JP4622726B2 - 光学異方体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基板上に重合性液晶組成物を塗布することにより作製する光学異方体の製造方法に関する。
通常、液晶表示装置(LCD)は、液晶セル及びその両側に配置された二枚の偏光板からなる。反射型液晶表示装置は、反射板、液晶セル、及び一枚の偏光板が積層されている。これらの液晶表示装置は、視野角の拡大、着色解消、あるいは表示モードに応じて位相差を調整するために、液晶セルと偏光板との間に光学異方体の一種である光学補償シート(位相差板)を配置する場合が多い。
光学補償シートとしては、通常、複屈折を有する高分子フィルムが使用される。特に最近では、バッチ製造方法に比べ大幅な製造効率向上が期待できる、ロールツウロール法(Roll to Roll)によるLCDの製造方法の研究が進んでおり、塗工法で製造できる光学補償シートとして、基板上に重合性の液晶組成物を塗工した後、該液晶材料を配向させた状態で紫外線硬化させた、光学異方性を有する高分子フィルムの研究が進められている。
通常重合性液晶組成物を用いて光学異方体を作製する場合は、二枚の配向膜の間に重合性液晶組成物を挟持させ、両側からの配向規制力により液晶分子を配向させる。しかし、上記の様な塗工法で光学異方体を製造する場合は、配向膜上に重合性液晶組成物を塗布した後配向させるので、配向規制力は、実質的に、該組成物層の片側にある配向膜のみとなる。
即ち前者と異なり、配向膜に接していない空気界面付近は、液晶分子に意図とする配向膜の配向規制力が作用しづらい。更に空気は液晶を垂直に配向させる力が強いので、空気界面付近の液晶分子は垂直に配向してしまう。従って、水平配向を目的とする配向膜を使用し、基板界面から空気界面まで一様に水平配向した光学異方体を得たい場合などにおいて、層全体の液晶分子がハイブリッド配向となってしまう問題や、ディスクリネーションと呼ばれる配向欠陥が発生し、得られる光学異方体の品質低下あるいは歩留まりの低下が起こりやすいという問題があった。
これを解決する方法として、重合性液晶組成物に混合して、空気界面付近の液晶分子の配向を制御させる添加剤がいくつか提案されている。(例えば、特許文献1,2,3参照)しかし、これらの添加剤では、空気界面付近の配向欠陥を完全に改善することができなかったり、あるいは全てが空気界面に偏在することができず、一部が液晶層内部に残存してしまい、これにより液晶材料の相転移点が低下し、得られる光学異方体の安定性の低下やリタデーションの低下がおこるおそれがあった。また、重合性能を持たない特許文献2及び3に記載の添加剤を使用した場合、他部材への溶出のおそれもある。
特開2000−345164号公報 特開2003−227935号公報 特開2000−105315号公報
発明が解決しようとする課題は、添加剤等を使用せずに配向欠陥のない光学異方体を提供することにある。
本発明者らは、空気界面付近の液晶分子が層内部よりも早く液晶状態となったときに、配向欠陥が発生しやすいことを見いだした。更に、重合性液晶組成物層の基板付近の温度(雰囲気温度)よりも空気界面付近の温度(雰囲気温度)を高くして、基板界面側の重合性液晶組成物は液晶であり空気界面側の重合性液晶組成物は液体である状態とした後、重合性液晶組成物の液晶状態が基板界面側から空気界面側に伝播するように前記重合性液晶組成物層の空気界面付近の温度を冷却して、重合性液晶組成物を液晶状態に相転移させることで、配向欠陥のない光学異方体が得られることを見いだし、上記課題を解決した。
即ち、本発明は、配向機能を有する基板上に設けた空気界面を有する重合性液晶組成物層を、配向させた状態で重合させる光学異方体の製造方法であって、前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くした後、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を冷却する光学異方体の製造方法を提供する。
また、本発明は、配向機能を有する基板上に設けた空気界面を有する重合性液晶組成物層の配向方法であって、前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くして、基板界面側の重合性液晶組成物は液晶状態であり空気界面側の重合性液晶組成物は液体状態とした後、前記重合性液晶組成物の液晶状態が基板界面側から空気界面側に伝播するように前記重合性液晶組成物層の空気界面付近の温度を冷却して、重合性液晶組成物を液晶状態に相転移させる重合性液晶組成物層の配向方法を提供する。
