JP2019041719A - 細胞培養用構造体、細胞培養容器及び細胞培養用構造体の製造方法 - Google Patents

細胞培養用構造体、細胞培養容器及び細胞培養用構造体の製造方法 Download PDF

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陽子 高本
貴弘 掛川
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貴弘 掛川
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興治 藤本
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Abstract

【課題】長期的な観点からも細胞の非接着性が低下するのを抑制可能な細胞培養用構造体及びその製造方法、並びに細胞培養容器を提供する。【解決手段】細胞培養に用いられる細胞培養用構造体は、実質的に規則性を有して配列されてなる複数のピラー状凸構造部を有し、ピラー状凸構造部の高さが100nm〜2μmであって、隣接するピラー状凸構造部の間隔のうちの最小値の2倍以上であり、ピラー状凸構造部の幅が100nm〜800nmである。【選択図】図1

Description

本開示は、細胞を培養するために用いられる構造体及びその製造方法、並びに当該構造体を有する細胞培養容器に関する。
体性幹細胞、iPS細胞、ES細胞等に代表される幹細胞は、神経細胞、骨芽細胞、血管内皮細胞、心筋細胞等の様々な機能を有する細胞への分化能を有する。そのため、幹細胞を分化誘導させることで得られる神経細胞、骨芽細胞、血管内皮細胞、心筋細胞等を用いて生体の細胞、組織、器官等を再構築する再生医療分野への応用が期待されている。
幹細胞の再生医療分野への応用研究等にあたり、細胞を効率的に分化・増殖させることが必要となる。細胞の分化・増殖能にとって、培養される細胞の接着能はきわめて重要な因子である。接着性の細胞は、良好な接着性を有する培養面に接着することで伸展し、その結果増殖する。分化能を有する幹細胞等においても、適切な培養環境を整えることで、効率的な分化誘導が可能となる。
良好な接着性を有する培養面にて細胞を培養すると、培養面に沿って二次元的に広がるようにして細胞が増殖する。一方で、細胞を三次元的に凝集させてなるスフェロイドの形成にあたっては、接着性の乏しい培養面にて細胞を培養する必要がある。例えば、肝細胞の場合、二次元的に広がるようにして増殖した細胞よりも、三次元的に凝集したスフェロイド構造の方が、生体組織としての肝臓の代謝活性に近い機能を奏する、すなわち培養した細胞の高機能化の実現が可能である。
また、細胞を大量に増殖させる拡大培養を実施する場合、培養中に細胞が浮遊した状態を維持する必要があるため、培養液を充満させた空間内で攪拌培養することが一般に行われる。このときに用いられる細胞培養容器や細胞培養バッグの内面は、細胞が接着し難い面であることが求められる。
従来、細胞が接着し難い培養面を形成する技術として、培養面をポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマー等の親水性ポリマーやその誘導体等にて修飾する技術等が知られている。
特開2017−104027号公報
Csucs et al.,Biomaterials, vol. 24,pp.1713-1720,2003
上記のように培養面を親水性ポリマー等にて修飾することで、当該培養面を細胞非接着面とすることができ、細胞の接着が抑制される。例えば、ポリエチレングリコールは、その高い体積排除効果により、細胞の接着を抑制することができる。しかしながら、化学修飾された培養面は、親水性ポリマー等のコーティング膜の剥離等により、細胞の接着を抑制する効果が低下してしまい、細胞の非接着性の効果の長期的安定性に欠けるという問題がある。
このような課題に鑑みて、本開示は、長期的な観点からも細胞の非接着性が低下するのを抑制可能な細胞培養用構造体及びその製造方法、並びに細胞培養容器を提供することを一目的とする。
上記課題を解決するために、本開示の一実施形態として、細胞培養に用いられる構造体であって、実質的に規則性を有して配列されてなる複数のピラー状凸構造部を有し、前記ピラー状凸構造部の高さが100nm〜2μmであって、隣接する前記ピラー状凸構造部の間隔のうちの最小値の2倍以上であり、前記ピラー状凸構造部の幅が100nm〜800nmである細胞培養用構造体が提供される。
