JP3790537B2 - インクジェット記録用水系インク - Google Patents

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Description

本発明はインクジェット記録用水系インクに関する。詳しくは、普通紙に印字した際の高い吐出安定性、印字濃度を満足しつつ、専用紙に印字した際に優れた光沢性を有する、インクジェット記録用水系インク、及びそのインクに用いられるインクジェット記録用水分散体に関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置が低騒音で操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、広く用いられている。
インクジェットプリンターに使用されるインクは、耐水性や耐光性を向上させるため、近年、着色剤として顔料が主に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
インクの耐水性、耐マーカー性及び耐擦過性を向上させるために、末端に2以上の水酸基を有する水不溶性ポリマーを含有してなる水系インク(例えば、特許文献2)、(A)塩生成基含有モノマーと、(B)マクロマーと、(C)塩生成基含有モノマー及びマクロマーと共重合可能なモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させてなり、末端にイオン性基を有する水不溶性ポリマー及び顔料を含有してなる水系インク(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
しかしながら、これらの水系インクは、更なる性能向上が要請されている。
WO00/39226パンフレット 特開2004−26988公報 特開2004−210951公報
本発明は、普通紙に印字した際の高い吐出安定性、印字濃度を満足しつつ、専用紙に印字した際に優れた光沢性を有する、インクジェット記録用水分散体及び水系インクを提供することを課題とする。
本発明者らは、着色剤を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体であって、該水不溶性ビニルポリマーの構成単位とポリマー主鎖の末端部分を特定の構造にすれば、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、着色剤を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体であって、該水不溶性ビニルポリマーが、下記式(1)で表される構成単位と、塩生成基含有モノマー(a)に由来する構成単位と、スチレン系マクロマー(b)及び/又は疎水性モノマー(c)に由来する構成単位とを有するポリマーであり、該式(1)で表される構成単位の含有量が20〜80重量%であり、該水不溶性ビニルポリマーの主鎖の末端部分が、2以上の水酸基及び/又は1以上のカルボキシル基を有するインクジェット記録用水分散体、及び該水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクを提供する。
Figure 0003790537
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は、置換基を有していてもよい、炭素数7〜22のアリールアルキル基又は炭素数6〜22のアリール基を示す。)
本発明のインクジェット記録用水分散体を含有する水系インクは、普通紙に印字した際の高い吐出安定性、印字濃度を満足しつつ、専用紙に印字した際に優れた光沢性を有する、優れた水系インクである。
本発明のインクジェット記録用水分散体は、着色剤を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体であって、該水不溶性ビニルポリマーが特定の構成単位を有し、かつポリマー主鎖の末端部分が特定の官能基を有することが特徴である。以下、本発明の各成分について説明する。
(水不溶性ビニルポリマー)
本発明に用いられる水不溶性ビニルポリマーは、下記式(1)で表される構成単位と、塩生成基含有モノマー(a)に由来する構成単位と、スチレン系マクロマー(b)及び/又は疎水性モノマー(c)に由来する構成単位とを有する。
Figure 0003790537
式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は、置換基を有していてもよい、炭素数7〜22、好ましくは炭素数7〜18、更に好ましくは炭素数7〜12のアリールアルキル基、又は、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12のアリール基を示す。置換基には、ヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。
2の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基(フェニルエチル基)、フェノキシエチル基、ジフェニルメチル基、トリチル基等が挙げられる。
置換基の具体例は、好ましくは炭素数1〜9の、アルキル基、アルコキシ基若しくはアシロキシ基、水酸基、エーテル基、エステル基又はニトロ基等が挙げられる。
式(1)で表される構成単位としては、高光沢性を発現させる観点から、特にベンジル(メタ)アクリレートに由来する構成単位が好ましい。
式(1)で表される構成単位は、下記式(1−1)で表されるモノマーを重合することによって得ることが好ましい。
CH2=CR1COOR2 (1−1)
(式中、R1、R2は、前記と同じである。)
具体的には、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、フタルイミドメチル(メタ)アクリレート、p−ニトロフェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸等を重合することで、式(1)で表される構成単位を有するポリマーを合成することができる。これらの中では、特にベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
なお、本明細書にいう「(メタ)アクリ」とは、「アクリ」、「メタクリ」又はそれらの混合物を意味する。
