以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る透明複合材料は、透明樹脂(a)と、ガラス繊維(b)と、無機フィラー(c)とを含有する。上記無機フィラー(c)は扁平状であり、かつ上記無機フィラー(c)のアスペクト比は3以上である。
透明シートを得る際には、例えば、透明複合材料をシート状にする。次に、加熱及び活性光線の照射の内の少なくとも一方により、透明複合材料を硬化させる。なお、透明複合材料は、例えば、無機フィラー(c)を透明樹脂(a)中に分散させて分散液を得た後、該分散液をガラス繊維(b)に含浸させることにより得ることができる。
本発明に係る透明複合材料は、例えば、常温下又は加熱下において流延することにより、シート状にすることができる。上記透明複合材料をシート状にすると、流動剪断により、扁平状の無機フィラー(c)の扁平面が、シートの主面と略平行に配置されやすい。このような状態で、シート状の透明複合材料を硬化させることにより、扁平状の無機フィラー(c)の扁平面がシートの主面と略平行に配置された状態の透明シートを容易に得ることができる。
図1に、本発明に係る透明複合材料を用いた透明シートの一例を模式的に正面断面図で示す。
図1に示すように、透明シート1中には、複数の扁平状の無機フィラー2A,2Bが分散されている。無機フィラー2Aは、透明シート1の表面近傍に位置している。無機フィラー2Bは、透明シート1の中央の領域に位置している。無機フィラー2A,2Bの扁平面2aは、透明シート1の第1,第2の主面1a,1bと略平行に配置されている。なお、図1では、透明シート1に含まれる成分の内、無機フィラー2A,2Bのみを示している。さらに、図示の便宜上、実際の寸法から透明シート1及び無機フィラー2A,2Bの寸法を適宜変更している。
透明シート1では、例えば、第1の主面1aから侵入しようとする水蒸気に対して、先ず、透明シート1の表面近傍の無機フィラー2Aの扁平面2aがバリア層として作用する。無機フィラー2Aにより、透明シート1内への水蒸気の侵入が妨げられる。透明シート1を水蒸気が透過するためには、水蒸気は、無機フィラー2Aの扁平面2aに沿って拡散移動した後に、無機フィラー2Aの端部2bの外側の領域を通過する必要がある。更に、1つの無機フィラー2Aの端部2bの外側の領域を水蒸気が通過したとしても、透明シート1の無機フィラー2Aよりも内側の領域には、他の扁平状の無機フィラー2Bが存在する。無機フィラー2Aの端部2bの外側の領域を通過した水蒸気は、無機フィラー2Bにより通過が阻害される。このため、透明シート1を水蒸気が透過するためには、例えば、図1に矢印Xを付して示すように、水蒸気が移動しなければならない。
従って、無機フィラー2A,2Bの扁平面に沿って水蒸気が拡散移動した後に、無機フィラー2A,2Bの端部2bの外側の領域を水蒸気が通過することを繰り返す、いわゆるメイズ効果によって、透明シート1の水蒸気の透過を効果的に抑制できる。
上記の理由から、本透明に係る透明複合材料を用いた透明シートは、優れた水蒸気バリア性を有する。また、本発明に係る透明複合材料は上記組成を有するので、該透明複合材料を用いた透明シートは、透明性、耐熱性及び寸法安定性にも優れている。
従って、本発明に係る透明複合材料は、液晶表示素子用基板及び有機EL表示素子用基板などの表示素子用基板、太陽電池用基板又はタッチパネル等に好適に用いられる。
以下、本発明に係る透明複合材料に含まれる各成分の詳細を説明する。
(透明樹脂(a))
本発明に係る透明複合材料に含まれている透明樹脂は、透明な樹脂であれば特に限定されない。透明樹脂(a)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記透明樹脂(a)としては、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂及びシルセスキオキサン樹脂等が挙げられる。
透明樹脂(a)は、硬化前に室温(25℃)で液状の硬化性樹脂であることが好ましい。透明樹脂(a)は、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びシルセスキオキサン樹脂からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましい。
硬化前に室温で液状の硬化性樹脂である上記(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリルオリゴマーが挙げられる。上記(メタ)アクリル樹脂は、加熱及び活性光線の照射により架橋し、硬化する。上記(メタ)アクリル樹脂の硬化物は、可視光線に対して、高い透過性を有する。上記(メタ)アクリル樹脂は、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル樹脂は、脂環式(メタ)アクリレート又は環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートであることがより好ましい。上記脂環式(メタ)アクリレート樹脂は、ノルボルナンジメチロールジアクリレート及びジシクロペンタジエニルジアクリレートの内の少なくとも一種であることが好ましい。上記環状エーテル構造を有する(メタ)アクリレートは、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレートであることが好ましい。これらの好ましい(メタ)アクリル樹脂の使用により、透明シートの透明性及び耐熱性をより一層高めることができる。上記(メタ)アクリル樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。上記(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
透明樹脂(a)を架橋し、硬化させる方法としては、加熱する方法、活性光線を照射する方法、並びに加熱し、かつ活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。透明樹脂(a)は、加熱及び活性光線の照射の内の少なくとも一方により硬化する樹脂であることが好ましい。
透明樹脂(a)が(メタ)アクリル樹脂である場合には、活性光線を照射する方法が好ましく、硬化反応を完結させる観点からは、活性光線の照射の後に、さらに加熱する方法がより好ましい。
上記活性光線は、紫外線であることが好ましい。該紫外線を照射するための光源としては、例えば、メタルハライドタイプ及び高圧水銀灯ランプ等が挙げられる。
透明樹脂(a)を活性光線の照射により架橋し、硬化させるために、本発明に係る透明複合材料は、光重合開始剤を含有することが好ましい。透明樹脂(a)が上記(メタ)アクリル樹脂である場合に、光重合開始剤が用いられることが好ましい。該光重合開始剤は、ラジカルを発生する光重合開始剤であることが好ましい。上記光重合開始剤は、透明樹脂(a)中に添加されることが好ましい。
上記光重合開始剤は特に限定されない。上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロロ−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、及び4−(p−メトキシフェニル)−2,6−ジ−(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。上記光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
透明樹脂(a)100重量部に対して、上記光重合開始剤の含有量の好ましい下限は0.01重量部、より好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は2重量部、より好ましい上限は1重量部である。上記光重合開始剤の含有量が多いほど、透明複合材料の感度が高くなる。上記光重合開始剤の含有量が上記好ましい下限を満たすと、透明複合材料を充分に硬化させることができる。上記光重合開始剤の含有量が上記好ましい上限を満たすと、硬化反応が急激に進行し難くなり、更に硬化時の割れ及び硬化物の着色等の問題が生じ難くなる。
加熱及び活性光線の照射の内の少なくとも一方により、透明複合材料を架橋し、硬化させた後に、さらに高温で熱処理することが好ましい。熱処理により、透明シートの線膨張係数を低くすることができる。上記熱処理の条件は、窒素雰囲気下又は真空状態で、150〜250℃、1〜24時間の条件であることが好ましい。
