JP2010244626A - ディスク駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】シンプルな構成で、潤滑剤中に浮遊する異物を低減して、異物の浮遊による不具合を軽減し、小型化が容易なディスク駆動装置を提供する。
【解決手段】ディスク駆動装置10は、固定体部S、回転体部R、軸受ユニット26と、駆動ユニット27と、を含む。軸受ユニット26は、回転中心となるシャフト38と、シャフト38を収納する収納部を有すると共に、当該シャフト38を軸として相対的な回転を許容するスリーブ34と、スリーブ34の収納部の内壁面とシャフト38の外壁面とで定義されるラジアル空間部と、ラジアル空間部を定義するスリーブ34の内壁面とシャフト38の外壁面の少なくとも一方にラジアル動圧を発生させるラジアル動圧溝RB1,RB2と、ラジアル空間部に充填される潤滑剤48と、潤滑剤48が充填される充填空間の少なくとも一部に配設されて潤滑剤48に含まれる異物を捕捉可能な多孔質フィルタ52を備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、ディスク駆動装置、特に流体動圧軸受の潤滑剤に浮遊する異物を低減させる技術に関する。
近年、HDDなどのディスク駆動装置は、流体動圧軸受を備えることにより支持する回転体の回転精度を飛躍的に向上させることが可能になった。このような流体動圧軸受の構造が、例えば特許文献1に開示されている。この流体動圧軸受は、シャフトなどの回転体の一部に動圧発生用の動圧溝を備え、回転体の回転時に周囲に充填された油などの潤滑剤と相互に作用して動圧を発生させる。例えば、スリーブの内周とシャフトの外周との隙間で定義されたラジアル空間に潤滑剤を満たしてラジアル流体動圧軸受が形成されている。また、スラストリングと対向するフランジ部との隙間及び、スラストリングの反対面と対向するインナーシールとの隙間で定義されたスラスト空間内に潤滑剤を満たしてスラスト流体動圧軸受が形成されている。これらの流体動圧軸受は、発生した動圧により回転中の回転体を潤滑剤の中で浮上させて周囲の構造部品と非接触状態として荷重を受ける軸受である。
このような流体動圧軸受を備えるディスク駆動装置は、回転部分と固定部分とが極めて狭い隙間を介して対向させて小型化を図っている。このようなディスク駆動装置は、モバイル機器への搭載が盛んに行われて用途が拡大している。そのためディスク駆動装置の小型化に対する要望がさらに高まり、それに伴い流体動圧軸受の小型化への要求もさらに高まっている。つまり、潤滑剤が循環する隙間をさらに狭くしたいという要望がある。
特開2007−198555号公報
上述のような流体動圧軸受を搭載するディスク駆動装置において、非回転時の回転体は自重により重力方向に移動する。そして、回転体と固定体とが接触する状態で停止することになる。その後、ディスク駆動装置の回転が再開されると、回転体は当該回転体を壁面から離反させるのに十分な動圧が発生するまで固定体と摺動しながら回転することになる。このような摺動の結果、摺動部分で削り粉が発生することがあった。この削り粉は、例えば、金属部品の金属粉や微粒子等であり潤滑剤中では異物となる。この異物は、潤滑剤の流動にしたがって浮遊しながら移動する。このとき、前述したように流体動圧軸受の小型化により潤滑剤が流動する循環路の隙間が狭くされている場合、異物が狭い部分で挟まり、潤滑剤の循環不良を発生させたり、回転体の回転不良の原因になる。その結果、軸受機能を低下させてしまうことがあった。また、金属粉や微粒子などの異物は研磨剤としても作用してしまうので、隙間を構成する部材の表面摩耗を促進してしまうと共に、さらなる異物の発生を招き、隙間を構成する部材の摩耗を加速度的に進行させてしまう場合があった。そして、このような流体動圧軸受の潤滑剤中に存在する金属粉や微粒子などの異物は、流体動圧軸受部設計時の循環路の狭小化の妨げとなると共に、ディスク駆動装置の小型化を妨げる一因という問題があった。
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、シンプルな構成で、潤滑剤中に浮遊する異物を低減させて異物の浮遊による不具合を軽減し、小型化が容易なディスク駆動装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のディスク駆動装置は、ベース部材と、ベース部材に配置され当該ベース部材に対して記録ディスクを回転自在に支持する軸受ユニットと、軸受ユニットに支持される記録ディスクを回転駆動する駆動ユニットと、を含む。軸受ユニットは、回転中心となるシャフトと、シャフトを収納する収納部を有すると共に、当該シャフトを軸として相対的な回転を許容するスリーブと、スリーブの収納部の内壁面とシャフトの外壁面とで定義されるラジアル空間部と、ラジアル空間部を定義するスリーブの内壁面とシャフトの外壁面の少なくとも一方にラジアル動圧を発生させるラジアル動圧溝と、ラジアル空間部に充填される潤滑剤と、潤滑剤が充填される充填空間の少なくとも一部に配設されて潤滑剤に含まれる異物を捕捉可能な多孔質部材と、を備える。
多孔質部材は潤滑剤が流動する部分であれば任意の位置に配置することができる。好ましくは、シャフトとスリーブとの相対的な回転が停止して動圧の発生が停止したときに、シャフトとスリーブとが接触する部分の近傍が好ましい。この場合、回転を再開するときにシャフトとスリーブとの摺動により発生した異物を迅速かつ効率的に多孔質部材で捕捉することができる。多孔質部材は、焼結金属や繊維等の網目状の素材や、細粒子を封じてその表面に異物を吸着する素材などが利用可能である。また、この多孔質部材は、潤滑剤に含まれる異物の移動方向に対応させて多孔質の密度を粗状態から密状態に変化させることが望ましい。
この態様によれば、潤滑剤の中に異物が存在する場合でも迅速かつ容易にその異物の捕捉ができるので、潤滑剤の循環空間を狭くしても異物の詰まりによる不具合が抑制できる。その結果、ディスク駆動装置の性能低下や寿命の短縮を抑制することができると共に、流体動圧軸受設計時に循環空間の狭小化が可能となり、ディスク駆動装置の小型化に寄与できる。
