JP5116358B2 - インクジェット記録用水系インク - Google Patents
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Description
特に印字物の耐候性や耐水性の観点から、着色剤に顔料系インクを用いるものが主流となってきている。
特許文献2には、ノズルプレートへのインク付着防止性に優れたインクとして、(1)蒸気圧が水よりも小さい水溶性有機溶剤、(2)疎水性着色剤、(3)水溶性有機溶剤に可溶な疎水性樹脂を含む水性インクであって、該樹脂が酸性樹脂(フェノール樹脂、スチレン−アクリル酸系樹脂等)を含み、pHが7以上である水性インクが開示されている。
特許文献3には、少なくとも1色のインクが2種類以上の色材濃度の異なるインクからなり、色材濃度の低いインクにイオン性基を有する有機高分子化合物によって被覆されてなるマイクロカプセル顔料を用い、色材濃度の高いインクに染料を用いるインクジェット記録用インクセットが開示されている。
しかしながら、従来のインクジェット記録用インクは、分散安定性、印字濃度において満足しうるものではない。
すなわち、本発明は次の(1)〜(3)を提供する。
(1)着色剤を含有するポリマー粒子であって、該ポリマーが、(A)フェノール樹脂及び(B)ビニル系ポリマーを含む混合物である、インクジェット記録用ポリマー粒子。
(2)前記(1)のポリマー粒子を含有するインクジェット記録用水分散体。
(3)前記(2)の水分散体を含有する、インクジェット記録用水系インク。
以下、本発明に用いる各成分について説明する。なお、着色剤を含有するポリマー粒子を、単に「着色剤含有ポリマー粒子」ということがある、
着色剤としては特に制限はなく、顔料、疎水性染料、水溶性染料(酸性染料、反応染料、直接染料等)等を用いることができるが、耐水性、分散安定性及び耐擦過性の観点から、顔料及び疎水性染料が好ましい。中でも、近年要求が強い高耐候性を発現させるためには、顔料を用いることが好ましい。
顔料及び疎水性染料は、水系インクに使用する場合には、界面活性剤、ポリマーを用いて、インク中で安定な微粒子にする必要がある。特に、耐滲み性、耐水性等の観点から、ポリマーの粒子中に顔料及び/又は疎水性染料を含有させることが好ましい。
顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水系インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
有機顔料の好適例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられ、またそれら固溶体も挙げられる。例えば、マゼンタ顔料の固溶体としては、色調の観点から、C.I.ピグメント・バイオレットとC.I.ピグメント・レッドの固溶体が好ましく、更にC.I.ピグメント・バイオレット19とC.I.ピグメント・レッド202の固溶体が好ましい。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
疎水性染料としては、油溶性染料、分散染料等が挙げられ、これらの中では油溶性染料が好ましい。油溶性染料としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック、C.I.ソルベント・イエロー、C.I.ソルベント・レッド、C.I.ソルベント・バイオレット、C.I.ソルベント・ブルー、C.I.ソルベント・グリーン、及びC.I.ソルベント・オレンジからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられ、オリエント化学株式会社、BASF社等から市販されている。
上記の着色剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
(A)フェノール樹脂は(B)ビニル系ポリマーと相まって、水系インクが記録媒体の厚み方向に浸透することを抑制し、着色剤を記録媒体の表層に留める結果、高印字濃度が達成されると考えられる。
フェノール樹脂は、フェノール類(フェノール、置換フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン)とアルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール)から得られる樹脂及びそれらの変性樹脂の総称である。
置換フェノールとしては、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等の好ましくは炭素数1〜12のアルキルフェノールが挙げられる。
フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒドとの組み合わせにより、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−フルフラール樹脂等が挙げられる。
変性フェノール樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂(特開平10−324727号公報参照)、アルコキシ基含有シラン変性フェノール樹脂(特開2001−2745号公報、特開2001−294639号公報参照)等が挙げられる。
これらの中では、印字濃度の観点から、アルキルフェノール樹脂及び/又はロジン変性フェノール樹脂がより好ましい。
ロジン変性フェノール樹脂は、ロジン類、フェノール類、ポリオール類等を用いた公知の方法により得ることができる。
ロジン変性フェノール樹脂の製造に使用しうるロジン類としては、例えばガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、重合ロジン、これらの変性物、更にはこれらと金属との塩等が挙げられる。