透明樹脂(a)としてエポキシ樹脂を用いてもよい。該エポキシ樹脂は、例えば従来公知のエポキシ樹脂を使用でき特に限定されない。上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型又はビスフェノールS型などのエポキシ樹脂、フェノールノボラック型又はクレゾールノボラック型などのノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型又はヒンダントイン型などの含窒素環型エポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型などのジシクロ型エポキシ樹脂、エステル型エポキシ樹脂、並びにエーテルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の変性物を用いてもよい。透明シートの変色を防止する観点からは、上記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましい。上記エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
透明樹脂(a)を硬化させるために、本発明に係る透明複合材料は、硬化剤を含有していてもよい。特に透明樹脂(a)がエポキシ樹脂である場合に、硬化剤が用いられることが好ましい。上記硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。本発明に係る透明複合材料は、光重合開始剤及び硬化剤の内の少なくとも一種を含有することが好ましい。
上記硬化剤としては、例えば、有機酸化合物及びアミン化合物等が挙げられる。上記有機酸化合物としては、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びメチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。上記アミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタフェニレンジアミン、ジアミンジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルホン酸等が挙げられる。これらのアミン化合物のアミンアダクトを用いてもよい。
また、他の硬化剤としては、例えば、アミド化合物、ヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、フェノール化合物、ユリア化合物及びポリスルフィッド化合物等が挙げられる。
上記アミド化合物としては、ジシアンジアミド及びポリアミド等が挙げられる。上記ヒドラジド化合物としては、ジヒドラジット等が挙げられる。上記イミダゾール化合物としては、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、エチルジイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。上記イミダゾリン化合物としては、メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリン、イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、フェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリン、ヘプタデシルイミダゾリン及び2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等が挙げられる。
上記硬化剤として、酸無水物化合物も使用できる。該酸無水物化合物の使用により、透明シートの変色をより一層防止できる。上記酸無水物化合物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物及びクロレンディック酸無水物等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂と上記酸無水物化合物とを併用する場合、エポキシ樹脂と硬化剤との含有量は特に制限されない。エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、酸無水物化合物の酸無水物の当量の好ましい下限は0.5当量、より好ましい下限は0.7当量、好ましい上限は1.5当量、より好ましい上限は1.2当量である。上記硬化剤の当量が上記好ましい下限を満たすと、透明シートの着色を充分に抑制できる。上記硬化剤の当量が上記好ましい上限を満たすと、透明シートの耐湿性が良好になる。
本発明に係る透明複合材料は、硬化促進剤を含有していてもよい。該硬化促進剤は特に限定されない。上記硬化促進剤としては、例えば、第三級アミン、イミダゾール、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、有機金属塩、リン化合物及び尿素化合物等が挙げられる。上記硬化促進剤は、第三級アミン、イミダゾール及び第四級ホスホニウム塩からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましい。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤の含有量は特に制限されない。透明樹脂(a)100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量の好ましい下限は0.05重量部、より好ましい下限は0.2重量部、好ましい上限は7.0重量部、より好ましい上限は3.0重量部である。上記硬化促進剤の含有量が上記好ましい下限を満たすと、透明複合材料を充分に硬化させることができる。上記硬化促進剤の含有量が上記好ましい上限を満たすと、透明複合材料の硬化物の着色をより一層抑制できる。
透明樹脂(a)は、下記式(1)で表されるチオール基含有シラン化合物の加水分解縮合物(以下、加水分解縮合物(a1)ともいう)を含むことが好ましい。加水分解縮合物(a1)は、シルセスキオキサン樹脂である。加水分解縮合物(a1)の使用により、透明複合材料の透明性及び耐熱性をより一層高めることができる。
R1Si(OR2)3 ・・・式(1)
上記式(1)中、R1は、チオール基を有しかつ芳香環を有しない炭素数1〜8の有機基、又はチオール基を有しかつ芳香環を有する有機基を表し、R2は、水素原子、芳香環を有しない炭素数1〜8の有機基、又は芳香環を有する有機基を表す。
上記R1としては、具体的には、チオール基を有する炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、チオール基を有する炭素数1〜8の脂環式炭化水素基、又はチオール基を有する芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記R2としては、具体的には、水素原子、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8の脂環式炭化水素基、又は芳香族炭化水素基等が挙げられる。チオール基を有する場合の「炭化水素基」は、炭素原子と水素原子とだけでなく、チオール基に由来する硫黄原子も含む基である。複数の上記R2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記式(1)で表されるチオール基含有シラン化合物含有する成分(以下、成分(a11)ともいう)を加水分解及び縮合させることにより、加水分解縮合物(a1)を得ることができる。すなわち、加水分解反応及び縮合反応により、加水分解縮合物(a1)を得ることができる。
