以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は液晶表示装置の構成を示す概略図である。図1(a)は視認側偏光板に位相差層を有する液晶表示装置の構成を示す概略図である。図1(b)はバックライト(BL)側偏光板に位相差層を有する液晶表示装置の構成を示す概略図である。
図1(a)に示される液晶表示装置に付き説明する。図中、1aは液晶表示装置を示す。液晶表示装置1aは、視認側偏光板102と、バックライト側偏光板103との間に挟持された液晶セル101とを有する構成となっている。液晶セル101は、ガラス基板101aとガラス基板101bとの間に挟持された液晶層101cとを有する構成となっている。
視認側偏光板102は、視認側(本図の上部を示す)より、第1の保護フィルム102aと、第1の偏光膜102dと、液晶セル101側に棒状の重合性液晶化合物の配向を固定化した位相差層102cを有する第2の保護フィルム102bと有する構成となっている。尚、位相差層102cを有する第2の保護フィルム102bを光学補償フィルムと言う。
バックライト側偏光板103は、第3の保護フィルム103aと、第2の偏光膜103cと、第4の保護フィルム103bとを有する構成となっている。
尚、位相差層102cは第1の偏光膜102dと第2の保護フィルム102bとの間に配置されてもよい。
第2の保護フィルム102bの面内遅相軸b(図中の矢印方向)と液晶層101cの配向方向c(図中の矢印方向)は平行である。第1の偏光膜102dと第2の偏光膜103cの偏光透過軸a(図中の矢印方向)、ガラス基板101a、101b、のラビング軸d(図中の矢印方向)は図で示す方向にある。
図1(b)に示される液晶表示装置に付き説明する。図中、1bは液晶表示装置を示す。液晶表示装置1bは、視認側偏光板102′と、バックライト側偏光板103′と、視認側偏光板102′とバックライト側偏光板103′との間に挟持された液晶セル101′とを有する構成となっている。液晶セル101′は、ガラス基板101′aとガラス基板101′bと、それらの間に挟持された液晶層101′cとを有する構成となっている。
視認側偏光板102′は、視認側(本図の上部側を示す)より、第4の保護フィルム102′aと、第2の偏光膜102′cと、第3の保護フィルム102′bとを有する構成となっている。
バックライト側偏光板103′は、液晶セル101′側に棒状液晶化合物の配向を固定化した位相差層103′cを有する第2の保護フィルム103′aと、第1の偏光膜103′dと、第1の保護フィルム103′bとを有する構成となっている。位相差層103′cを有する第2の保護フィルム103′aを光学補償フィルムと言う。尚、位相差層103′cは第1の偏光膜103′dと第2の保護フィルム103′aの間に配置されてもよい。
第2の保護フィルム103′aの面内遅相軸b(図中の矢印方向)と液晶層101′cの配向方向c(図中の矢印方向)は直交である。偏光膜の偏光透過軸a(図中の矢印方向)、ガラス基板のラビング軸d(図中の矢印方向)は図で示す方向にある。本発明は本図に示される光学補償フィルムの製造方法に関するものである。
本発明に係る光学補償フィルムの製造方法は、樹脂フィルム上に棒状の重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解させた塗布液を塗布し、塗布膜を形成する塗布工程と、塗布膜が形成された樹脂フィルムを乾燥する乾燥工程と、乾燥工程後の樹脂フィルムに対し、活性放射線を照射する活性放射線照射工程とを有する光学補償フィルムの製造方法において、乾燥工程は、塗布膜の膜面の温度を10〜40℃として、乾燥工程後の塗布膜の残留溶剤比率が3〜15質量%となるようにする工程であって、乾燥工程の後に、塗布膜の膜面の温度を重合性液晶化合物の相転位温度以上で5〜15秒間加熱する熱処理工程を有し、活性放射線照射工程は、熱処理工程後に、塗布膜の膜面の温度が重合性液晶化合物の相転位温度未満で活性放射線を照射することを特徴とする。即ち、従来の光学補償フィルムの製造方法では、配向膜を備えたフィルム上に、棒状の重合性液晶材料を塗布した後、加熱工程で一旦、液晶層を等方性を示す温度まで加熱し、その後、液晶の相転移点温度以下の温度になるまで冷却して、垂直配向させ、その後に活性紫外線を照射して固定化する方法であった。しかし、温度管理が難しく、部分的な配向欠陥が生じていた。本発明者は、有機溶媒に溶解させた棒状の重合性液晶が、その状態で等方性であることに着目し、樹脂フィルム上に塗布した塗布膜を10〜40℃で乾燥し、乾燥工程後の塗布膜の残留溶剤比率が3〜15質量%以下となるように乾燥工程を行った後、熱処理工程として、膜面の温度を重合性液晶化合物の相転位温度以上で5〜15秒間加熱することで、配向膜やラビング処理をすることなく、樹脂フィルム上に棒状の重合性液晶が垂直配向することを見いだした。
ここで用いている重合性液晶化合物の相転位温度とは、液晶相(ネマチック相)が等方相(イソトロピック相)に相変化するときの温度で、重合性液晶化合物が複数配合された重合性液晶組成物の場合は、重合性液晶組成物が相変化する時の温度である。
また、乾燥工程後の塗布膜の残留溶剤比率とは、塗布膜の質量に対する残留溶剤成分の質量の比率である。
また、ここで活性放射線とは、化学的に活性な作用を呈する放射線であって、具体的には赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等を意味する。これらのうち特に紫外線が好ましく用いられる。
また、ここでいう垂直配向とは、得られた光学異方性の光学位相差を評価するために、偏光顕微鏡を用いて評価した場合、位相差層を有する光学補償フィルムをクロスニコル偏光子の間に挟んだ場合に黒色に見え、クロスニコル偏光子の間で位相差層を有する光学補償フィルムを傾けた場合に白色に見えるものを垂直配向しているものと定義する。
本発明に係る位相差層は、Roが0〜10nm、Rtが−100〜−400nmの範囲にある垂直配向した重合性液晶化合物による位相差層である。更に、Roは0〜5nmの範囲がより好ましい。該位相差層を上記範囲とするためには、位相差層の膜厚制御、活性放射線照射、硬化時の温度、チルト角制御、及び支持体と空気界面でのプレチルト角の制御を行うことが好ましい。
尚、Roとは面内リターデーションを示し、Rtとは厚み方向リターデーションを示す。リターデーションRo、Rtは下記式により求められる。
式(i) Ro=(nx−ny)×d
式(ii) Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、nxは位相差層面内の遅相軸方向の屈折率、nyは位相差層面内の進相軸方向の屈折率、nzは位相差層の厚み方向の屈折率(屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)、dは位相差層の厚さ(nm)を表す。)
測定には自動複屈折計KOBURA・21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて測定した。
図2は、本発明の光学補償フィルムの製造方法の一例を説明するための模式的平面図である。本発明の光学補償フィルムの製造方法により光学補償フィルムを製造するに際しては、図2に模式的に示す光学補償フィルムの製造装置10が用いられる。この製造装置10を用いた光学補償フィルムの製造方法は、被塗布物である樹脂フィルムの供給工程2と、塗布工程3と、乾燥工程4と、熱処理工程8と、冷却工程5と、活性放射線照射工程7と、回収工程6とを有している。供給工程2は、帯状の支持体である樹脂フィルム201が巻き芯に巻かれたロール状樹脂フィルム202を繰り出す繰り出し装置(不図示)を用いている。
塗布工程3は、供給工程2から連続搬送されてくる樹脂フィルム201を保持するバックアップロール301と、バックアップロール301で保持された連続搬送されてくる樹脂フィルム201に塗布液を塗布する塗布ヘッド302と、塗布時に塗布ヘッド302からの塗布液と樹脂フィルム201との間に形成されるビード(塗布液の溜まり)を安定化するために塗布ヘッド302の上流側に設けられた減圧室303とを有する塗布装置304を用いている。
塗布ヘッド302から吐出する塗布液は、活性放射線により硬化する棒状の重合性液晶材料と溶媒を含み、その流量は、不図示のポンプにより調整可能となっている。塗布ヘッド302から吐出する塗布液の流量は、予め調整した塗布ヘッド302の条件で連続塗布したときに、安定して所定の膜厚の塗布層を形成できる量に決めている。
また、減圧室303は減圧度を調整することが可能となっている。減圧室303は減圧ブロワ(不図示)に接続されており内部が減圧状態になる。減圧室303は空気漏れがない状態になっており、かつ、バックアップロールとの間隙も狭く調整され、安定した塗布液のビードを形成するようにしている。
乾燥工程4は、塗布工程3で樹脂フィルム201の上に塗布された湿潤塗布膜を乾燥する乾燥装置401を用いている。402は乾燥用気体の導入口を示し、403は排出口を示す。乾燥風の温度及び風量は適宜決めることが可能な構成となっている。
熱処理工程8は、乾燥工程4で乾燥された塗布膜を有する樹脂フィルム201の塗布膜を熱処理するための膜面温度を調整するための加熱手段804として赤外線ヒータ及び熱処理用の気体の導入口802と排出口803を有しており、塗布膜の膜面の温度と風量を調整可能な構成となっている。赤外線ヒータは、フィルムの塗布膜と反対側の面から加熱するようにしている。
冷却工程5は、熱処理工程8で熱処理された塗布膜を有する樹脂フィルム201の温度を冷却し、適切な温度に調整することができる。温度を下げる冷却装置501を有し、502は冷却風の入り口を示し、503は冷却風の出口を示す。冷却風の温度及び風量は適宜決めることが可能な構成となっている。また、特に冷却工程5を設けずとも適正な冷却温度になる場合は、冷却装置は設置しなくても良い。
本発明の光学補償フィルムの製造方法においては、乾燥工程の温度を10〜40℃とし、乾燥工程後の塗布膜の残留溶剤比率が3〜15質量%以下として、乾燥工程後に塗布膜の膜面の温度を用いる重合性液晶化合物の相転位温度以上で5〜15秒間加熱する熱処理工程を行うことが特徴である。このような工程を行うことで、塗布直後、塗布膜で等方性の液晶化合物が、乾燥工程と熱処理工程を経て、垂直配向し、活性放射線照射工程で固定化され、位相差層の配向欠陥が少なく、生産性に優れ、コントラストが良く、カラーシフトの少ない光学補償フィルムを製造することが出来る。
