軸2aを中心として更に回転され、この回転により揺動アーム55における前側部分が後側部分に対して相対的に更に上昇される。この結果、図10(d)に示すように、前側の小径補助輪4(A)は段差上段面23から離反して浮き上がる。
図10(d)に示す姿勢から図10(e)に示す姿勢へ変化する過程では、前側の大径補助輪3(A)が段差角部を24を乗り越えて、後側の大径補助輪3(B)が段差下段面21を転動して段差壁面22に更に接近する。すると、揺動アーム55全体が一体となって主車軸2aを中心として更に回転され、この回転により揺動アーム55における前側部分が後側部分に対して相対的に更に上昇される。その結果、図10(e)に示すように、前側の大径補助輪3(A)が段差上段面23に乗り上がるとともに、後側の小径補助輪4(B)が段差下段面21に近接した状態となる。
図10(e)に示す姿勢から図10(f)に示す姿勢へ変化する過程では、前側の大径補助輪3(A)が段差上段面23を転動し、かつ、後側の大径補助輪3(B)が段差下段面21を更に転動して段差壁面22に接近することにより、揺動アーム55が同一姿勢を保持したまま、前方へ平行移動させられる。すると、図10(f)に示すように、主車輪2が段差壁面22に当接される。
なお、図10(a)〜図10(f)に示す姿勢までは、軸間直線k0,k1,k2の全てが直線状に繋がった状態が維持されている。
図10(f)に示す姿勢から図10(g)に示す姿勢へ変化する過程では、主車輪2が段差壁面22を上方へ向けて転動すると、この転動に伴って、前側の先端アーム55b(A)が連結軸55c(A)を中心に基部アーム55aに対して相対的に回転され、前側の先端アーム55b(A)が基部アーム55aに対して前側に向けて折れ曲った連結形態(折曲形態の一態様である。)となり、基部アーム55a及び後側の先端アーム55b(B)は直線状の連結形態を保持したまま更に上方へ引き上げられる。
なお、図10(g)に示す姿勢では、軸間直線k1と軸間直線k0とが成す角度は180°未満となり、軸間直線k2と軸間直線k0とは直線状に繋がった状態のままとなっている。
すると、図10(g)に示すように、前側の大径補助輪3(A)が段差上段面23に当接したままの状態を保持しつつ、主車輪2が段差角部24の頂部に乗り上がり、後側の大径補助輪3(B)が段差下段面21から離反して浮き上がって、後側の小径補助輪4(B)が段差下段面21に接地された状態となる。
このように、図10(g)に示した車輪装置50によれば、前側の先端アーム55b(B)が基部アーム55aに対して折れ曲がることにより前側の大径補助輪3(A)が段差上段面23に接地転動されるので、図5(e)に示した第1実施例の車輪装置1のように、主車輪2が段差上段面23から大きく浮き上がることを防止でき、前側の大径補助輪3(A)が段差上段面23に激しく衝突することを防止できる。
図10(g)に示す姿勢から図10(h)に示す姿勢へ変化する過程では、主車輪2が転動して段差角部24を乗り越えて段差上段面23の上に乗り上がることにより、前側の大径補助輪3(A)が段差上段面23を転動して前方へ移動する。この移動に伴って、前側の先端アーム55b(A)が連結軸55c(A)を中心に基部アーム55aに対して相対的に回転され、その前側の先端アーム55b(A)にあるストッパ片55d(A)が基部アーム55aの下辺に衝合されると、図10(h)に示すように、基部アーム55a及び前側の先端アーム55b(A)が段差上段面23の上で水平姿勢となって直線状の連結形態に復帰する。
一方、後側の先端アーム55b(B)が、連結軸55c(B)を中心に基部アーム55aに対して相対的に回転されることにより、基部アーム55aに対して下側に向けて折れ曲った形態となり、更に、後側の大径補助輪3(B)が段差壁面22に当接されるとともに、後側の小径補助輪4(B)が段差下段面21から離反して浮き上がる。
なお、図10(h)に示す姿勢では、軸間直線k1と軸間直線k0とは直線状に繋がった状態に復帰し、軸間直線k2と軸間直線k0とが成す角度は180°未満となる。
