JP2010202858A - インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも、顔料を含有するインクであって、前記顔料が、C.I.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレット19との固溶体であり、前記顔料の一次粒子径D(nm)と前記顔料の粒子径分布の50%累積値D50(nm)とが、D×0.95≦D50≦130の関係を満たし、かつ、前記顔料の粒子径分布の90%累積値D90(nm)と前記D50(nm)とが、1.5≦D90/D50≦2.2の関係を満たすことを特徴とするインク。
【選択図】なし
Description
本発明者らは、マゼンタインクにより記録した画像の彩度や光沢性を高めることを主たる目的として、インクジェット用のインクに使用する顔料として一般的なキナクリドン系の顔料や固溶体について、検討を行った。その結果、顔料としてC.I.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレット19との2種の顔料の固溶体を用いることで、優れた彩度や光沢性を有する画像を得ることが可能となるという知見を得た。しかし、一般的な顔料と比較して、固溶体はその分散状態を安定に保つことが難しい場合がある。
以下、本発明のインクを構成する成分などについて詳細に説明する。
本発明のインクに使用する顔料はC.I.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレット19との固溶体である。本発明における「固溶体」とは、2種以上の顔料分子の混晶体(混合状態で結晶化した状態)として存在する顔料のことを指し、2種以上の顔料を単純に混合したものとは異なる。固溶体の製造方法は、例えば、特開昭60−35055号公報や特開平2−38463号公報に開示されている。
本発明のインクは、顔料に加えて樹脂を含有してなるものであることが好ましく、前記した特定の顔料と樹脂とを含有してなる顔料分散体を用いて調製することができる。本発明においては、その技術課題から、特に、光沢紙に記録した画像の耐擦過性などを考慮し、樹脂により顔料が良好な状態に分散されてなる顔料分散体であることが好ましい。なお、本発明における「樹脂により分散された顔料」とは、顔料粒子の表面に樹脂が物理的に吸着してなる樹脂分散顔料は勿論のこと、その他にも以下のようなものが挙げられる。具体的には、高分子の構造を少なくとも有する有機基(樹脂)が顔料粒子の表面に化学的に結合してなる樹脂結合型自己分散顔料や、有機高分子などで顔料を被覆してなるマイクロカプセル顔料が挙げられる。本発明者らの検討の結果、樹脂分散顔料が最も好ましく、それ以外のものの中では、本発明の目的を達成するのに好ましい顔料分散体は、樹脂結合型自己分散顔料であることがわかった。これは、樹脂が顔料粒子の表面に化学的に結合しているため、樹脂がより安定に分散されるためであると考えられる。
本発明のインクは、顔料及び樹脂の他、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有してなるものであることが好ましい。水としては、イオン交換水などの脱イオン水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドにより上記で説明した本発明のインクを吐出して、記録媒体に画像を記録する方法である。また、本発明のインクジェット記録装置は、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備え、前記インク収容部に収容されたインクが上記で説明した本発明のインクであることを特徴とする。特に、本発明のインクは、インクジェット方式の中でもバブルジェット(登録商標)方式の記録ヘッドやインクジェット記録装置において、優れた効果をもたらす。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程やインクジェット記録装置の構成は公知のものとすればよい。なお、本発明における「記録」とは、光沢紙や普通紙などの記録媒体に対して本発明のインクを用いて記録する態様、ガラス、プラスチック、フィルムなどの非吸液性の基材に対して本発明のインクを用いてプリントを行う態様を含む。
以下、本発明のインクを調製する場合に用いることができる顔料分散体の製造方法について説明する。本発明においては、下記に述べるような顔料分散体の製造方法により得られた顔料分散体を使用してインクを調製することで、本発明で規定する粒子径の特性を有する特定の顔料を含有するインクを容易に得ることができる。
樹脂、中和剤、有機溶剤、及び水などを含有する乳化組成物と、顔料とを混合して、不揮発成分の含有量が30質量%以上50質量%以下で、25℃における粘度が50mPa・s以上1,000mPa・s以下である混合物を得る工程。
(第2工程)
前記第1工程で得られた混合物を用い、25℃における粘度が50mPa・s以上500mPa・s以下である予備分散体を得る工程。すなわち、第1工程で得られた混合物を、高圧ホモジナイザーなどのメディアレス分散機を用いて、混合物1kg当りに与えられる正味の積算動力が0.50kWh/kg以上10.00kWh/kg以下の範囲で処理を行って、上記予備分散体を得る。
(第3工程)