低温での乾燥は液状態が等相であるため、そのまま低温で乾燥することで相転移し、自然と配向しやすい。しかしながら、表面近傍の液晶分子は低温乾燥のみでは配向しづらく、コントラストを下げる要因となる。これは表面近傍の液晶分子は乾燥時の気液界面の表面張力変化により、配向が進まなかったためと推定できる。このため、その後表面近傍を熱処理することで一度等方層となり、再度低温にすることで表面の液晶分子が再配列し、配向欠陥が少なくなることがわかった。
また、熱処理工程8において、塗布膜の膜面の温度が、重合性液晶化合物の相転位温度以上120℃以下であることが好ましい。塗布膜の膜面の温度が相転移温度以上であると、表面の液晶分子が等方化され、再配列しやすくなる点で好ましい。
また、熱処理工程8における樹脂フィルム201の塗布膜面上5mmの位置における気体が、樹脂フィルム面と平行な方向で、樹脂フィルム201に対して1〜3m/秒の相対速度で移動することが好ましい。
塗布膜面上5mmの位置における気体が、樹脂フィルム201に対して上記範囲外の相対速度で移動すると、熱処理のムラが発生しやすく、色ムラとなってしまう。
また、熱処理工程8において、塗布膜の膜面を加熱する手段が、赤外線ヒータであることが好ましい。加熱する手段が、赤外線ヒータであると、表面近傍の液晶分子を速やかに昇温でき、等方相温度にする時間が短くできる点で好ましい。
また、乾燥工程4において、樹脂フィルム201の塗布膜面の反対側の面に加熱した気体をあたえることが好ましい。図3は、図2に示した乾燥装置401とは別の乾燥装置401aの概略図である。乾燥用気体の導入口402を上下に有し、排出気体流405は樹脂フィルム進行方向に流れている。樹脂フィルム201に乾燥気体を与えるノズル形状としては、スリットノズル(フィルム幅方向にスリット状の開口形状をもつノズル)404を用いているが、カウンターノズル(フィルムの搬送方向上流側に向けたノズル)やパンチングノズル(平板にパンチ穴を多数形成したノズル)等の形状を用いることが出来る。樹脂フィルム201の塗布膜面の反対側の面に加熱した気体をあたえる構成を取ることで、乾燥のための塗布膜面側の気体の流れを少なくすることが出来、塗布膜面上の気体の流れを乱すことが少なくなる。その結果、より均一な塗布膜厚が得られ、配向欠陥をより少なくすることが出来る。また、塗布膜面の下面側から乾燥気体を与える場合は、気体による浮上力を利用できるので搬送用のローラを省くことが出来る。よって、図2の塗布面側からのみ加熱気体を与える場合に比べ、樹脂フィルムとローラの接触部分が少なくなり、乾燥中の樹脂フィルムの温度がより均一にすることが出来、配向欠陥を少なくすることが出来る。
樹脂フィルム201上に一定の膜厚に塗布された塗布膜は、乾燥工程4を経て、残留溶剤比率が3〜15質量%になるように調整される。
このように乾燥工程を経て調整された塗布膜に熱処理工程8で熱処理を行う。
図4は、図2とは別の熱処理工程8に用いる熱処理装置801aの概略図である。図2の熱処理装置801では、塗布膜面の反対側から複数の赤外線ヒータ804で加熱しているが、図4の熱処理装置801aでは、塗布膜面側に複数の赤外線ヒータ804が配置され、赤外線ヒータとフィルムとの間にはガラス板を介在させて加熱している。また、熱処理用気体の導入口802を上下に有し、排出気体流805は樹脂フィルム進行方向に流れている。このような構成にすることにより小スペースで赤外線ヒーターを装置内に組み込めるので好ましい。
塗布膜の膜面の温度を図示していない非接触温度計で数カ所測定し、その結果を基に赤外線ヒータの出力と熱処理用気体の風量を調整して、塗布膜の膜面温度を所定の温度になるように制御している。熱処理工程についての詳細は、前述しているので、ここでは省略する。
このように熱処理工程を経た後に塗布膜に活性放射線照射工程7で活性放射線照射装置701を用いて活性放射線を照射し、垂直配向した棒状の重合性液晶を固定化する。活性放射線照射工程7前の残留溶剤比率が3質量%未満であると、重合開始剤のラジカルが発生しても反応進行速度が遅く、十分に固定化された膜が得られず、配向欠陥が発生しやすく、また、表面に傷が発生しやすくなる。また、後工程の回収工程6で、フィルム同士の融着が発生しやすくなり、製品の歩留まりが悪くなる。
また、活性放射線照射工程7前の残留溶剤比率が15質量%を越えると、樹脂フィルムが変形し、例えばわずかな突起やへこみにより、膜厚ムラが発生しやすくなる。
また、活性放射線照射工程7の直前の塗布膜の温度は、重合性液晶化合物の相転位温度未満であれば良いが、15〜35℃が好ましく、より好ましくは20〜30℃である。15℃未満であると塗布膜の温度が低く、活性放射線硬化が十分に行われず、固定化不足になる場合がある。40℃を越えると棒状の重合性液晶の垂直配向が均一に行われず、部分的な配向欠陥が発生する。
樹脂フィルム201の塗布膜面の温度は、レーザー方式・赤外線方式などの一般に公知な非接触温度計により測定できる。また、乾燥工程4、冷却工程5における気体の温度及び風量は、特に限定はしないが、非接触温度系による測定結果をもとに、塗布膜面の温度が上記設定温度になるように調整すれば良い。
また、活性放射線照射工程7における活性放射線照射強度が積算光量(波長300〜390nm領域の紫外線積算エネルギー量)は、50〜350mJ/cm2が好ましい。積算光量が50mJ/cm2未満になると光量不足で十分に固定化出来ない場合がある。また、350mJ/cm2を越えると、塗布膜が薄く変色する場合がある。
また、照射時の照度は、200〜600mW/cm2が好ましい。照度をこの範囲にすることで、生産性がよく、膜の硬化速度も適切な速度で硬化し、配向欠陥の少ない良質な垂直配向した光学補償フィルムが得られる。
この様な範囲に照度及積算光量を調整する方法としては、後述する活性放射線照射ランプの種類、反射板の種類/構造(集光型乃至は拡散型)、拡散板の設置、樹脂フィルムの搬送速度、ランプ〜樹脂フィルム間の距離等を適宜変化させることによって調整することが出来る。
上記照度測定は、活性放射線が紫外線の場合は、アイグラフィックス(株)UV METER UVPF−36、家田貿易(株)紫外線強度計 RMX−3W、VLX−3W等により行うことが出来る。
活性放射線が紫外線の場合は、紫外線を発生する光源であればいずれでも使用出来、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の市販のランプを用いることが出来る。
回収工程6は、塗布膜が形成された樹脂フィルム201を巻き取る巻き取り装置(不図示)を有している。601は巻き芯に巻き取られ回収されたロール状の樹脂フィルムを示す。a〜dは塗布膜を有する樹脂フィルム201を搬送する搬送ロールを示す。
以上説明した本発明の光学補償フィルムの製造方法により得られる光学補償フィルムは、配向欠陥のない均一に垂直配向した棒状の重合性液晶の層を得ることが出来、これを液晶表示装置に装着した場合、コントラストが良く、カラーシフトの少ないものとなる。
本発明の製造方法により得られる光学補償フィルムは、樹脂フィルムと、樹脂フィルム上に棒状の重合性液晶の層を形成している構成を基本構成としているが、樹脂フィルムと液晶の層の間に中間層を設ける構成が好ましい。
溶剤を含んだ塗布液を樹脂フィルム上に直接塗布した場合、樹脂フィルムの成分の一部が塗布膜側に溶出し、その溶出物が配向欠陥の原因になることがある。溶出物としては、樹脂フィルム材料のモノマー成分であったり、可塑剤等の樹脂フィルムに添加した物などである。そのため中間層を樹脂フィルム上に形成することにより、前記溶出物を防止することが出来る。
次に本発明に係る光学補償フィルムの製造方法に用いる光学補償フィルムの構成材料について説明する。
(棒状の重合性液晶材料)
(重合性液晶化合物)
位相差層に用いる棒状の重合性液晶化合物(以下、単位重合性液晶化合物という。)は、所定の活性放射線を照射することにより重合させて用いることが出来、重合させた状態では配向状態は固定化されるようになっている。重合性液晶化合物としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、もしくは重合性液晶ポリマーの何れかを用いることが出来、相互に混合して用いることも出来る。重合性液晶化合物は、配向状態を固定化することが可能であるので、液晶の配向を低温で容易に行うことが可能であり、且つ使用に際しては配向状態が固定化されているので、温度等の使用条件に係わらず使用することが出来る。
重合性液晶化合物としては、特開2005−55486号公報、特開2005−173503号公報、特開2005−265889号公報、特開2005−309379号公報、特開2006−227630号公報、特開2006−330524号公報、特開2007−057607号公報、特開2007−072163号公報、特開2007−119415号公報、特開2007−133299号公報、特開2007−169363号公報、特開2007−191442号公報等に記載されている重合性液晶化合物が挙げられる。
(光重合開始剤)
重合性液晶化合物に加え、必要に応じて光重合開始剤を用いてもよい。電子線照射により重合性液晶化合物を重合させる際には、光重合開始剤が不要な場合があるが、一般的に用いられている。例えば紫外線(UV)照射による硬化の場合においては、通常光重合開始剤が重合促進のために用いられるからである。
光重合開始剤としては、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、もしくは1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることが出来る。光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01%〜20%が好ましく、より好ましくは0.1%〜10%であり、更に好ましくは0.5%〜5%の範囲で、本発明に係わる重合性液晶化合物に添加することが出来る。尚、光重合開始剤の他に、本発明の目的が損なわれない範囲で増感剤を添加することも可能である。