複数のピラー状凸構造部が実質的に規則性を有して配列されているとは、ピラー状凸構造部の配列が全体的に所定の規則性を有するが、一部のピラー状凸構造部が当該規則性から外れて配列されることを許容する趣旨である。
前記ピラー状凸構造部の高さが例えば400nm〜1μmであるのが好ましく、前記ピラー状凸構造部の幅が例えば100nm〜600nmであるのが好ましい。前記ピラー状凸構造部を構成する材料として、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマー、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、シリコン、ガラス又は液状ガラスを用いることができる。
本開示の一実施形態として、培養面と、前記培養面上に設けられてなる上記細胞培養用構造体とを備える細胞培養容器が提供される。前記細胞培養用構造体は、前記培養面の全面に設けられていてもよいし、前記培養面上の一部の領域に設けられていてもよい。前記細胞としては、ヒトに由来する間葉系幹細胞であればよい。
本開示の一実施形態として、実質的に規則性を有して配列されてなる複数のピラー状凸構造部を有する細胞培養用構造体を製造する方法であって、第1面及び当該第1面に対向する第2面を有する基材を準備し、前記基材の前記第1面上に前記複数のピラー状凸構造部を形成する工程を有し、前記ピラー状凸構造部の高さが100nm〜2μmであって、かつ隣接する前記ピラー状凸構造部の間隔の最小値の2倍以上となり、前記ピラー状凸構造部の幅が100nm〜800nmとなるように、前記基材の前記第1面上に前記複数のピラー状凸構造部を形成する細胞培養用構造体の製造方法が提供される。
前記複数のピラー状凸構造部に対応する凹凸パターンを有するインプリントモールドを用いて前記複数のピラー状凸構造部を形成すればよく、前記ピラー状凸構造部の高さが例えば400nm〜1μmとなるように、前記基材の前記第1面上に前記複数のピラー状凸構造部を形成するのが好ましく、前記ピラー状凸構造部の幅が例えば100nm〜600nmとなるように、前記基材の前記第1面上に前記複数のピラー状凸構造部を形成するのが好ましい。
本開示によれば、長期的な観点からも細胞の非接着性が低下するのを抑制可能な細胞培養用構造体及びその製造方法、並びに細胞培養容器を提供することができる。
図1は、本開示の一実施形態に係る細胞培養用構造体の概略構成を示す切断端面図である。 図2は、本開示の一実施形態に係る細胞培養用構造体のピラー状凸構造部の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。 図3は、本開示の一実施形態に係る細胞培養用構造体の複数のピラー状凸構造部の配列構成の一の態様を概略的に示す平面図である。 図4は、本開示の一実施形態に係る細胞培養用構造体の複数のピラー状凸構造部の配列構成の他の態様を概略的に示す平面図である。 図5(A)及び(B)は、本開示の一実施形態における細胞培養容器の概略構成を示す切断端面図である。 図6は、本開示の一実施形態における細胞培養容器の他の態様の概略構成を示す切断端面図である。 図7は、本開示の一実施形態に係る細胞培養用構造体の製造工程を切断端面図にて示す工程フロー図である。
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
当該図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりして示している場合がある。本明細書等において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む範囲であることを意味する。本明細書等において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。例えば、「板」は、「シート」、「フィルム」と一般に呼ばれ得るような部材をも含む概念である。
〔細胞培養用構造体〕
図1は、本実施形態に係る細胞培養用構造体の概略構成を示す切断端面図であり、図2は、本実施形態に係る細胞培養用構造体のピラー状凸構造部の概略構成を示す部分拡大切断端面図であり、図3は、本実施形態に係る細胞培養用構造体の複数のピラー状凸構造部の配列構成の一の態様を概略的に示す平面図であり、図4は、本実施形態に係る細胞培養用構造体の複数のピラー状凸構造部の配列構成の他の態様を概略的に示す平面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る細胞培養用構造体1は、第1面2A及びそれに対向する第2面2Bを有する基部2と、基部2の第1面2A上に設けられている凸構造体3とを有し、細胞を培養するために用いられる。
