図1は、本発明の実施の一形態である画像形成装置100の構成を示す図である。画像形成装置100は、読み取った原稿の画像データやネットワーク等を介して送信された画像データに基づいて、記録媒体である記録紙に対して多色および単色の画像を形成する装置である。画像形成装置100は、露光ユニット10、感光体ドラム101(101a〜101d)、現像装置102(102a〜102d)、帯電ローラ103(103a〜103d)、クリーニングユニット104(104a〜104d)、中間転写ベルト11、一次転写ローラ13(13a〜13d)、二次転写ローラ14、定着装置15、用紙搬送路P1,P2,P3、給紙カセット16、手差し給紙トレイ17および排紙トレイ18を備えている。
画像形成装置100は、ブラック(K)およびカラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色の各色相に対応した画像データを用いて、各色相に対応した画像形成部Pa〜Pdにおいて画像形成を行う。各画像形成部Pa〜Pdは、同様の構成であり、たとえば、ブラック(K)の画像形成部Paは、感光体ドラム101a、現像装置102a、帯電ローラ103a、一次転写ローラ13aおよびクリーニングユニット104a等から構成される。この画像形成部Pa〜Pdは、中間転写ベルト11の移動方向(副走査方向)に一列に配列されている。
帯電ローラ103は、感光体ドラム101の表面を所定の電位に均一に帯電させる接触方式の帯電器である。帯電ローラ103に代えて、帯電ブラシを用いた接触方式の帯電器、または、帯電ワイヤを用いた非接触方式の帯電器を用いることもできる。
露光ユニット10は、図示しない半導体レーザ、ポリゴンミラー4、第1反射ミラー7、第2反射ミラー8等を備えており、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相の画像データによって変調されたレーザビーム等の光ビームのそれぞれを感光体ドラム101a〜101dのそれぞれに照射する。各感光体ドラム101a〜101dは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相の画像データによる静電潜像を形成する。
現像装置102は、静電潜像が形成された感光体ドラム101の表面に現像剤であるトナーを供給し、静電潜像をトナー像に現像する。現像装置102a〜102dのそれぞれは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相のトナーを収納しており、感光体ドラム101a〜101dのそれぞれに形成された各色相の静電潜像を、各色相のトナー像に顕像化する。クリーニングユニット104は、現像・画像転写後における感光体ドラム101上の表面に残留したトナーを除去・回収する。
中間転写ベルト11は、感光体ドラム101の上方に配置されており、駆動ローラ11aと従動ローラ11bとの間に張架されてループ状の移動経路を形成している。中間転写ベルト11の外周面は、感光体ドラム101d、感光体ドラム101c、感光体ドラム101bおよび感光体ドラム101aにこの順に対向する。この中間転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム101a〜101dに対向する位置に、一次転写ローラ13a〜13dが配置されている。中間転写ベルト11が感光体ドラム101a〜101dに対向する位置のそれぞれが一次転写位置である。また、中間転写ベルト11は、厚さ100〜150μm程度のフィルムで形成されている。
一次転写ローラ13a〜13dには、感光体ドラム101a〜101dの表面に担持されたトナー像を中間転写ベルト11上に転写するために、トナーの帯電極性と逆極性の一次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム101a〜101dに形成された各色相のトナー像は、中間転写ベルト11の外周面に順次重ねて転写され、中間転写ベルト11の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。
ただし、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の色相の一部のみの画像データが入力された場合には、4つの感光体ドラム101a〜101dのうち、入力された画像データの色相に対応する一部の感光体ドラム101のみにおいて静電潜像およびトナー像の形成が行われる。たとえば、モノクロ画像形成時には、ブラックの色相に対応した感光体ドラム101aのみにおいて静電潜像の形成およびトナー像の形成が行われ、中間転写ベルト11の外周面にはブラックのトナー像のみが転写される。
各一次転写ローラ13a〜13dは、直径8〜10mmのステンレスなどの金属を基材とする軸の表面を導電性の弾性材(たとえばEPDM、発泡ウレタン等)によって被覆して構成されており、導電性の弾性材によって中間転写ベルト11に均一に高電圧を印加する。
各一次転写位置において中間転写ベルト11の外周面に転写されたトナー像は、中間転写ベルト11の回転によって、二次転写ローラ14との対向位置である二次転写位置に搬送される。二次転写ローラ14は、画像形成時において、内周面が駆動ローラ11aの周面に接触する中間転写ベルト11の外周面に所定のニップ圧で圧接されている。給紙カセット16または手差し給紙トレイ17から給紙された記録紙が、二次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間を通過する際に、二次転写ローラ14にトナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト11の外周面から記録紙の表面にトナー像が転写される。
なお、感光体ドラム101から中間転写ベルト11に付着したトナーのうち、記録紙上に転写されずに中間転写ベルト11上に残存したトナーは、次工程での混色を防止するために、転写クリーニングユニット12によって回収される。
トナー像が転写された記録紙は、後述する本発明に係る定着装置15に導かれ、定着ニップ部を通過して加熱および加圧を受ける。これによって、トナー像が、記録紙の表面に堅牢に定着する。トナー像が定着した記録紙は、排紙ローラ18aによって排紙トレイ18上に排出される。
また、画像形成装置100には、給紙カセット16に収納されている記録紙を、二次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間および定着装置15を経由して、排紙トレイ18に送るための略垂直方向に延びる用紙搬送路P1が設けられている。用紙搬送路P1には、給紙カセット16内の記録紙を一枚ずつ用紙搬送路P1内に繰り出すピックアップローラ16a、繰り出された記録紙を上方に向けて搬送する搬送ローラ16b、搬送されてきた記録紙を所定のタイミングで二次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間に導くレジストローラ19、記録紙を排紙トレイ18に排出する排紙ローラ18aが配置されている。
また、画像形成装置100の内部には、手差し給紙トレイ17からレジストローラ19に至る間に、ピックアップローラ17aおよび搬送ローラ16bを配置した用紙搬送路P2が形成されている。さらに、排紙ローラ18aから用紙搬送路P1におけるレジストローラ19の上流側に至る間には、用紙搬送路P3が形成されている。
排紙ローラ18aは、正逆両方向に回転自在にされており、記録紙の片面に画像を形成する片面画像形成時、および、記録紙の両面に画像を形成する両面画像形成における第2面画像形成時に正転方向に駆動されて記録紙を排紙トレイ18に排出する。一方、両面画像形成における第1面画像形成時には、排紙ローラ18aは、用紙の後端が定着装置15を通過するまで正転方向に駆動された後、記録紙の後端部を挟持した状態で逆転方向に駆動されて記録紙を用紙搬送路P3内に導く。これによって、両面画像形成時に片面のみに画像が形成された記録紙は、表裏面および前後端を反転した状態で用紙搬送路P1に導かれる。
レジストローラ19は、給紙カセット16または手差し給紙トレイ17から給紙され、または、用紙搬送路P3を経由して搬送された記録紙を、中間転写ベルト11の回転に同期したタイミングで二次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間に導く。このため、レジストローラ19は、感光体ドラム101や中間転写ベルト11の動作開始時には回転を停止しており、中間転写ベルト11の回転に先立って給紙または搬送された記録紙は、前端をレジストローラ19に当接させた状態で用紙搬送路P1内における移動を停止する。この後、レジストローラ19は、二次転写ローラ14と中間転写ベルト11とが圧接する位置で、記録紙の前端部と中間転写ベルト11上に形成されたトナー像の前端部とが対向するタイミングで回転を開始する。
なお、画像形成部Pa〜Pdの全てにおいて画像形成が行われるフルカラー画像形成時には、一次転写ローラ13a〜13dが中間転写ベルト11を感光体ドラム101a〜101dの全てに圧接させる。一方、画像形成部Paのみにおいて画像形成が行われるモノクロ画像形成時には、一次転写ローラ13aのみを中間転写ベルト11を感光体ドラム101aに圧接させる。
図2は、本発明の第1実施形態である定着装置15の構成を示す図である。定着装置15は、第1定着部材である定着ローラ15aと、第2定着部材である加圧ローラ15bと、無端状ベルト部材である定着ベルト25と、加熱部材21とを含んで構成される。定着装置15においては、定着ベルト25が定着ローラ15aと加熱部材21との間に張架され、加圧ローラ15bが定着ベルト25を介して定着ローラ15aに対向するように配置されている。そして、定着ローラ15aと加熱部材21とは、定着ローラ15aの軸線方向において、略平行となるように配置されている。そのため、定着ローラ15aと加熱部材21との間に張架される定着ベルト25が摺動するとき、蛇行するのを防止して、定着ベルト25の耐久性を高く維持することができる。
定着装置15は、加熱部材21が定着ベルト25と接触して定着ベルト25を加熱し、定着ベルト25と加圧ローラ15bとで形成する定着ニップ部15cを、所定の定着速度および複写速度で記録媒体である記録紙32が通過したとき、記録紙32上に担持されている未定着のトナー像31を記録紙32上に加熱加圧して定着するベルト定着方式の定着装置である。このようなベルト定着方式の装置である定着装置15は、熱容量が小さい定着ベルト25を高電力密度の発熱層212を有する加熱部材21で加熱する構成であるので、ウォームアップ時間が短く、かつ、消費電力の増大を抑えて省エネ化が達成できる。
なお、未定着のトナー像31は、たとえば、非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)、非磁性二成分現像剤(非磁性トナーおよびキャリア)、磁性現像剤(磁性トナー)などの現像剤(トナー)によって形成される。また、定着速度とは所謂プロセス速度であり、複写速度とは1分あたりのコピー枚数のことである。また、記録紙32が定着ニップ部15cを通過するときには、定着ベルト25は、記録紙32のトナー像担持面に当接するようになっている。
定着ローラ15aは、定着ベルト25を介して加圧ローラ15bに圧接することで定着ニップ部15cを形成すると同時に、図示しない駆動モータ(駆動手段)により回転軸線まわりに回転方向A方向に回転駆動することによって、定着ベルト25を搬送する。定着ローラ15aは、直径が30mmで、その内側から順に芯金、弾性層が形成された2層構造からなり、芯金には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層にはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適している。なお、本実施の形態では、定着ローラ15aが定着ベルト25を介して加圧ローラ15bに圧接するときの力は、216N程度である。
加圧ローラ15bは、定着ベルト25を介して定着ローラ15aに対向しかつ圧接し、回転軸線まわりに回転自在に設けられている。加圧ローラ15bは、定着ローラ15aの回転に従動して回転方向B方向に回転する。加圧ローラ15bは、その内側から順に芯金、弾性層、離型層が形成された3層構造からなっている。芯金には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層にはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適しており、離型層にはPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が適している。加圧ローラ15bは、たとえば、ローラ直径が30mmで、芯金に直径24mm(肉厚2mm)の鉄(STKM)パイプ、弾性層に厚みが3mmのシリコンソリッドゴム、離型層に厚みが30μmのPFAチューブからなるローラを用いることができる。