(重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解させた塗布液に使用する溶媒)
溶媒としては、上述した重合性液晶化合物等を溶解することが可能な溶媒であり、且つ透明樹脂フィルムの性状を低下させない溶媒であれば特に限定されるものではなく、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、もしくは2,4−ペンタンジオン等のケトン類;酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、もしくはγ−ブチロラクトン等のエステル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、もしくはジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、もしくはオルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、もしくはブチルセルソルブ等のアルコール類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等の1種又は2種以上が使用可能である。
単一種の溶媒を使用しただけでは、重合性液晶化合物等の溶解性が不十分であったり、上述したようにフィルムが侵食されたりする場合がある。しかし2種以上の溶媒を混合使用することにより、この不都合を回避することが出来る。上記した溶媒の中にあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素系溶媒とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいのは、エーテル類又はケトン類と、グリコール類との混合系である。溶液の濃度は、重合性液晶化合物等の溶解性や製造しようとする液晶層の膜厚に依存するため一概には規定出来ないが、通常は1%〜60%が好ましく、より好ましくは3%〜40%の範囲で調整される。
(その他添加物)
本発明に係わる重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解させた塗布液には、本発明の目的を損なわない範囲内で、上記以外の化合物を添加することが出来る。添加出来る化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸又は多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族もしくは脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物、又はアクリル基もしくはメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等が挙げられる。本発明に係わる重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解させた塗布液中の上記の化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で選択され、一般的には液晶層を形成する組成物の40%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。これらの化合物の添加により、本発明に係わる重合性液晶化合物の硬化性が向上し、得られる液晶層の機械強度が増大し、又その安定性が改善される。
(重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解させた塗布液に使用する界面活性剤)
本発明に係わる重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解させた塗布液には、塗工を容易にするために界面活性剤等を加えることが出来る。添加可能な界面活性剤を例示すると、イミダゾリン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体等の陽イオン系界面活性剤;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第一級或いは第二級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族或いは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤;ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤;パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル・親油基含有オリゴマーパーフルオロアルキル基含有ウレタン等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、液晶材料の種類、溶媒の種類、更には溶液を塗工する配向膜の種類にもよるが、通常は溶液に含まれる重合性液晶化合物の10質量ppm〜10質量%が好ましく、より好ましくは100質量ppm〜5質量%であり、更に好ましくは0.1〜1質量%の範囲である。
(樹脂フィルム)
本発明に係わる光学補償フィルムに用いられる樹脂フィルム(基材)としては、製造が容易であること、光学的に透明であること等が好ましく、特に透明樹脂フィルムであることが好ましい。透明とは、可視光の透過率60%以上であることを指し、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム又はガラス板等を挙げることが出来る。中でもノルボルネン系樹脂フィルム、及びセルロースエステル系フィルムが好ましい。ノルボルネン系樹脂フィルムとは、ノルボルネン構造を有する非晶性ポリオレフィンフィルムで、例えば三井石油化学(株)製のAPOや日本ゼオン(株)製のゼオネックス、JSR(株)製のARTON等がある。
本発明に係わる樹脂フィルムとしては、これらの中でもセルロースエステル系フィルムを用いることが好ましく、特に後述する特定のセルロースエステルを主成分とするセルロースエステル系フィルムであることが好ましい。セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレートが好ましく、中でもセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。市販のセルロースエステルフィルムとしては、例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC4FR、KC8UY−HA、KC8UX−RHA(コニカミノルタオプト(株)製)等が、製造上、コスト面、透明性、密着性等の観点から好ましく用いられる。これらのフィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
〈セルロースエステル〉
本発明に係わる光学補償フィルムに使用する前記セルロースエステル系フィルムに用いるセルロースエステルを詳細に説明する。セルロースエステルは、炭素数2〜22程度の脂肪族カルボン酸エステル又は芳香族カルボン酸エステル或いは脂肪族カルボン酸エステルと芳香族カルボン酸エステルの混合エステルが好ましく用いられ、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。具体的には、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートフタレート等や、特開平10−45804号公報、同8−231761号公報、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルである。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルロースアセテートプロピオネートである。
該セルロースエステルは、炭素原子数2〜22のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基の置換度をYとした時、下記式1及び2を同時に満たすセルロースエステルである。
式1 2.00≦X+Y≦2.60
式2 0.10≦Y≦1.00
中でも2.30≦X+Y≦2.55が好ましく、2.40≦X+Y≦2.55がより好ましい。又、0.50≦Y≦0.90が好ましく、0.70≦Y≦0.90がより好ましい。
アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することが出来る。又、これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することが出来る。
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが出来る。特に綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)、木材パルプから合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
又、これらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて常法により反応させて得ることが出来る。
アセチルセルロースの場合、酢化率を上げようとすれば、酢化反応の時間を延長する必要がある。但し、反応時間を余り長く取ると分解が同時に進行し、ポリマー鎖の切断やアセチル基の分解などが起こり、好ましくない結果をもたらす。従って、酢化度を上げ、分解をある程度抑えるためには反応時間はある範囲に設定することが必要である。反応時間で規定することは反応条件が様々であり、反応装置や設備その他の条件で大きく変わるので適切でない。ポリマーの分解は進むにつれ、分子量分布が広くなってゆくので、セルロースエステルの場合にも、分解の度合いは通常用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値で規定出来る。即ちセルローストリアセテートの酢化の過程で、余り長過ぎて分解が進み過ぎることがなく、且つ酢化には十分な時間酢化反応を行わせしめるための反応度合いの1つの指標として用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値を用いることが出来る。