ロジン変性フェノール樹脂の製造に使用しうるフェノール類としては、ビスフェノール、アルキルフェノールから得られるノボラック型、レゾール型、又はノボラック化した後レゾール化することにより好ましくは3〜20核体、より好ましくは4〜10核体数を有するフェノール樹脂が挙げられる。
ロジン変性フェノール樹脂の製造に使用しうるポリオール類としては、例えば、ペンタエリスリトール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
(A)フェノール樹脂は、印字濃度の観点から、下記の物性(i)〜(ii)を有するものがより好ましい。
(i)JISK−5902−1969による軟化点:好ましくは300〜600K、より好ましくは340〜500K、特に好ましくは340〜430K
(ii)重量平均分子量(Mw):好ましくは1000〜150,000、より好ましくは1,000〜50,000、特に好ましくは1,500〜15,000
なお、フェノール樹脂の重量平均分子量は、Shodex社製のゲルクロマトグラフ装置「System−21」(充填剤:スチレンジビニルベンゼン共重合体、カラム流量1.0ml/min、温度:40℃)を用いて、測定することができる。
本発明には、その分散安定性の観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られる(B)ビニル系ポリマーを用いる。
本発明に用いられる(B)ビニル系ポリマーとしては、フェノール樹脂との親和性の観点から、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が好ましくは10g以下、より好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である水不溶性ビニル系ポリマーが好ましい。溶解量は、ポリマーが塩生成基の種類に応じて、ポリマーの塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
(B)ビニル系ポリマーとしては、(a)塩生成基含有モノマー(以下「(a)成分」ということがある)と、(b)マクロマー(以下「(b)成分」ということがある)及び/又は(c)疎水性モノマー(以下「(c)成分」ということがある)とを含むモノマー混合物(以下「モノマー混合物」ということがある)を共重合させてなるポリマーが好ましい。このポリマーは、(a)成分由来の構成単位と、(b)成分由来の構成単位及び/又は(c)成分由来の構成単位を有する。より好適なビニル系ポリマーは、(a)成分由来の構成単位、又は(a)成分由来の構成単位及び(c)成分由来の構成単位を主鎖に有し、(b)成分由来の構成単位を側鎖に有するグラフトポリマーである。
塩生成基含有モノマーとしては、特開平9−286939号公報段落〔0022〕等に記載されているカチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N',N'−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
アニオン性モノマーの代表例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
(b)マクロマーの中では、着色剤含有ポリマー粒子の分散安定性等の観点から、片末端に重合性官能基を有する、スチレン系マクロマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーが好ましい。
スチレン系マクロマーとしては、スチレン系モノマー単独重合体、又はスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等が挙げられる。
また、それらのマクロマーの片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、共重合される他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が好ましい。
スチレン系マクロマー中におけるスチレン系モノマー、又は芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマー中における芳香族基含有(メタ)アクリレートの含有量は、顔料との親和性を高める観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
CH2=C(CH3)-COOC3H6-〔Si(CH3)2O〕t-Si(CH3)3 (1)
(式中、tは8〜40の数を示す。)。
(b)成分として商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート又はそれらの両方を示す。
(c)成分の中では、印字濃度向上の観点から、スチレン系モノマー(c−1成分)が好ましく、スチレン系モノマー(c−1成分)としては特にスチレン及び2−メチルスチレンが好ましい。(c)成分中の(c−1)成分の含有量は、印字濃度向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレート(c−2)成分としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。(c)成分中の(c−2)成分の含有量は、印字濃度向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
また、(c−1)成分と(c−2)成分を併用することも好ましい。
(d)成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ。)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレートが好ましい。