本発明によれば、シンプルな構成で、潤滑剤中に浮遊する異物を低減させて当該異物の浮遊による不具合を軽減し、小型化が容易なディスク駆動装置が提供できる。
本実施形態のディスク駆動装置の一例であるハードディスクドライブ装置の内部構成を説明する説明図である。 本実施形態のディスク駆動装置の固定体部、回転体部、軸受ユニット、駆動ユニットの詳細を説明する説明図である。 本実施形態のディスク駆動装置に使用する円筒状の多孔質フィルタを軸方向に切った断面図である。 図2に示すディスク駆動装置とは異なる構造のディスク駆動装置の固定体部、回転体部、軸受ユニット、駆動ユニットの詳細を説明する説明図である。 図4に示すディスク駆動装置に使用するリング状の多孔質フィルタを軸方向に切った断面図である。 図4のディスク駆動装置のフランジの変形例を示す説明図であり、フランジの周辺部の拡大断面図である。 図6に示すフランジを有するディスク駆動装置に使用するリング状の多孔質フィルタを軸方向に切った断面図である。 本実施形態の他の構造のディスク駆動装置の固定体部、回転体部、軸受ユニット、駆動ユニットの詳細を説明する説明図である。 図8のディスク駆動装置に利用できる多孔質フィルタの一例を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態のディスク駆動装置の一例であるハードディスクドライブ装置(HDD)10(以下、単にディスク駆動装置10という)の内部構成を説明する説明図である。なお、図1は、内部構成を露出させるためにカバーを取り外した状態を示している。
ベース部材12の上面には、ブラシレスモータ14、アーム軸受部16、ボイスコイルモータ18等が載置される。ブラシレスモータ14は、記録ディスク20を搭載するためのハブ部材28を回転同軸上に支持し、例えば磁気的にデータを記録可能な記録ディスク20を回転駆動する。ブラシレスモータ14は、例えばスピンドルモータとすることができる。ブラシレスモータ14は、例えば磁気的にデータを記録可能な記録ディスク20を回転駆動する。ブラシレスモータ14はU相、V相、W相からなる3相の駆動電流により駆動される。アーム軸受部16は、スイングアーム22を可動範囲AB内でスイング自在に支持する。ボイスコイルモータ18は外部からの制御データにしたがってスイングアーム22をスイングさせる。スイングアーム22の先端には磁気ヘッド24が取り付けられている。ディスク駆動装置10が稼働状態にある場合、磁気ヘッド24はスイングアーム22のスイングに伴って記録ディスク20の表面を僅かな隙間を介して可動範囲AB内を移動し、データをリード/ライトする。なお、図1において、点Aは記録ディスク20の最外周の記録トラックの位置に対応する点であり、点Bは記録ディスク20の最内周の記録トラックの位置に対応する点である。スイングアーム22は、ディスク駆動装置10が停止状態にある場合には記録ディスク20の脇に設けられる待避位置に移動してもよい。
なお、本実施形態において、記録ディスク20、スイングアーム22、磁気ヘッド24、ボイスコイルモータ18等のデータをリード/ライトする構造を全て含むものをディスク駆動装置と表現する場合もあるし、HDDと表現する場合もある。また、記録ディスク20を回転駆動する部分のみをディスク駆動装置と表現する場合もある。
図2に示すように、本実施形態のディスク駆動装置10は、固定体部Sと、回転体部Rと、ラジアル動圧溝RB1,RB2と潤滑材とで構成されるラジアル流体動圧軸受部及びスラスト動圧溝SBと潤滑剤とで構成されるスラスト流体動圧軸受部を含む軸受ユニット26と、これらの流体動圧軸受部を介して固定体部Sに対して回転体部Rを回転駆動する駆動ユニット27とにより構成されている。なお、図2は、一例として記録ディスク20を支持するハブ部材28と後述するシャフト38が一体となり回転する、いわゆるシャフト回転型のディスク駆動装置の構造を示す。本実施形態では、便宜上図2の矢印A側を上側または上方、矢印B側を下側または下方として説明する。なお、ディスク駆動装置10を構成する部材は、機能的に固定体部S、軸受ユニット26、回転体部R、駆動ユニット27で分けられるグループのうち複数のグループに含まれるものがある。例えば、シャフト38は、回転体部Rに含まれると共に軸受ユニット26にも含まれる。
固定体部Sは、ベース部材12、ステータコア30、コイル36、周設ハウジング32、スリーブ34を含んで構成されている。ベース部材12には、第1円筒部12aと、その第1円筒部12aからさらにハブ部材28側に伸びる第2円筒部12bが形成される。ステータコア30は、第2円筒部12bの外壁面に固着されている。また、周設ハウジング32は、第1円筒部12aの内壁面に接着または圧入と接着の併用により固着されている。スリーブ34は、周設ハウジング32の内壁面に固定される円筒外壁面34aを有する円筒部材である。なお、スリーブ34は、円筒内壁面34bで囲む空間にシャフト38を相対回転を許容しながら支持するので、僅かな変形でもシャフト38の回転性能を低下させる原因になる。したがって、スリーブ34は周設ハウジング32の円筒部32aの内部に外力が加わらないように遊嵌状態で挿入された後、その内壁面に接着剤等で固着される。
ベース部材12は、例えば、アルミダイキャストで製作された母材を切削加工するか、アルミ板をプレス加工して形成するか、鉄板をプレス加工後、ニッケルめっきを施して形成することができる。ステータコア30は、ケイ素鋼板等の磁性板材が複数枚積層された後、表面に電着塗装や粉体塗装等による絶縁コーディングを施して形成される。また、ステータコア30は、半径方向外方向に突出する複数の突極(図示せず)を有するリング状であり、各突極にはコイル36が巻回されている。例えば、ディスク駆動装置10が3相駆動であれば突極数は9極とされる。なお、コイル36の巻き線端末は、ベース部材12の底面に配設されたFPC(図示せず)上に半田付けされる。
