JP5282267B2 - 光学補償フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は棒状の重合性液晶化合物(以下、単に重合性液晶化合物とも云う)が垂直配向し、固定化された位相差層を有する光学補償フィルムの製造方法に関する。
横電界スイッチングモード型液晶表示装置は、他の液晶表示装置の液晶モード、例えばTNモードに対しては色味、コントラスト、視野角等に優れ、又垂直配向モード(VA、MVA,PVA等)に対しては視野角等の表示性能に優れ、更に視角による輝度変化の少なさ、中間調での応答速度の落ち込みの少なさといった優れた効果から、いわゆるIPS(In Plane Switching)モード型液晶表示装置として市場に活発に提供されるようになった。IPSモード型液晶表示装置としては、いわゆるIPSモード以外に、FFS(フリンジフィールドスイッチング)モード、FLC(強誘電性液晶)モードが挙げられる。従来、IPS方式は、例えば特開2000−131700号公報に記載されている様に、液晶セル自体は補償する必要がなく、補償フィルムなしでも広い視野角が得られると言うことが知られている。
ところが、液晶表示装置に用いる偏光板自体が、クロスニコル状態で吸収軸と45°方向に視角を変化させた場合に光モレが発生し、それによって液晶表示装置の周辺コントラストが低下してしまう現象が起こっている。そこで、例えば、特開2006−126770号公報、特開2005−31626号公報には、光学フィルムを偏光板に積層させて、偏光板の光モレを抑える形が開示されている。しかし、これらの方法は、ロールトゥーロールでの偏光板化が難しく、又粘着層や接着層を介して複数のフィルムを貼合するため、手間とコストが掛かり、更に透過率の低下や偏光板の厚膜化と言う問題が起こってしまう。
又、液晶ディスプレイが大型化するに従い、広視野角化への要求が大きくなっており、その対応として液晶セルの形式に種々の手法が提案されている。例えば広視野角化として特開2005−309379号公報に、垂直配向した棒状液晶化合物を有する位相差層を設けた光学補償フィルムを使用した偏光板を使用することで偏光板の光モレ、広視野角化に対して有効な技術が開示されている。しかしながら、これらの方法で製造されたフィルムは波長分散特性に問題があり、その結果、これらのフィルムを液晶表示装置に使用した場合、正面から視角がずれた時の色味の変化が著しく、又、棒状液晶化合物の配向の安定性により光モレ、広視野角化に対する効果が影響するため、更に棒状液晶化合物を垂直に配向させる技術が検討されてきた。
例えば、配向能を有する基材の上に、重合性棒状液晶組成物を塗布して塗膜を形成し、液晶規則性を示す温度に加熱して液晶規則性を発現させた後、液晶転移点以下の冷却温度に冷却して保持し、1時間以内に電離放射線を照射し重合性棒状液晶組成物を重合硬化する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
支持体上に重合性棒状液晶化合物が含まれる塗布液を塗布した後、塗布層を液晶形成温度に加熱し、次いで塗布層を重合性棒状液晶化合物の固体−液晶遷移温度以下に冷却機を有する冷却領域で冷却し、塗布層の温度を該固体−液晶遷移温度以下に維持しながら紫外線を照射して重合性棒状液晶化合物を重合硬化させることにより光学補償シートを製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
支持体上に、少なくとも1種の重合性基を有する等方相転移温度T℃の液晶性化合物を含む光学異方性層形成用組成物を塗布及び乾燥して光学異方性層を形成する工程と、光学異方性層に40℃以上T℃以下で、且つ酸素濃度10体積%以下で紫外線を少なくとも1度照射して、光学異方性層を硬化する硬化工程と、を含む光学異方性フィルムの製造方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載の技術では、活性放射線(電離放射線又は紫外線)の照射環境条件により広視野角化、色味に対して十分な機能発現が出来ない光学補償フィルムとなる場合があることが判った。
この様な状況から重合性棒状液晶化合物を含む位相差層を有し、広視野角化、色味の変化が少ない光学補償フィルムの製造方法の開発が望まれている。
特開2005−55486号公報 特開2006−227630号公報 特開2007−72032号公報
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は重合性液晶化合物を有する位相差層を有し、広視野角化、色味の変化が少ない光学補償フィルムの製造方法を提供することである。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
1.樹脂フィルム上に棒状の重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解させた塗布液を塗布する塗布工程と、前記塗布液が塗布され前記樹脂フィルムの上に形成された塗膜を乾燥し液晶層を形成する乾燥工程と、前記乾燥工程の後に配向工程と、前記液晶層を硬化する硬化工程とを有する光学補償フィルムの製造方法において、前記硬化工程は活性放射線照射装置と保持手段と温度制御手段とを使用し、前記活性放射線照射装置による前記液晶層への活性放射線の照射は、前記液晶層が形成された前記樹脂フィルムを前記保持手段に保持しながら行われ、前記配向工程を出て前記硬化工程に入る前の前記液晶層に含まれる前記有機溶媒の残留溶媒量が0.10g/m〜5.00g/mであり、且つ前記配向工程を出て前記硬化工程に入る前の前記液晶層の表面の温度T1と、前記活性放射線が半量照射された時点での前記液晶層の表面の温度T2とは、|T2−T1|≦20.0℃の関係を有することを特徴とする光学補償フィルムの製造方法。
2.前記表面の温度T1は20.0℃≦T1≦35.0℃であり、且つT2≧T1であることを特徴とする前記1に記載の光学補償フィルムの製造方法。
3.前記保持手段の表面の温度T3、硬化工程の内部の温度T4とした時、該表面の温度T3は15.0℃≦T3≦30.0℃、該内部の温度T4は20.0℃≦T4≦55.0℃で、且つT4>T3の関係を有し、T4−T3の値Aが、5.0℃≦A≦25.0℃であることを特徴とする前記1又は2に記載の光学補償フィルムの製造方法。
4.前記硬化工程は置換率12回/分〜15回/分で不活性気体により置換されていることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の光学補償フィルムの製造方法。
我々は、重合性液晶化合物を垂直配向させた後、活性放射線を照射させ垂直配向の状態を固定化する方法で作製した光学補償フィルムで、広視野角化、色味に対して十分な機能発現が出来ない故障が発生する原因に付き検討した結果次のことが判った。
一般的に重合性液晶化合物は、結晶状態から温度を上げるとある温度で液晶相(ネマチック相)を示す様になり、更に温度を上げると等方相(イソトロピック相)に相変化することが知られている。液晶相(ネマチック相)の状態では液晶化合物の分子が垂直配向しているため、方向によって性質が異なる異方性が発現し、等方相(イソトロピック相)の状態では液晶化合物の分子の向きは規則性がなくなるため異方性が発現しなくなる。
この様な重合性液晶化合物の性質を利用し、重合性液晶化合物を含む塗布液を塗布し、乾燥工程で液晶規則性を示す温度に加熱し、配向工程で液晶相(ネマチック相)を発現させた後、活性光線を照射し重合硬化し液晶相(ネマチック相)の状態で固定化することで光学補償フィルムが製造されている。この様な、製造方法で広視野角化、色味に対して十分な機能発現が出来ない故障が発生することは、塗膜中に局所的に配向が不十分な液晶群いわゆる配向欠陥が発生していることによると推定した。
何故、配向欠陥が発生するかを検討した結果、配向工程で重合性液晶化合物は、乾燥工程終了時の等方相(イソトロピック相)から液晶相(ネマチック相)状態に一次的に配向されているが、活性放射線を照射することで塗膜の面の温度が上昇することに伴い、重合性液晶化合物の配向は液晶相(ネマチック相)から等方相(イソトロピック相)へ再配向が生じる。この時、膜中の溶媒量が重合性液晶化合物の液晶分子の動きの自由度に影響を与え、膜中の溶媒量が多いと、重合性液晶化合物の液晶分子の動きの自由度が大きくなり液晶相(ネマチック相)から等方相(イソトロピック相)へ再配向が生じ易くなると推定した。
配向欠陥の発生を防止するには、活性放射線を照射する際、塗膜中の重合性液晶化合物の液晶分子の動きの自由度を小さくすることが効果的であることが判明し本発明に至った次第である。
重合性液晶化合物を有する位相差層を有し、広視野角化、色味の変化が少ない光学補償フィルムを提供することが出来る製造方法を提供することが出来た。
本発明の実施の形態を以下、図1〜図3を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は液晶表示装置の構成を示す概略図である。図1(a)は視認側偏光板に位相差層を有する液晶表示装置の構成を示す概略図である。図1(b)はバックライト(BL)側偏光板に位相差層を有する液晶表示装置の構成を示す概略図である。
図1(a)に示される液晶表示装置に付き説明する。図中、1aは液晶表示装置を示す。液晶表示装置1aは、視認側偏光板102と、バックライト側偏光板103との間に挟持された液晶セル101とを有する構成となっている。液晶セル101は、ガラス基板101aとガラス基板101bとの間に挟持された液晶層101cとを有する構成となっている。
視認側偏光板102は視認側(本図の上部を示す)より第1の保護フィルム102aと液晶セル101側に重合性液晶化合物の配向を固定化した位相差層102cを有する第2の保護フィルム102bとに挟持された第1の偏光膜102dとを有する構成となっている。尚、位相差層102cを有する第2の保護フィルム102bを光学補償フィルムと云う。
バックライト側偏光板103は第3の保護フィルム103aと第4の保護フィルム103bとに挟持された第2の偏光膜103cとを有する構成となっている。尚、位相差層102cは第1の偏光膜102dと第2の保護フィルム102bとの間に配置されてもよい。第2の保護フィルム102bの面内遅相軸b(図中の矢印方向)と液晶層101cの配向方向c(図中の矢印方向)は平行である。偏光膜の偏光透過軸a(図中の矢印方向)、ガラス基板のラビング軸d(図中の矢印方向)は図で示す方向にある。
図1(b)に示される液晶表示装置に付き説明する。図中、1bは液晶表示装置を示す。液晶表示装置1bは、視認側偏光板102′と、バックライト側偏光板103′との間に挟持された液晶セル101′とを有する構成となっている。液晶セル101′は、ガラス基板101′aとガラス基板101′bとの間に挟持された液晶層101′cとを有する構成となっている。
視認側偏光板102′は視認側(本図の上部側を示す)より第4の保護フィルム102′aと第3の保護フィルム102′bとに挟持された第2の偏光膜102′cとを有する構成となっている。バックライト側偏光板103′は液晶セル101′側に棒状液晶化合物の配向を固定化した位相差層103′cを有する第2の保護フィルム103′aと第1の保護フィルム103′bとに挟持された第1の偏光膜103′dとを有する構成となっている。位相差層103′cを有する第2の保護フィルム103′aを光学補償フィルムと云う。尚、位相差層103′cは第1の偏光膜103′dと第2の保護フィルム103′aの間に配置されてもよい。
第2の保護フィルム103′aの面内遅相軸b(図中の矢印方向)と液晶層101′cの配向方向c(図中の矢印方向)は直交である。偏光膜の偏光透過軸a(図中の矢印方向)、ガラス基板のラビング軸d(図中の矢印方向)は図で示す方向にある。本発明は本図に示される光学補償フィルムの製造方法に関するものである。
本発明に係わる光学補償フィルムは、重合性液晶化合物の溶液を樹脂フィルム基材上に塗布し、乾燥と熱処理(配向処理とも云う)と冷却処理を行い、活性放射線照射による重合もしくは熱による重合など液晶層を硬化し、重合性液晶化合物の配向の固定化を行い、垂直配向した重合性液晶化合物による位相差層を有することが特徴である。尚、垂直配向とは、得られた位相差層の光学位相差を評価するために、偏光顕微鏡を用いて評価した場合、位相差層をクロスニコル偏光膜の間に挟んだ場合に黒色に見え、クロスニコル偏光膜の間で位相差層を傾けた場合に白色に見えるものを垂直配向しているものと定義する。位相差層を形成する際には、いわゆる垂直配向膜を用いてもよく、垂直配向膜として特に制限はないが、液晶材料自身が空気界面で垂直配向する場合で、その配向規制力が空気界面と反対の界面まで及ぶ場合には該配向膜は特に必要ではなく、構成が簡素化出来る観点からもその方が好ましい。垂直配向膜を使用する場合は、特開2005−148473号公報などに記載されている(メタ)アクリル系ブロックポリマーを含有するブロックポリマー組成物の架橋体からなる配向膜等を用いることも好ましい。
本発明に係る位相差層は、Roが0nm〜10nm、Rtが−100nm〜−400nmの範囲にある垂直配向した重合性液晶化合物による位相差層である。更に、Roは0nm〜5nmの範囲がより好ましい。該位相差層を上記範囲とするためには、位相差層の膜厚制御、活性放射線照射、硬化時の温度、チルト角制御、及び支持体と空気界面でのプレチルト角の制御を行うことが好ましい。
