JP2011077344A - 窒化物光半導体素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 結晶性が良好な素子窒化物光半導体素子を提供することを目的とする。
【解決手段】 この窒化物光半導体素子は、A面サファイア基板1と、基板1上に設けられた厚さが1μmを超えるC面AlN層2と、AlN層2上に形成されたn型のIII族窒化物系半導体層4と、n型のIII族窒化物系半導体層4上に形成されたp型のIII族窒化物系半導体層9とを備えている。A面サファイア基板1上に、1μmを超えるC面AlN層を成長することによって、これにクラックが発生せず、平坦性と結晶性に優れたC面AlN層が得られる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、窒化物光半導体素子に関する。
III族窒化物半導体(GaN、AlGaN、AlInGaN系)を用いた窒化物光半導体素子が知られている。例えば、「C面」サファイア基板上に、「C面」AlN層を成長させ、その上に実効的な光半導体素子を作製することが知られている。また、III族窒化物半導体を用いた光半導体素子としては、レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)などの発光素子の他、フォトダイオード(PD)などの受光素子が知られている。これらの窒化物光半導体素子の特性および信頼性は、用いる半導体の結晶性に依存する。すなわち、結晶性の優れた窒化物光半導体を用いた場合には、優れた特性の光半導体素子が完成する。
特許文献1では、C面サファイア基板上に有機金属気相成長(MOCVD)法によって、一旦、AlN下地層を形成した後、水素化物気相エピタキシ(HVPE)法によってAlN層を形成している。形成されるAlN層はC面である。なお、C面とは結晶の縦方向を意味するC軸に垂直な平面(0001)面のことであり、A面とはC面に垂直な(11−20)面のことである。成長後のAlN層の層厚は10μm程度であるが、成長後にはクラックが発生しているものと推定される。特に、HVPE法では、界面部分での正確な条件制御が困難であるので、AlN下地層を介さず直接にAlN単結晶層をHVPE法にて単結晶基材上に成長させた場合、AlN単結晶層の結晶品質は大幅に劣化してしまうことになるとしており、工程が複雑となる。この従来技術のAlN層の表面粗さは原子間力顕微鏡のRa値で20nm以下である。
特許文献2は、圧電体薄層に関する技術であって、サファイア(11−20)面((110)面とも言う)基板(A面)上に、結晶面が(0001)面((001)面とも言う)であるAlN層(C面AlN層)を形成する技術が開示されている。
非特許文献1では、同様の化合物半導体を開示するが、そのX線ロッキングカーブの半値幅(FWHM)は、(0002)面((002)面とも言う)に関しては、173−314秒であり、(10−12)面((102)面とも言う)に関しては、1574−1905秒である。なお、(002)面に関する結晶性が良くとも、(102)面に関する結晶性が悪い場合、発光素子では発光効率が悪くなり、受光素子では感度が悪くなる要因となる。この文献における表面粗さ(原子間力顕微鏡)のRMS値(Ra相当)は、最も小さい値が得られた場合において2.34nmである。また、表面写真を観察すると、表面には大きなピットが多数確認され、表面状態も好ましいものではない。
非特許文献2は、MOCVD法によって製造された紫外LEDについて開示している。C面サファイア基板上にC面AlN層が形成されたテンプレートが使用されているが、AlN層の層厚は1μmである。この文献におけるX線ロッキングカーブの半値幅(FWHM)は、(0002)面((002)面とも言う)に関しては60秒であり、(10−12)面((102)面とも言う)に関しては1200秒である。
なお、短波長(紫外線域)の光に関する光半導体素子用の半導体結晶では、素子を構成するたとえばAlGaN層のAlの組成を高くする必要がある。このとき、結晶格子間隔が大きく異なるため、AlGaN層に大きな引っ張り歪みが発生し多数のクラックが発生する。これを抑制するために、結晶品質に優れ、AlGaNより格子間隔の小さいAlNを下地層とすることが、光半導体素子を実現する上で望ましい。
また、上述のように、特性の良好な光半導体素子を作製するには、AlGaN層において高い結晶性が要求される。しかしながら、良質で大型のAlNバルク基板は現在得られておらず、「C面」サファイア基板上に、「C面」AlN層を0.8〜1μm程度成長したものが使われはじめている程度である。
特開2006−321705号公報 特開平05−327398号公報
''Growth of Thick AlN Layer by Hydride Vapor Phase Epitaxy'', Japanese Journal of Applied Physics「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス」, Vol. 44, No. 17, 2005, pp. L 505-L 507. ''AlGaN−Based Deep Ultraviolet Light−Emitting Diodes Grown on Epitaxial AlN/Sapphire Templates'', Japanese Journal of Applied Physics「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス」, Vol. 47, No. 1, 2008, pp. 43-46.