本発明の製造方法により、添加剤等を使用せずに、配向欠陥の発生が抑制された光学異方体を得ることができる。
(配向機能を有する基板)
本発明の製造方法において使用する配向機能を有する基板として、基板の材質は特に問わず、公知慣用の材質の基板を使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板、ポリイミド板、ポリアミド板、ポリメタクリル酸メチル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニル板、ポリテトラフルオロエチレン板、セルロース板、三酢酸セルロース板,ポリエーテルスルホン板、ポリシクロオレフィン板、シリコン板、ガラス板、方解石板等が挙げられる。基板の形状としては、平板の他、曲面を有するものであっても良い。これらの基板は、必要に応じて、電極層、反射防止機能、反射機能を有していてもよい。
前記基板に配向機能を付与する方法としては特に限定はなく、公知慣用の方法が挙げられる。具体的には、布等で基板表面をラビング処理する方法、ポリイミド薄膜又はポリビニルアルコール薄膜等の有機薄膜を基板表面に形成し、これを布等でラビング処理する方法、基板にSiOを斜方蒸着して配向膜を形成する方法、分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜や光で異性化する官能基を有する有機薄膜に、偏光または非偏光を照射する方法等が挙げられる。一様な配向状態を形成するためには、通常のツイステッド・ネマチック素子又はスーパー・ツイステッド・ネマチック素子で使用されているプレチルト角を与えるポリイミド薄膜を使用すると、液晶分子の配向状態の制御を容易にすることができる。
一般に、配向機能を有する基板に液晶組成物を接触させた場合、液晶分子は基板付近で基板を配向処理した方向に沿って配向する。液晶分子が基板と水平に配向するか、傾斜あるいは垂直して配向するかは、基板への配向処理方法による影響が大きい。
例えば、インプレーンスイッチング(IPS)方式の液晶表示素子に使用するようなプレチルト角のごく小さな配向膜を基板上に設ければ、ほとんど水平に配向(略水平配向)した重合性液晶層が得られる。
また、TN型液晶表示素子に使用するような配向膜を基板上に設けた場合は、少しだけ配向が傾斜した重合性液晶層が得られ、STN方式の液晶表示素子に使用するような配向膜を使うと、大きく配向が傾斜した重合性液晶層が得られる。
本発明の製造方法は、液晶が受ける基板の配向規制力を空気界面の液晶分子まで伝播させることができるので、略水平配向機能を有する基板を使用し、空気界面から基板界面まで一様に水平配向した光学異方体を得たい場合に特に有用である。
また、パターン状に配向方向が異なる領域が分布した基板を使用すれば、基板の配向機能に応じてパターン状に配向方向の異なる領域が分布する。この状態で光照射による重合を行えば、配向パターンを有する光学異方体を得ることができる。
パターン状に配向方向が異なる領域が分布した基板を得る方法としては、例えば、分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜や光で異性化する官能基を有する有機薄膜(以下光配向膜と略す)に、該官能基の吸収帯にある波長の光を全面照射する。その後、当該基板にマスクを被せ、マスクの上から光配向膜の吸収波長にある第1の照射と異なる状態の光、例えば偏光状態が異なる光あるいは照射角度及び方向が異なる光を照射して、照射部分だけに第1の照射で得られた部分と異なる配向機能を持たせることで得ることができる。この時に使われる光配向膜は、複数回の光照射に反応してそれぞれ配向方向を変えられなければならないので、低分子量の化合物から成るものが望ましい。光配向膜を使わずに配向パターンを得る方法としては、AFMの触針で配向膜をラビングする方法、光学異方体をエッヂングする方法などが挙げられるが、光配向膜を利用する方法が簡便であり好ましい。
特に、前記基板として、パターン状に配向方向の異なる領域が分布している略水平配向機能を有する基板を使用すれば、位相差膜として特に有用な光学異方体を得ることができる。
(重合性基を有する液晶化合物を含有する重合性液晶組成物)
本発明において、重合性基を有する液晶化合物を含有する重合性液晶組成物は、公知慣用の組成物を使用することができる。