周設ハウジング32は、スリーブ34を内周に密着保持する円筒部32aと、円筒部32aの一方の端部を密閉する底部32bと、他端にハブ部材28と対向するようにハブ部材28の半径方向外側に向かい延設されたフランジ部32cとを含んで構成される略カップ形状の部品である。
回転体部Rは、ハブ部材28、シャフト38、マグネット40、スラストリング42を含んで構成される。ハブ部材28は、略カップ形状の部材であり、中心孔28aと同心の内周下垂部28bと外周円筒部28cと、外周円筒部28cの下端に外延する外延部28dとを有している。そして、外周円筒部28cの内壁面にリング状のマグネット40を固着している。また、内周下垂部28bの内壁面にはスラストリング42が固着されている。
シャフト38は、例えばステンレス材を母材として形成され、その表面は後述する線膨張係数が小さく耐摩耗性の高い例えばサイアロン・セラミックス等で覆われることが望ましい。シャフト38の上端側には段部が設けられている。そして、シャフト38とハブ部材28とを組み立てるとき、ハブ部材28の中心孔28aにシャフト38が圧入される。その結果、ハブ部材28は段部によりシャフト38の軸方向の位置が規制されると共に所定の直角度でシャフト38に一体化される。ハブ部材28は、磁性を有する例えばステンレス材で形成され、スペーサ21を介して例えば2段支持される記録ディスク20a、20bの中心孔を外周円筒部28cの外壁面に係合させると共に、下側の記録ディスク20bを外延部28dで支持する。その結果、記録ディスク20a、20bがハブ部材28に対して位置決めされる。記録ディスク20aの上には略円盤形状のクランパー44が載せられ、当該クランパー44がスクリュー46によってハブ部材28に固定される。これによって記録ディスク20a、20bがハブ部材28に固定される。なお、ハブ部材28は、アルミニウム、鉄等の金属や、導電性樹脂の型成形や機械加工して形成することもできる。
スラストリング42は、ディスク駆動装置10に外力が加わって回転体部Rと固定体部Sとが相対的に移動するような場合に、当該スラストリング42が周設ハウジング32のフランジ部32cの下面に当接して回転体部Rが固定体部S側から抜けてしまうことを防止する抜け防止機能を果たす。マグネット40は、例えばNd−Fe−B(ネオジウム−鉄−ボロン)系の材料で形成され表面には電着塗装やスプレー塗装などによる防錆処理が施されている。本実施形態において、マグネット40の内周側は例えば12極に着磁されている。
そして、回転体部Rのシャフト38が固定体部Sのスリーブ34の円筒内壁面34bに沿って挿入される。その結果、回転体部Rはラジアル動圧溝RB1,RB2と潤滑剤48で構成されるラジアル流体動圧軸受部及びスラスト動圧溝SBと潤滑剤48で構成されるラジアル流体動圧軸受部を介して固定体部Sに回転自在に支持される。駆動ユニット27は、ステータコア30とコイル36とマグネット40とを含んで構成されている。このとき、ハブ部材28はステータコア30及びマグネット40と共に磁気回路を構成する。したがって、外部に設けられた駆動回路の制御により各コイル36に順次通電することにより、回転体部Rが回転駆動される。
次に、軸受ユニット26について詳細に説明する。
軸受ユニット26は、シャフト38と、スリーブ34と、周設ハウジング32とを含んで構成されている。スリーブ34の円筒内壁面34bとそれに対向するシャフト38の外周面はラジアル空間部を形成している。そいて、スリーブ34の円筒内壁面34bとシャフト38の外周面の少なくとも一方にはラジアル方向の支持を行うための動圧を発生するラジアル動圧溝RB1、RB2が形成されている。ラジアル動圧溝RB1はハブ部材28から遠い側に形成され、ラジアル動圧溝RB2はラジアル動圧溝RB1よりハブ部材28に近い側に形成されている。ラジアル動圧溝RB1,RB2は、シャフト38の軸方向に離隔して配置された例えばヘリングボーン状またはスパイラル状の溝である。これらのラジアル動圧溝RB1、RB2の形成空間にはオイル等の潤滑剤48が充填されている。したがって、シャフト38が回転することにより潤滑剤48に圧力の高い部分が生る。その圧力によりシャフト38を周囲の壁面から離反させて、当該シャフト38をラジアル方向において実質的に非接触の回転状態とする。
本実施形態の場合、シャフト38は一端側にハブ部材28を接続しているので、当該シャフト38はハブ部材28に近い側と遠い側で異なる強さの側圧を受ける。そこで、本実施形態では、ラジアル動圧溝RB1のシャフト38の軸方向の形成幅を、ラジアル動圧溝RB2のシャフト38の軸方向の形成幅よりも狭く形成している。これにより、シャフト38の軸方向で異なる強さの側圧に対応した動圧が各ラジアル流体動圧軸受部で発生する。このように、高い動圧の発生によりシャフト38の高い支持剛性を実現すると共に、低い動圧の発生によりシャフト38の回転ロス低減に寄与できる最適なバランスが得られる。
一方、周設ハウジング32は、前述したようにハブ部材28との対向面にハブ部材28の半径方向外側に向かい延設されたフランジ部32cを有している。そして、フランジ部32cとハブ部材28との対向面の少なくとも一方にシャフト38の軸方向の荷重を受ける動圧を発生するためのスラスト動圧溝SBが形成されている。フランジ部32cとハブ部材28の対向面におけるシャフト38の軸方向の間隙にも潤滑剤48が充填されている。このスラスト動圧溝SBを含むスラスト流体動圧軸受部は、ラジアル動圧溝RB1、RB2を含むラジアル流体動圧軸受部と連通している。スラスト動圧溝SBは、例えばスパイラル状またはヘリングボーン状に形成されてポンプインの動圧を発生させる。したがって、固定体部S側であるフランジ部32cに対して回転体部R側であるハブ部材28が回転することによりポンプインの動圧が発生する。この動圧によりシャフト38の軸方向の力を回転体部Rであるハブ部材28に作用させ、固定体部Sに対してシャフト38の軸方向に所定の間隙をもって実質的に非接触の状態でハブ部材28を支持する。