図10(h)に示す姿勢から図10(i)に示す姿勢へ変化する過程では、前側の大径補助輪3(A)及び主車輪2が段差上段面23を転動して前方へ移動することにより、後側の大径補助輪3(B)が段差壁面22を上方へ向けて転動して段差角部24を乗り越えて段差上段面23の上に乗り上がる。
この移動に伴って、後側の先端アーム55b(B)が連結軸55c(B)を中心に基部アーム55aに対して相対的に回転され、その後側の先端アーム55b(B)にあるストッパ片55d(B)が基部アーム55aの下辺に衝合されると、図10(i)に示すように、揺動アーム55全体が走行形態に復帰して、キャリーカート10の車輪装置50の段差越えが完了する。
なお、図10(i)に示す姿勢では、軸間直線k0,k1,k2は全て直線状に繋がった状態に復帰する。
図11(a)〜図11(g)は、段差高さHが主車輪2の半径の約2倍である場合に、車輪装置50が段差20を下り降りる過程を段階的に図示した動作説明図である。なお、図11では、段差20における段差下段面21と段差上段面23との位置関係が、図10に対して左右反転されている。
図11(a)に示すように、車輪装置50は、キャリーカート10のバックフレーム12を前方斜め上方(図10(a)中の矢印方向)へ引っ張って移動させることで、図11(a)から図11(g)に示す一連の動作を経て、その前方(図11(a)左側)にある段差20をスムーズに下り降りることができる。
なお、図11(a)に示す姿勢では、軸間直線k0,k1,k2の全てが直線状に繋がった状態となっている。
図11(a)に示す姿勢から図11(b)に示す姿勢へ変化する過程では、主車輪2及び大径補助輪3,3が段差上段面23を転動し、車輪装置50の前側にある大径補助輪3(A)が段差上段面23を段差角部24を通過する。
すると、前側の大径補助輪3(A)の重みで、前側の先端アーム55b(A)が連結軸55c(A)を中心に基部アーム55aに対して相対的に回転され、前方下側に向けて折れ曲った連結形態(折曲形態の一態様である。)となって、前側の大径補助輪3(A)が段差壁面22に当接され、前側の小径補助輪4(A)が段差下段面21に手前まで接近する。
なお、図11(b)に示す姿勢では、軸間直線k1と軸間直線k0とが成す角度は180°未満となり、軸間直線k2と軸間直線k0とは直線状に繋がった状態のままとなっている。
図11(b)に示す姿勢から図11(c)に示す姿勢へ変化する過程では、主車輪2及び後側の大径補助輪3(B)が段差上段面23を転動して、主車輪2が段差角部24を通過すると、今度は、その主車輪2の重みで、基部アーム55aが連結軸55c(B)を中心に後側の先端アーム55b(B)に対して相対的に回転され、前方下側に向けて折れ曲った連結形態(折曲形態の一態様である。)となって、前側の小径補助輪4(A)が段差下段面21に当接される。
そのうえ、主車輪2が段差角部24を通過する過程で、基部アーム55a又は前側の先端アーム55b(A)の一方が他方に対して連結軸55c(A)を中心に相対的に回転され、前側の先端アーム55b(A)にあるストッパ片55d(A)が基部アーム55aの下辺に衝合されると、図11(c)に示すように、軸間直線k0と軸間直線k1とが一直線状となって、基部アーム55a及び前側の先端アーム55b(A)が前方下向きに傾斜した状態で直線状の連結形態となる。
なお、図11(c)に示す姿勢では、軸間直線k1と軸間直線k0とが直線状に繋がった状態となり、軸間直線k2と軸間直線k0とが成す角度が180°未満となる。
このように、図11(b)及び図11(c)に示した車輪装置50によれば、一対の先端アーム55bが基部アーム55aに対して折れ曲がることにより、前側の小径補助輪4(A)が段差下段面21に近づけられた後に、かかる前側の小径補助輪4(A)及び大径補助輪3(A)が順に段差下段面21に接地して転動する一方で、後側の大径補助輪4(B)は段差上段面23から浮き上がらずに接地したまま転動を続けて、主車輪2が段差角部24を越えるので、第1実施例の車輪装置1のように、前側の大径補助輪3(A)が段差下段面21に激しく衝突することを防止できる。