本発明においては、本発明の重合性液晶組成物が液晶相を示すことが必要であって、使用する各々の重合性液晶化合物の全てが液晶相を示す必要はない。本発明において使用することのできる重合性液晶化合物は、単独で液晶相を示す化合物は勿論のこと、単独では液晶相を示さないが、融点を低下させて液晶相が発現するものや、他の液晶相を示す化合物と混合したときに液晶相を示すもの、液晶を示す化合物と類似した構造を持っていて他の液晶相を示す化合物が形成する液晶相の安定性を著しく低下させないもの等を含む。
本発明で使用する重合性液晶化合物としては特に限定はなく、例えば、特開平8−3111号公報に記載の液晶化合物、特開2000−178233号公報に記載の液晶化合物、特開2000−119222号公報に記載の液晶化合物、特開2000−327632号公報に記載の液晶化合物、特開2002−220421号公報に記載の液晶化合物、特開2003−55661号公報に記載の液晶化合物、特開2003−12762号公報に記載の液晶化合物等を使用することができる。重合性基を両末端に有する棒状の二官能重合性液晶化合物あるいは三官能重合性液晶化合物を使用すると、配向を良好に固定化することができ好ましい。特に二官能重合性液晶化合物を使用することが好ましい。また、粘度や、液晶相を示す温度を調整する目的で、重合性基を片末端に有する棒状の単官能重合性液晶化合物を併用することも好ましい。
また、重合性基を有していない液晶化合物を必要に応じて添加してもよい。しかし、添加量が多すぎると、得られた光学異方体から液晶化合物が溶出して積層部材を汚染する恐れがあり、加えて光学異方体の耐熱性が下がるおそれがあるので、添加する場合は、重合性液晶化合物全量に対して30質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
本発明で使用する重合性液晶組成物は、必要に応じて、熱重合開始剤、光重合開始剤等の重合開始剤を添加することもできる。熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。また、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン類等が挙げられる。また、光カチオン開始剤としては、光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤としてはジアゾジスルホン系化合物、トリフェニルスルホニウム系化合物、フェニルスルホン系化合物、スルフォニルピリジン系化合物、トリアジン系化合物及びジフェニルヨードニウム化合物が好適に用いられる。添加する場合は、重合性液晶組成物に対して10質量%以下であることが好ましく、6質量%以下が特に好ましく、1〜4質量%の範囲が更に好ましい。
本発明で使用する重合性液晶組成物は、重合性基を有するが重合性液晶化合物ではない化合物を添加することもできる。このような化合物としては、通常、この技術分野で重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができる。添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
本発明で使用する重合性液晶組成物は、光学活性を有する化合物、すなわちキラル化合物を添加してもよい。該キラル化合物は、それ自体が液晶相を示す必要は無く、また、重合性基を有していても、有していなくても良い。また、キラル化合物の螺旋の向きは、重合体の使用用途によって適宜選択することができる。
具体的には、例えば、キラル基としてコレステリル基を有するペラルゴン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、キラル基として2−メチルブチル基を有するビーディーエイチ社製の「CB−15」、「C−15」、メルク社製の「S−1082」、チッソ社製の「CM−19」、「CM−20」、「CM」、キラル基として1−メチルヘプチル基を有するメルク社製の「S−811」、チッソ社製の「CM−21」、「CM−22」などを挙げることができる。
キラル化合物を添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物の重合体の用途によるが、得られる重合体の厚み(d)を重合体中での螺旋ピッチ(P)で除した値(d/P)が0.1〜100の範囲となる量を添加することが好ましく、0.1〜20の範囲となる量がさらに好ましい。
本発明で使用する重合性液晶組成物には、保存安定性を向上させるために安定剤を添加することもできる。安定剤として例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β−ナフチルアミン類、β−ナフトール類等が挙げられる。添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