前記第2工程で得られた予備分散体を分散処理する工程。
(顔料分散体1)
顔料としては、下記のようにして得た一次粒子径Dが65nmの固溶体を顔料Aとして用いた。該顔料Aは、5部(固形分)のC.I.ピグメントレッド202のプレスケーキと、5部(固形分)のC.I.ピグメントバイオレット19のプレスケーキとを加えて摩砕し、常法により有機溶剤処理による顔料化を行って得た。また、樹脂(分散剤)には、スチレン50部、n−ブチルアクリレート39部、及びメタクリル酸30部を原料として常法により合成して得られた下記の樹脂Aを用いた。該樹脂Aは、上記原料で得た、酸価195mgKOH/g、重量平均分子量9,000のランダムポリマーを、酸価と当量の水酸化カリウム水溶液で中和して得られたものである。上記の顔料Aと樹脂Aとを用い、下記の第1〜3工程によって顔料分散体1を得た。なお、後述する他の顔料分散体の製造における第1〜3工程は、顔料分散体1の製造における各工程と基本的には同様のものを意味する。また、各顔料分散体の製造条件と、得られた各顔料分散体における顔料の特性を、表1−1〜1−4にまとめて示した。
顔料A:180部、樹脂A:90部、イオン交換水:330部を、ホモミクサー(プライミクス製)を用いて混合し、粘度が200mPa・sのスラリー(混合物)を得た。
前記第1工程で得られたスラリーを、循環式ホモジナイザー(製品名:クレアミックス(表中、CLMと略す);エム・テクニック製)を用いて1時間撹拌し、予備分散体を得た。スラリーに与えられた正味の積算動力は0.75kWh/kg、得られた予備分散体の粘度は100mPa・sであった。
前記第2工程で得られた予備分散体を、循環式のビーズミル(表中、BMと略す)を用いて、0.1mm径のジルコニアビーズの充填率を85%、周速8m/秒の条件で115分間分散して、顔料分散体1を得た。ビーズミルには、MiniCer(製品名;アシザワ・ファインテック製)を用いた。得られた顔料分散体1は、Dの値が65nm、D50の値が103nm、D90の値が186nm、D90/D50の値が1.8であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.2mm、分散時間を100分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体2を得た。得られた顔料分散体2は、Dの値が65nm、D50の値が130nm、D90の値が195nm、D90/D50の値が1.5であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.1mm、分散時間を110分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体3を得た。得られた顔料分散体3は、Dの値が65nm、D50の値が104nm、D90の値が218nm、D90/D50の値が2.1であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第2工程においてスラリーに与えられた正味の積算動力を1.50kWh/kgとし、第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.05mm、分散時間を130分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体4を得た。得られた顔料分散体4は、Dの値が65nm、D50の値が73nm、D90の値が111nm、D90/D50の値が1.5であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第2工程においてスラリーに与えられた正味の積算動力を0.50kWh/kgとし、第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.2mm、ビーズミルの方式を多パス方式とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体5を得た。得られた顔料分散体5は、Dの値が65nm、D50の値が130nm、D90の値が286nm、D90/D50の値が2.2であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
顔料分散体1の製造の際の第1工程において使用した顔料Aを、下記のようにして得た一次粒子径Dが30nmの顔料B(固溶体)に代えた。顔料Bは、5部(固形分)のC.I.ピグメントレッド202のプレスケーキと5部(固形分)のC.I.ピグメントバイオレット19のプレスケーキとを摩砕し、常法により有機溶剤処理による顔料化を行って得たものである。そして、顔料分散体1の製造の際の第3工程における分散時間を90分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体6を得た。得られた顔料分散体6は、Dの値が30nm、D50の値が100nm、D90の値が202nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した顔料Aを、下記のようにして得た一次粒子径Dが48nmの顔料C(固溶体)に代えた。顔料Cは、5部(固形分)のC.I.ピグメントレッド202のプレスケーキと5部(固形分)のC.I.ピグメントバイオレット19のプレスケーキとを摩砕し、常法により有機溶剤処理による顔料化を行って得たものである。