本発明に用いられる水不溶性ビニルポリマーは、さらに下記式(2)で表される構成単位を有することが好ましい。
Figure 0003790537
式(2)中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4Oはオキシプロピレン基を示す。R4Oには、−CH2CH(CH3)O−以外に、−CH(CH3)CH2O−が含まれていてもよい。R5Oは炭素数2又は4のオキシアルキレン基を示し、オキシエチレン基、オキシテトラメチレン基を示す。
6は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜9のアルキル基を有してもよいフェニル基を示す。R6は、高い印字濃度及び良好な保存安定性の観点から、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。また、炭素数1〜8のアルキル基を有していてもよい、フェニル基が好ましい。炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
4O及びR5Oはランダム付加又はブロック付加している。R4O及びR5Oが、ブロック付加している場合、-COO-(R4O)x-(R5O)y-R6、又は-COO-(R5O)y -(R4O)x -R6の何れであってもよい。x、yは、平均付加モル数を表し、xは1〜30の数であり、2〜30が好ましく、3〜20が更に好ましく、3〜15が特に好ましい。yは0〜30の数であり、0〜20が好ましく、0〜15が更に好ましい。y個のR5Oは同一でも異なっていてもよい。
式(2)で表される構成単位は、下記式(2−1)で表されるモノマーを重合することによって得ることが好ましい。
CH2=CR3COO−(R4O)x−(R5O)y−R6 (2−1)
(式中、R3、R4O、R5O、R6、x、及びyは、前記と同じである。)
式(2)の中でも、下記式(3)又は(4)で表される構成単位が、高い印字濃度を与えるために好ましく、本発明に用いられる水不溶性ビニルポリマーは、下記式(3)と下記式(4)で表される構成単位を両方有していてもよい。
Figure 0003790537
(式中、R3、x、R6は、前記と同じである。)
式(3)は、式(2)において、yが0の場合である。
式(3)で表される構成単位は、下記式(3−1)で表されるモノマーを重合することによって得ることが好ましい。
CH2=CR3COO−(CH2CH(CH3)O)x−R6 (3−1)
(式中、R3、R6、及びxは、前記と同じである。)
具体的には、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、特にポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
一方、式(4)は、上記式(2)において、yが1以上の場合である。
Figure 0003790537
(式(4)中、R3、R6、xは、前記と同じである。(CH2CH(CH3)O)と((CH2PO)は、ランダム付加又はブロック付加しており、ブロック付加の場合、-COO-(CH2CH(CH3)O)X-((CH2PO)Z-R6 又は、-COO-((CH2PO)Z-(CH2CH(CH3)O)X-R6の何れであってもよい。pは2又は4の数であり、zは、平均付加モル数を表し、1〜30の数であり、2〜20が好ましく、3〜15が更に好ましい。)
式(4)で表される構成単位は、下記式(4−1)又は(4−2)で表されるモノマーを重合することによって得ることが好ましい。
CH2=CR3COO−(CH2CH(CH3)O)x−(CH2CH2O)z−R6 (4−1)
CH2=CR3COO−(CH2CH(CH3)O)x−((CH24O)z−R6 (4−2)
(式中、R3、R6、x及びzは、前記と同じである。(CH2CH(CH3)O)と(CH2CH2O)、及び(CH2CH(CH3)O)と((CH24O)は、ランダム付加又はブロック付加しており、ブロック付加の場合、CH2=CR3COO−(CH2CH(CH3)O)x−(CH2CH2O)z−R6 又はCH2=CR3COO−(CH2CH2O)z−(CH2CH(CH3)O)x−R6 の何れであってもよく、CH2=CR3COO−(CH2CH(CH3)O)x−((CH24O)z−R6 又はCH2=CR3COO−((CH24O)z−(CH2CH(CH3)O)x−R6 の何れであってもよい。)
具体的には、エチレングリコール・プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート[エチレングリコールとプロピレングリコールがランダム結合している]、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールがブロック結合している。(メタ)アクリル基側からポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのブロック結合とその逆も含む。以下同じ。]、オクトキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。これらの中では、特にポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコールモノメタクリレートが好ましい。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明に用いられる水不溶性ビニルポリマーにおける前記式(1)及び前記式(2)で表される構成単位の重量比[式(1)で表される構成単位/式(2)で表される構成単位]は、印字濃度と光沢性を両立させ、耐擦過性を与える観点から、1/2〜10/1が好ましく、1/2〜8/1がより好ましく、1/2〜5/1が更に好ましく、1/1〜5/1が最も好ましい。
本発明に用いられる水不溶性ビニルポリマーは、その分散性を向上させる観点から、塩生成基含有モノマー(a)由来の構成単位を含む。塩生成基含有モノマー(a)に由来する構成単位は、塩生成基含有モノマー(a)を重合することにより得ることができるが、ポリマーの重合後、ポリマー鎖に塩生成基(アニオン性基又はカチオン性基)を導入してもよい。
塩生成基含有モノマー(a)としては、(a−1)アニオン性モノマー及び(a−2)カチオン性モノマーが好ましい。