本実施形態の場合、ラジアル流体動圧軸受部及びスラスト流体動圧軸受部における間隙に充填された潤滑剤48は互いに共用される。この潤滑剤48は、キャピラリーシール部TSによりシールされて潤滑剤48が充填位置から外部へ漏出することを防止している。このキャピラリーシール部TSは、周設ハウジング32の外壁面32dとスラストリング42の内壁面42aとで構成されている。周設ハウジング32の外壁面32dは、その上部側から下部側へ向かうに従って小径となる傾斜面とされている。一方、これに対向するスラストリング42の内壁面42aも、その開口側である下端先端に向かうに従って小径となる傾斜面とされている。そして、周設ハウジング32の外壁面32dの傾斜角をスラストリング42の内壁面42aの傾斜角より大きく構成し、それらの隙間が開口側に向かうに従って拡がるキャピラリーシール部TSを形成する。そして、潤滑剤48の充填量として、当該潤滑剤48が外気と接する境界面(液面)が、このキャピラリーシール部TSの途中に位置するように設定してあるので、毛細管現象により潤滑剤48は、キャピラリーシール部TSによりシールされ、その充填位置から外部への漏出が防止される。なお、このキャピラリーシール部TSにおける周設ハウジング32の外壁面32dは、その上部側から下部側へ向かうに従って小径となる傾斜面で構成するので、回転体部Rの回転に伴い、潤滑剤48には、それが充填された部分の内部方向に移動させる方向の遠心力が作用する。つまり、潤滑剤48はスラスト流体動圧軸受部に向かう力を受け外部への漏出がより確実に防止される。
周設ハウジング32の内壁面には、スリーブ34の軸に沿う方向に潤滑剤48が循環する循環路50a、50bが形成されている。循環路50a、50bは、周設ハウジング32にスリーブ34を嵌合させた際、周設ハウジング32の両端面側を連結する連通孔となる。その結果、ラジアル動圧溝RB1側とラジアル動圧溝RB2側の両側が連通されて潤滑剤48が循環するようになり、圧力バランスが良好に維持される。循環路50a、50bの断面形状は円弧状が加工性の点で好ましいが、円弧状に限定されるものではない。また、図2の場合、2本の循環路50a、50bを形成する例を示しているが、形成数は潤滑剤48の循環効率を考慮して適宜選択することが望ましい。
ところで、潤滑剤48には軸受構成部材の摩耗粉や軸受構成部材の破片などの異物が浮遊している場合がある。前述したようにシャフト38が停止状態のときは、当該シャフト38とスリーブ34は接触している。この状態からシャフト38が回転を再開すると、回転初期の段階で、シャフト38とスリーブ34が摺動する。その結果、摺動による摩耗粉や構成部材の破片が発生する可能性がある。これらの異物が潤滑剤48の中に存在する場合、異物が潤滑剤48の潤滑流路を塞いだり、軸受構成部材の摩耗を促進したりする。また、シャフト38の回転ムラや回転不良の原因になる。さらに、その異物が研磨材として機能してさらに摩耗粉や破片の発生を促進してしまう場合がある。そこで、本実施形態では、循環路50aの途中に円筒形状の多孔質部材で構成される多孔質フィルタ52を配置している。多孔質フィルタ52は潤滑剤48の循環によって潤滑剤48中に浮遊する異物を捕捉する。
多孔質フィルタ52の材質は、焼結金属や繊維等の網目状の材料や、細粒子を封じてその表面に異物を吸着する材料などから適宜選択できる。樹脂を用いた不織布、特に原料樹脂として主にポリプロピレン系の樹脂が用いたメルトブロー不織布は繊維径が細く、繊維間の間隙が狭くなることによるバリアー性が良好である点で好ましい。なお、多孔質フィルタ52の材料は潤滑剤48に浸漬されたときに物理的、化学的な変化を生じないものが好ましい。
多孔質フィルタ52の多孔質構造は、潤滑剤48に含まれる異物の移動方向に対応させてフィルタの粗密度を粗状態から密状態に変化させたものが好ましい。図3は、多孔質フィルタ52を軸方向に切った断面図である。図3は、粗密2段構造の多孔質フィルタ52を示している。つまり、潤滑剤48内における異物の移動方向に対して上流側にあたるフィルタ密度が相対的に粗である第1層部分52aと、異物の移動方向に対して下流側にあたるフィルタ密度が相対的に密である第2層部分52bとを含んでいる。潤滑剤48に浮遊する異物の大きさは大小様々である。例えば、最大異物の大きさに対応させて多孔質構造全体の孔径を大きくすると、小さな異物を捕捉することができない。一方、最小異物の大きさに対応させて多孔質構造全体の孔径を小さくすると全ての異物はフィルタの表面に近い部分で捕捉されて貯まり、早期に目詰まりを起こしてしまう。このため、図3に示すように、潤滑剤48の流入側に近い第1層部分52aの多孔質構造の密度を相対的に粗としておき、潤滑剤48の流出側に近い第2層部分52bの多孔質構造の密度を相対的に密としておく。その結果、多孔質フィルタ52で捕捉される異物は、その大きさに応じて異なる位置で捕捉され、流入側表面だけでなく全体として有効に捕捉機能を発揮するので、目詰まりし難い多孔質フィルタ52とすることができる。
発明者らは実験により、ディスク駆動装置の潤滑剤48に浮遊する異物の大きさは、概ね0.3μm未満の小異物、0.3〜1.0μmの中異物、1.0μmを越える大異物に分類することができるという結果を得た。そして、ラジアル流体動圧軸受部の隙間はディスク駆動装置の小型化の要請から2〜4μmと狭くしている場合があるが、0.3μm未満の小異物であれば軸受隙間に入っても障害となり難いという結果を得ている。したがって、中異物と大異物を効率的に捕捉することが望ましい。前述したように、多孔質構造全体の孔径を0.3μm程度とすると、大半の異物は多孔質フィルタ52の表面に近い部分で捕捉されて貯まるため、早期に目詰まりしてしまう。そこで、表面に近い第1層部分52aの多孔質構造の孔径を例えば0.5〜1.0μmとすると、小異物、中異物は通過し、大異物のみが捕捉され貯まる。そして、潤滑剤48の下流側にあたる第2層部分52bの多孔質構造の孔径を例えば0.3〜0.5μmとしておけば、ここで中異物が捕捉される。その結果、多孔質フィルタ52の全体を使って異物を捕捉できるようになり、フィルタ全域を有効に機能させ、多孔質フィルタ52が目詰まりして機能低下に陥るまでの寿命を長くすることができる。なお、多孔質フィルタ52の多孔質構造は2層構造に限られず、3層以上の多層にしたり、孔の大きさが連続変化するように構成することも可能であり、フィルタ寿命を延ばしつつ、良好な異物除去ができる。