尚、Roとは面内リターデーションを示し、Rtとは厚み方向リターデーションを示す。リターデーションRo、Rtは下記式により求められる。
式(i) Ro=(nx−ny)×d
式(ii) Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、nxは位相差層面内の遅相軸方向の屈折率、nyは位相差層面内の進相軸方向の屈折率、nzは位相差層の厚み方向の屈折率(屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)、dは位相差層の厚さ(nm)を表す。)
測定には自動複屈折計KOBURA・21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて測定した。次に、本発明の光学補償フィルムの製造方法に付き説明する。
図2は光学補償フィルムの製造装置の模式図である。
図中、2は製造装置を示す。製造装置2は樹脂フィルム供給工程201と、塗布する塗布工程202と、昇温乾燥する乾燥工程203と、配向する配向工程204と、活性放射線を照射し塗膜(液晶層)を硬化する硬化工程205と、回収工程206とを順番に有している。
樹脂フィルム供給工程201はロール状に巻かれた樹脂フィルム3の繰り出し装置(不図示)を有し、塗布工程202に樹脂フィルム3を供給する様になっている。
塗布工程202は樹脂フィルム3を保持するバックロール202aと、位相差層形成用塗布液を塗布する塗布装置202bとを有している。位相差層形成用塗布液としては、重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解した塗布液が使用される。
塗布装置202bとしては特に限定はなく、例えば、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、もしくは押し出しコート法等が挙げられる。
乾燥工程203は加熱・昇温装置203aを使用しており、塗布工程202から送られて来る樹脂フィルム3の上に塗布された重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解した位相差層形成用塗布液の溶媒を蒸発させ乾燥した液晶層を形成する工程である。203bは乾燥風の供給口を示し、203cは乾燥風の排出口を示す。
位相差層形成用塗布液を塗工し、重合性液晶化合物を含む塗膜を形成した後、この塗膜から溶媒を除去する方法としては、例えば、風乾、加熱除去、もしくは減圧除去、更にはこれらを組み合わせる方法等により行われる。塗膜から溶媒が除去されることにより、乾燥した液晶層が形成される。
加熱温度は、乾燥した液晶層の液晶分子の動きの自由度、乾燥した液晶層中の残留溶剤量、垂直配向するのに要する時間等を考慮し、乾燥終了時点で乾燥した液晶層の面の温度は45℃以上、100℃以下とすることが好ましい。乾燥温度が高過ぎる場合、乾燥工程での搬送張力によりフィルムが引っ張られ変形し、まだ乾燥していない位相差層形成用塗布液はレベリング効果によりフィルム上で平滑になろうとすることから結果的に膜厚差を生じることがある。このため仕上がりは大きなムラが生じてしまうことがある。フィルムの変形が生じる温度はフィルムの種別、厚み等の選定により異なるため適宜設定することが好ましい。
乾燥した液晶層の面の温度の測定は放射温度計により非接触で測定することが好ましく、例えば、EXERGEN社製赤外線熱電対IRt/cを用いることが出来る。
乾燥工程203での処理が終了した状態の乾燥した液晶層の厚さは、光学異方性等を考慮し、0.1μm〜20μmが好ましい。0.2μm〜10μmの範囲内であることがより好ましい。
乾燥終了後は速やかに配向工程204に移行することが好ましく、具体的には乾燥終了後10秒以内に配向工程204に移行することが好ましい。乾燥終了後降温状態に長く置く(乾燥終了後の温度を長く維持している)と液晶層中の残留溶剤が蒸発し、後の配向過程で液晶分子が動き難くなることから垂直配向するのに要する時間が長くなってしまうことがある。
配向工程204は乾燥工程203から搬送されてくる液晶層を形成した樹脂フィルムの温度を下げることで液晶層を垂直配向させる工程である。配向工程204は冷却手段(不図示)を有する冷却装置204aを使用している。204bは冷風の供給口を示し、204cは冷風の排出口を示す。冷却手段(不図示)としては、乾燥工程203から搬送されてくる液晶層を形成した樹脂フィルムの温度を下げることが可能であれば特に限定はなく、例えば冷却ロールへの接触、冷風の吹き付け等が挙げられ適宜選択することが可能である。本図は冷風を使用した場合を示している。
冷却ロールを使用した場合、冷却ロールは複数本を配設することも可能である。冷却ロールを冷却する方法は特に限定されないが、例えば冷水を流す方法、乾燥した液晶層を形成したフィルムを支持していない部分への冷風を吹き付ける方法、ペルチェ素子を使用した冷却手段を使用する方法等が挙げられる。
配向工程で降温し、液晶層を垂直配向した状態で活性放射線を照射し液晶層を硬化するする硬化工程で固定化するに際し、配向工程204から硬化工程205までの温度履歴により硬化前の液晶層の配向状態が異なる場合がある。配向工程204から硬化工程205までの環境は、硬化前の液晶層の配向状態を考慮し、15℃以上、40℃以下に20秒以上置くことが好ましい。20秒以上とは上限300秒を示す。
配向工程204では、乾燥工程203から搬送されてくる液晶層を形成した樹脂フィルムの降温速度は、急冷効果による配向性の向上、配向時間の短縮等を考慮し、120℃/分以上とすることが好ましい。更には240℃/分以上とすることが好ましい。120℃/分以上とは、上限1000℃/分を示す。
乾燥工程203から配向工程204へ入る時の液晶層を形成した樹脂フィルムの温度差は、液晶層の垂直配向性、垂直配向時間等を考慮し、5℃以上、90℃以下を維持する様に制御することが好ましい。
配向工程204の温度は、急冷効果による液晶層の垂直配向性の向上、配向時間の短縮効果は大きくなるが、温度を低くし過ぎて乾燥した液晶層の結晶化温度を下回ると、もはや液晶層中の重合性液晶化合物が流動性を失い垂直配向することが困難になってしまうことから、重合性液晶化合物の結晶化温度より、1℃以上高くすることが好ましい。より好ましくは10℃高くすることである。
硬化工程205は硬化前の液晶層を硬化させるためのエネルギーが与え固定化することで位相差層(硬化前の液晶層中の垂直配向した重合性液晶化合物を硬化することで固定化した層)を形成する工程である。エネルギーとしては、熱エネルギーでもよいが、通常は、重合を起こさせる能力がある活性放射線の照射によって硬化を行う。必要であれば重合 性液晶化合物内に重合開始剤が含まれていてもよい。
硬化工程205は活性放射線照射室205aと、保持手段のロール205bと、活性放射線照射装置205cと、温度制御手段(不図示)とを使用している。205a1は活性放射線照射室205aに設けられた不活性気体供給管を示し、205a2は排気管を示す。尚、活性放射線照射室205aは必要に応じて使用することが可能となっている。
205dは前記配向工程を出て前記硬化工程に入る前の液晶層の表面の温度T1を測定する温度測定装置を示す。205eは活性放射線を半量照射された時点での液晶層の表面の温度T2を測定する温度測定装置を示す。205fは活性放射線照射室205aの内部の温度T4(以下、硬化工程205の内部の温度を示す)を測定する温度測定装置を示す。205gは保持手段のロール205bの表面の温度T3を測定する温度測定装置を示す。保持手段のロール205bは温度測定装置205gの測定結果に基づき温度調整手段(不図示)を有している。保持手段のロール205bの温度調整手段(不図示)としては特に限定はなく、例えば、ロール内に温調された液体を流す方法が挙げられる。具体例として、例えばトクデン(株)製 精密流体循環ロール ハイブリッドロール等が挙げられる。
活性放射線照射室205aは温度測定装置205fの測定結果に基づき温度調整手段(不図示)を有している。活性放射線照射室205aの温度調整手段(不図示)としては特に限定はなく、例えば活性放射線照射室の壁を温調(壁内に温調された液体を流す)する方式や流入する気体の温度を制御する方法等が挙げられる。
温度測定装置205d、205e、205gは放射温度計により非接触で測定することが好ましく、例えば、EXERGEN社製赤外線熱電対IRt/cを用いることが出来る。
温度測定装置205fは、耐圧防爆形温度センサーd2G4(林電工(株)製)を用いることが出来る。
保持手段は、液晶層を形成した樹脂フィルムの平面性を維持し、保持手段と接触する液晶層を形成した樹脂フィルムの面にキズを漬けることなく保持することが出来れば特に限定はなく、例えばロール、平板等が挙げられる。本図はロールを使用した場合を示している。活性放射線照射装置205cで液晶層を形成した樹脂フィルムを照射する時、液晶層に含まれる有機溶媒の残留溶媒量は0.10g/m〜5.00g/mである。残留溶媒量が0.1質量%未満の場合、液晶層を構成している重合性液晶化合物の動きが規制されることにより、配向工程で液晶の配向がし難くなるため好ましくない。残留溶媒量が5質量%を超える場合は、活性放射線照射工程での昇温による層変化(イソトロピック層)の際に液晶層を構成している重合性液晶化合物が動き易くなり、垂直配向が乱れるので好ましくない。
残留溶媒量(g/m)は、乾燥した液晶層を有するセルロースエステルフィルムを10cm角に切り出し質量を測定し、その後オーブンにて110℃30分加熱し再度質量を測定した。この質量差より算出した1m当たりの溶媒量を残留溶媒量とした。
活性放射線照射装置205cで液晶層の表面を活性放射線を形成した樹脂フィルムを照射する時、活性放射線発生装置からの熱により液晶層の面の温度が上昇してしまう、これにより液晶の配向がみだれる。液晶の面の温度制御を行いながら活性放射線を照射する事が好ましい。
前記配向工程を出て前記硬化工程に入る前の液晶層の表面の温度T1と、活性放射線が半量照射された時点での液晶層の表面の温度T2との関係は、|T2−T1|≦20.0℃である。|T2−T1|≧21.0℃の場合は、液晶層が昇温により層変化を起こし、配向が乱れるため好ましくない。
前記温度T1は、液晶層を構成している重合性液晶化合物の配向性等を考慮し、20.0℃≦T1≦35.0℃で、且つT2≧T1あることが好ましい。
保持手段の表面の温度T3は、重合性液晶化合物の凝集、配向膜の均一性、液晶の相変化(イソトロピック相に)、配向性等を考慮し、15.0℃≦T3≦30.0℃であることが好ましい。
活性放射線照射室205aの内部の温度T4は、重合性液晶化合物の凝集、配向膜の均一性、乾燥速度ムラ、液晶層の膜厚ムラ等を考慮し、20.0℃≦T4≦55.0℃であることが好ましい。又、保持手段の表面の温度T3と活性放射線照射室205aの内部の温度T4との関係は、重合性液晶化合物の配向性等を考慮し、T4>T3の関係を有し、T4−T3の値Aが、5.0℃≦A≦25.0℃であることが好ましい。
活性放射線が半量照射された時点での液晶層の面の温度T2、保持手段の表面の温度T3、活性放射線照射室205aの内部の温度T4の温度制御は図3で説明する。
活性放射線照射装置205cで液晶層を形成した樹脂フィルムを照射する時、活性放射線照射室205aの不活性気体による置換率は、残留溶媒量、配向性、配向の固定化等を考慮し、12回/分〜15回/分が好ましい。尚、15回とは活性放射線照射室205aの全容積を15回置換することを意味する。本発明では、1回置換とは活性放射線照射室205aの全容積と同じ不活性気体を供給した時を云う。尚、不活性気体は特に限定は無く、例えば酸素濃度1.4%未満の窒素ガス、ヘリウム、アルゴンなどの希ガスがあげられる。
活性放射線としては、重合性液晶化合物を重合させることが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外線又は可視光線が使用され、波長が150nm〜500nmの光が好ましく、より好ましくは250nm〜450nmであり、更に好ましくは300nm〜400nmの波長の紫外線である。
本発明においては、紫外線(UV)を活性放射線として照射し、紫外線で重合開始剤からラジカルを発生させ、ラジカル重合を行わせる方法が好ましい。活性放射線としてUVを用いる方法は、既に確立された技術であることから、用いる重合開始剤を含めて、本発明への応用が容易であるからである。
この紫外線を照射するための光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、もしくはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等を挙げることが出来る。中でもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ等の使用が推奨される。照射強度は、液晶層を形成している重合性液晶化合物の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜に調整することが可能である。
図3は図2に示す硬化工程の活性放射線照射室での各部材の関係を示すブロック図である。以下にブロック図により活性放射線照射室での各部材の関係を説明する。
