JP2010242215A - 成形時のリジングマーク性に優れたアルミニウム合金板 - Google Patents

成形時のリジングマーク性に優れたアルミニウム合金板 Download PDF

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Abstract

【課題】成形条件がより厳しくなった場合にでも、プレス成形時のリジングマークを防止できるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板を提供することを目的とする。
【解決手段】特定組成のAl−Mg−Si系アルミニウム合金板において、比較的広範囲な板幅方向の集合組織における、特にGoss方位とCube方位および回転Cube方位の3つを、板幅方向に亙る平均面積率にて抑制するとともに、この集合組織における各方位の各々の板幅方向に亙る偏差も抑制して、板幅方向に亙って比較的大きな板表面の凹凸の周期を有するリジングマークを抑制する。
【選択図】なし

Description

本発明は、成形時のリジングマーク性に優れたアルミニウム合金板(以下、アルミニウムを単にAlとも言う)に関し、パネルへのプレス成形加工時に発生する表面凸凹(リジングマーク、ローピングとも言う)を抑制できるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板に関する。本発明で言うアルミニウム合金板とは、圧延後に溶体化および焼入れ処理などの調質が施された板であって、プレス成形などによってパネルに成形加工される前の板のことを言う。
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されている。このため、特に、自動車の車体に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、成形性や焼付硬化性に優れた、より軽量なアルミニウム合金材の適用が増加しつつある。
この内、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどのパネル構造体の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内板) 等のパネルには、薄肉でかつ高強度アルミニウム合金板として、Al−Mg−Si系のAA乃至JIS 6000系 (以下、単に6000系とも言う) のアルミニウム合金板の使用が検討されている。
6000系アルミニウム合金板は、基本的には、Si、Mgを必須として含み、優れた時効硬化能を有しているため、プレス成形や曲げ加工時には低耐力化により成形性を確保するとともに、成形後のパネルの塗装焼付処理などの、比較的低温の人工時効( 硬化) 処理時の加熱により時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保できるBH性 (ベークハード性、人工時効硬化能、塗装焼付硬化性) がある。
また、6000系アルミニウム合金板は、Mg量などの合金量が多い他の5000系アルミニウム合金などに比して、合金元素量が比較的少ない。このため、これら6000系アルミニウム合金板のスクラップを、アルミニウム合金溶解材 (溶解原料) として再利用する際に、元の6000系アルミニウム合金鋳塊が得やすく、リサイクル性にも優れている。
一方、自動車のアウタパネルは、周知の通り、アルミニウム合金板に対し、プレス成形における張出成形時や曲げ成形などの成形加工が複合して行われて製作される。例えば、フードやドアなどの大型のアウタパネルでは、張出などのプレス成形によって、アウタパネルとしての成形品形状となされ、次いで、このアウタパネル周縁部のフラットヘムなどのヘム (ヘミング) 加工によって、インナパネルとの接合が行われ、パネル構造体とされる。
この際、6000系アルミニウム合金板を素材としたプレス成形後のパネルには、リジングマークなどの表面の肌荒れ不良が生じ易いという課題がある。リジングマークは、板のスジ状に並んだ集合組織に起因し、プレス成形などの変形時に、板表面の凹凸となる現象である。このため、素材であるアルミニウム合金板の結晶粒が肌荒れを生じない程度に微細であっても、プレス成形によって生じる点がやっかいである。
このリジングマークは、パネル構造体の大型化や形状の複雑化、あるいは薄肉化などによりプレス成形条件が厳しくなった場合に特に生じ易い。また、プレス成形直後には比較的目立たず、そのままパネル構造体として塗装工程に進んだ後に目立ちやすくなるという問題もある。
このリジングマークが生じた場合、特に表面が美麗であることが要求される、外板 (アウタ) 用などのパネル構造体では、外観不良となって使用できない問題となる。このようなリジングマークの問題に対し、従来から、鋳塊を500℃以上の温度で均質化熱処理後に冷却して、あるいは室温に冷却後再加熱して、350〜450℃の比較的低温で熱延を開始する、あるいは化合物を制御する、ことにより、過剰Si型6000系アルミニウム合金板のリジングマークを防止することが公知である (特許文献1、2 、3、10参照) 。
6000系アルミニウム合金板の集合組織(結晶方位)を制御してリジングマークを改善する方法も種々提案されている。例えば、{100}面の結晶方位成分に着目し、板表層部でのCube方位の集積度を2〜5、板表面部の結晶粒径を45μm以下に微細化することが提案されている (特許文献4参照) 。また、6000系アルミニウム合金板における、例えば、Cube方位、回転Cube方位、Goss方位、Brass方位、CR方位、RW方位、S方位、PP方位など、種々の方位の分布密度を同時に規定することも提案されている (特許文献5、9、10、11、12、13参照) 。
更に、隣接する結晶方位差を15°以下である結晶粒界の占める割合を20%以上とすることも提案されている (特許文献6参照) 。また、6000系アルミニウム合金板における耳率を4%以上、結晶粒径を45μm以下とすることも提案されている (特許文献7参照) 。また、Mgを含有するアルミニウム合金であって、合金表面における結晶粒の板面方位が(100)面から10゜以内の結晶粒が占める面積率と、(100)面から20゜以内の結晶粒が占める面積率とを特定の関係とすることも提案されている (特許文献8参照) 。
特許第2823797 号公報 特開平8 ー232052号公報 特開平7 ー228956号公報 特開平11ー189836号公報 特開平11ー236639号公報 特開2003ー171726号公報 特開2000ー96175 号公報 特開2005ー146310号公報 特開2004ー292899号公報 特開2005ー240113号公報 特開2008ー45192 号公報 特開2008ー223075号公報 特開2007ー200018号公報
前記従来技術は、前記特許文献4〜9のような板の集合組織乃至特性を制御することも含めて、リジングマーク抑制に一定の効果はある。しかし、より深いあるいはより複雑な3次元形状のパネルに成形されるなど、成形条件がより厳しくなった場合には、その効果が未だ不十分である。