なお、図2に示す本実施形態における循環路50aは、潤滑剤48が循環路50aの下方側から流入し、ハブ部材28側に流出するように構成されているので、多孔質フィルタ52は下側が第1層部分52aで上側が第2層部分52bとなる。多孔質フィルタ52の素材や形状は適宜変更可能であり、同様効果を得ることができる。また、多孔質フィルタ52の配設場所は、上述の例に限られず、潤滑剤48の流れのある場所であれば適宜選択可能であり同様な効果を得ることができる。
ところで、キャピラリーシール部TSでは、潤滑剤48が空気と接しており、空気中に浮遊する異物が潤滑剤48に入り込んでしまう場合がある。このため、本実施形態では、図2に示すように、キャピラリーシール部TSの開放端の外側に、当該開放端の少なくとも一部を覆うカバー部材として機能するキャップリング54を配置している。キャップリング54の配置により、潤滑剤48と空気の接触は制限され、空気中に浮遊する異物が潤滑剤48に入り込む可能性を低減させることができる。
従来、例えばシャフト38の母材としてはステンレスSUS420J2が採用され、スリーブ34の母材として高力黄銅C6782が採用されている。それぞれの線膨張係数は10.3×10−6/℃、16.5×10−6/℃である。その結果、流体動圧軸受部が低温になった場合ラジアル空間が狭くなることがある。ラジアル空間が狭くなると、潤滑剤48に浮遊する異物が詰まり易くなり、回転精度の低下や部材表面の摩耗を生じ易くなる。そこで、本実施形態では、線膨張係数が高力黄銅より小さく、耐摩耗性の高い例えばサイアロン・セラミックスでスリーブ34の少なくとも内周面及びシャフト38の少なくとも外周面を覆っている。サイアロン・セラミックスは従来の窒化珪素セラミックス(Si)中のSiの一部をAlで置換し、またNの一部をOで置換したものである。特に化学式Si6−ZAl8−Z(Z=0〜4.2)で表されるβ-サイアロン・セラミックスは加工性が良好で、線膨張係数が3.5×10−6/℃程度と小さく、耐摩耗性も高い。その結果、周囲温度の変化に伴う熱変形の影響を受け難く隙間の狭小化が抑制できて異物の引っ掛かりを防止できると共に、耐摩耗性が向上して回転初期の摺動時に摩擦粉や破片を発生し難くできる。同様に、周設ハウジング32のフランジ部32cの少なくとも表面とそれに対向するハブ部材28の少なくとも表面部分をサイアロン・セラミックス等で構成することにより同様な効果を得ることができる。
なお、上述したように、少なくともスリーブ34の内周面とシャフト38の外周面をサイアロン・セラミックスで構成することにより熱変形による隙間の狭小化を抑制し異物の引っ掛かりや異物の発生を抑制できる。その結果、図2に示すような多孔質フィルタ52を含まない流体動圧軸受部においても異物による不具合を軽減することが可能となり、流体動圧軸受部設計時における潤滑剤の流路幅の狭小化に寄与できる。つまり、ディスク駆動装置の小型化に寄与することができる。
なお、図2の例では、多孔質フィルタ52を循環路50aのみに配置する例を示しているが、循環路50bにも配置してもよし、循環路を2本以上設けてそこに多孔質フィルタ52を配置してもよい。このように多孔質フィルタ52を複数配置することにより異物の捕捉能力は向上するが、その反面、潤滑剤48の流動効率の低下を招く場合がある。したがって、多孔質フィルタ52の配置数は、流体動圧軸受部の異物混入程度などの特性に応じて適宜実験等により決定して捕捉効率と流動効率のバランスがとれるようにすることが望ましい。
図4は、図2に示すディスク駆動装置10とは異なる構造のディスク駆動装置100の構造を示している。なお、図4に示すディスク駆動装置100と図2に示すディスク駆動装置10の駆動原理は同じであるため実質的に同じ構造、同じ機能を有する部材については同じ符号を付して、一部の部材についてその説明を省略する。なお、ディスク駆動装置100もディスク駆動装置10と同様にシャフト回転タイプのディスク駆動装置である。
ディスク駆動装置100は、固定体部Sと、回転体部と、ラジアル動圧溝RB1,RB2と潤滑剤48で構成されるラジアル流体動圧軸受部及びスラスト動圧溝SB1,SB2で構成されるスラスト流体動圧軸受部を含む軸受ユニット26と、これらの流体動圧軸受部を介して固定体部Sに対して回転体部Rを回転駆動する駆動ユニット27とにより構成されている。
固定体部Sは、ベース部材12、ステータコア30、コイル36、スリーブ34、カウンタープレート58を含んで構成されている。回転体部Rは、ハブ部材28、シャフト38、マグネット40、フランジ56を含んで構成される。軸受ユニット26は、シャフト38、フランジ56、スリーブ34、カウンタープレート58とを含んで構成されている。駆動ユニット27は、ステータコア30とコイル36とマグネット40とを含んで構成されている。
図4に示すディスク駆動装置100は、ハブ部材28の外周円筒部28cの下端に外延する外延部28dを有している。この外延部28dは、記録ディスク20の載置面をマグネット40の上端面の軸方向位置より上方に設定している。また、ハブ部材28は磁性体材料からなり、マグネット40の外径は記録ディスク20の内径より小さく、マグネット40の上面は外延部28dの軸方向高さ以下となるように構成されている。この構造は、ディスク駆動装置100の薄型化に寄与できる。また、本実施形態では、ハブ部材28のうちマグネット40のバックヨークとなる外延部28dの部分の厚みを厚くしている。その結果、マグネット40に残留磁束密度の高い材料を採用しても、バックヨークの磁束の飽和は生じず、記録ディスク20への漏れ磁束を低減できる。
スリーブ34はベース部材12の円筒部12aの内壁面に接着材等により直接固定されている。そして、スリーブ34の内壁面とシャフト38の外壁面の少なくとも一方にはラジアル動圧溝RB1,RB2と潤滑剤48で構成されるラジアル流体動圧軸受部が形成されている。シャフト38の下端には当該シャフト38と一体的に回転するフランジ56が固定されている。そして、スリーブ34の下面の中央部分にはフランジ56を回転自在に収納するフランジ収納空間部が形成されている。このフランジ収納空間部は、一端がカウンタープレート58により封止され、フランジ収納空間部及びそれに続くシャフト38の収納空間の気密を維持できるようになっている。