このような背景のもと、高Al組成であっても、良質でかつクラックの無い高品質なAlGaN層構造による窒化物光半導体素子の実現が求められている。確かに、「C面」サファイア基板上に、「C面」AlN層を形成した基板を用いたLEDは実現されているものの(非特許文献1参照)、その結晶品質が十分でないために、より高品質の結晶性が要求されるLDは、この基板を用いて実現されていない。すなわち、結晶品質を高めるため、AlN層の厚みを1〜3μm程度に増加させると、クラックが発生してしまい、結晶性が良好な素子を形成することができなくなる。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、結晶性が良好な素子窒化物光半導体素子を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明に係る窒化物光半導体素子は、A面サファイア基板と、前記基板上に設けられた厚さが1μmを超えるC面AlN層と、前記AlN層上に形成された第1導電型のIII族窒化物系半導体層と、前記第1導電型のIII族窒化物系半導体層上に形成された第2導電型のIII族窒化物系半導体層と、を備えることを特徴とする。本発明では、A面サファイア基板上に、1μmを超えるC面AlN層を成長することによって、これにクラックが発生せず、平坦性と結晶性に優れたC面AlN層が得られることを発見した。
このように形成されたAlN層上に、第1導電及び第2導電型の半導体層を含む半導体素子を成長させることによって、良好な特性を有する窒化物光半導体素子を得ることができる。また、この構造では、サファイア基板と、AlN層のへき開面を一致させることができるため、光半導体素子としてレーザ素子を採用する場合には、共振器の端面となるへき開面を容易に形成することができるという利点もある。なお、III族窒化物系半導体層としてはAlGaN系の化合物半導体層が好ましい。
また、前記第1及び第2導電型のIII族窒化物系半導体層は、それぞれAlGaNからなり、Alの組成比は0.2以上1.0以下であることが好ましい。本発明では、このように高Al組成比のAlGaN層の形成においても、良好な結晶のものを得ることができる。
本発明の窒化物光半導体素子によれば、窒化物半導体層を含む複数の半導体層を厚く積層成長しても、クラックの発生が抑制されかつ、結晶性に優れた化合物半導体からなるものとなっている。これによって、クラックに影響されない歩留まりの高い状態で、特性に優れた窒化物光半導体素子が提供される。
成長温度を変えた場合に得られた結晶のX線ロッキングカーブの半値幅(FWHM)の値を示す図表である。 流量を変えた場合に得られた結晶のX線ロッキングカーブの半値幅(FWHM)の値を示す図表である。 初期層のX線ロッキングカーブの半値幅(FWHM)の値を示す図表である。 各種温度で得られた結晶表面の電子顕微鏡写真の図である。 各種流量で得られた結晶表面の電子顕微鏡写真の図である。 初期層の表面の電子顕微鏡写真の図である。 LDの断面図である。 LDの出射光の波長(nm)と光強度(arb. unit)との関係を示すグラフである。 LDの駆動電流(mA)と光強度(arb. unit)との関係を示すグラフである。 LEDの断面図である。 PDの断面図である。 製造温度のタイムチャートである。
以下、実施の形態に係る窒化物光半導体素子について説明する。なお、同一要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図7は、窒化物光半導体としての半導体レーザ素子(LD)の断面図である。この素子は、A面サファイア基板1上に順次形成された、AlN層2、n型AlGaNからなるコンタクト層3、n型AlGaNからなるクラッド層4、AlGaNからなるガイド層5、AlGaNからなる活性層6、AlGaNからなるガイド層7、p型のAlGaNからなるキャリアブロック層8、p型AlGaNからなるクラッド層9を備え、クラッド層9上には絶縁層(SiO)10が形成されており、絶縁層10に設けられた開口内には、クラッド層9と共にp型GaNからなるコンタクト層111が形成され、その上にはP側の電極112が形成されている。また、コンタクト層3の表面領域の一部はエッチングされ、エッチングされた箇所にn側の電極113が形成されている。各層の結晶性は、その下地層の結晶性に依存するため、下地層の結晶性が重要である。
