JPWO2011114764A1 - 位相差フィルム及びそれが備えられた偏光板 - Google Patents

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Abstract

本発明は、鹸化処理を施さなくても偏光板と貼合することができ、コントラストとコーナームラが良好な位相差フィルムを提供する。また、それが備えられた偏光板を提供する。特に、大型の液晶表示装置に好適に用いられる位相差フィルム等を提供する。本発明の目的は、総アシル置換度が2.0〜2.5の範囲内であるセルロースエステル樹脂を含む位相差フィルムであって、当該位相差フィルムを、温度25℃におけるpHが6〜8の範囲内である水に30分間浸漬し、乾燥した後の水に対する当該位相差フィルムの接触角が20〜50°の範囲内であり、測定光波長590nmにおける当該位相差フィルムの面内リターデーション値(Ro)が30〜100nmの範囲内であり、かつ厚さ方向のリターデーション値(Rt)が100〜300nmの範囲内であることを特徴とする位相差フィルムによって達成された。

Description

本発明は、位相差フィルム及びそれが備えられた偏光板に関する。より詳しくは、鹸化処理をしなくても偏光板と貼合することができ、コントラストとコーナームラが良好な位相差フィルム等に関する。
セルロースエステルフィルムを位相差フィルムとして使用した液晶表示装置用偏光板を作製する場合、セルロースエステルフィルムを鹸化処理し、水糊を用いて偏光子と貼合する方法が一般的である。この時、セルロースエステルを用いた位相差フィルムの鹸化条件によって、出来上がった偏光板を用いた液晶表示装置のコントラストが変化することがわかった。
コントラストの低下は、鹸化液のpHが高く、鹸化温度が高いほど、顕著に見られる。これは、鹸化処理によって位相差フィルムの表面に親水性を付与する際に、フィルム表面近傍の置換度が変化することで位相差のムラが発生したり、添加剤などが鹸化液中溶出したり、水分を含んで膨潤・乾燥する過程で配向角がズレたりするためだと考えられる。
コントラスト低下を防ぐために鹸化条件を弱くすると、偏光子との接着力が十分に取れないことがある。一方、鹸化をしないで偏光板を作製する方法として、水糊の代わりに活性エネルギー線硬化型接着剤を使用する方法(例えば特許文献1参照)、フィルムに易接着層を設ける方法(例えば特許文献2参照)などが考えられるが、接着力が十分に得られないか、新たな設備が必要になる。
また、異なったアシル置換度のセルロースエステルフィルムを積層し、その表面層のアシル置換度を著しく低くすることで親水性樹脂と接着力を向上する技術が提案されている(特許文献3参照)。
しかし、この方法では十分なコントラストが得られないことが分かった。これはアシル置換度が異なったセルロースエステルを積層することで層間の界面などで屈折率の違いに起因する光の散乱、返材としてリサイクル利用した場合に低アシル置換度成分が輝点異物として光漏れの発生などが原因として考えられる。
また、セルロースエステルにビニルピロリドン系樹脂などの親水性ポリマーを添加する方法が提案されている(特許文献4参照)。この方法では親水性ポリマーの添加量を増やせば十分な接着力を得ることができるが、フィルム全体の吸水性も増すため、高湿時の物性が劣化する。また、親水性ポリマーを添加することでセルロースエステルの位相差発現性が低下するため、位相差発現剤などを添加しなければならないが、位相差発現剤の添加によって光弾性係数の劣化、位相差の波長分散性の変化などが起こり、位相差フィルムとして好ましくない。
特開2008−040278号公報 特開平09−218302号公報 特開2002−192656号公報 特開2009−269944号公報
本発明は、上記問題・状況にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、鹸化処理を施さなくても偏光板と貼合することができ、コントラストとコーナームラが良好な位相差フィルムを提供することである。また、それが備えられた偏光板を提供することである。特に、大型の液晶表示装置に好適に用いられる位相差フィルム等を提供することである。
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.総アシル置換度が2.0〜2.5の範囲内であるセルロースエステル樹脂を含む位相差フィルムであって、当該位相差フィルムを、温度25℃におけるpHが6〜8の範囲内である水に30分間浸漬し、乾燥した後の水に対する当該位相差フィルムの接触角が20〜50°の範囲内であり、測定光波長590nmにおける当該位相差フィルムの面内リターデーション値(Ro)が30〜100nmの範囲内であり、かつ厚さ方向のリターデーション値(Rt)が100〜300nmの範囲内であることを特徴とする位相差フィルム。
2.複数の層を積層した積層構造を有し、かつ当該積層された層の少なくとも一方の表面層にアミド構造又はイミド構造を有するポリマーを含有することを特徴とする前記第1項に記載の位相差フィルム。
3.前記表面層のガラス転移温度(Tgs)とその内側の層のガラス転移温度(Tgc)が下記関係式(1)を満たすことを特徴とする前記第2項に記載の位相差フィルム。
関係式(1):Tgc−30(℃)≦Tgs(℃)≦Tgc−10(℃)
4.延伸後のフィルム幅が、1900mm以上であることを特徴とする前記第1項から第3項までのいずれか一項に記載の位相差フィルム。
5.前記第1項から第4項までのいずれか一項に記載の位相差フィルムが備えられたことを特徴とする偏光板。
本発明の上記手段により、鹸化処理を施さなくても偏光板と貼合することができ、コントラストとコーナームラが良好な位相差フィルムを提供することができる。また、それが備えられた偏光板を提供することができる。特に、大型の液晶表示装置に好適に用いられる位相差フィルム等を提供することができる。
本発明の位相差フィルムは、総アシル置換度が2.0〜2.5の範囲内であるセルロースエステル樹脂を含む位相差フィルムであって、当該位相差フィルムを、温度25℃におけるpHが6〜8の範囲内である水に30分間浸漬し、乾燥した後の水に対する当該位相差フィルムの接触角が20〜50°の範囲内であり、測定光波長590nmにおける当該位相差フィルムの面内リターデーション値(Ro)が30〜100nmの範囲内であり、かつ厚さ方向のリターデーション値(Rt)が100〜300nmの範囲内であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項5までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、本発明の位相差フィルムは、複数の層を積層した積層構造を有し、かつ当該積層された層の少なくとも一方の表面層にアミド構造又はイミド構造を有するポリマーを含有することが好ましい。また、前記表面層のガラス転移温度(Tgs)とその内側の層のガラス転移温度(Tgc)が前記関係式(1)を満たすことが好ましい。
本発明においては、延伸後のフィルム幅が1900mm以上であることが好ましい。
本発明の位相差フィルムは、偏光板に好適に用いることができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
<水との接触角>
水との接触角は、フィルムと水の親和性を表し、接触角の値が小さい方が水に濡れやすい。接触角は一般的な方法で測定することができるが、本発明ではフィルムを25℃におけるpHが6〜8の範囲である純水に30分間浸し、120℃で5分間乾燥した後、協和界面科学(株)製の固液界面解析システムDropMaster500を用いて測定した。測定時に滴下する水は3マイクロリットルで、滴下してから1分間後の接触角を測定した。
フィルムと偏光子の接着には、一般的に接着剤としてポリビニルアルコール水溶液が使われるが、接触角の値が小さい方が、接着力が増すことが知られている。検討の結果、接触角が50°以下であれば実用上問題ない接着力が得られるが、40°以下であることがより好ましいことが分かった。
一方、総アシル置換度が2.0〜2.5の範囲内であるセルロースエステル樹脂よりなるフィルムの接触角は60〜75°程度で、このままでは偏光子と十分な接着力が得られないため、通常はアルカリ鹸化処理によって、フィルム表面を加水分解して接触角を20°〜40°程度に低下させて、接着力を発現させている。
しかし、アルカリ鹸化処理は、加水分解によってセルロースエステル樹脂の総アシル置換度を低下させるが、総アシル置換度は位相差発現性とも相関しているため、位相差のバラツキの原因になる。
検討の結果、フィルムをpH6〜8の25℃の純水に30分間浸し、120℃で5分間乾燥した後に測定した接触角が20°〜50°であれば、総アシル置換度が2.0〜2.5の範囲内であるセルロースエステル樹脂フィルムにおいては、アルカリ鹸化処理をしなくても偏光子と接着することが分かった。接触角が50°以上だと十分な接着力が得られず、20°以下だと巻形状で保存したときのブロッキングなどが劣化する。
<セルロースエステル樹脂>
本発明に係るセルロースエステル樹脂は、総アシル置換度が2.0〜2.5の範囲内であるが、総アシル置換度は、2.2〜2.5がより好ましい。ここでいう総アシル置換度は、セルロースを構成する無水グルコースの有する3個のヒドロキシル基(水酸基)のうち、エステル化されているヒドロキシル基(水酸基)の数の平均値を示し、0〜3の値を示す。
セルロースエステル樹脂の総アシル置換度が2.0を下回る場合には、ドープ粘度の上昇によるフィルム面品質の劣化、延伸張力の上昇によるヘイズアップなどが発生することがある。また、総アシル置換度が2.5以上の場合は、必要な位相差が得られない。