CH2=C(R1)COO(R2O)qR3 (2)
(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、R2は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R3は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基、qは、平均付加モル数を意味し、1〜60の数、好ましくは1〜30の数を示す。)
(e)成分は、吐出性を向上するという優れた効果を発現する。
式(2)において、ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子が挙げられる。
R1の好適例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基等が挙げられる。
R2O基の好適例としては、オキシエチレン基、オキシトリメチレン墓、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシテトラメチレン基、オキシヘプタメチレン基、オキシヘキサメチレン基及びこれらの2種以上の組合せからなる炭素数2〜7のオキシアルカンジイル基(オキシアルキレン基)が挙げられる。
R3の好適例としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族アルキル基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキル基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキル基が挙げられる。
上記(a)〜(e)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(a)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。
(b)成分の含有量は、特に着色剤との相互作用を高める観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
(c)成分の含有量は、印字濃度向上の観点から、好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜60重量%である。
(d)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜20重量%である。
(e)成分の含有量は、吐出性向上の観点から、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
モノマー混合物中における〔(a)成分+(d)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。〔(a)成分+(e)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性及び吐出性の観点から、好ましくは6〜75重量%、より好ましくは13〜50重量%である。また、〔(a)成分+(d)成分+(e)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性及び吐出性の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは7〜50重量%である。
また、〔(a)成分/[(b)成分+(c)成分]〕の重量比は、得られる分散体の分散安定性及び印字濃度の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.67、特に好ましくは0.03〜0.50である。
(B)ビニル系ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加してもよい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
本発明で用いられる(B)ビニル系ポリマーは、(a)塩生成基含有モノマー由来の塩生成基を有している場合は中和剤により中和して用いる。中和剤としては、ポリマー中の塩生成基の種類に応じて、酸又は塩基を使用することができる。例えば、塩酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の塩基が挙げられる。
ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合、下記式(3)、(4)によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価 (KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100 (3)
塩生成基がカチオン性基である場合は、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーのアミン価 (HCLmg/g)×ポリマーの重量(g)/(36.5×1000)]}×100 (4)
酸価やアミン価は、ポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。または、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して、滴定する方法でも求めることができる。
着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体の製造方法は特に限定されないが、下記工程I及びIIを有する方法によれば効率的に製造することができる。
工程I:(A)フェノール樹脂、(B)ビニル系ポリマー、着色剤、有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散して、着色剤を含有するポリマー粒子の分散体を得る工程