そして、顔料分散体1の製造の際の第3工程における分散時間を115分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体7を得た。得られた顔料分散体7は、Dの値が48nm、D50の値が73nm、D90の値が148nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した顔料Aを、下記のようにして得た一次粒子径Dが50nmの顔料D(固溶体)に代えた。顔料Dは、5部(固形分)のC.I.ピグメントレッド202のプレスケーキと5部(固形分)のC.I.ピグメントバイオレット19のプレスケーキとを摩砕し、常法により有機溶剤処理による顔料化を行って得たものである。そして、顔料分散体1の製造の際の第3工程における分散時間を110分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体8を得た。得られた顔料分散体8は、Dの値が50nm、D50の値が74nm、D90の値が145nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した顔料Aを、下記のようにして得た一次粒子径Dが120nmの顔料E(固溶体)に代えた。顔料Eは、5部(固形分)のC.I.ピグメントレッド202のプレスケーキと5部(固形分)のC.I.ピグメントバイオレット19のプレスケーキとを摩砕し、常法により有機溶剤処理による顔料化を行って得たものである。そして、顔料分散体1の製造の際の第3工程における分散時間を175分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体9を得た。得られた顔料分散体9は、Dの値が120nm、D50の値が128nm、D90の値が243nm、D90/D50の値が1.9であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した顔料Aを、下記のようにして得た一次粒子径Dが123nmの顔料F(固溶体)に代えた。顔料Fは、5部(固形分)のC.I.ピグメントレッド202のプレスケーキと5部(固形分)のC.I.ピグメントバイオレット19のプレスケーキとを摩砕し、常法により有機溶剤処理による顔料化を行って得たものである。そして、顔料分散体1の製造の際の第3工程における分散時間を185分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体10を得た。得られた顔料分散体10は、Dの値が123nm、D50の値が128nm、D90の値が248nm、D90/D50の値が1.9であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した樹脂Aを樹脂Bに代え、第3工程において分散時間を100分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体11を得た。該樹脂Bには、スチレン40部、n−ブチルアクリレート53.9部、及びメタクリル酸6部を原料として常法により合成し、中和して得られたものを用いた。具体的には、上記で合成した、酸価40mgKOH/g、重量平均分子量8,800のランダムポリマーを酸価と当量の水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Bを用いた。得られた顔料分散体11は、Dの値が65nm、D50の値が103nm、D90の値が217nm、D90/D50の値が2.1であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した樹脂Aを樹脂Cに代え、第3工程において分散時間を100分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体12を得た。該樹脂Cには、スチレン40部、n−ブチルアクリレート7部、及びメタクリル酸53部を原料として常法により合成し、中和して得られたものを用いた。具体的には、上記で合成した、酸価350mgKOH/g、重量平均分子量9,100のランダムポリマーを酸価と当量の水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Cを用いた。得られた顔料分散体12は、Dの値が65nm、D50の値が102nm、D90の値が224nm、D90/D50の値が2.2であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した樹脂Aを樹脂Dに代え、第3工程において分散時間を100分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体13を得た。該樹脂Dには、スチレン40部、n−ブチルアクリレート52部、及びメタクリル酸8部を原料として常法により合成し、中和して得られたものを用いた。具体的には、上記で合成した、酸価50mgKOH/g、重量平均分子量8,800のランダムポリマーを酸価と当量の水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Dを用いた。