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、成形条件がより厳しくなった場合にその発生が顕著になる、プレス成形時のリジングマークを再現性良く防止できるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板を提供しようとするものである。
この目的を達成するために、本発明の成形時のリジングマーク性に優れたアルミニウム合金板の要旨は、質量%で、Mg:0.1〜3.0%、Si:0.1〜2.5%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板において、この板の直角断面における板幅中央部の板幅方向10mmの長さに亙る領域の集合組織として、Cube方位の板幅方向の平均面積率が8%以下で、Cube方位の板幅方向の各面積率の内の最大値と最小値との差が8%以下であり、Goss方位の板幅方向の平均面積率が2%以下で、Goss方位の板幅方向の各面積率の内の最大値と最小値との差が3%以下であるとともに、更に、回転Cube方位の板幅方向の平均面積率が10%以下で、回転Cube方位の板幅方向の各面積率の内の最大値と最小値との差が8%以下であることとする。
本発明では、今までは目視での評価しかなかった、アルミニウム合金板のリジングマークにつき、定量化して評価した。このようなリジングマークの定量化は、より複雑な3次元形状のパネルに実際に成形されて、表面にリジングマークが発生した板(パネル)と発生しなかった板とを比較対照して、これらの板表面の凹凸をコントレーサー(3次元形状測定器)で形状測定することで得られる。
得られた板(パネル)表面の凹凸の上記3次元形状データを、解析ソフトにより、周波数解析した結果では、成形条件がより厳しくなった場合に、その発生が顕著になる、板(パネル)に発生したリジングマーク(表面凹凸)は、板幅方向の長さが約2〜3mmに亙る比較的大きな周期を有している。
言い換えると、成形条件がより厳しくなった場合に、その発生が顕著になるリジングマークは、板幅方向に亙る長さが約2〜3mmの比較的大きな周期を有している。なお、これらの事実は、本出願に先立つ、特願2008−11766号によって証明している。
これに対して、前記した従来の特許文献における板の集合組織制御技術では、リジングマークを分析、評価する際には、この板の任意の直角断面における最大でも板幅方向の長さが3mm程度の狭い領域(長さ)でしか評価できていない。特に、6000系アルミニウム合金板における、Cube方位、回転Cube方位、Goss方位、Brass方位、CR方位、RW方位、S方位、PP方位などの種々の方位の分布密度を同時に規定した、前記特許文献5、9、10、11、12、13もこれに該当する。
例えば、特許文献9では、実施例において、板幅方向3mmの領域において、この板幅間を500μm毎に各々区切った際の各板の直角断面における集合組織を計測している。しかし、これは、前記した大きな周期を有するリジングマークのせいぜい1周期分しか評価できていないことを意味する。即ち、前記した従来の特許文献における板の集合組織制御技術では、プレス成形条件がより厳しくなった場合に、その発生が顕著になる、板幅方向に亙る長さが約2〜3mmの比較的大きな周期を有しているリジングマークを、その表面凹凸のばらつきを含めて考慮できていない。これは、特許文献9だけでなく、他の前記特許文献にも共通する。そして、このことが、リジングマークの評価が目視での定性的な評価に留まっていたことと相まって、従来の板の集合組織制御によっても、リジングマーク抑制の効果が未だ不十分であった一因であると推考される。
なお、本発明でも、板の結晶方位の違いにより、隣接する結晶粒の導入歪み量(結晶性の変形量)が異なり、表面凹凸のばらつきであるリジングマークが生じやすくなる、リジングマーク発生のメカニズムや、このメカニズムに対する認識自体は、結晶方位を規定した前記特許文献と同じである。
しかし、本発明では、前記リジングマークの周期や変動の大きさを考慮して、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板における、リジングマークの周期以上の比較的広域な領域における集合組織の状態を規定して、成形性を向上させる点が、先ず大きく相違する。本発明では、この板の任意の直角断面における板厚全体と板幅方向10mmの長さとに亙る任意の領域における集合組織の状態を規定して、成形性を向上させる。
そして、本発明では、このような比較的広域な板幅方向の領域における集合組織のうちで、特に、Goss方位とCube方位および回転Cube方位の3つを制御対象として選択する。即ち、この板の直角断面での板幅方向の比較的広域な領域における、これら3つの各方位を各平均面積率によって規制して極力少なくするだけでなく、この板幅方向の比較的広域な領域に存在する、これら各方位の変動を極力少なくする。
これによって、本発明では、より深いあるいはより複雑な3次元形状のパネルに成形されるなど、成形条件がより厳しくなった場合に発生が顕著になる、前記比較的大きな周期を有するリジングマークの発生を防止できる。
以下に、本発明アルミニウム合金板の実施態様につき、集合組織、成分組成、製造方法の順に具体的に説明する。
(集合組織)
Goss方位とCube方位および回転Cube方位は、他の方位に比べてr値(ランクフォード値)の面内異方性が非常に大きく、Goss方位では、板をその幅方向に引っ張った場合に、板厚減少がほとんど生じない。このような特性を有するGoss方位が組織内に実質量存在すると、板をプレス成形した場合に、板の部位、特に板の幅方向の部位による伸び変形能力が異なり、かつ板の幅方向に亙る伸び変形能力が低下する。
一方、Cube方位は、一般的にも知られている様に、アルミの再結晶集合組織の主方位であり、Al−Mg−Si系合金においても主要な結晶方位の1つである。このCube方位と、このCube方位が回転した回転Cube方位とは、前記Goss方位の挙動とは相違し、圧延方向に対して45°方向に板を引っ張った場合に著しく板厚減少が生じる。
このように板厚減少挙動が全く(大きく)異なるGoss方位とCube方位および回転Cube方位とが、同時に3つとも集合組織内に多く存在すると、製品板をプレス成形した場合には、当然、板の部位、特に板の幅方向に亙って、板表面の凹凸発生状況が大きく異なってくる。
本発明者らの認識によれば、前記した板幅方向の比較的広域な領域における、これらGoss方位とCube方位および回転Cube方位の各方位の分布状態が、成形条件がより厳しくなった場合の、リジングマーク(板表面の大きな凹凸)発生の主要因である。このため、本発明では、このリジングマークを抑制するために、前記した板の比較的広域な領域における、これらGoss方位とCube方位および回転Cube方位の各方位の大きさを面積率で規制するだけでなく、前記比較的広域な領域に存在する、これら各方位の各々の偏差(変動)をも極力少なくする。