工程II:工程Iで得られた分散体から有機溶媒を除去する工程
(B)ビニル系ポリマーが塩生成基を有する場合、中和剤を用いることが好ましいが、中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記水不溶性ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。中和剤としては、前記のものが挙げられる。また、(B)ビニル系ポリマーを予め中和しておいてもよい。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒及びジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。好ましくは、水に対する溶解度が20℃において、50重量%以下でかつ10重量%以上のものであり、特に、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが好ましい。フェノール樹脂を溶解する観点及び顔料の乳化分散を促進する観点から、用いるフェノール樹脂20g/L(25℃)以上溶解する有機溶媒であることが好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄鋼株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔株式会社荏原製作所、商品名〕、TKホモミクサー、TKパイプラインミクサー、TKホモジェッター、TKホモミックラインフロー、フィルミックス〔以上、特殊機化工業株式会社、商品名〕、クリアミックス〔エム・テクニック株式会社、商品名〕、ケイディーミル〔キネティック・ディスパージョン社、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics 社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕、アルティマイザー〔スギノマシン株式会社、商品名〕、ジーナスPY〔白水化学株式会社、商品名〕、DeBEE2000 〔日本ビーイーイー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの中では、顔料を用いる場合に、顔料の小粒子径化の観点から、ロールミル、ビーズミル、ニーダー及び高圧ホモジナイザーが好ましい。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
得られた着色剤含有ポリマー粒子の水分散体は、着色剤を含有するポリマーの固体分が水を主媒体とする中に分散しているものである。ここで、ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも着色剤と(A)フェノール樹脂及び(B)ビニル系ポリマーを含む混合物により粒子が形成されていればよい。例えば、(A)フェノール樹脂及び(B)ビニル系ポリマーを含む混合物に着色剤が内包された粒子形態、(A)フェノール樹脂及び(B)ビニル系ポリマーを含む混合物中に着色剤が均一に分散された粒子形態、(A)フェノール樹脂及び(B)ビニル系ポリマーを含む混合物のポリマー粒子表面に着色剤が露出された粒子形態等が含まれる。ここで、(A)フェノール樹脂及び(B)ビニル系ポリマーを含む混合物とは、均一に混合している必要はなく、両者が一体化してさえいれば、片寄った分布を有していてもよく、例えば(A)フェノール樹脂が、着色剤含有ポリマー粒子の表面上により多く存在していてもよい。本発明を損なわない限り、他のポリマーが混合物中に含まれていてもよい。
着色剤を含有するポリマー粒子のポリマー中、〔(A)フェノール樹脂/(B)ビニル系ポリマー〕の重量比は、印字濃度及び分散安定性の観点から、好ましくは0.02〜10、より好ましくは0.05〜3、より好ましくは0.1〜1、より好ましくは0.1〜0.8、更に好ましくは0.1〜0.5、特に好ましくは0.1〜0.4である。
着色剤と(A)フェノール樹脂と(B)ビニル系ポリマーとの合計重量比[〔(A)フェノール樹脂+(B)ビニル系ポリマー〕/着色剤]は、ポリマー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは5/95〜90/10、より好ましくは10/90〜75/25、特に好ましくは15/85〜50/50である。
着色剤と(A)フェノール樹脂との重量比〔(A)フェノール樹脂/着色剤〕は、好ましくは1/40〜1/1、より好ましくは1/30〜1/3であり、着色剤と(B)ビニル系ポリマーとの重量比〔(B)ビニル系ポリマー/着色剤〕は、好ましくは1/20〜2/1、より好ましくは1/10〜1/1である。
インクジェット記録用水分散体中における、各成分の含有量は、印字濃度及び分散安定性の観点から次のとおりである。
着色剤の含有量は、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
(A)フェノール樹脂の含有量(純分換算)は、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.1〜15重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。
(B)ビニル系ポリマーの含有量(固形分量)は、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。
(インクジェット記録用水系インク)
本発明の水系インクは、本発明の水分散体を含有し、必要により、湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤、キレート剤等の添加剤を添加することができる。これらの添加剤の混合方法に特に制限はない。