前記配向工程を出て前記硬化工程に入る前の液晶層の表面の温度T1を測定する温度測定装置205dからの情報と、活性放射線が半量照射された時点で液晶層に照射する時の液晶層の表面の温度T2を測定する温度測定装置205eからの情報が温度制御手段のCPUに入力される。入力された情報は予め温度T1と温度T2との関係(20.0℃≦T1≦35.0℃、|T2−T1|≦20.0℃、且つT2≧T1)が記憶されたメモリからの信号とを比較され、関係を満たしていない時は、保持手段(ロール205b)と活性放射線照射室(205a)の温度に対して制御が行われる。
保持手段(ロール205b)の表面の温度T3の制御は、保持手段のロール205bの温度T3を測定する温度測定装置205gからの情報が温度制御手段のCPUに入力される。入力された情報は予め記憶されたメモリからの信号(15.0℃≦T3≦30.0℃)とを比較され、保持手段(ロール205b)に配設された加熱手段又は冷却手段の何れかを作動させることで保持手段(ロール205b)の温度制御が行われる。
活性放射線照射室205aの内部の温度T4の制御は、活性放射線照射室205aの内部の温度T4を測定する温度測定装置205fからの情報が温度制御手段のCPUに入力される。入力された情報は予め記憶されたメモリからの信号(20.0℃≦T4≦55.0℃)とを比較され活性放射線照射室205aに配設された加熱手段又は冷却手段の何れかを作動させることで活性放射線照射室205aの温度制御が、T4−T3の値Aが、5.0℃≦A≦25.0℃になる様に行われる。
図1〜図3に示す様に重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解した塗布液を塗布し、加熱乾燥し配向工程での処理が終了した後、硬化工程で活性放射線の照射を保持手段に保持しながら、液晶層に含まれる有機溶媒の残留溶媒量が0.1質量%〜5質量%で、且つ前記配向工程を出て前記硬化工程に入る前の前記液晶層の表面の温度T1と、前記活性放射線が半量照射された時点での前記液晶層の表面の温度T2とは、|T2−T1|≦20.0℃の関係を有して重合性液晶化合物の垂直配向を固定化する方法で光学補償フィルムを製造することで次の効果が得られる。
1.安定した光学異方性(配向欠陥がない)を有する光学補償フィルムの製造が可能となった。
2.重合性液晶化合物をフィルム面に対して垂直配向した位相差層を有する光学補償フィルムを液晶表示装置に使用することで高視野角を得ることが可能となった。
3.重合性液晶化合物をフィルム面に対して垂直配向した位相差層を有する光学補償フィルムを液晶表示装置に使用することで目視方向の違いによる色味の変化が少ない液晶表示装置を得ることが可能となった。
次に本発明に係わる光学補償フィルムに用いる材料に付き説明する。
(重合性液晶化合物)
位相差層に用いる重合性液晶化合物は、所定の活性放射線を照射することにより重合させて用いることが出来、重合させた状態では配向状態は固定化されるようになっている。重合性液晶化合物としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、もしくは重合性液晶ポリマーの何れかを用いることが出来、相互に混合して用いることも出来る。重合性液晶化合物は、配向状態を固定化することが可能であるので、液晶の配向を低温で容易に行うことが可能であり、且つ使用に際しては配向状態が固定化されているので、温度等の使用条件に係わらず使用することが出来る。
重合性液晶化合物としては、特願2006−304957号、特開2005−55486号公報、特開2005−173503号公報、特開2005−265889号公報、特開2005−309379号公報、特開2006−227630号公報、特開2006−330524号公報、特開2007−057607号公報、特開2007−072163号公報、特開2007−119415号公報、特開2007−133299号公報、特開2007−169363号公報、特開2007−191442号公報等に記載されている重合性液晶化合物が挙げられる。
(光重合開始剤)
重合性液晶化合物に加え、必要に応じて光重合開始剤を用いてもよい。電子線照射により重合性液晶化合物を重合させる際には、光重合開始剤が不要な場合があるが、一般的に用いられている。例えば紫外線(UV)照射による硬化の場合においては、通常光重合開始剤が重合促進のために用いられるからである。
光重合開始剤としては、ベンジル(ビベンゾイルとも云う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、もしくは1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることが出来る。光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01%〜20%が好ましく、より好ましくは0.1%〜10%であり、更に好ましくは0.5%〜5%の範囲で、本発明に係わる重合性液晶化合物に添加することが出来る。尚、光重合開始剤の他に、本発明の目的が損なわれない範囲で増感剤を添加することも可能である。
(重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解させた塗布液に使用する溶媒)
溶媒としては、上述した重合性液晶化合物等を溶解することが可能な溶媒であり、且つ透明樹脂フィルムの性状を低下させない溶媒であれば特に限定されるものではなく、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、もしくは2,4−ペンタンジオン等のケトン類;酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、もしくはγ−ブチロラクトン等のエステル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、もしくはジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、もしくはオルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、もしくはブチルセルソルブ等のアルコール類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等の1種又は2種以上が使用可能である。
単一種の溶媒を使用しただけでは、重合性液晶化合物等の溶解性が不十分であったり、上述したようにフィルムが侵食されたりする場合がある。しかし2種以上の溶媒を混合使用することにより、この不都合を回避することが出来る。上記した溶媒の中にあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素系溶媒とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいのは、エーテル類又はケトン類と、グリコール類との混合系である。溶液の濃度は、重合性液晶化合物等の溶解性や製造しようとする液晶層の膜厚に依存するため一概には規定出来ないが、通常は1%〜60%が好ましく、より好ましくは3%〜40%の範囲で調整される。
(その他添加物)
本発明に係わる重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解させた塗布液には、本発明の目的を損なわない範囲内で、上記以外の化合物を添加することが出来る。添加出来る化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸又は多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族もしくは脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物、又はアクリル基もしくはメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等が挙げられる。本発明に係わる重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解させた塗布液中の上記の化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で選択され、一般的には液晶層を形成する組成物の40%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。これらの化合物の添加により、本発明に係わる重合性液晶化合物の硬化性が向上し、得られる液晶層の機械強度が増大し、又その安定性が改善される。
(重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解させた塗布液に使用する界面活性剤)
本発明に係わる重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解させた塗布液には、塗工を容易にするために界面活性剤等を加えることが出来る。添加可能な界面活性剤を例示すると、イミダゾリン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体等の陽イオン系界面活性剤;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第一級或いは第二級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族或いは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤;ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤;パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル・親油基含有オリゴマーパーフルオロアルキル基含有ウレタン等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、液晶材料の種類、溶媒の種類、更には溶液を塗工する配向膜の種類にもよるが、通常は溶液に含まれる重合性液晶化合物の10ppm〜10%が好ましく、より好ましくは100ppm〜5%であり、更に好ましくは0.1〜1%の範囲である。
(基材)
本発明に係わる光学補償フィルムに用いられる樹脂フィルム(基材)としては、製造が容易であること、光学的に透明であること等が好ましく、特に透明な樹脂フィルムであることが好ましい。透明とは、可視光の透過率60%以上であることを指し、好ましくは80%以上であり、更に好ましくは90%以上である。
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム又はガラス板等を挙げることが出来る。中でもノルボルネン系樹脂フィルム、及びセルロースエステル系フィルムが好ましい。ノルボルネン系樹脂フィルムとは、ノルボルネン構造を有する非晶性ポリオレフィンフィルムで、例えば三井石油化学(株)製のAPOや日本ゼオン(株)製のゼオネックス、JSR(株)製のARTON等がある。
本発明に係わる光学補償フィルムにおいては、これらの中でもセルロースエステル系フィルムを用いることが好ましく、特に第2の保護フィルムの基材は、後述する特定のセルロースエステルを主成分とするセルロースエステル系フィルムであることが好ましい。セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレートが好ましく、中でもセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。市販のセルロースエステルフィルムとしては、例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC4FR、KC8UY−HA、KC8UX−RHA(コニカミノルタオプト(株)製)等が、製造上、コスト面、透明性、密着性等の観点から好ましく用いられる。これらのフィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
〈セルロースエステル〉
本発明に係わる光学補償フィルムに使用する前記セルロースエステル系フィルムに用いるセルロースエステルを詳細に説明する。セルロースエステルは、炭素数2〜22程度の脂肪族カルボン酸エステル又は芳香族カルボン酸エステル或いは脂肪族カルボン酸エステルと芳香族カルボン酸エステルの混合エステルが好ましく用いられ、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。具体的には、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートフタレート等や、特開平10−45804号公報、同8−231761号公報、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルである。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルロースアセテートプロピオネートである。
該セルロースエステルは、炭素原子数2〜22のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基の置換度をYとした時、下記式1及び2を同時に満たすセルロースエステルである。
式1 2.00≦X+Y≦2.60
式2 0.10≦Y≦1.00
中でも2.30≦X+Y≦2.55が好ましく、2.40≦X+Y≦2.55がより好ましい。又、0.50≦Y≦0.90が好ましく、0.70≦Y≦0.90がより好ましい。
アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することが出来る。又、これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することが出来る。
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが出来る。特に綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)、木材パルプから合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
又、これらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて常法により反応させて得ることが出来る。
アセチルセルロースの場合、酢化率を上げようとすれば、酢化反応の時間を延長する必要がある。但し、反応時間を余り長く取ると分解が同時に進行し、ポリマー鎖の切断やアセチル基の分解などが起こり、好ましくない結果をもたらす。従って、酢化度を上げ、分解をある程度抑えるためには反応時間はある範囲に設定することが必要である。反応時間で規定することは反応条件が様々であり、反応装置や設備その他の条件で大きく変わるので適切でない。ポリマーの分解は進むにつれ、分子量分布が広くなってゆくので、セルロースエステルの場合にも、分解の度合いは通常用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値で規定出来る。即ちセルローストリアセテートの酢化の過程で、余り長過ぎて分解が進み過ぎることがなく、且つ酢化には十分な時間酢化反応を行わせしめるための反応度合いの1つの指標として用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値を用いることが出来る。
本発明に係わるセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。尚、本発明においては、セルロースエステルフィルムが、材料として、Mw/Mnの値が1.4〜3.0であるセルロースエステルを含有すればよいが、フィルムに含まれるセルロースエステル(好ましくはセルローストリアセテート又はセルロースアセテートプロピオネート)全体のMw/Mnの値は1.4〜3.0の範囲であることがより好ましい。セルロースエステルの合成過程で1.4未満とすることは困難であり、ゲル濾過などによって分画することで分子量の揃ったセルロースエステルを得ることは出来る。しかしながらこの方法はコストが著しく掛かる。又、3.0以下であると平面性が維持されやすく好ましい。尚、より好ましくは1.7〜2.2である。
本発明に係わるセルロースエステルの分子量は、数平均分子量(Mn)で80000〜200000のものを用いることが好ましい。100000〜200000のものがより好ましく、150000〜200000が更に好ましい。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することが出来る。測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13のサンプルによる校正曲線を使用した。13のサンプルは、ほぼ等間隔に得ることが好ましい。
セルロースエステルの製造法は、特開平10−45804号公報に記載の方法で得ることが出来る。
又、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分については、地下水や河川の水等に多く含まれ、これが多いと硬水となり、飲料水としても不適当であるが、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と、又多くの配位子と配位化合物即ち、錯体を形成し易く、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
カルシウム(Ca)成分は60ppm以下、好ましくは0〜30ppmである。マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行った後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析を行うことによって求めることが出来る。
本発明に係わるセルロースエステルフィルムの屈折率は550nmで1.45〜1.60であるものが好ましく用いられる。フィルムの屈折率の測定方法は、アッベ屈折率計を使用し、日本工業規格JIS K 7105に基づき測定する。
〈添加剤〉
セルロースエステルフィルムには可塑剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤等の添加剤を含有させることが出来る。
前述のように本発明に係る光学補償フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムは、リターデーションがRoは0〜5nm、Rtは−10〜10nmの範囲にあることが好ましい。上記数値範囲とするためには、第3の保護フィルムがセルロースエステルであれば、溶融製膜にて製造するか、或いは溶液製膜にて、途中でガラス転移点以上の温度で15秒以上保持するか、或いはセルロースエステルと反対の複屈折発現性を持つ添加剤を加えることが好ましい。中でも、リターデーションを上記範囲内に調整するためには、下記アクリルポリマーを含有することが好ましい。
〈アクリルポリマー〉
本発明に係る第3の保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムは、延伸方向に対して負の配向複屈折性を示す重量平均分子量が500以上30000以下であるアクリルポリマーを含有することが好ましく、該アクリルポリマーは芳香環を側鎖に有するアクリルポリマー又はシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーであることが好ましい。
アクリルポリマーの重量平均分子量が500以上30000以下のものでアクリルポリマーの組成を制御することで、セルロースエステルとアクリルポリマーとの相溶性を良好にすることが出来る。
特に、アクリルポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリルポリマー又はシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーについて、好ましくは重量平均分子量が500以上10000以下のものであれば、上記に加え、製膜後のセルロースエステルフィルムの透明性が優れ、透湿度も極めて低く、偏光板用保護フィルムとして優れた性能を示す。
アクリルポリマーは重量平均分子量が500以上30000以下であるから、オリゴマーから低分子量ポリマーの間にあると考えられるものである。この様なポリマーを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量を余り大きくしない方法で出来るだけ分子量を揃えることの出来る方法を用いることが望ましい。
重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号又は同2000−344823号公報にあるような1つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることが出来る。特に、該公報に記載の方法が好ましい。ポリマーを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
エチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーを構成するエチレン性不飽和モノマー単位としては:ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等;アクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル等;メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることが出来る。上記モノマーで構成されるポリマーはコポリマーでもホモポリマーでもよく、ビニルエステルのホモポリマー、ビニルエステルのコポリマー、ビニルエステルとアクリル酸又はメタクリル酸エステルとのコポリマーが好ましい。
アクリルポリマーと言う(単にアクリルポリマーと云う)のは、芳香環或いはシクロヘキシル基を有するモノマー単位を有しないアクリル酸又はメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はコポリマーを指す。芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーと言うのは、必ず芳香環を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリルポリマーである。
又、シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーと言うのは、シクロヘキシル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリルポリマーである。
芳香環及びシクロヘキシル基を有さないアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることが出来る。
アクリルポリマーは上記モノマーのホモポリマー又はコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30質量%以上を有していることが好ましく、又、メタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40質量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
芳香環を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2又は4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2又は4−クロロフェニル)、アクリル酸(2又は3又は4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2又は3又は4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(o又はm又はp−トリル)、メタクリル酸(o又はm又はp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)等を挙げることが出来るが、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニチル、メタクリル酸フェネチルを好ましく用いることが出来る。
芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーの中で、芳香環を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位が20質量%〜40質量%を有し、且つアクリル酸又はメタクリル酸メチルエステルモノマー単位を50質量%〜80質量%有することが好ましい。該ポリマー中、水酸基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位を2〜20質量%有することが好ましい。
シクロヘキシル基を有するアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等を挙げることが出来るが、アクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸シクロヘキシルを好ましく用いることが出来る。
シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマー中、シクロヘキシル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位を20質量%〜40質量%を有し且つ50質量%〜80質量%有することが好ましい。又、該ポリマー中、水酸基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位を2質量%〜20質量%有することが好ましい。
上述のエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリルポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリルポリマー及びシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーは何れもセルロース樹脂との相溶性に優れる。