即ち、具体的には、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板において、この板の任意の直角断面における板幅方向10mmの長さに亙る領域の集合組織として、Cube方位の板幅方向の平均面積率が8%以下で、Cube方位の板幅方向の各面積率の内の最大値と最小値との差が8%以下であり、Goss方位の板幅方向の平均面積率が2%以下で、Goss方位の板幅方向の各面積率の内の最大値と最小値との差が3%以下であるとともに、更に、回転Cube方位の板幅方向の平均面積率が10%以下であるとともに、回転Cube方位の板幅方向の各面積率の内の最大値と最小値との差が8%以下であることとする。
前記した通り、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板に発生したリジングマーク(表面凹凸)は、板幅方向の長さが約2〜3mmに亙る比較的大きな周期を有している。このため、最低でも板幅10mm以上の長さに亙る比較的大きな(広い)測定範囲で、板の直角断面におけるGoss方位とCube方位および回転Cube方位の板幅方向の各面積率の前記平均値と前記変動を、前記した各上限値以下に抑制することが必要である。
これによって、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の板幅方向に亙って、リジングマークの要因となる集合組織におけるGoss方位とCube方位とが少なくなり、かつ、リジングマークの要因となる集合組織の変動も十分に小さくなる。この結果、リジングマークの主要因が排除されて、フードやドアなどの大型の自動車パネルの張出成形など、より深いあるいはより複雑な3次元形状のパネルへの成形条件がより厳しくなった場合でも、板の表面品質が極めて向上する。
前記した通り、成形条件がより厳しくなった場合に、その発生が顕著になるリジングマークは、板幅方向に亙る長さが約2〜3mmの比較的大きな周期を有している。板に、このようなリジングマークが発生している場合の板の直角断面における集合組織を解析すると、先ず、Goss方位とCube方位および回転Cube方位が発達しすぎており、平均面積率が本発明上限規定を超えて各々大きすぎる。
一方、前記比較的大きな周期を有しているリジングマークの側を解析すると、先ず、板表面の凹凸の板幅方向の変化が比較的大きく、また、このリジングマークの板幅方向の凹凸の長さ(変化)は、約2〜3mmに亙る比較的大きな周期を有している。そして、このリジングマークの板幅方向の凹凸の長さ(変化)に対応して、前記したGoss方位とCube方位の各面積率も、板の直角断面において、板幅方向に変化している。
これは、Brass方位、S方位、Cu方位などの他の方位の面積率の板幅方向の変化が比較的小さいことに比べて対照的である。言い換えると、これらBrass方位、S方位、Cu方位などの、Goss方位とCube方位および回転Cube方位以外の他の結晶方位は、前記した約2〜3mmに亙る比較的大きな周期を有するリジングマークの発生にあまり影響しない。したがって、Goss方位とCube方位および回転Cube方位以外の結晶方位は、前記比較的大きな周期を有しているリジングマークに対しては規制する必要がなく、前記Goss方位とCube方位および回転Cube方位との板の直角断面における板幅方向の測定領域においても、実質量存在して良い。
なお、本発明における、集合組織の測定範囲である、板の直角断面における板幅方向の長さ10mmの値は、リジングマークの板幅方向の凹凸の長さ(変化)の約2〜3mmに亙る比較的大きな周期に対応させ、リジングマークを確実に抑制できるための、最小必要な測定条件として規定している。
(アルミニウム合金板の集合組織測定)
集合組織のでき方は結晶系が同じでも加工法によって異なり、圧延材の場合は圧延面と圧延方向で表わされる。即ち、下記に示す様に、圧延面は{○○○}で表現され、圧延方向は<△△△>で表現される。なお、○や△は整数を示している。
かかる表現方法に基づき、各方位は下記のように表される。なお、これら各方位の表現については、長島晋一編著「集合組織」(丸善株式会社刊)や軽金属学会「軽金属」解説Vol.43(1993)P.285〜293などに記載されている。
Cube方位:{001}<100>
回転Cube方位:{001}<310>〜{001}<110>
Goss方位:{011}<100>
Brass方位:{011}<211>
S方位:{123}<634>
Cu方位:{112}<111>
(若しくは、D方位:{4411}<11118>)
SB方位:{681}<112>
(結晶方位成分存在率の測定)
これら結晶粒の各結晶方位成分の面積率(存在率)は、前記した板断面を、走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)による、後方散乱電子回折像EBSP(Electron Backscatter Diffraction Pattern)を用いた結晶方位解析方法(SEM/EBSP法)により測定する。
上記EBSPを用いた結晶方位解析方法は、SEMの鏡筒内にセットした試料表面に電子線を照射してスクリーン上にEBSPを投影する。これを高感度カメラで撮影して、コンピュータに画像として取り込む。コンピュータでは、この画像を解析して、既知の結晶系を用いたシミュレーションによるパターンとの比較によって、結晶の方位が決定される。
上記EBSPを用いた結晶方位解析方法は、結晶粒毎の測定ではなく、指定した試料領域を任意の一定間隔で走査して測定し、かつ、上記プロセスが全測定点に対して自動的に行なわれるので、測定終了時には数万〜数十万点の結晶方位データが得られる。このため、観察視野が広く、多数の結晶粒に対する、平均結晶粒径、平均結晶粒径の標準偏差、あるいは方位解析の情報を、数時間以内で得られる利点がある。したがって、本発明のような板幅方向の前記した広域の集合組織を規定あるいは測定する場合には最適である。
これに対して、集合組織の測定のために汎用されるX線回折(X線回折強度など)では、上記EBSPを用いた結晶方位解析方法に比して、結晶粒毎の比較的ミクロな領域の組織(集合組織)を測定していることとなる。このため、リジングマークに影響する、板幅方向の前記した広域の組織(集合組織)を、上記EBSPを用いた結晶方位解析方法ほどには正確に、かつ効率的には測定することができない。
上記EBSPを用いた結晶方位解析方法は、組織観察用の試験片を、前記した各板断面から採取して、機械研磨およびバフ研磨を行った後、電解研磨して表面を調整する。このように得られた試験片について、SEM装置として、例えば日本電子社製SEM(JEOLJSM5410)、例えばTSL社製のEBSP測定・解析システム:OIM(Orientation Imaging Macrograph、解析ソフト名「OIMAnalysis」)を用いて、各結晶粒が、対象とする方位(理想方位から15°以内)か否かを判定し、測定視野における各方位毎の面積率を求める。試験片の測定領域は、前記板の直角断面における板幅中央部(板幅方向の中央部)の板幅方向の長さが10mmに亘る領域を、板厚全体に亙って測定し、各方位の平均面積率、各面積率の内の最大値と最小値との差を各々平均化する。測定ステップ間隔は例えば10μm以下とする。各面積率の最大値と最小値の差の評価の仕方としては、板幅方向の10mmにわたる領域を、板幅方向にある長さ毎(例えば250μm毎)に区切り、その区切った領域内毎の各方位の面積率を計算し、得られた各方位の面積率の集団の中で最大値と最小値を各方位毎に抽出し、各方位毎にその差をとる。板幅中央部の板幅方向の長さが10mmに亘る領域は、板幅中央部を挟むあるいは含む、板幅方向の長さが10mmの領域であって、板幅中央部を挟むあるいは含んでさえいれば、この板幅中央部が必ずしも領域の中央部になくても(板幅中央部を挟んで左右対称でなくても)良い。