上述の素子において、III族窒化物半導体結晶を形成する場合、ハイドライド気相成長法(HVPE法)、有機金属気相成長法(MOCVD法)等の化学的気相成長法や、分子線成長法(MBE法)、昇華法、フラックス法等を用いることができる。原料コスト及び形成速度の観点では、HVPE法が好適である。一方、MOCVD法では、Al、Ga、Inの組成を制御し易く、さらにSiやMgなどのドーピングによりn型やp型の半導体結晶を精度良く作製するのに好適である。以下には、AlN層の作製をHVPEで行い、その後レーザ結晶の成長をMOCVDで行う実施の例について示すが、この成長法の組み合わせに限るものではない。また、素子の加工に用いる各種方法もここで示したものに限るものではない。
上述のレーザ素子を製造した。以下、詳説する。
(第1の結晶成長)
まず、2インチ径の厚さ430μm程度の(11−20)A面サファイア単結晶基板を用意し、これをHVPE装置の反応管のサセプタに載置した。HVPE法の場合、AlなどのIII族金属と、HClガスなどのハイドライドガスとを500℃〜700℃程度の温度下で直接に反応させてIII族原料ガス(例えばAlClxガス)を生じさせ、これとNHガスとを反応させることによって、AlN系III族窒化物を生じさせ、これを例えば温度T1(1150℃)に加熱された基板上でエピタキシャル成長させた。T1は1000℃〜1800℃の温度範囲から選択することができる。反応管内のボートには、金属Al原料を保持しIII族元素としては、Alを用いるものとした。なお、NHガスの流量は工程の各段階において、断りの説明のない限り、1.5slmであることとした。また、Nガスの流量は1.1slmである。
なお、第1のAlN層の成長においては、反応管内の圧力を30Torr(4000Pa)に設定するとともに、反応管内の気体反応領域の温度が550℃となるように、かつ、基板温度がT1(1150℃)となるように、昇温を行った(図12参照)。昇温中(時刻0〜t1:図12参照)は、NHとNガスのみを供給した。反応管内の圧力および温度が安定した後、NHとNガスを供給した状態でサファイア基板表面の清浄化(サーマルクリーニング)を10分間(時刻t1〜t2:図12参照)おこなった。なお、サーマルクリーニング時の基板温度は900〜1400℃の範囲がよい。
その後、さらにHガスとH希釈したHClガスとを所定のガス導入管を介してボートの近傍へと供給し、生じたAlClxガスをサセプタに保持された基板の近傍へ供給させることで、第1のAlN層(図7のAlN層2の下半分の領域)を形成した。第1のAlN層形成は1分間(時刻t2〜t3:図12参照)おこない、第1のAlN層の層厚はおよそ50nmであったが、これは、サファイア表面の保護という理由から、20〜50nmであることが好ましい。このときのHガスとHClガスの流量は、それぞれ0.2slmm、0.06slmである。
次に、HClガスの供給を止め、基板温度をT2(1500℃)に昇温し、NHとNガスを供給した状態で5分間(時刻t4〜t5:図12参照)の熱処理をおこなった(窒化処理(*))。この処理によって第1のAlN層の結晶歪がさらに緩和され、表面がより平坦化する。なお、基板温度T2は、1400〜1800℃の範囲が良好な結晶性を得るという観点からは好ましいが、この処理が無い場合でも、ある程度は良い結晶を得ることができる。
なお、第1のAlN層形成は、AlClxガスを供給せず、サファイア表面のNHガスによる窒化処理によって得ても良い。