上記式(1)で表されるチオール基含有シラン化合物としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,4−ジメルカプト−2−(トリメトキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリエトキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリプロポキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリブトキシシリル)ブタン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリメトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリエトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリプロポキシシラン、及び1,2−ジメルカプトエチルトリブトキシシラン等が挙げられる。なかでも、加水分解反応の反応性が高く、かつ入手が容易であるため、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。上記式(1)で表されるチオール基含有シラン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
加水分解縮合物(a1)を得る際に、上記式(1)で表されるチオール基含有シラン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。さらに、加水分解縮合物(a1)を得る際に、上記チオール基含有シラン化合物以外の架橋性化合物を用いてもよい。加水分解縮合物(a1)には、上記チオール基含有シラン化合物のみを用いたものだけでなく、上記チオール基含有シラン化合物と、該チオール基含有シラン化合物以外の架橋性化合物を用いたものも含まれる。上記成分(a11)には、上記式(1)で表されるチオール基含有シラン化合物と、必要に応じて用いられる上記架橋性化合物とが含まれる。
上記架橋性化合物としては、トリアルキルアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシチタン及びテトラアルコキシジルコニウム等が挙げられる。なかでも、トリアルキルアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン又はテトラアルコキシシランが好ましい。これらの好ましい架橋性化合物の使用により、加水分解縮合物(a1)の架橋密度を容易に調整できる。上記アルキルトリアルコキシシランの使用により、加水分解縮合物(a1)に含まれるチオール基の数を容易に調整できる。テトラアルコキシチタン又はテトラアルコキシジルコニウムの使用により、加水分解縮合物(a1)の硬化物の屈折率が高くなる。上記架橋性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記トリアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン及びトリフェニルエトキシシラン等が挙げられる。上記ジアルキルジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン及び3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。上記アルキルトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。上記テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシラン等が挙げられる。上記テトラアルコキシチタンとしては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン及びテトラブトキシチタン等が挙げられる。上記テトラアルコキシジルコニウムとしては、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム及びテトラブトキシジルコニウム等が挙げられる。これら以外の金属アルコキシドを用いてもよい。
加水分解縮合物(a1)を得る際の加水分解反応に用いる触媒は、従来公知の触媒を用いることができ特に限定されない。触媒活性が高く、更に縮合反応の触媒としても機能するので、上記触媒はギ酸であることが好ましい。
成分(a11)100重量部に対して、上記触媒の含有量の好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は1重量部、好ましい上限は25重量部、より好ましい上限は10重量部である。上記触媒の含有量が上記好ましい下限を満たすと、上記加水分解反応が十分に進行し、反応時間を短くすることができる。上記触媒の含有量が上記好ましい上限を満たすと、透明樹脂(a)の保存安定性が高くなる傾向がある。さらに、後工程で触媒を容易に除去できる。
上記加水分解反応の反応温度及び反応時間は、上記シラン化合物の反応性に応じて任意に設定できる。上記反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜60℃である。上記反応時間は、1分〜2時間程度である。
上記加水分解反応の際に、溶剤を用いてもよく、溶剤を用いなくてもよい。該溶剤の種類は特に限定されない。溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記加水分解反応の際に用いられる上記溶剤は、縮合反応に用いられる溶剤と同じであることが好ましい。上記シラン化合物の反応性が低い場合は、上記加水分解反応の際に、溶剤を用いないことが好ましい。
[加水分解反応により生じた水酸基のモル数]/[成分(a11)に含まれるアルコキシ基の合計モル数](以下、モル比Aともいう)が0.5以上であるように、上記加水分解反応を進行させることが好ましい。上記モル比Aは0.8以上であることがより好ましい。上記縮合反応は、加水分解により生じた水酸基間だけでなく、該水酸基と残存アルコキシ基との間でも進行する。このため、上記モル比Aは0.5以上であることが好ましい。
上記縮合反応では、加水分解により生じた水酸基間で水が生成し、更に水酸基とアルコキシ基間でアルコールが生成する。この縮合反応により、加水分解縮合物(a1)はガラス化する。
上記縮合反応では、従来公知の縮合触媒を用いることができる。上記ギ酸は、触媒活性が高く、加水分解反応の触媒としてだけでなく、縮合反応の触媒としても作用する。従って、上記縮合触媒は、ギ酸であることが好ましい。上記縮合反応での反応温度及び反応時間はそれぞれ、成分(a11)の反応性に応じて任意に設定できる。上記反応温度は、通常40〜150℃程度、好ましくは60〜100℃である。上記反応時間は、30分〜12時間程度である。
[未反応の水酸基と未反応のアルコキシ基との合計モル数]/[成分(a11)に含まれるアルコキシ基の合計モル数](以下、モル比Bともいう)が0.3以下であるように上記縮合反応を進行させることが好ましい。上記モル比Bは0.2以下であることがより好ましい。上記モル比Bが上記好ましい上限を満たすと、未反応の水酸基とアルコキシ基とが、透明樹脂(a)の保管中に縮合反応してゲル化し難くなる。さらに、硬化物において縮合反応が進行し難くなり、硬化物にクラックが発生し難くなる。
上記縮合反応の際に、成分(a11)の濃度の好ましい下限は2重量%、より好ましい下限は15重量%、好ましい上限は80重量%、より好ましい上限は60重量%である。上記縮合反応によって生成する水及びアルコールよりも沸点が高い溶剤を用いることが好ましい。この場合には、反応系中から、溶剤を容易に除去できる。上記濃度が上記範囲内にある場合には、反応中にゲル化し難くなり、加水分解縮合物(a1)の分子量が大きくなりすぎず、加水分解縮合物(a1)の保存安定性がより一層高くなる。
上記縮合反応の際に、該縮合反応によって生成する水及びアルコールよりも沸点が高い溶剤を用いることが好ましい。該溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、上記架橋性化合物を溶剤として用いることもできる。
上記縮合反応の後に、触媒を除去することが好ましい。触媒の除去により、加水分解縮合物(a1)の保存安定性を高めることができる。上記触媒の除去方法は、触媒の種類に応じて公知方法を適宜に選択できる。上記触媒の除去方法としては、触媒の沸点以上に加熱する方法、及び減圧する方法等が挙げられる。上記触媒がギ酸である場合には、これらの方法によりギ酸を容易に除去できる。
透明樹脂(a)は、加水分解縮合物(a1)に加えて、エポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物(a2)ともいう)及びイソシアネート基を有する化合物(以下、イソシアネート化合物(a3)ともいう)の内の少なくとも一種をさらに含むことが好ましい。この場合には、加熱により透明樹脂(a)を効率的に架橋させ、硬化させることができる。