これらの水酸基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマーの場合はホモポリマーではなく、コポリマーの構成単位である。この場合、好ましくは、水酸基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位がアクリルポリマー中2質量%〜20質量%含有することが好ましい。側鎖に水酸基を有するポリマーも好ましく用いることが出来る。水酸基を有するモノマー単位としては、前記したモノマーと同様であるが、アクリル酸又はメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル、又はこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることが出来、好ましくは、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルである。ポリマー中に水酸基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルモノマー単位はポリマー中2質量%〜20質量%含有することが好ましく、より好ましくは2質量%〜10質量%である。
前記のようなポリマーが上記の水酸基を有するモノマー単位を2質量%〜20質量%含有したものは、勿論セルロースエステルとの相溶性、保留性、寸法安定性が優れ、透湿度が小さいばかりでなく、偏光板保護フィルムとしての偏光子との接着性に特に優れ、偏光板の耐久性が向上する効果を有している。
アクリルポリマーの主鎖の少なくとも一方の末端に水酸基を有するようにする方法は、特に主鎖の末端に水酸基を有するようにする方法であれば限定ないが、アゾビス(2−ヒドロキシエチルブチレート)のような水酸基を有するラジカル重合開始剤を使用する方法、2−メルカプトエタノールのような水酸基を有する連鎖移動剤を使用する方法、水酸基を有する重合停止剤を使用する方法、リビングイオン重合により水酸基を末端に有するようにする方法、特開2000−128911号又は同2000−344823号公報にあるような1つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等により得ることが出来、特に該公報に記載の方法が好ましい。
この公報記載に関連する方法で作られたポリマーは、綜研化学社製のアクトフロー・シリーズとして市販されており、好ましく用いることが出来る。上記の末端に水酸基を有するポリマー及び/又は側鎖に水酸基を有するポリマーは、ポリマーの相溶性、透明性を著しく向上する効果を有する。
更に、延伸方向に対して負の配向複屈折性を示すエチレン性不飽和モノマーとして、スチレン類を用いたポリマーであることが負の屈折性を発現させるために好ましい。スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記不飽和エチレン性モノマーとして挙げた例示モノマーと共重合してもよく、又複屈折性を制御する目的で、2種以上の上記ポリマーを用いてセルロースエステルに相溶させて用いてもよい。
更に、本発明に係わるセルロースエステルフィルムは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーXと、より好ましくは芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーYとを含有することが好ましい。
(ポリマーX、ポリマーY)
ポリマーXは分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーである。好ましくは、Xaは分子内に芳香環と親水性基を有しないアクリル又はメタクリルモノマー、Xbは分子内に芳香環を有せず親水性基を有するアクリル又はメタクリルモノマーである。
ポリマーXは、下記一般式(X)で表される。
一般式(X)
一般式(X)
−(Xa)m−(Xb)n−(Xc)p−
更に好ましくは、下記一般式(X−1)で表されるポリマーである。
一般式(X−1)
−[CH−C(−R1)(−COR2)]m−[CH−C(−R3)(−COR4−OH)−]n−[Xc]p−
(式中、R1、R3、R5は、H又はCHを表す。R2は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基を表す。R4、R6は−CH−、−C−又は−C−を表す。Xcは、Xa、Xbに重合可能なモノマー単位を表す。m、n及びpは、モル組成比を表す。但し、m≠0、n≠0、m+n+p=100である。)
ポリマーXを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
Xにおいて、親水性基とは、水酸基、エチレンオキシド連鎖を有する基を言う。
分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることが出来る。中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(i−、n−)であることが好ましい。
分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbは、水酸基を有するモノマー単位として、アクリル酸又はメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、又はこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることが出来、好ましくは、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)及びメタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)である。
Xcとしては、Xa、Xb以外のもので且つ共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば、特に制限はないが、芳香環を有していないものが好ましい。
Xa、Xb及びXcのモル組成比m:nは99:1〜65:35の範囲が好ましく、更に好ましくは95:5〜75:25の範囲である。Xcのpは0〜10である。Xcは複数のモノマー単位であってもよい。
Xaのモル組成比が多いとセルロースエステルとの相溶性が良化するがフィルム厚み方向のリターデーション値Rtが大きくなる。Xbのモル組成比が多いと上記相溶性が悪くなるが、Rtを低減させる効果が高い。又、Xbのモル組成比が上記範囲を超えると製膜時にヘイズが出る傾向があり、これらの最適化を図りXa、Xbのモル組成比を決めることが好ましい。
ポリマーXの分子量は重量平均分子量が5000以上30000以下であり、更に好ましくは8000以上25000以下である。
重量平均分子量を5000以上とすることにより、セルロースエステルフィルムの、高温高湿下における寸法変化が少ない、偏光板保護フィルムとしてカールが少ない等の利点が得られ好ましい。重量平均分子量が30000を以内とした場合は、セルロースエステルとの相溶性がより向上し、高温高湿下においてのブリードアウト、更には製膜直後でのヘイズの発生が抑制される。
ポリマーXの重量平均分子量は、公知の分子量調節方法で調整することが出来る。そのような分子量調節方法としては、例えば四塩化炭素、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル等の連鎖移動剤を添加する方法等が挙げられる。又、重合温度は通常室温から130℃、好ましくは50℃から100℃で行われるが、この温度又は重合反応時間を調整することで可能である。
重量平均分子量の測定方法は下記方法によることが出来る。
(重量平均分子量測定方法)
重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
ポリマーYは芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーである。
重量平均分子量500以上ではポリマーの残存モノマーが減少し好ましい。又、3000以下とすることは、リターデーション値Rt低下性能を維持するために好ましい。
Yaは、好ましくは芳香環を有さないアクリル又はメタクリルモノマーである。
ポリマーYは、下記一般式(Y)で表される。
一般式(Y)
−(Ya)k−(Yb)q−
更に好ましくは、下記一般式(Y−1)で表されるポリマーである。
一般式(Y−1)
−[CH−C(−R5)(−COR6)]k−[Yb]q−
(式中、R5は、H又はCH3を表す。R6は炭素数1〜12のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。Ybは、Yaと共重合可能なモノマー単位を表す。k及びqは、モル組成比を表す。但し、k≠0、k+q=100である。)
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はない。Ybは複数であってもよい。k+q=100、qは好ましくは0〜30である。
芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーYを構成するエチレン性不飽和モノマーYaはアクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることが出来る。
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はないが、ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル等が好ましい。Ybは複数であってもよい。
ポリマーX、Yを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量を余り大きくしない方法で出来るだけ分子量を揃えることの出来る方法を用いることが望ましい。係る重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号又は同2000−344823号公報にあるような1つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることが出来る。特に、分子中にチオール基と2級の水酸基とを有する化合物を連鎖移動剤として使用する重合方法が好ましい。
この場合、ポリマーX及びポリマーYの末端には、重合触媒及び連鎖移動剤に起因する水酸基、チオエーテルを有することとなる。この末端残基により、ポリマーX、Yとセルロースエステルとの相溶性を調整することが出来る。
ポリマーX及びYの水酸基価は30〜150[mgKOH/g]であることが好ましい。
(水酸基価の測定方法)
この測定は、JIS K 0070(1992)に準ずる。この水酸基価は、試料1gをアセチル化させた時、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数と定義される。具体的には試料Xg(約1g)をフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬(無水酢酸20mlにピリジンを加えて400mlにしたもの)20mlを正確に加える。フラスコの口に空気冷却管を装着し、95〜100℃のグリセリン浴にて加熱する。
1時間30分後、冷却し、空気冷却管から精製水1mlを加え、無水酢酸を酢酸に分解する。次に電位差滴定装置を用いて0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定を行い、得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。更に空試験として、試料を入れないで滴定し、滴定曲線の変曲点を求める。
水酸基価は、次の式によって算出する。
水酸基価={(B−C)×f×28.05/X}+D
(式中、Bは空試験に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、Cは滴定に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、fは0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Dは酸価、又、28.05は水酸化カリウムの1mol量56.11の1/2を表す)
上述のXポリマーポリマーYは何れもセルロースエステルとの相溶性に優れ、蒸発や揮発もなく生産性に優れ、偏光板用保護フィルムとしての保留性がよく、透湿度が小さく、寸法安定性に優れている。
ポリマーXとポリマーYのセルロースエステルフィルム中での含有量は、下記式(i)、式(ii)を満足する範囲であることが好ましい。ポリマーXの含有量をXg(質量%=ポリマーXの質量/セルロースエステルの質量×100)、ポリマーYの含有量をYg(質量%)とすると、
式(i) 5≦Xg+Yg≦35(質量%)
式(ii) 0.05≦Yg/(Xg+Yg)≦0.4
式(i)の好ましい範囲は、10〜25質量%である。
ポリマーXとポリマーYは総量として5質量%以上であれば、リターデーション値Rtの低減に十分な作用をする。又、総量として35質量%以下であれば、偏光子PVAとの接着性が良好である。
ポリマーXとポリマーYは後述するドープ液を構成する素材として直接添加、溶解するか、もしくはセルロースエステルを溶解する有機溶媒に予め溶解した後ドープ液に添加することが出来る。
〈その他の添加剤〉
前記セルロースエステル系フィルムには、通常のセルロースエステル系フィルムに添加することの出来る添加剤を含有させることが出来る。これらの添加剤としては、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子等を挙げることが出来る。