培養対象としての細胞は、接着性を有する細胞であれば特に限定されるものではなく、例えば、未分化細胞としては体性幹細胞、iPS細胞、ES細胞等;分化細胞としては上記未分化細胞から分化誘導した神経細胞、骨芽細胞、血管内皮細胞、心筋細胞等であればよい。特に、上記細胞は、未分化細胞であるヒト由来の間葉系幹細胞であるのが好ましい。
基部2を構成する材料としては、例えば、石英ガラス、合成石英ガラス、ソーダガラス、蛍石、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス材料;ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、その他ポリオレフィン等の樹脂材料等の透明材料等が挙げられる。基部2を構成する材料として上記透明材料を用いると、細胞のピラー状凸構造部32への接着状態を第2面2B側から顕微鏡等で観察することができる。
なお、本実施形態において「透明」とは、波長190〜800nmの光を対象物(本実施形態においては基部2)の片側から照射した際、照射された側とは反対側へ光が到達することを意味する。好適な基準を透過率で示すならば20%以上、好ましくは50%以上、特に好ましくは80%以上である。
基部2は、凸構造体3を作製する際に用いられるベースとなる板状体であり、本実施形態に係る細胞培養用構造体1のハンドリング等の観点において問題がないのであれば、基部2は備えられていなくてもよい。
基部2の平面視形状は、特に限定されるものではなく、例えば、平面視略矩形状、平面視略円形状等を挙げることができる。また、平面視における基部2の大きさや、基部2の厚さも特に限定されるものではなく、細胞培養用構造体1の用途等に応じて適宜設定され得る。例えば、細胞を培養するために、ディッシュ等に細胞培養用構造体1を収容し、当該ディッシュ内で細胞培養用構造体1と細胞とを接触させる場合、基部2の平面視における大きさは、当該ディッシュ内に収容可能な大きさに設定され得る。同様に、基部2の厚さも、上記ディッシュ内に細胞培養用構造体1を載置したときに、そのピラー状凸構造部32と細胞とが接触可能な厚さに設定され得る。
凸構造体3は、第1面31A及びそれに対向する第2面31Bを有する基体31と、基体31の第1面31A上に設けられてなり、実質的に規則性を有して配列されてなる複数のピラー状凸構造部32とを有する。なお、本実施形態に係る細胞培養用構造体1において、複数のピラー状凸構造部32のみが実質的に規則性を有して配列されていればよく、その限りにおいて基体31が備えられていなくてもよい。すなわち、基部2の第1面2A上に複数のピラー状凸構造部32のみが設けられていてもよい。
凸構造体3(基体31及びピラー状凸構造部32)を構成する材料としては、例えば、SOG(スピンオングラス)材料、石英ガラス、珪酸系ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等のガラス類の他、サファイアや窒化ガリウム等の無機材料;ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマー、アクリル樹脂、その他オレフィン系樹脂等が挙げられる。
ピラー状凸構造部32の幅Dは、100nm〜800nmであり、好ましくは100nm〜600nmであり、より好ましくは200nm〜500nmである。ピラー状凸構造部32の幅Dが100nm未満又は800nmを超えると、細胞の接着を抑制することが困難となる。ピラー状凸構造部32の幅Dは、ピラー状凸構造部32の頂部321の寸法であって、例えば、頂部321が略円形であればその直径を意味し、頂部321が略楕円形であればその長径の長さ(略楕円形状の頂部321の内径の最大長さ)を意味し、頂部321が略正方形であればその一辺の長さを意味し、頂部321が略長方形であれば長辺の長さを意味し、頂部321がその他の形状(例えば六角形等の多角形、不定形等)であれば当該頂部321の形状の外接円の直径を意味するものとする。なお、本実施形態において、凸構造体3に含まれるすべてのピラー状凸構造部32の幅Dが上記数値範囲(100nm〜800nm)内であってもよいが、培養対象である細胞に対する非接着性が示される限りにおいて、一部のピラー状凸構造部32の幅Dが上記数値範囲外であってもよい。ピラー状凸構造部32の幅Dは、例えば、原子間力顕微鏡、走査型電子顕微鏡等を用いて測定され得る。
