JP2011050295A - 細胞培養構造体、細胞培養容器及びこれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 細胞と細胞接着面との接着性を向上し、培養効率を改善した細胞培養構造体、細胞培養容器及びこれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】 所定の単位構造を規則的に複数配列した細胞接着面として機能する凹凸構造に放射線を照射して細胞培養構造体を形成する。放射線としてはガンマ線を用いることができる。照射するガンマ線の線量は、5kGy以上15kGy以下に調節するのが好ましい。また、凹凸構造は、単位構造間の幅が3μm以下である方が良く、また、単位構造の最小内径が3μm以下である方が良い。また、凹凸構造としては、環状オレフィン系熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【選択図】 図3
【解決手段】 所定の単位構造を規則的に複数配列した細胞接着面として機能する凹凸構造に放射線を照射して細胞培養構造体を形成する。放射線としてはガンマ線を用いることができる。照射するガンマ線の線量は、5kGy以上15kGy以下に調節するのが好ましい。また、凹凸構造は、単位構造間の幅が3μm以下である方が良く、また、単位構造の最小内径が3μm以下である方が良い。また、凹凸構造としては、環状オレフィン系熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【選択図】 図3
Description
この発明は、細胞の培養効率を向上させた細胞培養構造体、細胞培養容器及びこれらの製造方法に関するものである。
近年、薬剤の薬理活性評価や毒性試験のシミュレーターとして、生体内と同様の三次元組織であるスフェロイドが注目されている。このスフェロイドを培養する方法には種々あるが、その一つとして、樹脂フィルムや樹脂基板の培養面に形成された凹凸構造上に細胞を播種し、スフェロイドを形成するものがある(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら従来のものは、播種した細胞が培養中に浮遊してしまう場合があり、必ずしも培養効率が良いとは言えなかった。
そこで本発明は、細胞と細胞接着面との接着性を向上し、培養効率を改善した細胞培養構造体、細胞培養容器及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の細胞培養構造体は、所定の単位構造を規則的に複数配列した細胞接着面として機能する凹凸構造に放射線を照射して形成されたことを特徴とする。
この場合、前記放射線はガンマ線を用いることができ、照射された前記ガンマ線の線量は5kGy以上である方が好ましく、更に好ましくは、照射された前記ガンマ線の線量が5kGy以上15kGy以下である方が良い。
前記凹凸構造は、前記単位構造間の幅が3μm以下である方が良く、また、前記単位構造の最小内径が3μm以下である方が良い。更に、前記単位構造は、正多角形である方が好ましい。
また、前記凹凸構造は、環状オレフィン系熱可塑性樹脂からなるものを用いることができる。
本発明の細胞培養容器は、上述した本発明の細胞培養構造体を有することを特徴とする。
また、本発明の細胞培養構造体の製造方法は、所定の単位構造を規則的に複数配列した細胞接着面として機能する凹凸構造に放射線を照射することを特徴とする。
この場合、前記放射線はガンマ線を用いることができ、前記ガンマ線は、線量が5kGy以上となるように照射する方が良く、更に好ましくは、線量が5kGy以上15kGy以下となるように照射する方が良い。
また、本発明の細胞培養容器の製造方法は、所定の単位構造を規則的に複数配列した細胞接着面として機能する凹凸構造に放射線を照射することを特徴とする。
この場合、前記放射線はガンマ線を用いることができ、前記ガンマ線は、線量が5kGy以上となるように照射する方が良く、更に好ましくは、線量が5kGy以上15kGy以下となるように照射する方が良い。
本発明によれば、播種した細胞と細胞培養面との接着性を向上することができるので、細胞の培養効率を改善することができる。
本発明の細胞培養構造体は、細胞接着面として機能する凹凸構造に放射線を照射して形成されたものである。