(a−1)アニオン性モノマーとしては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー及び不飽和リン酸モノマーからなる群より選ばれた一種以上が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
不飽和スルホン酸モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコネート等が挙げられる。
不飽和リン酸モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記のアニオン性モノマーの中では、インク粘度及び吐出性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
(a−2)カチオン性モノマーとしては、不飽和3級アミン含有ビニルモノマー及び不飽和アンモニウム塩含有ビニルモノマーからなる群より選ばれた一種以上が挙げられる。
不飽和3級アミン含有モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−6−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等が挙げられる。
不飽和アンモニウム塩含有モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート四級化物等が挙げられる。
上記のカチオン性モノマーの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
上記の塩生成基含有モノマー(a)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明に用いられる水不溶性ビニルポリマーは、分散安定性、印字濃度及び耐マーカー性を向上させる観点から、さらに、スチレン系マクロマー(b)及び/又は疎水性モノマー(c)由来の構成単位を含む。
スチレン系マクロマー(b)に由来の構成単位としては、例えば、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体、及び片末端に重合性官能基を有する、スチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。片末端に存在する重合性官能基は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、これらを共重合させることで、スチレン系マクロマー由来の構成単位を有する水不溶性ビニルポリマーを得ることができる。
他のモノマーとしては、例えば、(1)(メタ)アクリロニトリル、(2)ヒドロキシ基を有していてもよい、炭素数1〜22、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を有する、(メタ)アクリレート類、(3)スチレン以外の芳香環含有モノマー等が挙げられる。
(2)(メタ)アクリレート類としては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書にいう「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、「イソ」又は「ターシャリー」で表される枝分かれ構造が存在している場合と存在しない場合(ノルマル)の両者を示すものである。
また、(3)スチレン以外の芳香環含有モノマーとしては、例えば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、エチルビニルベンゼン、4−ビニルビフェニル、1,1−ジフェニルエチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等の炭素数6〜22の芳香環を有するビニルモノマーが挙げられる。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
スチレン系マクロマー(b)における、スチレン由来の構成単位の含有量は、着色剤を充分に水不溶性ビニルポリマー粒子に含有し、印字濃度を向上させる観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
スチレン系マクロマー(b)の数平均分子量は、保存定性を高めるために共重合比を高めつつ、粘度を低く抑えるという観点から、1000〜10、000が好ましく、2000〜8000が更に好ましい。
スチレン系マクロマーの数平均分子量は、標準物質としてポリスチレンを用い、溶媒として50mmol/Lの酢酸を含有するテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定したときの値である。
商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名、AS−6、AS−6S、AN−6、AN−6S、HS−6、HS−6S等が挙げられる。
一方、疎水性モノマー(c)に由来する構成単位は、疎水性モノマーを重合することにより得ることができるが、ポリマーの重合後、ポリマー鎖に疎水性モノマーを導入してもよい。
疎水性モノマー(c)としては、(c−1)炭素数1〜22のアルキル基を有する(メタ)アクリレート又は(c−2)下記式(5)で表されるモノマーが好ましい。
CH2=C(R7)−R8 (5)
(式中、R7 は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、R8は炭素数6〜22の芳香環含有炭化水素基を示す。)
(c−1)炭素数1〜22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、ベへニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(c−2)式(5)で表されるモノマーとしては、印字濃度の観点から、スチレン、ビニルナフタレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、4−ビニルビフェニル、1,1−ジフェニルエチレンから選ばれた一種以上が好ましい。これらの中では、印字濃度及び保存安定性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、及びビニルトルエンからなる群から選ばれる一種以上であるスチレン系モノマーがより好ましい。