ピラー状凸構造部32の高さTは、100nm〜2μmであり、好ましくは400nm〜1μmであって、かつ隣接するピラー状凸構造部32の間隔Sのうちの最小値の2倍以上、好ましくは2倍〜10倍である。ピラー状凸構造部32の高さTが100nm未満若しくは2μm以上、かつピラー状凸構造部32の間隔Sのうちの最小値の2倍未満であると、隣接するピラー状凸構造部32の間に細胞がはまり込みやすくなり、細胞が基体31の第1面31A上に接着してしまうおそれがある。
なお、本実施形態において、ピラー状凸構造部32の高さTとは、基体31の面内方向に対して直交する方向における基体31の第1面31Aからピラー状凸構造部32の頂部321までの長さを意味するものとする。本実施形態に係る細胞培養用構造体1が基体31を備えないものである場合、ピラー状凸構造部32の高さTは、基部2の面内方向に対して直交する方向における基部2の第1面2Aからピラー状凸構造部32の頂部321までの長さを意味するものとする。本実施形態において、凸構造体3に含まれるすべてのピラー状凸構造部32の高さTが上記数値範囲(100nm〜2μm、かつ隣接するピラー状凸構造部32の間隔Sのうちの最小値の2倍以上)内であってもよいが、培養対象である細胞に対する非接着性が示される限りにおいて、一部のピラー状凸構造部32の高さTが上記数値範囲外であってもよい。ピラー状凸構造部32の高さTは、例えば、原子間力顕微鏡、走査型電子顕微鏡等を用いて測定され得る。
また、本実施形態において、ピラー状凸構造部32の間隔Sとは、「一のピラー状凸構造部32の平面視中心Cと、それに隣接する他のピラー状凸構造部32の平面視中心Cとを結ぶ直線長さLからピラー状凸構造部32の幅Dを差し引いた長さ」を意味するものとする。ピラー状凸構造部32の間隔Sの最小値とは、「一のピラー状凸構造部32の平面視中心Cと、それに最近接の他のピラー状凸構造部32の平面視中心Cとを結ぶ直線長さLからピラー状凸構造部32の幅Dを差し引いた長さ」を意味するものとする。ピラー状凸構造部32の間隔Sは、例えば、原子間力顕微鏡、走査型電子顕微鏡等を用いて測定され得る。
本実施形態において、平面視略円形のピラー状凸構造部32は、例えば、正方形状、長方形状等の格子Grの各格子点上に配列されていてもよいし(図3参照)、正三角形状、二等辺三角形状等の三角格子Grの各格子点上に配列されていてもよい(図4参照)。なお、図3及び図4に示す態様においては、複数のピラー状凸構造部32が略同一の間隔Sにて配置されているが、このような態様に限定されるものではなく、複数のピラー状凸構造部32が細胞の非接着性を示す限りにおいて間隔Sの異なるピラー状凸構造部32が含まれていてもよい。
本実施形態において、ピラー状凸構造部32は、基部2の第1面2Aの略全面に設けられているが、このような態様に限定されるものではない。例えば、基部2の第1面2Aの一部にピラー状凸構造部32が設けられていてもよい。
上述したような構成を有する細胞培養用構造体1においては、後述する実施例からも明らかなように、細胞が接着し難いピラー状凸構造部32を有する。したがって、本実施形態に係る細胞培養用構造体1によれば、細胞の接着性を効果的に抑制することができ、その結果、細胞を三次元的に凝集させてなるスフェロイドを効率的に形成することができる。また、本実施形態に係る細胞培養用構造体1においては、ピラー状凸構造部32の構造(幅、高さ、間隔等)により細胞の非接着性(難接着性)が実現され、細胞の非接着性を実現するために親水性ポリマーのコーティング処理等が必要ないため、コーティング膜の剥がれ等による細胞の非接着性の低下が起こらない。よって、本実施形態に係る細胞培養用構造体1によれば、長期に亘って安定的に細胞の接着性を抑制することができる。
〔細胞培養容器〕
上述した構成を有する細胞培養用構造体1は、細胞培養容器10として好適に利用され得る。図5(A)及び(B)は、本実施形態における細胞培養容器10の概略構成を示す切断端面図であり、図6は、本実施形態における細胞培養容器10の他の態様の概略構成を示す切断端面図である。
本実施形態における細胞培養容器10は、培養面を有する容器本体11と、容器本体11の培養面に設けられてなる細胞培養用構造体1とを備える。容器本体11は、略中央に貫通孔13が形成されてなる底部12と、当該底部12の外周縁に連続する周壁部14とを有し、細胞培養用構造体1が貫通孔13を容器本体11の内側(図5(A)参照)又は外側(図5(B)参照)から塞ぐように容器本体11の底部12に取り付けられている。容器本体11の底部12と、貫通孔13を塞ぐ細胞培養用構造体1とにより、上記培養面が構成される。