本発明において前記アシル基は、脂肪族アシル基であることが好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常ヒドロキシル基(水酸基)として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
本発明に係るセルロースエステル樹脂としては、特にセルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これらの中で特に好ましいセルロースエステル樹脂は、セルロースジアセテートである。
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96(セルロースアセテート等の試験方法)に規定の方法により求めたものである。
本発明に係るセルロースエステルの数平均分子量(Mn)は、30,000〜300,000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に50,000〜200,000のものが好ましく用いられる。
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。
セルロースエステルの重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明に係るセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明に係るセルロースエステルは、公知の方法により製造することができる。一般的には、原料のセルロースと所定の有機酸(酢酸、プロピオン酸など)と酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸など)、触媒(硫酸など)と混合して、セルロースをエステル化し、セルロースのトリエステルができるまで反応を進める。トリエステルにおいてはグルコース単位の三個のヒドロキシル基(水酸基)は、有機酸のアシル酸で置換されている。同時に二種類の有機酸を使用すると、混合エステル型のセルロースエステル、例えばセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートを作製することができる。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解することで、所望のアシル置換度を有するセルロースエステルを合成する。その後、濾過、沈殿、水洗、脱水、乾燥などの工程を経て、セルロースエステルが出来あがる。
具体的には特開平10−45804号公報に記載の方法を参考にして合成することができる。
市販品としては、ダイセル化学工業(株)社のL20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
本発明に係るセルロースエステルフィルムに含まれるカルシウム及びマグネシウムの総量と酢酸量は下記関係式(a)を満たすことが好ましい。
関係式(a):1≦(酢酸量)/(カルシウム及びマグネシウムの総量)≦30
カルシウム及びマグネシウムは、セルロースエステルフィルムの原料となるセルロースエステルに含まれるが、セルロースエステル製造過程に添加される酸触媒(特に硫酸)を中和・安定化するため、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩(無機酸塩、有機酸塩)として添加されてもよい。またセルロースエステルフィルム製膜時に金属酸化物、金属水酸化物、金属塩(無機酸塩、有機酸塩)として添加してもよい。本発明で言うセルロースエステルフィルムに含まれるカルシウム及びマグネシウムの総量は、それらの合計量を指す。
また、セルロースエステルは製造過程において、反応溶媒やエステル化剤として無水酢酸、酢酸が用いられる。未反応の無水酢酸は反応停止剤(水、アルコール、酢酸等)により加水分解され酢酸を生じる。本発明でいうセルロースエステルフィルムに含まれる酢酸量は、それらの残留酢酸や、遊離酢酸の総量を指す。
上記関係式(a)において、酢酸量/(カルシウム及びマグネシウムの総量)が1より小さいとき、カルシウム及びマグネシウム金属塩による光散乱が生じ、コントラストを低下させてしまい好ましくない。また30より大きい時、セルロースエステルを偏光子に貼り合わせた後、酢酸により偏光子の劣化が促進され好ましくない。
セルロースエステルフィルムに含まれるカルシウム及びマグネシウムの総量は5〜130ppmが好ましく、5〜80ppmがより好ましく、5〜50ppmが更に好ましい。
セルロースエステルフィルムに含まれるカルシウム及びマグネシウムの定量は、公知の方法を用いることができるが、例えば、乾燥したセルロースエステルを完全に燃焼させた後、灰分を塩酸に溶解して前処理を行った上で原子吸光法により測定することができる。測定値は絶乾状態のセルロースエステル1g中のカルシウム及びマグネシウム含有量としてppmを単位として得られる。
セルロースエステルフィルムに含まれる酢酸量は20〜500ppmが好ましく、25〜250ppmがより好ましく、30〜150ppmが更に好ましい。
セルロースエステルフィルムに含まれる酢酸の定量は、公知の方法を用いることができるが、例えば、次のような方法を用いることができる。フィルムを塩化メチレンに溶解し、さらにメタノールを加えて再沈殿を行う。上澄み液をろ過し、その上澄み液をガスクロマトグラフィーにて測定することで、酢酸量を得ることができる。
<アミド構造又はイミド構造を有するポリマー>
本発明の位相差フィルムの表面層にはアミド構造又はイミド構造を有するポリマー(以下アミド又はイミドポリマーとすることがある。)を含有することが好ましい。アミド又はイミドポリマーを含有させることで水との親和性を付与することができる。また、総アシル置換度が2.0〜2.5の範囲内であるセルロースエステル樹脂との相溶性に優れるため、ヘイズなどの透明性も良好である。
アミド構造を有するポリマーとしては、N−ビニルピロリドン(VP)、N−ビニル−2−メチルピロリドン、アクリロイルモルフォリン(ACMO)、アクリロイル−2−メチルモルフォリン、ジメチルアクリルアミド(DMAA)、ビニルアセトアミドなどを共重合成分として有するポリマーを指す。特に、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、ジメチルアクリルアミドが好ましい。
イミド構造を有するポリマーとしては、メチルマレイミド(MMI)、グルタルイミドなどを共重合成分として有するポリマーを指す。特にメチルマレイミドが好ましい。
これらのアミド又はイミドポリマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは一種又は二種以上の単量体を併用して用いることができる。これらの内、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)などが挙げられる。これらの内、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチルメタクリレートであることが好ましい。
これらの共重合比率は、アミド構造又はイミド構造を有する共重合成分が、ポリマーを構成する共重合成分全体の10〜100mol%であることが好ましく、20〜80mol%であることがより好ましい。
アミド又はイミドポリマーの数平均分子量(Mn)は1,000〜100,000程度が好ましく、5,000〜50,000程度がより好ましい。分子量はセルロースエステルと同様の方法で測定することができる。
本発明におけるアミド又はイミドポリマーの製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系、アゾ系、レドックス系のものを用いることができる。重合温度については、懸濁又は乳化重合では30〜100℃、塊状又は溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
アミド又はイミドポリマーは、セルロースエステル樹脂中に2〜70質量%使用されることが好ましく、5〜50質量%使用されることがより好ましい。添加量が少なすぎると、アミド又はイミドポリマーの効果を発揮することが出来ず、添加量が多すぎると吸水性の劣化などが起こる。
<積層構造>
本発明の位相差フィルムは単層フィルムでもよいし、複数の層を積層した積層構造フィルムでもよい。
本願においては、積層された複数の層の内、最も外側にある二つの層を表面層又はスキン層と呼ぶことがある。また、三層構造の場合、表面層の内側にある層をコア層と呼ぶことがある。
積層構造の総数は特に限定されないが三層であることが好ましい。二層では本発明の効果が十分ではなく、四層以上では製造装置が複雑になる。
流延するセルロースエステル溶液は、二層構造の場合は少なくとも一方の層、三層以上の場合は少なくとも一方の表面層に、前述のアミド又はイミドポリマーを含有させることが好ましい。最も好ましい形態は三層の積層構造で両方の表面層にアミド又はイミドポリマーを含有させることである。
表面層にアミド又はイミドポリマーを含有させることによって、出来あがったフィルムの面品質が向上し、生産速度が向上することが分かった。これは固形分濃度を下げずに表面層のセルロースエステル溶液の粘度が低下する効果と、アミド又はイミドポリマーを含有させることによって金属支持体からの剥離性が向上する効果によるものと考えられる。
表面層とその内側の層の厚さは特に限定されないが、三層以上の積層の場合、表面層が両面合わせて全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。
<加水分解防止剤>
本発明の位相差フィルムには必要に応じて加水分解防止剤を添加してもよい。加水分解防止剤は特に限定されないが、オクタノール−水分配係数(以下logPとすることがある)は、加水分解防止効果、セルロースエステルとの相溶性等の観点から、7以上11未満が好ましい。