本発明に用いられる水不溶性ビニルポリマーは、更に他の構成単位を含有していてもよい。他の構成単位としては、例えば、好ましくは下記式(6)で表される、片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するアルキルメタクリレート系マクロマー(メチルメタクリレート系マクロマー、ブチルアクリレート系マクロマー、イソブチルメタクリレート系マクロマー等)に由来する構成単位が挙げられる。
CH2=C(CH3)−COOC36−〔Si(CH32O〕t Si(CH33 (6)
(式中、tは8〜40の数を示す)
当該水不溶性ビニルポリマーは、前記式(1−1)で表されるモノマー、塩生成基含有モノマー(a)、スチレン系マクロマー(b)及び/又は疎水性モノマー(c)を含有し、更に、必要により、前記式(2−1)で表されるモノマー等を含有するモノマー混合物(以下、「モノマー混合物」という)を共重合して得られるものが好ましい。
このモノマー混合物における前記式(1−1)で表されるモノマー含有量、又は水不溶性ビニルポリマーにおける前記式(1)で表される構成単位の含有量は、水系インクとした時の印字濃度と光沢性の向上、耐擦過性及び良好な分散安定性の観点から、10重量%以上、好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは20〜80重量%、特に好ましくは25〜75重量%である。
モノマー混合物における塩生成基含有モノマー(a)の含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)、又は水不溶性ビニルポリマーにおける塩生成基含有モノマー(a)に由来する構成単位の含有量は、水系インクとした際の印字濃度と光沢性の向上及び良好な分散安定性の観点から、好ましくは3〜30重量%、更に好ましくは5〜25重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。
モノマー混合物におけるスチレン系マクロマー(b)の含有量、又は水不溶性ビニルポリマーにおけるスチレン系マクロマー(b)に由来する構成単位の含有量は、水系インクとした際の印字濃度の観点から、好ましくは0〜40重量%、更に好ましくは5〜35重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。
モノマー混合物における疎水性モノマー(c)の含有量、又は水不溶性ビニルポリマーにおける疎水性モノマー(c)に由来する構成単位の含有量は、水系インクとした際の印字濃度及び分散安定性の観点から、好ましくは0〜40重量%、更に好ましくは0〜20重量%である。
本発明においては、スチレン系マクロマー(b)又は疎水性モノマー(c)の少なくとも1種は必須であるが、スチレン系マクロマー(b)を含有することが好ましい。
モノマー混合物における前記式(2−1)で表されるモノマー含有量、又は水不溶性ビニルポリマーにおける前記式(2)で表される構成単位の含有量は、水系インクとした際の印字濃度と光沢性の向上、耐擦過性及び良好な分散安定性の観点から、好ましくは5〜60重量%、更に好ましくは8〜55重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。
また、[式(2)で表される構成単位/塩生成基含有モノマー(a)由来の構成単位]の重量比は、水不溶性ビニルポリマーの分散性及び印字濃度を向上させる観点から、好ましくは10/1〜1/1、更に好ましくは5/1〜1/1である。
本発明に用いられる水不溶性ビニルポリマーの水不溶性とは、当該塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で、100%中和させた後、水100gに対する溶解量(25℃)が、水系インクの低粘度化の観点から10g以下が好ましく、5g以下が更に好ましく、1g以下であることが特に好ましい。
当該水不溶性ビニルポリマーは、塩生成基含有モノマー由来の塩生成基を、後述する中和剤により中和して用いる。塩生成基の中和度は、10〜200%であることが好ましく、さらに20〜150%、特に50〜150%であることが好ましい。
ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価 (KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100
塩生成基がカチオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
[[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーのアミン価 (HCLmg/g)×ポリマーの重量(g)/(36.5×1000)]]×100
酸価やアミン価は、水不溶性ビニルポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。または、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して、滴定する方法でも求めることができる。
本発明で用いられる水不溶性ビニルポリマーの重量平均分子量は、着色剤の分散安定性、耐水性及び吐出性の観点から5,000〜500,000が好ましく、10,000〜400,000がさらに好ましく、10,000〜300,000が特に好ましい。
なお、水不溶性ビニルポリマーの重量平均分子量は、溶媒として60mmol/Lのリン酸及び50mmol/Lのリチウムブロマイド含有ジメチルホルムアミドを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
本発明で用いられる水不溶性ビニルポリマーが、グラフトポリマーである場合、主鎖の末端部分が、2以上の水酸基及び/又は1以上のカルボキシル基を有する。
ここで、2以上の水酸基及び/又は1以上のカルボキシル基がポリマーの末端に有するとは、ポリマーの主鎖に炭素原子以外のヘテロ原子が含有され、そのヘテロ原子を起点として2分割した場合に分子量が小さい側に、2以上の水酸基及び/又は1以上のカルボキシル基が含まれていることを意味する。ヘテロ原子としては、S、O、N等が挙げられる。
分子量が小さいとは、45〜500であることが好ましく、45〜300であることが更に好ましく、45〜200であることが特に好ましい。