その後、HClガスの供給を再び開始し、温度T2のまま第1のAlN層の上に第2のAlN層を20分間成長した(時刻t5〜t6:図12参照)。HClガスの流量は、0.06slmである。これらの工程により、合計の厚みがおよそ3μmのAlN層2(厚さが1μmを超えている)を得た。
(第2の結晶成長)
AlN層の成長を行った後、そのAlN層の上に光半導体素子特性として結晶性の影響を最も受けるレーザ層構造の成長を行った。結晶成長には、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いた。ガリウム(Ga)原料にはトリメチルガリウム(TMG)、アルミニウム(Al)原料にはトリメチルアルミニウム(TMA)窒素(N)原料にはアンモニア(NH)を用いた。キャリアガスとして、水素(H)および窒素(N)を用いた。
基板をMOCVD成長装置の反応室に導入後、水素およびアンモニア雰囲気中、基板温度が1075℃となるように昇温し、昇温後温度5分間の熱処理により、基板表面の清浄化を行った。
続いて、Siをドープしたn型のAl0.3Ga0.7N層(n型コンタクト層3)を2.8μm、n型のAl0.3Ga0.7N層(n型クラッド層4)を600nm、Al0.16Ga0.84N層(第1ガイド層5)を90nm、そしてAl0.06Ga0.94N/Al0.16Ga0.84N量子井戸層(活性層6)を成長した。さらに、Al0.16Ga0.84N層(第2ガイド層7)を120nm、Mgをドープしたp型のAl0.6Ga0.4N層(p型電子ブロック層8)を20nm成長し、p型のAl0.3Ga0.7N層(p型クラッド層9)を500nm、p型のGaN層(p型コンタクト層111)を25nm、順に成長した。
(第1の素子加工:半導体メサ部形成)
次に、p型コンタクト層111までを成長させた結晶基板をMOCVD室から取り出し、続いて、プラズマCVDなどにより、p型コンタクト層の全面にわたって厚さが約300nmのSiO層を堆積させた。その後、このSiO層上に対して通常のフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により、半導体メサ部の形状に対応したエッチングマスクを形成した。このエッチングマスクは、p型コンタクト層上に所定の幅で事後的に光導波路方向となる方向に沿って延びた形状になっている。
次に、このエッチングマスクをマスクとして、n型コンタクト層3が露出するまで、塩素(Cl)ガスなどによるドライエッチングを行った。このエッチングにより、エッチングマスクで覆われていないp型コンタクト層1からn型クラッド層3までの部分が除去されるので、n型クラッド層3からp型コンタクト層111までからなる半導体メサ部が形成される。その後、エッチングによりエッチングマスクを除去した。
(第2の素子加工:リッジ構造形成)
次に、同様にプラズマCVD法などにより、結晶基板全面上に厚さが約300nmのSiOからなる絶縁層10を再度堆積させた。その後、エッチングマスクの形成の場合と同様な手順で、絶縁層10上に対して通常のフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により、p型コンタクト層111の中央領域上にエッチングマスクを形成した。エッチングマスクは、所定の幅でp型コンタクト層111の中央部を覆う形状になっている。
次に、このエッチングマスクをマスクとして、p型クラッド層9の途中まで塩素(Cl)ガスを用いてドライエッチングを行い、p型コンタクト層111及びp型クラッド層10からなる幅5μmのリッジ構造を形成した。その後、エッチングによりエッチングマスクを除去した。なお、エッチングには、Clガスに加えてArガスを用いることもできる。
(第3の素子加工:電極形成)
続いて、再びプラズマCVDなどによって、結晶基板全面に厚さが約300nmのSiO層を再度堆積させた。このSiO層の上にフォトリソグラフィー法により、負電極層113の形成領域を除いた領域を覆う所定形状のレジストパターンを形成した。その後、このレジストパターンをマスクとし、SiO層をエッチングし、負電極層113の形成領域に開口を形成した。
