JP4689235B2 - インクジェット記録用水系インク - Google Patents

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Description

本発明はインクジェット記録用水系インクに関する。詳しくは、分散安定性に優れ、普通紙における印字濃度が高く、カラーブリードが抑制されたインクジェット記録用水系インク、及びその製造方法に関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易でかつ安価であり、記録部材として普通紙が使用可能で、被印字物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
その中でも近年は、印字物の耐候性や耐水性の観点から、着色剤に顔料系インクを用いるものが主流となってきている。
例えば、特許文献1には、ビニルポリマーに顔料を含有させた水系インクであって、高印字濃度を付与するために、ビニルポリマーとしてマクロマーを用いたグラフトポリマーが開示されている。
また、特許文献2には、インク中の残存モノマー総量を5000ppm以下にした水性インクが開示されている。
これらの水系インクは、保存安定性や対光性に優れることが挙げられているが、普通紙に印字した際の印字濃度、保存安定性、カラーブリード抑制等において、更に高レベルの優れた性能が求められている。
国際公開第00/39226号パンフレット 特開2003−342507号公報
本発明は、分散安定性に優れ、普通紙における印字濃度が高く、カラーブリードが抑制されたインクジェット記録用水系インク、及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、着色剤を含有する水不溶性ポリマーを含む水系インクであって、その中の特定の未反応モノマー成分の含有量を特定量以下に規制した水系インクを用いれば、上記課題を解決できることを見出した。また、前記水系インクは特定の工程を施すことにより、効率よく製造しうることを見出した。
すなわち、本発明は、
着色剤を含有する水不溶性ビニルポリマーを含む水系インクの製造方法であって、下記工程(1−1)、工程(2)、及び残存有機溶媒を留去して水系にする工程(3)を含み、該水系インク中の該(メタ)アクリレートの含有量が80重量ppm以下であるインクジェット記録用水系インクの製造方法、
工程(1−1):請求項1に記載の式(1)で表される構成単位の含有量が25〜75重量%である水不溶性ビニルポリマー、有機溶媒、共沸溶媒、着色剤、及び水を含有する混合物を分散処理する工程
工程(2):前記工程(1)で得られた分散処理液から共沸溶媒を留去することで、アリールアルキル基又はアリール基を含む(メタ)アクリレートを除去する工程、
を提供する。
本発明のインクジェット記録用水分散体を含有する水系インクは、分散安定性に優れ、普通紙における印字濃度が高く、カラーブリードが抑制された水系インクである。
本発明の製造方法によれば、前記インクジェット記録用水系インクを効率よく製造することができる。
本発明のインクジェット記録用水系インクは、着色剤を含有する水不溶性ビニルポリマーの水分散体を含有する水系インクであって、該水不溶性ビニルポリマーが、アリールアルキル基又はアリール基を含む(メタ)アクリレート由来の構成単位を有すると共に、該水系インク中の該(メタ)アクリレートの含有量が500重量ppm以下であることが特徴である。
(水不溶性ビニルポリマー)
本発明に用いられる水不溶性ビニルポリマーは、下記式(1)で表される構成単位を有するものが好ましい。
Figure 0004689235
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は、置換基を有していてもよい、炭素数7〜22のアリールアルキル基又は炭素数6〜22のアリール基を示す。)
式(1)中、R2の好適例としては、置換基を有していてもよい、炭素数7〜18、更に好ましくは炭素数7〜12のアリールアルキル基、又は、炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。置換基には、ヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。
2の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基(フェニルエチル基)、フェノキシエチル基、ジフェニルメチル基、トリチル基等が挙げられる。
置換基の具体例は、好ましくは炭素数1〜9の、アルキル基、アルコキシ基若しくはアシロキシ基、水酸基、エーテル基、エステル基又はニトロ基等が挙げられる。
式(1)で表される構成単位としては、高光沢性を発現させる観点から、特にベンジル(メタ)アクリレートに由来する構成単位が好ましい。
式(1)で表される構成単位は、下記式(1−1)で表されるモノマーを重合することによって得ることが好ましい。
CH2=CR1COOR2 (1−1)
(式中、R1、R2は、前記と同じである。)
具体的には、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、フタルイミドメチル(メタ)アクリレート、p−ニトロフェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸等を重合することで、式(1)で表される構成単位を有するポリマーを合成することができる。これらの中では、特にベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
なお、本明細書にいう「(メタ)アクリ」とは、「アクリ」、「メタクリ」又はそれらの混合物を意味する。