また、加圧ローラ15bの内部には、加圧ローラ15bを加熱するヒータランプ26(たとえば、定格電力400W)が配置されている。制御回路(不図示)が電源回路(不図示)からヒータランプ26に電力を供給(通電)させることによって、ヒータランプ26が発光し、ヒータランプ26から赤外線が放射される。これによって、加圧ローラ15bの内周面が赤外線を吸収して加熱され、加圧ローラ15b全体が加熱される。なお、上述したヒータランプ26は、加圧ローラ15bの内面より加熱するものであるが、これとは別に外周面加熱用のローラにて、加圧ローラ15bの表面より加熱する方法も構成可能である。
定着ベルト25は、加熱部材21によって所定の温度に加熱され、定着ニップ部15cを通過する未定着トナー像31が形成された記録紙32を加熱する。定着ベルト25は、無端状のベルトで、加熱部材21と定着ローラ15aによって懸架され、定着ローラ15aに所定の角度で巻きかかっている。定着ベルト25は、定着ローラ15aの回転時には、定着ローラ15aに従動して回転方向A方向に回転するようになっている。定着ベルト25は、ポリイミド等の耐熱性樹脂あるいはステンレスやニッケル等の金属材料からなる中空円筒状の基材の表面に、弾性層として耐熱性および弾性に優れたエラストマー材料(たとえばシリコンゴム)が形成され、さらにその表面に離型層として耐熱性および離型性に優れた合成樹脂材料(たとえばPFAやPTFE等のフッ素樹脂)が形成された3層構造となっている。また、基材のポリイミドにフッ素樹脂を内添してもよい。これによって、加熱部材21との摺動負荷を低減することができる。
加熱部材21は、定着ベルト25に接触して、定着ベルト25を所定の温度に加熱するためのものである。また、定着装置15においては、温度検知手段として、加熱部材21に接触する定着ベルト25の周面には発熱体側サーミスタ24a、加圧ローラ15bの周面には加圧ローラ側サーミスタ24bが配設されており、それぞれの表面温度を検出するようになっている。
図3は、加熱部材21の構成を拡大して示す図である。加熱部材21は、半円筒状に形成され、放熱部材210と、発熱部材211とを含んで構成される。
放熱部材210は、後述する発熱部材211の複数の面に当接して設けられ、発熱部材211から発生する熱を受け取る受熱部と、受熱部で受熱した熱を定着ベルト25に伝達する伝熱部とを含んで構成される。さらに、放熱部材210の内部には、発熱部材211から発生する熱を定着ベルト25の幅方向および周方向に沿って輸送する熱輸送手段が設けられている。本実施の形態では、放熱部材210は、第1放熱部2101と第2放熱部2103とを含む。第1放熱部2101と第2放熱部2103とは、アルミニウム、銅、マグネシウム、鉄、チタンなどの金属材料やそれらの合金材料、高純度グラファイトなど、熱伝導性に優れた材料で形成されている。
第1放熱部2101は、伝熱片2101aと受熱片2101bとを含んで構成される。受熱片2101bは、定着ベルト25の幅方向(定着ローラ15aの軸線方向)に延びて、放熱部材210が定着ベルト25と接触する接触領域中央部から延びる垂直方向に平行な表面が形成される部分であり、発熱部材211の厚み方向一表面に当接して設けられ、発熱部材211から発生する熱を受け取る部分である。伝熱片2101aは、受熱片2101bの一端部から連なって定着ベルト25の幅方向に延びて形成される部分であり、定着ベルト25の内周面に沿うように湾曲して設けられ、受熱片2101bで受熱した熱を定着ベルト25に伝達する部分である。
第2放熱部2103は、伝熱片2103aと受熱片2103bとを含んで構成される。受熱片2103bは、定着ベルト25の幅方向に延びて、放熱部材210が定着ベルト25と接触する接触領域中央部から延びる垂直方向に平行な表面が形成される部分であり、発熱部材211の厚み方向他表面に当接して設けられ、発熱部材211から発生する熱を受け取る部分である。伝熱片2103aは、受熱片2103bの一端部から連なって定着ベルト25の幅方向に延びて形成される部分であり、定着ベルト25の内周面に沿うように湾曲して設けられ、受熱片2103bで受熱した熱を定着ベルト25に伝達する部分である。
以上のような第1放熱部2101と第2放熱部2103とで構成される放熱部材210では、第1放熱部2101の受熱片2101bと、第2放熱部2103の受熱片2103bとは対向して配置されている。そして、放熱部材210では、第1放熱部2101の受熱片2101bと第2放熱部2103の受熱片2103bとが組み合わされて、発熱部材211の構成面のうち、面積の大きな順から2つの面である厚み方向両面に当接して、発熱部材211を狭持する受熱部が形成され、第1放熱部2101の伝熱片2101aと第2放熱部2103の伝熱片2103aとが組み合わされて、半円筒状の伝熱部が形成されている。このように、面積の大きな順から2つの面に当接する受熱部が形成されることによって、受熱部による、発熱部材211から発生する熱を受け取る受熱効率を高めることができ、抵抗発熱体の発熱が継続的に安定して行われるとともに、抵抗発熱体が過熱状態となって破損・焼損するのを防止することができる。
そして、放熱部材210を構成する第1放熱部2101および第2放熱部2103の内部には、熱輸送手段が設けられている。熱輸送手段は、各放熱部2101,2103の各受熱片2101b,2103bが発熱部材211から受け取った熱を、定着ベルト25の幅方向および周方向に沿って輸送するものである。
本実施の形態では、第1放熱部2101の内部に設けられる熱輸送手段は、蛇行細管式ヒートパイプ(ヒートレーン(登録商標))2102(以下、単に「ヒートパイプ2102」と呼ぶ)で構成されており、第1放熱部2101の内部の全領域、すなわち、伝熱片2101aおよび受熱片2101bの内部の全領域にわたって形成されている。また、第2放熱部2103の内部に設けられる熱輸送手段は、蛇行細管式ヒートパイプ2104(以下、単に「ヒートパイプ2104」と呼ぶ)で構成されており、第2放熱部2103の内部の全領域、すなわち、伝熱片2103aおよび受熱片2103bの内部の全領域にわたって形成されている。
ヒートパイプ2102,2104は、熱輸送流体が封入された細管が屈曲を繰り返して(蛇行して)一定の面を形成するようにされたものであり、細管は、直線状に延びる線状部と、隣接する線状部の延在方向端部同士を1本の線路となるように接続する接続部とを含む。なお、熱輸送流体としては、たとえば、水、ブタン、アルコール、不活性ガスなどを挙げることができる。
ヒートパイプ2102,2104は、細管内に封入される熱輸送流体が高温部で蒸発し、低温部で凝縮して、熱を輸送する。そして、ヒートパイプ2102,2104は、熱輸送流体が蛇行して配置される細管内で蒸発・凝縮を繰り返すことで、金属材料などの熱伝導のみによる熱輸送に比べて、多くの熱を短時間で輸送することができる。すなわち、熱伝導のみによる熱輸送では、熱の移動そのものは受動的で温度差に基づいた熱の移動であるが、ヒートパイプ2102,2104は、熱輸送流体の蒸発・凝縮による能動的な熱輸送で、熱輸送流体が吸熱および放熱する熱量が多く、蒸発・凝縮を繰り返すことでより多くの熱を輸送することができる。
以上のように構成される放熱部材210を有する加熱部材21を備える定着装置15では、発熱部材211の厚み方向一表面に当接して設けられる受熱片2101bと、発熱部材211の厚み方向他表面に当接して設けられる受熱片2103bとで受熱した熱が、第1放熱部2101および第2放熱部2103を熱伝導にて移動するとともに、ヒートパイプ2102,2104によって定着ベルト25の幅方向および周方向に輸送されて、伝熱片2101aおよび伝熱片2103aから定着ベルト25に伝達され、定着ベルト25が加熱される。そのため、定着ベルト25の幅方向および周方向の温度分布が均一にされて高品位の定着画像を得ることができる。
また、放熱部材210の内部には熱輸送能力の高いヒートパイプ2102,2104が設けられているので、発熱部材211を構成する抵抗発熱体として高電力密度の発熱体を用いても、抵抗発熱体から発生した熱を素早く輸送でき、放熱部材210を短時間で昇温させることができる。
また、放熱部材210では、受熱片2101bが発熱部材211の厚み方向一表面に当接して設けられて発熱部材211から発生する熱を受け取り、受熱片2103bが発熱部材211の厚み方向他表面に当接して設けられて発熱部材211から発生する熱を受け取るので、受熱効率が高くなり、発熱部材211を構成する抵抗発熱体が過熱状態になるのを抑制することができる。そのため、抵抗発熱体に通電自己抑制が働くのが防止されて、抵抗発熱体の発熱が継続的に安定して行われて発熱効率の低下が防止され、ウォームアップ時間を短縮することができる。
第1放熱部2101および第2放熱部2103の内部に設けられる熱輸送手段は、複数の蛇行細管式ヒートパイプを組み合わせて構成してもよい。
図4は、放熱部材210の内部に設けられるヒートパイプの構成を示す図である。図4は、第1放熱部2101の内部に設けられる複数のヒートパイプ2102の構成を示すものであるが、第2放熱部2103の内部に設けられる複数のヒートパイプ2104の構成は、第1放熱部2101のヒートパイプ2102の構成と同様である。以下では、第1放熱部2101の内部に設けられる複数のヒートパイプ2102の構成について説明する。
ヒートパイプ2102は、前述したように、熱輸送流体が封入された細管が屈曲を繰り返して(蛇行して)一定の面を形成するようにされたものであり、細管は、直線状に延びる線状部と、隣接する線状部の延在方向端部同士を1本の線路となるように接続する接続部とを含む。この線状部の延在方向を調整することによって、ヒートパイプ2102における定着ベルト25の幅方向および周方向への熱輸送効率を制御することができる。たとえば、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に平行であるヒートパイプ2102が設けられた第1放熱部2101は、定着ベルト25の幅方向への熱輸送効率が特に向上されたものとなる。また、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に直交する方向であるヒートパイプ2102が設けられた第1放熱部2101は、定着ベルト25の周方向への熱輸送効率が特に向上されたものとなる。また、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に所定の角度で傾斜する方向であるヒートパイプ2102が設けられた第1放熱部2101は、定着ベルト25の幅方向および周方向の両方向に熱輸送効率が向上されたものとなる。
図4(a)に示す第1放熱部2101の内部に設けられる熱輸送手段は、複数のヒートパイプ2102a,2102b,2102c,2102d,2102eが組み合わされて構成されており、第1放熱部2101の内部の全領域、すなわち、伝熱片2101aおよび受熱片2101bの内部の全領域にわたって形成されている。
ヒートパイプ2102a,2102b,2102c,2102d,2102eのそれぞれは、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に直交する方向である蛇行細管式ヒートパイプであり、各ヒートパイプは、所定の間隔をあけて第1放熱部2101の長手方向(定着ベルト25の幅方向)に配列されている。各ヒートパイプ2102a,2102b,2102c,2102d,2102e同士の間隔は、各ヒートパイプ間での熱伝導による熱移動が可能となるように設定される。
このような、ヒートパイプ2102a,2102b,2102c,2102d,2102eが内部に設けられる第1放熱部2101では、発熱部材211の厚み方向一表面に当接して設けられる受熱片2101bで受熱した熱が、第1放熱部2101を熱伝導にて移動するとともに、各ヒートパイプ2102a,2102b,2102c,2102d,2102eによって定着ベルト25の幅方向および周方向に輸送されて、伝熱片2101aから定着ベルト25に伝達され、定着ベルト25が加熱される。そのため、定着ベルト25の幅方向および周方向の温度分布が均一にされて高品位の定着画像を得ることができる。また、第1放熱部2101の内部に設けられる熱輸送手段を、複数の蛇行細管式ヒートパイプを組み合わせて構成することによって、より広い面積の第1放熱部2101を素早く均熱化することができる。
