JP2011005855A - 熱転写記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高画質な転写画像を長期間にわたって安定的に形成可能な熱転写記録媒体の提供。
【解決手段】本発明の熱転写記録媒体は、支持体と、該支持体上に、剥離層及びインク層をこの順に有してなり、前記インク層が、カルナバワックス、酸価が90〜200である有機脂肪酸、並びに下記式(1)で表される長鎖アルコール及び下記式(2)で表される長鎖アルコールの少なくともいずれか、を少なくとも含む。
【化6】
Figure 2011005855

ただし、前記式(1)及び前記式(2)中、Rは、C28〜C38を表す。
【選択図】なし

Description

本発明は、高画質な転写画像を長期間にわたって安定的に形成可能な、熱溶融方式の熱転写記録媒体に関する。
熱溶融方式の転写記録方法では、レーザーやサーマルヘッド等の電気信号により制御された熱エネルギーを用いて、熱転写インクシート(熱転写記録媒体)を加熱し、その溶融したインクを、被転写体上へ転写させ、画像を記録している。
このような熱転写記録媒体におけるインク層としては、着色剤のほか、熱溶融性物質として、ワックスを主成分としたものが主流となっており、例えば、カルナバワックスが好適に使用されている。
前記カルナバワックスは、硬質ワックスであるため、耐摩擦性に優れ、また、融点が低いため、感度特性にも優れ、更に、熱特性がシャープで溶融粘度が低いため、印字特性に優れるという利点があり、例えば、耐熱摩耗性及び潤滑性に優れた転写画像を形成することを目的として、使用されている(特許文献1〜2参照)。
また、従来より、前記カルナバワックスは、水系化してエマルションの形態で使用されている。この場合、サーマルヘッドで加熱された際、エマルションを形成していた各粒子の境界で優先的に切断されて剥離し、被転写体表面に移行するため、転写体(印字)のエッジ部分が非常にシャープになり、しかも、水系であるため、環境への負荷が小さい。
ここで、前記カルナバワックスの水系エマルションを形成する際には、一般的に乳化剤が用いられているが、この乳化剤としては、例えば、有機脂肪酸が使用されている(特許文献3参照)。しかし、前記乳化剤として、有機脂肪酸のみを使用した場合、前記カルナバワックスを容易に乳化することができるものの、前記カルナバワックスは、水系エマルション形成時に、一度完全溶融されるが、冷却後も過冷却性を有することにより、時間経過に伴い、ブルーミングし、前記熱転写記録媒体をロール状に保管すると、バック層表面を汚し、高画質な転写画像を長期間にわたって安定的に形成することができないという問題があった。
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、高画質な転写画像を長期間にわたって安定的に形成可能な熱転写記録媒体を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、以下の知見を得た。即ち、前記熱転写記録媒体における前記インク層の主成分として、カルナバワックスを水系エマルション化して使用する際、該カルナバワックスの乳化剤として、酸価が90〜200である有機脂肪酸と、下記式(1)で表される長鎖アルコール及び下記式(2)で表される長鎖アルコールの少なくともいずれかとを併用すると、乳化剤としての機能に加えて、前記カルナバワックスのブルーミングを抑制する機能を発揮し、長期間にわたって高画質な転写画像が安定的に得られるという知見である。
Figure 2011005855
ただし、前記式(1)及び前記式(2)中、Rは、C28〜C38を表す。
本発明は、本発明者の前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に、剥離層及びインク層をこの順に有してなり、
前記インク層が、カルナバワックス、酸価が90〜200である有機脂肪酸、並びに下記式(1)で表される長鎖アルコール及び下記式(2)で表される長鎖アルコールの少なくともいずれか、を少なくとも含むことを特徴とする熱転写記録媒体である。
Figure 2011005855
ただし、前記式(1)及び前記式(2)中、Rは、C28〜C38を表す。
<2> 式(1)で表される長鎖アルコール及び式(2)で表される長鎖アルコールの融点が、70℃〜90℃である前記<1>に記載の熱転写記録媒体である。
<3> 有機脂肪酸の酸価が、140〜200である前記<1>から<2>のいずれかに記載の熱転写記録媒体である。
<4> インク層における、有機脂肪酸の含有量が、カルナバワックス100質量部に対して、1質量部〜6質量部であり、
式(1)で表される長鎖アルコール及び式(2)で表される長鎖アルコールの少なくともいずれかの含有量が、カルナバワックス100質量部に対して、6質量部〜12質量部である前記<1>から<3>のいずれかに記載の熱転写記録媒体である。
<5> インク層が、ノニオン界面活性剤を更に含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱転写記録媒体である。