得られた顔料分散体13は、Dの値が65nm、D50の値が101nm、D90の値が212nm、D90/D50の値が2.1であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した樹脂Aを樹脂Eに代え、第3工程において分散時間を90分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体14を得た。該樹脂Eには、スチレン40部、n−ブチルアクリレート14部、及びメタクリル酸46部を原料として常法により合成し、中和して得られたものを用いた。具体的には、上記で合成した、酸価300mgKOH/g、重量平均分子量9,100のランダムポリマーを酸価と当量の水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Eを用いた。得られた顔料分散体14は、Dの値が65nm、D50の値が103nm、D90の値が227nm、D90/D50の値が2.2であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した樹脂Aを樹脂Fに代え、第3工程において分散時間を90分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体15を得た。該樹脂Fには、スチレン40部、n−ブチルアクリレート15部、メタクリル酸25部、及びポリエチレングリコールモノメタクリレート20部を原料として常法により合成し、中和して得られたものを用いた。具体的には、上記で合成した、酸価160mgKOH/g、重量平均分子量8,600のランダムポリマーを酸価と当量の水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Fを用いた。得られた顔料分散体15は、Dの値が65nm、D50の値が105nm、D90の値が200nm、D90/D50の値が1.9であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した成分を、樹脂Aを315部、顔料Aを90部、及びイオン交換水を195部として、粘度が250mPa・sのスラリーを得た。そして、このスラリーを用いて第2工程で粘度が150mPa・sの予備分散体を得たこと以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体16を得た。得られた顔料分散体16は、Dの値が65nm、D50の値が101nm、D90の値が181nm、D90/D50の値が1.8であり、顔料の含有量が15.0%、樹脂の含有量が52.5%であった。
第1工程において使用した成分を、樹脂Aを18部、顔料Aを180部、及びイオン交換水を402部として、粘度が180mPa・sのスラリーを得たこと以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体17を得た。得られた顔料分散体17は、Dの値が65nm、D50の値が104nm、D90の値が208nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が3.0%であった。
第1工程において使用した成分を、樹脂Aを17.4部、顔料Aを180部、及びイオン交換水を402.6部として、粘度が180mPa・sのスラリーを得たこと以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体18を得た。得られた顔料分散体18は、Dの値が65nm、D50の値が106nm、D90の値が212nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が2.9%であった。
第1工程において使用した成分を、樹脂Aを270部、顔料Aを90部、及びイオン交換水を240部として、粘度が250mPa・sのスラリーを得た。そして、このスラリーを用いて第2工程で粘度が150mPa・sの予備分散体を得たこと以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体19を得た。得られた顔料分散体19は、Dの値が65nm、D50の値が103nm、D90の値が186nm、D90/D50の値が1.8であり、顔料の含有量が15.0%、樹脂の含有量が45.0%であった。
顔料に、下記の方法で表面に樹脂を連結した改質顔料を用いた。具体的には、常法により合成した、スチレン/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体からなる高分子鎖とが結合してなる末端にアミノフェニル基を有するポリマーを、予め4−アミノ安息香酸により改質した顔料Aにさらに連結して改質を行った。すなわち、先ず、4−アミノ安息香酸で改質した顔料Aを200部と、上記で得た結合ポリマーの5%水溶液1,000部とを反応器に投入し、55℃に保温し、回転数300rpmで20分間撹拌した。この後、25%の亜硝酸ナトリウム30部を15分間滴下し、さらにイオン交換水100部を加えた。この後、60℃に保温しながら、2時間反応させた。そしてさらに撹拌しながら、1.0規定の水酸化カリウム水溶液を添加し、pHを10〜11に調整し、その後、脱塩、精製、さらに、粗大粒子を除去して、2種類の原子団が化学的に結合してなる改質顔料Aを得た。得られた改質顔料Aを用い、樹脂を使用せず、表1−3に示した条件としたこと以外は顔料分散体1と同様にして顔料分散体20を得た。なお、表1−3中の、顔料分散体20についての配合量は、顔料100部に対する、顔料に結合した樹脂の割合のことを示す。得られた顔料分散体20は、Dの値が65nm、D50の値が103nm、D90の値が185nm、D90/D50の値は1.8であり、顔料の含有量が10.0%であった。