このような各方位毎の平均面積率、各方位毎の面積率の内の最大値と最小値の差の測定を、試験片の圧延方向に適当な距離を設けた数箇所(例えば3箇所)で行い平均化する。
この際、測定される材料の測定領域について、試料表面に入射させた電子線の反射電子から、菊地パターンを得る。この際、電子線を試料表面に2次元で走査させ、所定ピッチ毎に結晶方位を測定すれば、試料表面の方位分布を測定できる。次に、得られた上記菊池パターンを解析して、電子線入射位置の結晶方位を知る。即ち、得られた菊地パターンを既知の結晶構造のデータと比較し、その測定点での結晶方位を求める。同様にして、その測定点に隣接する測定点の結晶方位を求め、これら互いに隣接する結晶の方位差が±5°以内のものは同一の結晶粒に属するものとする(見なす)。また、両方の結晶の方位差が±5°を超える場合にはその間を粒界とする。このようにして、試料表面の結晶粒の分布を求める。
(化学成分組成)
本発明6000系アルミニウム合金板の化学成分組成について説明する。本発明が対象とする自動車などの輸送機の車体用の6000系アルミニウム合金板は、前記した自動車の外板パネル用の板などとして、優れた成形性やBH性、ヘム加工性を含む曲げ加工性、強度、溶接性、耐食性などの諸特性が要求される。
このような要求を満足するために、アルミニウム合金板の組成は、質量%で、Mg:0.1〜3.0%、Si:0.1〜2.5%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとする。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。
本発明6000系アルミニウム合金板は、リジングマークが生じやすいが、BH性がより優れた、SiとMgとの質量比Si/ Mgが1 以上であるような過剰Si型の6000系アルミニウム合金板に適用されて好ましい。6000系アルミニウム合金板は、プレス成形や曲げ加工時には低耐力化により成形性を確保するとともに、成形後のパネルの塗装焼付処理などの、比較的低温の人工時効処理時の加熱により時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保できる優れた時効硬化能(BH性)を有している。この中でも、過剰Si型の6000系アルミニウム合金板は、質量比Si/ Mgが1未満の6000系アルミニウム合金板に比して、このBH性がより優れている。
Mg、Si以外のその他の元素は、基本的には不純物であり、AA乃至JIS 規格などに沿った各不純物レベルの含有量 (許容量) とする。しかし、リサイクルの観点から、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、6000系合金やその他のアルミニウム合金スクラップ材、低純度Al地金などを溶解原料として多量に使用した場合には、下記その他の元素が不純物として混入される可能性がある。そして、これらの不純物元素を例えば検出限界以下に低減すること自体コストアップとなり、ある程度の含有の許容が必要となる。また、実質量含有しても本発明目的や効果を阻害しない含有範囲があり、この範囲では、特に、Fe、Mn、Cu、Tiなど、元素によって強度向上や結晶粒微細化効果もある。
したがって、これらの不純物元素を各々以下に規定する量以下の範囲での含有を許容する。具体的には、前記アルミニウム合金板が、質量%で、更に、Fe:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:0.3%以下、Zr:0.3%以下、V:0.3%以下、Ti:0.1%以下、Cu:1.0%以下、Ag:0.2%以下、Zn:1.0%以下を含むことを許容する。ここで、これらの各元素の規定は全て0%は含まないこととする。
上記6000系アルミニウム合金における、各元素の好ましい含有範囲と意義、あるいは許容量について以下に説明する。
Si:0.1〜2.5%
SiはMgとともに、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記低温での人工時効処理時に、強度向上に寄与する時効析出物を形成して、時効硬化能を発揮し、自動車のアウタパネルとして必要な、例えば180MPa以上の必要強度(耐力)を得るための必須の元素である。したがって、本発明過剰Si型6000系アルミニウム合金板にあって、プレス成形性、ヘム加工などの曲げ加工性の諸特性を兼備させるための最重要元素である。
また、パネルへの成形後の低温塗装焼き付け処理後(2% ストレッチ付与後170 ℃×20分の低温時効処理時) の耐力を180MPa以上という、優れた低温時効硬化能を発揮させるためにも、Si/ Mgを質量比で1.0以上とし、SiをMgに対し過剰に含有させた過剰Si型6000系アルミニウム合金組成とすることが好ましい。
Si量が0.1%未満では、前記時効硬化能、更には、各用途に要求される、プレス成形性、曲げ加工性などの諸特性を兼備することができない。さらに、均熱処理や熱延で再結晶が促進されて、Goss方位やCube方位が発達しやすくなり、本発明の範囲にGoss方位とCube方位とを抑制、制御することができなくなる。一方、Siが2.5%を越えて含有されると、曲げ加工性やリジングマーク性を含めたプレス成形性が著しく阻害される。更に、溶接性も著しく阻害される。したがって、Siは0.1〜2.5%の範囲、好ましくは0.6〜1.2%の範囲とする。
Mg:0.1〜3.0%
Mgは、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記人工時効処理時に、Siとともに強度向上に寄与する時効析出物を形成して、時効硬化能を発揮し、パネルとして、例えば180MPa以上の必要耐力を得るための必須の元素である。
Mgの0.1%未満の含有では、絶対量が不足するため、人工時効処理時に前記化合物相を形成できず、時効硬化能を発揮できない。このためパネルとして必要な180MPa以上の必要耐力が得られない。さらに、均熱処理や熱延で再結晶が促進されて、Goss方位やCube方位が発達しやすくなり、本発明の範囲にGoss方位とCube方位とを抑制、制御することができなくなる。
一方、Mgが3.0%を越えて含有されると、却って、リジングマーク性を含めたプレス成形性や曲げ加工性等の成形性が著しく阻害される。したがって、Mgの含有量は0.1〜3.0%%の範囲で、好ましくは、Si/ Mgが質量比で1.0以上となるような量とする。また、Si含有量を前記0.6〜1.2%の範囲とする場合には、これに対応して、Mg含有量も0.2〜0.7%の範囲とすることが好ましい。
(製造方法)