フランジ56とスリーブ34の軸方向に対向する面の少なくとも一方にスラスト動圧溝SB1が形成され、フランジ56とカウンタープレート58の対向する面の少なくとも一方にはスラスト動圧溝SB2が形成され、潤滑剤48と協働してスラスト流体動圧軸受部を形成している。なお、スリーブ34の少なくともフランジ収納空間部を形成する面と、フランジ56の少なくとも表面はサイアロン・セラミックス等の線膨張係数が小さく耐摩耗性の高い材料で覆われていることが好ましい。同様に、スリーブ34の少なくとも内周面と、シャフト38の少なくとも外周面をサイアロン・セラミックス等で形成することが望ましい。この部分をサイアロン・セラミックスで形成することにより、図2で説明したように、温度変化による熱変形で隙間が狭小化されることを防止できると共に、耐摩耗性の向上により接触による摩耗粉の発生や破片の発生が抑制できる。
シャフト38の外周面とスリーブ34の開放部の対向面にはキャピラリーシール部TSが形成されると共に、キャピラリーシール部TSの形成空間は、ラジアル流体動圧軸受部を形成するラジアル空間及びフランジ収納空間部に連通している。ラジアル空間とフランジ収納空間部とキャピラリーシール部TSには潤滑剤48が充填され、軸受ユニット26を構成している。つまり、ハブ部材28は軸受ユニット26を介してベース部材12に対して回転自在に支持されている。
この構造においても潤滑剤48内に浮遊する異物を捕捉するために多孔質部材が潤滑剤48の流路内に配置されている。具体的には、フランジ56の外周近傍のスリーブ34にフランジ56を取り囲むように多孔質部材である多孔質フィルタ60が配置されている。多孔質フィルタ60の概略構造を図5の断面図を用いて説明する。多孔質フィルタ60は、図3の多孔質フィルタ52と同様に、粗密2段構造とすることが望ましい。
前述したようにフランジ56はシャフト38と一体的に回転するので、当該フランジ56の回転に伴い潤滑剤48は遠心力が作用する。ただし、図4の場合、フランジ56はフランジ収納空間部によって囲まれているので、潤滑剤48自体の大きな流動は生じない。しかし、潤滑剤48に含まれる金属粉などの異物は潤滑剤48よりも比重が大きく遠心力によりフランジ56の半径方向外向きに移動するための力を受ける。すなわち、フランジ56を取り囲む多孔質フィルタ60に向かって異物が移動する。そこで、多孔質フィルタ60は、リング形状として内側部60a(第1層部分)の多孔質の密度を相対的に粗とし、外側部60b(第2層部分)の多孔質の密度を相対的に密とする。前述したように、ディスク駆動装置の潤滑剤48に浮遊する異物の大きさは、概ね0.3μm未満の小異物、0.3〜1.0μmの中異物、1.0μmを越える大異物に分類することができる。したがって、多孔質フィルタ60の内側部60aは、1.0μmを越える大異物のみを捕捉するように多孔質の密度を相対的に粗となるように調整する。一方、外側部60bは、内側部60aを通過した0.3〜1.0μmの中異物を捕捉できるように多孔質の密度を内側部60aに対して相対的に密となるように調整する。なお、前述したように、設計段階で潤滑剤48の流路の狭小化が行われた流体動圧軸受部において、0.3μm未満の小異物が潤滑剤48中に存在しても、流路に引っかかる等の不具合を殆ど引き起こさないので多孔質フィルタ60を通過させる。このように多孔質フィルタ60を粗密構造にすることで、多孔質フィルタ60全体を使って異物を捕捉できるようになり、フィルタ全体の捕捉機能を有効に発揮させ、多孔質フィルタ60が目詰まりして機能低下に陥るまでの寿命を長くすることができる。なお、多孔質フィルタ60は、内側部60aと外側部60bが一体となった構造でもよいし、内側部60aと外側部60bを別体で構成してもよい。内側部60aと外側部60bを別体で構成することにより、流体動圧軸受部の特性に応じて多孔質フィルタ60の多孔質特性を容易に組み替えることが可能になり、潤滑剤48中に浮遊する異物の特性に応じた異物除去ができる。また、内側部60aと外側部60bは、密着させてもよいし、間に隙間を設けてもよく同様な効果を得ることができる。また、多孔質フィルタ60の多孔質構造は2層構造に限られず、3層以上の多層にしたり、孔径が連続変化するように構成することも可能であり、フィルタ寿命を延ばしつつ、良好な異物除去ができる。
図6は、図4のディスク駆動装置100のフランジ56の変形例を示す説明図であり、フランジの周辺部の拡大断面図である。図6において、フランジ62以外の構造は、図4と同じであるので、その説明は省略する。フランジ62は、当該フランジ62の表裏面に形成されるスラスト流体動圧軸受部との間で潤滑剤48が循環できるように表裏を貫通する循環路64を有している。そして、フランジ62を取り囲むようにリング状の多孔質部材である多孔質フィルタ66が配置されている。
ところで、ラジアル流体動圧軸受部では、潤滑剤48がキャピラリーシール部TS側からの漏れを防止するために、当該キャピラリーシール部TS側からスラスト流体動圧軸受部側に圧力が加わるようにしている。一方、スラスト流体動圧軸受部において、フランジ62の表裏で発生させる動圧が同じであれば、循環路64を介した潤滑剤48の流れは生じない。しかし、発生させる動圧がスラスト動圧溝SB1形成側の方がスラスト動圧溝SB2形成側より大きい場合、図6に矢印で示すように、循環路64を通って潤滑剤48がスラスト動圧溝SB1形成側からスラスト動圧溝SB2形成側に流れる。図6の構造では、この潤滑剤48の流動を利用して、潤滑剤48に含まれる異物を多孔質フィルタ66に捕捉させている。
