JP4622726B2 - 光学異方体の製造方法 - Google Patents
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即ち前者と異なり、配向膜に接していない空気界面付近は、液晶分子に意図とする配向膜の配向規制力が作用しづらい。更に空気は液晶を垂直に配向させる力が強いので、空気界面付近の液晶分子は垂直に配向してしまう。従って、水平配向を目的とする配向膜を使用し、基板界面から空気界面まで一様に水平配向した光学異方体を得たい場合などにおいて、層全体の液晶分子がハイブリッド配向となってしまう問題や、ディスクリネーションと呼ばれる配向欠陥が発生し、得られる光学異方体の品質低下あるいは歩留まりの低下が起こりやすいという問題があった。
本発明の製造方法において使用する配向機能を有する基板として、基板の材質は特に問わず、公知慣用の材質の基板を使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板、ポリイミド板、ポリアミド板、ポリメタクリル酸メチル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニル板、ポリテトラフルオロエチレン板、セルロース板、三酢酸セルロース板,ポリエーテルスルホン板、ポリシクロオレフィン板、シリコン板、ガラス板、方解石板等が挙げられる。基板の形状としては、平板の他、曲面を有するものであっても良い。これらの基板は、必要に応じて、電極層、反射防止機能、反射機能を有していてもよい。
例えば、インプレーンスイッチング(IPS)方式の液晶表示素子に使用するようなプレチルト角のごく小さな配向膜を基板上に設ければ、ほとんど水平に配向(略水平配向)した重合性液晶層が得られる。
また、TN型液晶表示素子に使用するような配向膜を基板上に設けた場合は、少しだけ配向が傾斜した重合性液晶層が得られ、STN方式の液晶表示素子に使用するような配向膜を使うと、大きく配向が傾斜した重合性液晶層が得られる。
本発明の製造方法は、液晶が受ける基板の配向規制力を空気界面の液晶分子まで伝播させることができるので、略水平配向機能を有する基板を使用し、空気界面から基板界面まで一様に水平配向した光学異方体を得たい場合に特に有用である。
特に、前記基板として、パターン状に配向方向の異なる領域が分布している略水平配向機能を有する基板を使用すれば、位相差膜として特に有用な光学異方体を得ることができる。
本発明において、重合性基を有する液晶化合物を含有する重合性液晶組成物は、公知慣用の組成物を使用することができる。
本発明においては、本発明の重合性液晶組成物が液晶相を示すことが必要であって、使用する各々の重合性液晶化合物の全てが液晶相を示す必要はない。本発明において使用することのできる重合性液晶化合物は、単独で液晶相を示す化合物は勿論のこと、単独では液晶相を示さないが、融点を低下させて液晶相が発現するものや、他の液晶相を示す化合物と混合したときに液晶相を示すもの、液晶を示す化合物と類似した構造を持っていて他の液晶相を示す化合物が形成する液晶相の安定性を著しく低下させないもの等を含む。
具体的には、例えば、キラル基としてコレステリル基を有するペラルゴン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、キラル基として2−メチルブチル基を有するビーディーエイチ社製の「CB−15」、「C−15」、メルク社製の「S−1082」、チッソ社製の「CM−19」、「CM−20」、「CM」、キラル基として1−メチルヘプチル基を有するメルク社製の「S−811」、チッソ社製の「CM−21」、「CM−22」などを挙げることができる。
キラル化合物を添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物の重合体の用途によるが、得られる重合体の厚み(d)を重合体中での螺旋ピッチ(P)で除した値(d/P)が0.1〜100の範囲となる量を添加することが好ましく、0.1〜20の範囲となる量がさらに好ましい。
前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くした後、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を冷却する。
本発明において、雰囲気温度とは、基板または空気界面自体の温度及び、基板または空気界面と接する物体あるいは空気の温度を示す。
しかしながら、本発明で取り扱う重合性液晶組成物層の膜厚は通常数ミクロンであり、該層の空気界面温度と基板界面温度を直接測定し、特定することは困難である。