次ぎに、本発明アルミニウム合金板の製造方法について以下に説明する。本発明アルミニウム合金板は、製造工程自体は常法あるいは公知の方法であり、上記6000系成分組成のアルミニウム合金鋳塊を鋳造後に均質化熱処理し、熱間圧延、冷間圧延が施されて所定の板厚とされ、更に溶体化焼入れなどの調質処理が施されて製造される。但し、この中で、リジングマーク性向上のために、本発明の範囲に集合組織(Goss方位とCube方位および回転Cube方位)を制御するためには、下記均質化熱処理条件やその後の熱延条件、焼鈍条件などを適切に制御する必要がある。
この点、特に本発明では、下記の2種類の工程(A、B工程)において本発明アルミニウム合金板を得ることができる。
A工程:2回均熱(1回目均熱後平均冷却速度40℃/以上)、熱延、(荒鈍)、冷延、中間焼鈍、冷延、溶体化処理
このA工程のポイントは、熱延工程でできるだけ加工組織を発達させ(熱延仕上げの巻取温度の低減)、中間焼鈍で再結晶させることで、Cube方位、Goss方位、回転Cube方位の発達を抑制する。強度との兼ね合いで中間焼鈍は急速加熱急速冷却工程とする。A工程で中間焼鈍工程を省略する場合は、代わりに熱延の巻取温度を上げてそこで再結晶促進させることでもリジング抑制に付加的に寄与するが、中間焼鈍工程よりは劣る。
B工程:2回均熱(1回目均熱後2段階冷却)、熱延、(荒鈍)、冷延、溶体化処理
このB工程のポイントは、均熱時の微細析出を抑制することで、熱延(特に粗圧延工程)での繰返し微細再結晶を促進することで、Cube方位、Goss方位、回転Cube方位の発達を抑制する(A工程では、微細析出物が多数存在するため再結晶抑制され、粗圧延で繰返し再結晶効果が得られない)。その結果、中間焼鈍工程を省略しても、A工程の中間焼鈍工程がある工程と同様なリジング抑制効果が得られる。中間焼鈍工程を省略できるために、特に熱延仕上げの巻取温度を下げる必要がなく、むしろ仕上げ巻取り温度を上げて再結晶を促進させることでリジング抑制効果がさらに得られる。B工程でも、さらに中間焼鈍工程を付与することで、良好なリジング特性を得ることは可能である。
(溶解、鋳造)
先ず、溶解、鋳造工程では、前記A工程、B工程いずれも、上記6000系成分組成範囲内に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
(均質化熱処理)
次いで、前記鋳造されたアルミニウム合金鋳塊に均質化熱処理(均熱処理)を施す。前記A工程、B工程いずれも、均質化熱処理の温度自体は、常法通り、500℃以上で融点未満の均質化温度が適宜選択される。これによって、合金元素や粗大な化合物を十分に固溶させる。また、組織の均質化を図り、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくす。この均熱温度が低いと、合金元素や粗大な化合物を十分に固溶させることができず、また、破壊の起点として作用する結晶粒内の偏析を十分に無くすことができないため、自動車パネルなどとして要求される、成形性や曲げ加工性、BH性、強度などの諸特性を満足させることができない。
この均熱処理は、通常の1回だけの均熱ではなく、均熱処理を2回行う2回均熱にて行うことが好ましい。即ち、前記1回目の均質化熱処理後に、アルミニウム合金鋳塊を、一旦、室温あるいは室温近くまで冷却してから、更に、1回目の均熱処理よりは低温の均熱温度の再加熱する2回均熱を行う。そして、この2回目の均熱後に、熱間圧延開始温度まで冷却あるいは加熱して、熱間圧延を行う。この2回均熱により、過剰Si型の6000系アルミニウム合金板であっても、熱延中の粗大な再結晶粒 (熱間ファイバー) の生成を抑制して、再結晶の際の組織の均質化を図り、成形時のリジングマーク性を向上させることができる。
このうち、特に、前記A工程に関しては、前記1回目の均質化熱処理後の冷却は、均熱炉内または炉外でファンにより鋳塊を強制空冷して、鋳塊の大きさによらず、均質化熱処理後の平均冷却速度を40℃/hr以上とすることが好ましい。このような冷却速度にすることによって、鋳塊中のMgSiなどの化合物を適当なサイズ、分布に制御でき、過剰Si型の6000アルミニウム合金板であっても、熱延中の粗大な再結晶粒 (熱間ファイバー) の生成を抑制し、再結晶の際の組織の均質化を図り、リジングマーク性を向上させることができる。均質化熱処理後の冷却速度が遅いと、MgSiなどの析出物が粗大化して、Goss方位やCube方位および回転Cube方位の形成サイトとなりやすい。このため、2回均熱を行った場合でも、製品板の集合組織においてGoss方位やCube方位および回転Cube方位が発達しやすくなる。また、強度、ベークハード性能、曲げ加工性なども低下する可能性がある。
一方、前記B工程に関しては、前記1回目の均質化熱処理後の鋳塊の冷却工程を冷却速度を2段階に変えて行う。それによって、板幅方向の比較的広域な領域に存在するGoss方位、Cube方位、回転Cube方位の変動を極力少なくした、本発明の集合組織が得やすくなる。具体的には、前記均質化熱処理温度から400〜500℃の温度までの冷却は1〜20℃/hrの、比較的遅い平均冷却速度の徐冷とするとともに、前記400〜500℃の温度からの冷却は、30〜60℃/hrの比較的速い平均冷却速度とした、2段階の冷却とする。この場合、特に、前段の徐冷によって、冷却過程で鋳塊中に析出し、再結晶の阻害要因となる、微細な析出物が抑制されて、熱延工程での再結晶が促進される。特に、粗圧延工程において、繰返し再結晶効果によって組織が微細再結晶化する。この結果、製造途中での加工集合組織における、前記板幅方向の比較的広域な領域に存在するGoss方位、Cube方位、回転Cube方位の変動が少なくなり、最終的な製品冷延板としての、これらの方位変動も少なくなる。言い換えると、上工程でこれらの方位変動が少なくなる結果、下工程(最終的な製品冷延板)に持ち越されるこれらの方位変動も少なくなる。但し、前記1回目の均質化熱処理後の鋳塊の冷却を、室温まで前記徐冷でずっと行うと、析出物が粗大化しすぎて、却って、強度や成形性、曲げ加工性などの特性を低下させる。また、冷却に多大な時間がかかるため生産性も低下し、量産工程としては好ましくない。因みに、前記前段の徐冷は炉内においての炉冷、前記後段の比較的速い冷却は炉外へ出しての放置などの操作で制御する。
以上の条件での2回均熱処理により、過剰Si型の6000系アルミニウム合金板であっても、熱延中の粗大な再結晶粒 (熱間ファイバー) の生成を抑制して、再結晶の際の組織の均質化を図り、成形時のリジングマーク性を向上させることができる。また、合金元素を十分に固溶させるので、自動車パネルなどとして要求される、成形性や曲げ加工性、BH性、強度などの諸特性も満足させることができる。
(熱間圧延)
熱間圧延は、前記A工程、B工程いずれも、圧延する板厚に応じて、鋳塊 (スラブ) の粗圧延工程と、粗圧延後の板厚が約40mm以下の板を約4mm以下の板厚まで圧延する仕上げ圧延工程とから構成される。これら粗圧延工程や仕上げ圧延工程では、リバース式あるいはタンデム式などの圧延機が適宜用いられ、各々複数のパスからなる圧延が施される。