また、図4(b)に示すように、線状部の延在方向が異なる複数のヒートパイプを組み合わせて熱輸送手段として用いることもできる。図4(b)に示す第1放熱部2101の内部に設けられる熱輸送手段は、複数のヒートパイプ2152a,2152b,2152c,2152d,2152eが組み合わされて構成されており、第1放熱部2101の内部の全領域、すなわち、伝熱片2101aおよび受熱片2101bの内部の全領域にわたって形成されている。
定着ベルト25の幅方向両端部に対応する第1放熱部2101の長手方向両端部に配置されるヒートパイプ2152a,2152b,2152d,2152eのそれぞれは、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に所定の角度で傾斜する方向である蛇行細管式ヒートパイプである。また、定着ベルト25の幅方向中央部に対応する第1放熱部2101の長手方向中央部に配置されるヒートパイプ2152cは、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に直交する方向である蛇行細管式ヒートパイプである。そして、各ヒートパイプ2152a,2152b,2152c,2152d,2152eは、所定の間隔をあけて第1放熱部2101の長手方向(定着ベルト25の幅方向)に配列されている。各ヒートパイプ2152a,2152b,2152c,2152d,2152e同士の間隔は、各ヒートパイプ間での熱伝導による熱移動が可能となるように設定される。
小幅サイズの記録紙32が定着ニップ部15cを連続通紙した場合、定着ベルト25の幅方向両端部(非通紙領域部)の温度が上昇しやすい。これに対して、定着ベルト25の幅方向両端部に対応する第1放熱部2101の長手方向両端部に配置されるヒートパイプ2152a,2152b,2152d,2152eのそれぞれは、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に所定の角度で傾斜する方向である蛇行細管式ヒートパイプであるので、定着ベルト25の幅方向および周方向に素早く熱輸送することができ、定着ベルト25の幅方向および周方向の温度分布を均一にすることができる。すなわち、定着ベルト25の非通紙領域部に対応する発熱部材211の抵抗発熱体が非通電状態となる場合、非通紙領域部の熱収支バランスがプラスであれば温度が上昇して定着ベルト25の温度分布が不均一となるが、第1放熱部2101の長手方向両端部に配置されるヒートパイプ2152a,2152b,2152d,2152eの熱輸送能力によって高温部から低温部への熱輸送が行われて、定着ベルト25の温度分布を均一にすることができる。
また、定着装置15の定着動作時において、定着ベルト25の幅方向中央部は、温度変化が小さいものの、記録紙32の通過で熱量が多く必要である。これに対して、定着ベルト25の幅方向中央部に対応する第1放熱部2101の長手方向中央部に配置されるヒートパイプ2152cは、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に直交する方向である蛇行細管式ヒートパイプであり、定着ベルト25の周方向への熱輸送効率が特に優れたものである。これによって、熱量が多く必要な定着ベルト25の幅方向中央部に対する第1放熱部2101の温度追従性を高い状態で維持することができる。
次に、図2および図3を再び参照して、加熱部材21が有する発熱部材211について説明する。発熱部材211は、放熱部材210の長手方向(定着ベルト25の幅方向)に延びる矩形板状の部材であり、第1放熱部2101の受熱片2101bと、第2放熱部2103の受熱片2103bとの間に挟み込まれた状態で、ねじ部材などの固定部材214によって固定されている。
発熱部材211は、通電によって発熱する抵抗発熱体からなる発熱層212の厚み方向両面に、絶縁体からなる絶縁体層213が形成された積層構造を有する。そして、発熱部材211では、発熱層212の厚み方向一表面に形成される絶縁体層213が第1放熱部2101の受熱片2101bに面接触して設けられ、発熱層212の厚み方向他表面に形成される絶縁体層213が第2放熱部2103の受熱片2103bに面接触して設けられている。すなわち、発熱部材211は、面積の大きな順から2つの面である厚み方向両表面が、放熱部材210の受熱部を構成する受熱片2101bおよび受熱片2103bに面接触している。
絶縁体層213は、耐熱性と電気絶縁性とを兼ね備えた材料によって形成される層である。耐熱性と電気絶縁性とを兼ね備えた材料としては、特に限定されないが、ポリイミド樹脂などの耐熱性ポリマー材料、アルミナなどのセラミック材料、マイカなどを挙げることができる。
発熱層212は、給電端子部221に電圧が印加されて通電することにより、ジュール熱が発生して発熱する抵抗発熱体からなる層である。発熱層212を構成する抵抗発熱体としては、ニッケル−クロムの合金を主成分とした金属材料やステンレス鋼からなる電気抵抗成分を有する金属抵抗体や、銀−パラジウム系などの抵抗材料で形成されたものを挙げることができる。また、幅12mmのセラミック基板上に幅1mm前後の抵抗線をスクリーン印刷により形成したセラミック発熱体、薄膜セラミックシートを複数積層し該シートの間に細い抵抗線を形成して焼成したセラミック発熱体、チタン酸バリウム系の半導体セラミックを主成分とした無機材料を焼成したセラミック発熱体を、抵抗発熱体とすることができる。セラミック発熱体は、高電力密度が実現可能な発熱体であるので、セラミック発熱体からなる発熱層212を有する発熱部材211は、熱応答速度が高くてウォームアップ時間を短縮することができるとともに、放熱部材210に対する加熱能力の高いものとなる。
また、抵抗発熱体は、正の抵抗温度特性(Positive Temperature Coefficient、略称PTC特性)を有するものを用いるのが好ましい。正の抵抗温度特性を有する抵抗発熱体は、温度が上昇するにつれて電気抵抗値が上昇する。このような、正の抵抗温度特性を有する抵抗発熱体は、自身の温度が所定の温度以上になると急激に電気抵抗値が上昇して電流値が小さくなり、過熱状態になるのが防止される。また、正の抵抗温度特性を有する抵抗発熱体は、温度が上昇するにつれて電流値が小さくなるので、消費電力量を低減することができ、省エネ化を実現することができる。また、抵抗発熱体を含んで構成される発熱部材211は、構成面のうちの複数面が、熱輸送手段を有する放熱部材210の受熱部に当接して設けられているので、抵抗発熱体が正の抵抗温度特性を有する発熱体であっても、放熱部材210の伝熱部表面の温度分布が均一になって定着ベルト25の幅方向および周方向の温度分布が均一にされるとともに、抵抗発熱体の発熱が安定して行われて発熱効率の低下が防止される。
また、抵抗発熱体は、負の抵抗温度特性(Negative Temperature Coefficient、略称NTC特性)を有するものを用いてもよい。負の抵抗温度特性を有する抵抗発熱体は、温度が上昇するにつれて電気抵抗値が低下する。ここで、抵抗発熱体を含んで構成される発熱部材211は、構成面のうちの複数面が、熱輸送手段を有する放熱部材210の受熱部に当接して設けられているので、抵抗発熱体が負の抵抗温度特性を有する発熱体であっても、放熱部材210の伝熱部表面の温度分布が均一になって定着ベルト25の幅方向および周方向の温度分布が均一にされるとともに、抵抗発熱体の発熱が安定して行われて発熱効率の低下が防止される。
また、抵抗発熱体は、正の抵抗温度特性および負の抵抗温度特性を有するものを用いてもよい。ここで、抵抗発熱体を含んで構成される発熱部材211は、構成面のうちの複数面が、熱輸送手段を有する放熱部材210の受熱部に当接して設けられているので、抵抗発熱体が正の抵抗温度特性および負の抵抗温度特性を有する発熱体であっても、放熱部材210の伝熱部表面の温度分布が均一になって定着ベルト25の幅方向および周方向の温度分布が均一にされるとともに、抵抗発熱体の発熱が安定して行われて発熱効率の低下が防止される。正の抵抗温度特性および負の抵抗温度特性を有する抵抗発熱体とは、たとえば、常温付近では負の抵抗温度特性を有し、所定の温度付近からは正の抵抗温度特性を有し、さらに温度が上昇すると、正の抵抗温度特性でも電気抵抗値の変化率が大きな発熱体(PTCセラミックヒータとも言う)である。
図5は、加熱部材21が有する発熱部材211の発熱層212の構成を示す図である。発熱層212は、放熱部材210の長手方向に対応して、通電によって発熱する発熱部分が第1発熱領域212a、第2発熱領域212b、第3発熱領域212cに分割されている。本実施の形態では、異なる大きさの記録紙32を通紙させて印字する場合を想定して、記録紙32と接触する定着ベルト25を加熱する放熱部材210の伝熱部表面が、長手方向両端部と中央部との3つの領域に分割されている。そして、発熱層211の第1発熱領域212aおよび第2発熱領域212bが、放熱部材210の長手方向両端部にそれぞれ対応し、第3発熱領域212cが、放熱部材210の長手方向中央部に対応している。
第1発熱領域212a内には、全体として一定の面を形成するように屈曲を繰り返す1本の抵抗発熱体2121aがセラミックシート212d上に設けられ、抵抗発熱体2121aの両端部は一対の給電端子部221aに接続されている。第2発熱領域212b内には、全体として一定の面を形成するように屈曲を繰り返す1本の抵抗発熱体2121bがセラミックシート212d上に設けられ、抵抗発熱体2121bの両端部は一対の給電端子部221bに接続されている。第3発熱領域212c内には、全体として一定の面を形成するように屈曲を繰り返す1本の抵抗発熱体2121cがセラミックシート212d上に設けられ、抵抗発熱体2121cの両端部は一対の給電端子部221cに接続されている。
つまり、第1発熱領域212a内の抵抗発熱体2121aと、第2発熱領域212b内の抵抗発熱体2121bと、第3発熱領域212c内の抵抗発熱体2121cとは、それぞれ異なる給電端子部221a,221b,221cに接続されて、各発熱領域ごとに区別された状態で通電可能となっている。これによって、異なる大きさの記録紙32を通紙させて印字する場合には、異なる通紙サイズに対応して発熱層212の表面において所望の温度分布が得られるように、各発熱領域212a,212b,212cごとに通電状態を切り替えて、発熱層212表面における所望の特定領域のみが発熱するように加熱副制御し、記録紙32の通紙幅両端部に対応する発熱領域内における抵抗発熱体の局部的な異常昇温を抑制することができる。
また、発熱層212を構成する各抵抗発熱体2121a,2121b,2121cは、前述したように、全体として一定の面を形成するようにされている。これによって、通電により発熱した各抵抗発熱体2121a,2121b,2121cの熱が放熱部材210に伝達するときの伝熱効率を向上させることができる。
また、発熱部材211の発熱層は、複数の抵抗発熱体が積層された積層構造とすることもできる。図6は、複数の抵抗発熱体が積層された積層構造を有する発熱層310の構成を示す図である。
図6に示す発熱層310は、放熱部材210の周方向に対応する幅が12mmのセラミックシートを複数枚積層して形成され、各セラミックシートの合わせ面には、銀−パラジウム系の薄膜抵抗発熱体を線幅1mmで2.5往復折り返すようにスクリーン印刷して設け、その後、焼成して形成したものである。なお、各セラミックシートの大きさ、薄膜抵抗発熱体の材質、幅、厚み、印刷時の折り返しパターンなどは、発熱層310に求められる発熱能力に応じて適宜設定される。また、セラミックシートを積層したセラミック発熱体からなる発熱層310は、急速加熱を行うことができ、さらに、発熱層310自信が過熱状態になったとしても、破損はするけれども発煙、発火には至らない安全性も有している。
発熱層310は、放熱部材210の長手方向に対応して、第1発熱領域310aと、第2発熱領域310bと、第3発熱領域310cとに分割されている。本実施の形態では、異なる大きさの記録紙32を通紙させて印字する場合を想定して、記録紙32と接触する定着ベルト25を加熱する放熱部材210の伝熱部表面が、長手方向両端部と中央部との3つの領域に分割されている。そして、発熱層310の第1発熱領域310aおよび第2発熱領域310bが、放熱部材210の長手方向両端部にそれぞれ対応し、第3発熱領域310cが、放熱部材210の長手方向中央部に対応している。
発熱層310は、第1発熱領域310aと第2発熱領域310bとは同一のセラミックシート310dに形成され、第3発熱領域310cは別のセラミックシート310dに形成された積層構造を有する。第1発熱領域310a内には、全体として一定の面を形成するように屈曲を繰り返す1本の抵抗発熱体3101aが設けられ、抵抗発熱体3101aの両端部は一対の給電端子部221dに接続されている。第2発熱領域310b内には、全体として一定の面を形成するように屈曲を繰り返す1本の抵抗発熱体3101bが設けられ、抵抗発熱体3101bの両端部は一対の給電端子部221eに接続されている。第3発熱領域310c内には、全体として一定の面を形成するように屈曲を繰り返す1本の抵抗発熱体3101cが設けられ、抵抗発熱体3101cの両端部は一対の給電端子部221fに接続されている。