<6> インク層におけるノニオン界面活性剤の含有量が、カルナバワックス100質量部に対して、2質量部〜7質量部である前記<5>に記載の熱転写記録媒体である。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、高画質な転写画像を長期間にわたって安定的に形成可能な熱転写記録媒体を提供することができる。
(熱転写記録媒体)
本発明の熱転写記録媒体は、支持体と、該支持体上に、剥離層及びインク層をこの順に有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、その他の層を有してなる。
<支持体>
前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロースアセテートなどの各種プラスチックフィルムが挙げられる。これらの中でも、前記熱転写記録媒体そのものの強度、耐熱性、熱伝導性に優れる点で、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm〜10μmが好ましい。
<剥離層>
前記剥離層は、印字の際に、前記支持体と前記インク層との剥離性を向上させる機能を有し、サーマルヘッドで加熱されると熱溶融して低粘度の液体となり、加熱部分と非加熱部分との界面近傍にて、前記インク層の切断を容易にする。
前記剥離層は、ワックスとバインダー樹脂とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択した、その他の成分を含んでなる。
−ワックス−
前記ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蜜ろう、鯨ろう、木ろう、米ぬかろう、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸変性ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸ワックス、オゾケライト、セレシン、エステルワックス、マルガリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、フロイン酸、べへン酸、リグノセリン酸、モンタン酸、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ソルビタン、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどが挙げられる。これらの中でも、比較的硬く滑性に優れ、転写画像が擦られた場合に、画像を保護する効果が高い点で、カルナバワックス、ポリエチレンワックスが好ましい。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、部分ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸ナトリウム共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリアクリル酸、イソブチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらの中でも、支持体への接着性、転写性に優れる点で、スチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。
前記剥離層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm〜2.0μmが好ましい。
<インク層>
前記インク層は、カルナバワックス、酸価が90〜200である有機脂肪酸、並びに下記式(1)で表される長鎖アルコール及び下記式(2)で表される長鎖アルコールの少なくともいずれか、を少なくとも含み、着色剤、更に必要に応じて適宜選択した、ノニオン界面活性剤やバインダー樹脂、その他の成分を含んでなる。
Figure 2011005855
ただし、前記式(1)及び前記式(2)中、Rは、C28〜C38を表す。
−カルナバワックス−
前記カルナバワックスを前記インク層に含有すると、前記カルナバワックスが針入度1以下の硬質ワックスであるため、前記インク層の耐摩擦性に優れる。また、融点が80℃と低いので、感度特性に優れる。更に、熱特性がシャープで、溶融粘度が低いため、印字特性にも優れるという利点がある。
前記カルナバワックスは、酸価が90〜200である前記有機脂肪酸、並びに前記式(1)で表される長鎖アルコール及び前記式(2)で表される長鎖アルコールの少なくともいずれかと共にエマルションの形態にして含有する。この場合、サーマルヘッドで加熱された際、エマルションを形成していた各粒子の境界で優先的に切断されて剥離し、被転写体表面に移行するため、転写体(印字)のエッジ部分が非常にシャープになる。また、水系であるので、環境への負荷が小さいという利点がある。
前記カルナバワックスの水系エマルションの形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記有機脂肪酸と有機塩基とを液中に添加して生成した塩を乳化剤とすることにより、前記カルナバワックスを乳化することができる。
−有機脂肪酸−