第1工程において使用した顔料Aを、下記のようにして得た一次粒子径Dが20nmの顔料G(固溶体)に代えた。顔料Gは、5部(固形分)のC.I.ピグメントレッド202のプレスケーキと5部(固形分)のC.I.ピグメントバイオレット19のプレスケーキとを摩砕し、常法により有機溶剤処理による顔料化を行って得たものである。そして、顔料分散体1の製造の際の第3工程における分散時間を200分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体21を得た。得られた顔料分散体21は、Dの値が20nm、D50の値が22nm、D90の値が33nm、D90/D50の値が1.5であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
顔料分散体1の製造の際の第1工程において使用した成分を、樹脂Aを30部、顔料Aを60部、及びイオン交換水を510部として、粘度が20mPa・sのスラリーとし、第2工程においてスラリーに与えられた正味の積算動力を0.30kWh/kgとした。そして、第2工程で、粘度が10mPa・sの予備分散体を得、さらに第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.2mm、ビーズミルの方式を多パス方式とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体22を得た。得られた顔料分散体22は、Dの値が65nm、D50の値が140nm、D90の値が236nm、D90/D50の値が1.7であり、顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が5.0%であった。
第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.1mmとした以外は顔料分散体22と同様にして、顔料分散体23を得た。得られた顔料分散体23は、Dの値が65nm、D50の値が87nm、D90の値が244nm、D90/D50の値が2.8であり、顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が5.0%であった。
第3工程において使用したジルコニアビーズ径を0.05mmとした以外は顔料分散体22と同様にして、顔料分散体24を得た。得られた顔料分散体24は、Dの値が65nm、D50の値が60nm、D90の値が122nm、D90/D50の値が2.0であり、顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が5.0%であった。
第3工程における分散時間を100分とした以外は顔料分散体5と同様にして、顔料分散体25を得た。得られた顔料分散体25は、Dの値が65nm、D50の値が130nm、D90の値が300nm、D90/D50の値が2.3であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した顔料Aを、顔料H(C.I.ピグメントレッド202:CINQUASIA MAGENTA RT−235−D;Ciba製)とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体26を得た。得られた顔料分散体26は、Dの値が72nm、D50の値が105nm、D90の値が190nm、D90/D50の値が1.8であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
第1工程において使用した顔料Aを、顔料I(C.I.ピグメントバイオレット19:CINQUASIA RED B NRT−796−D;Ciba製)とした。また、第3工程における分散時間を160分とした以外は顔料分散体1と同様にして、顔料分散体27を得た。得られた顔料分散体27は、Dの値が119nm、D50の値が125nm、D90の値が238nm、D90/D50の値が1.9であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
顔料Aを用い、特開2003−128955号公報の実施例に記載された顔料分散体11の調製方法にしたがって、顔料分散体28を得た。得られた顔料分散体28は、Dの値が20nm、D50の値が20nm、D90の値が30nm、D90/D50の値が1.5であり、顔料の含有量が6.0%であった。
第1工程において使用した顔料Aを、顔料J(C.I.ピグメントレッド202及びC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体:CROMOPHTAL JET MAGENTA 2BC;Ciba製)とした。また、第3工程を行わなかった以外は顔料分散体15と同様にして、顔料分散体29を得た。得られた顔料分散体29は、Dの値が110nm、D50の値が300nm、D90の値が1,000nm、D90/D50の値が3.3であり、顔料の含有量が30.0%、樹脂の含有量が15.0%であった。