インクジェット記録用水系インク中における、各成分の含有量は、印字濃度及び分散安定性の低減の観点から次のとおりである。
着色剤の含有量は、好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは1〜15重量%である。(A)フェノール樹脂の含有量(純分換算)は、好ましくは0.05〜15重量%、更に好ましくは0.08〜8重量%であり、特に好ましくは0.1〜5重量%であり、(B)ビニル系ポリマーの含有量(固形分量)は、好ましくは0.3〜20重量%、更に好ましくは0.5〜10重量%であり、特に好ましくは0.8〜8重量%である。
該水分散体及び水系インクにおける着色剤を含有するポリマー粒子の平均粒径は、分散安定性の観点から、好ましくは40〜400nm、より好ましくは50〜300nm、特に好ましくは60〜200nmである。平均粒径の測定は、実施例記載の方法で行う。
水分散体の固形分20重量%における粘度(20℃)は、水系インクとした時に良好な粘度とするために、好ましくは2〜6mPa・s、より好ましくは2〜5mPa・sである。また、水系インクの粘度(20℃)は、良好な吐出性を維持するために、好ましくは2〜12mPa・s、より好ましくは2.5〜10mPa・sである。なお、水分散体及び水系インクの粘度の測定は、実施例記載の方法で行う。
本発明の水分散体及び水系インクの表面張力(20℃)は、水分散体としては、好ましくは30〜70mN/m、より好ましくは35〜68mN/mであり、水系インクとしては、好ましくは25〜50mN/m、より好ましくは25〜45mN/mである。また、水系インクのpHは好ましくは4〜10である。
(1)ビニル系ポリマーの重量平均分子量
東ソー株式会社製のゲルクロマトグラフ装置「HLC−8120GPC」(使用カラム:東ソー株式会社製、TSK-GEL、α-M×2本、カラム流量:1mL/min、温度:20℃)を用いて、溶媒として、60mmol/Lのリン酸と50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するN,N−ジメチルホルムアミドを用いて、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(2)粘度の測定
東機産業株式会社製のE型粘度計「RE80」を用いて、標準ローター(1°34′×R24)を使用し、測定温度20℃、測定時間1分、回転数100rpmの条件で測定した。
(3)着色剤含有ポリマー粒子の平均粒径の測定
大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント解析)を用いて測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力する。測定濃度は、通常5×10-3重量%程度で行った。
反応容器内に、MEK20部及び重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.03部、表1に示すモノマー混合物200部のうち10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、表1に示すモノマー混合物の残りの90%を仕込み、前記重合連鎖移動剤0.27部、MEK60部及びラジカル重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))1.2部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記ラジカル重合開始剤0.3部をMEK5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、ビニル系ポリマー溶液を得た。このポリマーの重量平均分子量は20万であった。
・スチレンマクロマー:東亜合成株式会社製、商品名:AS−6S、数平均分子量:6000、重合性官能基:メタクロイルオキシ基
・ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシド平均付加モル数=9):新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルM−90G
・ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(プロピレンオキシド平均付加モル数=9):日本油脂株式会社製、商品名:ブレンマーPP−500
フェノール樹脂「タマノル200N」〔アルキルフェノール樹脂、Mw:2300、酸価50〜110、軟化点398〜418K、荒川化学工業株式会社製〕10.6部(50%MEK溶液、純分換算値5.3部)と製造例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー25部をMEK(メチルエチルケトン)50部と混合し、その中にキナクリドン顔料(C.I.ピグメント・バイオレット19、クラリアントジャパン株式会社製、商品名:Hostaperm Red E5B02)100部を加えよく混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液と25%アンモニア水溶液を各々4.6部と1.8部(中和度60%)を加え、ロールミルで20℃で30分間混連した。得られた混連物をイオン交換水にて20%水溶液になるように希釈し、それをマイクロフルイダイザー(Microfluidics 社製、商品名)で200MPaの圧力で10パス分散処理した。
得られた分散液に、イオン交換水250部を加え、攪拌した後、減圧下で60℃でMEKを完全に除去し、更に一部の水を除去し、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去することにより、固形分濃度が20%の顔料含有ビニル系ポリマー粒子の水分散体を得た。