前記有機脂肪酸の酸価としては、90〜200であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、140〜200が好ましい。
前記酸価が、90〜200であると、酸価が高く、アルカリと反応してアニオン系乳化剤となり、感度及び耐スミア性に悪影響を及ぼすことなく、前記カルナバワックスを乳化することができる。
前記酸価が、90未満であると、前記カルナバワックスをエマルションにすることができないことがあり、200を超えると、前記カルナバワックスをエマルションにすることはできるが、該エマルションがクリーム化し、塗工液にすることができないことがある。
前記酸価を有する有機脂肪酸としては、例えば、オレイン酸(酸価200)、ベヘン酸(酸価160)が好適に挙げられる。
前記有機脂肪酸は、融点が70℃〜90℃であるのが好ましい。前記融点が、この範囲内であると、前記カルナバワックスの融点と近いため、感度特性が良好となる。
前記融点を有する有機脂肪酸としては、例えば、ベヘン酸(融点76℃)が好適に挙げられる。
前記融点が70℃未満であると、例えば、夏場などの高温環境下では、印字した画像がこすれ、汚れることがあり、90℃を超えると、感度特性が低下することがある。
前記有機脂肪酸の前記インク層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記カルナバワックス100質量部に対し、1質量部〜6質量部が好ましい。
前記含有量が、1質量部未満であると、前記カルナバワックスをエマルションにすることができないことがあり、6質量部を超えると、前記カルナバワックスのブルーミングが発生することがある。
−式(1)又は式(2)で表される長鎖アルコール−
下記式(1)で表される長鎖アルコール及び下記式(2)で表される長鎖アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記式(1)及び下記式(2)中、RにおけるCの数は、28〜38であることが必要である。
前記Cの数が、28未満、あるいは38を超えると、ブルーミング抑制効果が観られないことがある。
ここで、前記カルナバワックスは、水系エマルション形成時に、一度完全溶融されるが、冷却後も過冷却性を有することにより、時間経過に伴い、前記インク層表面にブルーミングすることがある。これは前記熱転写記録媒体をロール状に保管すると、バック層表面を汚すという問題があった。しかし、下記式(1)及び下記式(2)中、前記RにおけるCの数が、28〜38である前記長鎖アルコールを用いると、前記カルナバワックスのブルーミングを抑制することができる点で、有利である。
Figure 2011005855
ただし、前記式(1)及び前記式(2)中、Rは、C28〜C38を表す。
前記長鎖アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、脂肪族アルコールが好ましい。
前記長鎖は、直鎖のみからなるものであってもよいし、分岐鎖を有するものであってもよい。
前記式(1)で表される長鎖アルコール及び前記式(2)で表される長鎖アルコールの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70℃〜90℃が好ましい。
前記融点が、この範囲内であると、前記カルナバワックスの融点と近いため、感度特性が良好となる。
前記式(1)で表される長鎖アルコール及び前記式(2)で表される長鎖アルコールの少なくともいずれかの前記インク層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記カルナバワックス100質量部に対し、6質量部〜12質量部であるのが好ましい。
前記含有量が、6質量部未満であると、ブルーミング抑制効果が観られないことがあり、12質量部を超えると、前記カルナバワックスとの融点差がある場合に、感度がずれることがある。
−有機塩基−
前記有機塩基は、前記カルナバワックスを乳化する際に、前記有機脂肪酸と共に使用する。
前記有機塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾燥後に揮発しやすい点で、モルホリンが好適に挙げられる。
前記有機塩基の前記インク層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記カルナバワックス100質量部に対し、0.5質量部〜5質量部が好ましい。
−ノニオン界面活性剤−
前記ノニオン界面活性剤を添加すると、前記カルナバワックスの水系エマルションを小粒径化することができ、前記インク層の凝集力が向上し、地汚れを防止することができる。
前記ノニオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、POEオレイルエーテルが好ましい。
前記ノニオン界面活性剤の前記インク層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記カルナバワックス100質量部に対し、2質量部〜7質量部が好ましい。
前記含有量が、2質量部未満であると、前記カルナバワックスを水系エマルション化する際の小粒径化に効果が無いことがあり、7質量部を超えると、前記インク層が軟らかくなることにより画像耐摩擦性が劣化することがある。