本発明に係わるセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。尚、本発明においては、セルロースエステルフィルムが、材料として、Mw/Mnの値が1.4〜3.0であるセルロースエステルを含有すればよいが、フィルムに含まれるセルロースエステル(好ましくはセルローストリアセテート又はセルロースアセテートプロピオネート)全体のMw/Mnの値は1.4〜3.0の範囲であることがより好ましい。セルロースエステルの合成過程で1.4未満とすることは困難であり、ゲル濾過などによって分画することで分子量の揃ったセルロースエステルを得ることは出来る。しかしながらこの方法はコストが著しく掛かる。又、3.0以下であると平面性が維持されやすく好ましい。尚、より好ましくは1.7〜2.2である。
本発明に係わるセルロースエステルの分子量は、数平均分子量(Mn)で80000〜200000のものを用いることが好ましい。100000〜200000のものが更に好ましく、150000〜200000が特に好ましい。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することが出来る。
測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に得ることが好ましい。
セルロースエステルの製造法は、特開平10−45804号公報に記載の方法で得ることが出来る。
又、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分については、地下水や河川の水等に多く含まれ、これが多いと硬水となり、飲料水としても不適当であるが、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と、又多くの配位子と配位化合物即ち、錯体を形成し易く、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
カルシウム(Ca)成分は60ppm以下、好ましくは0〜30ppmである。マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行った後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析を行うことによって求めることが出来る。
本発明に係わるセルロースエステルフィルムの屈折率は550nmで1.45〜1.60であるものが好ましく用いられる。フィルムの屈折率の測定方法は、アッベ屈折率計を使用し、日本工業規格JIS K 7105に基づき測定する。
〈添加剤〉
セルロースエステルフィルムには可塑剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤等の添加剤を含有させることが出来る。
前述のように本発明に係る第3の保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムは、リターデーションがRoは0〜5nm、Rtは−10〜10nmの範囲にあることが好ましい。上記数値範囲とするためには、第3の保護フィルムがセルロースエステルであれば、溶融製膜にて製造するか、或いは溶液製膜にて、途中でガラス転移点以上の温度で15秒以上保持するか、或いはセルロースエステルと反対の複屈折発現性を持つ添加剤を加えることが好ましい。中でも、リターデーションを上記範囲内に調整するためには、下記アクリルポリマーを含有することが好ましい。
〈アクリルポリマー〉
本発明に係る第3の保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムは、延伸方向に対して負の配向複屈折性を示す重量平均分子量が500以上30000以下であるアクリルポリマーを含有することが好ましく、該アクリルポリマーは芳香環を側鎖に有するアクリルポリマー又はシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーであることが好ましい。
アクリルポリマーの重量平均分子量が500以上30000以下のものでアクリルポリマーの組成を制御することで、セルロースエステルとアクリルポリマーとの相溶性を良好にすることが出来る。
特に、アクリルポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリルポリマー又はシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーについて、好ましくは重量平均分子量が500以上10000以下のものであれば、上記に加え、製膜後のセルロースエステルフィルムの透明性が優れ、透湿度も極めて低く、偏光板用保護フィルムとして優れた性能を示す。
アクリルポリマーは重量平均分子量が500以上30000以下であるから、オリゴマーから低分子量ポリマーの間にあると考えられるものである。この様なポリマーを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量を余り大きくしない方法で出来るだけ分子量を揃えることの出来る方法を用いることが望ましい。
重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号公報又は同2000−344823号公報にあるような1つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることが出来る。特に、該公報に記載の方法が好ましい。ポリマーを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
エチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーを構成するエチレン性不飽和モノマー単位としては:ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等;アクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル等;メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることが出来る。上記モノマーで構成されるポリマーはコポリマーでもホモポリマーでもよく、ビニルエステルのホモポリマー、ビニルエステルのコポリマー、ビニルエステルとアクリル酸又はメタクリル酸エステルとのコポリマーが好ましい。
アクリルポリマーと言う(単にアクリルポリマーと言う)のは、芳香環或いはシクロヘキシル基を有するモノマー単位を有しないアクリル酸又はメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はコポリマーを指す。芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーと言うのは、必ず芳香環を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリルポリマーである。
又、シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーと言うのは、シクロヘキシル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリルポリマーである。
芳香環及びシクロヘキシル基を有さないアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることが出来る。
アクリルポリマーは上記モノマーのホモポリマー又はコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30質量%以上を有していることが好ましく、又、メタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40質量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
芳香環を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2又は4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2又は4−クロロフェニル)、アクリル酸(2又は3又は4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2又は3又は4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(o又はm又はp−トリル)、メタクリル酸(o又はm又はp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)等を挙げることが出来るが、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニチル、メタクリル酸フェネチルを好ましく用いることが出来る。
芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーの中で、芳香環を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位が20〜40質量%を有し、且つアクリル酸又はメタクリル酸メチルエステルモノマー単位を50〜80質量%有することが好ましい。該ポリマー中、水酸基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位を2〜20質量%有することが好ましい。
シクロヘキシル基を有するアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等を挙げることが出来るが、アクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸シクロヘキシルを好ましく用いることが出来る。
シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマー中、シクロヘキシル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位を20〜40質量%を有し且つ50〜80質量%有することが好ましい。又、該ポリマー中、水酸基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位を2〜20質量%有することが好ましい。
上述のエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリルポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリルポリマー及びシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーは何れもセルロース樹脂との相溶性に優れる。
これらの水酸基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマーの場合はホモポリマーではなく、コポリマーの構成単位である。この場合、好ましくは、水酸基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位がアクリルポリマー中2〜20質量%含有することが好ましい。側鎖に水酸基を有するポリマーも好ましく用いることが出来る。水酸基を有するモノマー単位としては、前記したモノマーと同様であるが、アクリル酸又はメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル、又はこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることが出来、好ましくは、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルである。ポリマー中に水酸基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルモノマー単位はポリマー中2〜20質量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜10質量%である。
前記のようなポリマーが上記の水酸基を有するモノマー単位を2〜20質量%含有したものは、勿論セルロースエステルとの相溶性、保留性、寸法安定性が優れ、透湿度が小さいばかりでなく、偏光板保護フィルムとしての偏光子との接着性に特に優れ、偏光板の耐久性が向上する効果を有している。
アクリルポリマーの主鎖の少なくとも一方の末端に水酸基を有するようにする方法は、特に主鎖の末端に水酸基を有するようにする方法であれば限定ないが、アゾビス(2−ヒドロキシエチルブチレート)のような水酸基を有するラジカル重合開始剤を使用する方法、2−メルカプトエタノールのような水酸基を有する連鎖移動剤を使用する方法、水酸基を有する重合停止剤を使用する方法、リビングイオン重合により水酸基を末端に有するようにする方法、特開2000−128911号公報又は同2000−344823号公報にあるような1つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等により得ることが出来、特に該公報に記載の方法が好ましい。
この公報記載に関連する方法で作られたポリマーは、綜研化学社製のアクトフロー・シリーズとして市販されており、好ましく用いることが出来る。上記の末端に水酸基を有するポリマー及び/又は側鎖に水酸基を有するポリマーは、ポリマーの相溶性、透明性を著しく向上する効果を有する。
更に、延伸方向に対して負の配向複屈折性を示すエチレン性不飽和モノマーとして、スチレン類を用いたポリマーであることが負の屈折性を発現させるために好ましい。スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記不飽和エチレン性モノマーとして挙げた例示モノマーと共重合してもよく、又複屈折性を制御する目的で、2種以上の上記ポリマーを用いてセルロースエステルに相溶させて用いてもよい。
更に、本発明に係わるセルロースエステルフィルムは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーXと、より好ましくは芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーYとを含有することが好ましい。
(ポリマーX、ポリマーY)
ポリマーXは分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーである。好ましくは、Xaは分子内に芳香環と親水性基を有しないアクリル又はメタクリルモノマー、Xbは分子内に芳香環を有せず親水性基を有するアクリル又はメタクリルモノマーである。
ポリマーXは、下記一般式(X)で表される。
一般式(X)
−(Xa)m−(Xb)n−(Xc)p−
更に好ましくは、下記一般式(X−1)で表されるポリマーである。
一般式(X−1)
−[CH2−C(−R1)(−CO2R2)]m−[CH2−C(−R3)(−CO2R4−OH)−]n−[Xc]p−
(式中、R1、R3、R5は、H又はCH3を表す。R2は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基を表す。R4、R6は−CH2−、−C2H4−又は−C3H6−を表す。Xcは、Xa、Xbに重合可能なモノマー単位を表す。m、n及びpは、モル組成比を表す。但し、m≠0、n≠0、m+n+p=100である。)
ポリマーXを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
Xにおいて、親水性基とは、水酸基、エチレンオキシド連鎖を有する基を言う。
分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることが出来る。中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(i−、n−)であることが好ましい。
分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbは、水酸基を有するモノマー単位として、アクリル酸又はメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、又はこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることが出来、好ましくは、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)及びメタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)である。
Xcとしては、Xa、Xb以外のもので且つ共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば、特に制限はないが、芳香環を有していないものが好ましい。
Xa、Xb及びXcのモル組成比m:nは99:1〜65:35の範囲が好ましく、更に好ましくは95:5〜75:25の範囲である。Xcのpは0〜10である。Xcは複数のモノマー単位であってもよい。
Xaのモル組成比が多いとセルロースエステルとの相溶性が良化するがフィルム厚み方向のリターデーション値Rtが大きくなる。Xbのモル組成比が多いと上記相溶性が悪くなるが、Rtを低減させる効果が高い。又、Xbのモル組成比が上記範囲を超えると製膜時にヘイズが出る傾向があり、これらの最適化を図りXa、Xbのモル組成比を決めることが好ましい。
ポリマーXの分子量は重量平均分子量が5000以上30000以下であり、更に好ましくは8000以上25000以下である。
重量平均分子量を5000以上とすることにより、セルロースエステルフィルムの、高温高湿下における寸法変化が少ない、偏光板保護フィルムとしてカールが少ない等の利点が得られ好ましい。重量平均分子量が30000を以内とした場合は、セルロースエステルとの相溶性がより向上し、高温高湿下においてのブリードアウト、更には製膜直後でのヘイズの発生が抑制される。
ポリマーXの重量平均分子量は、公知の分子量調節方法で調整することが出来る。そのような分子量調節方法としては、例えば四塩化炭素、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル等の連鎖移動剤を添加する方法等が挙げられる。又、重合温度は通常室温から130℃、好ましくは50℃から100℃で行われるが、この温度又は重合反応時間を調整することで可能である。
重量平均分子量の測定方法は下記方法によることが出来る。
(重量平均分子量測定方法)
重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
ポリマーYは芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーである。
重量平均分子量500以上ではポリマーの残存モノマーが減少し好ましい。又、3000以下とすることは、リターデーション値Rt低下性能を維持するために好ましい。
Yaは、好ましくは芳香環を有さないアクリル又はメタクリルモノマーである。
ポリマーYは、下記一般式(Y)で表される。
一般式(Y)
−(Ya)k−(Yb)q−
更に好ましくは、下記一般式(Y−1)で表されるポリマーである。
一般式(Y−1)
−[CH2−C(−R5)(−CO2R6)]k−[Yb]q−
(式中、R5は、H又はCH3を表す。R6は炭素数1〜12のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。Ybは、Yaと共重合可能なモノマー単位を表す。k及びqは、モル組成比を表す。但し、k≠0、k+q=100である。)
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はない。Ybは複数であってもよい。k+q=100、qは好ましくは0〜30である。
芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーYを構成するエチレン性不飽和モノマーYaはアクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることが出来る。
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はないが、ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル等が好ましい。Ybは複数であってもよい。
ポリマーX、Yを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量を余り大きくしない方法で出来るだけ分子量を揃えることの出来る方法を用いることが望ましい。係る重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号公報又は同2000−344823号公報にあるような1つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることが出来る。特に、分子中にチオール基と2級の水酸基とを有する化合物を連鎖移動剤として使用する重合方法が好ましい。
この場合、ポリマーX及びポリマーYの末端には、重合触媒及び連鎖移動剤に起因する水酸基、チオエーテルを有することとなる。この末端残基により、ポリマーX、Yとセルロースエステルとの相溶性を調整することが出来る。
ポリマーX及びYの水酸基価は30〜150[mgKOH/g]であることが好ましい。
(水酸基価の測定方法)
この測定は、JIS K 0070(1992)に準ずる。この水酸基価は、試料1gをアセチル化させた時、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数と定義される。具体的には試料Xg(約1g)をフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬(無水酢酸20mlにピリジンを加えて400mlにしたもの)20mlを正確に加える。フラスコの口に空気冷却管を装着し、95〜100℃のグリセリン浴にて加熱する。
1時間30分後、冷却し、空気冷却管から精製水1mlを加え、無水酢酸を酢酸に分解する。次に電位差滴定装置を用いて0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定を行い、得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。更に空試験として、試料を入れないで滴定し、滴定曲線の変曲点を求める。
水酸基価は、次の式によって算出する。
水酸基価={(B−C)×f×28.05/X}+D
(式中、Bは空試験に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、Cは滴定に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、fは0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Dは酸価、又、28.05は水酸化カリウムの1mol量56.11の1/2を表す)
上述のXポリマーポリマーYは何れもセルロースエステルとの相溶性に優れ、蒸発や揮発もなく生産性に優れ、偏光板用保護フィルムとしての保留性がよく、透湿度が小さく、寸法安定性に優れている。
ポリマーXとポリマーYのセルロースエステルフィルム中での含有量は、下記式(a)、式(b)を満足する範囲であることが好ましい。ポリマーXの含有量をXg(質量%=ポリマーXの質量/セルロースエステルの質量×100)、ポリマーYの含有量をYg(質量%)とすると、
式(a) 5≦Xg+Yg≦35(質量%)
式(b) 0.05≦Yg/(Xg+Yg)≦0.4
式(a)の好ましい範囲は、10〜25質量%である。
ポリマーXとポリマーYは総量として5質量%以上であれば、リターデーション値Rtの低減に十分な作用をする。又、総量として35質量%以下であれば、偏光子PVAとの接着性が良好である。
ポリマーXとポリマーYは後述するドープ液を構成する素材として直接添加、溶解するか、もしくはセルロースエステルを溶解する有機溶媒に予め溶解した後ドープ液に添加することが出来る。
〈その他の添加剤〉
前記セルロースエステル系フィルムには、通常のセルロースエステル系フィルムに添加することの出来る添加剤を含有させることが出来る。これらの添加剤としては、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子等を挙げることが出来る。
可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等を好ましく用いることが出来る。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることが出来る。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることが出来る。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる。好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来る。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール、等を上げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトール、であることが好ましい。多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを上げることが出来る。脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを上げることが出来る。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を上げることが出来る。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を上げることが出来る。特に安息香酸であることが好ましい。多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。又、多価アルコール中のOH基はカルボン酸で全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。これらの可塑剤は単独又は併用するのが好ましい。これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。
(微粒子)
本発明に係わるセルロースエステルフィルムには微粒子を用いることが好ましい。微粒子は、無機化合物でも有機化合物でもどちらも用いることが出来る。無機化合物の例としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。微粒子は珪素を含むものが濁度を低くする点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、更に好ましいのは7〜20nmである。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されることが好ましい。セルロースエステルフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成のセルロースエステルフィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがセルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。
(中間層)
本発明に係る中間層としては、ウレタンアクリレートオリゴマーまたはアクリレートオリゴマーの硬化物が樹脂フィルムからの溶出物をブロックし、棒状の重合性液晶の層と良好な密着性を得るのに好ましい。
(ウレタンアクリレートオリゴマー)
本発明で用いられるウレタンアクリレートオリゴマーは、特に限定されるものではないが、以下詳細に説明するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることが好ましく、該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル系ポリオールを少なくとも1種含むポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させてなるものである。
かかる(メタ)アクリル系ポリオールにおいて、(メタ)アクリル系ポリオールを構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート等の他、公知のその他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、1種又は2種以上が用いられる。
かかる(メタ)アクリル系ポリオールを製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、(1)連鎖重合剤としてメルカプタン類(例えば、メルカプトエタノール、ドデカンチオール等)の存在下に、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)をラジカル重合し、片末端水酸基含有アクリル系重合体又は共重合体を得、更に短鎖ジオール(例えば、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコール等)により、他方の片末端エステル基を水酸基に交換する方法、(2)2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いて上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)をリビングラジカル重合し、得られる重合体又は共重合体の両末端に水酸基含有(メタ)アクリレートを結合する方法(両末端は水酸基含有(メタ)アクリレートに基づく水酸基となる)、(3)水酸基含有有機ハロゲン化合物を開始剤として用いて上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1)をリビングラジカル重合し、得られる重合体又は共重合体に水酸基含有(メタ)アクリレートを結合する方法(片末端は開始剤に基づく水酸基となり、他端は水酸基含有(メタ)アクリレートに基づく水酸基となる)等が挙げられる。