つまり、第1発熱領域310a内の抵抗発熱体3101aと、第2発熱領域310b内の抵抗発熱体3101bと、第3発熱領域310c内の抵抗発熱体3101cとは、それぞれ異なる給電端子部221d,221e,221fに接続されて、各発熱領域ごとに区別された状態で通電可能となっている。これによって、異なる大きさの記録紙32を通紙させて印字する場合には、異なる通紙サイズに対応して発熱層310の表面において所望の温度分布が得られるように、各発熱領域310a,310b,310cごとに通電状態を切り替えて、発熱層310表面における所望の特定領域のみが発熱するように加熱副制御し、記録紙32の通紙幅両端部に対応する発熱領域内における抵抗発熱体の局部的な異常昇温を抑制することができる。
定着装置15が備える加熱部材としては、前述した加熱部材21の構成に限定されるものではなく、図7〜図12に示す加熱部材を用いることができる。
図7Aおよび図7Bは、加熱部材の他の例である加熱部材311の構成を示す図である。図7Aは、加熱部材311の斜視図であり、図7B(a)は、加熱部材311の平面図であり、図7B(b)は、加熱部材311の幅方向に直交する面で切断したときの断面図である。
加熱部材311は、前述した加熱部材21と類似しており、加熱部材21が備える放熱部材と同様に構成される放熱部材210と、発熱部材312を含む。発熱部材312は、放熱部材210の長手方向(定着ベルト25の幅方向)に延びる矩形板状の部材であり、第1放熱部2101の受熱片2101bと、第2放熱部2103の受熱片2103bとの間に挟み込まれた状態で、ねじ部材などの固定部材214によって固定されている。
発熱部材312は、通電によって発熱する抵抗発熱体からなる発熱層312aの厚み方向両面に、絶縁体からなる絶縁体層213が形成された積層構造を有する。そして、発熱部材312では、発熱層312aの厚み方向一表面に形成される絶縁体層213が第1放熱部2101の受熱片2101bに面接触して設けられ、発熱層312aの厚み方向他表面に形成される絶縁体層213が第2放熱部2103の受熱片2103bに面接触して設けられている。すなわち、発熱部材312は、面積の大きな順から2つの面である厚み方向両表面が、放熱部材210の受熱部を構成する受熱片2101bおよび受熱片2103bに面接触している。
発熱層312aは、給電端子部221に電圧が印加されて通電することにより、ジュール熱が発生して発熱する抵抗発熱体からなる層である。発熱層312aは、矩形板状の抵抗発熱体である半導体セラミック素子3121が複数個、定着ベルト25の幅方向に対応する放熱部材210の長手方向に間隔をあけて整列して形成されている。このようにして、全体として一定の形状の発熱面を有する発熱層312aを、簡単な構成で形成することができる。
各半導体セラミック素子3121は、チタン酸バリウムを主成分とする無機粉末を薄い矩形板状に成形して焼成したものである。各半導体セラミック素子3121は、1つあたり十数Wから数百Wの発熱量が得られるようにされている。
図8は、加熱部材の他の例である加熱部材313の構成を示す図である。図8(a)は、加熱部材313の平面図であり、図8(b)は、加熱部材313の幅方向に直交する面で切断したときの断面図である。
加熱部材313は、前述した加熱部材21と類似しており、加熱部材21が備える放熱部材と同様に構成される放熱部材210と、発熱部材314とを含む。発熱部材314は、放熱部材210の長手方向(定着ベルト25の幅方向)に延びる矩形板状の部材であり、第1放熱部2101の受熱片2101bと、第2放熱部2103の受熱片2103bとの間に挟み込まれた状態で、狭持部材などの固定部材313aによって固定されている。
発熱部材314は、第1絶縁体層213aと、第1発熱層314aと、第2絶縁体層213bと、第2発熱層314bと、第3絶縁体層213cとが、この順で積層された積層構造を有する。この場合、第2絶縁層213bが、第1発熱層314aと第2発熱層314bとの間に介在する中間層となる。そして、発熱部材314では、第1発熱層314aの厚み方向一表面に形成される第1絶縁体層213aが第2放熱部2103の受熱片2103bに面接触して設けられ、第2発熱層314bの厚み方向他表面に形成される第3絶縁体層213cが第1放熱部2101の受熱片2101bに面接触して設けられている。すなわち、発熱部材314は、面積の大きな順から2つの面である厚み方向両表面が、放熱部材210の受熱部を構成する受熱片2101bおよび受熱片2103bに面接触している。
第1絶縁体層213a、第2絶縁体層213bおよび第3絶縁体層213cは、耐熱性と電気絶縁性とを兼ね備えた材料によって形成される層である。耐熱性と電気絶縁性とを兼ね備えた材料としては、特に限定されないが、ポリイミド樹脂などの耐熱性ポリマー材料、アルミナなどのセラミック材料を挙げることができる。
第1発熱層314aは、矩形板状の複数の抵抗発熱体である半導体セラミック素子3141が、定着ベルト25の幅方向に対応する放熱部材210の長手方向に間隔をあけて整列して形成される。また、第2発熱層314bは、矩形板状の複数の抵抗発熱体である半導体セラミック素子3142が、定着ベルト25の幅方向に対応する放熱部材210の長手方向に間隔をあけて整列して形成される。そして、第1発熱層314aを構成する半導体セラミック素子3141と、第2発熱層314bを構成する半導体セラミック素子3142とは、定着ベルト25の幅方向と直交する方向から見た場合に、交互に設けられている。
このように構成された発熱部材314は、発熱部材314の表面における発熱分布が所望の分布となるように調整可能となり、定着ベルト25の特定領域に対する放熱部材210の加熱能力を制御することが可能となる。また、3つの給電端子部221に電圧を印加することで半導体セラミック素子3141,3142に通電することができ、より多くの半導体セラミック素子を設けることが可能で、高電力密度の発熱部材とすることができる。
図9は、加熱部材の他の例である加熱部材320の構成を示す図である。加熱部材320は、前述した加熱部材21と類似しており、放熱部材321と、加熱部材21が備える発熱部材と同様に構成される発熱部材211とを含む。
放熱部材321は、前述した加熱部材21が備える放熱部材210と同様の材料から形成される。そして、放熱部材321は、発熱部材211の複数の面に当接して設けられ、発熱部材211から発生する熱を受け取る受熱部321bと、受熱部321bで受熱した熱を定着ベルト25に伝達する伝熱部321aとを含んで構成される。さらに、放熱部材321の内部には、発熱部材211から発生する熱を定着ベルト25の幅方向および周方向に沿って輸送する熱輸送手段が設けられている。なお、放熱部材321の内部に設けられる熱輸送手段は、前述した放熱部材210の内部に形成される熱輸送手段と同様に、蛇行細管式ヒートパイプ3211(以下、単に「ヒートパイプ3211」と呼ぶ)で構成されており、放熱部材321の内部の全領域、すなわち、伝熱部321aおよび受熱部321bの内部の全領域にわたって形成されている。
伝熱部321aは、定着ベルト25の幅方向に延びて形成され、定着ベルト25の内周面に沿うように湾曲する半円筒状の部分であり、受熱部321bで受熱した熱を定着ベルト25に伝達する部分である。受熱部321bは、定着ベルト25の周方向中央部に対応する伝熱部321aの周方向中央部から垂直方向下方に屈曲して形成される部分であり、伝熱部321aが定着ベルト25と接触する接触領域中央部から延びる垂直方向に平行な内表面に囲まれる凹部が形成されている。放熱部321では、受熱部321bに形成される凹部に発熱部材211が嵌め込まれて固定されるようになっている。そして、発熱部材211は、受熱部321bの凹部に嵌め込まれた状態で、厚み方向両表面が凹部の内表面に面接触して設けられている。
以上のように構成される加熱部材320では、凹部の内表面において発熱部材211の厚み方向両表面に面接触して設けられる受熱部321bで受熱した熱が、放熱部材321を熱伝導にて移動するとともに、ヒートパイプ3211によって定着ベルト25の幅方向および周方向に輸送されて、伝熱部321aから定着ベルト25に伝達され、定着ベルト25が加熱される。そのため、定着ベルト25の幅方向および周方向の温度分布が均一にされて高品位の定着画像を得ることができる。
また、加熱部材320では、放熱部材321における伝熱部321aと受熱部321bとが接合する部分の熱容量が、2つの放熱部で構成される前述した放熱部材210よりも大きくなってしまう。しかしながら、加熱部材320が備える放熱部材321は、伝熱部321aと受熱部321bとが一体形成されているので、放熱部材自身の強度を高くすることができ、かつ定着ベルト25との加熱ニップ幅を広くすることができ、高速印字にも対応可能である。
図10は、加熱部材の他の例である加熱部材330の構成を示す図である。加熱部材330は、前述した加熱部材21と類似しており、定着ベルト25の内周面と接触する伝熱片2101aの外表面および伝熱片2103aの外表面に摺動緩和層331が設けられていること以外は、加熱部材21と同様に構成される。なお、摺動緩和層331は、前述した加熱部材311,313の伝熱片2101aの外表面および伝熱片2103aの外表面、加熱部材320の伝熱部321aの外表面に形成してもよい。
摺動緩和層331は、定着ベルト25との摩擦抵抗を低減させるための層である。これによって、放熱部材210の伝熱部を構成する伝熱片2101aおよび伝熱片2103aと、定着ベルト25との間の摩擦力を低減することができ、定着ベルト25の回転をスムースにすることができる。
また、摺動緩和層331は、低摩擦係数および良熱伝導性を有する材料によって構成されるのが好ましい。これによって、放熱部材210の伝熱部を構成する伝熱片2101aおよび伝熱片2103aにおける、定着ベルト25に対する伝熱効率が低下するのを防止した上で、定着ベルト25の回転をスムースにすることができる。
摺動緩和層331を構成する材料としては、PTFEやPFAなどのフッ素樹脂を挙げることができ、複数のフッ素樹脂材料を混合して用いてもよい。また、摺動緩和層331は、前記フッ素樹脂材料にマイカなどの充填剤を添加した層としてもよく、これによって、層を高強度化して耐久性を向上させることができる。また、摺動緩和層331には、良熱伝導性材料として、グラファイトの微粉末、無機または有機の導電フィラー、アルミニウムやマグネシウムなどの金属粉を添加してもよい。なお、摺動緩和層331中に添加される良熱伝導性材料としては、層中における分散性を向上させるために表面処理が施された材料を用いることもできる。
また、摺動緩和層331の厚みは、熱伝導性と耐久性との両立を考慮して、15〜100μm(本実施の形態では30μm)に設定される。
図11は、加熱部材の他の例である加熱部材340の構成を示す図である。加熱部材340は、前述した加熱部材21と類似しており、放熱部材350と、加熱部材21が備える発熱部材と同様に構成される発熱部材211とを含む。
放熱部材350は、前述した加熱部材21が備える放熱部材210と同様の材料から形成される。そして、放熱部材350は、発熱部材211の複数の面に当接して設けられ、発熱部材211から発生する熱を受け取る受熱部と、受熱部で受熱した熱を定着ベルト25に伝達する伝熱部とを含んで構成される。さらに、放熱部材350の内部には、発熱部材211から発生する熱を定着ベルト25の幅方向および周方向に沿って輸送する熱輸送手段が設けられている。本実施の形態では、放熱部材350は、第1放熱部3501と第2放熱部3503とを含む。
第1放熱部3501は、伝熱片3501aと、接続部3501bと、受熱片3501cとを含んで構成される。受熱片3501cは、定着ベルトの幅方向(定着ローラ15aの軸線方向)に延びて、放熱部材350が定着ベルト25と接触する接触領域中央部から延びる垂直方向に直交する表面が形成される部分であり、発熱部材211の厚み方向一表面に当接して設けられ、発熱部材211から発生する熱を受け取る部分である。伝熱片3501aは、定着ベルト25の幅方向に延びて形成される部分であり、定着ベルト25の内周面に沿うように湾曲して設けられ、受熱片3501cで受熱した熱を定着ベルト25に伝達する部分である。接続部3501bは、伝熱片3501aの周方向一端部と受熱片3501cの一端部とを接続する部分であり、受熱片3501cで受熱した熱を伝熱片3501aに伝達する部分である。