可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等を好ましく用いることが出来る。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることが出来る。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることが出来る。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる。好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来る。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール、等を上げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトール、であることが好ましい。多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを上げることが出来る。脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを上げることが出来る。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を上げることが出来る。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を上げることが出来る。特に安息香酸であることが好ましい。多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。又、多価アルコール中のOH基はカルボン酸で全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。これらの可塑剤は単独又は併用するのが好ましい。これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。
(微粒子)
本発明に係わるセルロースエステルフィルムには微粒子を用いることが好ましい。微粒子は、無機化合物でも有機化合物でもどちらも用いることが出来る。無機化合物の例としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。微粒子は珪素を含むものが濁度を低くする点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均粒径は5nm〜50nmが好ましく、更に好ましいのは7nm〜20nmである。これらは主に粒径0.05μm〜0.3μmの2次凝集体として含有されることが好ましい。セルロースエステルフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.05質量%〜1質量%であることが好ましく、特に0.1質量%〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成のセルロースエステルフィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがセルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。
(偏光板)
偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明に係わる第1〜第4の保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には該フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC4FR、以上コニカミノルタオプト(株)製)も好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
(表示装置)
本発明に係わる偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することが出来る。本発明に係わる偏光板は、VA、IPS等の各種駆動方式を採用した液晶表示装置の視野角特性を最適化することが出来る。本発明に係わる偏光板を組み込んだ液晶表示装置は、画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の液晶表示装置でも、コントラストが高く、特に視角による色味変化を抑制し、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果がある。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
《光学補償フィルムの作製》
(二酸化珪素分散液の調製)
アエロジル972V(日本アエロジル(株)製) 12質量部
(一次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル)
エタノール 88質量部
以上をディゾルバーで30分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は200ppmであった。二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを攪拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間攪拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を調製した。
(ドープ液の調製)
セルロースエステル(アセチル基置換度2.50、プロピオニル基置換度0.10、総アシル基置換度2.60) 100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 5質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5質量部
二酸化珪素分散希釈液 10質量部
チヌビン109(チバ・ジャパン(株)製) 1.2質量部
チヌビン171(チバ・ジャパン(株)製) 0.8質量部
メチレンクロライド 440質量部
エタノール 40質量部
上記ドープ組成物を密封容器に投入し、70℃まで加熱し、撹拌しながら、セルロースエステルを完全に溶解しドープ液を調製した。
(セルロースエステルフィルムの作製)
準備したドープ液を濾過した後、33℃に温度調整しダイに送液して、ダイスリットからステンレスベルト上に幅2.5mで均一に流延した。ステンレスベルトの流延部は裏面から37℃の温水で加熱した。流延後、金属支持体上のドープ膜(ステンレスベルトに流延以降はウェブと云う)に44℃の温風を当てて乾燥させ、剥離の残留溶媒量が120質量%で剥離し、剥離の際の張力を掛けて1.1倍の縦延伸倍率となるように延伸し、次いで、残留溶媒量24%、温度135℃にてテンターでウェブ端部を把持し、幅手方向に1.2倍の延伸倍率となるように延伸した。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持した後、幅方向の張力を緩和させ、幅保持を解放した後に120℃で乾燥させた。以上のようにして作製した膜厚30μm、幅2.65m、長さ7500mのセルロースエステルフィルムをコアに巻き取った。
(光学補償フィルムの製造)
図2に示す製造装置を使用し、準備したセルロースエステルフィルムの上に以下に示す重合性液晶化合物層形成用塗布液を搬送速度10m/minで塗布し、硬化工程で活性放射線を照射する時の残留溶媒量を表1に示す様になるように乾燥工程で処理し液晶層を形成した後、配向工程で温度30℃で液晶層を垂直配向させ、硬化工程で表1示す条件で活性放射線を照射し重合性液晶化合物を硬化させ膜厚が1.4μmの位相差層を有する光学補償フィルムを作製しNo.1−1〜1−47とした。
尚、膜厚測定は、光干渉膜厚計FE−3000(大塚電子(株)製)を用いて測定した値を示す。
(重合性液晶化合物の組成物の調製)
化合物A 45質量%
化合物B 45質量%
化合物C 10質量%
Figure 0005282267
この重合性液晶組成物のネマチック−等方性液体相転移温度は73℃であった。
(重合性液晶化合物層形成用塗布液の調製)
重合性液晶化合物の組成物99.7%に光重合開始剤ルシリンTPO(バスフ社製)0.2%、ヒンダードアミンLS−765(三共ライフテック株式会社製)を0.1%添加した重合性液晶組成物を調製した。次に重合性液晶組成物を33%含有するキシレン溶液を調製し重合性液晶化合物層形成用塗布液とした。
(塗布)
準備した重合性液晶化合物層形成用塗布液をエクストルージョン型ダイコータにより、幅1325mmに断裁したセルロースエステルフィルム上に5μmの厚みで塗布し塗膜を形成した。セルロースエステルフィルムの搬送速度は10m/minとした。
(乾燥処理)
この塗膜を乾燥工程へ搬送し、乾燥工程で温度を調整することで、硬化工程で活性放射線を照射する時の残留溶媒量が表1に示す様な液晶層をセルロースエステルフィルム上に形成し、配向工程へ搬送した。
(配向工程)
温度30℃に制御された配向工程を1分間通過させた。
(硬化工程)
活性放射線照射室は使用せずに活性放射線照射装置により活性放射線の照射を行った。活性放射線としては高圧水銀灯を使用し、160W/cmの出力で積算光量が250mJ/cmとなるように紫外線を照射した。保持手段として、直径200mmのステンレス製の円筒ロールを使用し、円筒ロールの表面の温度が制御出来る様に内部に加熱、冷却の制御手段を配設した。表中、温度T1は配向工程から搬送されてくる液晶層を形成したセルロースエステルフィルムの液晶層の表面の温度を示す。温度T2は、紫外線が半量照射された時点での前記液晶層の表面の温度を示す。温度T3は、保持手段としての円筒ロールの表面の温度を示す。配向工程から搬送されてくる液晶層を形成したセルロースエステルフィルムの液晶層の表面の温度は、EXERGEN社製赤外線熱電対IRt/cで測定した値を示す。紫外線照射する時の液晶層の表面の温度は、キーエンス(株)製 赤外放射温度計IT2−50を使用し測定した。円筒ロールの表面の温度はキーエンス(株)製 赤外放射温度計IT2−50を使用し測定した。活性放射線照射室の温度は林電工(株)製 耐圧防爆形温度センサーd2G4を使用し測定した。
液晶層の残留溶媒量の測定は次の方法で行った。
(残留溶媒量の測定方法)
乾燥した液晶層を有するセルロースエステルフィルムを10cm角に切り出し質量を測定し、その後オーブンにて110℃30分加熱し再度質量を測定した。この質量差より算出した1m当たりの溶媒量を残留溶媒量とした。
Figure 0005282267
作製した光学補償フィルムNo.1−1〜1−47の性能評価を行うため、図1(a)に示す液晶表示装置を以下に示す方法で作製した。
(第1の保護フィルムの準備)
コニカミノルタオプト(株)製コニカミノルタタック、KC4UYを使用した。
(第1の偏光フィルムの作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
(視認側偏光板の作製)
上記作製した光学補償フィルムNo.1−1〜1−47を、40℃の2.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液で60秒間アルカリ処理し、3分間水洗して鹸化処理し、アルカリ処理フィルムを得た。次に上記作製した偏光膜、及び準備した第1の保護膜(フィルム)KC4UYを上記の方法で鹸化処理し、完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として、光学補償フィルムNo.1−1〜1−47、偏光膜、KC4UY(第1の保護フィルム)の順で積層して視認側の偏光板を作製した。
(第3の保護フィルムの作製)
〈ポリマーの合成〉
(ポリマーXの合成)
特開2003−12859号公報に記載されている方法を参考にして、ポリマーXを合成した。即ち、攪拌機、2個の滴下ロート、ガス導入管及び温度計の付いたガラスフラスコに、メチルメタクリレート(MMA):2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を80:20の割合で混合したモノマー混合液40g、連鎖移動剤のメルカプトプロピオン酸3.0g及びトルエン30gを仕込み、90℃に昇温した。その後、一方の滴下ロートから、上記モノマー混合液60gを3時間掛けて滴下すると共に、同時にもう一方のロートからトルエン14gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル0.6gを3時間掛けて滴下した。その後更に、トルエン56gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル0.6gを2時間掛けて滴下した後、更に2時間反応を継続させ、ポリマーXを得た。重量平均分子量は8000であった。
(ポリマーYの合成)