図11(c)に示す姿勢から図11(d)に示す姿勢へ変化する過程では、前側の小径補助輪4(A)が段差下段面21を転動し、主車輪2が段差角部24を越えて段差壁面22を下方へ向けて転動し、後側の大径補助輪3(B)が段差上段面23を転動して段差角部24へ接近すると、基部アーム55a又は後側の先端アーム55b(B)の一方が他方に対して相対的に回転される。
この回転に伴って、前側の小径補助輪4(A)は段差下段面21から離反して浮き上がるが、今度は、前側の大径補助輪3(A)が段差下段面21に当接して転動するとともに、後側の先端アーム55b(B)にあるストッパ片55d(B)が基部アーム55aの下辺に衝合することで、図11(d)に示すように、揺動アーム55全体が走行形態に復帰する。
なお、図11(d)に示す姿勢で、軸間直線k0,k1,k2の全てが直線状に繋がった状態に復帰し、この状態は、図11(e)〜図11(g)に示す姿勢においても維持される。
図11(d)に示す姿勢から図11(e)に示す姿勢へ変化する過程では、前側の大径補助輪3(A)が段差下段面21を転動し、後側の大径補助輪3(B)が段差上段面23を転動することで、揺動アーム55が同一姿勢を保持したまま前方へ平行移動され、その結果、図11(e)に示すように、後側の大径補助輪3(B)が段差角部24に到達する。
図11(e)に示す姿勢から図11(f)に示す姿勢へ変化する過程では、前側の大径補助輪3(A)が段差下段面21を転動して段差壁面22から更に遠ざかり、後側の大径補助輪3(B)が段差角部を24を越えると、後側の大径補助輪3(B)が段差上段面23から落下する。すると、揺動アーム55全体が一体となって主車軸2aを中心として回転され、この回転により揺動アーム55における後側部分が下降して、図11(f)に示すように、後側の小径補助輪4(B)が段差上段面23に当接する。
図11(f)に示す姿勢から図11(g)に示す姿勢へ変化する過程では、前側の大径補助輪3(A)が段差下段面21を転動して段差壁面22から更に遠ざかるとともに、後側の小径補助輪4(B)が段差上段面23から落下することで、揺動アーム55全体が一体となって主車軸2aを中心として更に回転され、この回転により揺動アーム55における後側部分が更に下降すると、図11(f)に示すように、揺動アーム55全体が水平な走行形態に復帰し、キャリーカート10の車輪装置50の全体が段差下段面21に移動して、段差越えが完了する。
図12(a)は、第3実施例の車輪装置100の正面図であり、図12(b)は、その車輪装置100の平面図であり、図12(c)は、その車輪装置100の側面図である。第3実施例の車輪装置100は、上記した第1実施例の車輪装置1に対し、キャリーカートに対する取付手段を変更したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
図12(a)に示すように、第3実施例の車輪装置100は、正面視門形状の取付ブラケット101を備えている。この取付ブラケット101は、キャリーカート10の本体フレーム14を載置可能であって当該本体フレーム14に固定される取付板101aと、その取付板101aの幅方向両側(図12(c)左右両側)から下向きにそれぞれ垂設される一対の側板101b,101bとを備えている。
この取付ブラケット101における一対の側板101b,101bは主車軸2aを支持するものであり、この一対の側板間101b,101bには主車軸2aが架設されている。この主車軸2aの軸方向両端部は取付ブラケット101に固定されており、主車輪2は、この車軸2aを中心に転動可能となっている。
図12(b)に示すように、取付ブラケット101の取付板101aの四隅には、この取付板101aをキャリーカート10にネジ止め固定するための通孔が穿設されている。また、取付ブラケット101の側板101b,101b間に架設される車軸2aは、その主車輪2の中心部に軸通されるとともに、揺動アーム5の長手方向(図12(b)上下方向)の中央部に軸通されている。
このようにして、揺動アーム5は、取付ブラケット101の側板101b,101b間に配設されており、主車軸2aを中心として、図12(c)の矢印方向に揺動可能となっている。ここで、取付ブラケット101の取付板101aは、段差20を乗り降りする動作に連動して揺動する揺動アーム5を衝合可能に形成されており、この衝合により揺動アーム5の揺動範囲が制限されるようになっている。つまり、取付ブラケット101が揺動アーム5の揺動範囲の規制手段となっている。