logP値の測定は、JIS Z−7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、logPは実測に代わって、計算化学的手法又は経験的方法により見積もることも可能である。
計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年))、Viswanadhan’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,29巻、p163(1989年))、Broto’s fragmentation法(“Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.”,19巻、p71(1984年))、CLogP法(参考文献Leo,A.,Jow,P.Y.C.,Silipo,C.,Hansch,C.,J.Med.Chem.,18,865 1975年)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年))がより好ましい。
加水分解防止剤は、例えば、ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下有しその構造のOH基の一部がエステル化されたエステル化合物を好ましく用いることができる。エステル化の割合は70%以上であることが好ましい。
本発明においては、上記エステル化合物を総称して、糖エステル化合物とも称す。
本発明に用いられるエステル化合物の例としては、例えば以下のような糖類のエステル化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。
この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。
ピラノース構造又はフラノース構造中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。例えば、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸、ナフチル酸が好ましい。
オリゴ糖のエステル化合物を、本発明に係るピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1〜12個を有する化合物として適用できる。
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるもので、本発明に適用できるオリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
また、前記エステル化合物は、下記一般式(A)で表されるピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下縮合した化合物である。ただし、R11〜R15、R21〜R25は、炭素数2〜22のアシル基又は水素原子を、m、nはそれぞれ0〜12の整数、m+nは1〜12の整数を表す。
11〜R15、R21〜R25は、ベンゾイル基、水素原子であることが好ましい。
ベンゾイル基は更に置換基R26を有していてもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、更にこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。オリゴ糖も本発明に係るエステル化合物と同様な方法で製造することができる。
以下に、本発明に係るエステル化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、加水分解防止剤をセルロースエステルフィルムの0.5〜30質量%含むことが好ましく、特には、2〜15質量%含むことが好ましい。
<位相差調整剤>
本発明の位相差フィルムには、位相差調整剤(「リターデーション調整剤」ともいう。)を添加してもよい。
位相差調整剤は特に限定されないが、logPは0以上7未満の化合物が好ましい。位相差調整剤は、樹脂に相応した適度な溶解性が必要であるが、本発明に係るセルロースエステルにおいて、logPが0より小さいとき、化合物の水溶性が高いため配向乱れを生じ、またlogPが7以上であると、化合物の配向性が低いため所望の位相差を得ることができず、好ましくない。
位相差調整剤は、例えば、下記一般式(B)で表されるエステル系化合物を好ましく用いることができる。
一般式(B):B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシル基又はカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基又は炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(B)中、Bで示されるヒドロキシル基又はカルボン酸残基と、Gで示されるアルキレングリコール残基又はオキシアルキレングリコール残基又はアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基又はアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のエステル系化合物と同様の反応により得られる。
一般式(B)中、Bで表されるカルボン酸成分としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、脂肪族酸等があり、これらはそれぞれ一種又は二種以上の混合物として使用することができる。
一般式(B)中、Gで表される炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用される。特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
一般式(B)中、Aで表される炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ一種又は二種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
一般式(B)で表されるエステル系化合物は、数平均分子量が、好ましくは300〜2000、より好ましくは400〜1500の範囲が好適である。また、その酸価は0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシル基(水酸基)価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシル基(水酸基)価は15mgKOH/g以下のものである。
以下に、本発明に用いることのできる一般式(B)で表されるエステル系化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
本発明に係る位相差フィルムは位相差調整剤をセルロースエステルフィルムの0.1〜30質量%含むことが好ましく、特には、0.5〜10質量%含むことが好ましい。
<可塑剤>
本発明の位相差フィルムには、必要に応じて可塑剤を含有させても良い。含有させることのできる可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、アクリル系ポリマーなどを用いることができる。また、リン酸エステル系可塑剤の添加量は偏光度の耐久性の観点から6質量%以下とすることが好ましい。
可塑剤は1%減量温度(Td1)が250℃以上であることが好ましく、より好ましくは280℃以上であり、特に好ましくは300℃以上である。1%減量温度がこの範囲であれば、生産工程での揮発に起因する面品質の低下、物性のバラツキなどを抑制することができる。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(a)で表される。
一般式(a):R−(OH)
但し、Rはn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性ヒドロキシル基(水酸基)又はフェノール性ヒドロキシル基(水酸基)を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、グリセリン、ジグリセリン、ガラクチトール、イノシトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトールなどを挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると、透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。酢酸を用いるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸としては炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、具体的にはシクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸など、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に、安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、400〜1000の範囲であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
多価アルコールエステルは、公知の方法により合成できる。前記モノカルボン酸と、前記多価アルコールを例えば、酸の存在下縮合させエステル化する方法、また、有機酸を予め酸クロライドあるいは酸無水物としておき、多価アルコールと反応させる方法、有機酸のフェニルエステルと多価アルコールを反応させる方法等があり、目的とするエステル化合物により、適宜、収率のよい方法を選択することが好ましい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(c)で表される。