このような水不溶性ビニルポリマーは、例えば、後述する2以上の水酸基を有する連鎖移動剤及び/又は1以上のカルボキシル基を有する連鎖移動剤の存在下で、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合することにより得ることができる。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスブチレート、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物が好適である。また、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物を使用することもできる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
本発明においては、重合の際に、2以上の水酸基を有する連鎖移動剤及び/又は1以上のカルボキシル基を有する連鎖移動剤を用い、主鎖の末端部分が、2以上の水酸基及び/又は1以上のカルボキシル基を有する水不溶性ビニルポリマーを製造することが好ましい。
2以上の水酸基を有する連鎖移動剤としては、下記式(7)及び(8)で表されるメルカプト基含有連鎖移動剤等が挙げられる。
Figure 0003790537
〔式中、R9、R10、R11、R13、R15及びR16は、それぞれ独立して水素原子、−Cn2n+1(nは1〜18の整数)又は−Cn2nO(CH2CHYO)qH(Yは水素原子又はメチル基、qは0〜20の数、nは前記と同じ)を示し、R12及びR14はそれぞれ独立してヘテロ原子、−Cn2n−(nは前記と同じ)又はヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基を示し、Xはメルカプト基を示し、a、d、f及びjはそれぞれ独立して0〜12を示し、b、g及びkはそれぞれ独立して0〜30の数を示し、c、h及びmはそれぞれ独立して1〜5の整数を示し、e及びiはそれぞれ独立して0又は1を示す。但し、1分子中における水酸基の総数は2以上である。〕
Figure 0003790537
〔式中、R17は水素原子又は−Cn2n+1(nは前記と同じ)を示し、Y及びXは前記と同じであり、r、s及びtはそれぞれ独立して0〜30の数を示す。但し、1分子中における水酸基の総数は2以上である。〕
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
上記式(7)で表されるメルカプト基含有連鎖移動剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−2− (ヒドロキシメチル)−1,3− プロパンジオール、2−メチル−2− (ヒドロキシメチル)−1,3− プロパンジオール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、D−、L−及びDL− トレイトール、アドニトール、D−及びL−アラビトール、キシリトール、ズルシトール、L−イジトール、D−マンニトール及びD−ソルビトール等のモノメルカプト化物が挙げられる。これらの中では、優れた吐出安定性及び光沢性を有する水系インクを得る観点から、グリセリンのモノメルカプト化物(チオグリセロール)である3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(1−チオグリセロール)、2−メルカプト−1,3−プロパンジオール(2−チオグリセロール)、ジグリセリンのモノメルカプト化物である6−メルカプトジグリセロール及びペンタエリスリトールのモノメルカプト化物が好ましく、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(1−チオグリセロール)がより好ましい。
上記式(8)で表されるメルカプト基含有連鎖移動剤としては、例えば、グルコースのモノメルカプト化物、α−メチルグルコシドのモノメルカプト化物、β−メチル−D−アロシドのモノメルカプト化物等が挙げられる。これらの中では、優れた吐出安定性及び光沢性を有する水系インクを得る観点から、グルコースのモノメルカプト化物が好ましく、具体的には1−チオ−β−D−グルコースがより好ましい。
2以上の水酸基を有する連鎖移動剤の量は、優れた吐出安定性及び光沢性を有する水系インクを得る観点及び分散安定性の観点から、重合に供される全モノマー100重量部に対して、0.001〜10重量部であることが好ましい。また、耐水性、耐擦過性、吐出安定性及び耐にじみ性の兼合いから、重合に供される全モノマー100重量部に対して、好ましくは0.01〜7重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
一方、1以上のカルボキシル基を有する連鎖移動剤としては、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオ乳酸、4,4’−ジチオブチリック酸、3,3’−ジチオプロピオン酸、ジチオグリコール酸等が挙げられる。これらの中では、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸が好ましい。
1以上のカルボキシル基を有する連鎖移動剤の量は、吐出安定性及び光沢性に優れた水系インクを得る観点及び水不溶性ポリマーの分散安定性を向上させる観点から、重合に供される全モノマー100重量部に対して、0.001〜10重量部であることが好ましい。また、耐水性、耐擦過性、吐出安定性及び耐にじみ性に優れた水系インクを得る観点から、重合に供される全モノマー100重量部に対して、好ましくは0.01〜7重量部、より好ましくは0.1 〜5重量部である。
また、必要に応じて、上記連鎖移動剤と共に、他の連鎖移動剤、例えば、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;チウラムジスルフィド類;炭化水素類;不飽和環状炭化水素化合物;不飽和ヘテロ環状化合物等を併用することができる。
モノマー混合物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成した水不溶性ビニルポリマーを単離することができる。また、得られた水不溶性ポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
(着色剤)