第2放熱部3503は、伝熱片3503aと、接続部3503bと、受熱片3503cとを含んで構成される。受熱片3503cは、定着ベルトの幅方向(定着ローラ15aの軸線方向)に延びて、放熱部材350が定着ベルト25と接触する接触領域中央部から延びる垂直方向に直交する表面が形成される部分であり、発熱部材211の厚み方向他表面に当接して設けられ、発熱部材211から発生する熱を受け取る部分である。伝熱片3503aは、定着ベルト25の幅方向に延びて形成される部分であり、定着ベルト25の内周面に沿うように湾曲して設けられ、受熱片3503cで受熱した熱を定着ベルト25に伝達する部分である。接続部3503bは、伝熱片3503aの周方向一端部と受熱片3503cの一端部とを接続する部分であり、受熱片3503cで受熱した熱を伝熱片3503aに伝達する部分である。
以上のような第1放熱部3501と第2放熱部3503とで構成される放熱部材350では、第1放熱部3501の受熱片3501cと、第2放熱部3503の受熱片3503cとは対向して配置されている。そして、放熱部材350では、第1放熱部3501の受熱片3501cと第2放熱部3503の受熱片3503cとが組み合わされて、発熱部材211の構成面のうち、面積の大きな順から2つの面である厚み方向両面に当接して、発熱部材211を狭持する受熱部が形成され、第1放熱部3501の伝熱片3501aと第2放熱部3503の伝熱片3503aとが組み合わされて、半円筒状の伝熱部が形成されている。
そして、放熱部材350を構成する第1放熱部3501および第2放熱部3503の内部には、熱輸送手段が設けられている。熱輸送手段は、各放熱部3501,3503の各受熱片3501c,3503cが発熱部材211から受け取った熱を、定着ベルト25の幅方向および周方向に沿って輸送するものである。
本実施の形態では、第1放熱部3501の内部に設けられる熱輸送手段は、前述した放熱部210の内部に形成される熱輸送手段と同様に、蛇行細管式ヒートパイプ3502(以下、単に「ヒートパイプ3502」と呼ぶ)で構成されており、第1放熱部3501の内部の全領域、すなわち、伝熱片3501a、接続部3501bおよび受熱片3501cの内部の全領域にわたって形成されている。また、第2放熱部3503の内部に設けられる熱輸送手段も、蛇行細管式ヒートパイプ3504(以下、単に「ヒートパイプ3504」と呼ぶ)で構成されており、第2放熱部3503の内部の全領域、すなわち、伝熱片3503a、接続部3503bおよび受熱片3503cの内部の全領域にわたって形成されている。
なお、定着ベルト25の内周面と接触する伝熱片3501aの外表面および伝熱片3503aの外表面には、前述した加熱部材330が有する摺動緩和層331を設けてもよい。
以上のように構成される加熱部材340では、発熱部材211の厚み方向両表面に面接触して設けられる、受熱片3501cおよび受熱片3503cで受熱した熱が、放熱部材350を熱伝導にて移動するとともに、ヒートパイプ3502,3504によって定着ベルト25の幅方向および周方向に輸送されて、接続部3501b,3503bを介して伝熱片3501a,3503aに伝達され、定着ベルトが加熱される。そのため、定着ベルト25の幅方向および周方向の温度分布が均一にされて高品位の定着画像を得ることができる。
図12は、加熱部材の他の例である加熱部材360の構成を示す図である。加熱部材360は、前述した加熱部材21と類似しており、放熱部材370と、加熱部材21が備える発熱部材と同様に構成される発熱部材211とを含む。
放熱部材370は、前述した加熱部材21が備える放熱部材210と同様の材料から形成される。そして、放熱部材370は、第1放熱領域3701と第2放熱領域3706とを含む。
第1放熱領域3701は、互いに当接して設けられる2つの放熱部である第1放熱部3702と第2放熱部3703とを含んで構成される。第1放熱部3702は、伝熱片3702aと受熱片3702bとを含んで構成される。受熱片3702bは、定着ベルト25の幅方向(定着ローラ15aの軸線方向)に延びて、放熱部材370が定着ベルト25と接触する接触領域中央部から延びる垂直方向に平行な表面が形成される部分であり、発熱部材211の厚み方向一表面に当接して設けられ、発熱部材211から発生する熱を受け取る部分である。伝熱片3702aは、受熱片3702bの一端部から連なって定着ベルト25の幅方向に延びて形成される部分であり、定着ベルト25の内周面に沿うように湾曲して設けられ、受熱片3702bで受熱した熱を定着ベルト25に伝達する部分である。第2放熱部3703は、伝熱片3703aと受熱片3703bとを含んで構成される。受熱片3703bは、定着ベルト25の幅方向(定着ローラ15aの軸線方向)に延びて、放熱部材370が定着ベルト25と接触する接触領域中央部から延びる垂直方向に平行な表面が形成される部分であり、受熱片3702bに当接して設けられ、受熱片3702bで受熱した熱を、第2放熱部3703の内部に取り込む部分である。伝熱片3703aは、受熱片3703bの一端部から連なって定着ベルト25の幅方向に延びて形成される部分であり、伝熱片3702aの内表面に沿うように湾曲して設けられ、受熱片3703bで取り込んだ熱を伝熱片3702aに伝達する部分である。
第2放熱領域3706は、互いに当接して設けられる2つの放熱部である第3放熱部3707と第4放熱部3708とを含んで構成される。第3放熱部3707は、伝熱片3707aと受熱片3707bとを含んで構成される。受熱片3707bは、定着ベルト25の幅方向(定着ローラ15aの軸線方向)に延びて、放熱部材370が定着ベルト25と接触する接触領域中央部から延びる垂直方向に平行な表面が形成される部分であり、発熱部材211の厚み方向他表面に当接して設けられ、発熱部材211から発生する熱を受け取る部分である。伝熱片3707aは、受熱片3707bの一端部から連なって定着ベルト25の幅方向に延びて形成される部分であり、定着ベルト25の内周面に沿うように湾曲して設けられ、受熱片3707bで受熱した熱を定着ベルト25に伝達する部分である。第4放熱部3708は、伝熱片3708aと受熱片3708bとを含んで構成される。受熱片3708bは、定着ベルト25の幅方向(定着ローラ15aの軸線方向)に延びて、放熱部材370が定着ベルト25と接触する接触領域中央部から延びる垂直方向に平行な表面が形成される部分であり、受熱片3707bに当接して設けられ、受熱片3707bで受熱した熱を、第4放熱部3708の内部に取り込む部分である。伝熱片3708aは、受熱片3708bの一端部から連なって定着ベルト25の幅方向に延びて形成される部分であり、伝熱片3707aの内表面に沿うように湾曲して設けられ、受熱片3708bで取り込んだ熱を伝熱片3707aに伝達する部分である。
以上のような第1放熱領域3701と第2放熱領域3706とで構成される放熱部材370では、第1放熱領域3701の受熱片3702b,3703bと、第2放熱領域3706の受熱片3707b,3708bとは対向して配置されている。そして、加熱部材360では、第1放熱領域3701の受熱片3702b,3703bと第2放熱領域3706の受熱片3707b,3708bとが組み合わされて、発熱部材211の厚み方向両面に当接して発熱部材211を狭持する受熱部が形成され、第1放熱領域3701の伝熱片3702a,3703aと第2放熱領域3706の伝熱片3707a,3708aとが組み合わされて、半円筒状の伝熱部が形成されている。
そして、第1放熱領域3701を構成する第1放熱部3702および第2放熱部3703、第2放熱領域3706を構成する第3放熱部3707および第4放熱部3708の内部には、熱輸送手段が設けられている。
本実施の形態では、第1放熱部3702の内部に設けられる熱輸送手段は、前述した放熱部材210の内部に形成される熱輸送手段と同様に、蛇行細管式ヒートパイプ3704(以下、単に「ヒートパイプ3704」と呼ぶ)で構成されており、第1放熱部3702の内部の全領域、すなわち、伝熱片3702aおよび受熱片3702bの内部の全領域にわたって形成されている。第2放熱部3703の内部に設けられる熱輸送手段は、前述した放熱部材210の内部に形成される熱輸送手段と同様に、蛇行細管式ヒートパイプ3705(以下、単に「ヒートパイプ3705」と呼ぶ)で構成されており、第2放熱部3703の内部の全領域、すなわち、伝熱片3703aおよび受熱片3703bの内部の全領域にわたって形成されている。第3放熱部3707の内部に設けられる熱輸送手段は、前述した放熱部材210の内部に形成される熱輸送手段と同様に、蛇行細管式ヒートパイプ3709(以下、単に「ヒートパイプ3709」と呼ぶ)で構成されており、第3放熱部3707の内部の全領域、すなわち、伝熱片3707aおよび受熱片3707bの内部の全領域にわたって形成されている。第4放熱部3708の内部に設けられる熱輸送手段は、前述した放熱部材210の内部に形成される熱輸送手段と同様に、蛇行細管式ヒートパイプ3710(以下、単に「ヒートパイプ3710」と呼ぶ)で構成されており、第4放熱部3708の内部の全領域、すなわち、伝熱片3708aおよび受熱片3708bの内部の全領域にわたって形成されている。
第1放熱領域3701の第1放熱部3702、および、第2放熱領域3706の第3放熱部3707の内部に形成される各ヒートパイプ3704,3709は、各放熱部3702,3707の各受熱片3702b,3707bが発熱部材211から受け取った熱を、定着ベルト25の幅方向および周方向に沿って輸送する。また、第1放熱領域3701の第2放熱部3703、および、第2放熱領域3706の第4放熱部3708の内部に形成される各ヒートパイプ3705,3710は、各放熱部3703,3708の各受熱片3703b,3708bが受熱片3702b,3707bから取り込んだ熱を、定着ベルト25の幅方向に対応する伝熱片3702a,3707aの長手方向、および、定着ベルト25の周方向に対応する伝熱片3702a,3707aの短手方向に輸送する。
以上のように構成される加熱部材360では、発熱部材211の厚み方向一表面に当接して設けられる受熱片3702bと、発熱部材211の厚み方向他表面に当接して設けられる受熱片3707bとで受熱した熱が、第1放熱部3702および第3放熱部3707を熱伝導にて移動するとともに、ヒートパイプ3704,3709によって定着ベルト25の幅方向および周方向に輸送されて、伝熱片3702aおよび伝熱片3707aから定着ベルト25に伝達され、定着ベルト25が加熱される。さらに、受熱片3702bに当接して設けられる受熱片3703bと、受熱片3707bに当接して設けられる受熱片3708bとで取り込んだ熱が、第2放熱部3703および第4放熱部3708を熱伝導にて移動するとともに、ヒートパイプ3705,3710によって伝熱片3702a,3707aの長手方向および短手方向に輸送されて、伝熱片3703a,3708aから伝熱片3702a,3707aを介して定着ベルト25に伝達され、定着ベルト25が加熱される。そのため、定着ベルト25の幅方向および周方向の温度分布が均一にされて高品位の定着画像を得ることができる。
次に、加熱部材360が備える放熱部材370の内部に設けられるヒートパイプの構成について、図13を用いて詳細に説明する。図13は、放熱部材370の内部に設けられるヒートパイプの構成を示す図である。図13(a)は、第1放熱領域3701の第1放熱部3702の内部に設けられる複数のヒートパイプ3704の構成を示すものであるが、第2放熱領域3706の第3放熱部3707の内部に設けられる複数のヒートパイプ3709の構成は、第1放熱部3702のヒートパイプ3704の構成と同様である。また、図13(b)は、第1放熱領域3701の第2放熱部3703の内部に設けられる複数のヒートパイプ3705の構成を示すものであるが、第2放熱領域3706の第4放熱部3708の内部に設けられる複数のヒートパイプ3710の構成は、第2放熱部3703のヒートパイプ3705の構成と同様である。以下では、第1放熱部3702の内部に設けられる複数のヒートパイプ3704の構成、および、第2放熱部3703の内部に設けられる複数のヒートパイプ3705の構成について説明する。
図13(a)に示すように、第1放熱部3702の内部に設けられる熱輸送手段は、複数のヒートパイプ3704a,3704b,3704c,3704d,3704eが組み合わされて構成されており、第1放熱部3702の内部の全領域、すなわち、伝熱片3702aおよび受熱片3702bの内部の全領域にわたって形成されている。
ヒートパイプ3704a,3704b,3704c,3704d,3704eのそれぞれは、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に直交する方向である蛇行細管式ヒートパイプであり、各ヒートパイプは、所定の間隔をあけて第1放熱部3702の長手方向(定着ベルト25の幅方向)に配列されている。各ヒートパイプ3704a,3704b,3704c,3704d,3704e同士の間隔は、各ヒートパイプ間での熱伝導による熱移動が可能となるように設定される。