一般式(c):R(COOH)(OH)
(但し、Rは(m+n)価の有機基、mは2以上の正の整数、nは0以上の整数、COOH基はカルボキシル基、OH基はアルコール性又はフェノール性ヒドロキシル基(水酸基)を表す。)
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸又はその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上などの点で好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては特に制限はなく公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。
例えば炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪族飽和アルコール又は脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール又はその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコール又はその誘導体なども好ましく用いることができる。
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性又はフェノール性のヒドロキシル基(水酸基)を、モノカルボン酸を用いてエステル化しても良い。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を二個以上持つ芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に酢酸、プロピオン酸、安息香酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
特に好ましい多価カルボン酸エステル化合物の例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、トリメシン酸トリブチル、トリメシン酸トリヘキシル、トリメシン酸トリ2−エチル−ヘキシル、トリメシン酸トリシクロヘキシル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリヘキシル、トリメリット酸トリ2−エチル−ヘキシル、トリメリット酸トリシクロヘキシル、ピロメリット酸テトラブチル、ピロメリット酸テトラヘキシル、ピロメリット酸テトラ2−エチルヘキシル、ピロメリット酸テトラシクロヘキシル等が挙げられる。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等を用いることができる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
この他、エポキシ化オイル系可塑剤なども使用することができる。
<紫外線吸収剤>
本発明の位相差フィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。
紫外線吸収剤の具体例として、例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物等があり、また、BASFジャパン(株)製のTINUVIN109、TINUVIN171、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN328、TINUVIN900、TINUVIN928、(株)ADEKA製のLA−31等の市販の紫外線吸収剤も好ましく用いることができる。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤である。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤は単独で用いても良いし、二種以上の混合物であっても良い。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
<酸化防止剤、熱劣化防止剤>
高湿高温の状態に液晶画像表示装置などがおかれた場合には、セルロースエステルフィルムの劣化が起こる場合がある。酸化防止剤、熱劣化防止剤は、例えば、セルロースエステルフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースエステルフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、前記セルロースエステルフィルム中に含有させるのが好ましい。
本発明では、酸化防止剤、熱劣化防止剤としては、通常知られている劣化防止剤(酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミンなど)を使用することができる。特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系化合物のものを好ましく用いることができる。劣化防止剤については、特開平3−199201号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報に記載がある。
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノール構造を有するものが好ましく、例えば、BASFジャパン(株)から、Irganox1076、Irganox1010という商品名で市販されているものが好ましい。
上記リン系化合物は、例えば、住友化学(株)から、Sumilizer−GP、(株)ADEKAからADK STAB PEP−24G、ADK STAB PEP−36及びADK STAB 3010、BASFジャパン(株)からIRGAFOS P−EPQ、堺化学(株)からGSY−P101という商品名で市販されているものが好ましい。
上記ヒンダードアミン系化合物は、例えば、BASFジャパン(株)から、Tinuvin144及びTinuvin770、(株)ADEKAからADK STAB LA−52という商品名で市販されているものが好ましい。
上記イオウ系化合物は、例えば、住友化学(株)から、Sumilizer TPL−R及びSumilizer TP−Dという商品名で市販されているものが好ましい。
上記二重結合系化合物は、住友化学(株)から、Sumilizer−GM及びSumilizer−GSという商品名で市販されているものが好ましい。
さらに、酸捕捉剤として米国特許第4,137,201号明細書に記載されているようなエポキシ基を有する化合物を含有させることも可能である。
これらの酸化防止剤等は、再生使用される際の工程に合わせて適宜添加する量が決められるが、一般には、フィルムの主原料である樹脂に対して、0.05〜5質量%の範囲で添加される。
これらの酸化防止剤、熱劣化防止剤は、一種のみを用いるよりも数種の異なった系の化合物を併用することで相乗効果を得ることができる。例えば、ラクトン系、リン系、フェノール系及び二重結合系化合物の併用は好ましい。
<着色剤>
本発明においては、着色剤を使用しても良い。通常、着色剤とは染料や顔料を意味するが、本発明では、フィルムのイエローインデックス(黄色度)の調整、ヘイズの低減効果を有するものを指す。
着色剤としては各種の染料、顔料が使用可能だが、アントラキノン染料、アゾ染料、フタロシアニン顔料などが有効である。
<マット剤>
本発明にはフィルムに滑り性を付与するため、マット剤として無機微粒子を添加しても良い。無機化合物の例として、二酸化珪素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。中でも、二酸化珪素であることがヘイズを低くする点で好ましい。
また、マット剤微粒子は有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。
微粒子の平均径が大きい方がマット効果は大きいが、大きすぎると透明性が劣化するため、本発明においては、微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜20nmが好ましく、更に好ましいのは5〜12nmである。
これらの微粒子は、0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成して位相差フィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmであり、更に好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成して、フィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。
本発明に用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、1次平均粒子径とした。
セルロースエステルフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.8質量%が好ましい。共流延法による多層構成のセルロースエステルフィルムの場合は、表面層にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、商品名がアエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、R812V、OX50、TT600,NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKE−P10、KE−P30、KE−P50、KE−P100(以上日本触媒(株)製)などを使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、R812V、R972V、NAX50、シーホスターKE−P30がセルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。