凹凸構造は、所定の単位構造201を規則的に複数配列したものであればどのようなものでも良い。例えば、培養する細胞の性質に応じて、線状(ラインアンドスペース)、ピラー状、ホール状等、種々の形状とすることができる。また、所定の平面形状からなる単位構造201を規則的に複数配列した構造を用いることもできる。例えば、図1、図2に示すように、平面形状が多角形である単位構造201を複数連続したものとすることができる。この場合、等方的に均一な構造上で細胞を成長させることができるという点で、正三角形、正方形、正六角形等の正多角形や、円形のものが好ましい。また、凹凸構造として、異なる形状の単位構造を複数種類組み合わせて用いることも可能である。単位構造間202の幅は、細胞を単層状ではなく三次元的に成長させたり(スフェロイド培養)、分化させたりし、より生体内に近い状態で培養するという観点からは、3μm以下、2μm以下、1μm以下、700nm以下、500nm以下、250nm以下というように、小さくなるほど好ましい。この理由としては、単位構造間202の幅が小さくなるほど、凹凸構造面に接着した細胞は、多くの仮足を成長させながらスフェロイドを形成させることができると考えられるためである。
また、単位構造201の深さは、培養する細胞の性質に応じて、1nm以上、10nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1μm以上、10μm以上、100μm以上等種々の大きさに形成される。また、この凹凸構造のアスペクト比としては、0.2以上、0.5以上、1以上、2以上等種々のものがある。
また、単位構造201の最小内径(好ましくは最大内径)は、3μm以下であることが好ましく、2μm以下、1μm以下、700nm以下、500nm以下、250nm以下というように、小さくなるほど好ましい。ここで、内径とは、単位構造201に外接する2本の平行線間の距離を意味する。したがって、最小内径とは、単位構造201に外接する二本の平行線間の距離のうち最も短いものを言い、最大内径とは、単位構造201に外接する二本の平行線間の距離のうち最も長いものを言う。例えば、単位構造201が正六角形の場合には、対向する平行な辺と辺との間の距離が最小内径となり、対向する頂点間の距離が最大内径となる。また、単位構造201が長方形の場合には、短辺の長さが最小内径となり、対角線の長さが最大内径となる。
凹凸構造の形成方法はどのような方法でも良いが、例えば、ナノインプリント技術、溶液キャスト法、エッチング、ブラスト、コロナ放電等を用いることができる。この時、より精密に形状等を制御できる点で、ナノインプリント技術による方法が好ましい。
また、凹凸構造の材質は、細胞に対し無毒性のものであればどのようなものでも良く、例えば、「ポリスチレン」、「ポリエチレン」、「ポリプロピレン」、「ポリイミド」、「ポリカーボネート」、「ポリ乳酸やポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン等の生分解性ポリマー」、「環状オレフィン共重合体(COC)や環状オレフィン重合体(COP)等の環状オレフィン系熱可塑性樹脂」、「アクリル樹脂」、「光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等のその他の樹脂」、「酸化アルミニウム等の金属」、「ガラス」、「石英ガラス」、「シリコン」等を用いることができる。
放射線としては、ガンマ線、紫外線、電子線等を用いることができる。もちろん、細胞接着面と細胞との接着性を向上することができるものであれば、これ以外の放射線を用いることも可能である。この放射線を凹凸構造の表面に照射することにより、細胞培養構造体と細胞の接着性を向上させることができる。なお、放射線の線量(照射量)は、少なすぎると細胞との接着性が低く、多すぎると凹凸構造が本来有している機能、例えば三次元的に成長させたり(スフェロイド培養)、分化させたりする機能を損なうため、材質や凹凸構造に合わせて適宜設定される。例えば、環状オレフィン重合体(COP)によって形成され、一辺の長さが3μm(内径2μm)、深さ1μm、線幅500nmの正方形からなる単位構造を規則的に複数配列した細胞接着面として機能する凹凸構造を用いる場合、ガンマ線の線量は、5kGy以上15kGy以下の値とするのが好ましい。
また、本発明の培養容器は、細胞を培養する部分に上述した細胞培養構造体を有するものである。
培養容器としては、細胞を培養するためのものであって、細胞接着面として機能する培養面を有するものである。培養面には、上述した本発明の細胞培養構造体が形成されていれば良い。
培養容器としては、培養する細胞の接着面として機能する培養面を有していればどのようなものでも良く、例えば、プレート、ディッシュ、シャーレ、トレイ等がある。また、8穴プレートのようなものも含まれる。
培養容器は、通常市販されている培養容器の底面に本発明の細胞培養構造体が形成されたシートを載置したり接着したりして形成すれば良い。また、底面に凹凸構造が一体成形された培養容器や、あるいは、凹凸構造が形成されたシートや基板を底面として組み込んだ培養容器を準備し、この凹凸構造に放射線を照射して形成しても良い。
次に本発明の細胞培養構造体を用いて細胞を培養した場合の実施例について説明する。