着色剤は、耐水性の観点から、顔料及び疎水性染料が好ましい。中でも、近年要求が強い高耐候性を発現させるためには、顔料を用いることが好ましい。
顔料及び疎水性染料は、水系インクに使用する場合には、界面活性剤、水不溶性ポリマーを用いて、インク中で安定な微粒子にする必要がある。特に、耐滲み性、耐水性等の観点から、水不溶性ポリマーの粒子中に顔料及び疎水性染料を含有させることが好ましい。
顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水系インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジスアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー13, 17, 74, 83, 97, 109, 110, 120, 128, 139, 151, 154, 155, 174, 180;C.I. ピグメント・レッド 48, 57:1, 122, 146, 176, 184, 185, 188, 202;C.I.ピグメント・バイオレット19, 23;C.I.ピグメントブルー15, 15:1, 15:2, 15:3, 15:4, 16, 60;C.I.ピグメント・グリーン7, 36等の各品番製品が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
疎水性染料は、水不溶性ポリマー粒子中に含有させることができるものであればよく、その種類には特に制限がない。疎水性染料は、水不溶性ポリマー中に効率よく染料を含有させる観点から、水不溶性ポリマーの製造時に使用する有機溶媒に対して、2g/L以上、好ましくは20〜500g/L(25℃)溶解するものが望ましい。
疎水性染料としては、油溶性染料、分散染料等が挙げられ、これらの中では油溶性染料が好ましい。
油溶性染料としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック、C.I.ソルベント・イエロー、C.I.ソルベント・レッド、C.I.ソルベント・バイオレット、C.I.ソルベント・ブルー、C.I.ソルベント・グリーン、C.I.ソルベント・オレンジ等の各品番製品が挙げられ、オリエント化学株式会社、BASF社等から市販されている。
分散染料としては、例えば、C.I.ディスパーズ・イエロー、C.I.ディスパーズ・オレンジ、C.I.ディスパーズ・レッド、C.I.ディスパーズ・バイオレット、C.I.ディスパーズ・ブルー、C.I.ディスパーズ・グリーン等の各品番製品が挙げられる。これらの中では、イエローとしてC.I.ソルベント・イエロー29及び30、シアンとしてC.I.ソルベント・ブルー70、マゼンタとしてC.I.ソルベント・レッド18及び49、ブラックとしてC.I.ソルベント・ブラック3及び7、及びニグロシン系の黒色染料が好ましい。
上記の着色剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
本発明の水分散体及び水系インク中における着色剤の含有率は、分散安定性及び印字濃度を高める点から、1〜30重量%が好ましく、2〜20重量%が更に好ましく、2〜10重量%が特にさらに好ましい。
本発明で用いられる水不溶性ビニルポリマーと着色剤の量比については、印字濃度を高めるという観点から、水不溶性ビニルポリマーの固形分100重量部に対して、着色剤20〜1,000重量部が好ましい。中でも50〜900重量部がより好ましく、100〜800重量部が更に好ましい。
(水分散体及び水系インクの製造方法)
本発明の水分散体は、次の工程(1)及び(2)により得ることが好ましい。
工程(1):水不溶性ビニルポリマー、有機溶媒、中和剤、着色剤、及び水を含有する混合物を、分散処理する工程。
工程(2):前記有機溶媒を除去する工程。
前記工程(1)では、まず、前記水不溶性ビニルポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に着色剤、中和剤、水、及び必要に応じて界面活性剤等を、前記有機溶媒に加えて混合し、水中油型の分散体を得る。混合物中、着色剤は、5〜50重量%が好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、水不溶性ポリマーは、2〜40重量%が好ましく、水は、10〜70重量%が好ましい。中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記水不溶性ビニルポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられ、水に対する溶解度が20℃において、50重量%以下でかつ10重量%以上のものが好ましい。
アルコール系溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、イソプロパノール、アセトン及びメチルエチルケトンが好ましく、特に、メチルエチルケトンが好ましい。これらの溶媒は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
中和剤としては、水不溶性ビニルポリマー中の塩生成基の種類に応じて、酸又は塩基を使用することができる。
中和剤としては、塩酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン等の塩基が挙げられる。