微粒子の見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、また、本発明のように固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
マット剤の分散液は、マット剤を溶剤中に入れた後、分散機にかけることによって作製することができる。分散機は異物の混入を防ぐためにメディアレス分散機であることが好ましい。
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。
高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。
更に好ましくは19.613MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
上記のような高圧分散装置には、Microfluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)或いはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えば、イズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)製UHN−01等が挙げられる。
<位相差フィルムの製造方法>
本発明に係るセルロースエステルフィルムは溶液流延法で製造されたフィルムであっても溶融流延法で製造されたフィルムであっても好ましく用いることができる。
溶液流延法において、本発明の位相差フィルムの製造は、セルロースエステル及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
(ドープ調製工程)
ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても二種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。
良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの総アシル置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
また、セルロースエステルの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。
回収溶剤中に、セルロースエステルに添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分などが微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。
好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
また、冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。
このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム(位相差フィルム)等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましい。
より好ましくは100個/cm以下であり、更に好ましくは50個/m以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。
好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
(ドープ流延工程)
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化したりする場合がある。
好ましい支持体温度は0〜55℃であり、25〜50℃が更に好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
フィルムを支持体から剥離する際の剥離張力は300N/m以下であることが好ましい。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は40〜200℃で段階的に高くしていくことが好ましい。
(共流延工程)
積層構造フィルムを作製する場合は、金属支持体としての平滑なベルト又はドラム上に、二層以上の複数のセルロースエステル溶液を流延する方法が好ましい。
複数のセルロースエステル溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔をおいて設けた複数の流延口からセルロースエステル溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく(逐次重層)、また、一つのダイスに2つ以上の流延口を設けてセルロースエステル溶液を同時に流延させて複層構造フィルムを作製してもよい(同時重層)。逐次重層の作製方法は、例えば特公昭60−27562号公報、特開昭61−104813号公報、特開昭61−158414号公報、特開平1−122419号公報などに記載されている方法があげられる。同時重層の作製方法は、例えば特開昭61−94724号公報、特開昭61−158413号公報、特開平6−134933号公報などに記載されている方法をあげることができる。
セルロースエステルフィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが用いられる。特に膜厚は10〜100μmであることが特に好ましい。更に好ましくは20〜60μmである。
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、幅1〜4mで製膜され、特に幅1.4〜4mのものが好ましく、特に好ましくは1.9〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
(延伸工程)
セルロースエステルフィルムに下記所望のリターデーション値Ro、Rtを付与するには、セルロースエステルフィルムが本発明の構成をとり、更に搬送張力の制御、延伸操作により屈折率制御を行うことが好ましい。
例えば、長手方向の張力を低く又は高くすることでリターデーション値を変動させることが可能となる。
また、フィルムの長手方向(製膜方向)及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向に対して、逐次又は同時に二軸延伸もしくは一軸延伸することが好ましい。
本発明では、上記のようにして得られたフィルムは冷却ロールに接する工程を通過後、少なくとも一方向に1.01〜3.0倍延伸することが好ましい。延伸によりスジの改良などの面品質の向上、リターデーションの調整などを行うことができる。
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを用いることができる。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。
また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
互いに直交する二軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に0.8〜1.5倍、幅方向に1.1〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に0.8〜1.0倍、幅方向に1.2〜2.0倍に範囲で行うことが好ましい。
延伸温度は120℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは150℃〜200℃であり、さらに好ましくは150℃を超えて190℃以下で延伸するのが好ましい。
フィルム中の残留溶媒は20〜0%が好ましく、さらに好ましくは15〜0%で延伸するのが好ましい。
具体的には155℃で残留溶媒が11%で延伸する、あるいは155℃で残留溶媒が2%で延伸するのが好ましい。もしくは160℃で残留溶媒が11%で延伸するのが好ましく、あるいは160℃で残留溶媒が1%未満で延伸するのが好ましい。
延伸は、幅手方向で制御された均一な温度分布下で行うことが好ましい。好ましくは±2℃以内、さらに好ましくは±1℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内である。
また延伸工程には公知の熱固定条件、冷却、緩和処理を行ってもよく、目的とするフィルムに要求される特性を有するように適宜調整することができる。
上記の方法で作製した光学フィルム(位相差フィルム)のリターデーション調整や寸法変化率を低減する目的で、フィルムを長手方向や幅手方向に収縮させてもよい。
長手方向に収縮するには、例えば、巾延伸を一時クリップアウトさせて長手方向に弛緩させる、又は横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。
後者の方法は一般の同時二軸延伸機を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行うことができる。必要により任意の方向(斜め方向)の延伸と組み合わせてもよい。長手方向、巾手方向とも0.5%から10%収縮させることで光学フィルム(位相差フィルム)の寸法変化率を小さくすることができる。
延伸は、例えば光学フィルム(位相差フィルム)の長手方向及びそれと光学フィルム(位相差フィルム)面内で直交する方向、即ち幅方向に対して、逐次又は同時に行うことができる。