まず、環状オレフィン重合体(COP)からなる厚さが40μmのシートを用意し、その表面にインプリント技術によって凹凸構造を形成した(シート1)。この凹凸構造は、一辺の長さが3μm(内径2μm)、深さ1μm、線幅500nmの正方形からなる単位構造を規則的に複数配列した細胞接着面として機能するものである。
このシート1にコバルト60を放射線源としてガンマ線を照射し、細胞培養構造体を形成した。ガンマ線の線量(照射量)はインジケータを用いて吸収線量を確認し、5kGy(シート2)、7.5kGy(シート3)、10kGy(シート4)、15kGy(シート5)、20kGy(シート6)のものを用意した。また、当該シートを80%エタノールへ30分間浸漬した後、2時間乾燥し、市販の24ウェルプレート(NUNC社製、167064)の底面に熱融着して配置した。
次に、肝癌細胞(HepG2)を10%FBS/DMEM(日水製薬株式会社製)に懸濁し、3×105cells/wellで、上述した24ウェルプレートに播種した後、37℃,5%CO2条件下で培養した。
培養7日目に、培養上清(浮遊しているスフェロイド)を回収した。次に、PBSを添加してセルスクレーパーを用いて細胞培養構造体に接着しているスフェロイドを回収した。回収した細胞液を300Gで5分間遠心し上清を除去した後PBSに懸濁し、1/10量のスフェロイド溶解液(SCIVAX社製NanoCulture Lysis)を添加し、PicoGreen assay(インヴィトロゲン社製)により、細胞のDNA量を測定した。
浮遊しているスフェロイドと接着しているスフェロイドのDNA量の和を1として、浮遊しているスフェロイド及び接着しているスフェロイドのDNA量の割合を図3に示す。
図3のDNA量の割合から、ガンマ線の線量(照射量)が増加する程、細胞の接着料が増加していることがわかる。
なお、図4、図5は、培養7日目の細胞培養構造体に接着している細胞をガンマ線の線量別に観察した写真である。これを見ると、ガンマ線の線量が20kGyの場合、スフェロイドだけでなく単層状に成長した細胞の割合も増加していた。したがって、好ましくは、ガンマ線の線量を5kGy以上15kGy以下にするのが好ましい。
以上より、本発明の細胞培養構造体又は培養容器は、播種した細胞と細胞培養面との接着性を向上することができ、細胞の培養効率を改善することができる。
201 単位構造
Claims (17)
- 所定の単位構造を規則的に複数配列した細胞接着面として機能する凹凸構造に放射線を照射して形成されたことを特徴とする細胞培養構造体。
- 前記放射線はガンマ線であることを特徴とする請求項1記載の細胞培養構造体。
- 照射された前記ガンマ線の線量は5kGy以上であることを特徴とする請求項2記載の細胞培養構造体。
- 照射された前記ガンマ線の線量は5kGy以上15kGy以下であることを特徴とする請求項2記載の細胞培養構造体。
- 前記凹凸構造は、前記単位構造間の幅が3μm以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の細胞培養構造体。
- 前記凹凸構造は、前記単位構造の最小内径が3μm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の細胞培養構造体。
- 前記単位構造は、正多角形であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の細胞培養構造体。
- 前記凹凸構造は、環状オレフィン系熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の細胞培養構造体。
- 請求項1ないし8のいずれかに記載の細胞培養構造体を有することを特徴とする細胞培養容器。
- 所定の単位構造を規則的に複数配列した細胞接着面として機能する凹凸構造に放射線を照射することを特徴とする細胞培養構造体の製造方法。
- 前記放射線はガンマ線であることを特徴とする請求項10記載の細胞培養構造体の製造方法。
- 前記ガンマ線は、線量が5kGy以上となるように照射することを特徴とする請求項11記載の細胞培養構造体の製造方法。
- 前記ガンマ線は、線量が5kGy以上15kGy以下となるように照射することを特徴とする請求項11記載の細胞培養構造体の製造方法。
- 所定の単位構造を規則的に複数配列した細胞接着面として機能する凹凸構造に放射線を照射することを特徴とする細胞培養容器の製造方法。
- 前記放射線はガンマ線であることを特徴とする請求項14記載の細胞培養容器の製造方法。
- 前記ガンマ線は、線量が5kGy以上となるように照射することを特徴とする請求項15記載の細胞培養容器の製造方法。
- 前記ガンマ線は、線量が5kGy以上15kGy以下となるように照射することを特徴とする請求項15記載の細胞培養容器の製造方法。
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