図6に示すような潤滑剤48の流動がある場合に使用する多孔質フィルタ66の構造を図7に示す。多孔質フィルタ66も粗密2段構造にすることが望ましく、潤滑剤48の流入側部66a(第1層部分)の多孔質の密度を相対的に粗とし、流出側部66b(第2層部分)の多孔質の密度を相対的に密としている。具体的な粗密度合いは、前述した各多孔質フィルタと同様であり、流入側部66aで1.0μmを越える大異物のみを捕捉し、流出側部66bで0.3〜1.0μmの中異物を捕捉するように多孔質の密度を調整することが望ましい。その結果、多孔質フィルタ66の全体を使って異物が捕捉できるようになり、フィルタ全体の捕捉機能を有効に発揮させ、多孔質フィルタ66が目詰まりして機能低下に陥るまでの寿命を長くすることができる。
なお、多孔質フィルタ66も、流入側部66aと流出側部66bが一体となった構造でもよいし、流入側部66aと流出側部66bを別体で構成してもよい。流入側部66aと流出側部66bを別体で構成することにより、流体動圧軸受部の特性に応じて多孔質フィルタ66の多孔質特性を容易に組み替えることが可能になり、潤滑剤48中に浮遊する異物の特性に応じた異物除去ができる。なお、流入側部66aと流出側部66bとは、密着させてもよいし、間に隙間を設けてもよく、同様な効果を得ることができる。また、多孔質フィルタ66の多孔質構造は2層構造に限られず、3層以上の多層にしたり、孔の大きさが連続変化するように構成することも可能であり、フィルタ寿命を延ばしつつ、良好な異物除去ができる。なお、スラスト動圧溝SB2形成側で発生する動圧をスラスト動圧溝SB1側で発生する動圧より大きくすることにより図6とは逆方向に潤滑剤48が循環路64を流れるようにできる。この場合、多孔質フィルタ66の粗密構造も潤滑剤48の流れに対応させて逆になる。なお、循環路64の形成数は、スラスト動圧溝SB1形成側の動圧とスラスト動圧溝SB2形成側の動圧バランスや潤滑剤48の循環効率などを考慮して適宜実験等により決定することが望ましい。
図8は、前述したディスク駆動装置10、100とは異なる構造のディスク駆動装置200の構造を示す。図8に示すディスク駆動装置200は、シャフト38がベース部材12に固定され、スリーブ68がハブ部材70に固定されている、いわゆるシャフト固定タイプのディスク駆動装置である。なお、ディスク駆動装置200の駆動原理自体は、前述したディスク駆動装置10、100と同じであるため実質的に同じ構造、同じ機能を有する部材については同じ符号を付して、一部の部材についてその説明を省略する。
ディスク駆動装置200もまた、固定体部Sと、回転体部と、ラジアル動圧溝RB1,RB2と潤滑剤48で構成されるラジアル流体動圧軸受部及びスラスト動圧溝SB1,SB2で構成されるスラスト流体動圧軸受部を含む軸受ユニット26と、これらの流体動圧軸受部を介して固定体部Sに対して回転体部Rを回転駆動する駆動ユニット27とにより構成されている。
固定体部Sは、ベース部材12、ステータコア30、コイル36、シャフト38、フランジ72を含んで構成されている。回転体部Rは、ハブ部材70、マグネット40、スリーブ68、シールリング74a、74bを含んで構成される。軸受ユニット26は、シャフト38、スリーブ68、フランジ72、シールリング74a、74b、を含んで構成されている。駆動ユニット27は、ステータコア30とコイル36とマグネット40とを含んで構成されている。
この構造において、スリーブ68の内周面とシャフト38の外周面がラジアル空間部を形成し、対向面の少なくともいずれか一方にラジアル動圧溝RB1,RB2を形成して、潤滑剤48と共にラジアル流体動圧軸受部を構成している。また、シャフト38の一端側には、フランジ72が固定されている。ハブ部材70の内筒部70aには、当該内筒部70aの両端部にシールリング74a、74bが固定され、その間にフランジ72及びスリーブ68が収納されている。そして、シールリング74aと当該シールリング74aに対向するフランジ72とによりスラスト空間を形成している。また、フランジ72と当該フランジ72と対向するスリーブ68とにより別のスラスト空間を形成している。そして、シールリング74aと当該シールリング74aに対向するフランジ72の少なくとも一方には、例えばヘリングボーン状またはスパイラル状のスラスト動圧溝SB1が形成されている。また、フランジ72と当該フランジ72と対向するスリーブ68の少なくとも一方には、スラスト動圧溝SB2が形成されている。
シールリング74aとシャフト38との対向面には、キャピラリーシール部TSが形成されると共に、キャピラリーシール部TSを形成する空間は、ラジアル空間部に連通されている。ラジアル空間部とスラスト空間部とキャピラリーシールTSには潤滑剤48が充填されて、当該潤滑剤48とラジアル流体動圧軸受部及びスラスト流体動圧軸受部を含む軸受ユニット26を構成している。したがって、ハブ部材70はベース部材12に固定されたシャフト38を中心として軸受ユニット26を介してベース部材12に対して回転自在に支持されることになる。
図8に示すディスク駆動装置200の場合、スリーブ68の両端を軸方向に貫く循環路76a,76bが形成されている。この循環路76a、76bは潤滑剤48の連通路として機能する。そして、循環路76aの途中には図9に示すような円筒形状の多孔質部材としての多孔質フィルタ78が配置されている。この多孔質フィルタ78は循環する潤滑剤48中に浮遊する異物を捕捉する機能を有する。多孔質フィルタ78は、前述した多孔質フィルタ52,60,66と同様に多層構造を有していることが好ましい。図9は、図8の構造に利用できる多孔質フィルタ78の一例を示す断面図である。図9の多孔質フィルタ78の場合、多孔質の密度が密の部分を粗の部分で挟む構造である。つまり、多孔質フィルタ78は、中間部78a(第2層部分)の多孔質の密度を相対的に密とし、両側の端部78b(第1層部分)の多孔質の密度を相対的に粗としている。多孔質フィルタ78は0.3μm未満の小異物は殆ど通過可能とし、0.3〜1.0μmの中異物は多孔質の密度を密とした中間部78aで捕捉する。また、1.0μmを越える大異物は多孔質の密度を相対的に粗とした端部78bで捕捉するように多孔質の密度を調整して構成している。その結果、多孔質フィルタ78の全体を使って異物を捕捉できるようになり、フィルタ全体の捕捉機能を有効に発揮させ、多孔質フィルタ78が目詰まりして機能低下に陥るまでの寿命を長くすることができる。