本発明に用いられる水不溶性ビニルポリマーは、さらに下記式(2)で表される構成単位を有することが好ましい。
Figure 0004689235
式(2)中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4Oはオキシプロピレン基を示す。R4Oには、−CH2CH(CH3)O−以外に、−CH(CH3)CH2O−が含まれていてもよい。R5Oは炭素数2又は4のオキシアルキレン基を示し、オキシエチレン基、オキシテトラメチレン基を示す。
6は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜9のアルキル基を有してもよいフェニル基を示す。R6は、高い印字濃度及び良好な保存安定性の観点から、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。また、炭素数1〜8のアルキル基を有していてもよい、フェニル基が好ましい。炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
4O及びR5Oはランダム付加又はブロック付加している。R4O及びR5Oが、ブロック付加している場合、-COO-(R4O)x-(R5O)y-R6、又は-COO-(R5O)y -(R4O)x -R6の何れであってもよい。x、yは、平均付加モル数を表し、xは1〜30の数であり、2〜30が好ましく、3〜20が更に好ましく、3〜15が特に好ましい。yは0〜30の数であり、0〜20が好ましく、0〜15が更に好ましい。y個のR5Oは同一でも異なっていてもよい。
式(2)で表される構成単位は、下記式(2−1)で表されるモノマーを重合することによって得ることが好ましい。
CH2=CR3COO−(R4O)x−(R5O)y−R6 (2−1)
(式中、R3、R4O、R5O、R6、x、及びyは、前記と同じである。)
具体的には、エチレングリコール・プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート[エチレングリコールとプロピレングリコールがランダム結合している]、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールがブロック結合している。(メタ)アクリル基側からポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのブロック結合とその逆も含む。以下同じ。]、オクトキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。これらの中では、特にポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコールモノメタクリレートが好ましい。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明に用いられる水不溶性ビニルポリマーにおける前記式(1)及び前記式(2)で表される構成単位の重量比[式(1)で表される構成単位/式(2)で表される構成単位]は、印字濃度と光沢性を両立させ、耐擦過性を与える観点から、1/2〜10/1が好ましく、1/2〜8/1がより好ましく、1/2〜5/1が更に好ましく、1/1〜5/1が最も好ましい。
当該水不溶性ビニルポリマーは、その分散性を向上させる観点から、更に、塩生成基含有モノマー(a)由来の構成単位を含むことが好ましい。塩生成基含有モノマー(a)に由来する構成単位は、塩生成基含有モノマーを重合することにより得ることができるが、ポリマーの重合後、ポリマー鎖に塩生成基(アニオン性基又はカチオン性基)を導入してもよい。
塩生成基含有モノマー(a)としては、(a−1)アニオン性モノマー及び(a−2)カチオン性モノマーが好ましい。
(a−1)アニオン性モノマーとしては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー及び不飽和リン酸モノマーからなる群より選ばれた一種以上が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
不飽和スルホン酸モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコネート等が挙げられる。
不飽和リン酸モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記のアニオン性モノマーの中では、インク粘度及び吐出性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
(a−2)カチオン性モノマーとしては、不飽和3級アミン含有ビニルモノマー及び不飽和アンモニウム塩含有ビニルモノマーからなる群より選ばれた一種以上が挙げられる。
不飽和3級アミン含有モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−6−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等が挙げられる。
不飽和アンモニウム塩含有モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート四級化物等が挙げられる。
上記のカチオン性モノマーの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
上記の(a)塩生成基含有モノマーは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
当該水不溶性ビニルポリマーは、分散安定性、印字濃度及び耐マーカー性を向上させる観点から、さらに、スチレン系マクロマー(b)及び/又は疎水性モノマー(c)由来の構成単位を含むことが好ましい。