本発明で使用する重合性液晶組成物を偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、その目的に応じて、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物、などを添加してもよい。
本発明の製造方法は、配向機能を有する基板上に設けた空気界面を有する重合性液晶組成物層を、配向させた状態で重合させる光学異方体の製造方法であって、
前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くした後、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を冷却する。
本発明において、雰囲気温度とは、基板または空気界面自体の温度及び、基板または空気界面と接する物体あるいは空気の温度を示す。
本発明は、実質的には、基板界面側の重合性液晶組成物自体の温度よりも、空気界面側の重合性液晶組成物自体の温度を高くして、基板界面側の重合性液晶組成物は液晶であり空気界面側の重合性液晶組成物は液体である状態とした後、重合性液晶組成物の液晶状態が基板界面側から空気界面側に伝播するように前記重合性液晶組成物層の空気界面付近の温度を冷却して、重合性液晶組成物を液晶状態に相転移させることで、本発明の効果が得られるものと考えられる。
しかしながら、本発明で取り扱う重合性液晶組成物層の膜厚は通常数ミクロンであり、該層の空気界面温度と基板界面温度を直接測定し、特定することは困難である。
本発明においては、基板をコールドプレート等に乗せる、あるいは、空気界面側からヒーターを当てることで、基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くした後、冷源あるいは熱源をとり、空気放冷して、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を冷却することで、本発明の効果である、配向欠陥のない光学異方体が得られることを確認している。従って、本発明においては、該温度を、基板側の雰囲気温度、及び、空気界面側の雰囲気温度で定義した。
(塗布方法)
本発明で使用する重合性液晶組成物を基板上に設ける方法としては、バーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、キャップコーティング、ディッピング法等の公知慣用の塗布法を利用することができる。このとき、塗工性を高めるために、前記重合性液晶組成物に公知慣用の有機溶媒を添加しても良い。この場合は、前記重合性液晶組成物を基板上に塗布後、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等で有機溶媒を除去する。
(配向)
前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くする方法としては、例えば、空気界面側をヒーター、ランプあるいは熱風等の熱源によって加熱したり、基板側をコールドプレートあるいは冷媒を用いて冷却する方法、これら加熱と冷却を組み合わせる方法がある。あるいは、重合性液晶組成物を塗布した状態の基板をオーブンやホットプレートあるいは前述の熱源などを用いて加熱した後、重合性液晶組成物の空気界面側より基板側の冷却が早く進むように基板を冷却してもよい。この冷却にはコールドプレートあるいは冷媒を用いても良いし、室温あるいは該重合性液晶組成物の液晶−等方性液体相転移温度(以下、N−I転移温度と略す)よりも低い温度にある基盤あるいは台等の上で基板を冷却しても良い。
空気界面側の雰囲気温度があまり高すぎると重合性液晶組成物が好ましくない重合反応をおこして劣化する恐れがある。また、基板側の雰囲気温度があまり低すぎると重合性液晶組成物の好ましくない結晶化、相転移あるいは相分離がおこる可能性がある。
均質な配向を得るためには空気界面側の雰囲気温度は該液晶組成物の液晶−等方性液体相転移温度よりも高い温度〜重合性基がゲル化しない温度の範囲が好ましく、基板側の雰囲気温度は、該液晶組成物が液晶相を示す温度範囲であることが好ましい。
この状態において、基板界面側の重合性液晶組成物は液晶であり空気界面側の重合性液晶組成物は液体である状態となっていると考えられる。
次に、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を冷却する方法としては、特に限定はないが、急激に冷却すると、基板界面側の重合性液晶組成物の液晶状態が空気界面側の液晶分子にうまく伝播されなかったりする恐れがある。方法としては、空気中で放冷する方法が簡単であり穏やかに冷却できる方法であり好ましい。特に、冷却の最中に、空気界面側から液体−液晶相転移が起こらないようにすることが好ましい。