比較例1
実施例1のアルキルフェノール樹脂を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、水系インクを得た。
実施例1で用いたフェノール樹脂「タマノル200N」に代えて、フェノール樹脂「KG―2212」〔ロジン変性フェノール樹脂、Mw:12万、酸価22以下、軟化点445〜455K、荒川化学工業株式会社製〕10.6部(50%MEK溶液、純分換算値5.3部)を使用した以外は実施例1と同様にして、水系インクを得た。
実施例3
実施例1のタマノル200Nに代えて、「タマノル379」〔ロジン変性フェノール樹脂、Mw:1万1千、酸価26以下、軟化点433〜443K、荒川化学工業株式会社製〕10.6部(50%MEK溶液、純分換算値5.3部)を使用した以外は実施例1と同様にして、水系インクを得た。
実施例1のキナクリドン顔料に代えて、キナクリドン固溶体顔料(C.I.ピグメント・バイオレット19とC.I.ピグメント・レッド202の固溶体、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:CROMOPHTAL Jet Magenta 2BC)を使用した以外は実施例1と同様にして、水系インクを得た。
実施例5
実施例1のキナクリドン顔料に代えて、シアン顔料(C.I.ピグメント・ブルー15:3、大日精化工業株式会社製)を使用した以外は実施例1と同様にして、水系インクを得た。
実施例6
実施例1のキナクリドン顔料に代えて、イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74、山陽色素株式会社製)を使用した以外は実施例1と同様にして、水系インクを得た。
実施例7
実施例1のフェノール樹脂10.6部を21.2部に変更した以外は実施例1と同様にして、水系インクを得た。
比較例1で得られた顔料含有ビニル系ポリマー粒子の水分散体40部に、トリエチレングリコールモノブチルエーテル7部、サーフィノール465(日信化学工業株式会社製)1部、フェノール樹脂「タマノル200N」0.68部(50%MEK溶液、純分換算値0.34部)、プロキセルXL2(アビシア株式会社製)0.3部及びイオン交換水36部を混合し、20℃の粘度が4mPa・sとなるようにグリセリンと水を添加して合計が100部になるように調整を行った。得られた混合液を1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより、水系インクを得た。
比較例3
実施例1のタマノル200Nに代えて、アクリル樹脂「JONCRYL 611」〔JONCRYL RESINタイプ、Mw:8100、酸価53、軟化点385K、BASFジャパン株式会社製〕10.6部(50%MEK溶液、純分換算値5.3部)を用いた以外は実施例1と同様にして、水系インクを得た。
(分散安定性の評価)
密閉された実施例記載のインクを70℃で一週間放置し、粒径及び粘度の変化率を測定した。下記基準で評価した。
◎:粒径及び粘度の変化率が±10%以内
○:粒径及び粘度の変化率が±20%以内
×:粒径及び粘度の変化率が±20%を超える
(印字濃度の評価)
セイコーエプソン株式会社製プリンター(型番:EM−930C)を用いて、市販の上質普通紙(ゼロックス株式会社製、商品名: XEROX 4024)にベタ印字〔印字条件=用紙種類:普通紙、モード設定:ファイン〕し、25℃で24時間放置後、印字濃度をマクベス濃度計(グレタグマクベス社製、品番:スペクトロアイ)で印字物(5.1cm×8.0cm)の中心及び四隅の計5点を測定し、その平均値を求めた。
なお、モード設定がファインであり、インクの重ね打ちをしないことから、印字濃度はマゼンタ顔料の場合が0.92以上、シアン顔料及びイエロー顔料の場合が0.95以上が好ましい。
印字濃度の0.01の差は、目視で確認することができる十分な差である。
Claims (7)
- 着色剤を含有するポリマー粒子であって、該ポリマーが、(A)フェノール樹脂及び(B)ビニル系ポリマーを含む混合物であり、〔(A)フェノール樹脂/(B)ビニル系ポリマー〕の重量比が0.02〜10である、インクジェット記録用ポリマー粒子。
- (A)フェノール樹脂が、アルキルフェノール樹脂及び/又はロジン変性フェノール樹脂である、請求項1に記載のインクジェット記録用ポリマー粒子。
- (A)フェノール樹脂の重量平均分子量が1000〜150,000である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用ポリマー粒子。
- (B)ビニル系ポリマーが、塩生成基含有モノマー(a)由来の構成単位及び疎水性モノマー(c)由来の構成単位を主鎖に有し、マクロマー(b)由来の構成単位を側鎖に有するグラフトポリマーである、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用ポリマー粒子。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー粒子を含有する、インクジェット記録用水分散体。
- 請求項5に記載の水分散体を含有する、インクジェット記録用水系インク。
- 下記工程I及び工程IIを有する、請求項5記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
工程I:(A)フェノール樹脂、(B)ビニル系ポリマー、着色剤、有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散して、着色剤を含有するポリマー粒子の分散体を得る工程
工程II:工程Iで得られた分散体から有機溶媒を除去する工程
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