スチレン系マクロマー(b)は、例えば、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体、及び片末端に重合性官能基を有する、スチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。片末端に存在する重合性官能基は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、これらを共重合させることで、スチレン系マクロマー由来の構成単位を有する水不溶性ビニルポリマーを得ることができる。
他のモノマーとしては、例えば、(1)(メタ)アクリロニトリル、(2)ヒドロキシ基を有していてもよい、炭素数1〜22、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を有する、(メタ)アクリレート類、(3)スチレン以外の芳香環含有モノマー等が挙げられる。
(2)(メタ)アクリレート類としては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書にいう「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、「イソ」又は「ターシャリー」で表される枝分かれ構造が存在している場合と存在しない場合(ノルマル)の両者を示すものである。
また、(3)スチレン以外の芳香環含有モノマーとしては、例えば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、エチルビニルベンゼン、4−ビニルビフェニル、1,1−ジフェニルエチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等の炭素数6〜22の芳香環を有するビニルモノマーが挙げられる。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
スチレン系マクロマー(b)における、スチレン由来の構成単位の含有量は、着色剤を充分に水不溶性ビニルポリマー粒子に含有し、印字濃度を向上させる観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
スチレン系マクロマー(b)の数平均分子量は、保存定性を高めるために共重合比を高めつつ、粘度を低く抑えるという観点から、1000〜10、000が好ましく、2000〜8000が更に好ましい。
スチレン系マクロマーの数平均分子量は、標準物質としてポリスチレンを用い、溶媒として50mmol/Lの酢酸を含有するテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定したときの値である。
商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名、AS−6、AS−6S、AN−6、AN−6S、HS−6、HS−6S等が挙げられる。
疎水性モノマー(c)に由来する構成単位は、疎水性モノマーを重合することにより得ることができるが、ポリマーの重合後、ポリマー鎖に疎水性モノマーを導入してもよい。
疎水性モノマー(c)としては、(c−1)炭素数1〜22のアルキル基を有する(メタ)アクリレート又は(c−2)下記式(5)で表されるモノマーが好ましい。
CH2=C(R7)−R8 (5)
(式中、R7 は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、R8は炭素数6〜22の芳香環含有炭化水素基を示す。)
(c−1)炭素数1〜22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、ベへニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(c−2)式(5)で表されるモノマーとしては、印字濃度の観点から、スチレン、ビニルナフタレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、4−ビニルビフェニル、1,1−ジフェニルエチレンから選ばれた一種以上が好ましい。これらの中では、印字濃度及び保存安定性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、及びビニルトルエンからなる群から選ばれる一種以上であるスチレン系モノマーがより好ましい。
当該水不溶性ビニルポリマーは、更に他の構成単位を含有していてもよい。他の構成単位としては、例えば、好ましくは下記式(6)で表される、片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するアルキルメタクリレート系マクロマー(メチルメタクリレート系マクロマー、ブチルアクリレート系マクロマー、イソブチルメタクリレート系マクロマー等)に由来する構成単位が挙げられる。
CH2=C(CH3)−COOC36−〔Si(CH32O〕t Si(CH33 (6)
(式中、tは8〜40の数を示す)
当該水不溶性ビニルポリマーは、前記式(1−1)で表されるモノマー、前記式(2−1)で表されるモノマーを含有し、更に、必要により(a)塩生成基含有モノマー、(b)スチレン系マクロマー及び/又は(c)疎水性モノマー等を含有するモノマー混合物(以下、「モノマー混合物」という)を共重合して得られるものが好ましい。
このモノマー混合物における前記式(1−1)で表されるモノマー含有量、又は水不溶性ビニルポリマーにおける前記式(1)で表される構成単位の含有量は、水系インクとした時の印字濃度と光沢性の向上、耐擦過性及び良好な分散安定性の観点から、好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは20〜80重量%、特に好ましくは25〜75重量%である。