中でも上記(1)の方法で製造したものとして、Tego Chemie Service社製の「TEGO Diol BD 1000」、「TEGO Diol MD 1000N」、「TEGO Diol MD 1000X」等が市販品として容易に入手できる。
更に、ポリオールにおける(メタ)アクリル系ポリオール以外の成分について、種類は特に限定されず、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等が挙げられる。
(メタ)アクリル系ポリオールを少なくとも1種含むポリオールの重量平均分子量は500以上であることが好ましく、より好ましい重量平均分子量としては600〜5000、特に好ましい重量平均分子量は750〜2500である。ポリオールの分子量が500未満では相溶性に劣る。
ポリイソシアネートとしては、特に限定されることなく、例えば、芳香族系、脂肪族系、脂環式系等のポリイソシアネートが挙げられ、中でもトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等のジイソシアネート或いはこれらの3量体等が好適に用いられる。該ポリイソシアネート化合物の分子量は水酸基との反応性の点から150〜700のものが好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、特に限定されることなく、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールメタクリレートアクリレート等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造方法については、反応制御の安定性と製造時間の短縮の観点から、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて、末端イソシアネート基含有化合物を得た後、次いで該末端イソシアネート基含有化合物に、水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法が好ましく用いられる。
上記方法においては、ポリオールとポリイソシアネートをk:k+1(モル比)(kは1以上の整数である。)の反応モル比で反応させた後、更に、該末端イソシアネート基含有化合物に水酸基含有(メタ)アクリレートを1:2の反応モル比で反応させることが好ましい。
これらの反応においては、反応を促進する目的でジブチルチンジラウレート等の触媒を用いることも好ましい。
また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーにおいて、上記(メタ)アクリル系ポリオールを、ポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの合計に対して20質量%以上反応させることが好ましく、特には30〜80質量%、更には40〜70質量%が好ましい。かかる割合が20質量%未満ではアクリル系樹脂との相溶性が悪くなる傾向にあり好ましくない。
(アクリレートオリゴマー)
アクリレートオリゴマーの具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
MW 官能基数(p) MW/p
BASF製:Laromer LR8981 1300 3 433
BASF製:Laromer LR8985 1700 1.5 1133
その他、BASF製:Laromer LR8800,PO84F、PO94F等
(中間層の形成)
中間層を形成する中間層組成物は、前記ウレタンアクリレートオリゴマーまたはアクリレートオリゴマーと、光重合開始剤、溶媒を主成分とすることが好ましい。
中間層で用いられる光重合開始剤は一般的な重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光重合開始剤も光増感剤として使用できる。また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。重合開始剤は、ウレタンアクリレートオリゴマーまたはアクリレートオリゴマーに対して0.1〜10質量%含有させることが好ましく、より好ましくは1〜7質量%である。
溶媒は特に限定されるものではないが、具体的にはセルロースエステルを溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することが好ましい。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合物の他さらに溶解させない溶媒を含むことも好ましく、適宜の割合で混合することができる。
セルロースエステルを溶解または膨潤させる溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等がある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノールまたは炭化水素類(トルエン、キシレン)等がある。
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて透明支持体の表面にドライ膜厚0.1〜10μmで塗布することが好ましく、0.3〜5μmで塗布することがより好ましく、特に好ましくは0.3〜3μmで塗布することである。この範囲であれば、透明支持体からのセルロースエステルまたは添加剤等が位相差層に溶出して配向阻害を起こすのを防ぎ、かつ生産性、薄膜化の観点で好ましい。
中間層塗布後の乾燥温度は、10〜150℃が好ましく、より好ましくは40〜120℃である。乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
温度は余り低いと乾燥に時間がかかり、生産性が低下する。高すぎると、膜厚ムラが発生しやすくなり、中間層に膜厚ムラができると、位相差層に膜厚ムラが発生しやすくなる。位相差層の膜厚ムラはそのままリターデーションのムラとなり、パネルの表示性能が低下してしまうため好ましくない。乾燥時間は5〜600秒が好ましく、より好ましくは5〜200秒、さらに好ましくは5〜60秒である。上記範囲であれば、乾燥が十分行われかつ、生産性が高い。また、熱風による乾燥の場合、風は弱いほうが好ましい。風が強いと膜厚ムラが発生することがある。
中間層形成組成物を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2、好ましくは30〜300mJ/cm2である。
中間層は塗布乾燥中または後に、紫外線を照射するのがよく、必要な活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜1分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。これら活性線照射部の照度は50〜150mW/m2であることが好ましい。
また、紫外線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよい。
本発明の光学補償フィルムの製造方法では、中間層組成物を塗布、乾燥、紫外線照射を行って中間層を形成し、その上に位相差層を形成することが好ましい。
(偏光板)
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の光学補償フィルムの製造方法で作製した光学補償フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には該フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX2M、KC4UX2M、KC5UN、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC4FR−1、KC4FR−2、KC8UY−HA、KC8UX−RHA以上コニカミノルタオプト(株)製)も好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
(表示装置)
前記偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することができる。本発明の光学補償フィルムの製造方法で作製した光学異方性フィルムを用いた偏光板は、TN、VA、OCB、HAN、IPS等の各種駆動方式を採用した液晶表示装置の視野角特性を最適化することができる。
特に、VAモード型、IPSモード型のLCDで好ましく用いられる。本発明の偏光板を組み込んだ液晶表示装置は、画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の液晶表示装置でも、コントラストが高く、特に視角による色味変化を抑制し、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果がある。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜11と比較例1〜7)
《光学補償フィルム用の基材フィルムの作製》
(二酸化珪素分散液)
アエロジル972V(日本アエロジル(株)製) 12質量部
(1次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル)
エタノール 88質量部
以上をディゾルバーで30分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は200ppmであった。この二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを攪拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間攪拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。