特開2000−344823号公報に記載の重合方法により塊状重合を行った。即ち、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、投入口及び環流冷却管を備えたフラスコに下記メチルメタクリレートとルテノセンを導入しながら内容物を70℃に加熱した。次いで、十分に窒素ガス置換した下記β−メルカプトプロピオン酸の半分を攪拌しながらフラスコ内に添加した。β−メルカプトプロピオン酸添加後、攪拌中のフラスコ内の内容物を70℃に維持し2時間重合を行った。更に、窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸の残りの半分を追加添加後、更に攪拌中の内容物の温度が70℃に維持し重合を4時間行った。反応物の温度を室温に戻し、反応物に5質量%ベンゾキノンのテトラヒドロフラン溶液を20質量部添加して重合を停止させた。重合物をエバポレーターで減圧下80℃まで徐々に加熱しながらテトラヒドロフラン、残存モノマー及び残存チオール化合物を除去してポリマーYを得た。重量平均分子量は1000であった。
メチルメタクリレート 100質量部
ルテノセン(金属触媒) 0.05質量部
β−メルカプトプロピオン酸 12質量部
重量平均分子量の測定方法を下記に示す。
(重量平均分子量測定方法)
重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13のサンプルによる校正曲線を使用した。13のサンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
上記ポリマーX、Yを用いて下記に示すように第3の保護フィルムを作製した。
(ドープ液)
セルローストリアセテート(酢化度:61.5%,Mn:110000、Mw/Mn=2.0) 100質量部
ポリマーX 10質量部
ポリマーY 5質量部
メチレンクロライド 440質量部
エタノール 40質量部
上記ドープ組成物を密封容器に投入し、70℃まで加熱し、撹拌しながら、セルローストリアセテート(TAC)を完全に溶解しドープを得た。溶解に要した時間は4時間であった。次に、ドープ組成物を濾過した後、33℃に温度調整したドープ液を、ダイに送液して、ダイスリットからステンレスベルト上に幅2.5mに均一に流延した。ステンレスベルトの流延部は裏面から37℃の温水で加熱した。流延後、金属支持体上のドープ膜(ステンレスベルトに流延以降はウェブと云う)に44℃の温風を当てて乾燥させ、剥離の残留溶媒量が120質量%で剥離し、剥離の際の張力を掛けて1.1倍の縦延伸倍率となるように延伸し、次いで、残留溶媒量4質量%、温度123℃となるように調整し、テンターでウェブ端部を把持し、幅手方向に1.1倍の延伸倍率となるように延伸した。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持した後、幅方向の張力を緩和させた後、幅保持を解放し120℃で乾燥させた。以上のようにして作製した膜厚41μm、幅2.65m、長さ7500mの第3の保護フィルムであるセルロースエステルフィルムをコアに巻き取った。
(第2の偏光膜の作製)
第1の偏光膜と同じ偏光膜を作製し第2の偏光膜とした。
(第4の保護フィルム)
第1の保護フィルムと同じKC4UYを使用した。
(バックライト側の偏光板の作製)
作製した第3の保護フィルム、第2の偏光膜、第4の保護フィルムで視認側偏光板を作製した時と同じ方法で鹸化処理し、同じ方法で第3の保護フィルム、偏光膜、KC4UY(第4の保護フィルム)の順に積層してバックライト側の偏光板を作製した。
《液晶表示装置の作製》
IPSモード型液晶表示装置である日立製液晶テレビWooo W17−LC50の予め貼合されていた偏光板を剥がして、上記作製した視認側偏光板及びバックライト側偏光板を図1(a)の構成で液晶セルのガラス面に貼合し、IPSモード型液晶表示装置を作製しNo.101〜114とした。偏光板の第2の保護フィルムの面内遅相軸と、液晶セルの配向方向は実質的に平行であった。
《評価》
作製した各IPSモード型液晶表示装置No.101〜147を用いて光学補償フィルムNo.1−1〜1−47の視野角、コントラストを以下の方法で測定し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。
(視野角)
上記作製した液晶表示装置を、ELDIM社製EZ−contrastにより視野角を測定した。視野角は、液晶セルの白表示と黒表示時のコントラストを算出し、斜め方向にてコントラストが100となる角度を視野角とした。
視野角の評価ランク
◎:65°以上
○:55°以上、65°未満
△:45°以上、55°未満
×:45°未満
(コントラスト)
液晶表示装置を、ELDIM社製EZ−contrastによりコントラストを測定した。コントラストは、液晶セルの白表示と黒表示時のコントラストを算出した。
コントラストの評価ランク
◎:850以上
○:800以上、850未満
△:700以上、800未満
×:700未満
Figure 0005282267
今回の測定において、液晶層の残留溶媒量を0.10g/m〜5.00g/mの範囲とし、前記配向工程を出て前記硬化工程に入る前の液晶層の表面の温度T1と、活性放射線が半量照射された時点での液晶層の表面の温度T2との関係をT2≧T1、|T2−T1|≦20.0℃として製造した光学補償フィルムNo.1−7〜1−11、1−13〜1−17、1−19〜1−23、1−25〜1−29、1−31〜1−35を使用した液晶表示装置No.107〜111、113〜117、119〜123、125〜129、131〜135は視野角、コントラスト共に比較に対して優れている結果が得られた。
液晶層の残留溶媒量を1.0g/mとし、前記配向工程を出て前記硬化工程に入る前の液晶層の面の温度T1と、活性放射線が半量照射された時点での液晶層の表面の温度T2との関係を、T2<T1、|T2−T1|≦20.0℃として製造した光学補償フィルムNo.1−43〜1−46を使用した液晶表示装置No.143〜146は視野角、コントラスト共に本発明の光学補償フィルムNo.1−7〜1−11、1−13〜1−17、1−19〜1−23、1−25〜1−29、1−31〜1−35を使用した液晶表示装置No.107〜111、113〜117、119〜123、125〜129、131〜135に対して多少劣る結果を示した。
液晶層の残留溶媒量を0.10g/m〜5.00g/mの範囲とし、前記配向工程を出て前記硬化工程に入る前の液晶層の表面の温度T1と、活性放射線が半量照射された時点での液晶層の表面の温度T2との関係|T2−T1|を25.0℃として製造した光学補償フィルムNo.1−12、1−18、1−24、1−30、1−36、1−47を使用した液晶表示装置No.106、112、118、124、130、136、147は活性放射線が照射される時の温度の影響を受け液晶層の配向が不十分となり視野角、コントラスト共に本発明の光学補償フィルムNo.1−7〜1−11、1−13〜1−17、1−19〜1−23、1−25〜1−29、1−31〜1−35を使用した液晶表示装置No.107〜111、113〜117、119〜123、125〜129、131〜135に対して劣る結果を得た。
液晶層の残留溶媒量を0.08g/mとし、T1とT2との関係を|T2−T1|≦20.0℃、及び|T2−T1|を25.0℃として製造した光学補償フィルムNo.1−1〜1−6を使用した液晶表示装置No.101〜106は、残留溶媒量を0.08g/mと少なくしたことに伴い、活性放射線照射前の液晶層の配向が不十分となり視野角、コントラスト共に本発明の光学補償フィルムNo.1−7〜1−11、1−13〜1−17、1−19〜1−23、1−25〜1−29、1−31〜1−35を使用した液晶表示装置No.107〜111、113〜117、119〜123、125〜129、131〜135に対して光学補償フィルムに対して劣る結果となった。
液晶層の残留溶媒量を6.0g/mとし、T1とT2との関係を|T2−T1|≦20.0℃、及び|T2−T1|を25.0℃として製造した光学補償フィルムNo.1−37〜1−42を使用した液晶表示装置No.137〜142は、残留溶媒量を6.0g/mと多くしたことで液晶層の配向が不十分となり視野角、コントラスト共に本発明の光学補償フィルムNo.1−7〜1−11、1−13〜1−17、1−19〜1−23、1−25〜1−29、1−31〜1−35を使用した液晶表示装置No.107〜111、113〜117、119〜123、125〜129、131〜135に対して劣る結果となった。
実施例2
実施例1で作製した光学補償フィルムNo.1−1〜1−47を使用し、図1(b)に示す構成でIPSモード型液晶表示装置を作製した。この場合偏光板の第2の保護フィルムの面内遅相軸と、液晶セルの配向方向は実質的に直交している。
作製したIPSモード型液晶表示装置を用いて、実施例1と同様にして視野角及びコントラストの評価を行ったところ、実施例1を再現し本発明の液晶表示装置は優れた視野角及びコントラストを有していることを確認し、本発明の有効性が確認された。
実施例3
(セルロースエステルフィルムの作製)
実施例1と同じセルロースエステルフィルムを作製した。
(光学補償フィルムの製造)
図2に示す製造装置(但し、活性放射線照射室は配設なし)を使用し、準備したセルロースエステルフィルムの上に実施例1と同じ重合性液晶化合物層形成用塗布液を以下に示す条件で塗布し、硬化工程で活性放射線を照射する時の残留溶媒量を0.2g/mとなるように乾燥工程で処理し液晶層を形成した後、硬化工程で表3に示す様に配向工程から搬送されてくる液晶層を形成したセルロースエステルフィルムの液晶層の表面の温度T1と、紫外線照射中の液晶層の表面の温度T2と、保持手段としての円筒ロールの表面の温度T3とを変えた他は実施例1で作製した光学補償フィルムNo.1−15と同じ条件で、配向工程、硬化工程を経て位相差層を有する光学補償フィルムを作製しNo.3−1〜3−27とした。
Figure 0005282267
作製した光学補償フィルムNo.3−1〜3−27の性能評価を行うため、図1(a)に示す液晶表示装置を以下に示す方法で作製した。
《液晶表示装置の作製》
作製した光学補償フィルムNo.3−1〜3−27の性能評価を行うため、図1(a)に示す液晶表示装置を実施例1と同じ方法で作製しNo.301〜327とした。
《評価》
作製した各IPSモード型液晶表示装置No.301〜327を用いて光学補償フィルムNo.3−1〜3−27の視野角、コントラストを実施例1と同じ方法で測定し評価した結果を表4に示す。
Figure 0005282267
表面の温度T1の温度を15.0℃とし、表面の温度T2との関係をT2≧T1、|T2−T1|≦20.0℃として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.3−1〜3−4を使用した液晶表示装置No.301〜304は何れも液晶層の配向性が多少不安定になり視野角、コントラスト共に、光学補償フィルムNo.3−6〜3−9、3−11〜3−14、3−16〜3−19を使用した液晶表示装置No.306〜309、311〜314、316〜319に対して多少劣る結果を示した。
表面の温度T1の温度を15.0℃、20.0℃、30.0℃、35.0℃、40.0℃とし、表面の温度T2との関係をT2≧T1、|T2−T1|を25℃として配向状態を固定し製造した位相差層を有する各光学補償フィルムNo.3−5、3−10、3−15、3−20、3−25を使用した液晶表示装置No.305、310、315、320、325は液晶層の配向性が不安定になり視野角、コントラスト共に、光学補償フィルムNo.3−6〜3−9、3−11〜3−14、3−16〜3−19を使用した液晶表示装置No.306〜309、311〜314、316〜319に対して劣る結果を示した。
表面の温度T1の温度を40.0℃とし、表面の温度T2との関係をT2≧T1、|T2−T1|≦20.0℃として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.3−21〜3−24を使用した液晶表示装置No.321〜324は何れも液晶層の配向性が多少不安定になり視野角、コントラスト共に、光学補償フィルムNo.3−6〜3−9、3−11〜3−14、3−16〜3−19を使用した液晶表示装置No.306〜309、311〜314、316〜319に対して多少劣る結果を示した。
表面の温度T1の温度を20.0℃≦T1≦35.0℃とし、表面の温度T2との関係をT2≧T1、|T2−T1|≦20.0℃として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.3−6〜3−9、3−11〜3−14、3−16〜3−19を使用した液晶表示装置No.306〜309、311〜314、316〜319は何れも視野角、コントラスト共に良好な結果を示した。本発明の有効性が確認された。
表面の温度T1の温度を30.0℃、35.0℃とし、表面の温度T2との関係をT2<T1、|T2−T1|≦20.0℃として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.3−26、3−27を使用した液晶表示装置No.326、327は何れも液晶層の配向性が多少不安定になり視野角、コントラスト共に、光学補償フィルムNo.3−6〜3−9、3−11〜3−14、3−16〜3−19を使用した液晶表示装置No.306〜309、311〜314、316〜319に対して多少劣る結果を示した。
実施例4
(セルロースエステルフィルムの作製)
実施例1と同じセルロースエステルフィルムを作製した。
(光学補償フィルムの製造)