次に、真空蒸着法などにより、チタン(Ti)層およびアルミニウム(Al)層を順次形成した。引き続いて、有機溶剤などによってレジストパターンをその上に形成されたTi層およびAl層とともに剥離除去した。これによってSiO層の開口を通じてn型コンタクト層に接触した負電極層113が形成された。なお、図7では、簡略化のため電極113の周囲の絶縁層の記載は省略している。
さらに、同様なプロセスで、リッジ構造の頂部のSiO層を除去し、p型コンタクト層を露出させた後、負電極層と同様な手順で、p型コンタクト層と電気的に接続していると共にニッケル(Ni)と金(Au)との積層体からなる正電極層112を形成した。
(第4の素子加工:共振面形成)
次に、リッジ構造の長手方向に垂直な平面(紙面に平行な平面)で、半導体基板をへき開することで、窒化物半導体発光素子の共振器構造を形成した。必要に応じて、塩素(Cl)ガスなどによるドライエッチングで端面をエッチングするなどして、これを共振器構造の形成に用いてもよい。共振器長は例えば900μmが適当である。
その後、必要に応じて共振器の各端面に端面コーティングを施してもよい。このとき、例えば、フロント側の端面反射率は例えば50%、リア側の端面反射率は例えば99%である。コーティング材料は、SiO、Al、ZrO、AlNなどである。
以上の工程により、III族窒化物半導体からなる本実施形態の光半導体素子(この場合はレーザ素子)が形成された。
A面サファイア基板1上に、III族窒化物半導体を成長した場合、C面のAlN層(半導体層)が成長する。このときサファイア基板のへき開面(C面)と半導体層のへき開面(M面)が同一面方位となり、特に作製する素子がレーザ素子である場合においては、へき開性に優れ平滑な共振面が得られ、レーザの発振閾値が低くなる格別の効果が得られた。
(素子の特性)
図8は、作製したレーザ素子を室温(27℃)に保持し、パルス幅10nsのパルス駆動にて680mAの電流を注入時したときに得られた発光スペクトルであり、図9は、注入電流を徐々に増加していったときの光出力の変化を示すグラフである。図8から明らかなように、337nmといった容易には達成できない紫外線のレーザ発振が実現した。
また、レーザ発振が開始する閾値電流値は約550mAであり、5μmのリッジ幅と900μmの共振器長から算出される発振閾電流密度は約12kA/cmとなり、短波長の紫外線半導体レーザとしては低い値が得られた。従来のより長い波長の紫外線半導体レーザの発振閾値と同程度の電流密度にて、より短波長でのレーザ発振が実現できた。
上述の素子特性の改善は、素子結晶の改善に起因する。素子結晶は、下地層の結晶状態に依存する。ここでは、第1のAlN層と、第2のAlN層の結晶状態について評価した。
サファイア基板1上に成長したAlN層において、X線ロッキングカーブ法(入射角ωスキャン)により評価した。なお、必要に応じて面内回転角φを回転させた。得られたAlN層の(002)、(102)、(100)面のX線ロッキングカーブを測定した。
図1は、第2のAlN層の成長温度T2を変えた場合(1450℃、1500℃、1550℃)に得られた結晶のX線ロッキングカーブの半値幅(FWHM)(arcsec)の値を示す図表である。NHの流量は1.5slmである。A面サファイア基板とC面サファイア基板を用いた場合における、(002)、(102)、(100)面に関するFWHMが記載されている。なお、図1及び図3の各コラム内において、3つの数字が並んでいるものは、それぞれ左から順に、A面サファイア基板を用いた場合には、φが30°、90°、150°の場合のFWHMを示し、C面サファイア基板を用いた場合には、φが0°、60°、120°の場合のFWHMを示している。
同図から明らかなように、A面サファイア基板を用いた場合には、FWHMが、C面サファイア基板を用いた場合よりも小さくなっており、各温度において特に(102)面の結晶性が改善していることが分かる。また、結晶性の観点からは、温度T2としては、1500℃近傍すなわち、1450℃より大きく1550℃未満が特に好ましい。