ここで、前記A工程、B工程いずれも、製品板の集合組織において、Goss方位やCube方位および回転Cube方位の集合組織を発達させないためには、熱延圧下率(加工率)は通常で良いが、熱延終了後に荒鈍を行う工程の場合は、低温で熱延し、熱延後の荒鈍(焼鈍)時の均一微細な再結晶のための歪みを蓄積させることが好ましい。このため、熱間圧延開始温度は300〜400℃として、熱間圧延の終了温度も280℃以下の比較的低温とすることが好ましい。
熱間圧延開始温度が400℃を超えた場合、再結晶が生じて熱間圧延時に粗大な再結晶粒が生成し、リジングマークの原因となる、Goss方位とCube方位および回転Cube方位の集合組織が同一方位粒群を形成しやすくなる。また、熱間圧延開始温度が300℃未満では、熱間圧延自体が困難となる。更に、熱間圧延の終了温度が280℃を超えた場合、特に前記過剰Si型の6000系アルミニウム合金板が再結晶しやすくなり、熱延後の荒鈍(焼鈍)時の均一微細な再結晶化が阻害される。
以上のように、本発明では、均質化熱処理後の鋳塊を冷却して、より低温で熱間圧延を開始するとともに、荒鈍を行う工程の場合は、再結晶温度以下のより低温で熱間圧延を終了させ、熱間圧延板を再結晶しない加工組織主体の組織とする。このため、熱間圧延時に、リジングマークの原因となる、粗大な再結晶粒が生成するのを抑制できる。
(熱延板の荒鈍)
この熱延板の冷間圧延前の荒鈍(焼鈍)を行わない場合には、前記A工程、B工程いずれも、板製造の効率化や製造コストの低減が図れる。しかし、同時に、上記低温熱延条件によっても熱延時に生成してしまった粗大析出物の再固溶ができない。このため、熱延板中にGoss方位とCube方位および回転Cube方位の形成サイトとなる粗大析出物が残存して、本発明の範囲に製品板の集合組織(Goss方位とCube方位および回転Cube方位)を制御できない可能性が高くなる。前記粗大析出物の再固溶のためには、荒鈍温度を350℃以上、融点以下までの温度範囲で行う。
但し、この荒鈍は、急速加熱、高温短時間保持で行う必要があり、バッチ式ではなく、連続式の焼鈍炉で行う必要がある。これは、後述する溶体化処理でも共通するが、バッチ式焼鈍炉を用いる、あるいは連続式の焼鈍炉を用いた場合でも、粗大析出物の再固溶の熱処理温度への昇温速度や、この熱処理温度からの冷却速度が遅いと、その間に、Mg−Si系化合物や単体Siが粗大に析出して熱処理後まで残存する。これにより、Goss方位やCube方位および回転Cube方位が発達しやすくなるからである。これは、この熱処理温度での高温保持時間が長すぎる場合でも同様である。このため、荒鈍への平均昇温速度を100℃/分以上とすることが好ましい。また、荒鈍温度での保持時間は、連続式焼鈍炉の0〜数分レベルの、短いほど好ましい。更に、荒鈍後の冷却処理は、ファンなどの空冷、ミスト、スプレー、浸漬等の水冷手段や条件を各々選択して用い、平均冷却速度を10℃/秒以上の急冷とすることが好ましい。
ここで、前記A工程、B工程いずれも、この荒鈍を省略して冷間圧延しても良い。但し、A工程の場合は、後述する冷間圧延の途中での冷延板の中間焼鈍は1回以上必須に行う。B工程の場合は、均熱工程での微細析出抑制による熱延時の繰返し再結晶促進効果により、冷間圧延の途中での冷延板の中間焼鈍は必要ではない。また、荒鈍を省略する場合には、A工程、B工程いずれも、熱延終了時の再結晶を促進するために、終了温度を300℃を超えて高温にすると良いが(望ましくは340℃以上)、熱延終了温度が280℃以下の低温でかつ荒鈍を行う条件と比較すると、リジングマークの原因となる粗大な再結晶粒の生成抑制効果が小さくなり、リジングマーク改善効果が低下する。
(冷間圧延)
前記A工程、B工程いずれも、冷間圧延では、上記熱延板を圧延して、所望の最終製品板厚の冷延板(コイルも含む) に製作する。
(中間焼鈍)
但し、前記A工程では、冷間圧延の途中で、冷延板の中間焼鈍を1回以上必須に行う。この中間焼鈍を行わない場合には、板製造の効率化や製造コストの低減が図れる。しかし、同時に、冷間圧延中でのGoss方位とCube方位および回転Cube方位形成や発達、中でも特に回転Cube方位の形成や発達を、焼鈍により一端キャンセルして抑制することができない。このため、通常の冷延加工率では、冷間圧延中にGoss方位とCube方位および特に回転Cube方位が発達して、本発明の範囲に製品板の集合組織を制御できない可能性が高くなる。
このため、冷間圧延の途中で、中間焼鈍を350〜570℃の温度範囲で1回以上行う。中間焼鈍温度が350℃未満では冷間圧延中で形成や発達したGoss方位とCube方位および回転Cube方位を一端キャンセルして抑制する効果が薄い。また、中間焼鈍温度が570℃を超えると、バーニングが起こりやすくなって成形性が劣化してしまう。
但し、この中間焼鈍も、前記した荒鈍と同様の条件にて、また前記した荒鈍と同様の理由にて、急速加熱、高温短時間保持で行う必要があり、バッチ式ではなく、連続式の焼鈍炉で行う必要がある。なお、前記B工程では、前記した通り、冷間圧延の途中での冷延板の中間焼鈍は必要ない。
(溶体化および焼入れ処理)
前記A工程、B工程いずれも、最終の溶体化および焼入れ処理において、製品板のリジングマークを抑制し、Goss方位やCube方位を抑制するためには、最終の溶体化処理の平均昇温速度を100℃/分以上とすることが好ましい。溶体化処理の溶体化温度は、板のプレス成形後の塗装焼き付け硬化処理などの人工時効処理により強度向上に寄与する時効析出物を十分粒内に析出させるために、好ましくは500℃以上、融点以下までの温度範囲で行う。
また、溶体化処理温度からの焼入れ処理では、冷却速度が遅いと、粒界上にSi、Mg2 Siなどが析出しやすくなり、プレス成形や曲げ加工時の割れの起点となり易く、これら成形性が低下する。この冷却速度を確保するために、焼入れ処理は、ファンなどの空冷、ミスト、スプレー、浸漬等の水冷手段や条件を各々選択して用い、平均冷却速度を10℃/秒以上の急冷とすることが好ましい。
本発明では、成形パネルの塗装焼き付け工程などの人工時効硬化処理での時効硬化性をより高めるため、焼入れ処理後に、強度向上に寄与する時効析出物の析出を促進するために、予備時効処理をしても良い。この予備時効処理は、60〜150℃、好ましくは70〜120℃の温度範囲に、1〜24時間の必要時間保持することが好ましい。この予備時効処理として、上記焼入れ処理の冷却終了温度を60〜150℃と高くした後に、直ちに再加熱乃至そのまま保持して行う。あるいは、溶体化処理後常温までの焼入れ処理の後に、5分以内に、直ちに60〜150℃に再加熱して行う。
更に、室温時効抑制のために、前記予備時効処理後に、時間的な遅滞無く、比較的低温での熱処理 (人工時効処理) を行っても良い。前記時間的な遅滞があった場合、予備時効処理後でも、時間の経過とともに室温時効 (自然時効) が生じ、この室温時効が生じた後では、前記比較的低温での熱処理による効果が発揮しにくくなる。
また、連続溶体化焼入れ処理の場合には、前記予備時効の温度範囲で焼入れ処理を終了し、コイルに巻き取るなどして行う。なお、コイルに巻き取る前に再加熱しても、巻き取り後に保温しても良い。また、常温までの焼入れ処理の後に、前記温度範囲に再加熱して高温で巻き取るなどしてもよい。