エポキシ化合物(a2)は特に限定されない。エポキシ化合物(a2)としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂及びアリールアルキレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ化合物(a2)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
エポキシ化合物(a2)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート828」など)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート807」など)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製の商品名「サントートST−3000」など)、又は脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製の商品名「セロキサイド2021」など)であることが好ましい。これらの好ましいエポキシ化合物(a2)の使用により、透明複合材料の硬化物の透明性及び耐熱性をより一層高めることができる。
上記エポキシ化合物(a2)の分子量は高い方が好ましい。高分子量のエポキシ化合物(a2)の使用により、透明複合材料の硬化物の可撓性が高くなる。高分子量のエポキシ化合物(a2)としては、エポキシ当量が2000g/当量以上のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート1010」及び「エピコート4007P」など)、エポキシ変性シリコーン樹脂(信越化学工業社製の商品名「X−22−163A」など)、並びにポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
イソシアネート化合物(a3)は特に限定されない。イソシアネート化合物(a3)としては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。イソシアネート化合物(a3)としては、具体的には、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、及びm−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、並びにダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。イソシアネート化合物(a3)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
透明複合材料の硬化物の透明性及び耐熱性を高める観点からは、イソシアネート化合物(a3)は、イソホロンジイソシアネートであることが好ましい。
イソシアネート化合物(a3)の分子量は高い方が好ましい。高分子量のイソシアネート化合物(a3)の使用により、透明複合材料の硬化物の可撓性が高くなる。高分子量のイソシアネート化合物(a3)としては、ポリオールのジイソシアネート変性物、及びポリメリックMDI(三井武田ケミカル社製の商品名「コスモネートM」など)等が挙げられる。上記ポリオールとしては、ポリカーボネートジオール及びポリエステルジオール等が挙げられる。
加熱による透明樹脂(a)の硬化反応を促進するために、エポキシ化合物(a2)と触媒とを併用してもよい。エポキシ化合物(a2)と併用される触媒としては、例えば、三級アミン、イミダゾール、有機ホスフィン及びテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
上記三級アミンとしては、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。上記イミダゾールとしては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール及び2−ヘプタデシルイミダゾール等が挙げられる。上記有機ホスフィンとしては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン及びフェニルホスフィン等が挙げられる。上記テトラフェニルボロン塩としては、テトラフェニルホスホニウム テトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール テトラフェニルボレート、及びN−メチルモルホリン テトラフェニルボレート等が挙げられる。
上記イソシアネート化合物(a3)と触媒とを併用することが好ましい。イソシアネート化合物(a3)と併用される触媒としては、有機スズ化合物及び三級アミン等が挙げられる。
上記有機スズ化合物としては、ジブチルスズジラウレート及びオクチル酸スズ等が挙げられる。上記三級アミンとしては、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
透明樹脂(a)100重量部に対して、上記エポキシ化合物(a2)及びイソシアネート化合物(a3)と併用される触媒の含有量は、0.01〜5重量部の範囲内であることが好ましい。
透明樹脂(a)100重量%中、加水分解縮合物(a1)と、エポキシ化合物(a2)及びイソシアネート化合物(a3)の内の少なくとも一種との配合比は、用途に応じて適宜に決定できる。
[加水分解縮合物(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[エポキシ化合物(a2)に含まれるエポキシ基とイソシアネート化合物(a3)に含まれるイソシアネート基との合計のモル数](以下、モル比Cともいう)は、0.9〜1.1の範囲内であることが好ましい。上記モル比Cが0.9以上であると、硬化後にエポキシ基及びイソシアネート基が残存し難くなり、透明複合材料の硬化物の耐候性が高くなる。上記モル比が1.1以下であると、チオール基が残存し難くなり、チオール基の分解による悪臭が生じ難くなる。
透明樹脂(a)は、加水分解縮合物(a1)に加えて、炭素−炭素二重結合を有する化合物(以下、不飽和化合物(a4)ともいう)をさらに含むことが好ましい。該不飽和化合物(a4)の使用により、加熱及び活性光線の照射により、透明複合材料を硬化させることができる。
不飽和化合物(a4)は特に限定されない。不飽和化合物(a4)の上記炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、(メタ)アクリル基及びアリル基等が挙げられる。上記炭素−炭素二重結合は、加水分解縮合物(a1)のチオール基と反応(エン−チオール反応)する。この反応の反応機構は、重合開始剤の有無により異なる。このため、加水分解縮合物(a1)及び不飽和化合物(a4)は、最適な配合量に適宜調整される。
上記重合開始剤が用いられない場合は、炭素−炭素二重結合1個に対して、チオール基1個が付加反応する。上記重合開始剤が用いられる場合は、炭素−炭素二重結合1個に対して、チオール基1個が付加反応することに加えて、連鎖的ラジカル反応が進行する。この結果、上記重合開始剤が用いられない場合は、加水分解縮合物(a1)に含まれるチオール基と不飽和化合物(a4)に含まれる炭素−炭素二重結合とは、1:1(モル比)で反応する。上記重合開始剤が用いられる場合には、加水分解縮合物(a1)に含まれるチオール基と、不飽和化合物(a4)に含まれる炭素−炭素二重結合とは、1:1(モル比)では反応しない。
上記の観点から、重合開始剤が用いられない場合は、加水分解縮合物(a1)と不飽和化合物(a4)との配合比は、[加水分解縮合物(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[不飽和化合物(a4)に含まれる炭素−炭素二重結合のモル数](以下、モル比D1ともいう)は、0.9〜1.1の範囲内であることが好ましい。上記モル比D1は1.0であることがより好ましい。上記モル比D1が0.9以上であると、硬化後に炭素−炭素二重結合が残存し難くなり、透明複合材料の硬化物の耐候性が高くなる。上記モル比が1.1以下であると、チオール基が残存し難くなり、チオール基の分解による悪臭が生じ難くなる。