本発明においては、基板をコールドプレート等に乗せる、あるいは、空気界面側からヒーターを当てることで、基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くした後、冷源あるいは熱源をとり、空気放冷して、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を冷却することで、本発明の効果である、配向欠陥のない光学異方体が得られることを確認している。従って、本発明においては、該温度を、基板側の雰囲気温度、及び、空気界面側の雰囲気温度で定義した。
本発明で使用する重合性液晶組成物を基板上に設ける方法としては、バーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、キャップコーティング、ディッピング法等の公知慣用の塗布法を利用することができる。このとき、塗工性を高めるために、前記重合性液晶組成物に公知慣用の有機溶媒を添加しても良い。この場合は、前記重合性液晶組成物を基板上に塗布後、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等で有機溶媒を除去する。
前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くする方法としては、例えば、空気界面側をヒーター、ランプあるいは熱風等の熱源によって加熱したり、基板側をコールドプレートあるいは冷媒を用いて冷却する方法、これら加熱と冷却を組み合わせる方法がある。あるいは、重合性液晶組成物を塗布した状態の基板をオーブンやホットプレートあるいは前述の熱源などを用いて加熱した後、重合性液晶組成物の空気界面側より基板側の冷却が早く進むように基板を冷却してもよい。この冷却にはコールドプレートあるいは冷媒を用いても良いし、室温あるいは該重合性液晶組成物の液晶−等方性液体相転移温度(以下、N−I転移温度と略す)よりも低い温度にある基盤あるいは台等の上で基板を冷却しても良い。
均質な配向を得るためには空気界面側の雰囲気温度は該液晶組成物の液晶−等方性液体相転移温度よりも高い温度〜重合性基がゲル化しない温度の範囲が好ましく、基板側の雰囲気温度は、該液晶組成物が液晶相を示す温度範囲であることが好ましい。
この状態において、基板界面側の重合性液晶組成物は液晶であり空気界面側の重合性液晶組成物は液体である状態となっていると考えられる。
本発明の方法で、配向欠陥のない光学異方体が得られる理由は定かではないが、以下のように推定している。例えば、略水平配向機能を有する基板を使用した場合、前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くすることで、基板に近い液晶は基板の略水平配向規制力を受け、水平にある一方向に揃って配列し、空気界面に近い液晶は液体状態で等方的に配列する。この状態で空気界面側の温度を低下することで、液体状態の液晶分子が基板に近い側の液晶状態に倣って配列していき、基板の配向規制力に従った液晶の分子配列が段々空気界面側まで発達していくだろうと推定している。
空気界面側の雰囲気温度が下がるに従い、空気界面の液晶は液体から液晶状態になる。この際、空気界面の液晶分子は、空気界面の空気側からの垂直配向規制力を受けるわけであるが、空気界面層内側では、際まで液晶分子が略水平配向しているため、空気界面の液晶分子が垂直配向するには、極短い距離で配向を水平から垂直に変形しなければならず、弾性エネルギー的に損をしてしまう。従って、空気界面でも空気界面層内側と同様の略水平配向をするほうが有利となり、基板界面から空気界面まで連続した略水平配向を得ることができる。
本発明において、重合性液晶組成物を重合させる方法としては、活性エネルギー線を照射する方法や熱重合法等が挙げられる。中でも、加熱を必要とせず室温で反応が進行することから、活性エネルギー線を照射する方法が好ましく、中でも操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。照射時の温度は、本発明の重合性液晶組成物が液晶相を保持できる温度とし、重合性液晶組成物の熱重合の誘起を避けるため、可能な限り30℃以下とすることが好ましい。尚、液晶組成物は、通常、昇温過程において、C(固相)−N(ネマチック)転移温度(以下、C−N転移温度と略す。)から、N−I転移温度範囲内で液晶相を示す。一方、降温過程においては、熱力学的に非平衡状態を取るため、C−N転移温度以下でも凝固せず液晶状態を保つ場合がある。この状態を過冷却状態という。本発明においては、過冷却状態にある液晶組成物も液晶相を保持している状態に含めるものとする。紫外線照射強度は、1W/m2〜10kW/m2の範囲が好ましい。特に、5W/m2〜2kW/m2の範囲が好ましい。紫外線強度が1W/m2未満の場合、重合を完了させるのに多大な時間がかかる。一方、2kW/m2を超える強度では、重合性液晶組成物中の液晶分子が光分解する傾向にあることや、重合熱が多く発生して重合中の温度が上昇し、重合性液晶のオーダーパラメーターが変化して、重合後のフィルムのリタデーションに狂いが生じる可能性がある。