この他、用途や必要特性に応じて、更に高温の時効処理や安定化処理を行い、より高強度化などを図ることなども勿論可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
次に、本発明の実施例を説明する。先ず、前記A工程に関しては、実施例1として、表1に示す組成の6000系アルミニウム合金板を、表2に示す各製造条件で、均熱処理および熱延し、更に、荒鈍、中間処理をはさんだ冷間圧延を行い、溶体化および焼入れ処理して、製造した。なお、表1中の各元素の含有量の表示において、「−」の表示は、検出限界以下であることを示す。
アルミニウム合金板のより具体的な製造条件は以下の通りである。表1に示す1〜12の各組成の100mm厚さ、400mm幅、1m長さの鋳塊を、DC鋳造法により共通して溶製した。
続く、鋳塊の均熱処理の際に、2回の均熱処理を行う場合には、各例とも共通して、1回目の均熱条件として、平均昇温速度40℃/hr、到達温度560℃、保持時間6hr、平均冷却速度60℃/hrで室温まで一旦冷却する均熱処理を施した。その後、表2に示す処理温度(℃)、保持時間(hr)に再加熱して保持する2回目の均熱条件を行った。
この均熱処理後直ちに、各例とも共通して、表2に示す熱延開始温度(℃)に冷却或いは再加熱して、この温度で熱延を開始し、厚さ5.0mmまで熱延を施した。但し、発明例9から11、比較例17は、前記2回目の均熱条件を行わず、前記1回目の均熱処理の後で、表2に示す熱延開始温度(℃)まで冷却あるいはそのままで熱延を開始した(1回均熱)。この際の各例の熱延(仕上げ圧延)の終了温度も表2に示す。これらの熱延条件は、各例とも共通して、前記した好ましい温度条件で行った。
次いで、これらの熱延板を、冷間圧延前に、石炉或いは大気炉で、表2に示す平均昇温速度(℃/分)、処理温度(℃)、平均冷却速度(℃/秒)で、かつ保持時間は各例とも共通して4〜5秒とした荒鈍を連続熱処理炉にて選択的に行った。そして、荒鈍温度に保持した後の冷却は、水冷或いは水のミストスプレイにより、直ちに行い、前記冷却速度で室温まで冷却した。なお、比較のために、比較例ではこの荒鈍を省略した場合も実施した。
これらの熱延板を、各例とも共通して、冷延率80%で冷間圧延を行い、厚さ1.0mmの冷延板を得た。冷間圧延はパス数4にて行い、各例とも共通して、2パス後に前記荒鈍と同じ連続熱処理炉で、表2に示す平均昇温速度(℃/分)、処理温度(℃)、平均冷却速度(℃/秒)で、かつ保持時間は各例とも共通して1〜3秒とした、1回の中間焼鈍を行った。中間焼鈍温度に保持後の冷却は、水冷或いは水のミストスプレイにより、直ちに行い、前記冷却速度で室温まで冷却した。なお比較例では、比較のために、この中間焼鈍を省略した例も実施した。
冷延後の冷延板を、前記中間焼鈍と同じ熱処理炉で、表2に示す平均昇温速度(℃/分)、処理温度(℃)、平均冷却速度(℃/秒)で、かつ保持時間は各例とも共通して1〜3秒とした、溶体化処理を行った。溶体化処理温度に保持後の冷却は、水冷或いは水のミストスプレイにより、直ちに行い、前記平均冷却速度で室温まで冷却、焼入れした。また、この焼入れ後5分以内に(直ちに)100℃の温度で2時間保持する予備時効(再加熱)処理を行った。この予備時効処理後は0.6℃/hrで徐冷し、T4調質材を得た。
これら調質処理後の各最終製品板から供試板 (ブランク) を切り出し、前記調質処理後15日の室温時効(室温放置)後の、各供試板の組織や特性を測定、評価した。これらの結果を表3 に示す。
(供試板組織)
前記調質処理後15日間の室温時効後の供試板の集合組織を、前記SEM−EBSPを用いて、測定・解析した。この供試板を自動車車体パネルの厳しいプレス成形を模擬して、板幅方向に(圧延と直角方向に)15%のストレッチ(引張変形)を加え、この予ひずみを付与した後の板の直角断面(板の圧延方向に対する直角方向で、かつ板幅方向の板断面)をEBSP測定面とした。そして、このEBSP測定面は、この直角断面における、板幅中央部を真ん中に挟む板幅方向(板の左右方向)の長さが10mmに亙る板幅間を板幅方向に250μm毎に各々区切った領域とした。即ち、これら区切られた箇所の各板断面における、Goss方位とCube方位および回転Cube方位の各面積率の平均値を総合して平均化した面積率を各方位の平均面積率とした。また、これらGoss方位とCube方位および回転Cube方位の各面積率の内の、最大値と最小値との差を測定して、各方位成分毎の変動の指標とした。測定は圧延方向に適当な間隔をあけた3箇所にて行い、前記各面積率はその平均とした。
(供試板特性)
更に、前記供試板の特性として、リジングマーク性、0.2%耐力(As耐力: MPa)、伸び(%)を各々測定した。
リジングマーク性:
リジングマーク性は、前記予ひずみを付与した後の板に、自動車車体パネルの塗装を模擬して、リン酸亜鉛処理を行った後に、カチオン電着塗装を行い、更に塗装焼付硬化処理を模擬した焼鈍処理を実施した後の、板表面の目視観察にて、評価を行った。具体的には、前記予ひずみを付与した後の板を、リン酸チタンのコロイド分散液処理、フッ素を低濃度(50ppm)含むリン酸亜鉛浴に浸漬するリン酸亜鉛処理を順に行い、リン酸亜鉛皮膜を板表面に形成し、更にカチオン電着塗装を行った後に、170℃×20分の焼鈍を実施した。
前記予ひずみを付与した後の板の前記塗装表面に、リジングマークが発生しておらず、プレス成形性が優れると評価されるものを◎と評価した。また、リジングマークが発生しているものの、比較的軽度であるものを、成形条件によってはプレス成形可能として、○と評価した。更に、大きなリジングマークが発生しており、成形条件を変えてもプレス成形性(リジングマーク性)が悪いと判断されるものを×と評価した。
供試板の機械的な特性:
供試板の0.2%耐力(As耐力: MPa)、伸び(%)を測定するための引張試験は、前記予ひずみを付与するための引張試験機と同じ試験機にて行った。即ち、前記調質処理後15日間の室温時効後のアルミニウム合金板からJISZ2201の5号試験片(25mm×50mmGL×板厚)を採取し、室温引張りを行った。このときの試験片の引張り方向を圧延方向の直角方向とした。引張り速度は、0.2%耐力までは5mm/分、耐力以降は20mm/分とした。N数は5とし、0.2%耐力、伸びともこれらの平均値とした。
表1〜2に示す通り、各発明例は、本発明成分組成範囲内で、かつ、好ましい条件範囲で製造を行なっている。このため、表3 に示す通り、本発明で規定する集合組織を有する。即ち、リジングマークを抑制するために、前記した板の比較的広域な領域における、Goss方位とCube方位および回転Cube方位の各方位を規制するだけでなく、この比較的広域な領域に存在するGoss方位とCube方位および回転Cube方位の各々の偏差をも極力少なくしている。
この結果、各発明例は、前記調質処理後に室温時効して、成形性が低下した過剰Si型の組成の6000系アルミニウム合金板の例でも、リジングマーク性が優れている。また、強度、伸びなど機械的特性にも優れている。但し、表2に示すように、共通して荒鈍を施していない発明例10〜12(1回或いは2回の均熱処理)は、共通して荒鈍を施している発明例1〜8(2回の均熱処理)や発明例9(1回の均熱処理)に比して、総じてリジングマーク性が若干劣っている。