なお、多孔質フィルタ78の多孔質構造は中心側の多孔質の密度が密であり、端部側の多孔質の密度が粗であれば3種類以上の多孔質構造を用いてもよく、多層になるほど異物の目詰まり抑制機能が向上する。また、多孔質の孔の大きさが連続変化するように構成することも可能であり、フィルタ寿命を延ばしつつ、良好な異物除去ができる。また、図9の多孔質フィルタ78の場合、潤滑剤48がどちらの端部から流入する場合でも外側で大異物を捕捉し、中心部で中異物を捕捉する。したがって、潤滑剤48の流路内における圧力バランスが変化して流動方向が変化する場合でも、適切に異物の捕捉を行い目詰まりを遅らせることが可能となり、多孔質フィルタ78の延命に寄与できる。なお、ディスク駆動装置200に図3の2層の多孔質フィルタ52を利用することも可能であり、同様な異物除去能力を発揮する。同様に、図2のディスク駆動装置10に図9の多孔質フィルタ78を用いても良好な異物除去能力を発揮する。
なお、多孔質フィルタ78の両側の端部78bと中間部78aとは一体である構造に限定されず、別体、また間に隙間があっても同様の異物除去能力を発揮できる。また、この場合も、シャフト38の少なくとも外周面とスリーブ68の少なくとも内周面を線膨張係数が小さく耐摩耗性の高い例えばサイアロン・セラミックス等で構成することが望ましい。また、フランジ72の少なくとも表面とそれに対向する部材の少なくとも表面をサイアロン・セラミックス等で構成することが望ましい。この部分をサイアロン・セラミックスで形成することにより、温度変化による熱変形で隙間が狭小化されることを防止できると共に、耐摩耗性の向上により接触による摩耗粉の発生や破片の発生が抑制できる。
図8の例では、多孔質フィルタ78を循環路76aのみに配置する例を示しているが、循環路76b側にも配置してもよし、同様な循環路を複数設け多孔質フィルタ78を配置してもよい。なお、多孔質フィルタ78を複数配置することにより異物の捕捉能力は向上するが、その反面、潤滑剤48の流動効率の低下を招く場合がある。したがって、多孔質フィルタ78の配置数は、流体動圧軸受部の異物混入程度などの特性に応じて捕捉効率と流動効率のバランスがとれるように適宜実験等により決定することが望ましい。
本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
10,100,200 ディスク駆動装置、 20 記録ディスク、 26 軸受ユニット、 27 駆動ユニット、 28,70 ハブ部材、 34,68 スリーブ、 38 シャフト、 48 潤滑剤、 50 循環路、 52,60,78 多孔質フィルタ、 56,72 フランジ、 58 カウンタープレート、 62 フランジ、 SB1,SB2 スラスト動圧溝、 RB1,RB2 ラジアル動圧溝、 TS キャピラリーシール部。

Claims (7)

  1. ベース部材と、
    前記ベース部材に配置され当該ベース部材に対して記録ディスクを回転自在に支持する軸受ユニットと、前記軸受ユニットに支持される記録ディスクを回転駆動する駆動ユニットと、
    を含み、
    前記軸受ユニットは、
    回転中心となるシャフトと、
    前記シャフトを収納する収納部を有すると共に、当該シャフトを軸として相対的な回転を許容するスリーブと、
    前記スリーブの前記収納部の内壁面と前記シャフトの外壁面とで定義されるラジアル空間部と、
    前記ラジアル空間部を定義する前記スリーブの内壁面と前記シャフトの外壁面の少なくとも一方にラジアル動圧を発生させるラジアル動圧溝と、
    前記ラジアル空間部に充填される潤滑剤と、
    前記潤滑剤が充填される充填空間の少なくとも一部に配設されて前記潤滑剤に含まれる異物を捕捉可能な多孔質部材と、
    を備えることを特徴とするディスク駆動装置。
  2. 前記多孔質部材は、不織布で構成されることを特徴とする請求項1に記載のディスク駆動装置。
  3. 前記多孔質部材は多層構造のフィルタであり、前記潤滑剤に含まれる異物の移動方向に対応させて前記フィルタの粗密度を粗状態から密状態に変化させていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のディスク駆動装置。
  4. 前記多孔質部材は、少なくとも第1層と第2層を含み、前記第1層は0.5μm未満の大きさの異物を通過させ、1.0μm以上の大きさの異物を捕捉し、前記第2層は0.3μm以上の大きさの異物を捕捉することを特徴とする請求項3記載のディスク駆動装置。
  5. 前記ラジアル空間部の端部はキャピラリーシール部に連通し、当該キャピラリーシール部の開放端の外側には、前記開放端の少なくとも一部を覆うカバー部材が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のディスク駆動装置。
  6. 前記スリーブの少なくとも内周面と前記シャフトの少なくとも外周面は、サイアロン・セラミックスからなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のディスク駆動装置。
  7. 前記軸受ユニットは、
    前記シャフトと一体で回転するフランジと、
    前記スリーブに設けられ、前記フランジを回転自在に収納するフランジ収納空間部と、
    前記フランジの軸方向の端面と対向すると共に前記フランジ収納空間部を封止するカウンタープレートと、
    前記フランジと前記フランジ収納空間部のスラスト方向に対向する面と、前記フランジと前記カウンタープレートのスラスト方向に対向する面の少なくとも一方に形成されてスラスト動圧を発生させるスラスト動圧溝と、
    を備え、
    前記スリーブのスラスト収納空間部の壁面と前記フランジの少なくとも表面は、サイアロン・セラミックスからなることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のディスク駆動装置。
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