上述のA面サファイア基板上に形成した第1のAlN層(初期層)の(002)、(102)、(100)面に関する入射角スキャンによるX線ロッキングカーブの半値幅(FWHM)の値はそれぞれ、およそ400秒、500秒、650秒であった(図3の右欄)。なお、上述の窒化処理(*)を行った場合の初期層に関する結果は、図3の右欄(Nitridation)に示しており、この窒化処理を行わない場合の結果は、図3の左欄(Buffer)に示してある。また、原子間力顕微鏡による表面平坦性の評価では、表面粗さのRa値は0.3nm程度であった。表面にはクラックも無く、結晶性に優れたC面AlN単結晶層がA面サファイア基板上に形成された。
図2は、温度T2=1500℃とし、NHの流量を変えた場合(1.0slm、1.5slm、2.0slm)に得られた結晶のX線ロッキングカーブの半値幅(FWHM)の値を示す図表である。同図から明らかなように、A面サファイア基板を用いた場合には、FWHMが、C面サファイア基板を用いた場合よりも小さくなっており、各流量において得に(102)面の結晶性が改善していることが分かる。また、結晶性の観点からは、NHの流量としては、1.5slm近傍すなわち、1.0slmより大きく2.0slm未満が特に好ましい。
図3は、NH流量=1.5slmの場合における、第1のAlN層(初期層)のX線ロッキングカーブの半値幅(FWHM)の値を示す図表である。Bufferの列は、熱処理前の第1のAlN層の特性を示しており、Nitridationの列は、熱処理(時刻t4〜t5:図12参照)後のAlN層の特性を示している。同図から明らかなように、A面サファイア基板を用いた場合には、FWHMが、C面サファイア基板を用いた場合よりも小さくなっており、(102)面、(100)面に関しては、温度T2=1500℃の熱処理によって、中央に位置する数値のFWHMが小さくなっている。結晶性改善の観点からは、熱処理時間(時刻t4〜t5:図12参照)は、5分から30分が好ましい。
図4は、各種温度で得られた結晶表面(第2のAlNの表面)の原子間力顕微鏡像の図である。(a)はT2=1450℃、(b)はT2=1500℃、(c)はT2=1550℃の場合を示し、(d)はサファイア基板の表面を示している。それぞれの表面粗さRaは、写真の上部に記載されている通り、2.36nm、0.37nm、0.18nm、0.18nmである。最小で0.18nmの表面粗さが得られたが、最大で2.36nmの表面粗さが得られた。
図5は、T2=1500℃とし、各種流量で得られた結晶表面(第2のAlNの表面)の原子間力顕微鏡像の図である。(a)はNH流量=1.0slm、(b)はNH流量=1.5slm、(c)はNH流量=2.0slmの場合を示し、それぞれの表面粗さRaは、写真の上部に記載されている通り、0.31nm、0.37nm、14.75nmである。最小で0.31nmの表面粗さが得られたが、最大で14.36nmの表面粗さが得られた。
図6は、NH流量=1.5slmの場合の初期層(第1のAlN層)の表面の原子間力顕微鏡像の図である。(a)、(b)は熱処理前の初期層の表面を示し、(A),(B)はT2=1500℃の熱処理後の表面を示している。それぞれの表面粗さRaは、写真の上部に記載されている通り、0.28nm、0.28nm、0.32nm、0.21nmである。最小で0.21nmの表面粗さが得られたが、最大で0.32nmの表面粗さが得られた。
以上、説明したように、A面サファイア基板を用いることによって、単一の成長方法(たとえばHVPE法だけ)で結晶性に優れたC面AlNが得られる。また、AlN層の厚みも、少なくとも1〜3μmにおいて、クラックが生じず、結晶性が向上していた。また、A面結晶の面内における熱膨張係数などの異方性という理由から、AlN層の厚みは、3μm以上であってもクラックが生じないものと思われる。また、(102)面および(100)面のX線ロッキングカーブの半値幅は格段に小さくなり、結晶性の高さが確認できる。また、C面サファイア上のAlNには多数のクラックも生じている。