−着色剤−
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の着色剤の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、アゾ系染顔料、フタロシアニン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、キノフタロン、アニリンブラック、酸化チタン、亜鉛華、酸化クロムなどが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。
−その他の成分−
前記インク層には、バインダー樹脂として、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、ウレタン樹脂、セルロール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、石油樹脂、ロジン樹脂、及びこれらの誘導体、ポリアミド等を添加することもできる。
前記バインダー樹脂としては、特に耐摩擦性、耐薬品性などで優れた品質を有するものが好ましいが、従来の熱転写プリンタによって印加される熱量では不足である場合もあり、感度を阻害しない程度の添加が好ましい。
また、前記インク層には、熱溶融性物質としてカルナバワックス以外にも、例えばパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化パラフィンワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、セレシンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、カスターワックス、牛脂硬化油、ラノリン、木ロウ、ソルビタンステアレート、ソルビタンパルミテート、ステアリルアルコール、ポリアミドワックス、オレイルアミド、ステアリルアミド、ヒドロキシステアリン酸、合成エステルワックス、合成合金ワックスなどのろう状物質を添加することもできる。
前記インク層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜3μmが好ましい。
<その他の層>
−オーバー層−
前記熱転写記録媒体は、更なる地汚れの防止性付与のため、前記インク層上に熱溶融性物質で形成されたオーバー層を設けてもよい。ただし、前記オーバー層を設ける場合、全体のインク面の厚みが増えることになるため、サーマルヘッドによって効率的に前記インク層に熱が印加されるのを阻害しない範囲での適用が好ましい。
前記オーバー層の材料に用いられる熱溶融性物質としても、カルナバワックスが好ましい。これは、前記同様、カルナバワックスは針入度1以下の硬質ワックスであるため、耐摩擦性に優れる。また、融点が80℃と低いので、感度特性に優れる。更に、熱特性がシャープで、溶融粘度が低いため、印字特性にも優れるという利点があるためである。
また、前記オーバー層には、前記インク層と同様に、熱溶融性物質としてカルナバワックス以外にも、例えばパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化パラフィンワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、セレシンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、カスターワックス、牛脂硬化油、ラノリン、木ロウ、ソルビタンステアレート、ソルビタンパルミテート、ステアリルアルコール、ポリアミドワックス、オレイルアミド、ステアリルアミド、ヒドロキシステアリン酸、合成エステルワックス、合成合金ワックスなどのろう状物質を添加することもできる。
前記オーバー層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm〜1.5μmが好ましい。
−バック層−
本発明の前記熱転写記録媒体には、前記支持体から見て上記の各層とは反対側の面(前記インク層が形成されている面とは反対側の面)に、バック層を設けることが好ましい。このような反対面には、転写時に、サーマルヘッド等で画像に合わせて熱が直接印加されため、前記バック層には、高熱への耐性、サーマルヘッド等との摩擦への耐性が必要である。
前記バック層に好適な材料としては、シリコン変性ウレタン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ニトロセルロース等などが挙げられる。
また、更に必要に応じて、タルク、シリカ、オルガノポリシロキサンなどの無機微粒子や滑剤などを添加することもできる。
前記バック層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜1.0μmが好ましい。
前記各層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばグラビアコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーターなどの一般的な塗工法により、前記支持体上に塗布し、乾燥させることにより各層を形成することができる。