これに対して、比較例17〜21は上記発明例と同じ合金例を用いている。しかし、これら各比較例は、表2に示す通り、製造条件が好ましい範囲を外れている。比較例17は1回均熱のみであり、また熱延開始および終了温度も高すぎ、荒鈍の際の昇温速度も小さすぎる。比較例18、19も、2回均熱ではあるが、2回均熱の場合に必要な、熱延開始または終了温度が高すぎる。比較例20は2回均熱工程で、熱延終了温度が低いにも関わらず、この場合に必要な荒鈍を施していない。比較例21は冷間圧延途中の中間焼鈍を施していない。この結果、これら比較例は上記発明例よりもリジングマーク性が劣っている。
また、比較例13〜16は、本発明の範囲からMg、Siなどの含有量が外れる。このため、これら各比較例は、表2に示す通り、製造条件が好ましい範囲内であり、本発明集合組織の規定を満足するものの、上記発明例よりも強度、伸びなど機械的特性が劣っている。
したがって、以上の実施例の結果から、本発明における成分や組織の各要件、あるいは好ましい製造条件の、リジングマーク性や機械的性質などを兼備するための臨界的な意義乃至効果が裏付けられる。
Figure 2010242215
Figure 2010242215
Figure 2010242215
次に、B工程に関して、実施例2として、表1の番号1の組成の6000系アルミニウム合金板を、表4に示す各製造条件で、均熱処理および熱延し、冷間圧延を行い、溶体化および焼入れ処理して、製造した。なお、冷延途中の中間焼鈍処理は全て無しとした。荒鈍温度に保持した後の冷却は、実施例1と同様に水のミストスプレイにより直ちに行い、室温まで冷却した。
アルミニウム合金板の具体的な製造条件は、鋳塊溶製条件は実施例1と同じとし、鋳塊の2回の均熱処理の際には、各例とも共通して、1回目の均熱条件として、平均昇温速度40℃/hr、到達温度560℃、保持時間6hrとして、室温まで一旦冷却する均熱処理を施した。但し、各発明例とも共通して、表4に示すように、1回目の均熱後には、前記均熱温度から400〜500℃の温度までの冷却を1〜20℃/hrの平均冷却速度とし、前記400〜500℃の温度から200℃までの冷却を30〜60℃/hrの平均冷却速度とした2段階の冷却を行った。前記前段の徐冷は炉内においての炉冷、前記後段の比較的速い冷却は炉外へ出しての放置の操作で制御した。その後、表4に示す、処理温度400℃に再加熱して、保持時間6hrとする2回目の均熱処理を行った。
この均熱処理後直ちに、各例とも共通して、表2に示す各熱延開始温度(℃)に冷却或いは再加熱して、またはそのままの温度で熱延を開始し、厚さ5.0mmまで熱延を施した。これらの熱延板を、各例とも共通して、実施例1と同様に、冷延率80%で冷間圧延を行い、厚さ1.0mmの冷延板を得た。冷間圧延はパス数4にて行った。
この冷延板を、前記中間焼鈍と同じ連続熱処理炉で、表2に示す平均昇温速度(℃/分)、処理温度(℃)、平均冷却速度(℃/秒)で、かつ保持時間は各例とも共通して1〜3秒とした、溶体化処理を行った。溶体化処理温度に保持後の冷却は、水のミストスプレイにより、直ちに行い、前記平均冷却速度で室温まで冷却、焼入れした。また、この焼入れ後5分以内に(直ちに)100℃の温度で2時間保持する予備時効(再加熱)処理を行った。この予備時効処理後は0.6℃/hrで徐冷し、T4調質材を得た。
これら調質処理後の各最終製品板から供試板 (ブランク) を切り出し、前記調質処理後15日の室温時効(室温放置)後の、各供試板の組織や特性を、実施例1と同様に、また同様の方法で測定、評価した。これらの結果を表5 に示す。
表4に示す通り、発明例22〜26は、本発明成分組成範囲内で、かつ、好ましい条件範囲で製造を行なっている。前記1回目の均質化熱処理後の鋳塊の冷却を前記好ましい条件での2段階にて行っている。このため、表5 に示す通り、中間焼鈍を無しとした条件下でも、本発明で規定する集合組織となっている。即ち、リジングマークを抑制するために、前記板幅方向の比較的広域な領域に存在するGoss方位、Cube方位、回転Cube方位の変動が少なくなっている。また、荒鈍を施した発明例27においても、本発明で規定する集合組織となっている。
この結果、これら発明例22〜26は、前記調質処理後に室温時効して、成形性が低下した過剰Si型の組成の6000系アルミニウム合金板の場合でも、リジングマーク性が優れ、強度、伸びなど機械的特性にも優れている。また、荒鈍を行った発明例27は、熱延終了温度を300℃未満としても、リジングマーク性が優れ、強度、伸びなど機械的特性も優れている。
これに対して、表4の比較例28、29は、前記1回目の均質化熱処理後の鋳塊の冷却を徐冷か急冷かの1段階でしか行っていない。この結果、これら各比較例は、表5に示す通り、荒鈍や中間焼鈍無しの条件下では、本発明集合組織の規定を満足できずに、前記板幅方向の比較的広域な領域に存在するGoss方位、Cube方位、回転Cube方位の変動が多くなっており、リジングマーク性が劣っている。
これらの結果から、前記1回目の均質化熱処理後の鋳塊の冷却を前記好ましい条件での2段階にて行うことなどの意義が裏付けられる。前記した通り、この2段階の冷却における、特に前段の徐冷によって、冷却過程で鋳塊中に析出する、再結晶の阻害要因となる微細な析出物が抑制されて、粗圧延工程での再結晶が促進される。この結果、製造途中での加工集合組織における、前記板幅方向の比較的広域な領域に存在する前記各方位の変動が少なくなり、最終的な製品冷延板としての、これらの方位変動も少なくなっていると言える。
Figure 2010242215
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本発明によれば、成形条件がより厳しくなった場合に、その発生が顕著になるプレス成形時のリジングマークを防止でき、機械的特性にも優れた6000系アルミニウム合金板を提供できる。この結果、自動車、船舶あるいは車両などの輸送機、家電製品、建築、構造物の部材や部品用として、また、特に、自動車などの輸送機の部材に、6000系アルミニウム合金板の適用を拡大できる。

Claims (1)

  1. 質量%で、Mg:0.1〜3.0%、Si:0.1〜2.5%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板において、この板の直角断面における板幅中央部の板幅方向10mmの長さに亙る領域の集合組織として、Cube方位の板幅方向の平均面積率が8%以下で、Cube方位の板幅方向の各面積率の内の最大値と最小値との差が8%以下であり、Goss方位の板幅方向の平均面積率が2%以下で、Goss方位の板幅方向の各面積率の内の最大値と最小値との差が3%以下であるとともに、更に、回転Cube方位の板幅方向の平均面積率が10%以下で、回転Cube方位の板幅方向の各面積率の内の最大値と最小値との差が8%以下であることを特徴とする成形時のリジングマーク性に優れたアルミニウム合金板。
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