本実施形態において、容器本体11は、底部12の略中央に貫通孔13が形成され、上方に開口するシャーレ状容器であるが、底部12に貫通孔13が形成されている限りにおいて、このような態様に限定されるものではない。例えば、底部に貫通孔が形成されているフラスコ状容器等であってもよい。
平面視における容器本体11の大きさは、特に限定されるものではなく、細胞培養等において一般的に用いられているシャーレやウェルプレートの培養面と同等の直径、例えば、直径1mm〜150mm程度であればよい。また、容器本体11の底部12の厚みは、0.04mm〜2mm程度である。
容器本体11は、合成樹脂製のものであってもよいし、ガラス製のものであってもよい。また、周壁部14と底部12とが異なる材質(例えば、周壁部14が合成樹脂製であって、底部12がガラス製等)により構成されるものであってもよい。
貫通孔13の大きさは、特に限定されるものではない。貫通孔13を塞ぐようにして細胞培養用構造体1を容器本体11の底部12に取り付けると、細胞培養用構造体1と容器本体11の底部12とが重なり合わさる部分における光透過性が低下するおそれがある。この光透過性の低下は、顕微鏡を用いて細胞を観察する観点から好ましくない。そのため、容器本体11内に収容される培養液等の漏出等の問題を発生させない限りにおいて、貫通孔13の大きさは、細胞培養用構造体1の大きさ(平面視における大きさ)に近い大きさ(細胞培養用構造体1よりも僅かに小さい大きさ)であることが望ましい。
本実施形態において、細胞培養用構造体1は、平面視において容器本体11の貫通孔13内にピラー状凸構造部32が位置するように、容器本体11の底部12に取り付けられている。
細胞培養用構造体1は、接着剤(図示せず)を介して容器本体11の底部12の内面又は外面における貫通孔13の周縁近傍に接着することで取り付けられていればよい。かかる接着剤としては、特に限定されるものではないが、細胞培養用構造体1及び容器本体11の底部12の構成材料に応じてそれらに対する接着力が高く、細胞培養容器10内に収容される培養液等に対するシール性(液密性)を有し、培養対象物である細胞に対して悪影響を与えない(毒性等を有しない)ものであるのが好ましい。当該接着剤としては、例えば、脱オキシム型シリコーン系接着剤や脱酢酸型シリコーン系接着剤等が用いられ得る。なお、細胞培養用構造体1が容器本体11の底部12の外面における貫通孔13の周縁近傍に接着されることで、培養対象物である細胞や培養液が接着剤に接触し難くなり、細胞に対して悪影響をより与え難くなる等の効果が奏される。
なお、本実施形態における細胞培養容器10は、図6に示すように、底部12及び底部12の外周縁から立設する周壁部14とを有し、底部12には貫通孔が形成されず、底部12の上面にピラー状凸構造部32が形成されていてもよい。
上述した構成を有する本実施形態における細胞培養容器10によれば、培養面に所定の幅D、高さT及び間隔Sの複数のピラー状凸構造部32が設けられていることで、培養面(複数のピラー状凸構造部32)に培養中の細胞が接着するのを抑制することができる。よって、細胞を三次元的に凝集させてなるスフェロイドを効率的に形成することができる。
〔細胞培養用構造体の製造方法〕
上述した構成を有する細胞培養用構造体1は、例えば、下記のようにして製造することができる。図7は、本実施形態に係る細胞培養用構造体1の製造工程を切断端面図にて示す工程フロー図である。
まず、第1面101A及びそれに対向する第2面101Bを有する基部101と、基部101の第1面101Aに形成されてなるピラー状パターン102とを備えるマスターモールド100を準備し(図7(A)参照)、当該マスターモールド100の第1面101A上に、ピラー状パターン102を被覆するように中間モールド用塗布膜210を形成する(図7(B)参照)。そして、中間モールド用塗布膜210を硬化させることで、ピラー状パターン102を鏡像反転させてなるホール状パターン202を有する中間モールド200を作製する(図7(C)参照)。
マスターモールド100(基部101及びピラー状パターン102)を構成する材料としては、例えば、石英ガラス、合成石英ガラス、ソーダガラス、蛍石、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス材料;ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、その他ポリオレフィン等の樹脂材料等の透明材料等が挙げられる。