なお、第3実施例において説明した取付ブラケット101と同種の構造のものを第2実施例の車輪装置50に適用しても良い。
上記のように構成された車輪装置1,50,100によれば、各小径補助輪4は、主車輪2又は2つの大径補助輪3,3に比べて外径が小さく、かつ、その車軸4aの中心位置が他の車軸2a,3a,3aの中心位置よりも高く設定されており、各小径補助輪4と段差壁面22とは揺動アーム5,55の揺動中心となる主車軸2aよりも高い位置で当接するようになっている。
これは、キャリーカート10のバックフレーム12を介して前方斜め上方(図4、図5、図10及び図11の矢印方向)へ向かう引張力を主車軸2aに加えたとき、前側の小径補助輪4(A)を垂直な段差壁面22を上方へ向けて転動させやすくするためである。
なお、仮に、各小径補助輪4の車軸4aの中心位置(接点P1の高さ)が大径補助輪3の車軸3aの中心位置(接点P2の高さ)と同一の高さであれば、キャリーカート10のバックフレーム12を介して前方斜め上方(図10及び図11の矢印方向)に向けた引張力が加わると、前側の小径補助輪4(A)が段差壁面22を下向きに転動する恐れがあり、このような動きを防止するため、揺動アーム5,55の動きを規制する手段が別途必要となる。
また、車輪装置1,50,100によれば、その揺動アーム5,55の形状及び4つの補助輪3,3,4,4の配設状態がいずれも主車軸2aの垂直中心線y1に対して対称となっているので、車輪装置1,50,100を、その進行方向一方から他方へ移動させる、又は、その進行方向他方から一方へ移動させるいずれの場合であっても、同様な動作により段差20を乗り降りすることができる。
つまり、図4、図5、図10及び図11では、車輪装置1,50,100が図中右側から左側へ向けて移動する場合について説明したが、車輪装置1,50,100が図中左側から右側へ移動する場合についても、この車輪装置1,50,100は、進行方向の前後が反転するだけで同様の動作を行って、そのときに前方にある段差20を乗り降りすることができる。
また、車輪装置1,50,100を側面視した場合における小径補助輪4の外周下端部とそれに隣接する大径補助輪3の外周との交点(「補助輪交点」ともいう。)P5の高さH3に比べて段差高さHの方が大きいときに、小径補助輪4による段差乗り上がり機能を発揮することができる。なお、段差高さHが補助輪交点P5の高さH3より低い場合には、小径補助輪4を介さずに、大径補助輪3が真っ先に段差壁面22又は段差角部24に当接して、この段差20を乗り越える動作が行われる。
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施例では、主車輪2の数を1つとして説明したが、かかる主車輪2の数は必ずしも1つに限定されるものではなく、その主車軸2aが固定又は支持されるキャリーカート10又は取付ブラケット31に当該車軸2aを介して回動可能に支持されるものであれば、2個以上あっても良い。
また、上記実施例では、キャリーカート10のバックフレーム12は、ハンドルが使用者により把持されることで前方(図1、図4、図5、図6(c)、図10又は図11の左側)傾けられ、前方斜め上方へ引っ張られると説明した。
しかしながら、バックフレーム12に対する力の加え方は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、ハンドルが使用者により把持されて後方(図1、図4、図5、図6(c)、図10又は図11の右側)傾けられて、後方斜め上方(図1、図4、図5、図6(c)、図10又は図11の右斜め上側)からバックフレーム12を押すようにしても良い。
さすれば、このバックフレーム12を介して車輪装置1,50,100の主車軸2aにバックフレーム12の傾斜方向に一致する方向の外力が加えられ、この外力の水平成分が車輪装置1,50,100を走行させる駆動力となって、キャリーカート10を前方へ移動させることができる。