このような、ヒートパイプ3704a,3704b,3704c,3704d,3704eが内部に設けられる第1放熱部3702では、定着ベルト25の周方向への熱輸送効率が特に向上されたものとなる。
また、図13(b)に示すように、第2放熱部3703の内部に設けられる熱輸送手段は、複数のヒートパイプ3705a,3705b,3705c,3705dが組み合わされて構成されており、第2放熱部3703の内部の全領域、すなわち、伝熱片3703aおよび受熱片3703bの内部の全領域にわたって形成されている。
ヒートパイプ3705a,3705b,3705c,3705dのそれぞれは、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に平行な方向である蛇行細管式ヒートパイプであり、各ヒートパイプは、所定の間隔をあけて第2放熱部3703の長手方向(定着ベルト25の幅方向)に配列されている。各ヒートパイプ3705a,3705b,3705c,3705d同士の間隔は、各ヒートパイプ間での熱伝導による熱移動が可能となるように設定される。
このような、ヒートパイプ3705a,3705b,3705c,3705dが内部に設けられる第2放熱部3703では、定着ベルト25の幅方向への熱輸送効率が特に向上されたものとなる。
また、放熱部材370の内部に設けられるヒートパイプは、図14に示すように構成してもよい。図14は、放熱部材370の内部に設けられるヒートパイプの他の構成例を示す図である。図14(a)は、第1放熱領域3701の第1放熱部3702の内部に設けられる複数のヒートパイプ3804の構成を示すものであるが、第2放熱領域3706の第3放熱部3707の内部に設けられる複数のヒートパイプの構成は、第1放熱部3702のヒートパイプ3804の構成と同様である。また、図14(b)は、第1放熱領域3701の第2放熱部3703の内部に設けられる複数のヒートパイプ3805の構成を示すものであるが、第2放熱領域3706の第4放熱部3708の内部に設けられる複数のヒートパイプの構成は、第2放熱部3703のヒートパイプ3805の構成と同様である。以下では、第1放熱部3702の内部に設けられる複数のヒートパイプ3804の構成、および、第2放熱部3703の内部に設けられる複数のヒートパイプ3805の構成について説明する。
図14(a)に示すように、第1放熱部3702の内部に設けられる熱輸送手段は、複数のヒートパイプ3804a,3804b,3804c,3804d,3804eが組み合わされて構成されており、第1放熱部3702の内部の全領域、すなわち、伝熱片3702aおよび受熱片3702bの内部の全領域にわたって形成されている。
定着ベルト25の幅方向両端部に対応する第1放熱部3702の長手方向両端部に配置されるヒートパイプ3804a,3804b,3804d,3804eのそれぞれは、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に所定の角度で傾斜する方向である蛇行細管式ヒートパイプである。また、定着ベルト25の幅方向中央部に対応する第1放熱部3702の長手方向中央部に配置されるヒートパイプ3804cは、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に直交する方向である蛇行細管式ヒートパイプである。そして、各ヒートパイプ3804a,3804b,3804c,3804d,3804eは、所定の間隔をあけて第1放熱部3702の長手方向(定着ベルト25の幅方向)に配列されている。各ヒートパイプ3804a,3804b,3804c,3804d,3804e同士の間隔は、各ヒートパイプ間での熱伝導による熱移動が可能となるように設定される。
小幅サイズの記録紙32が定着ニップ部15cを連続通紙した場合、定着ベルト25の幅方向両端部(非通紙領域部)の温度が上昇しやすい。これに対して、定着ベルト25の幅方向両端部に対応する第1放熱部3702の長手方向両端部に配置されるヒートパイプ3804a,3804b,3804d,3804eのそれぞれは、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に所定の角度で傾斜する方向である蛇行細管式ヒートパイプであるので、定着ベルト25の幅方向および周方向に素早く熱輸送することができ、定着ベルト25の幅方向および周方向の温度分布を均一にすることができる。すなわち、定着ベルト25の非通紙領域部に対応する発熱部材211の抵抗発熱体が非通電状態となる場合、非通紙領域部の熱収支バランスがプラスであれば温度が上昇して定着ベルト25の温度分布が不均一となるが、第1放熱部3702の長手方向両端部に配置されるヒートパイプ3804a,3804b,3804d,3804eの熱輸送能力によって高温部から低温部への熱輸送が行われて、定着ベルト25の温度分布を均一にすることができる。
また、定着装置15の定着動作時において、定着ベルト25の幅方向中央部は、温度変化が小さいものの、記録紙32の通過で熱量が多く必要である。これに対して、定着ベルト25の幅方向中央部に対応する第1放熱部3702の長手方向中央部に配置されるヒートパイプ3804cは、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に直交する方向である蛇行細管式ヒートパイプであり、定着ベルト25の周方向への熱輸送効率が特に優れたものである。これによって、熱量が多く必要な定着ベルト25の幅方向中央部に対する第1放熱部3702の温度追従性を高い状態で維持することができる。
また、図14(b)に示すように、第2放熱部3703の内部に設けられる熱輸送手段は、複数のヒートパイプ3805a,3805b,3805c,3805dが組み合わされて構成されており、第2放熱部3703の内部の全領域、すなわち、伝熱片3703aおよび受熱片3703bの内部の全領域にわたって形成されている。
ヒートパイプ3805a,3805b,3805c,3805dのそれぞれは、線状部の延在方向が定着ベルト25の幅方向に平行な方向である蛇行細管式ヒートパイプであり、各ヒートパイプは、所定の間隔をあけて第2放熱部3703の長手方向(定着ベルト25の幅方向)に配列されている。各ヒートパイプ3805a,3805b,3805c,3805d同士の間隔は、各ヒートパイプ間での熱伝導による熱移動が可能となるように設定される。
このような、ヒートパイプ3805a,3805b,3805c,3805dが内部に設けられる第2放熱部3703では、定着ベルト25の幅方向への熱輸送効率が特に向上されたものとなる。
なお、定着ベルト25の内周面と接触する第1放熱部3702の伝熱片3702aの外表面、および、第3放熱部3707の伝熱片3707aの外表面には、前述した加熱部材330が有する摺動緩和層331を設けてもよい。
図15は、本発明の第2実施形態である定着装置440の構成を示す図である。定着装置440は、2段階定着方式の定着装置であって、未定着トナー像31を記録紙32上に加熱加圧して1次定着させる第1定着手段450と、第1定着手段450よりも記録紙32の搬送方向下流側に配置されて、1次定着後のトナー像31を記録紙32上に加熱加圧して2次定着させる第2定着手段460とが、水平方向に並んで配置されるように構成されている。そして、定着装置440における第1定着手段450および第2定着手段460は、蛇行細管式ヒートパイプを有する放熱部材が発熱部材の複数面に当接して設けられる加熱部材を備える、前述した本実施形態の定着装置15である。
このように構成された2段階定着方式の定着装置440では、第1定着手段450および第2定着手段460が備える各抵抗発熱体が通電されたとき、第1定着手段450および第2定着手段460が備える各放熱部材の伝熱部表面の温度分布が均一になって各定着ベルト454,464の幅方向および周方向の温度分布が均一にされるとともに、各抵抗発熱体の発熱が安定して行われて発熱効率の低下が防止される。そのため、2段階定着方式の定着装置440は、高品位の定着画像を得ることができるとともに、ウォームアップ時間を短縮することができる。
第1定着手段450と第2定着手段460との間には、搬送ガイド板または搬送ローラなどのガイド部材が設けられており、第1定着手段450の定着ニップ部で定着処理された記録紙32は、ガイド部材に沿って搬送されて、第2定着手段460の定着ニップ部で定着処理されて排出されるようになっている。定着装置440は、定着装置15に代えて画像形成装置100に搭載可能である。
第1定着手段450は、第1加熱手段451と、第1定着ローラ452と、第1加圧ローラ453と、前述した定着ベルト25と同様に構成される第1定着ベルト454とを含んで構成される。第1定着手段450においては、第1定着ベルト454が第1定着ローラ452と第1加熱手段451との間に張架され、第1加圧ローラ453が第1定着ベルト454を介して第1定着ローラ452に対向するように配置されている。
第1加熱手段451は、前述した加熱部材21を有する。第1加熱手段451が有する加熱部材21は、前述した放熱部材210と、発熱領域が放熱部材210の長手方向両端部と中央部とに3分割された前述の発熱層212を有する発熱部材211とを含む。
放熱部材210は、本実施の形態では、肉厚0.5mmのアルミニウムからなる金属薄板を用いて作製された第1放熱部と第2放熱部とで構成され、第1放熱部の伝熱部と第2放熱部の伝熱部とで形成される第1定着ベルト454に対する接触部分は、断面径が40mmで開口部の開口角度が125°とされ、この接触部分において発熱層212で発生した熱を第1定着ベルト454に伝達する。
発熱層212は、前述したように、放熱部材210の伝熱部の長手方向両端部に対応する第1発熱領域212aおよび第2発熱領域212bと、放熱部材210の伝熱部の長手方向中央部に対応する第3発熱領域212cとに分割されており、各発熱領域は、それぞれ区別された状態で通電可能となっている。発熱層212は、通紙する記録紙32の通紙サイズや厚みに応じて、各発熱領域が適宜通電制御されて、発熱する。本実施の形態では、発熱層212は1100Wの発熱量で発熱し、第3発熱領域212cが600W、第1発熱領域212aおよび第2発熱領域212bがそれぞれ250Wである。
また、第1加熱手段451に巻き掛けられた第1定着ベルト454の周面近傍には、その周面温度を非接触で検出する第1発熱体側サーミスタ455が配置されている。
第1定着ローラ452は、第1定着ベルト454を介して第1加圧ローラ453に圧接することで定着ニップ部を形成すると同時に、図示しない駆動モータにより回転軸線まわりに回転方向G方向に回転駆動することによって、第1定着ベルト454を搬送する。第1定着ローラ452は、その内側から順に芯金452a、弾性層452bが形成された2層構造からなり、芯金452aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられ、本実施の形態では芯金452aは、アルミニウムからなる外径40mmの部材である。また、弾性層452bにはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適しており、本実施の形態では弾性層452bは、熱伝導率が小さいシリコン発泡スポンジからなる厚さ5mmの部材である。こうして構成された第1定着ローラ452の表面硬さは68度(アスカーC硬度)である。
また、第1定着ローラ452の第1定着ベルト454の巻き掛け部分(加熱ニップ部)の周面近傍には、第1定着ローラ452に巻き掛けた第1定着ベルト454の周面温度を非接触で検出する第1定着ローラ側サーミスタ456が配置されている。
第1加圧ローラ453は、第1定着ベルト454を介して第1定着ローラ452に対向しかつ圧接し、図示しない駆動モータにより回転軸線まわりに回転方向H方向に回転駆動するように設けられている。第1定着ベルト454および第1定着ローラ452と第1加圧ローラ453とは、互いに逆方向に回転する。第1加圧ローラ453は、その内側から順に芯金453a、弾性層453b、離型層453cが形成された3層構造からなっている。芯金453aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられ、本実施の形態では芯金453aは、アルミニウムからなる外径46mmの部材である。また、弾性層453bにはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適しており、本実施の形態では弾性層453bは、シリコンゴムからなる厚さ2mmの部材である。また、離型層453cにはPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が適しており、本実施の形態では離型層453cはPFAからなる厚さ約30μmの部材である。こうして構成された第1加圧ローラ453の表面硬さは75度(アスカーC硬度)である。