互いに直行する二軸方向に延伸することにより、得られる光学フィルム(位相差フィルム)の膜厚変動が減少できる。光学フィルム(位相差フィルム)の膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
光学フィルム(位相差フィルム)の膜厚変動は、±3%であることが好ましく、±1%の範囲とすることがさらに好ましい。
本発明の位相差フィルムの遅相軸又は進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましく、−0.1°以上+0.1°以下であることがさらに好ましい。
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制又は防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
本発明の位相差フィルムの面内リターデーション値(Ro)及び厚さ方向のリターデーション値(Rt)は、偏光子保護フィルムとして用いる場合には、面内リターデーション値(Ro)は30〜100nmの範囲内であり、かつ厚さ方向のリターデーション値(Rt)は100〜300nmの範囲内であることを要するが、面内リターデーション値(Ro)は35〜65nmの範囲内であり、かつ厚さ方向のリターデーション値(Rt)は100〜180nmの範囲内であることが好ましい。
また、Rtの変動や分布の幅は±50%未満であることが好ましく、±30%未満であることが好ましく、±20%未満であることが好ましい。更に±15%未満であることが好ましく、±10%未満であることが好ましく、±5%未満であることが好ましく、特に±1%未満であることが好ましい。最も好ましくはRtの変動がないことである。
なお、リターデーション値Ro、Rtは以下の式によって求めることができる。
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚み(nm)、nxはフィルムの面内の最大の屈折率(遅相軸方向の屈折率ともいう)、nyはフィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率、nzは厚み方向におけるフィルムの屈折率である。
リターデーション値Ro、Rtは自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmで求めることができる。
フィルムの物性は延伸温度によって大きく変わることが知られている。この傾向はフィルムのガラス転移温度(Tg)付近で、顕著にみられる。
本発明者の検討の結果、位相差フィルムと偏光子の接着性は、延伸温度が樹脂のTg〜Tg+20(℃)である時が最も良好であることが分かった。一方で、Tgよりも高い温度で延伸すると位相差(リターデーション)の発現が不足することが分かった。位相差の発現性はTgよりも低い温度で延伸した方が良いが、延伸温度が低すぎると、延伸し難くなるため、フィルムの白濁や、延伸途中での破断などが発生するため、位相差フィルムとしては、延伸はTg−20〜Tg(℃)で行うことが好ましい。
このため、偏光子密着性と位相差発現を両立する延伸温度の範囲は極めて狭く、Tgと同じにしなければ、所望の性能が得られないが、ピンポイントのため性能が安定しないということが分かった。
この問題を解決するために検討した結果、位相差フィルムを三層の積層構造とし、表面層(以下スキン層とすることがある)のガラス転移温度(Tgs)と、その内側の層(以下コア層とすることがある)のガラス転移温度(Tgc)を下記関係式(1)の関係を満たすように調節すると、偏光子密着性と位相差を両立する温度で延伸できることを見出した。
関係式(1):Tgc−30(℃)≦Tgs(℃)≦Tgc−10(℃)
また、延伸倍率は30〜60(%)であることが好ましく、35〜50(%)であることがより好ましい。を大きくすると偏光子密着性が良化し、位相差発現も良好だが、延伸倍率が大きすぎると、フィルムの白濁や、延伸途中の破断が発生する。
ガラス転移温度を変化させる方法は、セルロースエステルの置換度を変化させる方法、可塑剤や樹脂などの添加剤を加える方法などが上げられる。セルロースエステルの置換度を変化させる方法では、積層された層の界面での光の散乱、リサイクルした際の輝点異物の発生などがあるため、添加剤を加える方法の方が好ましい。
二種類以上の樹脂を混合する時に、両者の樹脂のガラス転移温度が異なる場合、各々の樹脂のガラス転移温度が存在するため混合物のガラス転移温度は2つ以上存在するが、両者の樹脂が相溶したときは、各々の樹脂固有のガラス転移温度が消失し、1つのガラス転移温度となって相溶した樹脂のガラス転移温度となる。
尚、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた。
(その後の工程)
延伸後、光学フィルム(位相差フィルム)の端部をスリッターにより製品となる幅にスリットして裁ち落とした後、エンボスリング及びバックロールよりなるナール加工装置によりナール加工(エンボッシング加工)を光学フィルム(位相差フィルム)両端部に施し、巻取り機によって巻き取ることにより、光学フィルム(位相差フィルム)(元巻き)中の貼り付きや、すり傷の発生を防止する。ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。
なお、スリッターにより切除した光学フィルム(位相差フィルム)の両端部は、原料として再利用してもよい。
次に、光学フィルム(位相差フィルム)の巻取り工程は、円筒形巻き光学フィルム(位相差フィルム)の外周面とこれの直前の移動式搬送ロールの外周面との間の最短距離を一定に保持しながら光学フィルム(位相差フィルム)を巻取りロールに巻き取るものである。かつ巻取りロールの手前には、光学フィルム(位相差フィルム)の表面電位を除去又は低減する除電ブロア等の手段が設けられている。
本発明の光学フィルム(位相差フィルム)の製造に係わる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻き取り方法で巻き取ることができる。なお、光学フィルム(位相差フィルム)の巻取り時の初期巻取り張力が90.2〜300.8N/mであることが好ましい。
本発明の方法における光学フィルム(位相差フィルム)の巻き取り工程では、温度20〜30℃、湿度20〜60%RHの環境条件にて、光学フィルム(位相差フィルム)を巻き取ることが好ましい。巻き取り工程における温度が20〜30℃の範囲であれば、シワの発生がなく、光学フィルム(位相差フィルム)巻品質劣化もない。また、光学フィルム(位相差フィルム)の巻き取り工程における湿度が20〜60%RHであれば、吸湿による光学フィルム(位相差フィルム)巻品質劣化も削減され、巻品質に優れ、貼り付き故障もなく、搬送性の劣化もない。
光学フィルム(位相差フィルム)をロール状に巻き取る際の巻きコアとしては、円筒上のコアであれはどのような材質のものであってもよいが、好ましくは中空プラスチックコアである。プラスチック材料としては加熱処理温度にも耐える耐熱性プラスチックであればどのようなものであってもよく、フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
またガラス繊維等の充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。例えば、中空プラスチックコア:FRP製の外径6インチ(以下、1インチは2.54cmである。)、内径5インチの巻きコアが用いられる。
本発明の光学フィルム(位相差フィルム)の製造において、ロール長さは、生産性と運搬性を考慮すると、長さは10〜5000mが好ましく、より好ましくは50〜4500mである。
このときの光学フィルム(位相差フィルム)の幅は、偏光子の幅や製造ラインに適した幅を選択することができるが、0.5〜4.0m、好ましくは1.0〜3.0mの幅で光学フィルム(位相差フィルム)を製造してロール状に巻き取ることが好ましい。
本発明における光学フィルム(位相差フィルム)の透明性を判断する指標としては、ヘイズ値(濁度)を用いる。特に屋外で用いられる液晶表示装置においては、明るい場所でも十分な輝度や高いコントラストが得られることが求められる為、ヘイズ値は0.5%以下であることが必要とされ、0.35%以下であることが更に好ましい。
本発明の光学フィルム(位相差フィルム)は、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは92%以上である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。
また、製膜時のフィルム接触部(冷却ロール、カレンダーロール、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ロールなど)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることや、アクリル樹脂の屈折率を小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
また、本発明の光学フィルム(位相差フィルム)は、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断点伸度が30%以上であり、より好ましくは50%以上である。本発明においては、脆性の尺度として破断点伸度を用いている。脆性の尺度としては他に引裂き強度や折り曲げによる割れ易さなどが知られているが、引裂き強度は膜厚が厚いほど良く、折り曲げによる割れ易さは膜厚が薄いほど良いなど、光学フィルム(位相差フィルム)の膜厚の影響が大きいため、本発明においては膜厚の影響を受けない破断点伸度を指標として用いている。破断点伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