重合開始剤が用いられる場合は、加水分解縮合物(a1)と不飽和化合物(a4)との配合比は、[加水分解縮合物(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[不飽和化合物(a4)に含まれる炭素−炭素二重結合のモル数](以下、モル比D2といもいう)は、0.01〜1.1の範囲内であることが好ましい。上記モル比D2が0.01以上であると、透明複合材料の硬化物の水蒸気バリア性をより一層高めることができる。さらに、硬化後に炭素−炭素二重結合が残存し難くなり、透明複合材料の硬化物の耐候性が高くなる。上記モル比D2が1.1以下であると、チオール基が残存し難くなり、チオール基の分解による悪臭が生じ難くなる。
また、炭素−炭素二重結合を有する官能基とチオール基との反応より優先して、炭素−炭素二重結合を有する官能基同士が反応するのを抑制するために、不飽和化合物(a4)は、アリル基を有することが好ましい。
アリル基を1つ有する化合物としては、けい皮酸、モノアリルシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、ビスフェノールAモノアリルエーテル、ビスフェノールFモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノアリルエーテル等が挙げられる。
アリル基を2つ有する化合物としては、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールFジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、及びトリプロピレングリコールジアリルエーテル等が挙げられる。
アリル基を3つ以上含有する化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、及びトリメチロールプロパントリアリルエーテル等が挙げられる。アリル基を有する化合物は、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート又はペンタエリスリトールトリアリルエーテルであることが特に好ましい。
不飽和化合物(a4)の分子量は高いことが好ましい。高分子量の不飽和化合物(a4)の使用により、硬化物の可撓性が高くなる。高分子量の不飽和化合物(a4)としては、メチルアリルシロキサンとジメチルシロキサンとからなる共重合物、エピクロルヒドリンとアリルグリシジルエーテルとからなる共重合物(ダイソー社製の商品名「エピクロマー」、及び日本ゼオン社製の商品名「Gechron」など)、並びにアリル基末端ポリイソブチレンポリマー(カネカ社製の商品名「エピオン」)等が挙げられる。
[不飽和化合物(a4)に含まれる炭素−炭素二重結合のモル数]/[不飽和化合物(a4)のモル数](以下、モル比Eともいう)は2以上であることが好ましい。上記モル比Eは、1分子あたりに含まれる炭素−炭素二重結合の平均個数を示す。上記モル比Eが2以上であると、透明樹脂(a)の硬化性が高くなり、かつ硬化物の架橋密度が高くなる。このため、硬化物の耐熱性及び硬度が高くなる傾向がある。
本発明に係る透明複合材料は、加水分解縮合物(a1)を含む場合にも、重合開始剤を含有していてもよい。該重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
上記光カチオン重合開始剤としては、紫外線の照射により酸を発生する化合物であるスルホニウム塩、ヨードニウム塩、メタロセン化合物及びベンゾイントシレート等が挙げられる。上記光カチオン重合開始剤の市販品としては、ユニオンカーバイド社製の商品名
「サイラキュアUVI−6970」、「サイラキュアUVI−6974」及び「サイラキュアUVI−6990」、チバ・ジャパン社製の商品名「イルガキュア264」、並びに日本曹達社製の商品名「CIT−1682」等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、チバ・ジャパン社製の商品名「ダロキュア1173」、「イルガキュア651」、「イルガキュア184」及び「イルガキュア907」、並びにベンゾフェノン等が挙げられる。
透明樹脂(a)100重量部に対して、上記重合開始剤の含有量の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は15重量部、より好ましい上限は10重量部、さらに好ましい上限は5重量部である。
透明樹脂(a)の保存安定性をより一層高めるために、エン−チオール反応抑制剤を使用できる。該エン−チオール反応抑制剤としては、リン化合物、ラジカル重合禁止剤、三級アミン及びイミダゾール等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン及び亜リン酸トリフェニル等が挙げられる。上記ラジカル重合禁止剤としては、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、及びジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。上記三級アミンとしては、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール、及びジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。上記イミダゾールとしては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチルへキシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール及び1−シアノエチル−2−メチルイミダール等が挙げられる。
上記リン化合物のなかでも、亜リン酸トリフェニルが好ましい。該亜リン酸トリフェニルは、エン−チオール反応の抑制効果が高く、かつ室温で液状であるため、取り扱いが容易である。透明樹脂(a)100重量部に対して、上記リン化合物の含有量は0.1〜10重量部の範囲内であることが好ましい。上記リン化合物の含有量が0.1重量部以上であると、エン−チオール反応を充分に抑制できる。上記リン化合物の含有量が10重量部以下であると、硬化後に上記リン化合物の残存量が少なくなり、上記リン化合物に由来する硬化物の物性の低下を抑制できる。
上記ラジカル重合禁止剤のなかでも、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好ましい。該N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩は、少量でもエン−チオール反応を抑制でき、かつ硬化物の透明性を高めることができる。透明樹脂(a)100重量部に対して、上記ラジカル重合禁止剤の含有量は0.0001〜0.1重量部の範囲内であることが好ましい。上記ラジカル重合禁止剤の含有量が0.001重量部以上であると、エン−チオール反応を充分に抑制できる。上記ラジカル重合禁止剤の含有量が0.1重量部以下であると、硬化性が高くなる傾向がある。
上記三級アミンのなかでも、ベンジルジメチルアミンが好ましい。該ベンジルジメチルアミンは、エン−チオール反応の抑制効果が高く、かつ室温で液状であるため、取り扱いが容易である。透明樹脂(a)100重量部に対して、上記三級アミンの含有量は0.001〜5重量部の範囲内であることが好ましい。上記三級アミンの含有量が0.001重量部以上であると、エン−チオール反応を充分に抑制できる。上記三級アミンの含有量が5重量部以下であると、加水分解縮合物(a1)中の未反応の水酸基及びアルコキシ基の縮合反応が生じ難くなり、ゲル化が生じ難くなる。
加水分解縮合物(a1)と不飽和化合物(a4)との配合比は、用途に応じて適宜変更できる。また、加水分解縮合物(a1)と不飽和化合物(a4)とを併用する場合には、必要に応じて溶剤を配合できる。
透明樹脂(a)の硬化物のアッベ数は、35〜50の範囲内であることが好ましい。透明樹脂(a)のアッベ数が上記範囲内である場合には、透明シートの光線透過率をより一層高くすることができる。
透明樹脂(a)の硬化物は、例えば、本発明に係る透明複合材料の作製の際に、ガラス繊維(b)及び無機フィラー(c)を添加しなかったものを硬化させることにより得られる。また、透明樹脂(a)の硬化物は、例えば、透明樹脂(a)と、該透明樹脂(a)を硬化させるための光重合開始剤及び硬化剤の内の少なくとも一方等とを混合した混合物を硬化させることにより得られる。
(ガラス繊維(b))