また、第1加圧ローラ453の内部には、第1加圧ローラ453を加熱する第1ヒータランプ453d(たとえば、定格電力400W)が配置されている。制御回路(不図示)が電源回路(不図示)から第1ヒータランプ453dに電力を供給(通電)させることによって、第1ヒータランプ453dが発光し、第1ヒータランプ453dから赤外線が放射される。これによって、第1加圧ローラ453の内周面が赤外線を吸収して加熱され、第1加圧ローラ453全体が加熱される。また、第1加圧ローラ453の周面には、第1加圧ローラ453の周面温度を接触で検出する第1加圧ローラ側サーミスタ457が配置されている。また、第1加圧ローラ453には、第1加圧ローラ453表面を素早く加熱する外部加熱装置やクリーニングローラ、オイル塗布ローラを設けた構成としてもよい。
第1定着ローラ452および第1加圧ローラ453は、外径が50mmであり、図示していない弾性部材(バネ部材)によって、所定の荷重(ここでは、600N)で互いに圧接される。これにより、第1定着ローラ452と第1加熱手段451とに架け渡された第1定着ベルト454の周面と第1加圧ローラ453周面との間に定着ニップ部が形成される。当該定着ニップ部は、第1定着ベルト454と第1加圧ローラ453とが互いに当接する部分であり、本実施の形態では、9mmである。第1定着ローラ452が所定の温度(ここでは、180℃)に加熱され、記録紙32は、この定着ニップ部を通過することで、未定着トナー像31が加熱溶融し画像が定着されるようになっている。記録紙32が定着ニップ部を通過するときには、第1定着ベルト454は記録紙32のトナー画像形成面に当接する一方、第1加圧ローラ453は記録紙32におけるトナー画像形成面とは反対の面に当接するようになっている。
第1定着ローラ452および第1加圧ローラ453の回転速度に応じて、所定の定着速度および複写速度で、定着ニップ部に記録紙32が搬送され、未定着トナー像31が記録紙32に熱および圧力により定着される。ここで、定着速度とは、いわゆるプロセス速度のことで、たとえば、モノクロ印字を行う場合には355mm/secでありカラー印字を行う場合には220mm/secで回転し、複写速度とは、1分あたりのコピー枚数のことで、たとえば、モノクロ印字では70枚/分、カラー印字では60枚/分である。
また、第1定着手段450には、第1定着ベルト454の表面をクリーニングする図示しないウェブクリーニング装置が配置されている。
温度制御手段としての制御回路は、各サーミスタ455,456,457により検出された温度データに基づいて、第1加熱手段451が有する放熱部材210、第1定着ベルト454、第1加圧ローラ453が所定の温度になるように、電源回路を介して発熱層310および第1ヒータランプ453dへの通電を制御する。
次に、第2定着手段460について説明する。第2定着手段460は、第2加熱手段461と、第2定着ローラ462と、第2加圧ローラ463と、前述した定着ベルト25と同様に構成される第2定着ベルト464とを含んで構成される。第2定着手段460においては、第2定着ベルト464が第2定着ローラ462と第2加熱手段461との間に張架され、第2加圧ローラ463が第2定着ベルト464を介して第2定着ローラ462に対向するように配置されている。第2定着手段460は、基本構成は、第1定着手段450と同じであるが、第2加熱手段461が第1加熱手段451の構成とは異なり、第2定着ローラ462が第1定着ローラ452の構成とは異なっている。
第2加熱手段461は、前述した加熱部材21を有する。第2加熱手段461が有する加熱部材21は、前述した放熱部材210と、発熱領域が放熱部材210の伝熱部の長手方向両端部と中央部とに対応して3分割され、かつ放熱部材210の伝熱部の短手方向に対応して2分割された合計6分割された発熱層212を有する発熱部材とを含む。
放熱部材210は、伝熱部において第2定着ベルト464と接触して発熱層212で発生した熱を第2定着ベルト464に伝達する。
発熱層212は、前述したように、放熱部材210の伝熱部の長手方向両端部であり、かつ第2定着ベルト464の回転方向下流側に対応する第1発熱領域および第2発熱領域と、放熱部材210の伝熱部の長手方向両端部であり、かつ第2定着ベルト464の回転方向上流側に対応する第3発熱領域および第4発熱領域と、放熱部材210の伝熱部の長手方向中央部であり、かつ第2定着ベルト464の回転方向下流側に対応する第5発熱領域と、放熱部材210の伝熱部の長手方向中央部であり、かつ第2定着ベルト464の回転方向上流側に対応する第6発熱領域とに分割されており、各発熱領域は、それぞれ区別された状態で通電可能となっている。発熱層212は、通紙する記録紙32の通紙サイズや厚みに応じて、各発熱領域が適宜通電制御されて、発熱する。本実施の形態では、発熱層212は900Wの発熱量で発熱し、第5発熱領域が400W、第6発熱領域が200W、第1発熱領域および第2発熱領域がそれぞれ100W、第3発熱領域および第4発熱領域がそれぞれ50Wである。
また、第2加熱手段461に巻き掛けられた第2定着ベルト464の周面近傍には、その周面温度を非接触で検出する第2発熱体側サーミスタ465が配置されている。
第2定着ローラ462は、第2定着ベルト464を介して第2加圧ローラ463に圧接することで定着ニップ部を形成すると同時に、図示しない駆動モータにより回転軸線まわりに回転方向I方向に回転駆動することによって、第2定着ベルト464を搬送する。第2定着ローラ462は、その内側から順に芯金462a、弾性層462bが形成された2層構造からなり、芯金462aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられ、本実施の形態では芯金462aは、アルミニウムからなる外径46mmの部材である。また、弾性層462bにはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適しており、本実施の形態では弾性層462bは、シリコンゴムからなる厚さ2mmの部材である。こうして構成された第2定着ローラ462の表面硬さは68度(アスカーC硬度)である。
また、第2定着ローラ462の第2定着ベルト464の巻き掛け部分(加熱ニップ部)の周面近傍には、第2定着ローラ462に巻き掛けた第2定着ベルト464の周面温度を非接触で検出する第2定着ローラ側サーミスタ466が配置されている。
第2加圧ローラ463は、第2定着ベルト464を介して第2定着ローラ462に対向しかつ圧接し、図示しない駆動モータにより回転軸線まわりに回転方向J方向に回転駆動するように設けられている。第2定着ベルト464および第2定着ローラ462と第2加圧ローラ463とは、互いに逆方向に回転する。第2加圧ローラ463は、その内側から順に芯金463a、弾性層463b、離型層463cが形成された3層構造からなっている。芯金463aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられ、本実施の形態では芯金463aは、アルミニウムからなる外径46mmの部材である。また、弾性層463bにはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適しており、本実施の形態では弾性層463bは、シリコンゴムからなる厚さ2mmの部材である。また、離型層463cにはPFAやPTFE等のフッ素樹脂が適しており、本実施の形態では離型層463cはPFAからなる厚さ約30μmの部材である。こうして構成された第2加圧ローラ463の表面硬さは75度(アスカーC硬度)である。
また、第2加圧ローラ463の内部には、第2加圧ローラ463を加熱する第2ヒータランプ463d(たとえば、定格電力400W)が配置されている。制御回路(不図示)が電源回路(不図示)から第2ヒータランプ463dに電力を供給(通電)させることによって、第2ヒータランプ463dが発光し、第2ヒータランプ463dから赤外線が放射される。これによって、第2加圧ローラ463の内周面が赤外線を吸収して加熱され、第2加圧ローラ463全体が加熱される。また、第2加圧ローラ463の周面には、第2加圧ローラ463の周面温度を接触で検出する第2加圧ローラ側サーミスタ467が配置されている。
第2定着ローラ462および第2加圧ローラ463は、外径が50mmであり、図示していない弾性部材(バネ部材)によって、所定の荷重(ここでは、550N)で互いに圧接される。これにより、第2定着ローラ462と第2加熱手段461とに架け渡された第2定着ベルト464の周面と第2加圧ローラ463周面との間に定着ニップ部が形成される。当該定着ニップ部は、第2定着ベルト464と第2加圧ローラ463とが互いに当接する部分であり、本実施の形態では、8mmである。
温度制御手段としての制御回路は、各サーミスタ465,466,467により検出された温度データに基づいて、第2加熱手段461が有する放熱部材210、第2定着ベルト464、第2加圧ローラ463が所定の温度になるように、電源回路を介して発熱層310および第2ヒータランプ463dへの通電を制御する。
以上のような第1定着手段450および第2定着手段460を含んで構成される定着装置440においては、特開2005−352389号公報に記載されているように、第1定着手段450の温度変動を補償するように第2定着手段460の温度を制御して(グロス補償モードと称する)、連続通紙(連続定着処理)における画像の光沢がほぼ均一とするように制御を行う。
まず、出力される複数の画像の光沢がほぼ均一となるように、第1定着ベルト454と第2定着ベルト464との温度の関係式を予め求めておく。すなわち、第1定着ベルト454の温度変化に対して、上記関係式で求められる温度になるように第2定着ベルト464の温度の制御を行うことで、第1定着ローラ452の温度によらず、一定の光沢を有する画像を得るものである。
第1定着手段450の温度制御手段は、第1定着ローラ側サーミスタ456により検知された第1定着ベルト454の表面温度T1と、第1定着ベルト454の目標温度設定値T2との差分(T1−T2)を第1定着ベルト454の温度変動値αとして求め、この温度変動値αが第1定着ベルト454の非通紙時の温調における温度リップルを超えたとき、グロス補正温調モードによる制御を行う。第2定着ベルト464の状態での目標設定温度をT4とすると、グロス補正温調モードにおいては、第2定着ベルト464の目標設定温度T4に第2定着ベルト464の温度補正値βを加算した値(T4+β)で第2定着ベルト464の温度制御を行う。第2定着手段460の温度制御手段は、第1定着ベルト454の表面温度(T2+α)を上記関係式に代入して第2定着ベルト464の制御温度(T4+β)を求めて温度制御を行う。グロス補正温調モードは、連続定着処理が終了するか、あるいは、第1定着ベルト454の温度変動値αが所定値以下になると終了し、通常のモードによる制御が行われる。
図16は、本発明の第3実施形態である定着装置470の構成を示す図である。定着装置470は、2段階定着方式の定着装置であって、未定着トナー像31を記録紙32上に加熱加圧して1次定着させる第1定着手段480と、内部に加熱手段が配設される一対の加熱加圧ローラ491が相互に圧接して構成され、第1定着手段480よりも記録紙32の搬送方向下流側に配置されて、1次定着後のトナー像31を記録紙32上に加熱加圧して2次定着させる第2定着手段490とが、水平方向に並んで配置されるように構成されている。そして、定着装置470における第1定着手段480は、蛇行細管式ヒートパイプを有する放熱部材が発熱部材の複数面に当接して設けられる加熱部材を備える、前述した本実施形態の定着装置15である。
このように構成された2段階定着方式の定着装置470では、第1定着手段480が備える抵抗発熱体が通電されたとき、第1定着手段480が備える放熱部材の伝熱部表面の温度分布が均一になって定着ベルト454の幅方向および周方向の温度分布が均一にされるとともに、抵抗発熱体の発熱が安定して行われて発熱効率の低下が防止される。そのため、2段階定着方式の定着装置470は、高品位の定着画像を得ることができるとともに、ウォームアップ時間を短縮することができる。
第1定着手段480と第2定着手段490との間には、搬送ガイド板または搬送ローラなどのガイド部材が設けられており、第1定着手段480の定着ニップ部で定着処理された記録紙32は、ガイド部材に沿って搬送されて、第2定着手段490の定着ニップ部で定着処理されて排出されるようになっている。定着装置470は、定着装置15に代えて画像形成装置100に搭載可能である。