(配向のメカニズム)
本発明の方法で、配向欠陥のない光学異方体が得られる理由は定かではないが、以下のように推定している。例えば、略水平配向機能を有する基板を使用した場合、前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くすることで、基板に近い液晶は基板の略水平配向規制力を受け、水平にある一方向に揃って配列し、空気界面に近い液晶は液体状態で等方的に配列する。この状態で空気界面側の温度を低下することで、液体状態の液晶分子が基板に近い側の液晶状態に倣って配列していき、基板の配向規制力に従った液晶の分子配列が段々空気界面側まで発達していくだろうと推定している。
空気界面側の雰囲気温度が下がるに従い、空気界面の液晶は液体から液晶状態になる。この際、空気界面の液晶分子は、空気界面の空気側からの垂直配向規制力を受けるわけであるが、空気界面層内側では、際まで液晶分子が略水平配向しているため、空気界面の液晶分子が垂直配向するには、極短い距離で配向を水平から垂直に変形しなければならず、弾性エネルギー的に損をしてしまう。従って、空気界面でも空気界面層内側と同様の略水平配向をするほうが有利となり、基板界面から空気界面まで連続した略水平配向を得ることができる。
(重合方法)
本発明において、重合性液晶組成物を重合させる方法としては、活性エネルギー線を照射する方法や熱重合法等が挙げられる。中でも、加熱を必要とせず室温で反応が進行することから、活性エネルギー線を照射する方法が好ましく、中でも操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。照射時の温度は、本発明の重合性液晶組成物が液晶相を保持できる温度とし、重合性液晶組成物の熱重合の誘起を避けるため、可能な限り30℃以下とすることが好ましい。尚、液晶組成物は、通常、昇温過程において、C(固相)−N(ネマチック)転移温度(以下、C−N転移温度と略す。)から、N−I転移温度範囲内で液晶相を示す。一方、降温過程においては、熱力学的に非平衡状態を取るため、C−N転移温度以下でも凝固せず液晶状態を保つ場合がある。この状態を過冷却状態という。本発明においては、過冷却状態にある液晶組成物も液晶相を保持している状態に含めるものとする。紫外線照射強度は、1W/m〜10kW/mの範囲が好ましい。特に、5W/m〜2kW/mの範囲が好ましい。紫外線強度が1W/m未満の場合、重合を完了させるのに多大な時間がかかる。一方、2kW/mを超える強度では、重合性液晶組成物中の液晶分子が光分解する傾向にあることや、重合熱が多く発生して重合中の温度が上昇し、重合性液晶のオーダーパラメーターが変化して、重合後のフィルムのリタデーションに狂いが生じる可能性がある。
マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させた後、該未重合部分の配向状態を、電場、磁場又は温度等をかけて変化させ、その後該未重合部分を重合させると、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることもできる。
また、マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させる際に、予め未重合状態の重合性液晶組成物に電場、磁場又は温度等をかけて配向を規制し、その状態を保ったままマスク上から光を照射して重合させることによっても、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることができる。
本発明の製造方法で得た光学異方体は、基板から剥離して単体で光学異方体として使用することも、基板から剥離せずにそのまま光学異方体として使用することもできる。特に、他の部材を汚染しないので、被積層基板として使用したり、他の基板に貼り合わせて使用したりするときに有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(重合性液晶組成物LC−1の調製)
式(a)〜(e)で表される化合物を使用し、重合性液晶組成物LC−1を調製した。
LC−1:(a):(b):(c):(d):(e)の配合比率は、質量比にして33:22:22:18:5である。なお、重合性液晶組成物LC−1のN−I転移温度は56℃であった。
Figure 0004622726