本発明に係るガラス繊維(b)の形態は特に限定されない。ガラス繊維(b)は、織布又は不織布であることが好ましい。ガラス繊維(b)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。ガラス繊維が織布である場合には、ガラス繊維は、ガラスクロスである。
上記ガラスクロスとしては、例えば、断面が円形又は楕円形等でありかつ断面最長径が3〜10μm程度の長繊維(フィラメント)を、100〜800本程度撚り合わせたヤーンを、経糸及び緯糸として用いて、これらの糸を交錯させるように織ることにより得られる。織り方としては、平織、綾織及び朱子織等が挙げられる。
上記ガラスクロスの厚さは最も厚い部分で、通常10〜500μmである。上記ガラスクロスの厚さは、最も厚い部分で、15〜350μmであることが好ましい。
ガラス繊維(b)の材質として、ソーダガラス、ホウ珪酸ガラス及び無アルカリガラス等が用いられる。なかでも、無アルカリガラスが好ましい。無アルカリガラスの使用により、透明シートを表示素子用基板又は太陽電池用基板として用いたときに、ガラス繊維(b)に由来するアルカリ成分が半導体素子に悪影響を及ぼさなくなる。
ガラス繊維(b)は、Eガラスであることが好ましい。該Eガラスは、ガラス繊維強化回路基板用の芯材として広く用いられている。繊維径、繊維束径、ガラスクロスとしての目付、織り密度及び厚さ等に関して、上記Eガラスは、種々の規格品が揃っている。また、性能、コスト及び入手の容易性の観点から、Eガラスは好適に用いられる。
ガラス繊維(b)は、Tガラスであることも好ましい。Tガラス繊維は、Eガラス繊維よりも、高強度及び低熱膨張等の点で優れている。
ガラス繊維(b)の引っ張り弾性率の好ましい下限は5GPa、より好ましい下限は10GPa、好ましい上限は500GPa、より好ましい上限は200GPaである。上記引っ張り弾性率が低すぎると、透明シートの強度が低くなる傾向がある。
透明樹脂(a)100重量部に対して、ガラス繊維(b)の含有量の好ましい下限は10重量部、より好ましい下限は15重量部、好ましい上限は200重量部、より好ましい上限は120重量部である。ガラス繊維(b)の含有量が少なすぎると、ガラス繊維(b)による熱膨張の低減効果が不十分となる傾向がある。ガラス繊維(b)の含有量が多すぎると、ガラス繊維(b)に透明樹脂(a)を含浸させることが困難となり、透明シートの表面又は内部にボイドが発生して透明性が低下しやすくなる。
(無機フィラー(c))
無機フィラー(c)は扁平状であり、かつ無機フィラー(c)のアスペクト比は3以上である。扁平状の無機フィラー(c)のアスペクト比が3以上であるため、透明シートを得る際に、剪断流動により、無機フィラー(c)の扁平面がシートの主面と略平行に配置されやすい。無機フィラー(c)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
無機フィラー(c)のアスペクト比は10以上であることが好ましい。アスペクト比が10以上であると、透明シートを得る際に、剪断流動により、無機フィラー(c)の扁平面がシートの主面と略平行により一層配置されやすい。このため、透明シートの水蒸気バリア性をより一層高めることができる。
無機フィラー(c)のアスペクト比の上限は特に限定されない。透明シートの厚み、並びに無機フィラー(c)の長軸平均長さ等により適宜変更できる。アスペクト比の上限は例えば、100程度である。
透明複合材料の水蒸気バリア性をより一層高める観点からは、無機フィラー(c)の長軸平均長さは10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。上記長軸平均長さが10μm以上であると、無機フィラー(c)の含有量がさほど高くなくても、上記メイズ効果を充分に得ることができ、透明シートの水蒸気バリア性を効果的に高めることができる。さらに、透明複合材料の流動性が適度になり、シート化しやすくなる。上記長軸平均長さが50μm以上であると、透明シートの水蒸気バリア性をより一層効果的に高めることができ、かつ透明複合材料のシート化がより一層容易になる。
上記「長軸」は、例えば、扁平状の無機フィラー(c)の厚み方向を短軸とした場合に、短軸と直交する平面方向の面長を意味する。
無機フィラー(c)の長軸平均長さの上限は、透明シートの厚みにより適宜調整できる。上記長軸平均長さの上限は、透明シートの厚みと同程度であることが好ましく、透明シートの厚みの3倍程度であることがより好ましい。長軸平均長さが上記好ましい長さであると、無機フィラー(c)がガラス繊維(b)と絡み難くなり、透明シートの厚みばらつきが生じ難くなる。
透明樹脂(a)100重量部に対して、無機フィラー(c)の含有量は10〜50重量部の範囲内であることが好ましい。無機フィラー(c)の含有量が10重量部以上であると、透明シートの水蒸気バリア性をより一層高めることができる。無機フィラー(c)の含有量が50重量部以下であると、透明樹脂(a)に無機フィラー(c)を分散させた分散液の流動性が適度になる。このため、該分散液をガラス繊維(b)に含浸させやすい。さらに、透明複合材料をシート状にしやすい。
無機フィラー(c)としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛及び酸化チタン等の金属酸化物、マイカ及びスメクタイト等の鉱物、並びにガラス等が挙げられる。これら以外の無機フィラー(c)を用いてもよい。
コストが低く、硬化物の透明性が高く、透明樹脂(a)の硬化物とガラス繊維(b)との屈折率が近いことから、無機フィラー(c)は、ガラスフィラーであることが好ましい。無機フィラー(c)のガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、低誘導率ガラス及び高誘導率ガラス等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属などのイオン性不純物が少ないため、無機フィラー(c)は、Eガラスであることが好ましい。
Eガラスである扁平状の無機フィラー(c)としては、例えば、日本板硝子社製の商品名「マイクロガラス ガラスフレーク」等が挙げられる。
無機フィラー(c)と透明樹脂(a)との界面は十分に濡れていることが好ましい。界面の濡れが不十分であると、無機フィラー(c)の表面で光の反射及び散乱が起こり、透明シートのヘイズ値が大きくなり、透明性が低くなる傾向がある。このため、無機フィラー(c)は、表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。該表面処理剤としては、シラン系カップリング剤又はチタネート系カップリング剤等が挙げられる。
透明樹脂(a)の硬化物とガラス繊維(b)との屈折率差が0.01以下であり、かつ透明樹脂(a)の硬化物と無機フィラー(c)との屈折率差が0.01以下であることが好ましい。透明樹脂(a)の硬化物とガラス繊維(b)との屈折率差が0.005以下であり、かつ透明樹脂(a)の硬化物と無機フィラー(c)との屈折率差が0.005以下であることがより好ましい。これらの屈折率差を満たすと、ガラス繊維(b)及び無機フィラー(c)による光散乱を十分に抑制でき、透明樹脂(a)の透明性を維持して、ヘイズ値が小さい透明シートを得ることができる。上記屈折率差は、例えば、透明樹脂(a)の分子構造の変性、又は各成分の配合比により調整できる。
(他の成分)
本発明の透明複合材料は、各種用途での必要性に応じて、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤及び粘度調節剤等を含有していてもよい。
(透明シート)
本発明の透明複合材料をシート状にした後、硬化させることで、透明シートが得られる。例えば、加熱及び活性光線の照射の内の少なくとも一種により、透明複合材料を硬化させる。
透明シートの製造方法としては、以下の第1〜第3の方法が挙げられる。ただし、以下の第1〜第3の方法に限定されない。
第1の方法では、常温又は加熱下で、流動性の透明樹脂(a)にガラス繊維(b)及び無機フィラー(c)を分散して、透明複合材料を調製する。次に、基材上に透明複合材料をシート状に塗布した後、必要に応じて乾燥する。その後、加熱及び活性光線の照射の内の少なくとも一方により、シート状の透明複合材料を架橋し、硬化させる。
第2の方法では、常温又は加熱下で、流動性の透明樹脂(a)にガラス繊維(b)及び無機フィラー(c)を分散して、透明複合材料を調製する。次に、基材上に透明複合材料を供給した後、必要に応じて乾燥する。その後、他の基材でプレス又はラミネートして、透明複合材料をシート状にする。次に、加熱及び活性光線の照射の内の少なくとも一方により、シート状の透明複合材料を架橋し、硬化させる。