本発明の光学フィルム(位相差フィルム)の膜厚に特に制限はないが、後述する偏光板保護フィルムに使用する場合は20〜200μmであることが好ましく、25〜100μmであることがより好ましく、30〜80μmであることが特に好ましい。
なお、本発明の光学フィルム(位相差フィルム)は、延伸後のフィルム幅が、1900mm以上であることが好ましい。
また、流延後に剥離して乾燥されロール状に巻き取られた後、ハードコート層や反射防止層等の機能性薄膜が設けられてもよい。加工若しくは出荷されるまでの間、汚れや静電気によるゴミ付着等から製品を保護するために通常、包装加工がなされる。
この包装材料については、上記目的が果たせれば特に限定されないが、フィルムからの残留溶媒の揮発を妨げないものが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、紙、各種不織布等が挙げられる。繊維がメッシュクロス状になったものは、より好ましく用いられる。
<偏光板>
本発明の位相差フィルムを使用した偏光板は、一般的な方法で作製することができる。本発明の位相差フィルムの裏面側に粘着層を設け、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には本発明の位相差フィルムを用いても、また他の偏光板保護フィルムを用いてもよい。
例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)も好ましく用いられる。
液晶表示装置の表面側に用いられる偏光板保護フィルムには、防眩層あるいはクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層、バックコート層を有することが好ましい。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、鹸化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。
中でも熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。
このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能及び耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体又は架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
上記粘着剤としては一液型であっても良いし、使用前に二液以上を混合して使用する型であっても良い。
また上記粘着剤は有機溶剤を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
<液晶表示装置>
本発明の光学フィルム(位相差フィルム)を貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができるが、特に大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外用途の液晶表示装置に好ましく用いられる。本発明に係る偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
本発明に係る偏光板は反射型、透過型、半透過型LCD又はTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型(FFS方式も含む)等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持される。
また、上記で説明したように、本発明の位相差フィルムでは、ケン化工程が無くても偏光子への貼り付けができるという利点がある。従って、簡易な貼り付けができるようになるため、偏光板のロールが容易に製造しやすくなる。この偏光板のロールから、ガラスセルに連続して貼り付けることもできるようになり生産性が向上するという効果もある。すなわち、請求項5で示される偏光板であって、長尺ロール状の偏光板に予め所定のサイズに切断したガラスセルに粘着剤を用いて貼り付けた後、前記ガラスセル毎に切断する事を特徴とするガラスパネルの製造方法により、生産性良く液晶表示装置を製造することができる。ここで言う長尺ロールとは、1000m以上のものでありより好ましくは3000m以上のものをいう。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
<セルロースエステルCE−1の作製>
セルロース100質量部に、硫酸16質量部、無水酢酸260質量部、酢酸420質量部をそれぞれ添加し、攪拌しながら室温から60℃まで60分かけて昇温し、15分間その温度を保持しながら酢化反応を行った。次に、酢酸マグネシウム及び酢酸カルシウムの酢酸−水混合溶液を添加して硫酸を中和した後、反応系内に水蒸気を導入して、60℃で120分間維持して鹸化熟成処理を行った。その後、多量の水により洗浄を行い、更に乾燥し、セルロースエステルCE−1を得た。
なお、得られたセルロースエステルCE−1は、総アシル置換度2.45、数平均分子量をMn、重量平均分子量をMwとするとき、Mn=80000、Mw/Mn=2.4であった。なお、総アシル置換度、分子量は前述の方法に従って求めた。
<セルロースエステルCE−2〜CE−6の作製>
セルロースエステルの総アシル置換度、プロピオニル置換度(Pr置換度)を表1〜表4に記載のように変化するよう、上記セルロースエステルCE−1の作製条件を適宜変更した以外は同様にしてセルロースエステルCE−2〜CE−6を作製した。なお、置換基としてプロピオニル基を導入する場合には酢酸とプロピオン酸を用いて酢化反応を行った。
<位相差フィルム1−01〜1−18の作製>
〈微粒子分散液〉
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 1質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクにセルロースエステルCE−1を添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースエステル溶液を充分に攪拌しながら、ここに微粒子分散液をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
セルロースエステルCE−1 4質量部
微粒子分散液 11質量部
〈ドープ液A〉
下記組成の主ドープ液を調製した。
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 30質量部
セルロースエステルCE−1 70質量部
酢酸ビニル/ビニルピロリドン=50/50の共重合体(Mn:2万)
30質量部
微粒子添加液 0.5質量部
まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステルCE−1を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、更に酢酸ビニル/ビニルピロリドン=50/50の共重合体(Mn:2万)を添加、溶解させた。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープ液Aを調製した。
〈ドープ液B〉
下記組成の主ドープ液を調製した。
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 30質量部
セルロースエステルCE−1 90質量部
ポリエステルPE−1 10質量部
PE−1:テレフタル酸/コハク酸/エチレングリコール=25/25/50のポリエステル(Mn:1500)
まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステルCE−1を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、更にポリエステルPE−1を添加、溶解させた。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープ液Bを調製した。
ドープ液Aとドープ液Bを三層共流延ダイスを用いて、ドープ液Aが表面側にドープ液Bがその内側になるように配置して、ベルト流延装置を用い、幅2mのステンレスバンド支持体に共流延した。ドープ液Aの厚さが各30μm、ドープ液Bの厚さが175μmになるように設定して流延した。
ステンレスバンド支持体上で、残留溶媒量が110%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体から剥離した。剥離の際に張力をかけて縦(MD)延伸倍率が1.02倍となるように延伸した。
次いで、テンターでウェブ両端部を把持し、幅手(TD)方向の延伸倍率が1.35倍となるように延伸した延伸開始時の残留溶媒は30%であった。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持し、幅方向の張力を緩和させた後幅保持を解放し、更に125℃に設定された第3乾燥ゾーンで30分間搬送させて乾燥を行い、幅1.5m、かつ端部に幅1cm、高さ8μmのナーリングを有する膜厚40μmの本発明の位相差フィルム1−01を作製した。
(位相差フィルム1−02〜1−18の作製)
セルロースエステル、ポリマー、添加剤を表1及び表2に記載のように変更した以外は、上記と同様にしてセルロースエステルフィルム1−02〜1−18を作製した。
ただし、1−12、13、及び14については、単層流延ダイスを用いてドープ液Bの厚さが235μmになるように流延した。また、1−13、及び16に用いた添加剤R−1は下記化合物aである。
《評価項目、評価方法》
上記で得られた位相差フィルム1−01〜1−18について、水処理後接触角、偏光子密着性、コーナームラの評価を以下の様にして行った。
(水処理後接触角)