ピラー状パターン102の幅、高さ及び間隔は、細胞培養用構造体1のピラー状凸構造部32の幅、高さ及び間隔に応じて適宜設定される。具体的には、ピラー状パターン102の幅は、100nm〜800nmであり、好ましくは100nm〜600nmであり、より好ましくは200nm〜500nmである。また、ピラー状パターン102の高さは、100nm〜2μmであり、好ましくは400nm〜1μmであって、かつ隣接するピラー状パターン102の間隔Sのうちの最小値の2倍以上、好ましくは2倍〜10倍である。なお、マスターモールド100は、従来公知の電子線リソグラフィー法、フォトリソグラフィー法等により作製され得る。
中間モールド用塗布膜210を構成する中間モールド用組成物としては、例えば、PDMS、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等が挙げられる。マスターモールド100の第1面101A上に中間モールド用塗布膜210を形成する方法としては、例えば、スピンコート法、ダイコート法、インクジェット法等が挙げられる。中間モールド用塗布膜210を硬化させる方法は、中間モールド用塗布膜210を構成する中間モールド用組成物の硬化タイプに応じて選択されればよく、例えば、中間モールド用組成物が熱硬化タイプであれば加熱すればよいし、紫外線硬化タイプであれば紫外線等を照射すればよい。
次に、第1面2A及びそれに対向する第2面2Bを有する基部2を準備し、基部2の第1面2A上に凸構造体用組成物を塗布して塗布膜300を形成する(図7(D)参照)。そして、当該塗布膜300に中間モールド200のホール状パターン202を転写する(図7(E)参照)。
最後に、塗布膜300から中間モールド200を剥離する(図7(F)参照)。これにより、第1面2A及びそれに対向する第2面2Bを有する基部2と、基部2の第1面2A上に設けられ、第1面31A及びそれに対向する第2面31Bを有する基体31と、基体31の第1面31A上に設けられてなり、実質的に規則性を有して配列されてなる複数のピラー状凸構造部32とを有する凸構造体3とを有する細胞培養用構造体1が製造される。
以上説明した実施形態は、本開示の理解を容易にするために記載されたものであって、本開示を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本開示の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
上記実施形態において、容器本体11の底部12に一つの貫通孔13が形成され、当該貫通孔13を塞ぐようにして細胞培養用構造体1が底部12に取り付けられている態様(図5(A)及び(B)参照)を例に挙げて説明したが、このような態様に限定されるものではない。例えば、容器本体11の底部12に複数の貫通孔13が形成され、各貫通孔13を塞ぐようにして細胞培養用構造体1が底部12に取り付けられていてもよい。この場合において、底部12に取り付けられる細胞培養用構造体1同士が、培養対象である細胞に対して悪影響を与えない程度に離間しているのが好ましい。また、図6に示す態様においても同様に、容器本体11の底部12の上面における複数の領域のそれぞれにピラー状凸構造部32が形成されていてもよい。
上記実施形態においては、インプリント処理により凸構造体用組成物に中間モールド200のホール状パターン202を転写することで細胞培養用構造体1を製造しているが、本開示はこのような態様に限定されるものではない。例えば、基部2の第1面2A上のレジスト等のマスク材料にホール状パターン202を転写して転写パターンを形成した後、当該転写パターンをマスクとして基部2の第1面2Aをエッチングすることにより、第1面2A及びそれに対向する第2面2Bを有する基部2と、基部2の第1面2Aに形成されてなる複数のピラー状凸構造部32とを有する細胞培養用構造体1が製造されてもよい。
また、上記実施形態において、基部2上の複数の領域に凸構造体3(基体31及び複数のピラー状凸構造部32)を形成し、領域ごとに切断(個片化)することで、細胞培養用構造体1を製造してもよい。
上記実施形態における細胞培養容器10は、袋状に構成された樹脂フィルム等により構成される細胞培養バッグであってもよい。この場合において、樹脂フィルムの一面に細胞培養用構造体1を設け、当該細胞培養用構造体1を内側に配置するようにして樹脂フィルムを袋状に構成すればよい。
以下、実施例等を挙げて本開示をさらに詳細に説明するが、本開示は下記の実施例等により何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