第3の方法では、常温又は加熱下で、流動性の透明樹脂(a)に無機フィラー(c)を分散した分散液を、ガラスクロス又はガラス不織布であるガラス繊維(b)に含浸させ、透明複合材料を得た後、必要に応じて乾燥する。その後、透明複合材料を2枚の基材間でプレス又はラミネートして、シート状にする。次に、加熱及び活性光線の照射の内の少なくとも一方により、シート状の透明複合材料を架橋し、硬化させる。
本発明に係る透明シートの厚みは、特に制限されない。透明シートの厚みは、20〜1000μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが20μm以上であれば、表示素子用基板等として十分な強度及び剛性を有する。上記厚みが1000μm以下であると、透明樹脂(a)の硬化の際の体積収縮が小さくなり、応力が残留し難くなる。このため、表示素子用基板に用いた場合に、コントラストが低下し難くなる。さらに、透明シートの反りが生じ難く、かつ厚みのばらつきが生じ難くなる。
透明シートの厚みが1000μmを超える必要がある場合には、透明複合材料をシート状にしたものを複数積層した後に硬化させるか、又は、透明複合材料のシート化と硬化とを繰り返して、透明シートを得ることが好ましい。
本発明に係る透明シートの光透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。光透過率が高いほど、例えば、液晶表示素子又は有機EL表示素子などの表示素子基板等に透明シートを用いて、画像表示装置を得た場合に、表示品位が高くなり、画像が鮮明になる。
上記光透過率は、市販の分光光度計を用いて、波長550nmの全光線透過率を測定することによって求めることができる。
透明シートの水蒸気バリア性を高める観点からは、本発明に係る透明シートの水蒸気透過率は、1×10−1g/m2・日以下であることが好ましい。透明シートの寸法安定性を高める観点からは、本発明に係る透明シートの30〜250℃における平均線膨張係数は、20ppm/℃以下であることが好ましい。
本発明に係る透明シートのヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることがより好ましい。
上記ヘイズ値は、JIS K7136に基づいて測定される。測定装置として、市販のヘイズメーカーが用いられる。測定装置としては、例えば、東京電色社製「全自動ヘーズメーターTC−HIIIDPK」等が挙げられる。
本発明に係る透明シートには、表面平滑化層、ハードコート層又はガスバリア層を積層してもよい。
上記表面平滑化層又はハードコート層を形成する際には、例えば、透明シート上に、既知の表面平滑化剤又はハードコート剤を塗布し、必要に応じて溶剤を除去するために乾燥する。次に、加熱及び活性光線の照射の内の少なくとも一方により、表面平滑化剤又はハードコート剤を硬化させる。
透明シート上に表面平滑化剤又はハードコート剤を塗布する方法は、特に制限されない。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法又はスプレーコート法等の従来公知の方法を採用できる。
本発明に係る透明性複合材シートは、特に扁平状の無機フィラー(c)によって、水蒸気バリア性に優れている。本発明に係る透明性複合材シートに、水蒸気バリア性を高めるためのガスバリア層を積層することにより、水蒸気バリア性をより一層高めてもよい。ガスバリア層の積層により、ピンホール等による欠陥を防止することもできる。
上記ガスバリア層は特に限定されない。上記ガスバリア層の材料としては、例えば、アルミニウムなどの金属、SiO2及びSiNなどの珪素化合物、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、並びに酸化亜鉛等が挙げられる。水蒸気バリア性、透明性及び透明シートへの密着性を高める観点からは、SiO2及びSiNなどの珪素化合物が好ましい。
ガスバリア層を形成する方法は、特に限定されず、蒸着法及びスパッタリング法等の乾式法、並びにゾル−ゲル法等の湿式法が挙げられる。なかでも、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法により形成されたガスバリア層は、緻密でガスバリア性に優れており、かつ、透明シートへの密着性も良好である。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
(実施例1)
透明樹脂(a)としてのトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(NKエステル DCP、新中村化学工業社製)50重量部及びビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(オグソールEA−0200、大阪ガスケミカル社製)48重量部に、光重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・ジャパン社製)0.5重量部を添加し、混合し、混合物1を得た。
透明樹脂(a)が下記の表1に示す含有量であるように秤量された上記混合物1に、無機フィラー(c)として、アスペクト比32及び長軸平均長さ160μmのEガラスである扁平状粒子(マクロガラス ガラスフレークREF−160、日本板硝子社製、屈折率1.558)をアクリロイロキシプロピルトリエトキシシランで処理したものを、下記の表1に示す含有量となるように加え、ミックスローターを用いて分散させて、分散液を得た。
得られた分散液に、ガラス繊維(b)として、Eガラス繊維であるIPC♯2116相当のガラスクロス(日東紡社製、屈折率1.558)を下記の表1に示す含有量となるように浸漬し、超音波を照射しながらガラスクロスに分散液を含浸させた。その後、分散液を含浸したガラスクロス(透明複合材料)を引き上げて、ステンレス板上に乗せ、オーブン内で80℃で10分間乾燥した。さらに、減圧チャンバー内で10Paの圧力まで減圧しながら脱泡した後、ガラス板で挟み込み、上部より0.01MPaの圧力で3分間加圧して、透明複合材料をシート状にした。ガラス板側から高圧水銀灯にて2000mJ/cm2(365nm)のUV光を照射して、シート状の透明複合材料を架橋し、硬化させて、透明シートを得た。
(実施例2)
透明樹脂(a)としての3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(セロキサイド2021P、ダイセル化学工業社製)30重量部及びビスアリールフルオレン系エポキシ樹脂(オンコートEX−1010、長瀬産業社製)20重量部に、硬化剤としてのメチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との7:3(重量比)混合物(リカシッドMH−700、新日本理化社製)42重量部と、硬化促進剤(ヒシコーリンPX−4ET、日本化学工業社製)1重量部とを添加し、混合し、混合物2を得た。
透明樹脂(a)が下記の表1に示す含有量であるように秤量された上記混合物2に、無機フィラー(c)として、アスペクト比32、長軸平均長さ160μmのEガラスである扁平状粒子(マクロガラス ガラスフレークREF−160、日本板硝子社製、屈折率1.558)をアクリロイロキシプロピルトリエトキシシランで処理したものを、下記の表1に示す含有量となるように加え、ミックスローターを用いて分散させて、分散液を得た。
得られた分散液に、ガラス繊維(b)としてのEガラス繊維であるIPC♯2116相当のガラスクロス(日東紡社製、屈折率1.558)を下記の表1に示す含有量となるように浸漬し、超音波を照射しながらガラスクロスに分散液を含浸した。その後、分散液を含浸したガラスクロス(透明複合材料)を引き上げて、ステンレス板上に乗せ、減圧チャンバー内で10Paの圧力まで減圧しながら脱泡した後、ガラス板で挟み込み、上部より0.01MPaの圧力で3分間加圧して、透明複合材料をシート状にした。次に、シート状の透明複合材料をオーブン内で100℃で60分間加熱したのち、更に180℃で180分加熱して、架橋し、硬化させて、透明シートを得た。
(実施例3)