モノマー混合物における前記式(2−1)で表されるモノマー含有量、又は水不溶性ビニルポリマーにおける前記式(2)で表される構成単位の含有量は、水系インクとした際の印字濃度と光沢性の向上、耐擦過性及び良好な分散安定性の観点から、好ましくは5〜60重量%、更に好ましくは8〜55重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。
モノマー混合物における塩生成基含有モノマー(a)の含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)、又は水不溶性ビニルポリマーにおける塩生成基含有モノマー(a)に由来する構成単位の含有量は、水系インクとした際の印字濃度と光沢性の向上及び良好な分散安定性の観点から、好ましくは3〜30重量%、更に好ましくは5〜25重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。
[式(2)で表される構成単位/塩生成基含有モノマー(a)由来の構成単位]の重量比は、水不溶性ビニルポリマーの分散性及び印字濃度を向上させる観点から、好ましくは10/1〜1/1、更に好ましくは5/1〜1/1である。
モノマー混合物におけるスチレン系マクロマー(b)の含有量、又は水不溶性ビニルポリマーにおけるスチレン系マクロマー(b)に由来する構成単位の含有量は、水系インクとした際の印字濃度の観点から、好ましくは0〜40重量%、更に好ましくは5〜35重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。
モノマー混合物における疎水性モノマー(c)の含有量、又は水不溶性ビニルポリマーにおける疎水性モノマー(c)に由来する構成単位の含有量は、水系インクとした際の印字濃度及び分散安定性の観点から、好ましくは0〜40重量%、更に好ましくは0〜20重量%である。
当該水不溶性ビニルポリマーの水不溶性とは、水100gに対する溶解量(25℃)が、水系インクの低粘度化の観点から10g以下が好ましく、5g以下が更に好ましく、1g以下であることが特に好ましい。塩生成基を有する場合は、当該塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で、100%中和させた後の水不溶性ビニルポリマーの溶解量である。
当該水不溶性ビニルポリマーは、塩生成基含有モノマー由来の塩生成基を、後述する中和剤により中和して用いる。塩生成基の中和度は、10〜200%であることが好ましく、さらに20〜150%、特に50〜150%であることが好ましい。
ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価 (KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100
塩生成基がカチオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
[[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーのアミン価 (HCLmg/g)×ポリマーの重量(g)/(36.5×1000)]]×100
酸価やアミン価は、水不溶性ビニルポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。または、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して、滴定する方法でも求めることができる。
本発明で用いられる水不溶性ビニルポリマーの重量平均分子量は、着色剤の分散安定性、耐水性及び吐出性の観点から5,000〜500,000が好ましく、10,000〜400,000がさらに好ましく、10,000〜300,000が特に好ましい。
なお、水不溶性ビニルポリマーの重量平均分子量は、溶媒として60mmol/Lのリン酸及び50mmol/Lのリチウムブロマイド含有ジメチルホルムアミドを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
本発明で用いられる水不溶性ビニルポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスブチレート、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物が好適である。また、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物を使用することもできる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに重合連鎖移動剤を添加してもよい。重合連鎖移動剤の具体例としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−メルカプト‐1、2−プロパンジオール、メルカプトコハク酸等のメルカプタン類;チウラムジスルフィド類;炭化水素類;不飽和環状炭化水素化合物;不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
モノマー混合物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成した水不溶性ビニルポリマーを単離することができる。また、得られた水不溶性ポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
(着色剤)
着色剤は、耐水性の観点から、顔料及び疎水性染料が好ましい。中でも、近年要求が強い高耐候性を発現させるためには、顔料を用いることが好ましい。