定着装置470が備える第1定着手段480は、前述した定着装置440が備える第1定着手段450と同様に構成されているので、説明は省略する。定着装置470が備える第2定着手段490は、ローラ定着方式の定着手段であり、一対の加熱加圧ローラ491が相互に圧接して定着ニップ部を形成し、各ローラは逆方向に回転駆動している。
一対の加熱加圧ローラ491は、それぞれ、その内側から順に芯金491a、弾性層491b、離型層491cが形成された3層構造からなっている。芯金491aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層491bにはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適しており、離型層491cにはPFAやPTFE等のフッ素樹脂が適している。
また、一対の加熱加圧ローラ491の内部には、加熱加圧ローラ491を加熱するヒータランプ491dが配置されている。制御回路(不図示)が電源回路(不図示)からヒータランプ491dに電力を供給(通電)させることによって、ヒータランプ491dが発光し、ヒータランプ491dから赤外線が放射される。これによって、加熱加圧ローラ491の内周面が赤外線を吸収して加熱され、加熱加圧ローラ491全体が加熱される。なお、加熱加圧ローラ491を加熱する構成は上記に限らず、誘導加熱を利用した誘導加熱方式としてもよく、またヒータランプと誘導加熱方式とを適宜組み合わせた構成としてもよい。
以上のような第1定着手段480および第2定着手段490を含んで構成される定着装置470においては、第1定着手段480は、素早い加熱を行うことができる機構を有しており、第2定着手段490は、大きな熱容量を有する。
このように構成された定着装置470では、第1定着手段480を予めウォームアップさせておき、立ち上がりがよく、複写動作を素早く行いたい場合には、第1定着手段480の定着ニップ部に記録紙32を通過させて定着処理した後、記録紙32をガイド部材を介して迂回経路485に搬送させ、迂回経路485に配設される複数の搬送ローラ485aによって記録紙32を排出させる。つまり、この場合には、記録紙32は、第1定着手段480のみによって定着処理される。また、記録紙32が薄手の紙である場合にも、上記と同様にして、第1定着手段480のみによって定着処理されるようにすればよい。
一方、記録紙32が厚手の紙である場合、画像の光沢を向上させたい場合、定着速度を向上させたい場合には、第1定着手段480の定着ニップ部で定着処理された記録紙32を、ガイド部材に沿って搬送させて、第2定着手段490の定着ニップ部でさらに定着処理されるようにすればよい。このように、第1定着手段480および第2定着手段490の各定着ニップ部で定着処理することによって、定着性能および画像の光沢を向上することができる。
図17は、本発明の第4実施形態である定着装置530の構成を示す図である。定着装置530は、定着部540と加圧部550とを含んで構成されている。定着装置530は、未定着トナー像31が担持される記録紙32を、定着部540と加圧部550との間で形成される定着ニップ部で定着処理する。定着装置530は、定着装置15に代えて画像形成装置100に搭載可能である。
定着部540は、加熱手段541と、定着ローラ542と、無端状ベルトである定着ベルト543とを含んで構成される。定着部540においては、定着ベルト543が定着ローラ542と加熱手段541との間に張架されている。
加熱手段541は、蛇行細管式ヒートパイプを有する放熱部材が発熱部材の複数面に当接して設けられる、前述した加熱部材21を有する。加熱部材21の放熱部材は、伝熱部において定着ベルト543と接触して発熱層212で発生した熱を定着ベルト543に伝達する。
また、加熱手段541に巻き掛けられた定着ベルト543の周面近傍には、その周面温度を非接触で検出する発熱体側サーミスタ545が配置されている。
定着ローラ542は、図示しない駆動モータにより回転軸線まわりに回転方向X方向に回転駆動することによって、定着ベルト543を搬送する、外径30mmのローラ状部材である。定着ローラ542は、その内側から順に芯金542a、弾性層542b、表面層542cが形成された3層構造からなり、芯金542aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の熱伝導性の高い金属あるいはそれらの合金等が用いられる。芯金542aの形状としては、円筒状、円柱状などが挙げられるけれども、芯金542aからの放熱量が少ない円筒状の方が好ましい。また、弾性層542bにはシリコンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適しており、これらの中でも、特にゴム弾性に優れるシリコンゴムが好ましい。
表面層542cを構成する材料としては、耐熱性および耐久性に優れ、摺動性が高いものであれば特に制限されず、たとえば、PFA、PTFEなどのフッ素系樹脂材料、フッ素ゴム等を使用してもよい。また、表面層を設けないで、2層構造とすることも可能である。また、定着ローラ542の内部に、定着ローラ542を加熱する加熱手段を設けてもよい。これは、画像形成装置100の電源ONから画像形成可能になるまでの立ち上げ時間の短縮、トナー像定着時に記録紙32に熱が移行することに起因する定着ローラ542の表面温度の低下などを防止するためである。
定着ベルト543は、加熱手段541によって所定の温度に加熱され、定着ベルト543に接触して搬送される未定着トナー像31が形成された記録紙32を加熱する。定着ベルト543は、無端状のベルトで、加熱手段541と定着ローラ542によって懸架され、定着ローラ542に所定の角度で巻きかかっている。定着ベルト543は、定着ローラ542の回転時には、定着ローラ542に従動して回転方向X方向に回転するようになっている。また、定着ベルト543は、定着ローラ542と後述する加圧ローラ551との圧接部で加圧ベルト553に接触するように設けられている。
定着ベルト543は、基材層と弾性層と離型層とを含む3層構造よりなり、直径60mmの円筒形状に形成された厚さ270μmの無端状ベルトである。基材層を構成する材料としては、耐熱性および耐久性に優れるものであれば特に制限されないけれども、耐熱性合成樹脂を挙げることができ、中でも、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)などが好ましい。これらの樹脂は、高強度、高耐熱性の材料であるばかりでなく、低価格である。基材層の厚さは、特に制限されないけれども好ましくは、30〜200μmである。本実施の形態では、基材層はポリイミドからなり、厚さは100μmである。
弾性層を構成する材料としては、ゴム弾性を有するものであれば特に制限はないけれども、さらに耐熱性にも優れるものが好ましい。このような材料の具体例としては、たとえば、シリコンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、特にゴム弾性に優れ、耐熱性も良好なシリコンゴムが好ましい。弾性層の表面硬さは、JIS−A硬さで1〜60度であることが好ましい。このJIS−A硬さの範囲であれば、弾性層の強度の低下、密着性の不良を防止しつつ、トナーの定着性の不良を防止できる。このような特性を有するシリコンゴムとしては具体的には、1成分系、2成分系または3成分系以上のシリコンゴム、LTV型、RTV型またはHTV型のシリコンゴム、縮合型または付加型のシリコンゴム等が挙げられる。また、弾性層の厚さは、30〜500μmであることが好ましい。この厚さ範囲であれば、弾性層の弾性効果を維持しつつ、断熱性を低く抑えることができて省エネルギー効果を発揮できる。本実施の形態では、弾性層は、JIS−A硬さが5度、厚さ150μmのシリコンゴムからなる。
離型層は、フッ素樹脂チューブからなる。定着ベルト543の外周側に形成される離型層が、フッ素樹脂チューブより構成されているので、フッ素樹脂を含有する樹脂を塗布し、これを焼成することにて形成された離型層よりも耐久性に優れている。また、塗布・焼成にて離型層を形成する場合、寸法精度の高い離型層を得ようとすると、高精度で高価な金型が必要となるが、チューブを用いることで、上述のような金型を用いずとも、寸法精度の高い離型層が得られている。離型層の厚さは、5〜50μmであることが好ましい。この厚さ範囲であれば、適度な強度を持ち、弾性層の弾性を活かしながら、記録紙32の微小な凹凸に追従することが可能である。本実施の形態では、離型層は、厚さ約20μmのPTFEチューブを使用する。
次に、加圧部550について説明する。加圧部550は、加圧ローラ551と、テンションローラ552と、無端状ベルトである加圧ベルト553とを含んで構成される。加圧部550においては、加圧ベルト553が加圧ローラ551とテンションローラ552との間に張架されている。加圧ローラ551とテンションローラ552とはそれぞれ定着装置530の不図示の左右の側板間に回転自在に軸受されて支持されている。
加圧ベルト553は、前述した定着ベルト543と同様に構成されており、接触する定着ベルト543に従動して回転する。
加圧ローラ551は、定着ベルト543の回転に従動して回転する加圧ベルト553の回転に伴って回転軸線まわりに回転方向Y方向に回転する、外径30mmのローラ状部材である。加圧ローラ551は、その内側から順に芯金551a、弾性層551b、表面層551cが形成された3層構造からなる。加圧ローラ551の芯金542a、弾性層551b、表面層551cを構成する材料は、前述した定着ローラ542の芯金542a、弾性層542b、表面層542cと同様のものを挙げることができる。また、加圧ローラ551の内部には、加圧ローラ551を加熱する加熱手段551dが設けられている。これは、画像形成装置100の電源ONから画像形成可能になるまでの立ち上げ時間の短縮、トナー像定着時に記録紙32に熱が移行することに起因する加圧ローラ551の表面温度の急激な低下などを防止するためである。本実施の形態では、加熱手段551dにはハロゲンランプが用いられる。
テンションローラ552は、外径が30mmで、内径が26mmである鉄合金製の芯金552aに、熱伝導率を小さくして加圧ベルト553からの熱伝導を少なくするためにシリコーンスポンジ層552bを設けている。
定着装置530は、定着ベルト543と加圧ベルト553とが接触する部分に定着ニップ部が形成され、該定着ニップ部にて定着処理が行われる、いわゆるツインベルト定着方式の定着装置である。定着装置530においては、定着ローラ542と加圧ローラ551とが、定着ベルト543および加圧ベルト553を介して圧接する圧接部が定着ニップ部の最下流部分となり、定着ベルト543と加圧ベルト553とが接触する部分に形成される定着ニップ部の全領域の中で、前記最下流部分が、記録紙搬送方向における圧力分布が最大となる部分である。このように、定着ニップ部の最下流部分における圧力分布が最大となるように構成することによって、定着ベルト543と加圧ベルト553とが回転時にスリップすることを防止することができる。
また、定着装置530には、装置を大型化することなく幅広い定着ニップ領域を得るために、定着ベルト543を加圧ベルト553に向けて加圧する第1の加圧パッドとしての定着パッド544と、加圧ベルト553を定着ベルト543に向けて加圧する第2の加圧パッドとしての加圧パッド554とが設けられている。定着パッド544および加圧パッド554は、定着装置530の不図示の左右の側板間に支持させて配設している。加圧パッド554は、不図示の加圧機構により定着パッド544に近接する方向Zに所定の加圧力にて定着パッド544に向けて加圧されている。定着パッド544および加圧パッド554を構成する材料としては、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などを挙げることができる。
また、回転体ではない定着パッド544と加圧パッド554とで定着ニップ部を形成すると、定着ベルト543および加圧ベルト553の内周面は各パッドに摺擦され、各ベルト543,553の内周面と各パッド544,554との摩擦係数が大きいと、摺動抵抗が大きくなる。その結果として、画像のずれ、ギア破損、駆動モータの消費電力アップ等の問題が発生し、特にツインベルト方式において、この問題が顕著である。そのために、定着パッド544および加圧パッド554における各ベルト543,553との接触面には、低摩擦シート層が設けられている。これにより、各ベルト543,553との摺擦による各パッド544,554の摩耗が防止され、摺動抵抗も低減できるので、良好なベルト走行性、ベルト耐久性が得られる。