第1面及びそれに対向する第2面を有する石英ガラス基板と、当該石英ガラス基板の第1面に形成されてなる複数のピラー状パターン(幅(直径):200nm,高さ:500nm,間隔:200nm,正方配置(図3参照))とを有するマスターモールドを準備し、当該マスターモールドの第1面上に中間モールド用組成物としてPDMS(ポリジメチルシロキサン)をスピンコートし、中間モールド用塗布膜を形成した。当該中間モールド用塗布膜に紫外線を照射して当該塗布膜を硬化させ、マスターモールドを剥離することで、ホール状パターンを有する中間モールドを作製した。
SOG(スピンオングラス)をスピンコートにより塗布したガラス板を準備し、SOG膜に中間モールドのホール状パターンを押し付け、その状態で2分間放置した。中間モールドを剥離した後、加熱することでSOG膜を硬化させた。このようにして、細胞培養用構造体を製造した。
底面に14mmφの穴が形成されている穴あきディッシュ(35mmφ)を準備し、細胞培養用構造体を穴あきディッシュの底面の内側に接着剤を介して取り付けた後、エタノール滅菌処理及びPBS洗浄処理を行った。次に、上記穴あきディッシュ内にヒト由来の間葉系幹細胞(UE7T−13)を3×103cells/cm2で細胞培養用構造体のピラー状凸構造部上に播種し、24時間培養した後に単位面積あたりに接着している細胞数を計測することで、細胞の接着性を評価した。接着している細胞数の計測方法としては、例えば、接着している細胞をトリプシン処理して培養面から剥離させた後、培地で細胞懸濁液を調製して血球計算盤で細胞数をカウントする方法や、位相差顕微鏡によって培養面を撮影した画像から算出する方法などが挙げられる。本実施例においては、細胞培養用構造体のピラー状凸構造部上の任意の9個の領域(各領域の面積:3.36mm2)を位相差顕微鏡で撮像し、各領域に存在する細胞の数をカウントして単位面積あたりの接着細胞数を算出し、9領域の接着細胞数の平均値を「単位面積あたりに接着している細胞数」として採用した。結果を表1に示す。なお、培養液として、間葉系幹細胞増殖培地(Lonza社製)を用いた。
〔実施例2〕
マスターモールドのピラー状パターンの幅(直径)を500nmに変更した以外は、実施例1と同様にして細胞培養用構造体を製造し、細胞の接着性を評価した。結果を表1にあわせて示す。
〔比較例1〕
マスターモールドのピラー状パターンの幅(直径)を1000nmに変更した以外は、実施例1と同様にして細胞培養用構造体を製造し、細胞の接着性を評価した。結果を表1にあわせて示す。
〔比較例2〕
マスターモールドのピラー状パターンの間隔を1000nmに変更した以外は、実施例2と同様にして細胞培養用構造体を製造し、細胞の接着性を評価した。結果を表1にあわせて示す。
〔比較例3〕
マスターモールドのピラー状パターンの間隔を2000nmに変更した以外は、実施例2と同様にして細胞培養用構造体を製造し、細胞の接着性を評価した。結果を表1にあわせて示す。
〔比較例4〕
マスターモールドのピラー状パターンの幅(直径)を1000nmに変更した以外は、比較例3と同様にして細胞培養用構造体を製造し、細胞の接着性を評価した。結果を表1にあわせて示す。
〔比較例5〕
SOG(スピンオングラス)をガラス板上にスピンコートにより塗布し、加熱することでSOG膜を硬化させ、細胞培養用基板とした。当該細胞培養用基板を細胞培養用構造体の代わりに用いた以外は、実施例1と同様にして細胞の接着性を評価した。結果を表1にあわせて示す。
Figure 2019041719
表1は、実施例1〜2及び比較例1〜5の細胞の接着性の評価結果である。表1において「細胞密度(%)」は、比較例5において接着している細胞数を100%としたときに、実施例1〜2及び比較例1〜4のピラー状凸構造部に接着している細胞数を百分率で示したものである。表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜2のピラー状凸構造部は、有意に細胞を接着させ難い効果を奏することが確認された。これは、ピラー状凸構造部の間隔が相対的に狭く、かつ高さが当該間隔の2倍以上であると、隣接するピラー状凸構造部の間に細胞がはいり込めないことで、細胞が接着し難くなるものと考えられる。
〔実施例3〕
培養対象である細胞としてヒト初代間葉系幹細胞(ATCC)を用い、培養液として間葉系幹細胞基礎培地(ATCC番号:PCS−500−030)に間葉系幹細胞添加物キット(ATCC番号:PCS−500−041)を添加したもの(ATCCから入手)を用いた以外は、実施例2と同様にして細胞の接着性を評価した。結果を表2に示す。