顔料及び疎水性染料は、水系インクに使用する場合には、界面活性剤、水不溶性ポリマーを用いて、インク中で安定な微粒子にする必要がある。特に、耐滲み性、耐水性等の観点から、水不溶性ポリマーの粒子中に顔料及び疎水性染料を含有させることが好ましい。
顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水系インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジスアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
有機顔料の中では、分子内に置換基を有していてもよいアリール基を有する化合物又は縮合複素環系化合物からなるものが好ましく、具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー74,120,180、C.I.ピグメント・レッド57:1, 122, 184, 202、C.I.ピグメント・バイオレット19、C.I.ピグメント・ブルー15:1, 15:3, 15:4、C.I.ピグメント・グリーン7, 36等の各品番製品が挙げられる。
アリール基としては、好ましく炭素数6〜50、更に好ましくは炭素数6〜32であり、好ましい置換基としては、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、エーテル基、エステル基、ニトロ基、水酸基、ハロゲン基、アミド基、アミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホキシド基(−SO−)、スルホン基(−SO2−)等が挙げられる。
分子内に置換基を有していてもよいアリール基を有する化合物としては、アゾ顔料、ジズアゾ顔料、イソインドリノン顔料等が挙げられる。
縮合複素環系化合物としては、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料等が挙げられる。
アリールアルキル基又はアリール基を含む(メタ)アクリレートは、分子内に置換基を有していてもよいアリール基を有する化合物や縮合複素環系化合物と親和性が高く、除去するのが容易ではない。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
疎水性染料は、水不溶性ポリマー粒子中に含有させることができるものであればよく、その種類には特に制限がない。疎水性染料は、水不溶性ポリマー中に効率よく染料を含有させる観点から、水不溶性ポリマーの製造時に使用する有機溶媒に対して、2g/L以上、好ましくは20〜500g/L(25℃)溶解するものが望ましい。
疎水性染料としては、油溶性染料、分散染料等が挙げられ、これらの中では油溶性染料が好ましい。
油溶性染料としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック、C.I.ソルベント・イエロー、C.I.ソルベント・レッド、C.I.ソルベント・バイオレット、C.I.ソルベント・ブルー、C.I.ソルベント・グリーン、C.I.ソルベント・オレンジ等の各品番製品が挙げられ、オリエント化学株式会社、BASF社等から市販されている。
分散染料としては、例えば、C.I.ディスパーズ・イエロー、C.I.ディスパーズ・オレンジ、C.I.ディスパーズ・レッド、C.I.ディスパーズ・バイオレット、C.I.ディスパーズ・ブルー、C.I.ディスパーズ・グリーン等の各品番製品が挙げられる。これらの中では、イエローとしてC.I.ソルベント・イエロー29及び30、シアンとしてC.I.ソルベント・ブルー70、マゼンタとしてC.I.ソルベント・レッド18及び49、ブラックとしてC.I.ソルベント・ブラック3及び7、及びニグロシン系の黒色染料が好ましい。
上記の着色剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
本発明の水分散体及び水系インク中における着色剤の含有率は、分散安定性及び印字濃度を高める点から、1〜30重量%が好ましく、2〜20重量%が更に好ましく、2〜10重量%が特に好ましい。
本発明で用いられる水不溶性ビニルポリマーと着色剤の量比については、印字濃度を高めるという観点から、水不溶性ビニルポリマーの固形分100重量部に対して、着色剤20〜1,000重量部が好ましく、50〜900重量部がより好ましく、100〜800重量部が更に好ましい。
本発明の水系インクにおいては、アリールアルキル基又はアリール基を含む(メタ)アクリレート、具体的には前記(1−1)で表されるモノマーの含有量が500重量ppm以下である。この含有量が500重量ppm以下であれば、着色剤を含む水不溶性ビニルポリマー粒子の分散安定性、保存安定性及び普通紙に印字した際の印字濃度が良好となる。さらに普通紙におけるカラーブリードを良好に抑制する観点から、前記モノマーの含有量は100重量ppm以下が好ましい。該含有量の下限については特に制限はないが、生産性や製造コスト等の面から、通常10重量ppm程度であり、好ましくは20重量ppmである。
水系インク中の前記残存モノマーの含有量を低減させる方法に特に制限はなく、種々の方法、例えば、重合時間延長法、多段階蒸留法、共沸法、限外濾過法、活性炭処理法、水蒸気蒸留法等を用いることができる。これらの方法は、単独で又は2種以上を組み合わせて実施してもよいが、生産性の観点から、共沸法や水蒸気蒸留法が好ましい。
共沸法において用いる溶媒(以下、共沸溶媒という)としては、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン等の芳香族溶媒等を挙げることができる。これらの中でも、生産性の観点から、沸点が60〜130℃の低沸点化合物が好ましく、水に対する溶解度が、20℃において好ましくは10重量%未満、より好ましくは3重量%以下、更に好ましは1重量%以下の溶媒が好適であり、特にトルエンが好ましい。