なお、表面に溝や凹凸構造を有するA面サファイア基板を用い、その上に同様な方法でAlNを成長させることは、結晶の歪緩和の効果が期待できなお良い。また、本実施例で示した結晶成長方法および条件、プロセス方法および条件、光半導体素子の層組成や構造など一例であり、これに限定されるものではない。光半導体素子として、LED(図10)やPD(図11)に本発明を適用することもできる。
図10は、LEDの断面図である。
この素子は、A面サファイア基板11上に順次形成された、AlN層12、n型AlGaNからなるコンタクト層13、n型AlGaNからなるクラッド層14、AlGaNからなる活性層15、p型のAlGaNからなるキャリアブロック層16、p型AlGaNからなるクラッド層17を備え、p型GaNからなるコンタクト層18が形成され、その上にはP側の透明電極19、P側の電極20が形成されている。また、コンタクト層13の表面領域の一部はエッチングされ、エッチングされた箇所に電極121が形成されている。各層の材料と形成方法は、上述のLDの場合と同様であるが、異なる材料として透明電極が用いられており、透明電極19はNi/Auなどからなる。なお、光をサファイア側から取り出す場合には、透明電極に替えてNi/Agなどの紫外線に対して反射率の高い材料を用いることが望ましい。
図11は、PDの断面図である。
この素子は、A面サファイア基板21上に順次形成された、AlN層22、n型AlGaNからなるコンタクト層23、AlGaN層24、p型のAlGaN層25、P側の透明電極26、P側の電極27を備えている。また、コンタクト層23の表面領域の一部はエッチングされ、エッチングされた箇所に電極28が形成されている。各層の材料と形成方法は、上述のLEDの場合と同様である。なお、上述の半導体の導電型(n型、p型)は、互いに入れ替えても動作させることができる。
以上、説明したように、上述の窒化物光半導体素子は、A面サファイア基板(1,11,21)と、基板(1,11,21)上に設けられた厚さが1μmを超えるC面AlN層(2,12,22)と、AlN層(2,12,22)上に形成されたn型(第1導電型)のIII族窒化物系半導体層(4、14,23)と、n型のIII族窒化物系半導体層上に形成されたp型(第2導電型)のIII族窒化物系半導体層(9、17、25)とを備えている。前記n型のIII族窒化物系半導体層(4、14,23)とp型(第2導電型)のIII族窒化物系半導体層(9、17、25)との間には、発光素子においてはキャリアと光の閉じ込めを行うヘテロ接合が存在しており、p型とn型の半導体層が存在することで、整流作用を有するダイオードとしても機能している。
また、上述の例では、n型及びp型のIII族窒化物系半導体層は、それぞれAlGaNからなるが、紫外線を発生させるためには、Alの組成比は0.2以上1.0以下であることが好ましく、この場合においても、本発明では良好な結晶性の素子を得ることができる。
1,11,21…A面サファイア基板、2,12,22…C面AlN層、4,14,23…n型のIII族窒化物系半導体層、9,17,25…p型のIII族窒化物系半導体層。

Claims (2)

  1. A面サファイア基板と、
    前記基板上に設けられた厚さが1μmを超えるC面AlN層と、
    前記AlN層上に形成された第1導電型のIII族窒化物系半導体層と、
    前記第1導電型のIII族窒化物系半導体層上に形成された第2導電型のIII族窒化物系半導体層と、
    を備えることを特徴とする窒化物光半導体素子。
  2. 前記第1及び第2導電型のIII族窒化物系半導体層は、それぞれAlGaNからなり、Alの組成比は0.2以上1.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物光半導体素子。
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