〔比較例6〕
マスターモールドのピラー状パターンの間隔を2000nmに変更した以外は、実施例3と同様にして細胞培養用構造体を製造し、細胞の接着性を評価した。結果を表2に示す。
〔比較例7〕
SOG(スピンオングラス)をガラス板上にスピンコートにより塗布し、加熱することでSOG膜を硬化させ、細胞培養用基板とした。当該細胞培養用基板を細胞培養用構造体の代わりに用いた以外は、実施例3と同様にして細胞の接着性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2019041719
表2は、実施例3及び比較例6〜7の細胞の接着性の評価結果である。表2において「細胞密度(%)」は、比較例7において接着している細胞数を100%としたときに、実施例3及び比較例6のピラー状凸構造部に接着している細胞数を百分率で示したものである。表2に示す結果から明らかなように、表1に示す結果と同様に、実施例3のピラー状凸構造部は、有意に細胞を接着させ難い効果を奏することが確認された。
上記結果から、ピラー状凸構造部の幅Dを100nm〜800nmとし、高さTを100nm〜2μm、かつピラー状凸構造部の間隔Sのうちの最小値の2倍以上とすることで、細胞を接着させ難くなるものと考察される。
本開示は、再生医療に関する技術分野等において有用である。
1…細胞培養用構造体
2…基部
2A…第1面
2B…第2面
3…ピラー状凸構造部
10…細胞培養容器

Claims (12)

  1. 細胞培養に用いられる構造体であって、
    実質的に規則性を有して配列されてなる複数のピラー状凸構造部を有し、
    前記ピラー状凸構造部の高さが100nm〜2μmであって、隣接する前記ピラー状凸構造部の間隔のうちの最小値の2倍以上であり、
    前記ピラー状凸構造部の幅が100nm〜800nmである
    細胞培養用構造体。
  2. 前記ピラー状凸構造部の高さが400nm〜1μmである
    請求項1に記載の細胞培養用構造体。
  3. 前記ピラー状凸構造部の幅が100nm〜600nmである
    請求項1又は2に記載の細胞培養用構造体。
  4. 前記ピラー状凸構造部を構成する材料は、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマー、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、シリコン、ガラス又は液状ガラスである
    請求項1〜3のいずれかに記載の細胞培養用構造体。
  5. 培養面と、
    前記培養面上に設けられてなる請求項1〜4のいずれかに記載の細胞培養用構造体と
    を備える細胞培養容器。
  6. 前記細胞培養用構造体は、前記培養面の全面に設けられてなる
    請求項5に記載の細胞培養容器。
  7. 前記細胞培養用構造体は、前記培養面上の一部の領域に設けられてなる
    請求項5に記載の細胞培養容器。
  8. 前記細胞が、ヒトに由来する間葉系幹細胞である
    請求項5〜7のいずれかに記載の細胞培養容器。
  9. 実質的に規則性を有して配列されてなる複数のピラー状凸構造部を有する細胞培養用構造体を製造する方法であって、
    第1面及び当該第1面に対向する第2面を有する基材を準備し、前記基材の前記第1面上に前記複数のピラー状凸構造部を形成する工程を有し、
    前記ピラー状凸構造部の高さが100nm〜2μmであって、かつ隣接する前記ピラー状凸構造部の間隔の最小値の2倍以上となり、前記ピラー状凸構造部の幅が100nm〜800nmとなるように、前記基材の前記第1面上に前記複数のピラー状凸構造部を形成する
    細胞培養用構造体の製造方法。
  10. 前記複数のピラー状凸構造部に対応する凹凸パターンを有するインプリントモールドを用いて前記複数のピラー状凸構造部を形成する
    請求項9に記載の細胞培養用構造体の製造方法。
  11. 前記ピラー状凸構造部の高さが400nm〜1μmとなるように、前記基材の前記第1面上に前記複数のピラー状凸構造部を形成する
    請求項9又は10に記載の細胞培養用構造体の製造方法。
  12. 前記ピラー状凸構造部の幅が100nm〜600nmとなるように、前記基材の前記第1面上に前記複数のピラー状凸構造部を形成する
    請求項9〜11のいずれかに記載の細胞培養用構造体の製造方法。
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