(水系インクの製造方法)
本発明のインクジェット記録用水系インクの製造方法については特に制限はないが、以下に示す本発明の方法によれば、所望の水系インクを効率よく製造することができる。
すなわち、本発明の製造方法においては、下記工程(1)及び(2)を施すことにより、インクジェット記録用水系インクを製造する。
工程(1):アリールアルキル基又はアリール基を含む(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する水不溶性ポリマー、有機溶媒、着色剤、水及び必要により中和剤を含有する混合物を分散処理する工程。
工程(2):前記工程(1)で得られた分散処理液から、アリールアルキル基又はアリール基を含む(メタ)アクリレートを除去する工程。
前記工程(1)においては、まず、前記水不溶性ビニルポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に前記の着色剤、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、前記有機溶媒に加えて混合し、水中油型の分散体を得る。混合物中、着色剤は、5〜50重量%が好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、水不溶性ポリマーは、2〜40重量%が好ましく、水は、10〜70重量%が好ましい。前記水不溶性ビニルポリマーが塩生成基を有する場合は中和剤を用いることが好ましいが、中和度には特に限定がない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記水不溶性ビニルポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく、脂肪族溶媒が好ましい。また、水に対する溶解度が20℃において、50重量%以下でかつ10重量%以上のものが好ましい。
アルコール系溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、イソプロパノール、アセトン及びメチルエチルケトンが好ましく、特に、メチルエチルケトンが好ましい。これらの溶媒は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
中和剤としては、水不溶性ビニルポリマー中の塩生成基の種類に応じて、酸又は塩基を使用することができる。
中和剤としては、塩酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン等の塩基が挙げられる。
前記工程(1)における混合物の分散方法に特に制限はない。本分散だけで水不溶性ポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行い、水不溶性ポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄鋼株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔荏原製作所株式会社、商品名〕、TKホモミクサー、TKパイプラインミクサー、TKホモジェッター、TKホモミックラインフロー、フィルミックス〔以上、特殊機化工業株式会社、商品名〕、クリアミックス〔エム・テクニック株式会社、商品名〕、ケイディーミル〔キネティック・ディスパージョン社、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics 社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕、アルティマイザー〔スギノマシン株式会社、商品名〕、ジーナスPY〔白水化学株式会社、商品名〕、DeBEE2000 〔日本ビーイーイー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの中では、混合物に含まれている顔料の小粒子径化の観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた分散処理液から、アリールアルキル基又はアリール基を含む(メタ)アクリレート、具体的には前記(1−1)で表されるモノマーを除去し、水分散体中の該モノマーの含有量を500重量ppm以下、好ましくは100重量ppm以下、より好ましくは10〜100重量ppm、更に好ましくは20〜100重量ppmとする。
該モノマーの除去方法は前記のとおりであり、特に共沸法や水蒸気蒸留法が好ましい。
共沸法の場合、前記工程(1)に代えて、下記工程(1−1)を行い、その後、減圧蒸留等の通常の方法で、共沸溶媒を留去することで、工程(2)を行うことができる。
工程(1−1):アリールアルキル基又はアリール基を含む(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する水不溶性ポリマー、有機溶媒、共沸溶媒、着色剤、水及び必要により中和剤を含有する混合物を分散処理する工程。
この場合、上記混合物中、共沸溶媒は、2〜30重量%が好ましく、5〜20重量%が更に好ましい。共沸溶媒と有機溶媒との重量比(共沸溶媒/有機溶媒)は、1/25〜1/2が好ましく、1/17〜2/7が更に好ましい。
上記混合物中の着色剤、有機溶媒、水不溶性ポリマー、水、中和剤の重量%は、前記と同様である。
このようにして、残存モノマーを除去した後、必要に応じて更に、更に残存有機溶媒を減圧蒸留等による一般的な方法により留去して水系にすることで、着色剤を含有する水不溶性ビニルポリマーの水分散体を得る。得られた水不溶性ポリマー粒子を含む水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されており、有機溶媒の量は、通常0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下である。