前記工程(1)における混合物の分散方法に特に制限はない。本分散だけで水不溶性ポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行い、水不溶性ポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄鋼株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔荏原製作所株式会社、商品名〕、TKホモミクサー、TKパイプラインミクサー、TKホモジェッター、TKホモミックラインフロー、フィルミックス〔以上、特殊機化工業株式会社、商品名〕、クリアミックス〔エム・テクニック株式会社、商品名〕、ケイディーミル〔キネティック・ディスパージョン社、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics 社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕、アルティマイザー〔スギノマシン株式会社、商品名〕、ジーナスPY〔白水化学株式会社、商品名〕、DeBEE2000 〔日本ビーイーイー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた分散体から有機溶媒を留去して水系にすることで、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得る。水分散体に含まれる有機溶媒の除去は、減圧蒸留等による一般的な方法により行うことができる。得られた水不溶性ポリマー粒子を含む水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されており、有機溶媒の量は、通常0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下である。
着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体は、着色剤を含有する水不溶性ポリマーの固体分が水を主溶媒とする中に分散しているものである。ここで、着色剤を含む水不溶性ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも着色剤と水不溶性ポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、水不溶性ポリマーに着色剤が内包された粒子形態、水不溶性ポリマー中に着色剤が均一に分散された粒子形態、水不溶性ポリマー粒子表面に着色剤が露出された粒子形態等が含まれる。
水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体はそのまま水系インクとして用いてもよいが、インクジェット記録用水系インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤等を添加してもよい。
得られる水分散体及び水系インクにおける、着色剤を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の平均粒径は、プリンターのノズルの目詰まり防止及び分散安定性の観点から、好ましくは0.01〜0.5μm、より好ましくは0.03〜0.3μm、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。なお、平均粒径は、大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント解析)で測定することができる。なお、測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333) を入力する。
また、水分散体及び水系インク中、着色剤を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の含有量(固形分)は、通常、印字濃度及び吐出安定性の観点から、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜15重量%となるように調整することが望ましい。
本発明の水分散体及び水系インク中の水の含有量は、好ましくは30〜90重量%,より好ましくは40〜80重量%である。
本発明の水分散体及び水系インクの好ましい表面張力(20℃)は、水分散体としては30〜65mN/m、さらに好ましくは35〜60mN/mであり、水系インクとしては、25〜50mN/mであり、さらに好ましくは27〜45mN/mである。
本発明の水分散体の10重量%の粘度(20℃)は、水系インクとした際に好ましい粘度とするために、2〜6mPa・sが好ましく、2〜5mPa・sが更に好ましい。また、本発明の水系インクの粘度(20℃)は、良好な吐出性を維持するために、2〜12mPa・sが好ましく、2.5〜10mPa・sが更に好ましい。
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。
製造例1〜3、及び比較製造例1及び2
反応容器内に、メチルエチルケトン20部、表1に示す重合連鎖移動剤の10%、表1に示す各モノマーの200部の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、表1に示すモノマーの残りの90%を仕込み、表1に示す重合連鎖移動剤の90%、メチルエチルケトン60部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(重合開始剤)1部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液の一部を、減圧下、105℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによって単離した。標準物質としてポリスチレン、溶媒として60mmol/Lのリン酸及び50mmol/Lのリチウムブロマイド含有ジメチルホルムアミドを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。
なお、表1に示す化合物の詳細は、以下のとおりである。
・ベンジルメタクリレート:和光純薬工業株式会社製、試薬
・オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシド平均付加モル数=6、プロピレンオキシド平均付加モル数=6、末端2−エチルヘキシル):日本油脂株式会社製、商品名:ブレンマー50POEP-800B
・メタクリル酸:和光純薬工業株式会社製、試薬
・スチレンマクロマー:
東亜合成株式会社製、商品名:AS−6S、数平均分子量:6000 、重合性官能基:メタクリロイルオキシ基
・スチレン:和光純薬工業株式会社製、試薬
Figure 0003790537
実施例1
製造例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー35部をメチルエチルケトン80部に溶かし、その中に中和剤(5N水酸化ナトリウム水溶液)を所定量(中和度75%)加えて塩生成基を中和した。更に無置換キナクリドン顔料(C.I.ピグメント・バイオレット19、クラリアントジャパン株式会社製、商品名:Hostaperm Red E5B02)65部、イオン交換水150部を加え、ディスパー混合し、更に分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、200MPa)で20パス処理した。