図2に示す製造装置を使用し、準備したセルロースエステルフィルムの上に実施例1と同じ重合性液晶化合物層形成用塗布液を以下に示す条件で塗布し、硬化工程で活性放射線を照射する時の残留溶媒量を0.5g/mとなるように乾燥工程で処理し液晶層を形成した後、硬化工程で表5に示す様に配向工程から搬送されてくる液晶層を形成したセルロースエステルフィルムの液晶層の表面の温度T1を25℃とし、紫外線照射が半量照射された時点での液晶層の表面の温度T2との関係|T2−T1|≦20.0℃とし、保持手段としての円筒ロールの表面の温度T3と、活性放射線照射室の内部の温度T4を変えた他は実施例1で作製した光学補償フィルムNo.1−15と同じ条件で、配向工程、硬化工程を経て位相差層を有する光学補償フィルムを作製しNo.4−1〜4−21とした。
Figure 0005282267
《液晶表示装置の作製》
作製した光学補償フィルムNo.4−1〜4−21の性能評価を行うため、図1(a)に示す液晶表示装置を実施例1と同じ方法で作製しNo.401〜421とした。
《評価》
作製した各IPSモード型液晶表示装置No.401〜421を用いて光学補償フィルムNo.4−1〜4−21の視野角、コントラストを実施例1と同じ方法で測定し評価した結果を表6に示す。
Figure 0005282267
表面の温度T1の温度を25.0℃とし、表面の温度T2との関係を|T2−T1|≦20.0℃を維持し、保持手段の表面の温度T3を15.0℃≦T3≦30.0℃、活性放射線照射室の内部の温度T4を20.0℃≦T4≦55.0℃、T4−T3の値Aを5.0℃≦A≦25.0℃、T4>T3として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.4−2〜4−5、4−9〜4−13、4−16〜4−20を使用した液晶表示装置No.402〜405、409〜413、416〜420は何れも視野角、コントラスト共に良好な結果を示した。
表面の温度T1の温度を25.0℃とし、表面の温度T2との関係、|T2−T1|≦20.0℃を維持し、保持手段の表面の温度T3を10.0℃、活性放射線照射室の内部の温度T4を20.0℃、T4−T3の値Aを10.0℃、T4>T3として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.4−1を使用した液晶表示装置No.401は光学補償フィルムNo.4−2〜4−5、4−9〜4−13、4−16〜4−20を使用した液晶表示装置No.402〜405、409〜413、416〜420に対して視野角、コントラスト共に多少劣る結果を示した。
表面の温度T1の温度を25.0℃とし、表面の温度T2との関係を|T2−T1|≦20.0℃を維持し、保持手段の表面の温度T3を35.0℃、活性放射線照射室の内部の温度T4を50.0℃、T4−T3の値Aを15.0℃として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.4−6を使用した液晶表示装置No.406は光学補償フィルムNo.4−2〜4−5、4−9〜4−13、4−16〜4−20を使用した液晶表示装置No.402〜405、409〜413、416〜420に対して視野角、コントラスト共に多少劣る結果を示した。
表面の温度T1の温度を25.0℃とし、表面の温度T2との関係を|T2−T1|≦20.0℃を維持し、保持手段の表面の温度T3を15.0℃、活性放射線照射室の内部の温度T4を15.0℃、T4−T3の値Aを0.0℃として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.4−7を使用した液晶表示装置No.407は光学補償フィルムNo.4−2〜4−5、4−9〜4−13、4−16〜4−20を使用した液晶表示装置No.402〜405、409〜413、416〜420に対して視野角、コントラスト共に多少劣る結果を示した。
表面温度T1の温度を25.0℃とし、表面温度T2との関係を|T2−T1|≦20.0℃を維持し、保持手段の表面温度T3を17.0℃、活性放射線照射室の内部の温度T4を20.0℃、T4−T3の値Aを3.0℃として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.4−8を使用した液晶表示装置No.408は光学補償フィルムNo.4−2〜4−5、4−9〜4−13、4−16〜4−20を使用した液晶表示装置No.402〜405、409〜413、416〜420に対して視野角、コントラスト共に多少劣る結果を示した。
表面の温度T1の温度を20.0℃≦T1≦35.0℃とし、表面の温度T2との関係、|T2−T1|≦20.0℃を維持し、保持手段の表面の温度T3を30.0℃、活性放射線照射室の内部の温度T4を60.0℃、T4−T3の値Aを30.0℃、T4>T3として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.4−14を使用した液晶表示装置No.414は光学補償フィルムNo.4−2〜4−5、4−9〜4−13、4−16〜4−20を使用した液晶表示装置No.402〜405、409〜413、416〜420に対して視野角、コントラスト共に多少劣る結果を示した。
表面の温度T1の温度を20.0℃≦T1≦35.0℃とし、表面の温度T2との関係、|T2−T1|≦20.0℃を維持し、保持手段の表面の温度T3を27.0℃、活性放射線照射室の内部の温度T4を29.0℃、T4−T3の値Aを2.0℃、T4>T3として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.4−15を使用した液晶表示装置No.415は光学補償フィルムNo.4−2〜4−5、4−9〜4−13、4−16〜4−20を使用した液晶表示装置No.402〜405、409〜413、416〜420に対してて視野角、コントラスト共に多少劣る結果を示した。
表面の温度T1の温度を20.0℃≦T1≦35.0℃とし、表面の温度T2との関係、|T2−T1|≦20.0℃を維持し、保持手段の表面の温度T3を27.0℃、活性放射線照射室の内部の温度T4を57.0℃、T4−T3の値Aを30.0℃、T4>T3として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.4−21を使用した液晶表示装置No.415は光学補償フィルムNo.4−2〜4−5、4−9〜4−13、4−16〜4−20を使用した液晶表示装置No.402〜405、409〜413、416〜420に対して視野角、コントラスト共に多少劣る結果を示した。
本発明の有効性が確認された。
実施例5
(セルロースエステルフィルムの作製)
実施例1と同じセルロースエステルフィルムを作製した。
(光学補償フィルムの製造)
図2に示す製造装置を使用し、準備したセルロースエステルフィルムの上に実施例1と同じ重合性液晶化合物層形成用塗布液を以下に示す条件で塗布し、硬化工程で活性放射線を照射する時の残留溶媒量を0.5g/mとなるように乾燥工程で処理し液晶層を形成した後、硬化工程の活性放射線照射室の不活性気体の置換率を表7に示す様に変え、配向工程から搬送されてくる液晶層を形成したセルロースエステルフィルムの液晶層の表面の温度T1を25.0℃、紫外線照射する時の液晶層の表面の温度T2を27.0℃、保持手段としての円筒ロールの表面の温度T3を20.0℃、活性放射線照射室の内部の温度T4を27.0℃とした他は実施例1で作製した光学補償フィルムNo.1−15と同じ条件で、配向工程、硬化工程を経て位相差層を有する光学補償フィルムを作製しNo.5−1〜5−6とした。尚、不活性気体として酸素濃度1.4%未満の窒素ガスを使用し、置換率は活性放射線照射室の容積と同じ量の窒素ガスを活性放射線照射室に供給した時、置換率を1回とした。
Figure 0005282267
《液晶表示装置の作製》
作製した光学補償フィルムNo.5−1〜5−6の性能評価を行うため、図1(a)に示す液晶表示装置を実施例1と同じ方法で作製しNo.501〜506とした。
《評価》
作製した各IPSモード型液晶表示装置No.501〜506を用いて光学補償フィルムNo.5−1〜5−6の視野角、コントラストを実施例1と同じ方法で測定し評価した結果を表8に示す。
Figure 0005282267
不活性気体として酸素濃度1.4%未満の窒素ガスを使用し、硬化工程で活性放射線照射室の置換率を12回/分〜15回/分、活性放射線が照射される前の液晶層の表面の温度T1と、紫外線が照射される時の液晶層の表面の温度T2との関係を|T2−T1|≦20.0℃として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.5−2〜5−5を使用した液晶表示装置No.502〜505は何れも視野角、コントラスト共に良好な結果を示した。
不活性気体として酸素濃度1.4%未満の窒素ガスを使用し、硬化工程で活性放射線照射室の置換率を10回/分、活性放射線が照射される前の液晶層の表面の温度T1と、紫外線が照射される時の液晶層の表面の温度T2との関係を|T2−T1|≦20.0℃として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.5−1を使用した液晶表示装置No.501は置換率の不足の影響で窒素ガスの置換の効果を得ることが出来ない結果を示した。
不活性気体として酸素濃度1.4%未満の窒素ガスを使用し、硬化工程で活性放射線照射室の置換率を20回/分、活性放射線が照射される前の液晶層の表面の温度T1と、紫外線が照射される時の液晶層の表面の温度T2との関係を|T2−T1|≦20.0℃として配向状態を固定し製造した位相差層を有する光学補償フィルムNo.5−6を使用した液晶表示装置No.506は置換率の過剰に伴い、液晶層の溶媒が規定より減少したと推定され視野角、コントラスト共に光学補償フィルムNo.5−2〜5−5を使用した液晶表示装置No.502〜505対して多少劣る結果を示した。本発明の有効性が確認された。
液晶表示装置の構成を示す概略図である。 光学補償フィルムの製造装置の模式図である。 図3は図2に示す硬化工程の活性放射線照射室での各部材の関係を示すブロック図である。
符号の説明
1a、1b 液晶表示装置
101、101′ 液晶セル
101a、101′a、101b、101′b ガラス基板
101c、101′c 液晶層
102、102′ 視認側偏光板
102a、103′b 第1の保護フィルム
102b、103′a 第2の保護フィルム
102c、103′c 位相差層
102d、103′d 第1の偏光膜
103、103′ バックライト側偏光板
103a、102′b 第3の保護フィルム
103b、102′a 第4の保護フィルム
103c、102′c 第2の偏光膜
2 製造装置
201 フィルム供給工程
202 塗布工程
202a バックロール
202b 塗布装置
203 乾燥工程
204 配向工程
205 硬化工程
205a 活性放射線照射室
205b ロール
205c 活性放射線照射装置
205a1 不活性気体供給管
205a2 排気管
205d、205e、205f、205g 温度測定装置
206 回収工程
3 フィルム

Claims (6)

  1. 樹脂フィルム上に棒状の重合性液晶化合物を有機溶媒に溶解させた塗布液を塗布する塗布工程と、前記塗布液が塗布され前記樹脂フィルムの上に形成された塗膜を乾燥し液晶層を形成する乾燥工程と、前記乾燥工程の後に前記棒状の重合性液晶化合物を垂直配向させる配向工程と、前記液晶層を硬化する硬化工程とを有するIPSモード型液晶表示装置用光学補償フィルムの製造方法において、
    前記硬化工程は活性放射線照射装置と保持手段と温度制御手段とを使用し、
    前記活性放射線照射装置による前記液晶層への活性放射線の照射は、
    前記液晶層が形成された前記樹脂フィルムを前記保持手段に保持しながら行われ、
    前記配向工程を出て前記硬化工程に入る前の前記液晶層に含まれる前記有機溶媒の残留溶媒量が0.10g/m〜5.00g/mであり、且つ
    前記配向工程を出て前記硬化工程に入る前の前記液晶層の表面の温度T1と、前記活性放射線が半量照射された時点での前記液晶層の表面の温度T2とは、|T2−T1|≦20.0℃の関係を有することを特徴とする光学補償フィルムの製造方法。
  2. 前記表面の温度T1は20.0℃≦T1≦35.0℃であり、且つT2≧T1であることを特徴とする請求項1に記載の光学補償フィルムの製造方法。
  3. 前記保持手段の表面の温度T3、硬化工程の内部の温度T4とした時、該表面の温度T3は15.0℃≦T3≦30.0℃、該内部の温度T4は20.0℃≦T4≦55.0℃で、且つT4>T3の関係を有し、T4−T3の値Aが、5.0℃≦A≦25.0℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学補償フィルムの製造方法。
  4. 前記硬化工程は置換率12回/分〜15回/分で不活性気体により置換されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光学補償フィルムの製造方法。
  5. 前記乾燥工程では、前記塗膜が等方相を呈する温度に加熱する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学補償フィルムの製造方法
  6. 前記配向工程では、前記液晶層を等方相から液晶相に変化させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学補償フィルムの製造方法
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