着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体は、着色剤を含有する水不溶性ポリマーの固体分が水を主溶媒とする中に分散しているものである。ここで、着色剤を含む水不溶性ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも着色剤と水不溶性ポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、水不溶性ポリマーに着色剤が内包された粒子形態、水不溶性ポリマー中に着色剤が均一に分散された粒子形態、水不溶性ポリマー粒子表面に着色剤が露出された粒子形態等が含まれる。
水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体はそのまま水系インクとして用いてもよいが、インクジェット記録用水系インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤等を添加してもよい。
得られる水系インクにおける、着色剤を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の平均粒径は、プリンターのノズルの目詰まり防止及び分散安定性の観点から、好ましくは0.01〜0.5μm、より好ましくは0.03〜0.3μm、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。なお、平均粒径は、大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント解析)で測定することができる。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力する。また標準物質としてセラディン(Seradyn) 社製のユニフォーム・マイクロパーティクルズ (平均粒径204nm)を用いる。
また、水分散体及び水系インク中、着色剤を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の含有量(固形分)は、通常、印字濃度及び吐出安定性の観点から、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜15重量%となるように調整することが望ましい。
水系インク中の水の含有量は、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%である。
水系インクの好ましい表面張力(20℃)は、25〜50mN/mであり、さらに好ましくは27〜45mN/mである。
また、本発明の水系インクの粘度(20℃)は、良好な吐出性を維持するために、2〜12mPa・sが好ましく、2.5〜10mPa・sが更に好ましい。
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。
製造例1
ベンジルメタクリレート(前記式(1)の化合物、和光純薬工業株式会社製、試薬)46部、メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製、試薬)14部、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6S、数平均分子量:6000 、重合性官能基:メタクリロイルオキシ基)20部、及びポリプロピレングリコールモノメタクリレート(前記式(2)の化合物、プロピレンオキシドの付加モル数=平均9モル、末端水酸基)20部からなるモノマー100部と、有機溶媒(メチルエチルケトン)20部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール、和光純薬工業株式会社製、試薬)1部、重合開始剤(2, 2' −アゾビス(2, 4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業株式会社製、V−65) 1部との合計量の10重量%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、残りの90%を用い、75℃攪拌下、滴下しながら重合を行った。滴下終了から75℃で約2時間経過後、80℃で1時間熟成させ、ポリマー溶液A(重量平均分子量18,000)を得た。
実施例1
メチルエチルケトンで50%に調整したポリマー溶液A77部にメチルエチルケトン85部、トルエン5部及び、中和剤(5N水酸化ナトリウム水溶液)を所定量加えてメタクリル酸を中和(中和度は、70%)したのち、イオン交換水370部、更にモノアゾ系イエロー顔料〔C.I.ピグメント・イエロー74 、大日精化工業(株)製〕90部を加え、ディスパー混合し、更に分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)で20パス処理した。
得られた混練物に、イオン交換水100部を加え、攪拌した後、80kPaの減圧下、60℃でメチルエチルケトン、トルエン、残存モノマーを除去し、更に一部の水を除去した後、5μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm 、富士写真フイルム株式会社製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ〔テルモ株式会社製〕で濾過し、粗大粒子を除去し、イエロー水分散体を得た(固形分として25重量%)。