透明樹脂(a)としてのポリシルセスキオキサン(上記加水分解縮合物(a1)に相当する、HBSQ101、荒川化学工業社製)50重量部及びイソシアヌル酸トリアリル30重量部に、光重合開始剤としての2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ・ジャパン社製)0.2重量部を添加し、混合し、混合物3を得た。
透明樹脂(a)が下記の表1に示す含有量であるように秤量された上記混合物3に、無機フィラー(c)として、アスペクト比32、長軸平均長さ160μmのEガラスである扁平状粒子(マクロガラス ガラスフレークREF−160、日本板硝子社製、屈折率1.558)をアクリロイロキシプロピルトリエトキシシランで処理したものを、下記の表1に示す含有量となるように加え、ミックスローターにより分散させて、分散液を得た。
得られた分散液に、ガラス繊維(b)として、Eガラス繊維であるIPC♯1078相当のガラスクロス(日東紡社製、屈折率1.558)を下記の表1に示す含有量となるように浸漬し、超音波を照射しながらガラスクロスに分散液を含浸した。その後、分散液を含浸したガラスクロス(透明複合材料)を引き上げて、ステンレス板上に乗せ、減圧チャンバー内で10Paの圧力まで減圧しながら脱泡した後、ガラス板で挟み込み、上部より0.01MPaの圧力で3分間加圧して、透明複合材料をシート状にした。次に、ガラス板側から高圧水銀灯にて2000mJ/cm2(365nm)のUV光を照射して、シート状の透明複合材料を架橋し、硬化させて、透明シートを得た。
(実施例4)
透明樹脂(a)としてのポリシルセスキオキサン溶液(上記加水分解縮合物(a1)に相当する、コンポセランSQ102−1、荒川化学工業社製)70重量部及びイソホロンジイソシアネート50重量部に、反応触媒としてのジブチルスズジラウレート0.2重量部を添加し、混合し、混合物4を得た。
透明樹脂(a)が下記の表1に示す含有量であるように秤量された上記混合物4に、無機フィラー(c)として、アスペクト比32、長軸平均長さ160μmのEガラスである扁平状粒子(マクロガラス ガラスフレークREF−160、日本板硝子社製、屈折率1.558)をアクリロイロキシプロピルトリエトキシシランで処理したものを、下記の表1に示す含有量となるように加え、ミックスローターを用いて分散させて、分散液を得た。
得られた分散液に、ガラス繊維(b)として、Eガラス繊維であるIPC♯2116相当のガラスクロス(日東紡社製、屈折率1.558)を下記の表1に示す含有量となるように浸漬し、超音波を照射しながらガラスクロスに分散液を含浸した。その後、分散液を含浸したガラスクロス(透明複合材料)を引き上げてステンレス板上に乗せ、オーブン内で80℃で10分間乾燥した。次に、もう一枚のステンレス板で挟み込み、上部より0.01MPaの圧力で3分間加圧して、透明複合材料をシート状にした。次に、シート状の透明複合材料をオーブン内で120℃で20分間加熱して、架橋し、硬化させて、透明シートを得た。
(実施例5)
透明樹脂(a)としてのポリシルセスキオキサン(HBSQ101、荒川化学工業社製)50重量部及びイソシアヌル酸トリアリル30重量部に、光重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・ジャパン社製)0.3重量部を添加し、混合し、混合物5を得た。
透明樹脂(a)が下記の表1に示す含有量であるように秤量された上記混合物5に、無機フィラー(c)として、平均アスペクト比120、長軸の平均粒径600μmのEガラスである扁平状粒子(マクロガラス ガラスフレークREF−600、日本板硝子社製、屈折率1.558)をアクリロイロキシプロピルトリエトキシシランで処理したものを、下記の表1に示す含有量となるように加え、ミックスローターを用いて分散させ、分散液を得た。
得られた分散液に、ガラス繊維(b)として、Eガラス繊維であるガラスクロス(日東紡社製、♯1687、屈折率1.558)を2枚、下記の表1に示す含有量となるように浸漬し、超音波を照射しながらガラスクロスに分散液を含浸させた。その後、2枚の分散液を含浸したガラスクロス(2枚の透明複合材料)を引き上げて、ステンレス板上に重ねて乗せ、減圧チャンバー内で10Paの圧力まで減圧しながら脱泡した後、ガラス板で挟み込み、上部より0.01MPaの圧力で3分間加圧して、透明複合材料をシート状にした。ガラス板側から高圧水銀灯にて2000mJ/cm2(365nm)のUV光を照射して、シート状の透明複合材料を架橋し、硬化させて、透明シートを得た。
(実施例6)
透明樹脂(a)としてのポリシルセスキオキサン溶液(コンポセランSQ102−1、荒川化学工業社製)70重量部及びイソシアヌル酸トリアリル30重量部に、光重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・ジャパン社製)0.3重量部を添加し、混合し、混合液6を得た。
透明樹脂(a)が下記の表1に示す含有量であるように秤量された上記混合物6に、無機フィラー(c)として、アスペクト比32、長軸平均長さ160μmのEガラスである扁平状粒子(マクロガラス ガラスフレークREF−160、日本板硝子社製、屈折率1.558)をアクリロイロキシプロピルトリエトキシシランで処理したものを、下記の表1に示す含有量となるように加え、ミックスローターを用いて分散させて、分散液を得た。
得られた分散液に、ガラス繊維(b)として、Eガラス繊維であるIPC♯2116相当のガラスクロス(日東紡社製、屈折率1.558)を下記の表1に示す含有量となるように浸漬し、超音波を照射しながらガラスクロスに分散液を含浸させた。その後、分散液を含浸したガラスクロス(透明複合材料)を引き上げて、ステンレス板上に乗せ、オーブン内で80℃で10分間乾燥した。次に、減圧チャンバー内で10Paの圧力まで減圧しながら脱泡した後、ガラス板で挟み込み、上部より0.01MPaの圧力で3分間加圧して、透明複合材料をシート状にした。ガラス板側から高圧水銀灯にて2000mJ/cm2(365nm)のUV光を照射して、シート状の透明複合材料を架橋し、硬化させて、透明シートを得た。
(比較例1)
無機フィラー(c)を使用しなかったこと、並びに透明複合材料をシート状にする際に、上部より0.01MPaの圧力で1.5分加圧したこと以外は実施例3と同様にして、透明シートを作製した。
(比較例2)
無機フィラー(c)を使用しなかったこと、並びに透明複合材料をシート状にする際に、上部より0.01MPaの圧力で1.5分加圧したこと以外は実施例4と同様にして、透明シートを作製した。
(比較例3)
無機フィラー(c)を使用しなかったこと、並びに透明複合材料をシート状にする際に、上部より0.01MPaの圧力で1.5分加圧したこと以外は実施例5と同様にして、透明シートを作製した。
(比較例4)
無機フィラー(c)として、ボールミルで平均粒径10μmに粉砕したEガラス粉末(屈折率1.558)をアクリロイロキシプロピルトリエトキシシランで処理したものに変更したこと以外は実施例3と同様にして、透明シートを得た。
(評価)
(1)ガスバリア性
JIS K7129 B法に準拠して、40℃及び相対湿度90%RHの条件で、PERMATRAN−W3/31(MOCON社製)を用いて、得られた透明シートの水蒸気透過率を測定した。
(2)光線透過率
分光光度計UV−310PC(島津製作所製)を用いて、得られた透明シートの550nmにおける光線透過率を測定した。
(3)線膨張係数
TMA/EXSTAR6000型熱応力歪測定装置(セイコー電子社製)を用いて、得られた透明シートを30℃から250℃まで10℃/分の速度で昇温した後、10℃/分の速度で0℃まで冷却した。その後、再度、10℃/分の速度で昇温し、この昇温時の30℃〜250℃における平均線膨張係数を求めた。
(4)ヘイズ値
JIS K7136に基づいて、全自動ヘーズメーターTC−HIIIDPK(東京電色社製)を用いて、得られた透明複合材料のヘイズを測定した。
結果を下記の表1に示す。
下記の表1では、得られた透明複合材料の透明樹脂(a)、ガラス繊維(b)及び無機フィラー(c)の含有量を示した。また、得られた透明複合材シートの厚みを示した。さらに、実施例及び比較例で用いた混合物1〜6を硬化させて、実施例及び比較例で用いた透明樹脂(a)の硬化物の屈折率とアッベ数とを測定し、この測定結果を下記の表1に示した。さらに、ガラス繊維(b)及び無機フィラーの屈折率とアッベ数とを、下記の表1に示した。
また、図2に、実施例3で得られた透明シートの断面の一部を拡大して示した。図2に示すように、実施例3で得られた透明シート11は、ガラス繊維12と複数の無機フィラー13とを含有する。