〈芳香族末端エステル1〉
反応容器に、フタル酸820部(5モル)、1,2−プロピレングリコール608部(8モル)、安息香酸610部(5モル)及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.30部を一括して仕込み窒素気流中で攪拌下、還流凝縮器を付して過剰の1価アルコールを還流させながら、酸価が2以下になるまで130〜250℃で加熱を続け生成する水を連続的に除去した。次いで200〜230℃で6.65×103Pa〜最終的に4×102Pa以下の減圧下、留出分を除去し、この後濾過して次の性状を有する芳香族末端エステル1を得た。
粘度(25℃、mPa・s);19815
酸価 ;0.4
尚、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(分子末端に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価及び水酸基価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
(ドープ液)
セルロースエステル(アセチル基置換度1.80、プロピオニル基置換度0.70、総アシル基置換度2.50) 100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 5質量部
上記芳香族末端エステル1 5質量部
二酸化珪素分散希釈液 10質量部
メチレンクロライド 430質量部
エタノール 40質量部
上記ドープ組成物を密封容器に投入し、70℃まで加熱し、撹拌しながら、セルロースエステルを完全に溶解しドープ液を得た。次に、ドープ液を濾過した後、33℃に温度調整したドープ液を、ダイに送液して、ダイスリットからステンレスベルト上に幅2.5mで均一に流延した。ステンレスベルトの流延部は裏面から37℃の温水で加熱した。流延後、金属支持体上のドープ膜(ステンレスベルトに流延以降はウェブという)に44℃の温風をあてて乾燥させ、剥離の残留溶媒量が120質量%で剥離し、剥離の際の張力をかけて1.01倍の縦延伸倍率となるように延伸し、次いで、残留溶媒量24%、温度135℃にてテンターでウェブ端部を把持し、幅手方向に1.30倍の延伸倍率となるように延伸した。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持した後、幅方向の張力を緩和させ、幅保持を解放した後に120℃で乾燥させた。以上のようにして作製した膜厚60μm、幅2.5m、長さ5000mのセルロースエステルフィルムをコアに巻きとった。
このセルロースエステルフィルムの位相差は、Roは70nm、Rtは200nm、Rt/Roは2.86であった。
《位相差層の塗設》
次いで、得られたセルロースエステルフィルム上に、本発明の光学補償フィルムの製造方法による図1の光学補償フィルムの製造装置10を用いて、下記重合性液晶組成物を塗布し、位相差層を形成した光学補償フィルムを作製した。
〈重合性液晶組成物の調製及び塗設〉
下記式(a)の化合物45質量%、
下記式(b)の化合物45質量%、
下記式(c)の化合物10質量%、
からなる重合性液晶組成物を調製した。この重合性液晶組成物のネマチック−等方性液体相転移温度は73℃であった。上記重合性液晶組成物99.7質量%に光重合開始剤ルシリンTPO(バスフ社製)0.2質量%、ヒンダードアミンLS−765(三共ライフテック株式会社製)を0.1質量%添加し重合性液晶組成物を調製した。次に重合性液晶組成物を33質量%含有するキシレン溶液を調製した。このキシレン溶液を図1の製造装置10の塗布ヘッド302を用いてセルロースエステルフィルム上に塗布した。塗布時の周囲温度は20℃であった。塗布後、乾燥工程4における塗布膜面の温度(乾燥工程4の入り口部、中央部、出口部の3点を非接触温度計(キーエンス社製、IT2−80)にて測定しその平均値を塗布膜面の温度とした。)、乾燥工程直後の固形分比率(乾燥工程直後のフィルムをサンプリングして、真空乾燥装置で溶剤を除去する前後の質量より算出した。)、熱処理工程における塗布膜面の温度(熱処理工程8の入り口部、中央部、出口部の3点を非接触温度計(キーエンス社製、IT2−80)にて測定しその平均値を塗布膜面の温度とした。)、熱処理時間、熱処理工程8での塗布膜の面上5mmの位置における気体の相対速度を表1のように設定した。冷却工程後、活性放射線照射工程直前の塗布膜面の温度は、20℃となるように設定した。このようにして、光学補償フィルムNo.1〜18を作製し、実施例1〜11と比較例1〜7とした。その後、活性放射線照射工程7において、酸素濃度0.2体積%、周囲温度38℃にて250mJ/mmの紫外線を80秒照射して、重合性液晶組成物を硬化させ、1.4μm厚さの位相差層を得た。膜厚測定は、光干渉膜厚計FE−3000(大塚電子(株)製)を用いた。
得られた位相差層を塗設した光学補償フィルムを、偏光顕微鏡を用いて評価したところ、クロスニコル偏光子の間に挟んだ場合に黒色に見え、クロスニコル偏光子の間で該光学補償フィルムを傾けた場合に白色に観察された。従って、前記位相差層は垂直配向していることが確認できた。
《配向欠陥の評価》
実施例1〜11と比較例1〜7で作製した光学補償フィルムを偏光顕微鏡下で観察し、配向状態及び配向欠陥の評価を行い、位相差層中に生じた配向欠陥の数を光学顕微鏡で観察して調べた結果、点欠陥の個数(1.0mm2範囲の平均値)を数えた。
◎◎◎:0〜1個
◎◎ :2〜3個
◎ :4〜5個
○ :6〜10個
× :11個以上
以上の評価結果を表1に示す。
(実施例12)
実施例2の光学補償フィルムの製造において、位相差層を塗設する前に、下記中間層を塗設し、中間層を有する光学補償フィルム(No.19)を作製し、実施例12とした。
《中間層の塗設》
〈中間層用組成物の調製〉
紫光 UV−7605B(日本合成化学製) 25質量部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン)(イルガキュア184、チバ・ジャパン製) 1.25質量部
溶剤(PGME/イソプロピルアルコール混合溶媒(質量比20/80))
75質量部
〈中間層の塗設〉
上記作製した樹脂フィルム上に中間層用組成物をスリットダイで塗布し、熱風の温度80℃、乾燥時間30秒で乾燥した。続いて酸素濃度0.5%雰囲気中で高圧水銀灯により150mW/cm2の照射強度で、積算光量100mJの紫外線照射を行い、乾燥膜厚で1μmの中間層を設けた。
作製した光学補償フィルムを実施例2と同様にして、配向欠陥の評価を行った。評価結果を表1に示す。
表1の結果から、実施例1〜5と比較例1〜7を比較すると、乾燥工程が、塗布膜の膜面の温度を10〜40℃、乾燥工程後の塗布膜の残留溶剤比率が3〜15質量%であって、乾燥工程の後に、塗布膜の膜面の温度を前記重合性液晶化合物の相転位温度(73℃)以上で5〜15秒間加熱する熱処理工程を行うことで、配向欠陥が少なく、良好な光学補償フィルムを作製出来ることがわかる。また、実施例2と6と7を比較すると、熱処理工程における塗布膜の膜面の温度が、相転位温度以上120℃以下であると、より配向欠陥が少なく、好ましいことがわかる。また、実施例8〜11を比較すると、熱処理工程における塗布膜の膜面上5mmの位置の気体が、樹脂フィルムに対して1〜3m/秒の相対速度で移動することがより配向欠陥が少なくし、好ましいことが分かる。また、実施例2と実施例12とを比較すると、樹脂フィルムに中間層を設け、その上に位相差層を塗布することで配向欠陥がより少なくなり、好ましいことがわかる。
(実施例13〜24、比較例8〜14)
《偏光板の作製》
実施例1〜12及び比較例1〜7で作製したNo.1〜19の光学補償フィルムを、40℃の2.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液で60秒間アルカリ処理し、3分間水洗して鹸化処理し、アルカリ処理フィルムを得た。
次いで、厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
次に上記作製した偏光膜、及び市販の偏光板保護フィルムであるコニカミノルタタック、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)を上記の方法で鹸化処理し、完全鹸化型ポリビニルアルコール5質量%水溶液を粘着剤として、光学補償フィルム、偏光膜、KC4UYの順で積層して視認側の偏光板を作製した。
《液晶表示装置の作製》
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
IPSモード型液晶表示装置である日立製液晶テレビWooo W17−LC50の予め貼合されていた視認側の偏光板を剥がして、偏光板の吸収軸が一致するように上記作製した偏光板を液晶セルのガラス面に貼合しIPSモード型液晶表示装置を作製した。その際、偏光板の光学補償フィルムが液晶セル側になるように貼合し、実施例13〜24と比較例8〜17の液晶表示パネルとした。
《液晶表示装置の評価》
〈液晶表示装置の正面コントラスト評価〉
正面コントラストの評価にはELDIM社製EZ−contrastを用い、フィルム面法線方向の黒表示及び白表示時の透過光量を測定した。正面コントラストの評価は正面コントラスト=(白表示時の透過光量)/(黒表示時の透過光量)を算出した。コントラストが1000以上のものを「○」とし、実用上問題ないとの評価を行った。
〈カラーシフト評価〉
目視により見る方向を変えたときの色味の変動をカラーシフトとして評価した。
◎:カラーシフトが全く観察されない
○:カラーシフトがほんの部分的に観察される
×:カラーシフトがはっきりと部分的又は全体的に観察される
得られた結果を表2に示す。
表2の結果から、実施例13〜24及び比較例8〜14を比べると、本発明の光学補償フィルムの製造方法法を用いることにより、コントラストが良く、カラーシフトの少ない良好な表示特性を示し、配向欠陥が少ない光学補償フィルムの製造方法であることがわかる。