上記で得られた各顔料分散体を用い、下記表2に示す各成分を混合して十分に撹拌した後、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過することにより、各インクを調製した。
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置BJ F900(キヤノン製)に前記インクカートリッジを搭載した。そして、前記インクジェット記録装置を用いて、光沢性を有する記録媒体(スーパーフォトペーパーSP−101:キヤノン製)に、記録デューティを10%刻みで10%から200%まで変化させたベタ部分を含む記録物を作製した。この際のプリンタドライバは、プロフォトペーパーモードを選択した。プロフォトペーパーモードの設定は以下の通りである。
・用紙の種類:プロフォトペーパー
・印刷品質:きれい
・色調整:自動
上記で得られた各インクをそれぞれショット瓶に入れて密栓し、温度60℃のオーブンで2週間保存した。この保存前後のインクの粘度をそれぞれE型粘度計(RE80L;東洋精機製)を用いて測定し、保存前のインクの粘度と比較した粘度の変化率を求め、保存安定性の評価を行った。保存安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表3に示す。本発明においては、下記の評価基準でB以上を許容できるレベル、Aが優れているレベル、AAが特に優れているレベルとし、Cを許容できないレベルとした。
AA:粘度の変化率が10%未満であった。
A:粘度の変化率が10%以上15%未満であった。
B:粘度の変化率が15%以上30%未満であった。
C:粘度の変化率が30%以上であった。
記録物を作製した1日後に、マゼンタの画像における彩度を、Spectrolino(Gretag Macbeth製)を用いて測定し、彩度の評価を行った。なお、彩度はc*={(a*)2+(b*)2}1/2の式により求めることができる。彩度の評価基準は下記の通りである。評価結果を表3に示す。本発明においては、下記の評価基準でB以上を許容できるレベル、Aが優れているレベル、AAが特に優れているレベルとし、Cを許容できないレベルとした。
AA:c*が83以上であった。
A:c*が82以上83未満であった。
B:c*が81以上82未満であった。
C:c*が81未満であった。
上記で得られた記録物について、microhazemater(BYK Gardner製)を用いてGLOSS値(20°光沢性)を測定し、各記録デューティの画像における平均値を用いて光沢性の評価を行った。光沢性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表3に示す。本発明においては、下記の評価基準でB以上を許容できるレベル、Aが優れているレベル、AAが特に優れているレベルとし、Cを許容できないレベルとした。
AA:GLOSS値(20°光沢性)が70以上であった。
A:GLOSS値(20°光沢性)が60以上70未満であった。
B:GLOSS値(20°光沢性)が50以上60未満であった。
C:GLOSS値(20°光沢性)が50未満であった。
Claims (9)
- 少なくとも、顔料を含有するインクであって、
前記顔料が、C.I.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレット19との固溶体であり、
前記顔料の一次粒子径D(nm)と前記顔料の粒子径分布の50%累積値D50(nm)とが、D×0.95≦D50≦130の関係を満たし、かつ、前記顔料の粒子径分布の90%累積値D90(nm)と前記D50(nm)とが、1.5≦D90/D50≦2.2の関係を満たすことを特徴とするインク。 - 前記D(nm)が、50nm以上120nm以下である請求項1に記載のインク。
- 前記インクがさらに樹脂を含有し、前記樹脂の酸価が、50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である請求項1又は2に記載のインク。
- 前記樹脂が、ノニオン性ユニットを有する請求項3に記載のインク。
- 前記インク中における、インク全質量を基準とした前記顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準とした樹脂の含有量(質量%)に対して、0.30倍以上10.0倍以下である請求項3又は4に記載のインク。
- 前記インクがさらに1,2−アルカンジオール及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインク。
- インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
- インクを収容してなるインク収容部を備えたインクカートリッジであって、前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
- インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置であって、前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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