本発明の前記熱転写記録媒体の転写方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリアルサーマルヘッド、ライン型サーマルヘッドなどの加熱溶融によって前記剥離層、前記インク層を溶融させて、転写する方法により、被転写体に転写させることができる。
前記被転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリアミドフィルム、ポリスチレンフィルムなどの一般的に用いられているフィルムのほか、合成紙、耐洗紙、軽量コート紙、キャストコート紙、アート紙など一般的に用いられている紙、PVC、PET、厚紙などの厚みがあるカード、ナイロン、ポリエステル、綿、不織布に代表される布帛など、更に前述のフィルムを積層したもの、前述のフィルムにマット処理やコロナ処理、金属蒸着など表面処理をしたものも含め、前記被転写体については公知のものを使用することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
−熱転写記録媒体の作製−
<インク層用塗工液の調製>
カルナバワックス100質量部、モンタン酸(酸価132、融点80℃)2質量部、及び前記式(1)で表される長鎖アルコール(炭素数28〜38、融点75℃)9質量部を、120℃で溶解した後、攪拌下にモルホリン5質量部を投入し、次いで90℃の熱水を固形分30質量%になる量滴下し、水中油型のエマルションを形成した後、冷却して固形分30質量%のカルナバワックスの水系エマルションを得た。
得られた水系エマルションの平均粒径を、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(「LA−920」;堀場製作所製)を用いて測定したところ、0.4μmであった。
次いで、前記カルナバワックスの水系エマルション(固形分30質量%)80質量部と、カーボンブラック水分散体(固形分30質量%) 20質量部とを混合し、インク層用塗工液を得た。
<剥離層用塗工液の調製>
ポリエチレンワックス(融点99℃、25℃における針入度2)14質量部、低分子量EVA(重量平均分子量2,100、VAc21%)6質量部、トルエン60質量部、及びメチルエチルケトン20質量部を、平均粒径が2.5μmとなるまで分散し、剥離層用塗工液を得た。
<バック層用塗工液の調製>
シリコーン系ゴム(固形分30質量%)16.8質量部、塩化白金酸触媒0.2質量部、及びトルエン83質量部を混合し、バック層用塗工液を得た。
前記支持体としての、厚み4.5μmのポリエステルフィルムの片面に、前記バック層用塗工液を塗布し、80℃で10秒間乾燥して膜厚0.02μmのバック層を形成した。
次いで、ポリエステルフィルムにおける、前記バック層が形成された面とは反対側の面に、前記剥離層用塗工液を塗布し、40℃で10秒間乾燥して、膜厚1.5μmの剥離層を形成した。
続いて、前記剥離層上に、前記インク層用塗工液を塗布し、70℃で10秒間乾燥して、膜厚1.7μmのインク層を形成し、熱転写記録媒体を得た。
(実施例2〜6及び比較例1〜7)
実施例1において、前記インク層の組成を、表1に示す組成に変えた以外は、実施例1と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。また、得られた水系エマルションの平均粒径を、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(「LA−920」;堀場製作所製)を用いて測定した。
なお、比較例2及び比較例4では、カルナバワックスの水系エマルションを形成することができず、熱転写記録媒体を得ることができなかった。
以下に実施例、及び比較例で用いた長鎖アルコールの詳細を示す。
・実施例1〜4、実施例6、比較例2、及び比較例4
構造 ・・・ 前記式(1)
RにおけるCの数 ・・・ 28〜38
融点 ・・・ 75℃
商品名 ・・・ NPS−9210(日本精蝋株式会社製)
・実施例5
構造 ・・・ 前記式(2)
RにおけるCの数 ・・・ 30
融点 ・・・ 87℃
商品名 ・・・ 1−トリアコンタノール(東京化成工業株式会社製)
・比較例3
構造 ・・・ 前記式(2)
RにおけるCの数 ・・・ 22
融点 ・・・ 70℃
商品名 ・・・ 1−ドコサノール(東京化成工業株式会社製)
・比較例5、及び6
構造 ・・・ 前記式(1)
RにおけるCの数 ・・・ 35〜46
融点 ・・・ 93℃
製造方法 ・・・ 炭素数35〜46の長鎖炭化水素400質量部に対して、ホウ酸4質量部を添加して温度160℃で空気酸化し、後に加水分解して前記式(1)で表される長鎖アルコール(融点93℃)を得た。
・比較例7
構造 ・・・ 前記式(1)
RにおけるCの数 ・・・ 18〜38
融点 ・・・ 72℃
製造方法 ・・・ 炭素数18〜38の長鎖炭化水素400質量部に対して、ホウ酸4質量部を添加して温度160℃で空気酸化し、後に加水分解して前記式(1)で表される長鎖アルコール(融点72℃)を得た。
Figure 2011005855