式(a)〜(e)で表される化合物を使用し、重合性液晶組成物LC−1を調製した。
LC−1:(a):(b):(c):(d):(e)の配合比率は、質量比にして33:22:22:18:5である。なお、重合性液晶組成物LC−1のN−I転移温度は56℃であった。
下記式(S)で表されるアゾ化合物0.5gを、N−メチルピロリドン25gに加熱溶解し、この溶液にブチルセロソルブ(2−ブトキシエタノール)25gを加えた。これをポリフッ化ビニリデン製の孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過した。超音波洗浄を行った厚さ1mm、サイズが76mm×52mmの光学ガラス製ガラス板に前記アゾ化合物(S)溶液をスピンコートし(500回転/分で5秒後、2500回転/分で20秒)、100℃のホットプレート上で1分乾燥させた。その後室温で該光学ガラス板の真上から366nmの偏光紫外線照射(紫外線強度は200W/m2、照射時間は100秒)を行った。
重合性液晶組成物LC−1を100部、チバスペシャリティケミカルズ(株)製の光重合開始剤「イルガキュア907」4部、キシレン100部を混合し、塗工用の組成物とした。この組成物をスピンコーターを用いて前記配向膜付きの光学異方体用基板上にスピンコートし(500回転/分で5秒後、2500回転/分で20秒)、重合性液晶組成物層を作成した。
該重合性液晶組成物層を塗布した基板を、表面温度を13℃に設定したコールドプレート上に乗せ、基板からおよそ15cm離してヒートガンで基板を加熱した。このときの基板の空気界面側の雰囲気温度はおよそ80℃であった。
ヒートガンを基板から徐々に離した後、常温(22℃)で該基板を放冷したところ、重合性液晶組成物層の表面まで配向した。該重合性液晶組成物層を観察したところ、ディスクリネーションはまったく観察されなかった。この後、窒素雰囲気下で1分保った後、窒素雰囲気下で紫外線照射(紫外線強度:34W/m2、照射時間:120秒)することで、ディスクリネーションのない、きれいな光学異方体を得た。光学異方体の膜厚は約2.0μmであった。
実施例1において、表面をヒートガンで加熱する操作を加えない他は実施例1と同様にして、重合性液晶組成物層を作成した。該組成物層を観察したところ多数のディスクリネーションラインが観察された。この後、実施例1と同様にして重合させて光学異方体を得た。得られた光学異方体も同様に多数のディスクリネーションラインが観察された。
Claims (5)
- 配向機能を有する基板上に設けた空気界面を有する重合性液晶組成物層を、配向させた状態で重合させる光学異方体の製造方法であって、
前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くし、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を前記重合性液晶組成物の液晶相−等方相転移温度以上とした後、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を冷却することを特徴とする光学異方体の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法が、
前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くして、基板界面側の重合性液晶組成物は液晶状態であり空気界面側の重合性液晶組成物は液体状態とした後、
前記重合性液晶組成物の液晶状態が基板界面側から空気界面側に伝播するように前記重合性液晶組成物層の空気界面付近の温度を冷却して、重合性液晶組成物を液晶状態に相転移させる、
請求項1に記載の光学異方体の製造方法。 - 前記配向機能を有する基板が、略水平配向機能を有する基板である、請求項1又は2に記載の光学異方体の製造方法。
- 重合性液晶組成物の重合時の温度が、該重合性液晶組成物が液晶相を保持できる温度である請求項1〜3のいずれかに記載の光学異方体の製造方法。
- 配向機能を有する基板上に設けた空気界面を有する重合性液晶組成物層の配向方法であって、
前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くして、基板界面側の重合性液晶組成物は液晶状態であり空気界面側の重合性液晶組成物は液体状態とした後、
前記重合性液晶組成物の液晶状態が基板界面側から空気界面側に伝播するように前記重合性液晶組成物層の空気界面付近の温度を冷却して、重合性液晶組成物を液晶状態に相転移させることを特徴とする重合性液晶組成物層の配向方法。
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