得られた水分散体6部に、グリセリン(花王株式会社製)10部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業株式会社製)7部、サーフィノール465(ノニオン活性剤、エアプロダクツ社製)1部、イオン交換水76部を加えて水系インクを調製した。
顔料をC.I.ピグメント・ブルー15:3(大日本インキ化学工業株式会社製、TGR-SD)、C.I.ピグメント・レッド122(大日本インキ化学工業株式会社製、ファーストゲンスーパーマゼンタ RY)として、同様にシアン水系インク、マゼンタ水系インクを調製した。
実施例2
実施例1において、「メチルエチルケトン85部、トルエン5部」を「メチルエチルケトン80部、トルエン10部」に変更した以外は、実施例1と同様にして、イエロー水系インク、シアン水系インク及びマゼンタ水系インクを調製した。
実施例3
実施例1において、「メチルエチルケトン85部、トルエン5部」を、「メチルエチルケトン70部、トルエン20部」に、変更した以外は、実施例1と同様にして、イエロー水系インク、シアン水系インク及びマゼンタ水系インクを調製した。
実施例4
実施例1において、「メチルエチルケトン85部、トルエン5部」を、「メチルエチルケトン90部」に、減圧蒸留条件「80kPa減圧下、60℃」を、 「80kPa減圧下、60℃で、100℃の水蒸気を吹き込みながら」にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、イエロー水系インク、シアン水系インク及びマゼンタ水系インクを調製した。
比較例1
実施例1において、「メチルエチルケトン85部、トルエン5部」を「メチルエチルケトン90部」に変更した以外は、実施例1と同様にして、イエロー水系インク、シアン水系インク及びマゼンタ水系インクを調製した。
(評価)
実施例1〜4及び比較例1で得られた水系インクの物性を下記方法に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
(1)残存モノマー
ガスクロマトグラフィー(Agilent Technology 6890、カラム HP−FFAP相当品、キャリアガスHe+空気)にて測定した。
(2)印字濃度
セイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンター(型番:EM−930C)を用い、普通紙〔両面上質普通紙、セイコーエプソン株式会社製、商品名:KA4250NT〕にベタ印字し、25℃で1日放置後、印字濃度をマクベス濃度計(グレタグマクベス社製、品番:RD914)で測定(25℃)した。従来のインクジェットプリンターの印字濃度レベル(1.1〜1.2)以上であれば合格と判断する。
(3)カラーの境界部のブリード
上記(2)と同様のプリンターにて、普通紙に各々のインクが隣接するように印字し、得られたベタ印字の境界部を顕微鏡及び目視にて評価した。
顕微鏡観察でブリードがまったく認められないレベルを◎、わずかに認められるレベルを○、目視にてブリードが認められるレベルを△とした。
(4)分散安定性
インクを密閉容器に入れ、60℃の恒温槽に1ヵ月間保存後、大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000を用いて平均粒径(以下、「保存後の平均粒径」という)を測定した。分散安定性の指標として、分散安定度を下記式から求め、以下の評価基準に基づいて評価した。
分散安定度(%)=〔〔保存後の平均粒径〕/〔平均粒径〕〕×100
◎:分散安定度が90%以上110%未満
○:分散安定度が80%以上90%未満、又は110%以上120%未満
△:分散安定度が70%以上80%未満、又は120%以上130%未満
× :分散安定度が70%未満又は130%以上
Figure 0004689235
表1に示された結果より、比較例1の水系インクに対して、実施例1〜4の水系インクは、いずれも、分散安定性に優れ、普通紙における印字濃度が高く、カラーブリードも効果的に抑制されていることが分る。

Claims (4)

  1. 着色剤を含有する水不溶性ビニルポリマーを含む水系インクの製造方法であって、下記工程(1−1)、工程(2)、及び残存有機溶媒を留去して水系にする工程(3)を含み、該水系インク中の該(メタ)アクリレートの含有量が80重量ppm以下であるインクジェット記録用水系インクの製造方法。
    工程(1−1):下記式(1)で表される構成単位の含有量が25〜75重量%である水不溶性ビニルポリマー、有機溶媒、共沸溶媒、着色剤、及び水を含有する混合物を分散処理する工程
    工程(2):前記工程(1)で得られた分散処理液から共沸溶媒を留去することで、アリールアルキル基又はアリール基を含む(メタ)アクリレートを除去する工程
    Figure 0004689235
    (式中、R 1 は水素原子又はメチル基を示し、R 2 は、置換基を有していてもよい、炭素数7〜22のアリールアルキル基又は炭素数6〜22のアリール基を示す。)
  2. アリールアルキル基又はアリール基を含む(メタ)アクリレートが、ベンジル(メタ)アクリレートである、請求項に記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
  3. 着色剤が、分子内に置換基を有していてもよいアリール基を有する化合物又は縮合複素環系化合物からなる有機顔料である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
  4. 水不溶性ビニルポリマーの重量平均分子量が、5,000〜500,000である請求項1〜のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
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