得られた混練物に、イオン交換水120部を加え、攪拌した後、減圧下で60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去することにより、固形分濃度が20%の顔料含有水不溶性グラフトポリマー粒子の水分散体を得た。
得られた顔料含有水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体に表2に示す成分を加えて、得られた混合液を1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより、表2に示す水系インクを得た。なお、表2に示す化合物の詳細は、以下の通りである。
・TEGMBE:トリエチレングリコールモノブチルエーテル(浸透剤)
・サーフィノール465:ノニオン活性剤、エアプロダクツ社製
・Proxel XL2:抗菌剤、アビシア株式会社製
実施例2
実施例1において、製造例1で得られたポリマー溶液の代わりに、製造例2で得られたポリマー溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、表2に示す水系インクを得た。
実施例3
実施例1において、製造例1で得られたポリマー溶液の代わりに、製造例3で得られたポリマー溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、表2に示す水系インクを得た。
比較例1
実施例1において、製造例1で得られたポリマーの代わりに、比較製造例1で得られたポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして、表2に示す水系インクを得た。
比較例2
実施例1において、製造例1で得られたポリマーの代わりに、比較製造例2で得られたポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして、表2に示す水系インクを得た。
次に、各実施例及び各比較例で得られたインクの性能を以下の方法に従って測定した。その結果を表2に示す。
(1)印字濃度
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型番:EM−930C)を用いて、市販の普通紙(上質普通紙、セイコーエプソン株式会社製、商品名:KA4250NT)にベタ印字し〔印字条件=用紙種類:普通紙、モード設定:フォト〕、25℃で24時間放置後、印字濃度をマクベス濃度計(グレタグマクベス社製、品番:RD914)で5回測定し、平均値を求めた。
〔評価基準〕
〇:1.15以上
△:1.10以上1.15未満
×:1.10未満
(2)吐出安定性
前記(1)のプリンターを用いて、前記市販の普通紙にベタ印字を5枚行ない、吐出不良となったノズル数を観察し、以下の評価基準で評価した。
〔評価基準〕
〇:吐出不良なし
△:1〜10ノズルが吐出不良
×:10ノズル以上吐出不良
(3)光沢性
前記(1)のプリンターを用いて、市販の専用紙(市販の写真用紙<光沢>(60°光沢度が41)セイコーエプソン株式会社製、商品名:KA450PSK)にベタ印字し〔印字条件=用紙種類:フォトプリント紙、モード設定:フォト〕、25℃で24時間放置後、60°の光沢度を光沢計(日本電飾工業株式会社製、商品名:HANDY GLOSSMETER 、品番:PG−1)で5回測定し、平均値を求めた。
Figure 0003790537
表2に示された結果から、各実施例で得られたインクは、専用紙上で、高い光沢性を有していることがわかる。また、各実施例で得られたインクは、普通紙に印字した際に高い印字濃度を与え、吐出安定性に優れているものである。

Claims (7)

  1. 着色剤を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体であって、該水不溶性ビニルポリマーが、下記式(1)で表される構成単位と、塩生成基含有モノマー(a)に由来する構成単位と、スチレン系マクロマー(b)及び/又は疎水性モノマー(c)に由来する構成単位とを有するポリマーであり、該式(1)で表される構成単位の含有量が20〜80重量%であり、該水不溶性ビニルポリマーの主鎖の末端部分が、2以上の水酸基及び/又は1以上のカルボキシル基を有するインクジェット記録用水分散体。
    Figure 0003790537
    (式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は、置換基を有していてもよい、炭素数7〜22のアリールアルキル基又は炭素数6〜22のアリール基を示す。)
  2. ポリマー主鎖の末端部分に2以上の水酸基及び/又は1以上のカルボキシル基を有する水不溶性ポリマーが、2以上の水酸基を有する連鎖移動剤及び/又は1以上のカルボキシル基を有する連鎖移動剤の存在下で共重合されたものである、請求項1に記載のインクジェット記録用水分散体。
  3. 2以上の水酸基を有する連鎖移動剤がチオグリセロールであり、1以上のカルボキシル基を有する連鎖移動剤がメルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸及びメルカプトコハク酸から選ばれた1種以上である、請求項2に記載のインクジェット記録用水分散体。
  4. 前記式(1)で表される構成単位が、ベンジル(メタ)アクリレートに由来する構成単位である、請求項1〜のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体。
  5. スチレン系マクロマーが、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーである、請求項1〜のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体。
  6. 水不溶性ビニルポリマーの重量平均分子量が5,000〜500,000である、請求項1〜のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
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