(光学異方体用基板の作成)
下記式(S)で表されるアゾ化合物0.5gを、N−メチルピロリドン25gに加熱溶解し、この溶液にブチルセロソルブ(2−ブトキシエタノール)25gを加えた。これをポリフッ化ビニリデン製の孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過した。超音波洗浄を行った厚さ1mm、サイズが76mm×52mmの光学ガラス製ガラス板に前記アゾ化合物(S)溶液をスピンコートし(500回転/分で5秒後、2500回転/分で20秒)、100℃のホットプレート上で1分乾燥させた。その後室温で該光学ガラス板の真上から366nmの偏光紫外線照射(紫外線強度は200W/m、照射時間は100秒)を行った。
Figure 0004622726
(実施例1)
重合性液晶組成物LC−1を100部、チバスペシャリティケミカルズ(株)製の光重合開始剤「イルガキュア907」4部、キシレン100部を混合し、塗工用の組成物とした。この組成物をスピンコーターを用いて前記配向膜付きの光学異方体用基板上にスピンコートし(500回転/分で5秒後、2500回転/分で20秒)、重合性液晶組成物層を作成した。
該重合性液晶組成物層を塗布した基板を、表面温度を13℃に設定したコールドプレート上に乗せ、基板からおよそ15cm離してヒートガンで基板を加熱した。このときの基板の空気界面側の雰囲気温度はおよそ80℃であった。
ヒートガンを基板から徐々に離した後、常温(22℃)で該基板を放冷したところ、重合性液晶組成物層の表面まで配向した。該重合性液晶組成物層を観察したところ、ディスクリネーションはまったく観察されなかった。この後、窒素雰囲気下で1分保った後、窒素雰囲気下で紫外線照射(紫外線強度:34W/m、照射時間:120秒)することで、ディスクリネーションのない、きれいな光学異方体を得た。光学異方体の膜厚は約2.0μmであった。
(比較例1)
実施例1において、表面をヒートガンで加熱する操作を加えない他は実施例1と同様にして、重合性液晶組成物層を作成した。該組成物層を観察したところ多数のディスクリネーションラインが観察された。この後、実施例1と同様にして重合させて光学異方体を得た。得られた光学異方体も同様に多数のディスクリネーションラインが観察された。

Claims (5)

  1. 配向機能を有する基板上に設けた空気界面を有する重合性液晶組成物層を、配向させた状態で重合させる光学異方体の製造方法であって、
    前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くし、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を前記重合性液晶組成物の液晶相−等方相転移温度以上とした後、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を冷却することを特徴とする光学異方体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法が、
    前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くして、基板界面側の重合性液晶組成物は液晶状態であり空気界面側の重合性液晶組成物は液体状態とした後、
    前記重合性液晶組成物の液晶状態が基板界面側から空気界面側に伝播するように前記重合性液晶組成物層の空気界面付近の温度を冷却して、重合性液晶組成物を液晶状態に相転移させる、
    請求項1に記載の光学異方体の製造方法。
  3. 前記配向機能を有する基板が、略水平配向機能を有する基板である、請求項1又は2に記載の光学異方体の製造方法。
  4. 重合性液晶組成物の重合時の温度が、該重合性液晶組成物が液晶相を保持できる温度である請求項1〜3のいずれかに記載の光学異方体の製造方法。
  5. 配向機能を有する基板上に設けた空気界面を有する重合性液晶組成物層の配向方法であって、
    前記配向機能を有する基板側の雰囲気温度よりも、前記重合性液晶組成物層の空気界面側の雰囲気温度を高くして、基板界面側の重合性液晶組成物は液晶状態であり空気界面側の重合性液晶組成物は液体状態とした後、
    前記重合性液晶組成物の液晶状態が基板界面側から空気界面側に伝播するように前記重合性液晶組成物層の空気界面付近の温度を冷却して、重合性液晶組成物を液晶状態に相転移させることを特徴とする重合性液晶組成物層の配向方法。
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