サンプルをpH7の25℃の純水に30分間浸し、120℃で5分間乾燥した後、協和界面科学(株)製の固液界面解析システムDropMaster500を用いて測定した。測定時に滴下する水は3マイクロリットルで、滴下してから1分間後の接触角を測定した。
水処理後の接触角が20〜50°であれば、アルカリ鹸化処理をしなくても偏光子と接着することができる。好ましくは20〜40°、さらに好ましくは20〜30°である。
(リターデーション)
リターデーション値Ro、Rtは以下の式によって求めた。
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚み(nm)、屈折率nx(遅相軸方向の屈折率)、ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)、nz(厚み方向におけるフィルムの屈折率)である。
リターデーション値(Ro)、(Rt)は自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmで求めた。
(偏光子密着性)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と前記位相差フィルム1−01〜1−18と、裏面側にはコニカミノルタオプト(株)製コニカミノルタタックKC8UY(以下、8UYとする)を偏光板保護フィルムとして貼り合わせて偏光板を作製した後、偏光子密着性を測定した。
工程1:8UYを50℃の2モル/lの水酸化カリウム溶液に30秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して表面を鹸化したセルロースエステルフィルムを得た。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを位相差フィルム1−01〜1−18と、更に裏面側に工程1で処理した8UYの上にのせて配置した。
工程4:工程3で積層した位相差フィルム1−01〜1−18と偏光子と裏面側セルロースエステルフィルムを圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子と位相差フィルム1−01〜1−18と裏面側セルロースエステルフィルムとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板を作製した。偏光板のサイズは5cm×5cmである。
作製した偏光板の角に、位相差フィルムと8UYの間にカッターで切り込みを入れ、手で位相差フィルムを偏光子から剥がし、その時の剥がれ具合を評価した。評価は1サンプルにつき、4つの角を使って、n=4で行った。評価基準は以下のとおりである。△レベル以上であれば実用上問題ないレベルである。
○ :全く剥がれない
○△:4つの角の内1〜2か所がわずかに欠ける(1mm以内)
△ :4つの角すべてがわずかに欠ける(1mm以内)
△×:4つの角の内少なくとも1か所が、1cm程度剥がれる
×:位相差フィルムが完全に剥がれる。
(コーナームラ)
コーナームラ評価を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
VAモード型液晶表示装置(SONY製BRAVIAV1、40インチ型)の予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記偏光子密着性と同様の方法で作製した偏光板を位相差フィルム1−01〜1−18側が、液晶セルのガラス面になるように両面に貼合した。
その際、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置を各々作製した。
この液晶表示装置を40℃90%RHの環境下で24時間放置し、次いで23℃55%の環境下で液晶表示装置を点灯し、点灯してから2時間後のコーナームラを観察し、以下の基準に従って評価した。△レベル以上であれば実用上問題ない。
○:コーナームラが観察されない
△:コーナー部分に弱い光漏れが観察される
×:コーナー部分に光漏れがハッキリと観察される
以上の評価結果を表1及び表2にまとめて示す。
表1及び表2に示した結果から明らかなように、本発明の位相差フィルムは、比較例に対し、適切な水処理後接触角とリターデーション値を有する上に、偏光子密着性に優れ、かつコーナームラが無いか又は少ないことが分かる。すなわち、本発明の手段によれば、鹸化処理を施さなくても偏光板と貼合することができ、コーナームラが良好な位相差フィルムを提供することができる。また、それが備えられた偏光板を提供することができる。
実施例2
セルロースエステルの種類、ポリマーの添加量、延伸条件を表3及び表4に記載のように変えた以外は実施例1と同様の方法で位相差フィルム2−01〜2−16を作製した。
位相差フィルム2−01〜2−16について、実施例1と同様にして水処理後接触角、Ro、Rt、偏光子密着性を測定した。また、以下に示す方法でコントラストを測定した。
(コントラスト)
位相差フィルム2−01〜2−16を用いて、コーナームラと同様の方法で、液晶表示装置を作製した。
23℃55%RHの環境で、各々の液晶表示装置のバックライトを1週間連続点灯した後、測定を行った。測定にはELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて、液晶表示装置で白表示と黒表示の表示画面の輝度を測定し、その比をコントラストとした。コントラストは△レベル以上であれば実用上問題ないが、○レベル以上であることが好ましい。
〔コントラストの評価基準〕
◎:コントラストが1500以上
○:コントラストが1300以上1500未満
△:コントラストが1000以上1300未満
×:コントラストが1000未満
評価結果を表3及び表4にまとめて示す。
表3及び表4に示した結果から明らかなように、本発明の位相差フィルムは、比較例に対し、適切な水処理後接触角とリターデーション値を有する上に、偏光子密着性及びコントラストに優れていることが分かる。すなわち、本発明の手段によれば、鹸化処理を施さなくても偏光板と貼合することができ、コントラストが良好な位相差フィルムを提供することができる。また、それが備えられた偏光板を提供することができる。
実施例3
表面層ポリマーの有無、層数を表5のように変更し、位相差フィルムの幅を1900mmとした以外は実施例1と同様にして位相差フィルム3−01〜3−03を得た。フィルム幅の変更は、流延幅、スリット幅を調節して実施した。さらに、実施例1に記載と同様の方法で1900mm幅の偏光板3−01〜3−03を作製した。
(リワーク性)
偏光板をガラスセルに貼り付けた時に、泡が入る、軸がずれるなどの貼合ミスが発生する事がある。この時、高価なガラスセルを再利用するために偏光板を剥がす事があるが、剥がす過程で偏光板が裂ける等して偏光板の剥離残りが発生し、ガラスセルを再利用できない事がある。この、ガラスセルからの偏光板の剥がし易さをリワーク性と呼ぶ。
偏光板3−01〜3−03を、それぞれ950mm×950mmの大きさの正方形に断裁し、アクリル系接着剤を用いてガラス基板と貼り合わせる。ついで、貼り合わせた偏光板を角の部分から5Nの強さでガラスから剥がす。この作業を一種類のサンプルについて100枚の偏光板で行い、偏光板に裂け目が入って、完全に剥離されなかった偏光板の枚数を数えた。なお、リワーク性は、以下の基準でランク付けして、評価した。
○:完全に剥離されなかった偏光板の枚数が、0〜10枚
△:完全に剥離されなかった偏光板の枚数が、11〜15枚
×:完全に剥離されなかった偏光板の枚数が、16枚以上
なお、偏光板のリワーク性は、△のレベル以上であれば実用上問題ないが、○のレベル以上であることが好ましい。
評価結果を表5及び表6にまとめて示す。
表5及び表6に示した結果から明らかなように、本発明の位相差フィルムは、比較例に対し、リワーク性が優れていることが分かる。
また、実施例3において、位相差フィルムは、幅1900mm長さ3900mのロールフィルムを用い長尺の位相差フィルムロールにオンラインで粘着剤を施し、偏光子と貼り付けて偏光板の長尺ロールを製造した。この偏光板長尺ロールに予め所定のサイズに切断したガラスセルに粘着剤を用いて貼り付けた後、前記ガラスセル毎に切断することにより連続して生産することもできた。

Claims (5)

  1. 総アシル置換度が2.0〜2.5の範囲内であるセルロースエステル樹脂を含む位相差フィルムであって、当該位相差フィルムを、温度25℃におけるpHが6〜8の範囲内である水に30分間浸漬し、乾燥した後の水に対する当該位相差フィルムの接触角が20〜50°の範囲内であり、測定光波長590nmにおける当該位相差フィルムの面内リターデーション値(Ro)が30〜100nmの範囲内であり、かつ厚さ方向のリターデーション値(Rt)が100〜300nmの範囲内であることを特徴とする位相差フィルム。
  2. 複数の層を積層した積層構造を有し、かつ当該積層された層の少なくとも一方の表面層にアミド構造又はイミド構造を有するポリマーを含有することを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム。
  3. 前記表面層のガラス転移温度(Tgs)とその内側の層のガラス転移温度(Tgc)が下記関係式(1)を満たすことを特徴とする請求項2に記載の位相差フィルム。
    関係式(1):Tgc−30(℃)≦Tgs(℃)≦Tgc−10(℃)
  4. 延伸後のフィルム幅が1900mm以上であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の位相差フィルム。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の位相差フィルムが備えられたことを特徴とする偏光板。
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