実施例1〜6及び比較例1〜7について、水系エマルションを形成する際の乳化性を評価した。
また、実施例1〜6並びに比較例1、3及び5〜7で得られた熱転写記録媒体について、画質経時安定性、感度適正(解像性)、画像耐摩擦性、及び地汚れを評価した。結果を表2に示す。
〔乳化性〕
前記乳化性は、得られた水系エマルションの平均粒径より、下記基準に基づいて評価した。
−評価基準−
◎:0.3μm以下
○:0.4μm〜0.5μm
△:0.6μm以上
×:乳化不可
〔画質経時安定性〕
得られた各熱転写記録媒体(熱転写シート)80mm巾×200mを、ロール状に巻いて、40℃環境下にて3ヶ月間保管した。保管後の熱転写記録媒体(熱転写シートロール)を、下記条件で500枚連続印字し、画像及びサーマルヘッドを、下記基準に基づいて評価した。
プリンタ:熱転写プリンタ(「M4800RV」;サトー社製)
ヘッド密度:8dot/インチ(TDK製ヘッド)
印字速度:8インチ/sec
印字エネルギー:メモリ2
被転写体:サトー製、キャスコート紙
印字パターン:1dot文字(サーマルヘッドの抵抗体1dotで構成されている文字)
−評価基準−
◎:サーマルヘッドへのカス付着がなく、500枚目の印字画像にカスレがない。
○:サーマルヘッドへのカス付着は若干あるが、500枚目の印字画像にカスレはない。
△:サーマルヘッドへのカス付着があり、500枚目の印字画像にカスレがある。
×:サーマルヘッドへのカス付着が多量にあり、100枚目の印字画像にカスレがある。
〔感度適正(解像性)〕
各熱転写記録媒体を、下記条件で印字し、横バーの解像性を、下記基準に基づいて評価した。
プリンタ:熱転写プリンタ(「M4800RV」;サトー社製)
ヘッド密度:8dot/インチ(TDK製ヘッド)
印字速度:8インチ/sec
印字エネルギー:メモリ2
被転写体:サトー製、キャスコート紙
印字パターン:1dot文字(サーマルヘッドの抵抗体1dotで構成されている文字)
−評価基準−
◎:カスレ、欠け又はつぶれがなく、判読可能である。
○:カスレ、欠け又はつぶれが若干あるが、判読可能である。
△:カスレ、欠け又はつぶれがあり、判読不可能である。
×:転写画像が得られない。
〔画像耐摩擦性〕
40℃にて、ラブテスターを用い、ダンボールで、圧力80g/cmの条件で100往復、転写画像を擦り、そのダメージ具合を目視にて観察し、下記基準に基づいて評価した。
−評価基準−
◎:画像が全く破壊されない。
○:画像が殆ど破壊されない。
△:画像がやや破壊される。
×:画像が完全に破壊される。
〔地汚れ〕
各熱転写記録媒体を、下記条件で印字し、地汚れを、下記基準に基づいて評価した。
プリンタ:熱転写プリンタ(「M4800RV」;サトー社製)
ヘッド密度:8dot/インチ(TDK製ヘッド)
印字速度:8インチ/sec
印字エネルギー:メモリ2
被転写体:ユポSGU(王子油化合成紙株式会社製)
印字パターン:1dot文字(サーマルヘッドの抵抗体1dotで構成されている文字)
−評価基準−
◎:印字部以外の擦れ汚れがない。
○:印字部以外の擦れ汚れが若干ある。
△:印字部以外の擦れ汚れがある。
×:全面にこすれ汚れがある。
Figure 2011005855
表2より、実施例1〜6の熱転写記録媒体は、高画質な転写画像を長期間にわたって安定的に形成することができることが判った。
特に、酸価が140〜200である有機脂肪酸を用いた実施例3〜5では、乳化性に優れ、小粒径のエマルションを形成することができ、画質経時安定性に優れることが判った。
また、前記ノニオン界面活性剤を添加した実施例6では、エマルションの小粒径化により、層凝集力が向上し、地汚れの発生が防止されることが判った。
本発明の熱転写記録媒体は、高画質な転写画像を長期間にわたって安定的に形成することができるので、熱転写プリンタ等の各種熱転写記録装置に好適に使用可能である。
特開平6−293188号公報 特開平9−156240号公報 特許第3835956号公報

Claims (4)

  1. 支持体と、該支持体上に、剥離層及びインク層をこの順に有してなり、
    前記インク層が、カルナバワックス、酸価が90〜200である有機脂肪酸、並びに下記式(1)で表される長鎖アルコール及び下記式(2)で表される長鎖アルコールの少なくともいずれか、を少なくとも含むことを特徴とする熱転写記録媒体。
    Figure 2011005855
    ただし、前記式(1)及び前記式(2)中、Rは、C28〜C38を表す。
  2. 式(1)で表される長鎖アルコール及び式(2)で表される長鎖アルコールの融点が、70℃〜90℃である請求項1に記載の熱転写記録媒体。
  3. 有機脂肪酸の酸価が、140〜200である請求項1から2のいずれかに記載の熱転写記録媒体。
  4. インク層における、有機脂肪酸の含有量が、カルナバワックス100質量部に対して、1質量部〜6質量部であり、
    式(1)で表される長鎖アルコール及び式(2)で表される長鎖アルコールの少なくともいずれかの含有量が、カルナバワックス100質量部に対して、6質量部〜12質量部である請求項1から3のいずれかに記載の熱転写記録媒体。
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